2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
M 8125-1997
粗銅地金中の銅定量方法
Method for determination of
copper in blister copper
1. 適用範囲 この規格は,粗銅地金中の銅定量方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0116 発光分光分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS M 8102 粗銅地金−サンプリング方法及び水分測定方法
JIS Z 8401 数値の丸め方
2. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS K 0050,JIS K 0116及びJIS K 0121による。
3. 分析用試料の採り方及び取扱い方
3.1
分析用試料の採り方 分析用試料の採り方は,次による。
分析用試料の採取及び調製方法は,JIS M 8102の成分試験試料の採取及び調製方法による。
3.2
分析試料のはかり方 分析試料のはかり方は,次による。
(1) 分析試料は,各粒度別試料の重量比に応じてはかり採る。
(2) 分析試料のはかり採りには,化学はかりを用い,0.1mgのけたまで読み取る。
4. 分析値のまとめ方
4.1
分析回数 原則として同一分析所において2回の繰り返し分析を行う。
4.2
空試験 空試験は行わない。
4.3
分析値の表示 分析値は,質量百分率で表し,小数第3位まで算出し,JIS Z 8401によって,小数
第2位に丸める。
5. 銅定量方法
5.1
定量方法 銅の定量方法は,銅電解重量法による。この方法は,銅含有率98% (m/m) 以上の試料に
適用する。
5.2
銅電解重量法
2
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5.2.1
要旨 試料を硝酸で分解し,銀を塩化銀として分離した後,白金電極を用いて電解し,陰極に銅を
析出させ,その質量をはかる。電解残液中の銅は,原子吸光法又はICP発光分光分析法によって定量し,
銅量を求め,電着量を補正する。
5.2.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸 (1+3)
(2) 硝酸 (1+1)
(3) 硫酸 (1+1)
(4) エタノール (99.5)
(5) 標準銅溶液(20μg Cu/ml) 銅[99.9% (m/m) 以上]0.100gを硝酸 (1+1) 20mlで分解し,常温まで冷
却した後,1 000mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて原液 (100μg Cu/ml) と
する。使用の都度,必要量だけ水で正確に5倍に薄めて標準銅溶液とする。
5.2.3
器具 器具は,次による。
(1) 分解ビーカー 原則として図1のもの(1)を用い,試料の分解に際しては,上部に密着できる空冷還流
冷却器形のふたを用いる。
(2) 電解ビーカー 原則として図2のものを用いる。
(3) 円筒状白金陰極 原則として図3のものを用いる。
(4) らせん状白金陽極 原則として図4のものを用いる。
(5) 半円形時計皿 原則として図5のものを用いる。
注(1) 図1のものと比較して,銅液の損失がないことを確認してあれば,他の形式のビーカーを用いる
ことができる。
図1 分解ビーカー
図2 電解ビーカー
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図3 円筒状白金陰極
図4 らせん状白金陽極
図5 半円形時計皿
5.2.4
試料はかり採り量 試料はかり採り量は,10.0gとし,0.1mgのけたまではかる。
5.2.5
操作
(1) 準備操作 円筒状白金陰極 [5.2.3(3)] を硝酸 (1+1) 中に浸して洗浄した後,水を用いて洗浄し,次い
でエタノール (99.5) を用いて洗浄する。約100℃の空気浴中で乾燥した後,バーナーで赤熱するまで
加熱する。デシケータ中で常温まで冷却した後,その質量を0.1mgのけたまではかる。
(2) 試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
(a) 試料をはかり採って,分解ビーカー [5.2.3(1)] に移し入れる。
(b) ふたで覆い,硝酸 (1+1) 80mlを加えて穏やかに分解する。反応が静まれば,100℃近くまで徐々に
加熱し,試料を完全に分解するとともに,酸化窒素を追い出す(2)。
(c) ふたの内面及びビーカーの内壁を水で洗浄した後,ふたを取り除く(3)。
(d) 水を加えて液量を約300mlとし,かき混ぜながら塩酸 (1+3) 1mlを加えて,80〜90℃に約1時間加
温した後,一夜間放置する。
(e) 塩化銀などをろ紙(5種B)を用いてろ別した後,ろ紙及び沈殿を温水で十分に洗浄する。ろ液及
び洗液を500mlの全量フラスコ(4)に移し入れ,常温まで冷却した後,水で標線まで薄めよく混合す
る。
(f) この溶液50.0mlを電解ビーカー [5.2.3(2)] に分取(5)し,硫酸 (1+1) 5mlを加え,加熱して硫酸の白
煙を十分に発生させた後(6),放冷する。
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(g) 硝酸 (1+1) 10ml及び水20mlを加えて可溶性塩を溶解した後,水を加えて液量を150mlとする。
注(2) 加熱には温度調節の容易な水浴又は電気ホットプレートを用いるとよい。
(3) 試料中の銀量が0.005%以下の場合は,(d)以降の銀の分離操作を省略することができる。銀の分
離操作を省略した場合は,常温まで冷却した後,水を用いて500mlの全量フラスコ(4)に移し入
れ,水で標線まで薄め,よく混合した後,(f)以降の操作を行う。
(4) JIS K 0050の9.3.2(全量フラスコ)によって検定した全量フラスコを用いる。
(5) JIS K 0050の9.3.1(全量ピペット)又は9.3.3(ビュレット)によって検定した全量ピペット又
はビュレットを用いる。
(6) セレンを0.01% (m/m) 以上含有する試料の場合には,硫酸 (1+1) 5mlを追加し,蒸発乾固する。
(3) 電解 電解は,次の手順によって行う。
(a) (1)で質量をはかった円筒状白金陰極 [5.2.3(3)] とらせん状白金陽極 [5.2.3(4)] とを(2)(g)で得た溶
液中に挿入し,2個の半円形時計皿 [5.2.3(5)] で覆う。
(b) 液温を20〜30℃(7)として0.3〜0.4Aの電流を通じ,約15時間電解する。
(c) 電解液が無色となれば,半円形時計皿の下面,ビーカーの内壁及び電極の液面に露出した部分を水
洗し,その洗浄水によって電解液面を約5mm上昇させ,さらに約1時間電解を続ける。
(d) 新しく液中に入った陰極の柄に,もはや銅の析出が認められなくなれば(8)半円形時計皿を取り除き,
電流を通じたまま水洗しながら両極を徐々に引き上げる。次に陰極を,新たに水を満たした別のビ
ーカー中に手早く浸して接続部から取り外す。電解を終えた電解液は,電解残液として保存する。
(e) 新たに水を満たしたビーカー2個を用意しておき,陰極を順次浸して手早く上下して水洗する。次
にエタノールを満たしたビーカー2個を用意しておき,これに陰極を順次浸して上下して水分を除
く。
注(7) 液温が20℃以下のときは,適当な加熱装置を付ける。
(8) 新しく液中に入った陰極の柄に銅が析出したときは,(c)の手順を繰り返す。
(4) 乾燥とひょう量 (3)(e)で得た銅析出白金陰極を約80℃の空気浴中で2〜3分間乾燥し,デシケータ中
で約30分間放冷する。銅電着前の白金陰極 [5.2.3(3)] の質量をはかるときに用いた化学はかりを使用
して,銅析出白金陰極の質量を0.1mgのけたまではかる。
(5) 電解残液中の銅の定量 電解残液中の銅の定量は,次のいずれかによる。
(a) 原子吸光法による場合 (3)(d)で得た電解残液を水を用いて200mlの全量フラスコに移し入れ,水で
標線まで薄める。この溶液の一部を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の空気−アセチ
レンフレーム中に噴霧し,波長324.8nmにおける吸光度を測定し,検量線から銅量を求める。
検量線の作成:標準銅溶液 [5.2.2(5)] 0〜25.0ml(銅として0〜500μg)を段階的に数個の200ml全
量フラスコにはかり採り,硝酸 (1+1) 10ml及び硫酸 (1+1) 2mlを加え,水で標線まで薄め,試料と
並行して操作し,得た吸光度と銅量との関係線を作成し,その関係線を原点を通るように平行移動
して検量線とする。
(b) ICP発光分光分析法による場合 (3)(d)で得た電解残液を水を用いて200mlの全量フラスコに移し
入れ,水で標線まで薄める。この溶液の一部を,ICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴
霧し,波長324.754nmにおける発光強度を測定し,検量線から銅量を求める(9)。
検量線の作成:標準銅溶液 [5.2.2(5)] 0〜25.0ml(銅として0〜500μg)を,段階的に数個の200ml
全量フラスコにはかり採り,硝酸 (1+1) 10ml及び硫酸 (1+1) 2mlを加え,水で標線まで薄め,試料
と並行して操作し,得た発光強度と銅量との関係線を作成し,その関係線を原点を通るように平行
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
移動して検量線とする。
注(9) 精確さを確認してあれば,他の波長を用いて測定してもよい。高次のスペクトル線が使用可能
な装置では高次のスペクトル線を用いてもよく,また,バックグランド補正機構が付いている
装置では,バックグランド補正機構を用いてもよい。
5.2.6
計算 試料中の銅含有率を,次の式によって算出する。
100
)
(
1
2
×
×
+
−
=
B
m
A
m
m
Cu
ここに, Cu: 試料中の銅含有率 [% (m/m)]
m1: 5.2.5(1)で得た円筒状白金陰極の質量 (g)
m2: 5.2.5(4)で得た銅析出白金陰極の質量 (g)
A: 5.2.5(5)で得た電解残液中の銅検出量 (g)
m: 試料はかり採り量 (g)
B: 試料溶液の分取比
JIS M 8125(粗銅地金中の銅定量方法)原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
奥 谷 忠 雄
日本大学理工学部
増 田 聰 博
通商産業省資源エネルギー庁鉱業課
高 木 譲 一
通商産業省工業技術院標準部材料規格課
加 藤 金 夫
大蔵省造幣局東京支局試験課
藤 貫 正
社団法人日本分析化学会
○ 束 原 巌
古河電気工業株式会社
○ 永 井 巌
住友金属鉱山株式会社
○ 尾 上 喬
同和鉱業株式会社
○ 丹 野 一 雄
東邦亜鉛株式会社
○ 中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー
○ 渡 部 武 雄
三井金属鉱業株式会社
○ 佐 山 恭 正
三菱マテリアル株式会社
○ 稲 垣 勝 彦
日本鉱業協会
(関係者)
村 井 幸 男
株式会社ジャパンエナジー
細 矢 一 仁
同和鉱業株式会社
松 岡 俊 和
三井金属鉱業株式会社
備考 ○印は,分科会委員を兼務。