L 2403 : 2000
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS L 2403 : 1994は改正され,この規格に置き換えられる。
また,令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
日本産業規格 JIS
L 2403 : 2000
麻縫糸
Linen and ramie sewing thread
序文 この規格は,麻縫糸について規定したもので,1958年(昭和33年)に制定された。今回の改正で
は,引用規格の改正に伴い,引用規格の項目番号を変更している。
1. 適用範囲 この規格は,麻縫糸(亜麻縫糸及びラミー縫糸)について規定する。
備考 この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるもので,参考とし
て併記したものである。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8659 でんぷん(溶性)(試薬)
JIS K 8896 メチルレッド(試薬)
JIS K 8913 よう化カリウム(試薬)
JIS K 8951 硫酸(試薬)
JIS L 0104 テックス方式による糸の表示
JIS L 0105 繊維製品の物理試験方法通則
JIS L 0803 染色堅ろう度試験用添付白布
JIS L 0844 洗濯に対する染色堅ろう度試験方法
JIS L 0849 摩擦に対する染色堅ろう度試験方法
JIS L 1095 一般紡績糸試験方法
JIS Z 8401 数値の丸め方
3. 品質
3.1
外観 外観は,糸むら,よりびり,毛羽などが少なく,色沢が良好で,加工むら及び汚れが目立っ
てはならない。
3.2
つなぎ節
つなぎ節数(1)は,5.2によって試験したとき,表1のとおりとする。
注(1) もろよりのものは,上よりのつなぎ節数とする。
2
L 2403 : 2000
表1 つなぎ節数
単位 個/km
糸長
つなぎ節数
100m以下のもの
2.2以下
100mを超え1 000m以下のもの
2.0以下
1 000mを超えるもの
1.0以下
3.3
長さ又は質量 1巻若しくは1かせの長さ又は質量(2)は,5.3又は5.4によって試験したとき,表示
された値に対し,
0.20.5
−+%とする。
注(2) 質量は,絶乾質量に公定水分率 (12.0%) を加えたものとする。
3.4
正量繊度 正量繊度は,5.5によって試験したとき,表示された原糸繊度に対し,±10.0%とする。
3.5
引張強さ 引張強さは,次のとおりとする。
a) 引張強さは,5.6によって試験したとき,原糸繊度と合糸数の組合せによって,表2を満足しなければ
ならない。
表2 麻縫糸
呼び
原糸繊度
dtex
{原糸番手S}
合
糸
数
引張強さ
(最低値)
N {kgf}
呼び
原糸繊度
dtex
{原糸番手S}
合
糸
数
引張強さ
(最低値)
N {kgf}
50/3
330 {50}
3
23.6 { 2.4}
16/4
1 050 {16}
4 113 { 11.5}
40/3
420 {40}
31.4 { 3.2}
16/5
5 143 { 14.5}
30/3
560 {30}
44.2 { 4.5}
16/6
6 172 { 17.5}
20/1
840 {20}
1
17.7 { 1.8}
16/7
7 202 { 20.5}
20/3
3
66.7 { 6.8}
16/8
8 231 { 23.5}
20/4
4
89.3 { 9.1}
16/9
9 260 { 26.5}
20/5
5 113 { 11.5}
16/10
10 290 { 29.5}
20/6
6 137 { 13.9}
12/1
1 400 {12}
1
29.5 { 3.0}
20/7
7 159 { 16.2}
10/1
1 650 {10}
34.4 { 3.5}
20/8
8 184 { 18.7}
9/5
1 840 { 9}
5 233 { 23.7}
20/9
9 211 { 21.5}
8/1
2 100 { 8}
1
44.2 { 4.5}
20/10
10 231 { 23.5}
8/2
2
93.2 { 9.5}
17/1
970 {17}
1
19.7 { 2.0}
8/3
3 141 { 14.3}
16/3
1 050 {16}
3
83.4 { 8.5}
8/4
4 187 { 19.0}
備考 漂白又は染色したものは,表の引張強さの5%減とし,ろう引加工したものは,表
の引張強さの10%減とし,かつ,それぞれJIS Z 8401によって有効数字3けたに
丸めた値とする。
b) 表中にない原糸繊度と合糸数の組合せのものの引張強さは,5.6によって試験したとき,次の式によっ
て算出した値を,JIS Z 8401によって有効数字3けたに丸めた値以上とする。
1) 同一原糸繊度であって合糸数の異なるものがあるとき
n
F
F
×
=31
ここに,
F: 引張強さ (N)
F1: 当該原糸繊度の片より3本のものの引張強さの最低値 (N)
n: 当該合糸数
2) その他のもの
n
D
D
D
D
F
F
F
F
×
−
−
×
−
−
=
2
3
2
1
3
2
2
3
3
3
3
L 2403 : 2000
ここに,
F: 引張強さ (N)
F2: 直近の太い原糸繊度の片より3本のものの引張強さの最低値
(N)
F3: 直近の細い原糸繊度の片より3本のものの引張強さの最低値
(N)
D1: 当該原糸繊度 (dtex)
D2: 直近の太い原糸繊度 (dtex)
D3: 直近の細い原糸繊度 (dtex)
n: 当該合糸数
3.6
引張強さ変動率 引張強さ変動率は,5.7によって試験したとき,13.0%以下とする。
3.7
より数変動率 より数変動率は,5.8によって試験したとき,10.0%以下とする。
3.8
合糸数及びより方向 合糸数及びより方向は,5.9によって試験したとき,表示された合糸数及びよ
り方向と一致しなければならない。
3.9
残留硫酸及び残留塩素 漂白したものについては,5.10によって試験したとき,硫酸又は塩素の残
留が認められてはならない。
3.10 染色堅ろう度 染色堅ろう度は,5.11によって試験したとき,洗濯試験の判定が変退色3級以上,
汚染3級以上であり,かつ,摩擦試験の判定が3級以上でなければならない。
3.11 仕立て 麻縫糸の仕立ては,かせ,玉巻,紙管,プラスチック管などに巻いたものとし,仕立ての
状態は,良好でなければならない。
4. 材料 材料は,縫糸に適した良質の亜麻糸及びラミー糸を使用する。
5. 試験方法
5.1
試験室及び試料の準備 試験室は,原則として標準状態(3)とする。試料は,この試験室内に放置し
て1時間以上の間隔で質量を測定し,その前後の質量差が,後の質量の0.1%以内となったものを用いる。
ただし,試料を標準状態にするには,乾いたほうの状態から吸湿させる。
注(3) JIS L 0105の4.1(試験場所)に規定する標準状態とする。
備考 試験室が標準状態に保たれない場合は,試験時の温度及び湿度を付記する。
5.2
つなぎ節 つなぎ節の試験は,試料を10個以上採取し,そのつなぎ節数(1)を数え,次の式によって
算出し,JIS Z 8401によって小数点以下1けたに丸める。
l
k
A=
ここに, A: つなぎ節数(個/km)
k: 試料のつなぎ節数を合計した数(個)
l: 試料の測定長さを合計してkmに換算した値 (km)
5.3
長さ 長さの試験は,JIS L 1095の9.1(糸長)によって行う。この場合,初荷重は,JIS L 1095の
6.1(初荷重)による。
5.4
質量 質量の試験は,JIS L 1095の9.3(正量)によって行う。
5.5
正量繊度 正量繊度の試験は,20g以上の試料を採取し,5.3によって糸長 (m) を求め,その糸長と
絶乾質量 (g) から次の式によって算出し,JIS Z 8401によって小数点以下1けたに丸める。
n
L
m
D
×
+
×
×
=
100
12
1
000
10
4
L 2403 : 2000
ここに,
D: 正量繊度 (dtex)
L: 糸長 (m)
m: 絶乾質量 (g)
12: 公定水分率 (%)
n: 合糸数
5.6
引張強さ 引張強さの試験は,定速緊張形引張試験機又は定速伸長形引張試験機を用いて,JIS L
1095の9.5(単糸引張強さ及び伸び率)によって行う。この場合,初荷重,つかみ間距離及び引張速度は,
次のとおりとする。
a) 初荷重 5.3と同じ値とする。
b) つかみ間距離 50cm(測定不可能な場合は25cm)とする。
c) 引張速度 30±2cm/minとする。
備考1. 測定回数は,20回以上とし,その平均値をJIS Z 8401によって小数点以下1けたに丸める。
2. 引張強さに用いる試験機は,当分の間,引張強さが従来単位によって表示されたものを使用
してもよい。この場合,引張強さは,1kgf=9.806 65Nの換算率でSI単位に換算し,JIS Z 8401
によって有効数字3けたに丸める。
5.7
引張強さ変動率 引張強さ変動率の試験は,5.6における引張強さの値を用いて,次の式によって算
出する。
100
)1
(
)
(
2
×
−
−
∑
=
x
n
x
x
Tr
ここに, Tr: 引張強さ変動率 (%)
x: 5.6によって測定した各々の引張強さ (N)
x: 5.6によって測定した引張強さの平均値 (N)
n: 測定回数
5.8
より数変動率 より数変動率の試験は,JIS L 1095の9.15(より数)によって,つかみ間距離25.4cm
間のより数(4)を測定し,次の式によって算出する。
なお,初荷重は,5.3と同じ値とする。
注(4) もろよりのものについては,上より数とする。
備考 測定回数は,20回以上とする。
100
)1
(
)
(
2
×
−
−
∑
=
y
n
y
y
Yn
ここに,
Yn: より数変動率 (%)
y: 各測定におけるより数
y: より数の平均値
n: 測定回数
5.9
合糸数及びより方向 合糸数及びより方向の試験は,5.8の試験の際,測定する。
5.10 残留硫酸及び残留塩素
5.10.1 残留硫酸 残留硫酸の試験は,次のとおりとする。
a) 試料約3gを三角フラスコに入れ,これに水(5)100mlを加えてときどき振り混ぜながら20〜30分間経
過した後,この抽出液5mlを試験管にとり,メチルレッド溶液 (0.02%) (6)0.1〜0.2mlを滴下して着色
の有無を調べる。
注(5) 蒸留水又はイオン交換水を用いる。
5
L 2403 : 2000
(6) JIS K 8896に規定するメチルレッド0.02gを100mlのエタノール(60容量%)に溶かして作っ
たものを用いる。
b) 赤い色が現れたときは酸性であるから,試料を三角フラスコから取り出して,その中の抽出液を約5ml
になるまで濃縮した後,塩酸 (5%) (7)1ml及び塩化バリウム溶液 (10%) (8)1mlを加えたとき,白濁す
れば硫酸塩の存在を示す。
注(7) JIS K 8180に規定する塩酸の特級12mlに水(5)を加えて100mlとしたものを用いる。
(8) JIS K 8001の5.2(試薬溶液)に規定する調製方法によって調製したものを用いる。
5.10.2 残留塩素 残留塩素の試験は,試料約3gを三角フラスコに入れ,これに水(5)100ml,硫酸 (10%)
(9)3ml及びよう化カリウムでんぷん溶液(10)1mlを加えてときどき振り混ぜ,10分間経過後,紫又は青い色
が現れれば塩素の存在を示す。
注(9) JIS K 8951に規定する硫酸5.7mlを水(5)10mlに注意しながら加え,冷却後,水(5)を加えて100ml
としたものを用いる。
(10) JIS K 8913に規定するよう化カリウム特級1g,JIS K 8659に規定するでんぷん(溶性)1gを
100mlの水(5)に溶かして調製したものを用いる。
5.11 染色堅ろう度
5.11.1 洗濯試験 洗濯試験は,JIS L 0844のA-2号による。この場合,試験に使用する添付白布は,JIS L
0803に規定する綿及び絹とする。
5.11.2 摩擦試験 摩擦試験は,JIS L 0849による。この場合,試験は,摩擦試験機II形を用いて,乾燥状
態で行う。
6. 検査方法 麻縫糸は,3.について検査を行う。この場合,検査は,全数検査又は合理的な抜取検査方
法によって行う。
7. 表示 麻縫糸には,製品ごとに適切な方法で,次の事項を表示しなければならない。
a) 原糸繊度及び合糸数(11),又は呼び
注(11) 原糸繊度及び合糸数によって表示する場合は,JIS L 0104による。
b) 上より方向(ミシン用に限る。)
c) 長さ又は質量
d) 家庭用品品質表示法に基づく表示
1) 繊維の組成
2) 表示者の氏名又は名称及び住所又は電話番号
6
L 2403 : 2000
改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
石 川 欣 造
文化女子大学
(委員)
鷺 坂 正
通商産業省生活産業局原料紡績課
窪 田 明
通商産業省生活産業局総務課繊維企画官
地 崎 修
工業技術院標準部
横 田 昌 行
通商産業省通商産業検査所
井 口 耕 一
財団法人日本紡績検査協会
中 沢 正 隆
財団法人日本化学繊維検査協会
深 沢 保 義
財団法人撚糸・縫糸検査協会
筒 井 清次郎
日本紡績協会
古 川 元 彦
日本化学繊維協会
小 林 成 一
日本麻紡績協会
藤 井 幸 二
株式会社フジックス
儘 田 雅 夫
儘田産業株式会社
永 井 祐二郎
永井撚糸株式会社
中 村 治 夫
大黒絲業株式会社
瀬 古 廉 久
グンゼ株式会社
安 藝 雅 夫
全日本紳士服工業組合連合会
土 谷 勝 利
全日本婦人子供服工業組合連合会
関 口 基
社団法人縫製機械工業会
横 田 幸 雄
全国縫糸卸協会
齊 藤 有 常
日本百貨店協会
前 島 明 宏
日本チェーンストア協会
吉 岡 初 子
主婦連合会
川 又 幸 子
全国地域婦人団体連絡協議会
(関係者)
塩 野 博 敏
財団法人撚糸・縫糸検査協会
(事務局)
堀 部 和 作
日本縫糸工業協会