2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
M 8213-1995
鉄鉱石−酸可溶性鉄 (II) 定量方法
Iron ores −Method for determination
of acid soluble iron (II) content
1. 適用範囲 この規格は,鉄鉱石中の酸可溶性鉄 (II) 定量方法について規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 8005 容量分析用標準物質
JIS M 8202 鉄鉱石−分析方法通則
2. この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 9035 : 1989 Iron ores−Determination of acid-soluble iron (II) content−Titrimetric method
2. 用語の定義 この規格でいう酸可溶性鉄 (II) とは,鉄鉱石に含まれるFe (II) 化合物(例えば,FeO,
Fe3O4, FeTO3)のうち,酸に可溶なものを指す。
3. 一般事項 定量方法に共通な一般事項は,JIS M 8202の規定による。
4. 定量方法 酸可溶性鉄 (II) の定量方法は,次による。
二クロム酸カリウム滴定法 この方法は,酸可溶性鉄 (II) 含有率1% (m/m) 以上30% (m/m) 以下の試料
に適用するもので,附属書による。ただし,金属鉄及びバナジウム (V) を含む試料には適用できない。
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附属書 二クロム酸カリウム滴定法
1. 要旨 試料を不活性ガス気流中で適切な酸によって分解し,硫酸とりん酸で酸濃度を調節し,ジフェ
ニルアミンスルホン酸ナトリウムを指示薬として二クロム酸カリウム標準溶液で滴定する。
2. 試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸 (1+1)
(2) ふっ化水素酸
(3) 硫酸 (1+1)
(4) りん酸 (1+1)
(5) 混酸(硫酸3, りん酸3, 水14)
(6) ほう酸溶液(飽和,約50g/l)
(7) 炭酸水素ナトリウム
(8) 不活性ガス 二酸化炭素,窒素又はアルゴンを3.(3)に示す洗浄装置を用いて清浄にした後,使用する。
(9) 塩化水銀 (II) 溶液(飽和,約50g/l)
(10) 0.016 67mol/l二クロム酸カリウム標準溶液 二クロム酸カリウム (JIS K 8005) 4.903gをはかり採り,
水約100mlに溶解して,1 000mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。この
場合は,標準試薬に表示されている純度をそのまま0.016 67mol/lに対する力価として用い,標定は行
わない。
(11) ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム溶液 ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム0.2gを少量の
水に溶解し,水で液量を100mlとする。この溶液は褐色瓶に入れて保存する。
3. 装置及び器具 装置及び器具は,原則として次のものを用いる。
(1) 分解フラスコ 三角フラスコ (500ml) に底部近くまで達するコック付き漏斗とガス排出口の付いた
栓をすり合わせて附属させたもの(付図1参照)。
(2) 簡易分解フラスコ(1) 安全孔を付けたフラスコ(付図2参照)。
注(1) 硫化物などを含まない試料の分解に用いることができる。
(3) 不活性ガス洗浄装置
(a) 二酸化炭素用 洗浄液[過マンガン酸カリウム溶液 (50g/l) 1,炭酸ナトリウム溶液 (100g/l) 1]を入
れたガス洗浄瓶と硫酸を入れたガス洗浄瓶を,この順序に連結したもの。
(b) 窒素又はアルゴン用 ピロガロール溶液を入れたガス洗浄瓶及びシリカゲルを入れたガス乾燥塔を
順次に連結したもの。ピロガロール溶液は,ピロガロール6gを水100mlに溶解し,これに水酸化
ナトリウム溶液 (20g/l) 100mlを窒素又はアルゴン気流中で加え,振り混ぜて調製する。
4. 試料はかり採り量 試料はかり採り量は,附属書表1による。
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附属書表1 試料はかり採り量
酸可溶性鉄 (II) 含有率
試料はかり採り量
% (m/m)
g
1以上15未満
1.0
15以上30以下
0.50
5. 操作
5.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次のいずれかによる。
(1) 普通鉄鉱石試料の場合
(a) はかり採った試料を分解フラスコ [3.(1)] (2)に移し入れ,栓をして分解フラスコ内の空気を不活性ガ
ス [2.(8)] で置換する(付図1参照)。このフラスコ内に,栓に付いているコック付き漏斗から塩酸
(1+1) を試料はかり採り量1.0gの場合は50ml, 0.50gの場合は30mlを注入し,不活性ガス [2.(8)] を
流しながらフラスコを加熱し,フラスコをときどき振り動かして試料を分解する。
(b) 未分解残さが多量に観察される場合(3)は,分解フラスコの栓を抜き,速やかにふっ化水素酸数滴を
滴下して再び栓をし,引き続き不活性ガス [2.(8)] を流しながらフラスコを加熱し,フラスコをと
きどき振り動かして試料を分解する。
(c) 試料の分解が終了したならば,加熱を止めて引き続き不活性ガス [2.(8)] を流しながら室温まで冷
却する。不活性ガスを止めて栓を抜き,コック付き漏斗の脚に付着している塩化鉄などを射水して
洗い落とす。
注(2) 試料中に金属鉄,有機物及び硫化物などを含有しない場合は,簡易分解フラスコ [3.(2)] を用い
ることができる。この場合は,次のように操作する。
はかり採った試料を簡易分解フラスコ [3.(2)] に移し入れ,炭酸水素ナトリウム5gを加え,
更に塩酸 (1+1) 50mlを徐々に加えて速やかに安全孔付き栓をし(付図2参照),フラスコをと
きどき振り動かしながら穏やかに加熱して試料を分解する。試料の分解が終了したならば,加
熱を止め,室温まで冷却して栓を抜き,水で洗浄する。
(3) 未分解残さが少ない場合は,(b)の手順を省略して直接(c)に続けて操作してもよい。
(2) 砂鉄などのようにチタン含有率が高い試料の場合 (1)の手順に従って操作するが,塩酸 (1+1) の代
わりに,試料のはかり採り量にかかわらずりん酸 (1+1) 30mlを使用する。
(3) 硫化物を含む試料の場合 (1)の手順に従って操作するが,塩酸 (1+1) の代わりに,試料のはかり採
り量にかかわらず塩化水銀 (II) 溶液(飽和,約50g/l)5ml及びりん酸 (1+1) 30mlを使用する(4)。
注(4) この場合,定量操作を終了した試料溶液中には,水銀塩を含有するので廃棄する際に注意する
必要がある。
5.2
滴定 5.1(1)で得た試料溶液に混酸 [2.(5)] 30ml(5)を加えて水で約300mlに薄め,ジフェニルアミン
スルホン酸ナトリウム溶液数滴を加え,直ちに0.016 67mol/l二クロム酸カリウム標準溶液 [2.(10)] で滴定
し,終点近くで溶液の緑が青緑に変わり,最後の1滴で紫に変わる点を終点とする。
注(5) 5.1(2)及び(3)を適用して試料溶液を調製した場合は,混酸 [2.(5)] 30mlの代わりに硫酸 (1+1)
5mlを加える。
6. 空試験 試料を用いないで,5.1〜5.2の手順に従って,試料と同じ操作を試料と併行して行う。
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7. 計算 計算は,次による。
(1) 酸可溶性鉄 (II) 含有率の計算 5.2及び6.で得た滴定量から試料中の酸可溶性鉄 (II) 含有率を,次の
式によって算出する。
()(
)
100
585
005
.0
2
1
×
×
−
=
m
V
V
FeⅡ
ここに,
Fe (II): 試料中の酸可溶性鉄 (II) 含有率 [% (m/m)]
V1: 試料溶液の滴定における0.017mol/l二クロム酸カリウム標
準溶液の使用量 (ml)
V2: 空試験液の滴定における0.017mol/l二クロム酸カリウム標
準溶液の使用量 (ml)
m: 試料はかり採り量 (g)
(2) 酸可溶性酸化鉄 (II) 含有率の計算 試料中の酸可溶性酸化鉄 (II) 含有率は,酸可溶性鉄 (II) 含有率
から次の式によって算出する。
FeO (II) =1.286×Fe (II)
ここに,
FeO (II): 試料中の酸可溶性酸化鉄 (II) 含有率 [% (m/m)]
Fe (II): (1)に同じ
8. 許容差 許容差は,附属書表2による。
附属書表2 許容差
単位% (m/m)
室内許容差
室間許容差
D (n) 〔0.002×[酸可溶性鉄 (II) 含有率]+0.038〕 D (n) 〔−0.0005×[酸可溶性鉄 (II) 含有率]+0.103〕
備考 n=2のとき,D (n) =2.8
参考 この許容差は,酸可溶性鉄 (II) 含有率2.50% (m/m) 以上20.89% (m/m) 以下の試料を用いて求
めたものである。
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附属書付図1 分解フラスコの一例
附属書付図2 簡易分解フラスコの一例
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社団法人日本鉄鋼協会 共同研究会鉄鋼分析部会化学分析分科会鉄鉱石分析方法JIS改正WG 構成表
氏名
所属
鉄鋼分析部会
(部会長)
佐 伯 正 夫
新日本製鉄株式会社
化学分析分科会
(主査)
岩 田 英 夫
日本鋼管株式会社
鉄鉱石JIS改正WG (リーダー)
岩 田 英 夫
日本鋼管株式会社
(直属幹事)
石 橋 耀 一
日本鋼管株式会社
(委員)
岡 野 輝 雄
川崎製鉄株式会社
杉 原 孝 志
川崎テクノリサーチ株式会社
中 川 孝
川崎テクノリサーチ株式会社
秋 窪 英 敏
合同製鐵株式会社
金 築 宏 治
株式会社神戸製鋼所
河 村 恒 夫
株式会社コベルコ科研
稲 本 勇
新日本製鐵株式会社
大 水 勝
新日本製鐵株式会社
笠 井 茂 夫
新日本製鐵株式会社
鈴 木 興 三
新日本製鐵株式会社
鈴 木 節 雄
新日本製鐵株式会社
土 屋 武 久
新日本製鐵株式会社
蔵 保 浩 文
住友金属工業株式会社
中 里 福 和
住友金属工業株式会社
西 野 和 美
住友金属工業株式会社
平 松 茂 人
住友金属工業株式会社
菅 野 清
株式会社中山製鋼所
西 田 宏
日新製鋼株式会社
小 倉 正 之
日本鋼管株式会社
船 曵 佳 弘
日本鋼管株式会社(酸可溶性鉄 (II) 担当)
大 槻 孝
社団法人日本鉄鋼協会
増 喜 浩 二
社団法人日本鉄鋼協会
上記委員会作成の原案を受けて,次に出す社団法人日本鉄鋼連盟 鉄鉱石分析標準化推進委員会原案検
討小委員会が最終案を作成した。
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社団法人日本鉄鋼連盟 鉄鉱石分析標準化推進委員会原案検討小委員会 構成表
氏名
所属
鉄鉱石分析標準化推進委員会
(委員長)
松 村 泰 治
川崎テクノリサーチ株式会社
原案検討小委員会
(委員長)
松 村 泰 治
川崎テクノリサーチ株式会社
(委員)
小 嶋 誠
工業技術院標準部材料規格課
藤 本 京 子
川崎製鉄株式会社
滝 沢 佳 郎
川崎テクノリサーチ株式会社
岡 山 和 生
合同製鐵株式会社
金 築 宏 治
株式会社神戸製鋼所
今 北 毅
株式会社コベルコ科研
西 埜 誠
株式会社島津製作所
笠 井 茂 夫
新日本製鐵株式会社
秦 浩一郎
新日本製鐵株式会社
鈴 木 節 雄
新日本製鐵株式会社
西 野 和 美
住友金属工業株式会社
松 本 義 朗
住友金属工業株式会社
原 田 幹 雄
株式会社中山製鋼所
藤 田 昇 平
日新製鋼株式会社
林 三 男
社団法人日本海事検定協会
石 橋 耀 一
日本鋼管株式会社
小 倉 正 之
日本鋼管株式会社
河 野 久 征
理学電機工業株式会社
大 槻 孝
社団法人日本鉄鋼協会
脊 戸 雄 功
社団法人日本鉄鋼連盟