2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
M 8130-1996
鉱石中のアンチモン定量方法
Methods for determination of antimony in ores
1. 適用範囲 この規格は,鉱石中のアンチモン定量方法について規定する。ただし,他の日本工業規格
でアンチモン定量方法が規定されている鉱石には適用しない。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0116 発光分光分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS M 8083 ばら積み非鉄金属浮選精鉱のサンプリング方法
JIS M 8101 非鉄金属鉱石のサンプリング,試料調製及び水分決定方法
JIS M 8132 鉱石中のひ素定量方法
JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8402 分析・試験の許容差通則
2. 一般事項 定量方法に共通な一般事項は,JIS K 0050,JIS K 0116及びJIS K 0121の規定による。
3. 分析試料の採り方及び取扱い方
3.1
試料の採取及び調製 試料の採取及び調製は,JIS M 8083又はJIS M 8101の規定による。
3.2
試料の取扱い方 試料の取扱い方は,次による。
(1) 試料のはかり採りに際しては,試料をよくかき混ぜて平均組成を表すように注意し,また,異物が混
入していないことを確かめなければならない。
(2) 試料は,105±5℃に調節されている空気浴に入れて乾燥し,2時間ごとに空気浴から取り出し,デシ
ケータ中で常温まで放冷する。乾燥は,乾燥減量が2時間につき0.1% (m/m) 以下になるまで繰り返
す。ただし,変質しやすい試料の乾燥条件(温度,時間など)は,受渡当事者間の協議による。
(3) 試料のはかり採りには,原則として化学はかりを用いて規定された量を0.1mgのけたまではかり採る。
4. 分析値の表し方及び操作上の注意
4.1
分析値の表し方 分析値の表し方は,次による。
(1) 分析値は,質量百分率で表し,JIS Z 8401の規定によって小数点以下第3位(1)に丸める。
(2) 分析は,同一分析室において2回繰り返し行い,これらの差が室内再現許容差以下のときは,その平
均値を求め,JIS Z 8401の規定によって小数点以下第2位(1)に丸めて報告値とする。
2
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(3) 2回繰り返して行った分析値の差が室内再現許容差を超えるときは,JIS Z 8402の6.4.2(適用方式A)
の規定による。
(4) 許容差は,表1による。
注(1) 誘導結合プラズマ発光分光法及び水酸化鉄共沈分離誘導結合プラズマ発光分光法でアンチモン
含有率1% (m/m) 未満の試料を定量したときは,分析値を小数点以下第4位に丸める。この場合,
平均値は小数点以下第3位に丸めて報告値とする。
表1 許容差(2)
単位 % (m/m)
定量方法
区分
室内再現許容差
硫化アンチモン沈殿分離過マ
ンガン酸カリウム滴定法
1 以上 10未満
0.150
10以上 40未満
0.200
40以上 70以下
0.300
過マンガン酸カリウム滴定法
50以上 70以下
0.250
水酸化鉄共沈分離原子吸光法
0.01以上 0.2未満
0.010
0.2 以上 1 未満
0.020
1 以上 5 以下
0.100
誘導結合プラズマ発光分光法 0.002以上 0.2未満
0.010
0.2 以上 1 未満
0.020
1 以上 5 以下
0.100
水酸化鉄共沈分離誘導結合プ
ラズマ発光分光法
0.002以上 0.2未満
0.010
0.2 以上 1 未満
0.020
1 以上 5 以下
0.100
注(2) 2個の分析値が二つの区分にまたがるときは,2個の分析値の平均
値の該当する区分の許容差を適用する。
4.2
分析操作上の注意 分析に当たっては,全操作を通じて空試験を行い,測定値を補正する。
5. 定量方法の区分 鉱石中のアンチモン定量方法は,次のいずれかによる。
(1) 硫化アンチモン沈殿分離過マンガン酸カリウム滴定法 この方法は,アンチモン含有率1% (m/m) 以
上70% (m/m) 以下の試料に適用する。
(2) 過マンガン酸カリウム滴定法 この方法は,アンチモン含有率50% (m/m) 以上70% (m/m) 以下では
かり採った試料中の銅が0.1mg以下,クロム,チタン,バナジウム,モリブデン及びタングステンの
合計量が1mg以下の試料に適用する。
(3) 水酸化鉄共沈分離原子吸光法 この方法は,アンチモン含有率0.01% (m/m) 以上5% (m/m) 以下の試
料に適用する。
(4) 誘導結合プラズマ発光分光法 この方法は,アンチモン含有率0.002% (m/m) 以上5% (m/m) 以下の試
料に適用する。
(5) 水酸化鉄共沈分離誘導結合プラズマ発光分光法 この方法は,アンチモン含有率0.002% (m/m) 以上
5% (m/m) 以下の試料に適用する。
6. 硫化アンチモン沈殿分離過マンガン酸カリウム滴定法
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6.1
要旨 試料を硝酸と硫酸とで分解し,加熱して硫酸の白煙を発生させた後,ろ紙片を加えて加熱し,
ひ素及びアンチモンを還元する。塩類を水と塩酸とで溶解した後,硫化水素を通じて硫化ひ素などを沈殿
させ,ろ過する。ろ液に水を加えて塩酸濃度を調整した後,再び硫化水素を通じて硫化アンチモンを沈殿
させ,ろ過する。沈殿は硫酸で溶解し,ろ紙片を加え加熱して硫酸の白煙を発生させ,更に強熱してアン
チモンを還元する。水,塩酸及び亜硫酸水を加えて加熱し,一部酸化したアンチモンを還元するとともに,
過剰の亜硫酸を除去する。空気を吹き込んで,一部還元した銅を酸化した後,過マンガン酸カリウム標準
溶液で滴定する。
6.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) 塩酸 (3+2,1+1)
(3) 硝酸
(4) 硫酸 (1+1)
(5) 水酸化ナトリウム溶液 (10g/l)
(6) 亜硫酸水(飽和)
(7) 硫化水素
(8) 硫化水素水(飽和)
(9) 硫化水素洗浄液 硫酸 (1+20) に硫化水素を通じて飽和させる。
(10) 硫化ナトリウム溶液 硫化水素水(飽和)250mlに水酸化ナトリウム溶液 (200g/l) 50mlを加える。
(11) 硫化ナトリウム洗浄液 硫化ナトリウム溶液を水で50倍に薄める。
(12) 硫酸カリウム
(13) 0.02mol/l過マンガン酸カリウム標準溶液 調製及び保存方法は,JIS K 8001の4.5(7)による。この溶
液1mlはアンチモン約0.006gに相当するが,標定は次のようにして行う。
アンチモン[99.99% (m/m) 以上]0.2gを0.1mgのけたまではかり採り,ビーカー (400ml) に移し
入れ,硫酸20mlを加え強熱して分解し,ビーカーの内壁などに遊離した硫黄を認めなくなるまで強
熱を続ける。放冷後,水50〜60mlを加えた後,塩酸 (1+1) 30mlを加え,かき混ぜた後,温水で液量
を約200mlとし,加熱して二,三分間穏やかに煮沸する。以下,6.4.3(3)の手順に従って操作して滴定
を行い,過マンガン酸カリウム標準溶液1mlに相当するアンチモン量を,次の式によって算出する。
V
G
f=
ここに,
f: 過マンガン酸カリウム標準溶液1mlのアンチモン相当量 (g)
G: アンチモンはかり採り量 (g)
V: 過マンガン酸カリウム標準溶液の使用量 (ml)
6.3
試料はかり採り量 試料のはかり採り量は,アンチモンの含有率に応じて表2による。
表2 試料はかり採り量
アンチモン含有率
% (m/m)
試料はかり採り量
g
1以上 10未満
1
10以上 40未満
0.6
40以上 70以下
0.3〜0.4
6.4
操作
6.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
4
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(1) 試料をはかり採り,ビーカー (200〜300ml) に移し入れ,硝酸10〜15mlを加え,時計皿で覆い,穏や
かに加熱して分解する。激しい反応が終わった後,硫酸 (1+1) 40ml及び硫酸カリウム約3gを加え,
引き続き加熱して,硫酸の白煙を十分に発生させる(3)。
(2) 次いで,ろ紙の小片(4)を加え,加熱を続けて,溶液の色が無色となるまで強熱する。
(3) 放冷後,水30mlで時計皿の下面及びビーカー内壁を洗い時計皿を取り除き,塩酸50mlを加え,かき
混ぜて可溶性塩を溶解する(5)。
注(3) 硝酸が残存すると,以後の操作でアンチモンの還元が不十分となる。
(4) ろ紙の小片は,ひ素及びアンチモンを還元するために加えるもので,通常径9cmのろ紙(5種
B) (JIS P 3801) の81〜161を細くちぎって用いる。
(5) 硫化水素によるひ素とアンチモンの分離には,一定の塩酸濃度を必要とする。この溶液の塩酸
と水との容量比は,原則として3 : 2とする。
6.4.2
アンチモンの分離 アンチモンの分離は,次のいずれかによる。
6.4.2.1
試料中の銅及び/又はカドミウムの含有率が少ない場合
(1) 6.4.1(3)で得た溶液に硫化水素ガスを激しく通じて飽和させ,ひ素,大部分の銅などを硫化物として沈
殿させる。静置して沈殿を沈降させた後,あらかじめ塩酸 (1+1) で洗浄したろ紙(5種B)(6)を用い
てろ過し,塩酸 (1+1) で十分に洗浄して(7)(8),ろ液及び洗液はビーカー (800ml) に受ける。
(2) ろ液及び洗液は,熱水を加えて液量を約600ml(9)とし,液温を70〜80℃に保ちながら硫化水素を十分
飽和するまで通じ,硫化アンチモンを沈殿させる。温所に約1時間静置して沈殿を熟成させた後,ろ
紙(5種B)を用いてろ過し,温硫化水素洗浄液 [6.2(9)] で十分に洗浄する。
(3) ろ紙上の沈殿は,温水でビーカー (400ml) に洗い移す。ろ紙上に残った沈殿は,水酸化ナトリウム溶
液を滴加して溶解し温水で洗浄する。溶解液及び洗液は,元のビーカー (800ml) に受け,振り混ぜて
ビーカー壁に付着している沈殿を溶解した後,水を用いて主沈殿を洗い移したビーカー (400ml) に合
わせる。
注(6) ろ紙(5種B)は漏斗に取り付けた後,塩酸 (1+1) で洗浄しておく。
また,ろ過時間を短縮するために,次のパルプろ過器を用いることができる。
ガラス製漏斗に有孔磁製板を取り付け,ろ紙(5種B)を用いて作ったろ紙パルプ液を注ぎ入
れて図1に示すとおりとし,これに塩酸 (3+2) を注ぎ入れて,磁製板より下に泡が存在しない
ように塩酸 (3+2) を満たした状態で用いる。
5
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図1 パルプろ過器の例
(7) 洗浄の終了は,最後の洗液の一部を取り,約5倍量の硫化水素水を加え,硫化アンチモンが生
成しないことによって確認する。ただし,このとき硫化アンチモンが生成した検液は,主液に
合わせる。
(8) この沈殿及び残物中にアンチモンが含まれる場合は,8.の水酸化鉄共沈分離原子吸光法,9.の誘
導結合プラズマ発光分光法又は10.の水酸化鉄共沈分離誘導結合プラズマ発光分光法によって
沈殿中のアンチモン量を求め補正する。
(9) 熱水の添加量は,少なくともろ液及び洗液の合量の4倍量とする。この際,熱水の代わりに熱
硫化水素水を加えてもよい。この場合には,硫化水素ガスを通じる操作を省略することができ
る。
6.4.2.2
試料中の銅及び/又はカドミウムの含有率が多い場合
(1) 6.4.2.1(1)及び(2)による。
(2) ろ紙上の沈殿は,温水で元のビーカー (800ml) に洗い移し,温硫化ナトリウム溶液 [6.2(10)] 100ml
を加え水で液量を約200mlとした後,約30分間約80℃に加熱して硫化アンチモンを溶解する。
(3) 元のろ紙を用いてろ過し,温硫化ナトリウム洗浄液 [6.2.(11)] で十分洗浄し,ろ液及び洗液はビーカ
ー (800ml) に受ける(10)。
(4) 塩酸 (1+1) を加えて中和し,更に過剰に50mlを加えた後,温水で液量を400mlとし,硫化水素を激
しく通じて飽和させ,硫化アンチモンを沈殿させる。温所に約1時間静置して沈殿を熟成させた後,
ろ紙(5種B)を用いてろ過し,温硫化水素洗浄液 [6.2(9)] で十分に洗浄する。
(5) 以下6.4.2.1(3)による。
注(10) ろ紙上に残った沈殿中にアンチモンが含まれる場合は,8.の水酸化鉄共沈分離原子吸光法,9.
の誘導結合プラズマ発光分光法又は10.の水酸化鉄共沈分離誘導結合プラズマ発光分光法によ
って沈殿中のアンチモン量を求め補正する。
なお,注(8)の操作を行う場合は,両方の沈殿及び残さを合わせて操作してもよい。
6.4.3
アンチモンの滴定
(1) 6.4.2.1(3)又は6.4.2.2(5)で得た溶液に硫酸 (1+1) 30〜40ml及びろ紙の小片(11)を加え,加熱して硫酸の
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白煙を十分に発生させ,溶液の色が無色になるまで強熱する。
(2) 放冷後,水50〜60mlを加えた後,塩酸 (1+1) 30mlを加え,かき混ぜた後,亜硫酸水50mlを加え,
温水で液量を約200mlとし,少量の沸石を入れ加熱して約20分間穏やかに煮沸を続け,亜硫酸ガス
を除去する。
(3) 流水中で冷却し,この溶液に約10分間空気を吹き込んだ後,過マンガン酸カリウム標準溶液 [6.2(13)]
を用いて滴定し,溶液の色が赤紫に変わった点を終点とする。
注(11) ろ紙の小片は,通常径9cmのろ紙(5種B)の約321を細くちぎって用いる。
6.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
6.6
計算 試料中のアンチモン含有率を,次の式によって算出する。
100
)
(
2
1
×
×
−
=
m
f
V
V
Sb
ここに, Sb: アンチモン含有率 [% (m/m)]
V1: 6.4.3(3)で得た過マンガン酸カリウム標準溶液使用量 (ml)
V2: 6.5で得た過マンガン酸カリウム標準溶液使用量 (ml)
f: 過マンガン酸カリウム標準溶液1mlのアンチモン相当量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
7. 過マンガン酸カリウム滴定法
7.1
要旨 試料を硝酸と硫酸とで分解し,加熱して濃縮し硫酸の白煙を発生させる。ろ紙片を加えて再
び加熱し,アンチモン及びひ素を還元する。塩類を水と塩酸とで溶解した後,過マンガン酸カリウム標準
溶液で滴定する。別に試料中のひ素含有率を求め,アンチモン含有率を補正する。
7.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸 (1+1)
(2) 硝酸
(3) 硝酸 (1+1)
(4) 硫酸カリウム
(5) よう素酸カリウム (0.5g/l)
(6) 0.02mol/l過マンガン酸カリウム標準溶液 6.2(13)による。
7.3
試料はかり採り量 試料はかり採り量は,0.3〜0.4gとする。
7.4
操作
7.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり採り,ビーカー (400ml) に移し入れ,硝酸10〜15mlを加え,時計皿で覆い,穏やかに
加熱して分解する。激しい反応が終わった後,硫酸 (1+1) 40ml及び硫酸カリウム約3gを加え,引き
続き加熱して,硫酸の白煙を十分に発生させる(3)。
(2) 次いで,ろ紙の小片(4)を加え,加熱を続けて,溶液の色が無色となるまで強熱する。
(3) (2)の操作を更に1回繰り返して,アンチモンを完全に還元する。
(4) 放冷後,水で時計皿の下面及びビーカー内壁を洗い時計皿を取り除く。水50〜60ml及び塩酸 (1+1)
30mlを加え,かき混ぜた後,温水で液量を約200mlとし,加熱して2〜3分間穏やかに煮沸し,流水
で冷却する。
7.4.2
滴定 7.4.1(4)で得た溶液に,よう素酸カリウム溶液1, 2滴を加え(12),過マンガン酸カリウム標準
溶液 [7.2(6)] を用いて滴定し,溶液の色が赤紫に変わった点を終点とする。
7
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注(12) よう素酸カリウム溶液は,過マンガン酸カリウムによってひ素を定量的に酸化するための触媒
で,1〜2滴の添加で十分であり,それ以上に過剰に加えてはならない。
7.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
7.6
ひ素の定量 JIS M 8132の規定によって,ひ素を定量する。
7.7
計算 試料中のアンチモン含有率を,次の式によって算出する。
625
.1
100
)
(
2
1
×
−
×
×
−
=
A
m
f
V
V
Sb
ここに, Sb: アンチモン含有率 [% (m/m)]
V1: 7.4.2で得た過マンガン酸カリウム標準溶液使用量 (ml)
V2: 7.5で得た過マンガン酸カリウム標準溶液使用量 (ml)
f: 過マンガン酸カリウム標準溶液1mlのアンチモン相当量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
A: 試料中のひ素含有率 [% (m/m)]
8. 水酸化鉄共沈分離原子吸光法
8.1
要旨 試料を硝酸,臭化水素酸及び塩酸で分解し,塩酸及び塩化鉄 (III) を加えた後アンモニア水を
加え,アンチモンを水酸化鉄 (III) と共沈させ,ろ過する。沈殿は塩酸に溶解した後,原子吸光光度計を
用いて,その吸光度を測定する。
8.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) 塩酸 (1+1,1+2,1+10)
(3) 硝酸
(4) ふっ化水素酸
(5) 臭化水素酸
(6) 硫酸 (1+1)
(7) アンモニア水
(8) アンモニア水 (1+99)
(9) 臭素
(10) 塩化鉄 (III) 溶液 (20mgFe/ml) 塩化鉄 (III) 六水和物48.4gを塩酸 (1+100) 500mlに溶解する。塩
化鉄 (III) 六水和物は,アンチモンの含有率が0.001% (m/m) 以下のものを使用する。
(11) 鉛溶液 (10mgPb/ml) 鉛[99.9% (m/m) 以上]1.00gを硝酸 (1+1) 30mlで分解し,室温まで冷却した
後,水で100mlとする。
(12) 標準アンチモン溶液 (0.2mgSb/ml) アンチモン[99.9% (m/m) 以上]0.100gを王水20mlで分解し,
常温まで冷却した後100mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,塩酸 (1+1) で標線まで薄めて原
液 (1mgSb/ml) とする。この原液を使用の都度,必要量だけ水で正しく5倍に薄めて標準アンチモン
溶液とする。
8.3
試料はかり採り量 試料はかり採り量は,アンチモンの含有率に応じて表3による。
8
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表3 試料はかり採り量
アンチモン含有率
% (m/m)
試料はかり採り量
g
0.01以上0.2未満
1
0.2 以上1 未満
0.5
1 以上5 未満
0.1
8.4
操作
8.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり採り,ビーカー (200〜300ml) に移し入れ,硝酸15ml,臭化水素酸10ml及び塩酸20ml
を加え(13),時計皿で覆い,穏やかに加熱して分解する。
(2) 放冷後,水で時計皿の下面及びビーカーの内壁を洗い,時計皿を取り除く。塩酸 (1+2) 30mlを加え,
ろ紙(5種B)を用いてろ過し,塩酸 (1+10) で十分に洗浄する(14)(15)。ろ液及び洗液は,ビーカー
(300ml) に受け,水を加えて液量を約150mlとする。
注(13) 臭化水素酸の代わりに臭素を用いることができる。この場合は,硝酸10ml,臭素3ml及び塩酸20ml
を加える。
(14) 残物中にアンチモンが含まれる場合は,少量の水を用いて残物を白金皿(例えば50番)に洗い
移し,硫酸 (1+1) 2,3滴及びふっ化水素酸3〜5mlを加え,加熱して二酸化けい素を揮散させ
乾固する。放冷後,塩酸 (1+1) 5mlを加えて可溶性塩を溶解し,ろ紙(5種B)を用いてろ過
し,温水で十分に洗浄した後,ろ液及び洗液は主液に合わせる。
(15) 試料が鉛精鉱のように多量の鉛を含む場合は,塩化鉛の結晶が析出することがある。析出した
塩化鉛は,塩酸 (1+10) で十分洗浄した後,ろ紙上に熱水を注いで溶解する。
8.4.2
アンチモンの分離 アンチモンの分離は,次の手順によって行う。
(1) 8.4.1(2)で得た溶液に,塩化鉄 (III) 溶液 [8.2.(10)] を加え(16)(17),この溶液をかき混ぜながらアンモニ
ア水を加え,水酸化鉄の沈殿が出始めたら,更に5mlを加え,加熱して数分間煮沸する。直ちに沈殿
をろ紙(5種A)を用いてろ過し,温アンモニア水 (1+99) で数回洗浄した後,温水で元のビーカー
(300ml) に洗い移す。ろ紙上から塩酸 (1+1) 20mlを少量ずつ加えて,水酸化物の沈殿を溶解した後,
ろ紙を温水で十分に洗浄する。
これら溶液は沈殿を洗い移した元のビーカー (300ml) に受け,加熱して沈殿を溶解する。
(2) 常温まで冷却後,水を用いて100mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。
注(16) 塩化鉄 (III) 溶液の添加量は,はかり採った試料中に含まれる鉄量と加える鉄量の合計が約
300mgになるようにする。
(17) はかり採った試料中に含まれる鉄量が300mg以上の場合は,塩化鉄 (III) 溶液は添加しない。
8.4.3
吸光度の測定 8.4.2(2)で得た溶液の一部(18)を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の空
気−アセチレンフレーム中に噴霧し,波長217.6nm又は231.1nmにおける吸光度を測定する。
注(18) 溶液中に塩化鉛の結晶が析出した場合,又は浮遊物を認めた場合は,溶液の一部を乾いたろ紙
(5種A)でろ過し,その最初のろ液5〜10mlは捨て,その後のろ液を用いる。
8.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う(19)。
注(19) はかり採った試料中の鉄量が300mg以上の場合は,試料溶液中の鉄量と同量になるように塩化
鉄 (III) 溶液 [8.2(10)] を加える。
8.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
9
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(1) 塩酸 (1+1) 20ml及び塩化鉄 (III) 溶液 [8.2(10)] 15ml(19)を数個の100ml全量フラスコにはかり採る
(20)。
(2) それぞれの全量フラスコに,標準アンチモン溶液 [8.2(12)] の各種液量0〜25ml(アンチモンとして0
〜5mg)を段階的に加え,水で標線まで薄める。
(3) それぞれの溶液の一部を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の空気−アセチレンフレーム
中に噴霧し,波長217.6nm又は231.1nmにおける吸光度を試料と並行して測定し,得た吸光度とアン
チモン量との関係線を作成し,その関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
注(20) はかり採った試料中の鉛量が50mg以上の場合は,鉛溶液 [8.2(11)] 5mlを加える。
8.7
計算 8.4.3及び8.5で得た吸光度と8.6で作成した検量線とからアンチモン量を求め,試料中のアン
チモン含有率を,次の式によって算出する。
100
2
1
×
−
=
m
A
A
Sb
ここに, Sb: アンチモン含有率 [% (m/m)]
A1: 試料溶液中のアンチモン検出量 (g)
A2: 空試験液中のアンチモン検出量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
9. 誘導結合プラズマ発光分光法
9.1
要旨 試料を硝酸,臭化水素酸及び塩酸で分解した後,加熱して蒸発乾固する。塩酸を加えて可溶
性塩類を溶解し,溶液を誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,その発光強度を
測定する。
9.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) 塩酸 (1+1,1+10)
(3) 硝酸
(4) ふっ化水素酸
(5) 臭化水素酸
(6) 硫酸 (1+1)
(7) 臭素
(8) 銅溶液 (10mgCu/ml) 銅[99.9% (m/m) 以上]1.00gを硝酸 (1+1) 20mlで分解し,室温まで冷却した
後,水で100mlとする。
(9) 亜鉛溶液 (10mgZn/ml) 亜鉛[99.9% (m/m) 以上]1.00gを塩酸 (1+1) 20mlで分解し,室温まで冷却
した後,水で100mlとする。
(10) 鉛溶液 (10mgPb/ml) 8.2(11)による。
(11) 塩化鉄 (III) 溶液 (10mgFe/ml) 8.2(10)の塩化鉄 (III) 溶液 (20mgFe/ml) を,水で2倍に薄める。
(12) 標準アンチモン溶液A (1mgSb/ml) 8.2(12)の原液を用いる。
(13) 標準アンチモン溶液B (0.2mgSb/ml) 8.2(12)による。
9.3
試料はかり採り量 試料のはかり採り量は,0.50gとする。
9.4
操作
9.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
10
M 8130-1996
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(1) 8.4.1(1)の手順に従って操作する。
(2) 放冷後,水で時計皿の下面及びビーカーの内壁を洗い,時計皿を取り除く。引き続き加熱して蒸発乾
固する。
(3) 放冷後,塩酸10ml及び水約50mlを加え,穏やかに加熱して可溶性塩を溶解した後,ろ紙(5種B)
を用いてろ過し,温水で十分に洗浄する(14)(15)。ろ液及び洗液は液量約70mlまで濃縮し,常温まで冷
却した後,水を用いて100mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。
9.4.2
発光強度の測定 9.4.1(3)で得た溶液の一部(18)を誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラズ
マ中に噴霧し,波長206.833nmにおける発光強度を測定する(21)。
注(21) 精確さを確認してあれば,他の波長を用いて測定してもよい。
また,高次のスペクトル線が使用可能な装置では,高次のスペクトル線を用いてもよい。バ
ックグラウンド補正機構がついている装置では,バックグラウンド補正機構を用いてもよい。
9.5
空試験 9.6の検量線作成操作で得た標準アンチモン溶液を添加しない溶液の発光強度を,空試験の
発光強度とする。
9.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
(1) 試料溶液中に共存する主成分と同一量になるように銅溶液 [9.2(8)] ,亜鉛溶液 [9.2(9)] ,鉛溶液
[9.2(10)] 及び塩化鉄 (III) 溶液 [9.2(11)] (22)を数個の100mlの全量フラスコにはかり採り,各々に塩酸
(1+1) 20mlを加える。
(2) それぞれの全量フラスコに,標準アンチモン溶液A [9.2(12)] 及び標準アンチモン溶液B [9.2(13)] の各
種液量0〜25ml(アンチモンとして0〜25mg)を段階的に加え,水で標線まで薄める。
(3) それぞれの溶液の一部を,誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長
206.833nmにおける発光強度を試料と並行して測定し,得た発光強度とアンチモン量との関係線を作
成し,その関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
注(22) 試料が銅精鉱の場合は銅溶液及び鉄溶液を,亜鉛精鉱の場合は亜鉛溶液及び鉄溶液を,鉛精鉱
の場合は鉛溶液及び鉄溶液を,試料溶液と同じ濃度になるように加える。
9.7
計算 9.4.2及び9.5で得た発光強度と9.6で作成した検量線とからアンチモン量を求め,試料中のア
ンチモン含有率を次の式によって算出する。
100
2
1
×
−
=
m
A
A
Sb
ここに, Sb: アンチモン含有率 [% (m/m)]
A1: 試料溶液中のアンチモン検出量 (g)
A2: 空試験液中のアンチモン検出量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
10. 水酸化鉄共沈分離誘導結合プラズマ発光分光法
10.1 要旨 試料を硝酸,臭化水素酸及び塩酸で分解し,塩酸及び塩化鉄 (III) を加えた後アンモニア水を
加え,アンチモンを水酸化鉄 (III) と共沈させ,ろ過する。沈殿は塩酸に溶解した後,誘導結合プラズマ
発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,その発光強度を測定する。
10.2 試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸
(2) 塩酸 (1+1,1+2,1+10)
11
M 8130-1996
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(3) 硝酸
(4) ふっ化水素酸
(5) 臭化水素酸
(6) 硫酸 (1+1)
(7) アンモニア水
(8) アンモニア水 (1+99)
(9) 臭素
(10) 塩化鉄 (III) 溶液 (20mgFe/ml) 8.2.(10)による。
(11) 鉛溶液 (10mgPb/ml) 8.2(11)による。
(12) 標準アンチモン溶液A (1mgSb/ml) 8.2(12)の原液 (1mgSb/ml) を用いる。
(13) 標準アンチモン溶液B (0.2mgSb/ml) 8.2(12)による。
10.3 試料はかり採り量 試料のはかり採り量は,0.50gとする。
10.4 操作
10.4.1 試料溶液の調製 試料溶液の調製は,8.4.1による。
10.4.2 アンチモンの分離 アンチモンの分離は,8.4.2による。
10.4.3 発光強度の測定 10.4.2で得た溶液の一部を誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラズマ
中に噴霧し,波長206.833nmにおける発光強度を測定する(21)。
10.5 空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う(23)。
注(23) はかり採った試料中に含まれる鉄量が300mg以上の場合は,試料溶液中の鉄量と同量になるよ
うに塩化鉄 (III) 溶液 [10.2(10)] を添加する。
10.6 検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
(1) 塩酸 (1+1) 20ml及び塩化鉄 (III) 溶液 [10.2(10)] 15ml(23)を数個の100mlの全量フラスコにはかり採
る。
(2) それぞれの全量フラスコに,標準アンチモン溶液A [10.2(12)] 及び標準アンチモン溶液B [10.2(13)] の
各種液量0〜25ml(アンチモンとして0〜25mg)を段階的に加え,水で標線まで薄める。
(3) それぞれの溶液の一部を,誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長
206.833nmにおける発光強度を試料と並行して測定し,得た発光強度とアンチモン量との関係線を作
成し,その関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
10.7 計算 10.4.3及び10.5で得た発光強度と10.6で作成した検量線とからアンチモン量を求め,試料中
のアンチモン含有率を次の式によって算出する。
100
2
1
×
−
=
m
A
A
Sb
ここに, Sb: アンチモン含有率 [% (m/m)]
A1: 試料溶液中のアンチモン検出量 (g)
A2: 空試験液中のアンチモン検出量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
12
M 8130-1996
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
鉱石中のアンチモン定量方法改正原案作成委員会 構成表(50音順)
(委員名)
(所属)
(委員長)
村 上 徹 朗
工学院大学
飯 田 隆 俊
東邦亜鉛株式会社
池 田 重 司
大蔵省造幣局
岩 田 晶 夫
住友金属鉱山株式会社
笠 原 暢 順
三井金属鉱業株式会社
田 沼 滉
志村化工株式会社
束 原 巌
古河電気工業株式会社
永 井 正 博
資源エネルギー庁
中 村 靖
日本鉱業株式会社
浜 松 博
日本鉱業協会
藤 田 富 男
工業技術院標準部
藤 貫 正
工業技術院地質調査所
山 本 泰 一
同和鉱業株式会社
渡 辺 隆 夫
三菱金属株式会社
(審議参加者)
(所属)
神 村 岩 夫
志村化工株式会社
芹 田 吉 実
同和鉱業株式会社
藤 内 辰 巳
大蔵省造幣局
能 登 善 徳
日本鉱業株式会社
野々口 桂 介
住友金属鉱山株式会社
野 村 紘 一
三菱金属株式会社
渡 部 武 雄
三井金属鉱業株式会社
鉱石中のアンチモン定量方法改正原案作成委員会 構成表(順不同)
氏名
所属
(委員長)
奥 谷 忠 雄
日本大学
増 田 聰 博
資源エネルギー庁鉱業課
高 木 譲 一
工業技術院標準部材料規格課
末 富 巧
大蔵省造幣局東京支局
中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー分析センター
永 井 巌
住友金属鉱山株式会社
杉 山 鉄 男
太平洋金属株式会社
丹 野 一 雄
東邦亜鉛株式会社
稲 垣 勝 彦
日本鉱業協会
尾 上 喬
同和鉱業株式会社
石 塚 司
日本冶金工業株式会社
倉 本 勉
株式会社日向製錬所
束 原 巌
古河電気工業株式会社
渡 部 武 雄
三井金属鉱業株式会社
佐 山 恭 正
三菱マテリアル株式会社
(関係者)
岩 崎 守 彦
三菱マテリアル株式会社
細 矢 一 仁
同和鉱業株式会社
村 井 幸 男
株式会社ジャパンエナジー分析センター