2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
M 8132-1992
鉱石中のひ素定量方法
Ores−Methods for determination of arsenic
1. 適用範囲 この規格は,鉱石中のひ素定量方法について規定する。ただし,他の日本工業規格でひ素
定量方法が規定されている鉱石には適用しない。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0115 吸光光度分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析のための通則
JIS K 8005 容量分析用標準物質
JIS K 8012 亜鉛(試薬)
JIS M 8083 ばら積み非鉄金属浮選精鉱のサンプリング方法
JIS M 8101 非鉄金属鉱石のサンプリング,試料調製及び水分決定方法
JIS Z 8401 数値の丸め方
2. 一般事項 定量方法に共通な一般事項は,JIS K 0050,JIS K 0115及びJIS K 0121による。
3. 分析試料の採り方及び取扱い方
3.1
試料の採取と調製 試料の採取と調製は,JIS M 8101及びJIS M 8083による。
3.2
試料のはかり方 試料のはかり方は,次による。
(1) 試料のはかり採りに際しては,試料をよくかき混ぜて平均組成を表すように注意し,また,異物が混
入していないことを確かめなければならない。
(2) 試料は,105±5℃に調節されている空気浴に入れて乾燥し,2時間後に空気浴から取り出し,デシケ
ーター中で常温まで放冷する。乾燥減量が2時間につき0.1%以下になるまで操作を繰り返す。ただし,
硫化物などの含有のため変質しやすい試料の乾燥条件(温度,時間など)は,受渡当事者間の協議に
よる。
(3) 試料のはかり採りには化学はかりを用いて,原則として規定された量を0.1mgのけたまではかり採る。
4. 分析値の表し方及び操作上の注意
4.1
分析値の表し方 分析値の表し方は,次による。
(1) 分析値は質量百分率で表し,JIS Z 8401によって,0.1%未満の場合は小数点以下第4位に,0.1%以上
の場合は小数点以下第3位に丸める。
(2) 分析は同一分析室内において2回繰り返して行い,これらの差が室内許容差(以下,許容差という。)
未満のとき,その平均値を求め,JIS Z 8401によって,0.1%未満の場合は小数点以下第3位に,0.1%
2
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以上の場合は小数点以下第2位に丸める。
(3) 2回繰り返して行った分析値の差が許容差以上のときは,改めて2回の分析をやり直す。
(4) 許容差は,表1による。
表1 許容差(1)
単位 %
定量方法
区分
許容差(繰返し)
蒸留分離よう素滴定法
0.5
以上 5
未満
0.100
5
以上
0.200
水酸化鉄共沈分離
原子吸光法
0.1
以上 0.5 未満
0.025
0.5
以上 1
未満
0.030
1
以上 5
未満
0.200
水酸化鉄共沈分離
Ag・DDTC吸光光度法
0.002 以上 0.02 未満
0.002 0
0.02 以上 0.2 未満
0.020 0
注(1) 2個の分析値が二つの区分にまたがるときは,2個の分析値の平
均値の該当する区分の許容差を適用する。
4.2
分析操作上の注意 分析に当たっては,全操作を通じて空試験を行い,測定値を補正する。
5. 定量方法
5.1
定量方法の区分 鉱石中のひ素定量方法は,次のいずれかによる。
(1) 蒸留分離よう素滴定法 この方法は,ひ素含有率0.5%以上の試料に適用する。
(2) 水酸化鉄共沈分離原子吸光法 この方法は,ひ素含有率0.1%以上5%未満の試料に適用する。
(3) 水酸化鉄共沈分離Ag・DDTC吸光光度法 この方法は,ひ素含有率0.002%以上0.2%未満の試料に適
用する。
5.2
蒸留分離よう素滴定法
5.2.1
要旨 試料を硝酸,臭化水素酸及び塩酸で分解し,硫酸を加え加熱して濃縮し,硫酸の白煙を発生
させる。塩酸を加えて溶解し,塩化ヒドラジニウム (2+) 及び臭化カリウムを加え,ひ素蒸留装置を用い
て蒸留する。留出液は,炭酸水素ナトリウムを加えて微アルカリ性とし,よう化カリウムを加え,でんぷ
んを指示薬としてよう素標準溶液で滴定する。
5.2.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) 塩酸 (1+1)
(3) 硝酸
(4) ふっ化水素酸
(5) 臭化水素酸
(6) 硫酸 (1+1, 1+10)
(7) 水酸化ナトリウム溶液 (500g/l)
(8) 臭素
(9) 炭酸水素ナトリウム
(10) 臭化カリウム
(11) よう化カリウム溶液 (100g/l) この溶液は,使用の都度調製する。
(12) 過マンガン酸カリウム溶液 (5g/l)
(13) 塩化ヒドラジニウム (2+) (塩酸ヒドラジン)
3
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(14) 硫酸ヒドラジニウム (2+) (硫酸ヒドラジン)
(15) よう素標準溶液 よう素12.7gをよう化カリウム40gとともに水約25mlに溶解し,塩酸3滴を加え,
水で1 000mlとし,褐色瓶に移し入れ,保存する。この溶液1mlはひ素約0.003 7gに相当するが,標
定は次のように行う。
JIS K 8005に規定する三酸化二ひ素0.15gを0.1mgのけたまではかり採り,ビーカー (300ml) に移
し入れ,水酸化ナトリウム溶液 (100g/l) 10mlを加え,加熱して溶解する。冷却後,フェノールフタレ
イン溶液2,3滴を指示薬として加え,溶液が無色になるまで硫酸 (1+10) を滴加し,水を加えて液
量を約150mlとし,炭酸水素ナトリウム約5gを加えて微アルカリ性とする。以下,5.2.5(7)の手順に
従って操作して滴定を行い,よう素標準溶液1mlに相当するひ素量を,次の式によって算出する。
1
1
7574
.0
V
G
f
×
=
ここに,
f1: よう素標準溶液1mlに相当するひ素量 (g)
G: 三酸化二ひ素はかり採り量 (g)
V1: よう素標準溶液の使用量 (ml)
0.757 4: 三酸化二ひ素1gに相当するひ素量 (g)
(16) 臭素酸カリウム標準溶液 臭素酸カリウム2.78gを水に溶解して1 000mlとする。この溶液1mlは,
ひ素約0.003 7gに相当するが,標定は次のように行う。
三酸化二ひ素0.15gを0.1mgのけたまではかり採り,ビーカー (300ml) に移し入れ,水酸化ナトリ
ウム溶液 (100g/l) 10mlを加え,加熱して溶解する。冷却後,塩酸 (1+1) 100mlを加え,以下,注(6)
の手順に従って操作して滴定を行い,臭素酸カリウム標準溶液1mlに相当するひ素量を,次の式によ
って算出する。
2
2
7574
.0
V
G
f
×
=
ここに,
f2: 臭素酸カリウム標準溶液1mlに相当するひ素量 (g)
G: 三酸化二ひ素はかり採り量 (g)
V2: 臭素酸カリウム標準溶液の使用量 (ml)
0.757 4: 三酸化二ひ素1gに相当するひ素量 (g)
(17) でんぷん溶液 でんぷん(溶性)1gに少量の水を加えて十分に振り混ぜ,約500mlの熱水中にかき混
ぜながら少量ずつ注入し,約1分間煮沸した後,放冷する。この溶液は,使用の都度調製する。
(18) メチルオレンジ溶液 (1g/l)
(19) フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン0.1gをエタノール (95) 90mlに溶解した後,水で
100mlとする。
5.2.3
装置 装置は,次による。
ひ素蒸留装置 図1に装置の一例を示す。
4
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図1 ひ素蒸留装置(一例)
5.2.4
試料はかり採り量 試料はかり採り量は,原則として表2による。
表2 試料はかり採り量
ひ素含有率
%
試料はかり採り量
g
0.5 以上5未満
1
5
以上
0.3〜0.5(2)
注(2) 試料は,ひ素量が150mgを超え
ないようにはかり採る。
5.2.5
操作 定量操作は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり採り,ビーカー (200〜300ml) に移し入れ,時計皿で覆い,硝酸13ml,臭化水素酸10ml
及び塩酸20mlを加え(3),穏やかに加熱して分解する。
(2) 硫酸 (1+1) 10〜20mlを加え,加熱して濃縮し,硫酸の白煙を十分に発生させ,硝酸を除去する。室
温まで放冷後,塩酸 (1+1) 40mlを加え,穏やかに加熱して可溶性塩を溶解する(4)。
(3) この溶液を冷却した後,ひ素蒸留装置の蒸留フラスコに移し入れ,塩酸60mlを2,3回に分けてビー
カーを洗浄し,蒸留フラスコの主液に合わせる。
5
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(4) 塩化ヒドラジニウム (2+) 1g(5)及び臭化カリウム2gを加えた後,留出液の受器に水約100mlを加え,
冷却管の先端がこの中に浸るように蒸留装置を組み立てる。
(5) 穏やかに蒸留フラスコを加熱し,約40分で留出液70〜80mlを採取する。
(6) 留出液にフェノールフタレイン溶液2,3滴を指示薬として加え,冷却しながら溶液が紅色になるまで
水酸化ナトリウム溶液を加える。次に,溶液が無色になるまで硫酸 (1+10) を滴加した後,炭酸水素
ナトリウム10gを加え,十分かき混ぜる。
(7) よう化カリウム溶液3〜5mlを加えた後,でんぷん溶液5mlを指示薬として加え,よう素標準溶液で
滴定し(6),溶液が無色から青紫色に変わった点を終点とする。
注(3) 臭化水素酸の代わりに臭素を用いることができる。この場合,硝酸7ml,臭素3ml及び塩酸20ml
を加え,穏やかに加熱して分解する。
(4) 残さ中にひ素が含まれる場合は,ろ紙(5種B)を用いてビーカー (500ml) にろ過し,温水で
十分に洗浄した後,少量の水を用いて残さをポリ四ふっ化エチレンビーカー (200ml) に洗い移
す。硝酸5ml,過マンガン酸カリウム溶液1ml,ふっ化水素酸3〜5ml及び硫酸 (1+1) 1mlを加
え,加熱して二酸化けい素を揮散させ,硫酸の白煙を発生させる。放冷後,水約10ml及び塩酸
(1+1) 5mlを加えて,可溶性塩を溶解し,主液に合わせ,加熱して濃縮し,硫酸の白煙を発生
させる。放冷後,塩酸 (1+1) 40mlを加え,穏やかに加熱して可溶性塩を溶解した後,(3)以降
の手順に従う。
(5) 塩化ヒドラジニウム (2+) 1gの代わりに硫酸ヒドラジニウム (2+) 1gを用いることができる。
(6) ひ素の滴定には,臭素酸カリウム標準溶液を用いることができる。この場合の滴定操作は,次
による。(5)で得られた留出液を約80℃に加温し,メチルオレンジ溶液1滴を指示薬として加え,
臭素酸カリウム標準溶液を用いて滴定する。赤色が薄くなったところで,さらにメチルオレン
ジ溶液1滴を加えて滴定を続け,溶液が黄色又は無色に変わった点を終点とする。試料中のひ
素含有率を,次の式によって算出する。
100
2
4
×
×
=
m
f
V
As
ここに, V4: 臭素酸カリウム標準溶液の使用量 (ml)
f2: 臭素酸カリウム標準溶液1mlに相当するひ素量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
As: ひ素(質量%)
5.2.6
計算 試料中のひ素含有率を,次の式によって算出する。
100
1
3
×
×
=
m
f
V
As
ここに, V3: よう素標準溶液の使用量 (ml)
f1: よう素標準溶液1mlに相当するひ素量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
As: ひ素(質量%)
5.3
水酸化鉄共沈分離原子吸光法
5.3.1
要旨 試料を硝酸,臭化水素酸及び塩酸で分解し,硫酸を加え加熱して濃縮し,硫酸の白煙を発生
させる。塩酸を加えて溶解した後,塩化鉄 (III) 及びアンモニア水を加え,ひ素を水酸化鉄 (III) と共沈さ
せ,こし分ける。沈殿は塩酸に溶解した後,水で一定量に薄め,原子吸光光度計を用いて吸光度を測定す
る。
6
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5.3.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) 塩酸 (1+1, 1+2)
(3) 硝酸
(4) ふっ化水素酸
(5) 臭化水素酸
(6) 硫酸 (1+1)
(7) アンモニア水
(8) アンモニア水 (1+99)
(9) 臭素
(10) 塩化アンモニウム
(11) 塩化鉄 (III) 溶液 塩化鉄 (III) (六水和物)48.4gを塩酸 (1+100) に溶解して1 000mlとする。この
溶液1mlは,約10mgの鉄を含む。塩化鉄 (III) (六水和物)は,ひ素の含有率0.000 05%以下のもの
を用いる。
(12) 過マンガン酸カリウム溶液 (5g/l)
(13) 標準ひ素溶液 (0.2mgAs/ml) 三酸化二ひ素0.264gをはかり採り,ビーカー (500ml) に移し入れ,水
酸化ナトリウム溶液 (100g/l) 10mlを加え,加熱して溶解する。水約300mlを加えた後,5.2.2(19)によ
って調製したフェノールフタレイン溶液2,3滴を指示薬として加え,硫酸 (1+10) を滴加し,溶液
が無色になったら更に2,3滴を加えて微酸性とする。臭素水(飽和)を溶液がわずかに黄色を呈する
まで加えた後,加熱して過剰の臭素を追い出す。放冷後,1 000mlの全量フラスコに移し入れ,水で
標線まで薄める。
5.3.3
試料はかり採り量 試料はかり採り量は,原則として表3による。
表3 試料はかり採り量
ひ素含有率
%
試料はかり採り量
g
0.1 以上1未満
0.5
1 以上5未満
0.1
5.3.4
操作 定量操作は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり採り,ビーカー (300ml) に移し入れ,時計皿で覆い,硝酸13ml,臭化水素酸10ml及び
塩酸20mlを加え(3),穏やかに加熱して分解する。
(2) 硫酸 (1+1) 10mlを加え,加熱して濃縮し,硫酸の白煙を十分に発生させる。室温まで放冷後,塩酸 (1
+2) 30mlを加え,穏やかに加熱して可溶性塩を溶解する。ろ紙(5種B)を用いてろ過し,残さは温
水で十分洗浄する(7)。ろ液及び洗液はビーカー (500ml) に受け,水を加えて液量を約150mlとする。
(3) この溶液に塩化アンモニウム5gを加え,かくはんして溶解した後,塩化鉄 (III) 溶液を加え(8),かき
混ぜながらアンモニア水を加え,水酸化鉄 (III) の沈殿が出始めたらさらに5mlを加え,加熱して数
分間煮沸する。直ちに沈殿をろ紙(5種A)を用いてこし分け,温アンモニア水 (1+99) で数回洗浄
した後,温水で元のビーカー (500ml) に洗い移す。ろ紙上から塩酸 (1+1) 10mlを少量ずつ加えて,
水酸化物の沈殿を溶解した後,ろ紙を温水で十分に洗浄する。この溶液は,沈殿を洗い移した元のビ
ーカー (500ml) に受け,穏やかに加熱して沈殿を溶解する。
(4) 室温まで冷却した後,100mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。
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(5) この溶液の一部を採り(9),原子吸光光度計の酸化二窒素−アセチレンフレーム(10)中に噴霧し,波長
193.7nm又は197.2nmの吸光度を測定する。
注(7) 残さ中にひ素が含まれる場合は,少量の水を用いて残さをポリ四ふっ化エチレンビーカー(例
えば,100ml)に洗い移す。硝酸5ml,過マンガン酸カリウム溶液1ml,ふっ化水素酸3〜5ml及
び硫酸 (1+1) 1mlを加え,加熱して二酸化けい素を揮散させ,硫酸の白煙を発生させる。放冷
後,水約10ml及び塩酸 (1+1) 5mlを加えて可溶性塩を溶解し,主液に合わせる。
(8) 塩化鉄 (III) 溶液の添加量は,はかり採った試料中に含まれる鉄量と加える鉄量の合計が150mg
になるようにする。はかり採った試料中に含まれる鉄量が150mg以上の場合は,塩化鉄 (III) 溶
液は添加しない。空試験には,塩化鉄 (III) 溶液15mlを添加する。
(9) 溶液中に塩化鉛の結晶が析出した場合,又は浮遊物が認められた場合は,溶液の一部を乾いた
ろ紙(5種A)でろ過し,ろ液を用いる。
(10) アセチレン−空気フレームを用いてもよい。
5.3.5
計算 5.3.6で作成した検量線からひ素量を求め,試料中のひ素含有率を,次の式によって算出する。
100
×
=mA
As
ここに,
A: 試料溶液中のひ素検出量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
As: ひ素(質量%)
5.3.6
検量線の作成 あらかじめ塩酸 (1+1) 10ml及び塩化鉄 (III) 溶液15ml(11)を加えた数個の100ml
全量フラスコに,ひ素標準液の各種液量(ひ素として0〜5mg)を段階的に加え,水で標線まで薄める。
以下,5.3.4(5)の手順に従って試料と同様に操作し,試料と並行して測定した吸光度とひ素量との関係線を
作成し,原点に平行移動して検量線とする。
注(11) はかり採った試料中の鉄量が150mg以上の場合は,その鉄量と同量になるように塩化鉄 (III) 溶
液を加える。
5.4
水酸化鉄共沈分離Ag・DDTC吸光光度法
5.4.1
要旨 試料を硝酸,臭化水素酸及び塩酸で分解し,硫酸を加え加熱して濃縮し,硫酸の白煙を発生
させる。塩酸を加えて溶解した後,塩化鉄 (III) 及びアンモニア水を加え,ひ素を水酸化鉄 (III) と共沈さ
せ,こし分ける。沈殿は塩酸に溶解した後,水で一定量に薄め,その一部を採り,ひ素を三水素化ひ素と
して気化させる。これをAg・DDTCのクロロホルム溶液に吸収させ,その吸光度を測定する。
5.4.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) 塩酸 (1+1, 1+2)
(3) 硝酸
(4) ふっ化水素酸
(5) 臭化水素酸
(6) 硫酸 (1+1)
(7) アンモニア水
(8) アンモニア水 (1+99)
(9) 臭素
(10) 亜鉛 JIS K 8012のひ素分析用(砂状)
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(11) 塩化アンモニウム
(12) 塩化すず (II) 溶液 塩化すず (II) (二水和物)40gを塩酸に溶解し,塩酸で100mlとする。小粒のす
ず2,3個を加えて褐色瓶に保存する。使用時に水で10倍に薄める。
(13) 塩化鉄 (III) 溶液 5.3.2(11)による。
(14) よう化カリウム溶液 (200g/l) この溶液は,使用の都度調製する。
(15) 過マンガン酸カリウム溶液 (5g/l)
(16) L−アスコルビン酸
(17) 酢酸鉛溶液 酢酸鉛(三水和物)12gを酢酸1,2滴と水に溶解して100mlとする。
(18) 吸収液A ジエチルジチオカルバミン酸銀 (Ag・DDTC) 0.25gとブルシン(二水和物)0.1gにクロロホ
ルム100mlを加え,よくかき混ぜて溶解し,褐色瓶に保存する。溶解中にクロロホルムが揮散したと
きは,クロロホルムを加え,100mlとする。
(19) 吸収液B Ag・DDTC0.5gとピリジン100mlを加え,よくかき混ぜて溶解し,褐色瓶に保存する。
(20) クロロホルム
(21) ピリジン
(22) 標準ひ素溶液 (0.001mgAs/ml) 三酸化二ひ素0.132gをはかり採り,ビーカー (500ml) に移し入れ,
水酸化ナトリウム溶液 (100g/l) 10mlを加え,加熱して溶解する。水約300mlを加えた後,5.2.2(19)に
よって調製したフェノールフタレイン溶液2,3滴を指示薬として加え,溶液が無色になるまで硫酸 (1
+10) を滴加し,1 000mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄めて原液とする。この原液を使
用の都度,必要量だけ水で正確に100倍に希釈して標準ひ素溶液とする。
5.4.3
装置 図2に三水素化ひ素発生吸収装置の一例を示す。
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図2 三水素化ひ素発生吸収装置(一例)
5.4.4
試料はかり採り量 試料はかり採り量は,原則として表4による。
表4 試料はかり採り量
ひ素含有率
%
試料はかり採り量
g
0.002 以上 0.02 未満
0.5
0.02 以上 0.2 未満
0.2
5.4.5
操作 定量操作は,次の手順による。
(1) 5.3.4(1)〜(4)の手順に従って操作する。
(2) この溶液の一部を分取し(12),三水素化ひ素発生瓶に移し入れ,塩酸 (1+1) 2ml,硫酸 (1+1) 6ml及び
水を加えて液量を約40mlとする。
(3) L−アスコルビン酸1gを加え,かくはんし,2〜3分間静置した後,よう化カリウム溶液15ml及び塩
化すず (II) 溶液8mlを加えて振り混ぜ,15〜25℃の水中に約10分間放置する。
(4) 三水素化ひ素発生瓶に亜鉛約3gを投入した後,三水素化ひ素発生瓶,導管及び吸収液A(13)10mlを入
れた三水素化ひ素吸収管を手早く連結する。三水素化ひ素発生瓶を15〜25℃の水中に浸したまま,約
1時間放置して吸収液Aに三水素化ひ素を吸収させる。
(5) 吸収液にクロロホルムを加えて正確に10mlとし,この溶液の一部を吸光光度計の吸収セルに採り,
クロロホルムを対照液として波長510nm付近の吸光度を測定する。
注(12) 分取量は,ひ素1〜20μg相当量とする。
(13) 吸収液Aの代わりに吸収液Bを用いることができる。この場合の操作は,次による。(1)で得ら
れた試料溶液から,ひ素として1〜15μg相当量を分取し,三水素化ひ素発生瓶に移し入れ,塩
酸 (1+1) 2ml,硫酸 (1+1) 6ml及び水を加えて液量を約40mlとする。L−アスコルビン酸1g
10
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を加え,かくはんし,2〜3分間静置した後,よう化カリウム溶液15ml及び塩化すず (II) 溶液
8mlを加えて振り混ぜ,15〜25℃の水中に約10分間放置する。三水素化ひ素発生瓶に亜鉛約3g
を投入した後,三水素化ひ素発生瓶,導管及び吸収液B5mlを入れた三水素化ひ素吸収管を手
早く連結する。三水素化ひ素発生瓶を15〜25℃の水中に浸したまま,約1時間放置して吸収液
Bに三水素化ひ素を吸収させる。この溶液の一部を吸光光度計の吸収セルに採り,ピリジンを
対照液として波長530nm付近の吸光度を測定する。作成した検量線からひ素量を求め,5.4.6に
よって試料中のひ素含有率を算出する。
検量線の作成は,次による。
あらかじめ塩化鉄 (III) 溶液3mlを加えた数個の三水素化ひ素発生瓶に,ひ素標準液の各種
液量(ひ素として0〜15μg)を段階的に加える。塩酸 (1+1) 2ml,硫酸 (1+1) 6ml及び水を加
えて液量を約40mlとし,以下,上記手順に従って試料と同様に操作し,試料と並行して測定し
た吸光度とひ素量との関係線を作成し,検量線とする。
5.4.6
計算 5.4.7で作成した検量線からひ素量を求め,試料中のひ素含有率を,次の式によって算出す
る。
100
×
×
=
B
m
A
As
ここに,
A: 分取した試料溶液中のひ素検出量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
B: 試料溶液の分取比
As: ひ素(質量%)
5.4.7
検量線の作成 あらかじめ塩化鉄 (III) 溶液3mlを加えた数個の三水素化ひ素発生瓶に,標準ひ素
溶液の各種液量(ひ素として0〜20μg)を段階的に加え,塩酸 (1+1) 2ml,硫酸 (1+1) 6ml及び水を加え
て液量を約40mlとする。以下,5.4.5(3)〜(5)の手順に従って試料と同様に操作し,試料と並行して測定し
た吸光度とひ素量との関係線を作成し,検量線とする。
11
M 8132-1992
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
鉱石中のひ素定量方法改正原案作成委員会 構成表(50音順)
氏名
所属
(委員長)
斉 加実彦
東洋大学
飯 田 隆 俊
東邦亜鉛株式会社
稲 垣 勝 彦
日本鉱業協会
岩 田 晶 夫
住友金属鉱山株式会社
小 林 昭 左
三井金属鉱業株式会社
高 木 俊 毅
資源エネルギー庁
束 原 巌
古河電気工業株式会社
中 村 靖
日本鉱業株式会社
橋 爪 昉
三井金属鉱業株式会社
藤 田 富 雄
工業技術院標準部
藤 貫 正
工業技術院地質調査所
前 川 泱
大蔵省造幣局
山 本 泰 一
同和鉱業株式会社
渡 辺 隆 夫
三菱金属株式会社
審議参加者氏名
所属
奥 泉 洋 一
資源エネルギー庁
久 米 均
工業技術院標準部
渋 谷 敏 和
住友金属鉱山株式会社
芹 田 吉 実
同和鉱業株式会社
能 登 善 徳
日本鉱業株式会社
野々口 桂 介
住友金属鉱山株式会社
野 村 絋 一
三菱金属株式会社
保 坂 駒 雄
資源エネルギー庁
村 井 幸 雄
日本鉱業株式会社
渡 部 武 雄
三井金属鉱業株式会社