令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業
規格”を“日本産業規格”に改めた。
日本産業規格 JIS
L 2703-1992
ビニロンロープ
Vinylon ropes
1. 適用範囲 この規格は,ビニロン紡績糸及びポリエステル混紡ビニロン紡績糸を用いたビニロンロー
プ(以下,ロープという。)について規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS L 1030 繊維混用率試験方法
2. この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,
参考として併記したものである。
2. 種類 ロープは,次の2種類とする。
(1) 純ビニロンロープ
(2) ポリエステル混紡ビニロンロープ
3. 品質
3.1
外観 汚れ,すれなどが目立たず,仕上げは良好でなければならない。
3.2
線密度及び質量 ロープの線密度及び質量は,付表1又は付表2のとおりとし,その許容差は,三
つ打ちのものは±5%,八つ打ちのものは±7%とする。
なお,染色又は樹脂加工を施した場合における線密度及び質量の増加は,付表1又は付表2で定める線
密度及び質量の15%以下でなければならない。
3.3
長さ ロープ1条の長さは,特に指定されない限り200mとし,指定された場合はそれによる。ただ
し,許容差は,マイナスを認めない。
なお,指定された場合に限り,引張強さ試験(切断試験)に必要な余尺を付けるものとする。
3.4
引張強さ 引張強さは,6.7によって試験したとき,付表1又は付表2に示す値以上でなければなら
ない。
3.5
伸び率 伸び率は,6.8によって算出したとき,35%以下でなければならない。
4. 材料及び加工方法
4.1
材料 材料は,次のとおりとする。
(1) 純ビニロンロープは,原糸は,ロープ用に適した純ビニロン紡績糸だけを使用しなければならない。
また,再生した材料は使用してはならない。
(2) ポリエステル混紡ビニロンロープは,原糸は,ロープ用に適したビニロン60%,ポリエステル40%を
用いた混紡糸(混紡率の許容差は±5%とする。)だけを使用しなければならない。
また,再生した材料は使用してはならない。
2
L 2703-1992
4.2
加工方法 ロープは,特に必要がある場合は熱処理を,また,特に指定された場合は染色又は樹脂
加工を施すことができる。
4.3
打ち方 打ち方は,次のとおりとする。
(1) ロープは,三つ打ち又は八つ打ちとし,特に指定されない場合は,図1のとおり三つ打ちとする。
図1 三つ打ちロープの構造
(2) 八つ打ちロープは,Zよりストランド4本及びSよりストランド4本を,それぞれ2本ずつ引きそろ
え,図2のとおり交互に組み合わせて作る。
図2 八つ打ちロープの構造
(3) ロープを構成する各ストランドのヤーン数は,同一でなければならない。
(4) 三つ打ちロープのよりの方向は,特に指定されない限りZよりとする。
(5) ロープのストランドのリード(1)は,三つ打ちのものはロープの呼称太さ(2)の3.3倍以下,八つ打ちの
ものは呼称太さの3.5倍以下でなければならない。
注(1) リードとは,ストランドの1回のよりてい(程)をいう。
(2) ロープの呼称太さとは,ロープの直径を呼称するものであって,直径寸法そのものは規定値と
しない。
備考 ロープを打つとは,ストランドをより合わせ又は組むことをいう。
5. 初荷重 初荷重とは,ロープが伸張せずにまっすぐに張られる程度の荷重をいう。荷重が影響する場
合の試験(長さ,リード,伸び率)には,初荷重として付表1又は付表2に示す荷重を用いる。初荷重の
許容差は,±5%とする。
6. 試験方法
6.1
試験室の状態 試験室の状態は,温度,湿度及び許容差が20±2℃,(65±2) %とする。ただし,試
験室が上記の状態に保たれない場合は,試験時の温湿度を試験成績表などに付記する。
6.2
試料の準備 各条の一端から6.7の引張強さ試験に必要な長さの試験片を切り取り,これを6.1の試
験室に放置し,1時間以上の間隔で質量を量り,その前後の質量差が後の質量の0.3%以内となったとき,
これを試料の質量 (m) (kg)とし,この試料を試験に供する。
6.3
質量 6.1の試験室において,1条ごとに質量 (kg) を量る。
3
L 2703-1992
6.4
長さ 6.3の方法によって質量を量った後,試料の両端を手で引っ張り,これを平面上に置き,その
長さ (l1) を測った後,その中央部分に30cm又は50cmの間隔で二つのマークを付け,その間の長さ (d1) を
測る。
次に,この試料を定速緊張形引張試験機にかけ,荷重を徐々に増加し,荷重が付表1又は付表2に定め
る初荷重に達したときに荷重の増加を中断し,先に試料の中央部分に付けた二つのマーク間の長さ (d2) を
測る。
試料の長さ (l) は,次の式によって算出する。
1
2
1d
d
l
l
×
=
ここに,
l: 試料の長さ (m)
l1: 初荷重をかける前の試料の長さ (m)
d1: 試料の中央部分に付けた二つのマーク間の,初荷重をかける
前の長さ (cm)
d2: 試料の中央部分に付けた二つのマーク間の,初荷重をかけた
後の長さ (cm)
また,ロープ1条の長さ (L) は,次の式によって算出する。
m
M
l
L
×
=
ここに,
L: 1条の長さ (m)
M: 1条の質量 (kg)
m: 試料の質量 (kg)
6.5
線密度 線密度 (d) は,6.2で得た試料の質量 (m) と試料の長さ (l) によって次の式から算出する。
3
10
×
=lm
d
ここに, d: 線密度 (g/m)
6.6
リード 6.4の方法によって長さ (d2) を測ると同時に,ストランドの1回のよりていを3か所にお
いてミリメートル単位で測り,その平均値とする。
6.7
引張強さ 6.6の方法によってリードを測った後,再び荷重を徐々に,連続的に増加して,ロープを
切断する。この際,ロープの切断が付表1又は付表2に規定する引張強さ(以下,規定引張強さという。)
に達しないうちに試験機のつかみの箇所で起きた場合は,この試料による試験は無効とし,他の試料によ
って再試験を行うことができる。
なお,試験機のつかみ速度は,そのロープの規定引張強さの50%までは300mm/min以内とし,それ以上
は150mm/min以内とする。
また,試料の有効長(3)は,ロープの呼称太さの30倍以上とする。ただし,その長さが0.5mを超えるも
のについては,0.5mにとどめることができる。
注(3) ここにいう有効長とは,試験機の両つかみ間の内側で測った長さをいう。ただし,試料の両端
にアイ加工(耳状の環を作ること。)を行って引っ張る場合における有効長は,アイとアイとの
間の加工していない部分の長さをいう。
6.8
伸び率 6.7の方法によって引張強さの試験を行う場合は,荷重がそのロープの規定引張強さの75%
に達したときに,先に試料の中央部分に付けた二つのマーク間の長さを測り,次の式によって伸び率を算
出する。
4
L 2703-1992
伸び率 (%)
100
2
2
3
×
−
=
d
d
d
ここに, d3: 荷重が規定引張強さの75%に達したときに測ったマーク間の
長さ (cm)
6.9
混紡率 JIS L 1030の7.2.2(70%硫酸法)又は7.2.5(20%塩酸法)による。
7. 検査 検査は,合理的な抜取方法によって試料を採取し,6.によって試験を行い,3.の規定に適合した
場合は,そのロットを合格とする。
8. 表示 製品又は包装には,適切な方法で次の事項を表示しなければならない。
なお,呼称太さが20mm以上のロープには,ストランドの1本に製造業者名入りのテープを挿入するも
のとする。
(1) 種類(4)
(2) 呼称太さ
(3) 長さ
(4) 質量(5)
(5) 製造番号
(6) 製造業者名
注(4) ポリエステル混紡ビニロンロープは,V/Eロープと略してもよい。
樹脂加工したものは,その旨表示する。
例 純ビニロンロープ(樹脂加工)
(5) 樹脂加工したものの質量は,樹脂加工前の質量を表示する。
付表1 純ビニロンロープ
呼称太さ
mm
初荷重
daN {kgf}
線密度
g/m
質量
(200mにつきkg)
引張強さ
kN {tf}
4
2.0
{
2}
10.0
2.01
1.47 {0.15}
5
2.9
{
3}
15.6
3.13
2.26 {0.23}
6
3.9
{
4}
22.5
4.50
3.24 {0.33}
7
5.9
{
6}
30.9
6.18
4.22 {0.43}
8
7.8
{
8}
39.8
7.96
5.49 {0.56}
9
9.8
{
10}
50.0
10.0
6.86 {0.70}
10
13 { 13}
62.0
12.4
9.32 {0.95}
11
15 { 15}
74.5
14.9
11.1 {1.13}
12
18 { 18}
89.0
17.8
13.4 {1.37}
14
25 { 25}
121
24.2
17.9 {1.83}
16
29 { 30}
158
31.5
22.9 {2.34}
18
39 { 40}
199
39.8
28.6 {2.92}
20
49 { 50}
245
49.0
34.8 {3.55}
5
L 2703-1992
呼称太さ
mm
初荷重
daN {kgf}
線密度
g/m
質量
(200mにつきkg)
引張強さ
kN {tf}
22
59 { 60}
296
59.2
41.6 {4.24}
24
69 { 70}
352
70.4
48.8 {4.98}
26
83 { 85}
412
82.5
56.7 {5.78}
28
93 { 95}
478
95.6
65.1 {6.64}
30
108 {110}
545
109
74.0 {7.55}
32
118 {120}
620
124
83.5 {8.51}
34
132 {135}
700
140
93.5 {9.53}
35
142 {145}
740
148
99.0
{10.1}
36
147 {150}
785
157
104 {10.6}
38
162 {165}
875
175
115 {11.7}
40
177 {180}
970
194
127 {12.9}
42
191 {195}
1 060
213
138 {14.1}
45
216 {220}
1 220
245
157 {16.0}
50
265 {270}
1 510
302
191 {19.5}
55
309 {315}
1 780
355
228 {23.3}
60
378 {385}
2 160
433
269 {27.4}
65
412 {420}
2 540
508
312 {31.8}
70
500 {510}
2 940
589
358 {36.5}
75
530 {540}
3 380
675
407 {41.5}
80
647 {660}
3 840
767
459 {46.8}
85
726 {740}
4 330
866
514 {52.4}
90
799 {815}
4 860
973
571 {58.2}
95
888 {905}
5 400
1 080
632 {64.4}
100
951 {970}
6 000
1 200
694 {70.8}
備考 表中に示していない呼称太さ12〜100mmのロープの初荷重などは,表中の近
似の呼称太さのものから比例配分で算出するものとする。
付表2 ポリエステル混紡ビニロンロープ
呼称太さ
mm
初荷重
daN {kgf}
線密度
g/m
質量
(200mにつきkg)
引張強さ
kN {tf}
4
2.0
{
2}
10.4
2.09
1.57
{
0.16}
5
2.9
{
3}
16.2
3.25
2.35
{
0.24}
6
3.9
{
4}
23.4
4.68
3.33
{
0.34}
7
5.9
{
6}
32.1
6.42
4.41
{
0.45}
8
7.8
{
8}
41.4
8.27
5.69
{
0.58}
9
9.8
{
10}
52.0
10.4
7.16
{
0.73}
10
13 { 13}
64.5
12.9
9.71
{
0.99}
11
15 { 15}
77.5
15.5
11.6 { 1.18}
12
18 { 18}
92.5
18.5
14.0 { 1.43}
14
25 { 25}
126
25.1
18.6 { 1.90}
6
L 2703-1992
呼称太さ
mm
初荷重
daN {kgf}
線密度
g/m
質量
(200mにつきkg)
引張強さ
kN {tf}
16
29 { 30}
164
32.7
23.8 { 2.43}
18
39 { 40}
207
41.4
29.8 { 3.04}
20
49 { 50}
255
51.0
36.2 { 3.69}
22
59 { 60}
308
61.5
43.2 { 4.41}
24
69 { 70}
366
73.2
50.8 { 5.18}
26
83 { 85}
429
85.8
58.9 { 6.01}
28
93 { 95}
497
99.4
67.8 { 6.91}
30
108 { 110}
565
113
77.0 { 7.85}
32
118 { 120}
645
129
86.8 { 8.85}
34
132 { 135}
725
145
97.2 { 9.91}
35
142 { 145}
765
153
103 {10.5}
36
147 { 150}
815
163
108 {11.0}
38
162 { 165}
910
182
120 {12.2}
40
177 { 180}
1 010
202
131 {13.4}
42
191 { 195}
1 110
222
144 {14.7}
45
216 { 220}
1 280
255
163 {16.6}
50
265 { 270}
1 570
314
199 {20.3}
55
309 { 315}
1 840
369
237 {24.2}
60
378 { 385}
2 250
450
279 {28.5}
65
412 { 420}
2 640
528
325 {33.1}
70
500 { 510}
3 060
612
373 {38.0}
75
530 { 540}
3 510
702
424 {43.2}
80
647 { 660}
3 980
797
478 {48.7}
85
726 { 740}
4 500
900
534 {54.5}
90
799 { 815}
5 050
1 010
593 {60.5}
95
888 { 905}
5 600
1 120
657 {67.0}
100
951 { 970}
6 250
1 250
722 {73.6}
備考 表中に示していない呼称太さ12〜100mmのロープの初荷重などは,表中の近
似の呼称太さのものから比例配分で算出するものとする。
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L 2703-1992
参 考
この参考は,本体の規定に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
ロープの直径の測り方 JISで定める初荷重をかけてロープを緊張した状態とし,参考図1のとおり,
ノギスをできるだけ多くのストランドの頂点に当てて測る。
リードを測ると同時に,直径を測るとよい。
参考図1 ロープの直径の測り方
なお,八つ打ちロープにあっては,スチールテープでロープの周を測った後,次の式によって直径を算
出する。
直径 (mm) =
(
)
14
.3
mm
周