L 2310 : 2000
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS L 2310 : 1994は改正され,この規格に置き換えられる。
また,令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
日本産業規格 JIS
L 2310 : 2000
絹縫糸
Silk sewing thread
序文 この規格は,絹縫糸について規定したもので,1957年(昭和32年)に制定された。今回の改正で
は,引用規格の改正に伴い,引用規格の項目番号を変更している。
1. 適用範囲 この規格は,絹縫糸について規定する。
備考 この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるもので,参考とし
て併記したものである。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS L 0105 繊維製品の物理試験方法通則
JIS L 0803 染色堅ろう度試験用添付白布
JIS L 0844 洗濯に対する染色堅ろう度試験方法
JIS L 0845 熱湯に対する染色堅ろう度試験方法
JIS L 0849 摩擦に対する染色堅ろう度試験方法
JIS L 1095 一般紡績糸試験方法
JIS Z 8401 数値の丸め方
3. 種類 絹縫糸の種類は,次のとおりとする。ただし,括弧内は,種類の略号である。
a) 絹手縫糸(手縫糸又は地縫糸)
b) 絹ミシン糸(ミシン糸)
c) 絹穴かがり糸(穴かがり糸又は穴糸)
d) 絹しつけ糸(しつけ糸)
4. 品質
4.1
外観 外観は,糸むら,よりびり,毛羽などが少なく,色沢が良好で,加工むら及び汚れが目立っ
てはならない。
4.2
つなぎ節 つなぎ節数(1)は,6.2によって試験したとき,表1のとおりとする。
注(1) 上よりのつなぎ節数とする。
2
L 2310 : 2000
表1 つなぎ節数
単位 個/10g
合糸数
つなぎ節数
10本未満のもの
2.0以下
10本以上のもの
1.0以下
4.3
長さ又は質量 1巻若しくは1かせの長さ又は質量(2)は,6.3又は6.4によって試験したとき,表示
された値に対し,表2又は表3のとおりとする。
注(2) 質量は,絶乾質量に公定水分率 (12%) を加えたものとする。
表2 長さ(長さ表示のもの)
単位 %
長さ
許容差
200m以下のもの
+8.0
−2.0
200mを超えるもの
+5.0
−2.0
表3 質量(質量表示のもの)
単位 %
質量
許容差
5g以下のもの
+8.0
−2.0
5gを超えるもの
+5.0
−2.0
4.4
引張強さ 引張強さは,6.5によって試験したとき,付表1を満足しなければならない。ただし,堅
ろう染のものは,その10%減とし,かつ,JIS Z 8401によって小数点以下1けたに丸めた値とする。
4.5
引張強さ変動率 引張強さ変動率は,6.6によって試験したとき,9.0%以下とする。ただし,しつけ
糸は,10.5%以下とする。
4.6
より数変動率 より数変動率は,6.7によって試験したとき,7.5%以下とする。ただし,しつけ糸は,
9.0%以下とする。
4.7
合糸数及び上より方向 合糸数及び上より方向は,6.8によって試験したとき,付表1のとおりとす
る。
4.8
染色堅ろう度 染色堅ろう度は,6.9によって試験したとき,次のとおりとする。
a) 普通染 洗濯試験の判定が変退色3級以上,汚染3級以上であり,熱湯試験の判定が変退色3級以上,
汚染3級以上であり,摩擦試験の判定が3級以上であること。
b) 堅ろう染 強洗濯試験の判定が変退色4級以上,汚染4級以上であり,熱湯試験の判定が変退色4級
以上,汚染4級以上であり,かつ,摩擦試験の判定が4級以上であること。
4.9
仕立て 絹縫糸の仕立ては,かせ,カード,紙管,プラスチック管などに巻いたものとし,仕立て
の状態は,良好でなければならない。
5. 材料 材料は,原則として付表1の原糸繊度のものを用い,かつ,縫糸に適した良質の生糸を使用す
る。
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L 2310 : 2000
6. 試験方法
6.1
試験室及び試料の準備 試験室は,原則として標準状態(3)とする。試料は,この試験室内に放置し
て1時間以上の間隔で質量を測定し,その前後の質量差が,後の質量の0.1%以内となったものを用いる。
ただし,試料を標準状態にするには,乾いた方の状態から吸湿させる。
注(3) JIS L 0105の4.1(試験場所)に規定する標準状態とする。
備考 試験室が標準状態に保たれない場合は,試験時の温度及び湿度を付記する。
6.2
つなぎ節 つなぎ節の試験は,試料を10個以上採取し,そのつなぎ節数(1)を数え,次の式によって
算出し,JIS Z 8401によって小数点以下1けたに丸める。
m
k
A
10
×
=
ここに, A: つなぎ節数(個/10g)
k: 試料のつなぎ節数を合計した数(個)
m: 試料の質量を合計してgで表した値 (g)
6.3
長さ 長さの試験は,JIS L 1095の9.1(糸長)によって行う。この場合,初荷重は,製品の原糸総
合繊度(原糸繊度×合糸数)1dtex当たりに0.3mNとする。
6.4
質量 質量の試験は,JIS L 1095の9.3(正量)によって行う。
6.5
引張強さ 引張強さの試験は,定速緊張形引張試験機又は定速伸長形引張試験機を用いてJIS L 1095
の9.5(単糸引張強さ及び伸び率)によって行う。この場合,つかみ間距離を50cm(測定不可能な場合は
25cm),引張速度を30±2cm/minとし,初荷重は,6.3と同じ値とする。
備考1. 測定回数は,20回以上とし,その平均値をJIS Z 8401によって小数点以下1けたに丸める。
2. 引張強さに用いる試験機は,当分の間,引張強さが従来単位によって表示されたものを使用
してもよい。この場合,引張強さは,1kgf=9.806 65Nの換算率でSI単位に換算し,JIS Z 8401
によって小数点以下1けたに丸める。
6.6
引張強さ変動率 引張強さ変動率は,6.5における引張強さの値を用いて,次の式によって算出する。
100
)1
(
)
(
2
×
−
−
∑
=
x
n
x
x
Tr
ここに,
Tr: 引張強さ変動率 (%)
x: 6.5によって測定した各々の引張強さ (N)
x: 6.5によって測定した引張強さの平均値 (N)
n: 測定回数
6.7
より数変動率 より数変動率の試験は,JIS L 1095の9.15(より数)によって,つかみ間距離50cm
(又は25cm)間のより数(4)を測定し,次の式によって算出する。この場合,初荷重は,6.3と同じ値とす
る。
注(4) もろよりのものについては,上より数とする。
備考 測定回数は,20回以上とする。
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L 2310 : 2000
100
)1
(
)
(
2
×
−
−
∑
=
y
n
y
y
Yn
ここに,
Yn: より数変動率 (%)
y: 各測定におけるより数
y: より数の平均値
n: 測定回数
6.8
合糸数及び上より方向 合糸数及び上より方向の試験は,6.7の試験の際,判定する。
6.9
染色堅ろう度
6.9.1
洗濯試験 洗濯試験は,JIS L 0844のA-2号による。この場合,試験に使用する添付白布は,JIS L
0803に規定する綿及び絹とする。
6.9.2
強洗濯試験 強洗濯試験は,JIS L 0844のA-4号による。この場合,試験に使用する添付白布は,
JIS L 0803に規定する綿及び絹とする。
6.9.3
熱湯試験 熱湯試験は,JIS L 0845による。この場合,試験に使用する添付白布は,JIS L 0803に
規定する綿及び絹とする。
6.9.4
摩擦試験 摩擦試験は,JIS L 0849による。この場合,試験は,摩擦試験機II形を用いて,乾燥状
態で行う。
7. 検査方法 絹縫糸は,4.について検査を行う。この場合,検査は,全数検査又は合理的な抜取検査方
法によって行う。
8. 表示 絹縫糸には,製品ごとに適切な方法で,次の事項を表示しなければならない。
a) 種類又はその略号
b) 品種番号
c) 長さ又は質量
d) 堅ろう染(堅ろう染のものに限る。)
e) 家庭用品品質表示法に基づく表示
1) 繊維の組成
2) 表示者の氏名又は名称及び住所又は電話番号
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L 2310 : 2000
付表1 引張強さ,合糸数及び上より方向
種類
品種番号 原糸繊度
dtex
合糸数 上より方向 引張強さ(最低値)
N {gf}
絹手縫糸
8号
23
{21中}
8×2
S
10.5 {1 070}
9号
9×2
11.9 {1 210}
10号
10×2
13.2 {1 340}
絹ミシン糸
120番
2×2
Z
2.5 { 250}
100番 2号
2×3
3.9 { 390}
3号
3×2
90番
4×2
5.2 { 530}
80番
3×3
5.9 { 600}
50番
4×3
7.9 { 800}
40番5号
5×3
10.0 {1 010}
6号
6×3
11.9 {1 210}
30番7号
7×3
13.9 {1 410}
8号
8×3
15.9 {1 620}
9号
9×3
17.9 {1 820}
20番10号
10×3
19.8 {2 010}
11号
11×3
21.7 {2 210}
15番12号
12×3
23.8 {2 420}
13号
13×3
25.7 {2 620}
10番14号
14×3
27.7 {2 820}
15号
15×3
29.7 {3 020}
8番16号
16×3
31.7 {3 230}
17号
17×3
33.7 {3 430}
18号
18×3
35.6 {3 630}
19号
19×3
37.6 {3 830}
20号
20×3
39.7 {4 040}
絹穴かがり糸
15号
15×3
29.7 {3 020}
16号
16×3
31.7 {3 230}
17号
17×3
33.7 {3 430}
18号
18×3
35.6 {3 630}
絹しつけ糸
3号
3×2
S又はZ
3.6 { 360}
4号
4×2
4.9 { 490}
備考 表に示す原糸繊度以外の繊度の原糸を使用してもよい。その場合には,
下よりとして合糸された原糸の総合繊度が,表から求められる下よりと
して合糸された原糸の総合繊度と一致すること。
6
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改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
石 川 欣 造
文化女子大学
(委員)
鷺 坂 正
通商産業省生活産業局原料紡績課
窪 田 明
通商産業省生活産業局総務課繊維企画官
地 崎 修
工業技術院標準部
横 田 昌 行
通商産業省通商産業検査所
井 口 耕 一
財団法人日本紡績検査協会
中 沢 正 隆
財団法人日本化学繊維検査協会
深 沢 保 義
財団法人撚糸・縫糸検査協会
筒 井 清次郎
日本紡績協会
古 川 元 彦
日本化学繊維協会
小 林 成 一
日本麻紡績協会
藤 井 幸 二
株式会社フジックス
儘 田 雅 夫
儘田産業株式会社
永 井 祐二郎
永井撚糸株式会社
中 村 治 夫
大黒絲業株式会社
瀬 古 廉 久
グンゼ株式会社
安 藝 雅 夫
全日本紳士服工業組合連合会
土 谷 勝 利
全日本婦人子供服工業組合連合会
関 口 基
社団法人縫製機械工業会
横 田 幸 雄
全国縫糸卸協会
齊 藤 有 常
日本百貨店協会
前 島 明 宏
日本チェーンストア協会
吉 岡 初 子
主婦連合会
川 又 幸 子
全国地域婦人団体連絡協議会
(関係者)
塩 野 博 敏
財団法人撚糸・縫糸検査協会
(事務局)
堀 部 和 作
日本縫糸工業協会