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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

M 8132-1992 

鉱石中のひ素定量方法 

Ores−Methods for determination of arsenic 

1. 適用範囲 この規格は,鉱石中のひ素定量方法について規定する。ただし,他の日本工業規格でひ素

定量方法が規定されている鉱石には適用しない。 

備考 この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS K 0050 化学分析方法通則 

JIS K 0115 吸光光度分析通則 

JIS K 0121 原子吸光分析のための通則 

JIS K 8005 容量分析用標準物質 

JIS K 8012 亜鉛(試薬) 

JIS M 8083 ばら積み非鉄金属浮選精鉱のサンプリング方法 

JIS M 8101 非鉄金属鉱石のサンプリング,試料調製及び水分決定方法 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

2. 一般事項 定量方法に共通な一般事項は,JIS K 0050,JIS K 0115及びJIS K 0121による。 

3. 分析試料の採り方及び取扱い方 

3.1 

試料の採取と調製 試料の採取と調製は,JIS M 8101及びJIS M 8083による。 

3.2 

試料のはかり方 試料のはかり方は,次による。 

(1) 試料のはかり採りに際しては,試料をよくかき混ぜて平均組成を表すように注意し,また,異物が混

入していないことを確かめなければならない。 

(2) 試料は,105±5℃に調節されている空気浴に入れて乾燥し,2時間後に空気浴から取り出し,デシケ

ーター中で常温まで放冷する。乾燥減量が2時間につき0.1%以下になるまで操作を繰り返す。ただし,

硫化物などの含有のため変質しやすい試料の乾燥条件(温度,時間など)は,受渡当事者間の協議に

よる。 

(3) 試料のはかり採りには化学はかりを用いて,原則として規定された量を0.1mgのけたまではかり採る。 

4. 分析値の表し方及び操作上の注意 

4.1 

分析値の表し方 分析値の表し方は,次による。 

(1) 分析値は質量百分率で表し,JIS Z 8401によって,0.1%未満の場合は小数点以下第4位に,0.1%以上

の場合は小数点以下第3位に丸める。 

(2) 分析は同一分析室内において2回繰り返して行い,これらの差が室内許容差(以下,許容差という。)

未満のとき,その平均値を求め,JIS Z 8401によって,0.1%未満の場合は小数点以下第3位に,0.1%

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M 8132-1992  

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以上の場合は小数点以下第2位に丸める。 

(3) 2回繰り返して行った分析値の差が許容差以上のときは,改めて2回の分析をやり直す。 

(4) 許容差は,表1による。 

表1 許容差(1) 

単位 % 

定量方法 

区分 

許容差(繰返し) 

蒸留分離よう素滴定法 

0.5 

以上 5 

未満 

0.100 

以上  

0.200 

水酸化鉄共沈分離 
 原子吸光法 

0.1 

以上 0.5 未満 

0.025 

0.5 

以上 1 

未満 

0.030 

以上 5 

未満 

0.200 

水酸化鉄共沈分離 
 Ag・DDTC吸光光度法 

0.002 以上 0.02 未満 

0.002 0 

0.02 以上 0.2 未満 

0.020 0 

注(1) 2個の分析値が二つの区分にまたがるときは,2個の分析値の平

均値の該当する区分の許容差を適用する。 

4.2 

分析操作上の注意 分析に当たっては,全操作を通じて空試験を行い,測定値を補正する。 

5. 定量方法 

5.1 

定量方法の区分 鉱石中のひ素定量方法は,次のいずれかによる。 

(1) 蒸留分離よう素滴定法 この方法は,ひ素含有率0.5%以上の試料に適用する。 

(2) 水酸化鉄共沈分離原子吸光法 この方法は,ひ素含有率0.1%以上5%未満の試料に適用する。 

(3) 水酸化鉄共沈分離Ag・DDTC吸光光度法 この方法は,ひ素含有率0.002%以上0.2%未満の試料に適

用する。 

5.2 

蒸留分離よう素滴定法 

5.2.1 

要旨 試料を硝酸,臭化水素酸及び塩酸で分解し,硫酸を加え加熱して濃縮し,硫酸の白煙を発生

させる。塩酸を加えて溶解し,塩化ヒドラジニウム (2+) 及び臭化カリウムを加え,ひ素蒸留装置を用い

て蒸留する。留出液は,炭酸水素ナトリウムを加えて微アルカリ性とし,よう化カリウムを加え,でんぷ

んを指示薬としてよう素標準溶液で滴定する。 

5.2.2 

試薬 試薬は,次による。 

(1) 塩酸 

(2) 塩酸 (1+1) 

(3) 硝酸 

(4) ふっ化水素酸 

(5) 臭化水素酸 

(6) 硫酸 (1+1, 1+10) 

(7) 水酸化ナトリウム溶液 (500g/l) 

(8) 臭素 

(9) 炭酸水素ナトリウム 

(10) 臭化カリウム 

(11) よう化カリウム溶液 (100g/l)  この溶液は,使用の都度調製する。 

(12) 過マンガン酸カリウム溶液 (5g/l) 

(13) 塩化ヒドラジニウム (2+) (塩酸ヒドラジン) 

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(14) 硫酸ヒドラジニウム (2+) (硫酸ヒドラジン) 

(15) よう素標準溶液 よう素12.7gをよう化カリウム40gとともに水約25mlに溶解し,塩酸3滴を加え,

水で1 000mlとし,褐色瓶に移し入れ,保存する。この溶液1mlはひ素約0.003 7gに相当するが,標

定は次のように行う。 

JIS K 8005に規定する三酸化二ひ素0.15gを0.1mgのけたまではかり採り,ビーカー (300ml) に移

し入れ,水酸化ナトリウム溶液 (100g/l) 10mlを加え,加熱して溶解する。冷却後,フェノールフタレ

イン溶液2,3滴を指示薬として加え,溶液が無色になるまで硫酸 (1+10) を滴加し,水を加えて液

量を約150mlとし,炭酸水素ナトリウム約5gを加えて微アルカリ性とする。以下,5.2.5(7)の手順に

従って操作して滴定を行い,よう素標準溶液1mlに相当するひ素量を,次の式によって算出する。 

1

1

7574

.0

V

G

f

×

=

ここに, 

f1: よう素標準溶液1mlに相当するひ素量 (g) 

G: 三酸化二ひ素はかり採り量 (g) 

V1: よう素標準溶液の使用量 (ml) 

0.757 4: 三酸化二ひ素1gに相当するひ素量 (g) 

(16) 臭素酸カリウム標準溶液 臭素酸カリウム2.78gを水に溶解して1 000mlとする。この溶液1mlは,

ひ素約0.003 7gに相当するが,標定は次のように行う。 

三酸化二ひ素0.15gを0.1mgのけたまではかり採り,ビーカー (300ml) に移し入れ,水酸化ナトリ

ウム溶液 (100g/l) 10mlを加え,加熱して溶解する。冷却後,塩酸 (1+1) 100mlを加え,以下,注(6)

の手順に従って操作して滴定を行い,臭素酸カリウム標準溶液1mlに相当するひ素量を,次の式によ

って算出する。 

2

2

7574

.0

V

G

f

×

=

ここに, 

f2: 臭素酸カリウム標準溶液1mlに相当するひ素量 (g) 

G: 三酸化二ひ素はかり採り量 (g) 

V2: 臭素酸カリウム標準溶液の使用量 (ml) 

0.757 4: 三酸化二ひ素1gに相当するひ素量 (g) 

(17) でんぷん溶液 でんぷん(溶性)1gに少量の水を加えて十分に振り混ぜ,約500mlの熱水中にかき混

ぜながら少量ずつ注入し,約1分間煮沸した後,放冷する。この溶液は,使用の都度調製する。 

(18) メチルオレンジ溶液 (1g/l) 

(19) フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン0.1gをエタノール (95) 90mlに溶解した後,水で

100mlとする。 

5.2.3 

装置 装置は,次による。 

ひ素蒸留装置 図1に装置の一例を示す。 

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図1 ひ素蒸留装置(一例) 

5.2.4 

試料はかり採り量 試料はかり採り量は,原則として表2による。 

表2 試料はかり採り量 

ひ素含有率 

試料はかり採り量 

0.5 以上5未満 

以上 

0.3〜0.5(2) 

注(2) 試料は,ひ素量が150mgを超え

ないようにはかり採る。 

5.2.5 

操作 定量操作は,次の手順によって行う。 

(1) 試料をはかり採り,ビーカー (200〜300ml) に移し入れ,時計皿で覆い,硝酸13ml,臭化水素酸10ml

及び塩酸20mlを加え(3),穏やかに加熱して分解する。 

(2) 硫酸 (1+1) 10〜20mlを加え,加熱して濃縮し,硫酸の白煙を十分に発生させ,硝酸を除去する。室

温まで放冷後,塩酸 (1+1) 40mlを加え,穏やかに加熱して可溶性塩を溶解する(4)。 

(3) この溶液を冷却した後,ひ素蒸留装置の蒸留フラスコに移し入れ,塩酸60mlを2,3回に分けてビー

カーを洗浄し,蒸留フラスコの主液に合わせる。 

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(4) 塩化ヒドラジニウム (2+) 1g(5)及び臭化カリウム2gを加えた後,留出液の受器に水約100mlを加え,

冷却管の先端がこの中に浸るように蒸留装置を組み立てる。 

(5) 穏やかに蒸留フラスコを加熱し,約40分で留出液70〜80mlを採取する。 

(6) 留出液にフェノールフタレイン溶液2,3滴を指示薬として加え,冷却しながら溶液が紅色になるまで

水酸化ナトリウム溶液を加える。次に,溶液が無色になるまで硫酸 (1+10) を滴加した後,炭酸水素

ナトリウム10gを加え,十分かき混ぜる。 

(7) よう化カリウム溶液3〜5mlを加えた後,でんぷん溶液5mlを指示薬として加え,よう素標準溶液で

滴定し(6),溶液が無色から青紫色に変わった点を終点とする。 

注(3) 臭化水素酸の代わりに臭素を用いることができる。この場合,硝酸7ml,臭素3ml及び塩酸20ml

を加え,穏やかに加熱して分解する。 

(4) 残さ中にひ素が含まれる場合は,ろ紙(5種B)を用いてビーカー (500ml) にろ過し,温水で

十分に洗浄した後,少量の水を用いて残さをポリ四ふっ化エチレンビーカー (200ml) に洗い移

す。硝酸5ml,過マンガン酸カリウム溶液1ml,ふっ化水素酸3〜5ml及び硫酸 (1+1) 1mlを加

え,加熱して二酸化けい素を揮散させ,硫酸の白煙を発生させる。放冷後,水約10ml及び塩酸 

(1+1) 5mlを加えて,可溶性塩を溶解し,主液に合わせ,加熱して濃縮し,硫酸の白煙を発生

させる。放冷後,塩酸 (1+1) 40mlを加え,穏やかに加熱して可溶性塩を溶解した後,(3)以降

の手順に従う。 

(5) 塩化ヒドラジニウム (2+) 1gの代わりに硫酸ヒドラジニウム (2+) 1gを用いることができる。 

(6) ひ素の滴定には,臭素酸カリウム標準溶液を用いることができる。この場合の滴定操作は,次

による。(5)で得られた留出液を約80℃に加温し,メチルオレンジ溶液1滴を指示薬として加え,

臭素酸カリウム標準溶液を用いて滴定する。赤色が薄くなったところで,さらにメチルオレン

ジ溶液1滴を加えて滴定を続け,溶液が黄色又は無色に変わった点を終点とする。試料中のひ

素含有率を,次の式によって算出する。 

100

2

4

×

×

=

m

f

V

As

ここに, V4: 臭素酸カリウム標準溶液の使用量 (ml) 
 

f2: 臭素酸カリウム標準溶液1mlに相当するひ素量 (g) 

m: 試料はかり採り量 (g) 

As: ひ素(質量%) 

5.2.6 

計算 試料中のひ素含有率を,次の式によって算出する。 

100

1

3

×

×

=

m

f

V

As

ここに, V3: よう素標準溶液の使用量 (ml) 
 

f1: よう素標準溶液1mlに相当するひ素量 (g) 

m: 試料はかり採り量 (g) 

As: ひ素(質量%) 

5.3 

水酸化鉄共沈分離原子吸光法 

5.3.1 

要旨 試料を硝酸,臭化水素酸及び塩酸で分解し,硫酸を加え加熱して濃縮し,硫酸の白煙を発生

させる。塩酸を加えて溶解した後,塩化鉄 (III) 及びアンモニア水を加え,ひ素を水酸化鉄 (III) と共沈さ

せ,こし分ける。沈殿は塩酸に溶解した後,水で一定量に薄め,原子吸光光度計を用いて吸光度を測定す

る。 

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5.3.2 

試薬 試薬は,次による。 

(1) 塩酸 

(2) 塩酸 (1+1, 1+2) 

(3) 硝酸 

(4) ふっ化水素酸 

(5) 臭化水素酸 

(6) 硫酸 (1+1) 

(7) アンモニア水 

(8) アンモニア水 (1+99) 

(9) 臭素 

(10) 塩化アンモニウム 

(11) 塩化鉄 (III) 溶液 塩化鉄 (III) (六水和物)48.4gを塩酸 (1+100) に溶解して1 000mlとする。この

溶液1mlは,約10mgの鉄を含む。塩化鉄 (III) (六水和物)は,ひ素の含有率0.000 05%以下のもの

を用いる。 

(12) 過マンガン酸カリウム溶液 (5g/l) 

(13) 標準ひ素溶液 (0.2mgAs/ml)  三酸化二ひ素0.264gをはかり採り,ビーカー (500ml) に移し入れ,水

酸化ナトリウム溶液 (100g/l) 10mlを加え,加熱して溶解する。水約300mlを加えた後,5.2.2(19)によ

って調製したフェノールフタレイン溶液2,3滴を指示薬として加え,硫酸 (1+10) を滴加し,溶液

が無色になったら更に2,3滴を加えて微酸性とする。臭素水(飽和)を溶液がわずかに黄色を呈する

まで加えた後,加熱して過剰の臭素を追い出す。放冷後,1 000mlの全量フラスコに移し入れ,水で

標線まで薄める。 

5.3.3 

試料はかり採り量 試料はかり採り量は,原則として表3による。 

表3 試料はかり採り量 

ひ素含有率 

試料はかり採り量 

0.1 以上1未満 

0.5 

1 以上5未満 

0.1 

5.3.4 

操作 定量操作は,次の手順によって行う。 

(1) 試料をはかり採り,ビーカー (300ml) に移し入れ,時計皿で覆い,硝酸13ml,臭化水素酸10ml及び

塩酸20mlを加え(3),穏やかに加熱して分解する。 

(2) 硫酸 (1+1) 10mlを加え,加熱して濃縮し,硫酸の白煙を十分に発生させる。室温まで放冷後,塩酸 (1

+2) 30mlを加え,穏やかに加熱して可溶性塩を溶解する。ろ紙(5種B)を用いてろ過し,残さは温

水で十分洗浄する(7)。ろ液及び洗液はビーカー (500ml) に受け,水を加えて液量を約150mlとする。 

(3) この溶液に塩化アンモニウム5gを加え,かくはんして溶解した後,塩化鉄 (III) 溶液を加え(8),かき

混ぜながらアンモニア水を加え,水酸化鉄 (III) の沈殿が出始めたらさらに5mlを加え,加熱して数

分間煮沸する。直ちに沈殿をろ紙(5種A)を用いてこし分け,温アンモニア水 (1+99) で数回洗浄

した後,温水で元のビーカー (500ml) に洗い移す。ろ紙上から塩酸 (1+1) 10mlを少量ずつ加えて,

水酸化物の沈殿を溶解した後,ろ紙を温水で十分に洗浄する。この溶液は,沈殿を洗い移した元のビ

ーカー (500ml) に受け,穏やかに加熱して沈殿を溶解する。 

(4) 室温まで冷却した後,100mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(5) この溶液の一部を採り(9),原子吸光光度計の酸化二窒素−アセチレンフレーム(10)中に噴霧し,波長

193.7nm又は197.2nmの吸光度を測定する。 

注(7) 残さ中にひ素が含まれる場合は,少量の水を用いて残さをポリ四ふっ化エチレンビーカー(例

えば,100ml)に洗い移す。硝酸5ml,過マンガン酸カリウム溶液1ml,ふっ化水素酸3〜5ml及

び硫酸 (1+1) 1mlを加え,加熱して二酸化けい素を揮散させ,硫酸の白煙を発生させる。放冷

後,水約10ml及び塩酸 (1+1) 5mlを加えて可溶性塩を溶解し,主液に合わせる。 

(8) 塩化鉄 (III) 溶液の添加量は,はかり採った試料中に含まれる鉄量と加える鉄量の合計が150mg

になるようにする。はかり採った試料中に含まれる鉄量が150mg以上の場合は,塩化鉄 (III) 溶

液は添加しない。空試験には,塩化鉄 (III) 溶液15mlを添加する。 

(9) 溶液中に塩化鉛の結晶が析出した場合,又は浮遊物が認められた場合は,溶液の一部を乾いた

ろ紙(5種A)でろ過し,ろ液を用いる。 

(10) アセチレン−空気フレームを用いてもよい。 

5.3.5 

計算 5.3.6で作成した検量線からひ素量を求め,試料中のひ素含有率を,次の式によって算出する。 

100

×

=mA

As

ここに, 

A: 試料溶液中のひ素検出量 (g) 

m: 試料はかり採り量 (g) 

As: ひ素(質量%) 

5.3.6 

検量線の作成 あらかじめ塩酸 (1+1) 10ml及び塩化鉄 (III) 溶液15ml(11)を加えた数個の100ml

全量フラスコに,ひ素標準液の各種液量(ひ素として0〜5mg)を段階的に加え,水で標線まで薄める。

以下,5.3.4(5)の手順に従って試料と同様に操作し,試料と並行して測定した吸光度とひ素量との関係線を

作成し,原点に平行移動して検量線とする。 

注(11) はかり採った試料中の鉄量が150mg以上の場合は,その鉄量と同量になるように塩化鉄 (III) 溶

液を加える。 

5.4 

水酸化鉄共沈分離Ag・DDTC吸光光度法 

5.4.1 

要旨 試料を硝酸,臭化水素酸及び塩酸で分解し,硫酸を加え加熱して濃縮し,硫酸の白煙を発生

させる。塩酸を加えて溶解した後,塩化鉄 (III) 及びアンモニア水を加え,ひ素を水酸化鉄 (III) と共沈さ

せ,こし分ける。沈殿は塩酸に溶解した後,水で一定量に薄め,その一部を採り,ひ素を三水素化ひ素と

して気化させる。これをAg・DDTCのクロロホルム溶液に吸収させ,その吸光度を測定する。 

5.4.2 

試薬 試薬は,次による。 

(1) 塩酸 

(2) 塩酸 (1+1, 1+2) 

(3) 硝酸 

(4) ふっ化水素酸 

(5) 臭化水素酸 

(6) 硫酸 (1+1) 

(7) アンモニア水 

(8) アンモニア水 (1+99) 

(9) 臭素 

(10) 亜鉛 JIS K 8012のひ素分析用(砂状) 

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(11) 塩化アンモニウム 

(12) 塩化すず (II) 溶液 塩化すず (II) (二水和物)40gを塩酸に溶解し,塩酸で100mlとする。小粒のす

ず2,3個を加えて褐色瓶に保存する。使用時に水で10倍に薄める。 

(13) 塩化鉄 (III) 溶液 5.3.2(11)による。 

(14) よう化カリウム溶液 (200g/l)  この溶液は,使用の都度調製する。 

(15) 過マンガン酸カリウム溶液 (5g/l) 

(16) L−アスコルビン酸 

(17) 酢酸鉛溶液 酢酸鉛(三水和物)12gを酢酸1,2滴と水に溶解して100mlとする。 

(18) 吸収液A ジエチルジチオカルバミン酸銀 (Ag・DDTC) 0.25gとブルシン(二水和物)0.1gにクロロホ

ルム100mlを加え,よくかき混ぜて溶解し,褐色瓶に保存する。溶解中にクロロホルムが揮散したと

きは,クロロホルムを加え,100mlとする。 

(19) 吸収液B Ag・DDTC0.5gとピリジン100mlを加え,よくかき混ぜて溶解し,褐色瓶に保存する。 

(20) クロロホルム 

(21) ピリジン 

(22) 標準ひ素溶液 (0.001mgAs/ml)  三酸化二ひ素0.132gをはかり採り,ビーカー (500ml) に移し入れ,

水酸化ナトリウム溶液 (100g/l) 10mlを加え,加熱して溶解する。水約300mlを加えた後,5.2.2(19)に

よって調製したフェノールフタレイン溶液2,3滴を指示薬として加え,溶液が無色になるまで硫酸 (1

+10) を滴加し,1 000mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄めて原液とする。この原液を使

用の都度,必要量だけ水で正確に100倍に希釈して標準ひ素溶液とする。 

5.4.3 

装置 図2に三水素化ひ素発生吸収装置の一例を示す。 

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図2 三水素化ひ素発生吸収装置(一例) 

5.4.4 

試料はかり採り量 試料はかり採り量は,原則として表4による。 

表4 試料はかり採り量 

ひ素含有率 

試料はかり採り量 

0.002 以上 0.02 未満 

0.5 

0.02 以上 0.2 未満 

0.2 

5.4.5 

操作 定量操作は,次の手順による。 

(1) 5.3.4(1)〜(4)の手順に従って操作する。 

(2) この溶液の一部を分取し(12),三水素化ひ素発生瓶に移し入れ,塩酸 (1+1) 2ml,硫酸 (1+1) 6ml及び

水を加えて液量を約40mlとする。 

(3) L−アスコルビン酸1gを加え,かくはんし,2〜3分間静置した後,よう化カリウム溶液15ml及び塩

化すず (II) 溶液8mlを加えて振り混ぜ,15〜25℃の水中に約10分間放置する。 

(4) 三水素化ひ素発生瓶に亜鉛約3gを投入した後,三水素化ひ素発生瓶,導管及び吸収液A(13)10mlを入

れた三水素化ひ素吸収管を手早く連結する。三水素化ひ素発生瓶を15〜25℃の水中に浸したまま,約

1時間放置して吸収液Aに三水素化ひ素を吸収させる。 

(5) 吸収液にクロロホルムを加えて正確に10mlとし,この溶液の一部を吸光光度計の吸収セルに採り,

クロロホルムを対照液として波長510nm付近の吸光度を測定する。 

注(12) 分取量は,ひ素1〜20μg相当量とする。 

(13) 吸収液Aの代わりに吸収液Bを用いることができる。この場合の操作は,次による。(1)で得ら

れた試料溶液から,ひ素として1〜15μg相当量を分取し,三水素化ひ素発生瓶に移し入れ,塩

酸 (1+1) 2ml,硫酸 (1+1) 6ml及び水を加えて液量を約40mlとする。L−アスコルビン酸1g

10 

M 8132-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

を加え,かくはんし,2〜3分間静置した後,よう化カリウム溶液15ml及び塩化すず (II) 溶液

8mlを加えて振り混ぜ,15〜25℃の水中に約10分間放置する。三水素化ひ素発生瓶に亜鉛約3g

を投入した後,三水素化ひ素発生瓶,導管及び吸収液B5mlを入れた三水素化ひ素吸収管を手

早く連結する。三水素化ひ素発生瓶を15〜25℃の水中に浸したまま,約1時間放置して吸収液

Bに三水素化ひ素を吸収させる。この溶液の一部を吸光光度計の吸収セルに採り,ピリジンを

対照液として波長530nm付近の吸光度を測定する。作成した検量線からひ素量を求め,5.4.6に

よって試料中のひ素含有率を算出する。 

検量線の作成は,次による。 

あらかじめ塩化鉄 (III) 溶液3mlを加えた数個の三水素化ひ素発生瓶に,ひ素標準液の各種

液量(ひ素として0〜15μg)を段階的に加える。塩酸 (1+1) 2ml,硫酸 (1+1) 6ml及び水を加

えて液量を約40mlとし,以下,上記手順に従って試料と同様に操作し,試料と並行して測定し

た吸光度とひ素量との関係線を作成し,検量線とする。 

5.4.6 

計算 5.4.7で作成した検量線からひ素量を求め,試料中のひ素含有率を,次の式によって算出す

る。 

100

×

×

=

B

m

A

As

ここに, 

A: 分取した試料溶液中のひ素検出量 (g) 

m: 試料はかり採り量 (g) 

B: 試料溶液の分取比 

As: ひ素(質量%) 

5.4.7 

検量線の作成 あらかじめ塩化鉄 (III) 溶液3mlを加えた数個の三水素化ひ素発生瓶に,標準ひ素

溶液の各種液量(ひ素として0〜20μg)を段階的に加え,塩酸 (1+1) 2ml,硫酸 (1+1) 6ml及び水を加え

て液量を約40mlとする。以下,5.4.5(3)〜(5)の手順に従って試料と同様に操作し,試料と並行して測定し

た吸光度とひ素量との関係線を作成し,検量線とする。 

11 

M 8132-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

鉱石中のひ素定量方法改正原案作成委員会 構成表(50音順) 

氏名 

所属 

(委員長) 

斉   加実彦 

東洋大学 

飯 田 隆 俊 

東邦亜鉛株式会社 

稲 垣 勝 彦 

日本鉱業協会 

岩 田 晶 夫 

住友金属鉱山株式会社 

小 林 昭 左 

三井金属鉱業株式会社 

高 木 俊 毅 

資源エネルギー庁 

束 原   巌 

古河電気工業株式会社 

中 村   靖 

日本鉱業株式会社 

橋 爪   昉 

三井金属鉱業株式会社 

藤 田 富 雄 

工業技術院標準部 

藤 貫   正 

工業技術院地質調査所 

前 川   泱 

大蔵省造幣局 

山 本 泰 一 

同和鉱業株式会社 

渡 辺 隆 夫 

三菱金属株式会社 

審議参加者氏名 

所属 

奥 泉 洋 一 

資源エネルギー庁 

久 米   均 

工業技術院標準部 

渋 谷 敏 和 

住友金属鉱山株式会社 

芹 田 吉 実 

同和鉱業株式会社 

能 登 善 徳 

日本鉱業株式会社 

野々口 桂 介 

住友金属鉱山株式会社 

野 村 絋 一 

三菱金属株式会社 

保 坂 駒 雄 

資源エネルギー庁 

村 井 幸 雄 

日本鉱業株式会社 

渡 部 武 雄 

三井金属鉱業株式会社