M 8232:2005
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,日本フェロアロイ
協会(JFA)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出
があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS M 8232:1990は改正され,この規格に置き換えられる。
改正に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 4298:1984,Manganese ores and
concentrates−Determination of manganese content−Potentiometric methodを基礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
JIS M 8232には,次に示す附属書がある。
附属書1(参考)JISと対応する国際規格との対比表
M 8232:2005
(2)
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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 一般事項 ························································································································ 1
4. 定量方法の種類 ··············································································································· 1
5. マンガン定量方法 ············································································································ 2
5.1 鉄分離過マンガン酸カリウム滴定方法················································································ 2
5.2 過マンガン酸カリウム滴定方法(電位差滴定方法) ······························································ 4
5.3 電位差滴定方法 ············································································································· 5
附属書(参考)JISと対応する国際規格との対比表 ···································································· 10
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日本工業規格 JIS
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マンガン鉱石−マンガン定量方法
Manganese ores-Methods for determination of manganese content
序文 この規格は,1984年に第2版として発行されたISO 4298:1984,Manganese ores and concentrates -
Determination of manganese content - Potentiometric methodを翻訳し,技術的内容を変更して作成した日本工
業規格である。
なお,本体の5.1及び5.2は,我が国独自の定量方法を追加したものである。1.〜4.及び5.3で側線又は
点線の下線を施してある箇所は,原国際規格を変更している事項である。変更の一覧表をその説明を付け
て,附属書1(参考)に示す。
1. 適用範囲 この規格は,マンガン鉱石中のマンガン定量方法について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 4298:1984,Manganese ores and concentrates−Determination of manganese content−
Potentiometric method (MOD)
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 0113 電位差・電流・電量・カールフイッシャー滴定方法通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS M 8108 クロム鉱石,マンガン鉱石及び鉄マンガン鉱石−サンプリング方法及び水分・粒度測定
方法
備考 ISO 4296-1:1984 Manganese ores−Sampling−Part 1:Increment sampling及びISO 4296-2:1983
Manganese ores−Sampling−Part 2:Preparation of samplesからの引用事項は,この規格の該当事
項と同等である。
JIS M 8203 マンガン鉱石−化学分析方法−通則
備考 ISO 4297:1978 Manganese ores and concentrates−Methods of chemical analysis−General
instructionsからの引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
3. 一般事項 定量方法に共通な一般事項は,JIS M 8203による。
4. 定量方法の種類 定量方法の種類及びマンガン含有率の範囲は,表1による。けい酸マンガン鉱石等
けい酸分を多量に含む場合には、電位差滴定法(箇条番号5.3)を用いる。
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表 1 定量方法の種類及び範囲
種類
マンガン含有率の範囲
%(質量分率)
箇条番号
鉄分離過マンガン酸カリウム滴定方法
15以上
5.1
過マンガン酸カリウム滴定方法
(電位差滴定方法)
15以上
5.2
電位差滴定方法
15以上
5.3
5. マンガン定量方法
5.1
鉄分離過マンガン酸カリウム滴定方法
5.1.1
要旨 試料を塩酸と硝酸とで分解し,硫酸で白煙処理してろ過し,残さを二硫酸カリウムで融解し
てろ液に合わせる。酸化亜鉛で中和して鉄などを分離し,過マンガン酸カリウム標準溶液で滴定する。
5.1.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 硝酸
c) ふっ化水素酸
d) 硫酸(1+1,1+100)
e) 酸化亜鉛乳 酸化亜鉛に水を加えて十分かき混ぜ,乳状とする。
f)
二硫酸カリウム
g) 20 mmol/L 過マンガン酸カリウム標準溶液(3.161 gKMnO4/L) 調製及び標定方法は,JIS K 8001の
4.5(滴定用溶液)(7)による。
5.1.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,予想されるマンガン含有率に従って,表2による。
表 2 試料はかり取り量
マンガン含有率
%(質量分率)
試料はかり取り量
g
15以上 30未満
0.20
30 以上
0.10
5.1.4
操作
5.1.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次のいずれかによる。
a) けい酸分の少ない試料の場合 けい酸分の少ない試料は,次の手順によって試料溶液を調製する。
1) はかり取った試料(5.1.3)をビーカー(300 ml)に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸20 mlを加え,穏やか
に加熱して分解した後,硝酸5 mlと硫酸(1+1)10 mlとを加え,加熱して硫酸白煙を約10分間発生
させる。
2) 放冷した後,ビーカー内壁を水で洗って再び加熱し,約10分間硫酸白煙を発生させる。
3) 放冷した後,水約50 mlを加え,加熱して可溶性塩類を溶解しろ紙(5種B)を用いてろ過し,温
硫酸(1+100)で4,5回洗浄する。
4) ろ液及び洗液は,ビーカー(500 ml)に集めて主液として保存する。
3
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5) 残さはろ紙とともに白金るつぼ(30番)に移し,徐々に加熱してろ紙を灰化する。放冷した後,
残さを硫酸(1+1)数滴で湿し,ふっ化水素酸5 mlを加え,穏やかに加熱して二酸化けい素及び硫酸
を揮発させる。
6) 放冷した後,これに二硫酸カリウム約2 gを加え,強熱して融解する。放冷した後,白金るつぼを
ビーカー(300 ml)に移し,温水約30 mlを加え,加熱して融成物を溶解し,白金るつぼを水で洗っ
て取り出す。この溶液を先の主液に合わせる。
b) けい酸分を多量に含む試料の場合 けい酸分を多量に含む試料は,次の手順によって試料溶液を調製
する。
1) はかり取った試料(5.1.3)をポリ四ふっ化エチレンビーカー(300 ml)に移し入れ,塩酸20 ml,硝酸3 ml
及びふっ化水素酸10 mlを加え,穏やかに加熱分解する。さらに,硫酸(1+1)10 mlを加え,加熱し
て硫酸白煙を10分間発生させる。
2) 放冷した後,ポリ四ふっ化エチレンビーカー内壁を水で洗って再び加熱し,約10分間硫酸白煙を
発生させる。
3) 放冷した後,水50 mlを加え,加熱して可溶性塩類を溶解する(1)。
4) ろ紙(5種B)を用いてろ過し,温塩酸(1+100)で4,5回洗浄する。
5) ろ液及び洗液は,ビーカー(500 ml)に集めて主液として保存する。
6) 残さはろ紙とともに白金るつぼ(30番)に移し,徐々に加熱してろ紙を灰化した後強熱する。放
冷した後,これに二硫酸カリウム約2 gを加え,強熱して融解する。
7) 放冷した後,白金るつぼをビーカー(300 ml)に移し,温水約30 mlを加え,加熱して融成物を溶解
し,白金るつぼを水で洗って取り出す。この溶液を先の主液に合わせる。
注(1) ここで,未分解残さがない場合は,ろ過以後の操作を省略して5.1.4.2の操作を行ってもよい。
5.1.4.2
鉄などの除去 5.1.4.1で得た溶液に酸化亜鉛乳[5.1.2 e)]を少量ずつ加えて,酸化亜鉛の白濁が消
失しなくなるまで中和し,更に少し過剰に加えて沸騰するまで加熱する。沈殿は,過剰の酸化亜鉛ととも
にろ紙(5種A)を用いてろ過(2)して温水で洗浄する。ろ液及び洗液は,三角フラスコ(500 ml)に集めて熱
水で約200 mlに薄め,酸化亜鉛乳1,2滴を加えて白濁させる。沈殿は捨てる。
注(2) このとき,ろ液が白濁してもよい。
5.1.4.3
滴定 5.1.4.2で得た溶液を煮沸した後,直ちに20 mmol/L過マンガン酸カリウム標準溶液で滴定
し,上澄液が微紅色となったら約1分間煮沸する。上澄液の微紅色が消えたら再び20 mmol/L過マンガン
酸カリウム標準溶液の適定を繰り返し,約1分間煮沸して上澄液の微紅色が消えなくなる点を終点とする。
5.1.5
空試験 分析試料だけを除いて5.1.4.1〜5.1.4.3の手順に従って操作する。
5.1.6
計算 試料中のマンガン含有率は,次の式によって算出する。
(
)
K
m
F
V
V
Mn
×
×
×
×
−
=
100
648
001
.0
2
1
ここに,
Mn: 試料中のマンガン含有率[%(質量分率)]
V1: 5.1.4.3で得た20 mmol/L過マンガン酸カリウム標準溶液の使用量
(ml)
V2: 5.1.5で得た20 mmol/L過マンガン酸カリウム標準溶液の使用量(ml)
F:
m:
20 mmol/L過マンガン酸カリウム標準溶液のファクター
試料はかり取り量(g)
K: 乾燥試料への換算係数。乾燥試料を使用した場合には,換算係数は
乗じない。
4
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5.1.7
許容差 許容差は,表3による。
表 3 許容差
マンガン含有率
%(質量分率)
室内再現許容差
%(質量分率)
室間再現許容差
%(質量分率)
37以上 60未満
0.18
0.62
参考 表3中のマンガン含有率は,JIS Z 8402-1〜-2:1999に従って行った許容差を求めるための共同
実験に用いた試料中のマンガン含有率[%(質量分率)]である。
5.2
過マンガン酸カリウム滴定方法(電位差滴定方法)
5.2.1
要旨 試料を塩酸と硝酸とで分解し,過塩素酸で白煙処理してろ過し,残さは二硫酸ナトリウムで
融解してろ液に合わせる。二りん酸ナトリウムを添加し,炭酸ナトリウム又は塩酸で溶液のpHを調節し
電位差計を用いて過マンガン酸カリウム標準溶液で電位差滴定する。
5.2.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 塩酸(1+4)
c) 硝酸
d) 過塩素酸
e) ふっ化水素酸
f)
硫酸(1+1)
g) ニ硫酸ナトリウム
h) 炭酸ナトリウム溶液(50 g/L)
i)
ニりん酸ナトリウム溶液 二りん酸ナトリウム溶液十水和物120 gを水に溶解して1 000 mlとする。
この溶液は,24時間以内に使用する。
j)
20 mmol/L過マンガン酸カリウム標準溶液(3.161 gKMnO4/L) 調製,標定及び計算は,JIS K 8001
の4.5(滴定用溶液)(7)による。
5.2.3
装置及び器具 装置及び器具は,通常,次のものを用いる。
a) 電位差計 電位差計は,JIS K 0113の3.3.1(滴定終点検出器及び指示電極)による。pH計にmV表
示のあるものを使用してもよい。
b) 電極 電極は,白金―飽和カロメル,白金―タングステン又は白金―白金のいずれかの組合せを用い
る。
5.2.4
試料のはかり取り量 分析試料はかり取り量は,1.0 gとする。
5.2.5
操作
5.2.5.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製方法は,次の手順によって行う。
1) はかり取った試料(5.2.4)をビーカー(300 ml)に移し入れて時計皿で覆い,塩酸30 mlを加え,穏やか
に加熱分解する。これに硝酸 5 mlと過塩素酸10 mlとを加え,過塩素酸の蒸気がビーカーの内壁
を伝わって逆流する状態で約10分間加熱する。
2) 放冷した後,塩酸(1+4)20 mlを加え,加熱して可溶性塩類を溶解し,ろ紙(5種B)を用いてろ過
し,温水で7〜8回洗浄する。ろ液及び洗液は,ビーカー(500 ml)に集めて主液として保存する。
5
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3) 残さはろ紙とともに白金るつぼ(30番)に移し,徐々に加熱してろ紙を灰化する。放冷した後,
残さを硫酸(1+1)数滴で湿し,ふっ化水素酸5 mlを加え,穏やかに加熱して二酸化けい素及び硫酸
を揮散させる。放冷した後,二硫酸ナトリウム約2 gを加え,強熱して融解する。
4) 放冷した後,白金るつぼをビーカー(300 ml)に移し,水約30mlと塩酸(1+4)10 mlとを加え,加熱
して融成物を溶解し,白金るつぼを水で洗って取り出し,先の主液に合わせる。
5.2.5.2
滴定 5.2.5.1で得た溶液を室温まで冷却した後,250 mlの全量フラスコに移して水で標線まで薄
める。50 mlを分取し(1),ビーカー(500 ml)に移してかき混ぜながら二りん酸ナトリウム溶液[5.2.2 i]]
250 mlを加える。pH計を用いて炭酸ナトリウム溶液[5.2.2 h]]又は塩酸(1+4)でこの溶液のpHを6.5〜7.0
に調節する。電位差計を用いて20 mmol/L過マンガン酸カリウム標準溶液で滴定し,電位差の指示値の変
化が最大になる点を終点とする。
注(1) pHを調節した後,溶液に濁りが生じたときは,試料溶液の分取量を少なくして操作をやり直す。
5.2.6
空試験 分析試料だけを除いて5.2.5.1〜5.2.5.2の手順に従って操作する。
5.2.7
計算 試料中のマンガン含有率は,次の式によって算出する。
(
)
K
B
m
F
V
V
Mn
×
×
×
×
×
−
=
100
250
395
004
.0
2
1
ここに, Mn: 試料中のマンガン含有率[%(質量分率)]
V1: 5.2.5.2で得た20 mmol/L過マンガン酸カリウム標準溶液の使用量(ml)
V2: 5.2.6で得た20 mmol/L過マンガン酸カリウム標準溶液の使用量(ml)
F: 20 mmol/L過マンガン酸カリウム標準溶液のファクター
m:
B:
試料のはかり取り量(g)
試料溶液の分取量(ml)
K: 乾燥試料への換算係数。乾燥試料を使用した場合には,換算係数は乗
じない。
5.2.8
許容差 許容差は,表4による。
表 4 許容差
マンガン含有率
%(質量分率)
室内再現許容差
%(質量分率)
室間再現許容差
%(質量分率)
37以上 60未満
0.22
0.38
参考 表4中のマンガン含有率は,JIS Z 8402-1〜-6:1999に従って行った許容差を求めるための共同
実験に用いた試料中のマンガン含有率[%(質量分率)]である。
5.3
電位差滴定方法
5.3.1
要旨 塩酸,硝酸,過塩素酸及びふっ化水素酸で処理して試料を分解する。未分解残さを分離し,
ろ液を主液として保存する。残さを強熱して炭酸ナトリウムで融解し,融解物を塩酸で溶解して主液に合
わせる。その溶液の分取液を二りん酸ナトリウム溶液に加え,pHを7.0に調節して過マンガン酸カリウム
標準溶液で電位差滴定する。
5.3.2
反応 この方法は,二りん酸ナトリウムの存在において中性溶液中での過マンガン酸カリウムによ
るマンガン(Ⅱ)イオンのマンガン(Ⅲ)イオンへの酸化を基本とする。
4Mn2+ + MnO4- + 8H- 5Mn3+ + 4H2O
鉄及び他の妨害元素は,それらと結合した可溶性の二りん酸化合物になることによって隠ぺいされる。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.3.3
試薬
5.3.3.1
炭酸ナトリウム 無水
5.3.3.2
炭酸ナトリウム溶液(50 g/L)
5.3.3.3
二りん酸ナトリウム十水和物溶液(120 g/L) この溶液の調製は,24時間以上経過したものは
使用してはならない。
5.3.3.4
塩酸
5.3.3.5
塩酸(1+4)
5.3.3.6
ふっ化水素酸
5.3.3.7
過塩素酸
5.3.3.8
硝酸
5.3.3.9
過マンガン酸カリウム 純度99.5 %(質量分率)以上を再結晶したもの。
過マンガン酸カリウム[純度99.5%(質量分率)以上]250 gをビーカー(1 000 ml)に取り,熱水(約90 ℃)800
mlで溶解する。
溶液は,ガラスろ過器(G4)を付けた漏斗を用いて吸引ろ過する。ろ液を氷浴中で激しくかき混ぜなが
ら,10 ℃まで冷却する。静置して微細な沈殿を生成させる。次いで溶液を流し出し,結晶をガラスろ過器
(G4)を付けた漏斗に移し,吸引ろ過する。再結晶を繰り返す。
完全に吸引した後,得られた結晶をガラス製又は磁器製の皿に移し,ほこりから防護しながら,暗所で
空気乾燥する。結晶をガラス棒で突き崩したときに固着しなくなったら,80〜100 ℃の乾燥器で2〜3時間
乾燥した後,褐色ガラス瓶に移し入れる。
このようにして得られた過マンガン酸カリウムは,34.76%(質量分率)のマンガンを含み無水である。
備考 JIS K 8247に規定した純度99.3 %(質量分率)以上の過マンガン酸カリウムを用いても良い。
5.3.3.10 標準マンガン溶液 この溶液1 Lは,マンガン 1.000 gに相当する。
電解マンガン[純度99.95 %(質量分率)以上)]10 gをビーカー(400又は500 ml)に取る。水50 ml
及び硝酸(5.3.3.8)5 mlの混合物を加え,表面が輝くまで数分間放置する。処理したマンガンを水で6回,次
いでアセトンで洗浄し,100 ℃で10分間乾燥する。
処理した電解マンガン1.000 gをはかり取って,ビーカー(400又は500 ml)に移し入れ,硫酸(1+1)
20 ml及び水約100 mlを加える。溶液を数分間煮沸し,常温まで冷却して1 000 mlの全量フラスコに移し
入れ,水で標線まで薄めて混合する。
この標準溶液1 mlは,マンガン 1.000 mgを含む。
5.3.3.11 20 mmol/L 過マンガン酸カリウム標準溶液 純度99.5 %(質量分率)以上の過マンガン酸カリ
ウム(1)3.20gを水1 000 mlに溶解し,6日間静置する。次いで褐色ガラス瓶に移して混合する。標定方
法は,次のいずれかによる。
注(1) 5.3.3.9で規定した過マンガン酸カリウムを用いても良い。この場合, 5.3.3.11.2の標定は省略
できる。過マンガン酸カリウムの質量は,0.1 mgのけたまで読み取る。過マンガン酸カリウ
ム溶液のマンガン相当濃度ρ(Mn g/ml)を,次の式で計算する。
391
0.001
×
=
1
m
ρ
ここに,
ρ: 過マンガン酸カリウム溶液のマンガン相当濃度(Mn g/ml)
m1: 過マンガン酸カリウム(5.3.3.9)はかり取り量(g)
0.004395: 20 mmol/L過マンガン酸カリウム1mlのマンガン相当量(g)
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5.3.3.11.1 標準マンガン溶液(5.3.3.10)による標定 全量ピペットを用いて標準マンガン溶液(5.3.3.10)100
mlをビーカー(500〜800 ml)に移し,二りん酸ナトリウム(5.3.3.3)250 mlをかくはんしながら加える。塩酸
(5.3.3.5)で溶液のpHを7[pH計又はブロムチモールブルー指示薬(5.3.3.12)のいずれかを用いる。]に調節
し,pH計(5.3.4.1)を用いて電位差の指示値が最大振れを示すまで過マンガン酸カリウム溶液(5.3.3.11)で滴
定する。
標準マンガン溶液を除いて,空試験を行う。
過マンガン酸カリウム溶液のマンガン相当濃度ρ(Mn g/ml)は,次の式で計算する。
2
1
2
V
V
m
−
=
ρ
ここに,
ρ: 過マンガン酸カリウム溶液のマンガン相当濃度(Mn g/ml)
m2: 標準マンガン溶液(5.3.3.10)の分取液中のマンガンの質量(g)
V1: 標準マンガン溶液の滴定に使用した過マンガン酸カリウム溶液の容量(ml)
V2: 空試験溶液の滴定に使用した過マンガン酸カリウム溶液の容量(ml)
5.3.3.11.2 過マンガン酸カリウム(5.3.3.9)による標定 過マンガン酸カリウム(5.3.3.9)1.500 gを(250又は
300 ml)のふっ素樹脂製又はポリ四ふっ化エチレン製ビーカーに取り,水30〜40 mlを加え,全体を混合
する。塩酸(5.3.3.4)20 mlを加え,ビーカーを時計皿で覆って加熱する。反応が完了したとき,時計皿を洗
い,洗液をビーカーに移す。冷溶液に過塩素酸(5.3.3.7)10 ml及びふっ化水素酸(5.3.3.6)20 mlを加え,過塩
素酸の濃厚な白煙が発生するまで蒸発する。放冷した後,塩酸(5.3.3.5)20 mlを加え,溶液のピンクが消え
るまで加熱する。
放冷した後,溶液を500 mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄めて混合する。100 mlを分取し,
二りん酸ナトリウム溶液(5.3.3.3)250 mlの入っているビーカー(500〜800 ml)にかくはんを続けながら移し
入れる。塩酸(5.3.3.5)又は炭酸ナトリウム溶液(5.3.3.2)で溶液のpHを7[pH計又はブロムチモールブルー
指示薬(5.3.3.12)のいずれかを用いる。]に調節し,pH計(5.3.4.1)を用いて電位差の指示値が最大振れを示す
まで過マンガン酸カリウム溶液(5.3.3.11)で滴定する。
固体の過マンガン酸カリウムを除いて,空試験を行う。
過マンガン酸カリウムのマンガン相当濃度ρ(Mn g/ml)は,次の式で計算する。
4
3
3
6
347
.0
V
V
m
−
×
=
ρ
ここに,
ρ: 過マンガン酸カリウム溶液のマンガン相当濃度(Mn g/ml)
m3: 滴定のために分取した溶液中の過マンガン酸カリウムの質量(g)
V3: マンガンの滴定に使用した過マンガン酸カリウム溶液の容量(ml)
V4: 空試験溶液の滴定に使用した過マンガン酸カリウム溶液の容量(ml)
0.347 6: 過マンガン酸カリウムからマンガンへの換算係数
5.3.3.12 ブロムチモールブルー指示薬 0.4 g/L溶液
5.3.4
装置 通常の実験器具及び次のものを用いる。
5.3.4.1
pH計 次の電極対のうち一つを装備するもの
a) 電位差滴定のために
8
M 8232:2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
白金−飽和カロメル
白金−タングステン
白金−白金
b) pH測定のために
ガラス−銀−塩化銀
5.3.4.2
白金るつぼ (30番)
5.3.5
サンプリング マンガン鉱石のサンプリング及び試料調製は,JIS M 8108による。
5.3.6
操作
5.3.6.1
空試験 測定と併行して空試験を行う。
5.3.6.2
試験試料の分解 試料1.0 gをふっ素樹脂製又はポリ四ふっ化エチレンビーカー(250又は300 ml)
に取り,数滴の水で湿し,塩酸(5.3.3.4)20 ml及び硝酸(5.3.3.8)2〜3 mlを加え,窒素酸化物の煙が発生しな
くなるまで加熱し,放冷する。過塩素酸(5.3.3.7)10 mlを加え,最初は穏やかに次いで強く,試料が分解す
るまで加熱する。溶液を放冷する。ふっ化水素酸(5.3.3.6)10 mlを加え,濃厚な過塩素酸の白煙が発生する
まで加熱する。溶液を放冷した後,塩酸(5.3.3.5)20 mlを加え,塩を溶解する。未溶解残さを少量のろ紙パ
ルプを入れたろ紙(5種B)でろ過し,温水で10〜12回洗浄する。ろ液(A)を保存する。
5.3.6.3
残さの処理 残さの入っているろ紙を白金るつぼに入れて乾燥,強熱し,炭酸ナトリウム
(5.3.3.1)2 gで融解する。融解物の入っているるつぼを放冷し,ビーカー(250 ml)に入れ,塩酸(5.3.3.4)10 ml
及び水30〜40 mlを加え,加熱して融解物を溶解する。るつぼを取り出し,ビーカー中に水で洗い流す。
溶液を室温まで冷却し,それをろ液(A)に加え合わせる。
5.3.6.4
滴定 合わせた溶液を500 mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄めて混合する。
溶液を100 ml分取し,二りん酸ナトリウム溶液(5.3.3.3)250 mlの入っているビーカー(500〜800 ml)にか
くはんを続けながら移し入れる。
得られた溶液は,透明でなければならない。残さが生成した場合は,分取液の量を少なくするか又は二
りん酸ナトリウム溶液の量を多くしなければならない。
塩酸(5.3.3.5)又は炭酸ナトリウム溶液(5.3.3.2)で,溶液のpHを7[pH計又はブロムチモールブルー指示
薬(5.3.3.12)のいずれかを用いる。]に調節し,pH計(5.3.4.1)を用いて電位差の指示値が最大振れを示すまで
過マンガン酸カリウム溶液(5.3.3.11)で滴定する。
5.3.7
結果の表示
5.3.7.1
計算 マンガン含有率[%(質量分率)]は,次の式で計算する。
(
)
K
m
V
V
Mn
×
×
−
=
3
6
5
100
ρ
ここに, Mn: 試料中のマンガン含有率[%(質量分率)]
ρ: 過マンガン酸カリウム溶液(5.3.3.11)のマンガン相当濃度(Mn g/ml)
V5: 試料溶液の分取液の滴定に使用した過マンガン酸カリウム溶液
(5.3.3.11)の容量(ml)
V6: 空試験の滴定に使用した過マンガン酸カリウム溶液(5.3.3.11)の容量(ml)
m3: 試料溶液の分取液に相当する鉱石又は選鉱品の試験試料の質量(g)
K: 乾燥試料への換算係数。乾燥試料を使用した場合には,換算係数は乗じ
ない。
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M 8232:2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.3.7.2
許容差 併行測定結果の許容差は,表5に示す。
表 5 許容差
マンガン含有率
%(質量分率)
許容差
%(質量分率)
3回併行分析
2回併行分析
15以上 40未満
0.30
0.25
40以上 50未満
0.40
0.30
50以上
0.50
0.40
関連規格 JIS Z 8402-1 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第1部:一般的な原理及び定
義
JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第2部:標準測定方法の併行
精度及び再現精度を求めるための基本的方法
JIS Z 8402-3 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第3部:標準測定方法の中間
精度
JIS Z 8402-4 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第4部:標準測定方法の真度
を求めるための基本的方法
JIS Z 8402-5 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第5部:標準測定方法の精度
を求めるための代替法
JIS Z 8402-6 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第6部:精確さに関する値の
実用的な使い方
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附属書(参考)JISと対応する国際規格との対比表
JIS M 8232:2005 マンガン鉱石―マンガン定量方法
ISO 4289:1984,マンガン鉱石―マンガン定量方法―電位差滴定法
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ) 国際
規格番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異
の項目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線又は側線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術的差異の理由
及び今後の対策
項目
番号
内容
項目
番号
内容
項目ごと
の評価
技術的差異の内容
1.適用範
囲
マンガン鉱石中のマンガン
定量方法について規定。
ISO 4298
1適用範
囲
マンガン鉱石中のマ
ンガン含量の電位差
滴定方法による定量
方法について規定。
MOD/追加 ISO規格は,電位差滴
定方法に限定。JISは,
別の二つの定量方法
を追加している。
JISは,日本国内で広く使用されていて
JISとして必要な別の二つの定量方法
を追加。これらのISO規格への提案を
検討する。
2.引用規
格
JIS M 8108,
JIS M 8203
2引用規
格
ISO 4296-1,
ISO 4296-2,
ISO 4297
MOD/変更 JISからの引用事項
は,対応ISO規格の
該当事項と同等であ
る。
−
JIS K 0113,JIS K 8001
−
MOD/追加 −
定量方法の追加による。
3.一般事
項
JIS M 8203による
1適用範
囲
ISO 4297による。
MOD/変更 実質的に同じ。
4.定量方
法の種類
鉄分離過マンガン酸カリウ
ム滴定方法,過マンガン酸
カリウム滴定方法(電位差
滴定方法)及び電位差滴定
方法の3方法。
1適用範
囲
電位差滴定方法だけ
を規定。
MOD/追加
電位差滴定方法以外の定量方法につい
ては,ISO規格への提案を検討する。
5.マンガ
ン定量方
法
5.1
鉄分離過マンガン酸カリウ
ム滴定方法
−
−
MOD/追加
過マンガン酸カリウ
ムの紅色を利用する
目視滴定法を追加。
日本国内で広く使用されているため追
加。
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M 8232:2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ) 国際
規格番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異
の項目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線又は側線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術的差異の理由
及び今後の対策
項目
番号
内容
項目
番号
内容
項目ごと
の評価
技術的差異の内容
5.2
過マンガン酸カリウム滴定
方法(電位差滴定方法)
−
−
MOD/追加 原理的にISO規格と
同等であるが,試料分
解方法,器具,装置及
び許容差がわずかに
異なる。
日本国内で広く使用されていてため追
加。
5.3
電位差滴定方法
5.3.1
要旨
操作の概要(試料の酸分解,
未分解残さの処理,pH調
整,電位差滴定)を規定。
3原理
JISと同じ。
IDT
−
−
5.3.2
反応
この方法の反応式を規定。
4反応
JISに同じ。
IDT
−
−
5.3.3
試薬
使用試薬の種類を規定。
5試薬
JISと同じ。
IDT
−
−
試薬の調製方法を規定。
JISとほぼ同じ。
MOD/変更 過マンガン酸カリウ
ム調製時に使用する
焼結ガラスの種類が
異なる。
JISに規定の焼結ガラス板G4は,ISO
規格に規定のNo.3と同等である。
標準液の標定方法を規定
JISと同じ。
IDT
−
−
5.3.4
装置
通常の実験器具,pH計及び
白金るつぼ
6装置
JISと同じ。
IDT
−
−
5.3.5
サンプリ
ング
JIS M 8180による。
7サンプ
リング
ISO 4296/1及びISO
4296/2による。
MOD/変更 実質的に同じ。
5.3.6
操作
空試験,試験試料の分解,
残さの処理及び滴定につい
て規定。
8操作
JISとほぼ同じ。
MOD/変更 試験試料の分解時に
使用する,ろ紙の種類
が異なる。
JISで規定するろ紙(5種B)は,ISO
規格のろ紙(中程度)と同等である。
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M 8232:2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ) 国際
規格番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異
の項目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線又は側線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術的差異の理由
及び今後の対策
項目
番号
内容
項目
番号
内容
項目ごと
の評価
技術的差異の内容
5.3.7
結果の表示
計算及び許容差について
規定。
9結果の
表示
JISと同じ。
IDT
−
−
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:MOD
備考1. 項目ごとの評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
― IDT……………… 技術的差異がない。
― MOD/追加……… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
― MOD/変更……… 国際規格の規定内容を変更している。
2.
JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
― MOD…………… 国際規格を修正している。