L 1950-2:2018
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 原理······························································································································· 2
5 装置及び材料 ··················································································································· 2
5.1 チューブ状装置 ············································································································· 2
5.2 吸虫管 ························································································································· 3
5.3 試験蚊 ························································································································· 3
5.4 試料 ···························································································································· 3
6 試験······························································································································· 4
6.1 試験環境 ······················································································································ 4
6.2 準備 ···························································································································· 4
6.3 試験操作 ······················································································································ 4
6.4 試験蚊の試験後処理 ······································································································· 4
6.5 試験結果 ······················································································································ 4
7 試験報告書 ······················································································································ 5
附属書A(参考)試験に用いる蚊の飼育環境について ································································· 7
附属書B(参考)プロビット法による半数ノックダウン時間(KT50)の算出例································· 8
附属書C(参考)致死性及びノックダウン性の区分 ···································································· 9
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本
工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS L 1950の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS L 1950-1 第1部:誘引吸血装置法
JIS L 1950-2 第2部:強制接触法
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日本工業規格 JIS
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生地の防蚊性試験方法−第2部:強制接触法
Textiles-Anti-mosquito performance test method-
Part 2: Contact test method
序文
近年,蚊などの昆虫類が媒介する感染症の流行への懸念が高まっている。これに対する消費者の要求に
応えるため,高機能加工として防蚊性をもつ生地の需要が拡大傾向にある。しかし,公定の防蚊加工生地
の性能評価方法はなく,その性能に関して,公平な技術情報を提供することが難しい現状にある。したが
って,防蚊性能を客観的に評価するため,試験方法を規定することにした。
衣類など生地を介して吸血が想定される素材には,ヒト又は動物を吸血源に用いない誘引吸血装置法を
第1部として規定し,蚊帳,カーテン,テントなどにおいて,蚊を殺虫又はノックダウンさせることによ
って蚊の活動場所と人の居住場所とを分離する目的で使用する素材には,強制接触法を第2部として規定
した。
1
適用範囲
この規格は,生地の防蚊性試験方法について規定する。この規格は,蚊の活動場所と人の居住場所とを
分離する目的で使用する蚊帳,カーテン,テントなどの生地に適用する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS L 0105 繊維製品の物理試験方法通則
JIS L 0207 繊維用語(染色加工部門)
JIS L 0208 繊維用語−試験部門
JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)
JIS Z 8401 数値の丸め方
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS L 0207及びJIS L 0208によるほか,次による。
3.1
正常虫
試験開始前と変わりなく正常な活動をする試験蚊。
2
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3.2
死虫
刺激を与えても動きなどの反応が見られない状態の試験蚊。
3.3
ひん(瀕)死虫
刺激を与えるとかすかに動きが見られる状態の試験蚊。
これらの試験蚊は薬剤中毒症状が進行していて時間が経っても回復せず致死することから,死亡率算出
時には死虫として扱う。
3.4
ノックダウン虫
薬剤中毒の症状の一つで,仰向けになってはね(翅)又は脚を激しく震わせて動き回り,もがき苦しむ
状態の試験蚊,又は動かなくなった状態でも刺激を与えると激しく反応する試験蚊。これらの試験蚊は,
時間が経つと回復する場合もある。
3.5
致死性
試料が接触した正常虫を,死虫又はひん(瀕)死虫にさせる性能。この規格では,24時間後の死亡率で
示す。
3.6
ノックダウン性
試料が接触した正常虫を,ノックダウン虫にさせる性能。この規格では,60分後のノックダウン率で示
す。
4
原理
試験蚊を,閉鎖空間において防蚊加工剤を含有する生地に強制的に接触させ,一定時間後に正常虫,死
虫,ひん(瀕)死虫及びノックダウン虫の個体数を計数して,試験蚊に対する致死性及びノックダウン性
を判定する。
5
装置及び材料
5.1
チューブ状装置
チューブ状装置は,5.1.1及び5.1.2から構成される。チューブ状装置の例を図1に示す。
3
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図1−チューブ状装置の例
5.1.1
試験チューブ 試験チューブは,内径44 mm,高さ125 mmのガラス製,透明プラスチック製など
のチューブ。チューブの両端は,蚊が逃げないよう蓋状のもので覆う構造とする。
なお,少なくとも一方の蓋はネット付き蓋とする。
5.1.2
ネット付き蓋 ネット付き蓋は,試験蚊が通過できないメッシュサイズのネットが取り付けられた
蓋。
5.2
吸虫管
吸虫管は,試験蚊をチューブ内に分別放虫することができる器具又は装置。
5.3
試験蚊
試験蚊は,継代飼育された未吸血のヒトスジシマカの雌を用いる。ただし,ヒトスジシマカ以外の雌の
蚊を用いる場合は,箇条7で規定する試験報告書に試験蚊情報を記載する。羽化後日齢2〜5日の蚊を試験
に用いる。
注記 試験に用いる蚊の飼育環境は,附属書Aに示す。
5.4
試料
5.4.1
一般
試料は,測定試料及び標準試料の2種を準備し,各々から試験片を採取する。
なお,標準試料は,JIS P 3801に規定する1種又は2種のろ紙とする。
5.4.2
試料及び試験片の取扱い
試料及び試験片は,直射日光の当たらない,温度27 ℃±2 ℃,相対湿度(651520
−+)%の環境下で16時
間以上静置し調整する。このとき,防蚊加工剤成分の拡散・付着によって周辺への汚染が懸念されるため,
試料及び試験片は,個別に密封容器などに入れ,試料汚染及び実験室汚染がないようにする。
5.4.3
試験片の採取
試験片の採取は,次による。
a) 試験片の採取場所は,JIS L 0105の箇条6(試料及び試験片の採取及び準備)による。
b) 寸法 12 cm×15 cm
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c) 数量 3枚
6
試験
6.1
試験環境
試験は,温度27 ℃±2 ℃,相対湿度(651520
−+)%で直射日光の当たらない環境下で実施する。
なお,蚊によって生態は異なるため,ヒトスジシマカ以外の蚊を用いる場合,適切な環境条件に変更し
てもよい。
6.2
準備
6.2.1
試験チューブ及び蓋の洗浄
試験チューブ及び蓋は,事前に洗浄及び乾燥を実施しておく。
6.3
試験操作
試験操作手順は,次による。
a) 試験チューブを2本用意し,一方のチューブには,内面に試験片と同寸法のろ紙を固定する。これを
“ろ紙チューブ”とする。
なお,このろ紙は,JIS P 3801に規定する1種又は2種のろ紙を用いる。
b) 他方のチューブには,試験片を内面に固定する。これを“試料チューブ”とする。
c) 試験の直前に,ろ紙チューブの中に10個体の試験蚊を分別放虫の後,ろ紙チューブの蓋をする。
d) ろ紙チューブの試験蚊を試料チューブへと全て移動させた後,試料チューブの蓋をする。
e) 試験蚊を試料チューブへ移動させた時点を試験開始とし,その後,5分,10分,15分,20分,25分,
30分,45分及び60分経過時の試料チューブ内のノックダウン虫の個体数を計数する。
f)
試験開始60分経過後,試料チューブ内の試験蚊をろ紙チューブへと全て移動させた後,ろ紙チューブ
の蓋をする。
g) ろ紙チューブのネット付き蓋が上面になるように立て,その蓋上に餌として1 %のしょ糖水溶液を含
ませた脱脂綿を設置しておく。
なお,しょ糖水溶液含浸脱脂綿が乾かないように軽くフィルムなどをかぶせ,静置する。
h) f)から24時間後の死虫及びひん(瀕)死虫の個体数を計数する。
測定試料及び標準試料について,上記のa)〜h)を3回繰り返す。
6.4
試験蚊の試験後処理
試験後の試験蚊(未使用蚊含む。)は,凍結処理などで確実に殺処分した後,廃棄物に関する法令,条例
などに従って廃棄する。
6.5
試験結果
6.5.1
計算
3回の試験結果から,死亡率,ノックダウン率及び半数ノックダウン時間(KT50)を,次のa)〜c)によ
って求める。
a) 死亡率
100
M×
=N
N
M
··········································································· (1)
ここに,
M: 死亡率(%)
NM: 死虫数及びひん(瀕)死虫数の総数(個体数)
N: 投入試験蚊数(個体数)
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3回繰り返した死亡率を平均して,JIS Z 8401の規則Bによって整数位に丸める。
b) ノックダウン率
100
D×
=N
N
D
············································································ (2)
ここに,
D: ノックダウン率(%)
ND: 試験開始60分経過後のノックダウン虫数(個体数)
N: 投入試験蚊数(個体数)
3回繰り返したノックダウン率を平均して,JIS Z 8401の規則Bによって整数位に丸める。
注記 致死性及びノックダウン性を区分する場合は,その区分を附属書Cに示す。
c) 半数ノックダウン時間(KT50) 試験経過時間ごとのノックダウン数から,プロビット法を用いて統
計解析し,半数ノックダウン時間(KT50)と,その95 %信頼区間とを推定する。3回繰り返した測定
結果から算出された各推定値について,JIS Z 8401の規則Bによって整数位に丸め,プロビット解析
に用いた統計ソフト又は計算方法を併記する。ただし,試験開始5分後にノックダウン虫が5個体以
上の場合,半数ノックダウン時間(KT50)は“5分未満”と報告し,試験開始60分後のノックダウン
虫が5個体未満の場合,半数ノックダウン時間(KT50)は“60分超”と報告する。また,この場合,
95 %信頼区間は報告しない。
注記 統計ソフトを用いたプロビット法の例は,附属書Bに示す。
6.5.2
試験成立の判定
試験成立の成否は,標準試料による死亡率及びノックダウン率を6.5.1のa)及びb)によって計算したと
き,死亡率及びノックダウン率のいずれもが10 %未満となった場合に,試験成立と判定する。
死亡率又はノックダウン率の少なくとも一方が10 %以上となった場合は,その試験日かつその飼育ロッ
トの試験蚊を用いた試験結果は全て無効とする。
7
試験報告書
試験報告書には,次の事項を記載する。
a) 試験年月日
b) 規格番号
c) 試験場所の環境条件
d) 試験蚊情報(蚊の種類,コロニー名,継代飼育場所又は購入先,羽化後日齢)
e) 試料情報(品名,品番,目付,薬剤種類など受渡当事者間で必要な情報)
f)
試験結果(ノックダウン数,半数ノックダウン時間(KT50),95 %信頼区間,ノックダウン率,死亡
率)
g) プロビット解析に用いた統計ソフト又は計算方法
h) 報告が必要と思われる特記事項
i)
試験方法からの逸脱点
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参考として,試験報告書の例を表1に示す。
表1−試験報告書の例
試験実施日 年 月 日
規格番号
JIS L 1950-2:2018
試験環境
実験開始時: ℃, %RH, 実験終了時: ℃, %RH
試験蚊情報 蚊の種類,コロニー名,継代飼育場所又は購入先,羽化後日齢
試料情報
品名,品番,薬剤種類など ほか
試料
試験
回数
投入
試験蚊
個体数
N
ノックダウン数
KT50
(分)
KT50の
95 %信頼
区間(分)
ノックダウン率
死亡率
5
分
10
分
15
分
20
分
25
分
30
分
45
分
60
分
D
ノック
ダウン
性の区
分記号
M
致死性
の区分
記号
測定試料
1回目
〜
2回目
〜
3回目
〜
平均
〜
標準試料
1回目
2回目
3回目
平均
プロビット解析に用いた統計ソフト又は計算方法
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附属書A
(参考)
試験に用いる蚊の飼育環境について
A.1 飼育環境
試験に用いる蚊は,次の環境条件で飼育する。ただし,次に示していない条件は,一般的な飼育手法に
よる。
a) 飼育室の雰囲気 試験場所の雰囲気,温度27 ℃±2 ℃,相対湿度(651520
−+)%と同様とする。
b) 照明 飼育室の照明は,明16時間,暗8時間のサイクルとする。
c) 飼育 成虫蚊は,試験に用いるまで,次のとおり飼育する。
1) 雌雄混合のまま,飼育ケージに放虫する。
2) 飼育中は3 %〜5 %のしょ糖水溶液を与え,吸血させない。
3) 各試験方法で規定する羽化後日齢に達した雌成虫を,試験に用いる。
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附属書B
(参考)
プロビット法による半数ノックダウン時間(KT50)の算出例
B.1
一般
防蚊加工生地に対する試験蚊の接触時間(試験経過時間の対数)とノックダウン率との関係は,ほとん
どの場合,時間が長くなるに従ってノックダウン率が必ず増加又は横ばいとなり,減少することはないと
予想される。
この場合の単調増加曲線は,S字状(シグモイド曲線状)を示し,式(B.1)に示す累積正規分布関数に従
うとされる。そこで,得られた試験データ(試験経過時間の対数とノックダウン率との関係)をプロビッ
ト曲線へ近似し,半数ノックダウン時間(KT50)を求める。
こうした手法は,プロビット法,プロビット分析,プロビット解析などと呼ばれ,薬剤の用量と投与さ
れた虫個体群の致死数との関係から半数致死量(LD50)を求める場合など,生存/死亡のような2値デー
タを取り扱う生物検定法において一般的に用いられる手法である(詳細は,生物検定に関する専門書を参
照。)。
dx
e
x
F
P
x
x
∫∞
−
−
−
=
=
2
2
2
)
(
2
2
1
)
(
σ
μ
πσ
··················································· (B.1)
ここに,
P: ノックダウン率
x: 試験経過時間の対数
B.2
算出結果の例
プロビット法による半数ノックダウン時間(KT50)推定値の算出には最ゆう(尤)法が用いられるため,
統計パッケージソフトウェアによる解析が一般的である。
算出結果の例を,表B.1に示す。
表B.1−算出結果の例
投入試験蚊
個体数 N
ノックダウン数
半数ノックダウン時間
(KT50)
(分)
KT50の
95 %信頼区間
(分)
5
分
10
分
15
分
20
分
25
分
30
分
45
分
60
分
10
0
0
1
4
4
8 10 10
24
21〜27
使用解析ソフトウェア:R
リンク関数: probit
算出関数: dose.LD50
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附属書C
(参考)
致死性及びノックダウン性の区分
C.1 一般
生物を用いた試験であるため,試料によっては測定値が大きくばらつくことも想定される。そこで,死
亡率又はノックダウン率を段階的な区分によって示す。
C.2 致死性の区分
致死性は,6.5.1 a)によって求められた死亡率から,表C.1によって区分する。
表C.1−致死性の区分及び記号
死亡率
90 %以上
65 %以上90 %未満
35 %以上65 %未満
35 %未満
区分記号
M90+
M65
M35
M35−
C.3 ノックダウン性の区分
ノックダウン性は,6.5.1 b)によって求められたノックダウン率から,表C.2によって区分する。
表C.2−ノックダウン性の区分及び記号
ノックダウン率
90 %以上
65 %以上90 %未満
35 %以上65 %未満
35 %未満
区分記号
D90+
D65
D35
D35−