2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
M 8314-1997
チタン鉱石中の二酸化けい素定量方法
Methods for determination of silicon dioxide in titanium ores
1. 適用範囲 この規格は,チタン鉱石中の二酸化けい素定量方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS M 8301 チタン鉱石の分析方法通則
2. 一般事項 分析に共通の一般事項は,JIS M 8301による。
3. 定量方法の区分 二酸化けい素の定量方法は,次のいずれかによる。
(1) 重量法 この方法は,二酸化けい素含有率0.1% (m/m) 以上5% (m/m) 以下の試料に適用する。
(2) ICP発光分光法 この方法は,二酸化けい素含有率0.1% (m/m) 以上5% (m/m) 以下の試料に適用する。
4. 重量法
4.1
要旨 試料を融解剤で融解し,融成物を水及び硫酸で溶解する。硫酸を加えて加熱し,けい酸を不
溶性けい酸にした後こし分ける。不純二酸化けい素を強熱して恒量とする。これにふっ化水素酸を加えて
加熱し,二酸化けい素を蒸発揮散させ恒量とし,その減量をはかる。
4.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) ふっ化水素酸
(3) 硫酸 (1+1)
(4) 硫酸混液(水950mlに硫酸45mlを少量ずつ加え,放冷後,過酸化水素水5mlを加える。)
(5) ほう酸
(6) 水酸化カリウム
(7) 炭酸ナトリウム(無水)
(8) 融解合剤(水酸化ナトリウム1,過酸化ナトリウム2)
(9) 過酸化水素水 (1+9)
4.3
試料及び融解剤のはかり取り量 試料及び融解剤のはかり取り量は,二酸化けい素含有率に応じ,
表1による。
2
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表1 試料及び融解剤のはかり取り量
二酸化けい素含有率
% (m/m)
試料はかり
取り量
g
融解剤のはかり取り量 g
融解合剤を
用いるとき
水酸化カリウムとほう酸
の混合物を用いるとき
融解合剤
水酸化カリウム ほう酸
0.1以上2.5未満
1.00
10
7
3
2.5以上
0.50
5
5
2
4.4
操作
4.4.1
試料の分解 試料の分解は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり取り,表1に規定する融解剤を入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコ
ニウムるつぼに移し入れ,かき混ぜた後,更に炭酸ナトリウム(無水)約2gを加えて試料の表面を覆
う(1)。
(2) るつぼをふたで覆い,初めは低温で内容物が流動状になるまで穏やかに加熱し,次に徐々に温度を上
げてるつぼの底部が暗赤色の状態になるように保ち,るつぼをゆり動かしながら(2)5〜10分間加熱し,
試料を完全に融解する。
(3) 放冷後,融成物はるつぼと共に水約80mlを入れたポリエチレンビーカー(3) (300ml) に移し入れ,水浴
上で加熱しながら融成物を溶解する。
(4) 沈殿物の大部分が溶解するまで塩酸を加えた後,硫酸 (1+1) 40mlと過酸化水素水 (1+9) 約5mlを少
量ずつ加え,数分間放置し,るつぼの内壁に付着したチタン塩を溶解させた後,るつぼを水で洗浄し
ながら取り除く。
(5) 水を用いてビーカー (500ml) に移し入れ,加熱して濃縮し濃厚な硫酸白煙を数分間発生させる。
(6) 放冷後,約300mlの温水と過酸化水素水(1+9)(4)約10mlを加えて穏やかに加熱し(5)可溶性塩類を完全
に溶解させる。約1分間煮沸した後,直ちにろ紙(5種C)を用いてこし分け,温硫酸混液[4.2(4)]で
ペルオキソ錯体の黄色がなくなるまで洗浄し,次に温水で3回洗浄する。
注(1) 水酸化カリウムとほう酸の混合物による場合は,水酸化カリウム及びほう酸をるつぼに加えよ
くかき混ぜた後,加熱して水分を除去する。
また,炭酸ナトリウム(無水)による表面の被覆は行わない。
(2) 試料の分解を促進し,るつぼの部分的腐食を防ぐために,るつぼを絶えずゆり動かすのがよい。
(3) この場合にガラスビーカーを用いると,ガラスビーカーからけい素が溶け出すことがあるため,
ガラスビーカーは用いてはならない。手順(4)で酸性とした後は,ガラスビーカーを用いてもけ
い素の溶出は無視できる。
(4) 過酸化水素水 (1+9) を加えるとチタン塩か溶解しやすくなり,二酸化けい素中への吸着が少な
くなる。
(5) 最初から強熱すると,チタンが加水分解することがある。
4.4.2
灰化及びひょう量 4.4.1(6)で得たろ紙及び残分は,湿ったまま白金るつぼ(30番)に移し,乾燥
後,低温で加熱してろ紙を炭化させる。内容物が飛散しないように,注意しながら徐々に温度を上げ灰化
させる。更に1 000℃以上で30分間強熱しデシケーター中で常温まで冷却した後,不純物及び二酸化けい
素を含む白金るつぼの質量をはかる。
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4.4.3
ふっ化水素酸処理及びひょう量 4.4.2で得た不純物及び二酸化けい素を硫酸 (1+1) で湿し,ふっ
化水素酸5〜10mlを加え加熱し,二酸化けい素及び硫酸を揮散させた後,1 000℃以上で30分間強熱しデ
シケータ一中で常温まで冷却した後,不純物を含む白金るつぼの質量をはかる。
4.5
空試験 試料を用いないで,4.4と同じ操作を試料と並行して行う。
4.6
計算
(1) 二酸化けい素含有率を,次の式によって算出する。
100
)
(
)
(
4
3
2
1
2
×
−
−
−
m
W
W
W
W
SiO=
ここに, SiO2: 試料中の二酸化けい素含有率 [% (m/m)]
W1: 4.4.2で得た不純物及び二酸化けい素を含む白金るつぼの質
量 (g)
W2: 4.4.3で得た不純物を含む白金るつぼの質量 (g)
W3: 4.5で得た不純物及び二酸化けい素を含む白金るつぼの質量 (g)
W4: 4.5で得た不純物を含む白金るつぼの質量 (g)
m: 試料のはかり取り量 (g)
(2) 試料中の二酸化けい素含有率をけい素含有率で表す場合は,次の式によって算出する。
Si=SiO2×0.467 4
ここに,
Si: 試料中のけい素含有率 [% (m/m)]
SiO2: 4.6(1)で得た試料中の二酸化けい素含有率 [% m/m)]
5. ICP発光分光法
5.1
要旨 試料を融解剤で融解し,塩酸を加えて溶解して,溶液をICP発光分光装置のアルゴンプラズ
マ中に噴霧し,その発光強度を測定する。
5.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) ほう酸
(3) 水酸化カリウム
(4) 炭酸ナトリウム(無水)
(5) 融解合剤(水酸化ナトリウム1,過酸化ナトリウム2)
(6) 酸化チタン(Ⅳ)
(7) コバルト溶液 コバルト[99.5% (m/m) 以上]2.00gをはかり取り,300mlのビーカーに移し入れ,硝
酸 (1+1) 40mlを加え,加熱して分解する。常温まで冷却した後,1 000mlの全量フラスコに水を用い
て移し入れ,水で標線まで薄める。この溶液1mlはコバルト2mgを含有する。
(8) ポリエチレングリコールアルキルフェニールエーテル溶液(以下,トリトン溶液という。) ポリエチ
レングリコールアルキルフェニールエーテル20mlを300mlのビーカーに移し入れ,水50mlを加え,
加熱して溶解する。常温まで冷却した後,水で1 000mlに薄める。
(9) 標準二酸化けい素溶液 (1mg SiO2/ml) あらかじめ900〜1 000℃で強熱し,デシケーター内で常温ま
で放冷した二酸化けい素[99.95% (m/m) 以上]0.200gを白金るつぼにはかり取り,炭酸ナトリウム(無
水)2.5gを加えてかき混ぜ加熱し融解する。放冷後,温水100mlを入れたポリエチレンビーカー (200ml)
中に入れて融成物を溶解した後,白金るつぼを水で洗いながら取り出す。常温まで冷却した後,200ml
の全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄め,直ちに乾いたポリエチレン瓶に移し入れ,保存する。
この標準溶液1mlは二酸化けい素1mgを含有する。
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5.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,0.5gとする。
5.4
操作
5.4.1
試料の分解 試料の分解は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり取り,融解合剤[5.2(5)](6)5gを入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコニ
ウムるつぼに移し入れ,かき混ぜた後,約2gの炭酸ナトリウム(無水)を加えて試料の表面を覆う。
(2) るつぼをふたで覆い,初めは低温で内容物が流動状になるまで穏やかに加熱し,徐々に温度を上げて
るつぼの底部が暗赤色の状態になるように保ち,るつぼをゆり動かしながら(2)約5分間加熱し,試料
を完全に融解する。
(3) 放冷後,融成物をるつぼと共にポリエチレンビーカー (300ml) (3)に移し入れ,温水約80mlを少量ずつ
加え,るつぼをゆり動かしながら融成物を溶かす。るつぼは,水で洗浄しながら取り出す。
(4) 塩酸50mlを加え,常温まで冷却した後,250mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ(7)(8),水で標線
まで薄める。
注(6) 融解合剤の代わりに水酸化カリウムとほう酸の混合物を用いることができる。水酸化カリウム
とほう酸の混合物による場合は,水酸化カリウム5g及びほう酸2gをるつぼに加えよくかき混ぜ
た後,加熱して水分を除去する。
また,炭酸ナトリウム(無水)による表面の被覆は行わない。
(7) 耐ふっ化水素酸ネブライザーを用いるときは,トリトン溶液[5.2(8)]5mlを加える。
(8) 強度比法を適用する場合は,コバルト溶液[5.2(7)]を正確に5ml加える。
5.4.2
発光強度の測定 発光強度の測定は,次のいずれかによる。
(1) 強度法 5.4.1(4)で得た溶液の一部を,ICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長288.16nm
におけるけい素の発光強度を測定する。
(2) 強度比法(9) 5.4.1(4)で得た溶液の一部を,ICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長
288.16nmにおけるけい素の発光強度及び228.62nmにおけるコバルトの発光強度を同時に測定し,け
い素の発光強度とコバルトの発光強度との比を求める。
注(9) 2本以上のスペクトル線の波長による同時定量が可能な装置では,強度比法によることができる。
5.5
空試験 5.6の検量線作成操作において得られる,標準溶液を添加しない溶液の発光強度又は発光強
度比を,空試験液の発光強度又は発光強度比とする。
5.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
(1) はかり取った試料中に含まれる量とほぼ同量の酸化チタン(Ⅳ)を数個はかり取り,これらをそれぞれ
融解合剤[5.2(5)](6)(10)5gを入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコニウムるつぼ(11)に
移し入れ,かき混ぜた後,約2gの炭酸ナトリウム(無水)を加えて試料の表面を覆い,5.4.1(2)及び(3)
の手順に従って操作する。
(2) 得られたそれぞれの溶液に塩酸50mlを加え,常温まで冷却した後,250mlの全量フラスコに少量の水
を用いて移し入れる。
(3) それぞれの溶液に標準二酸化けい素溶液[5.2(9)]0〜25ml(二酸化けい素として0〜25mg)を段階的に
正確に加え(7)(8),水で標線まで薄める。
(4) 5.4.2によって試料と並行して操作し,得た発光強度又は発光強度比と二酸化けい素量との関係線を作
成し,その関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
注(10) 試料に用いたものと同じ融解剤を使用する。
(11) 試料に用いたものと同じ種類のるつぼを使用する。
5
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.7
計算
(1) 5.4.2及び5.5で得た発光強度又は発光強度比と5.6で作成した検量線とからそれぞれの二酸化けい素
量を求め,試料中の二酸化けい素含有率を,次の式によって算出する。
100
)
(
3
2
1
2
×
−
−
m
A
A
A
SiO=
ここに, SiO2: 試料中の二酸化けい素含有率 [% (m/m)]
A1: 試料溶液中の二酸化けい素検出量 (g)
A2: 空試験液中の二酸化けい素検出量 (g)
A3: 5.6(1)ではかり取った酸化チタン(Ⅳ)中に含まれる二酸化け
い素量 (g)
m: 試料のはかり取り量 (g)
(2) 試料中の二酸化けい素含有率をけい素含有率で表す場合は,次の式によって算出する。
Si=SiO2×0.4674
ここに,
Si: 試料中のけい素含有率 [% (m/m)]
SiO2: 5.7(1)で得た試料中の二酸化けい素含有率 [% m/m)]
JIS改正原案作成委員会 構成表 (順不同)
氏名
所属
(委員長)
中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー分析センター
藤 貫 正
日本磁気共鳴医学会
奥 谷 忠 雄
日本大学理工学部
天 野 徹
通商産業省工業技術院材料規格課
揖 斐 敏 夫
通商産業省資源エネルギー庁長官官房鉱業課
垂 水 裕 之
三菱商事株式会社
吉 岡 貞 治
テイカ株式会社
村 岡 和 芳
株式会社トーケムプロダクツ
西 島 芳 正
石原産業株式会社
河 合 哲 朗
日本酸化チタン工業会
福 本 寛
堺化学株式会社
金 築 四 郎
住友シチックス株式会社
藤 瀬 雅 嵩
チタン工業株式会社
服 部 兆 隆
東邦チタニウム株式会社
細 野 正
富士チタン工業株式会社
大 島 健 二
古河機械金属株式会社
JIS改正原案作成専門委員会 構成表 (順不同)
氏名
所属
(委員長)
中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー分析センター
吉 岡 貞 治
テイカ株式会社
村 岡 和 芳
株式会社トーケムプロダクツ
西 島 芳 正
石原産業株式会社
河 合 哲 朗
日本酸化チタン工業会
福 本 寛
堺化学工業株式会社
金 築 四 郎
住友シチックス株式会社
藤 瀬 雅 嵩
チタン工業株式会社
服 部 兆 隆
東邦チタニウム株式会社
細 野 正
富士チタン工業株式会社
西 原 英 樹
古河機械金属株式会社