2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
M 8315-1997
チタン鉱石中のバナジウム定量方法
Methods for determination of vanadium in titanium ores
1. 適用範囲 この規格は,チタン鉱石中のバナジウム定量方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS M 8301 チタン鉱石の分析方法通則
2. 一般事項 分析に共通の一般事項は,JIS M 8301による。
3. 定量方法の区分 バナジウム定量方法は,次のいずれかによる。
(1) 原子吸光法 この方法は,バナジウム含有率0.05% (m/m) 以上0.5% (m/m) 以下の試料に適用する。
(2) ICP発光分光法 この方法は,バナジウム含有率0.005% (m/m) 以上0.5% (m/m) 以下の試料に適用す
る。
4. 原子吸光法
4.1
要旨 試料を融解剤で融解し,バナジウムをバナジン酸塩として温水で抽出し,過酸化ナトリウム
を添加し,煮沸して過酸化物を分解した後,抽出残分を分離する。塩酸を加え塩酸酸性とした後,アルミ
ニウムを加え原子吸光光度計を用いてその吸光度を測定する。
4.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸 (1+1)
(2) ほう酸
(3) 水酸化カリウム
(4) 炭酸ナトリウム(無水)
(5) 過酸化ナトリウム
(6) 融解合剤A[炭酸ナトリウム(無水)1,過酸化ナトリウム2]
(7) 融解合剤B(水酸化ナトリウム1,過酸化ナトリウム2)
(8) アルミニウム溶液 塩化アルミニウム六水和物180gを水に溶解し,水で液量を1lとする。この溶液
1mlはアルミニウムとして約20mgを含む。
(9) 鉄溶液 (10mgFe/ml) 硫酸アンモニウム鉄(Ⅲ)12水43gを200mlの水に溶解した後,硫酸 (1+1) 20ml
及び水を加えて500mlとする。
(10) 標準バナジウム溶液 (20μgV/ml) バナジン酸アンモニウム1.148gを硫酸 (1+3) 50mlに加熱して溶
解し常温まで冷却した後,500mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄め原液 (1mgV/ml) とす
る。この原液を使用の都度,必要量を水で正確に50倍に薄めて,標準バナジウム溶液とする。
4.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,1gとする。
2
M 8315-1997
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.4
操作
4.4.1
試料の分解 試料の分解は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり取り,融解合剤A[4.2(6)](1)10gを入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジル
コニウムるつぼに移し入れ,かき混ぜた後,約2gの炭酸ナトリウム(無水)を加えて試料の表面を覆
う。
(2) るつぼをふたで覆い,初めは低温で内容物が流動状になるまで穏やかに加熱し,徐々に温度を上げて
るつぼの底部が暗赤色の状態になるように保ち,るつぼをゆり動かしながら(2)約5分間加熱し,試料
を完全に融解する。
(3) 放冷後,融成物はるつぼと共にビーカー (300ml) に入れ温水約80mlを少量ずつ加え,更に温水約
100mlを加え内容物を抽出する。るつぼは,温水で洗いながら取り出す。
(4) かき混ぜながら過酸化ナトリウム約1gを少量ずつ分けて加え(3)バナジウムを酸化し,よくかき混ぜな
がら,更に10〜15分間煮沸して過酸化物を分解した後,常温まで冷却する。
(5) 溶液を沈殿とともに250mlの全量フラスコに水で移し入れ,水で標線まで薄め静置する。
注(1) 融解合剤Aの代わりに融解合剤B[4.2(7)]又は水酸化カリウムとほう酸の混合物を用いることが
できる。水酸化カリウムとほう酸の混合物による場合は,水酸化カリウム5g及びほう酸2gをる
つぼに加えよくかき混ぜた後,加熱して水分を除去する。
また,炭酸ナトリウム(無水)による表面の被覆は行わない。
(2) 試料の分解を促進し,るつぼの部分的腐食を防ぐために,るつぼを絶えずゆり動かすのがよい。
(3) 試料中の鉄量が100mg以下のときは,鉄量が100mg以上になるように鉄溶液[4.2(9)]を加える。
4.4.2
試料溶液の調製 4.4.1(5)で得た溶液の上澄部分(4)から,正確に25mlを200mlのコニカルビーカー
に分取し,塩酸 (1+1) を用いて中和した後,更に塩酸 (1+1) 18mlとアルミニウム溶液[4.2(8)]10mlを加
え100mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。
注(4) ろ過してもよい。その場合,乾いたろ紙(5種C)を用いてろ過し,最初の約50mlを捨て,次
のろ液を用いる。
4.4.3
吸光度の測定 4.4.2で得た溶液の一部を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の一酸化
二窒素-アセチレンフレーム(5)中に噴霧し,波長318.4nmにおける吸光度を測定する。
注(5) 一酸化二窒素-アセチレンフレームはバーナーヘッドが汚れやすく,汚れると感度が悪くなるの
で適宜洗浄する。
4.5
空試験 4.6の検量線作成操作において得られる,標準溶液を添加しない溶液の吸光度を,空試験液
の吸光度とする。
4.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
(1) 融解合剤A[4.2(6)](1)(6)5gを入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコニウムるつぼ(7)
に約2gの炭酸ナトリウム(無水)を加えて表面を覆い,4.4.1(2)〜(5)の手順に従って操作する(8)。
(2) 4.6(1)で得た溶液の上澄み部分(4)から,正確に25mlを数個の100mlの全量フラスコに分取し,標準バ
ナジウム溶液[4.2(10)]0〜25ml(バナジウムとして0〜500μg)をそれぞれの液に正確に段階的に加える。
(3) 塩酸 (1+1) で中和した後,更に塩酸 (1+1) 18mlとアルミニウム溶液10mlを加え,水で標線まで薄
める。
(4) 4.4.3によって試料と並行して操作して,バナジウム量と吸光度との関係線を作成し,この関係線を原
点を通るように平行移動して検量線とする。
注(6) 試料に用いたものと同じ融解剤を用いる。
3
M 8315-1997
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(7) 試料に用いたものと同じ種類のるつぼを使用する。
(8) 検量線作成操作の場合,残留する過酸化物の分解を促進するため,4.4.1(4)の手順で過酸化ナト
リウムを添加後,鉄溶液[4.2(9)]1mlを加える。
4.7
計算
(1) 4.4.3及び4.5で得た吸光度と,4.6で作成した検量線とからそれぞれのバナジウムの量を求め,試料中
のバナジウム含有率を,次の式によって算出する。
100
250
25
2
1
×
×
−
m
A
A
V=
ここに,
V: 試料中のバナジウム含有率 [% (m/m)]
A1: 試料溶液中のバナジウム検出量 (g)
A2: 空試験液中のバナジウム検出量 (g)
m: 試料のはかり取り量 (g)
(2) 試料中のバナジウム含有率を酸化バナジウム含有率で表す場合は,次の式によって算出する。
V2O5=V ×1.785
ここに, V2O5: 試料中の酸化バナジウム(V)の含有率 [% (m/m)]
V: 4.7(1)で得た試料中のバナジウム含有率 [% (m/m)]
5. ICP発光分光法
5.1
要旨 試料を融解剤で融解し,塩酸を加えて溶解して,溶液をICP発光分光装置のアルゴンプラズ
マ中に噴霧してその発光強度を測定する。
5.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) ほう酸
(3) 水酸化カリウム
(4) 炭酸ナトリウム(無水)
(5) 融解合剤B(水酸化ナトリウム1,過酸化ナトリウム2)
(6) 酸化チタン(IV)
(7) コバルト溶液 コバルト[99.5% (m/m) 以上]2.00gをはかり取り,300mlのビーカーに移し入れ,硝
酸 (1+1) 40mlを加え,加熱して分解する。常温まで冷却した後,1 000mlの全量フラスコに水を用い
て移し入れ,水で標線まで薄める。この溶液1mlはコバルト2mgを含有する。
(8) ポリエチレングリコールアルキルフェニールエーテル溶液(以下,トリトン溶液という。) ポリエチ
レングリコールアルキルフェニールエーテル20mlを300mlのビーカーに移し入れ,水50mlを加え,
加熱して溶解する。常温まで冷却した後,水で1 000mlに薄める。
(9) 標準バナジウム溶液 (100μgV/ml) 4.2(10)によって調製した標準バナジウム溶液の原液 (1mgV/ml)
を使用の都度,必要量を水で正確に10倍に薄めて標準バナジウム溶液とする。
5.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,0.5gとする。
5.4
操作
5.4.1
試料の分解 試料の分解は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり取り,融解合剤B[5.2(5)](9)5gを入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコ
ニウムるつぼに移し入れ,かき混ぜた後,約2gの炭酸ナトリウム(無水)を加えて試料の表面を覆う。
4
M 8315-1997
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(2) るつぼをふたで覆い,初めは低温で内容物が流動状になるまで穏やかに加熱し,徐々に温度を上げて
るつぼの底部か暗赤色の状態になるように保ち,るつぼをゆり動かしなから(2)約5分間加熱し,試料
を完全に融解する。
(3) 放冷後,融成物をるつぼと共にビーカー (300ml) に移し入れ,温水約80mlを少量ずつ加え,るつぼ
をゆり動かしながら融成物を溶かす。るつぼは水で洗浄しながら取り出す。
(4) 塩酸50mlを加え,常温まで冷却した後,250mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ(10)(11),水で標
線まで薄める。
注(9) 融解合剤Bの代わりに水酸化カリウムとほう酸の混合物を用いることができる。水酸化カリウ
ムとほう酸の混合物による場合は,水酸化カリウム5g及びほう酸2gをるつぼに加えよくかき混
ぜた後,加熱して水分を除去する。
また,炭酸ナトリウム(無水)による表面の被覆は行わない。
(10) 耐ふっ化水素酸ネブライザーを用いるときは,トリトン溶液[5.2(8)]5mlを加える。
(11) 強度比法を適用する場合は,コバルト溶液[5.2(7)]を正確に5ml加える。
5.4.2
発光強度の測定 発光強度の測定は,次のいずれかによる。
(1) 強度法 5.4.1(4)で得た溶液の一部を,ICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長309.31nm
でのバナジウムの発光強度を測定する。
(2) 強度比法(12) 5.4.1(4)で得た溶液の一部を,ICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長
309.31nmにおけるバナジウムの発光強度及び228.62nmにおけるコバルトの発光強度を同時に測定し,
バナジウムの発光強度とコバルトの発光強度との比を求める。
注(12) 2本以上のスペクトル線の波長による同時定量が可能な装置では,強度比法によることができる。
5.5
空試験 5.6の検量線作成操作において得られる,標準溶液を添加しない溶液の発光強度又は発光強
度比を,空試験液の発光強度又は発光強度比とする。
5.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
(1) はかり取った試料中に含まれる量とほぼ同量の酸化チタン(IV)を数個はかり取り,これらをそれぞれ
融解合剤B[5.2(5)](6)(9)5gを入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコニウムるつぼ(7)
に移し入れ,かき混ぜた後,約2gの炭酸ナトリウム(無水)を加えて表面を覆い,5.4.1(2)〜(4)の手
順に従って操作する。
(2) 塩酸50mlを加え,常温まで冷却した後,それぞれ別の250mlの全量フラスコに少量の水を用いて移
し入れる。
(3) それぞれの溶液に,標準バナジウム溶液[5.2(9)]0〜25ml(バナジウムとして0〜2.5mg)を段階的に正
確に加え(10)(11),更に水で標線まで薄める。
(4) 5.4.2によって試料と並行して操作し,得た発光強度又は発光強度比とバナジウム量との関係線を作成
し,その関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
5.7
計算
(1) 5.4.2及び5.5で得た発光強度又は発光強度比と5.6で作成した検量線とからそれぞれのバナジウム量
を求め,試料中のバナジウム含有率を,次の式によって算出する。
100
)
(
3
2
1
×
−
−
m
A
A
A
V=
ここに,
V: 試料中のバナジウム含有率 [% (m/m)]
A1: 試料溶液中のバナジウム検出量 (g)
5
M 8315-1997
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
A2: 空試験液中のバナジウム検出量 (g)
A3: 5.6(1)ではかり取った酸化チタン(IV)中に含まれるバナジウム量 (g)
m: 試料のはかり取り量 (g)
(2) 試料中のバナジウム含有率を酸化バナジウム含有率で表す場合は,次の式によって算出する。
V2O5=V×1.785
ここに, V2O5: 試料中の酸化バナジウム(V)の含有率 [% (m/m)]
V: 5.7(1)で得た試料中のバナジウム含有率 [% (m/m)]
JIS改正原案作成委員会 構成表 (順不同)
氏名
所属
(委員長)
中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー分析センター
藤 貫 正
日本磁気共鳴医学会
奥 谷 忠 雄
日本大学
天 野 徹
通商産業省工業技術院
揖 斐 敏 夫
通商産業省資源エネルギー庁
垂 水 裕 之
三菱商事株式会社
吉 岡 貞 治
テイカ株式会社
村 岡 和 芳
株式会社トーケムプロダクツ
西 島 芳 正
石原産業株式会社
河 合 哲 朗
日本酸化チタン工業会
福 本 寛
堺化学工業株式会社
金 築 四 郎
住友シチックス株式会社
藤 瀬 雅 嵩
チタン工業株式会社
服 部 兆 隆
東邦チタニウム株式会社
細 野 正
富士チタン工業株式会社
大 島 健 二
古河機械金属株式会社
JIS改正原案作成専門委員会 構成表 (順不同)
氏名
所属
(委員長)
中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー分析センター
吉 岡 貞 治
テイカ株式会社
村 岡 和 芳
株式会社トーケムプロダクツ
西 島 芳 正
石原産業株式会社
河 合 哲 朗
日本酸化チタン工業会
福 本 寛
堺化学工業株式会社
金 築 四 郎
住友シチックス株式会社
藤 瀬 雅 嵩
チタン工業株式会社
服 部 兆 隆
東邦チタニウム株式会社
細 野 正
富士チタン工業株式会社
西 原 英 樹
古河機械金属株式会社