L 1940-3:2019 (ISO 14362-3:2017)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 一般······························································································································· 2
5 原理······························································································································· 2
6 安全措置························································································································· 3
7 試薬······························································································································· 3
8 装置······························································································································· 3
9 試験手順························································································································· 5
9.1 一般 ···························································································································· 5
9.2 試験片の準備 ················································································································ 5
9.3 分散染料の色素の抽出−抽出による調製············································································· 5
9.4 分散染料以外の染料で染色された繊維製品−非抽出による調製 ··············································· 5
9.5 還元分解 ······················································································································ 5
9.6 4-アミノアゾベンゼンの分離及び濃縮 ················································································ 5
9.7 校正溶液 ······················································································································ 6
9.8 試験手順の検証 ············································································································· 6
9.9 クロマトグラフによる分析 ······························································································ 7
10 評価 ····························································································································· 7
10.1 計算 ··························································································································· 7
10.2 試験方法の信頼性 ········································································································· 7
11 試験報告書 ···················································································································· 7
附属書A(参考)クロマトグラフ分析法 ··················································································· 8
附属書B(参考)計算方法 ···································································································· 13
附属書C(参考)分析結果の信頼性 ························································································ 14
附属書D(参考)評価指針−分析結果の解釈 ············································································ 15
L 1940-3:2019 (ISO 14362-3:2017)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人繊維
評価技術協議会(JTETC)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業
規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業
規格である。
これによって,JIS L 1940-3:2014は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS L 1940の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS L 1940-1 第1部:繊維の抽出及び非抽出による特定アゾ色素の使用の検出
JIS L 1940-3 第3部:4-アミノアゾベンゼンを放出する特定アゾ色素の使用の検出
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日本工業規格 JIS
L 1940-3:2019
(ISO 14362-3:2017)
繊維製品−アゾ色素由来の
特定芳香族アミンの定量方法−
第3部:4-アミノアゾベンゼンを放出する
特定アゾ色素の使用の検出
Textiles-Methods for determination of certain aromatic amines derived from
azo colorants-Part 3: Detection of the use of certain azo colorants,
which may release 4-aminoazobenzene
序文
この規格は,2017年に第1版として発行されたISO 14362-3を基に,技術的内容及び構成を変更するこ
となく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
4-アミノアゾベンゼンを生じる可能性のあるアゾ色素は,JIS L 1940-1の試験条件の下でアニリン,1,4-
フェニレンジアミンなどの特定芳香族アミン(以下,アミンという。)を生成する。
4-アミノアゾベンゼンを生成するアゾ色素の存在は,追加的情報(例えば,使用される染料の化学構造)
又は特殊な試験をせずに確証を得ることはできない。
この規格は,JIS L 1940-1の補足的試験であり,製品に4-アミノアゾベンゼンを放出する可能性のある
特定アゾ色素の使用を検出する,次の試験方法について規定する。
− 染料抽出をせず,還元剤によって試験する方法 この方法は,特にセルロース又はたんぱく繊維,例
えば,綿,ビスコース,羊毛,絹などに適用できる。
− 繊維から染料を抽出することによって試験する方法 この方法を適用できる繊維は,例えば,ポリエ
ステル,人工皮革などがある。
特定の繊維混用品については,9.3及び9.4に規定する試験方法,すなわち,抽出及び非抽出試験方法を
適用する場合もある。
この規格の試験方法は,製品に還元処理なしでアミン(4-アミノアゾベンゼン)が存在する分散染料
(Solvent Yellow 1)を,検出することができる。
アゾ色素の還元分解で,一つ以上のアミンを放出する可能性のある特定アゾ色素の使用は,4-アミノア
ゾベンゼンの場合を除いて,この試験方法では定量できない。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 14362-3:2017,Textiles−Methods for determination of certain aromatic amines derived from azo
2
L 1940-3:2019 (ISO 14362-3:2017)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
colorants−Part 3: Detection of the use of certain azo colorants, which may release
4-aminoazobenzene(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS L 1940-1 繊維製品−アゾ色素由来の特定芳香族アミンの定量方法−第1部:繊維の抽出及び非抽
出による特定アゾ色素の使用の検出
注記 対応国際規格:ISO 14362-1,Textiles−Methods for determination of certain aromatic amines
derived from azo colorants−Part 1: Detection of the use of certain azo colorants accessible with and
without extracting the fibres(IDT)
ISO 3696,Water for analytical laboratory use−Specification and test methods
3
用語及び定義
用語及び定義は,この規格では規定しない。
4
一般
ある種のアゾ色素は,アゾ基の還元分解によって4-アミノアゾベンゼンを放出する可能性がある(表1
参照)。
表1−4-アミノアゾベンゼンa)
番号
CAS番号
INDEX番号
EC番号
化学物質名
22
60-09-3
611-008-00-4
200-453-6
4-アミノアゾベンゼン
注記1 INDEX番号とは,欧州経済共同体(EEC)で制定された危険物の取扱いに関する指令67/548/EEC Annex I
に記載された化学物質の管理番号をいう。
注記2 EC番号とは,欧州共同体が定めた欧州既存商業化学物質リスト(European Inventory of Existing Commercial
Chemical Substances)に記載された,7桁の化学物質の同定番号をいう。
注a) 欧州議会の規制(EC)No 1907/2006及び2006年12月18日に設置された化学物質のREACH規制理事会で禁
止された芳香族アミン。
5
原理
繊維製品から切り出された試料は,分散染料のための染料抽出法及び/又はその他の種類の色素(顔料
及び/又は染料)に対する直接還元法によって試験する(JIS L 1940-1を参照)。
抽出後の試験片及び残さは,密閉容器に入れ,40 ℃のアルカリ溶液中で亜ジチオン酸ナトリウムによっ
て処理する。この過程で放出された4-アミノアゾベンゼンは,液−液抽出法によってt-ブチルメチルエー
テル相に移す。t-ブチルメチルエーテル相の一定量を,試験に供する。
4-アミノアゾベンゼンの検出及び定量は,クロマトグラフィーによる(附属書A参照)。
一つのクロマトグラフを使用した試験で4-アミノアゾベンゼンが検出された場合は,他の一つ以上の試
験方法で確認試験をしなければならない。
3
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安全措置
警告 4-アミノアゾベンゼンは,人間に発がん性がある物質又は発がん性があると疑われる物質に分
類される。この物質の取扱い及び廃棄に当たっては,国の定める健康及び安全規定を厳守しな
ければならない。
この試験方法で試験材料を取り扱う際に安全で適切な技術を用いることは,試験実施者の責任である。
物質安全データシート,安全推奨事項などの詳細については,製造業者に相談する。
注記 国家及び地方政府の定める安全規定として,化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律,
労働安全衛生法などがある。
7
試薬
特に明記しない限り,試薬級の化学薬品を使用する。
7.1
亜ジチオン酸ナトリウム水溶液 ρ=200 mg/mL,用時調製する。55分間±1分間密閉容器に入れて
放置したのち,ガラスビーカーに移し,5分間〜10分間静置後,10分間以内に使用する。
7.2
水酸化ナトリウム水溶液 ω=2 % 1)
注1) ωは,質量濃度2 %。
7.3
メタノール
7.4
キシレン(異性体の混合物) CAS No 1330-20-7
7.5
t-ブチルメチルエーテル
7.6
塩化ナトリウム
7.7
4-アミノアゾベンゼン 入手可能な最も純度の高い標準品。
7.8
ガスクロマトグラフ試験方法の内部標準(IS) ISは,例えば,GC-MS分析の場合,次の内部標準
のうちの一つを使用することができる。
− IS1:ナフタレン-d8,CAS No.1146-65-2
− IS2:2,4,5-トリクロロアニリン,CAS No.636-30-6
− IS3:アントラセン-d10,CAS No.1719-06-8
7.9
標準液
7.9.1
内部標準(IS)のt-ブチルメチルエーテル溶液 ρ=10.0 μg/mL
7.9.2
4-アミノアゾベンゼンの校正溶液 4-アミノアゾベンゼンのメタノール溶液 ρ=500 μg/mL
7.10
水 ISO 3696に規定する3級。
8
装置
8.1
抽出装置 抽出装置は,図1の構成要素からなり,次のものを用いる。
− コイル形冷却器NS 29/32
− 凝縮した溶剤が降り注ぐ試験片を保持するための,溶剤に不活性な物質から成る引っ掛けフック
− 100 mLの丸底フラスコ NS 29/32
− 加熱源
4
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1 コイル形冷却器
2 引っ掛けフック
3 丸底フラスコ
4 試験片
図1−抽出装置の例
注記 同様の結果が得られるのであれば,類似の装置が使用可能である。
8.2
超音波浴
8.3
反応容器 密閉性形の耐熱ガラス製で,容量20 mL〜50 mLのもの。
8.4
熱源 40 ℃±2 ℃の温度を保持できるもの。
8.5
ロータリーエバポレーター 真空制御及び水浴を備えたもの,又は他の種類の蒸発装置も使用する
ことができる。例えば,液体上の窒素の制御された流れを伴う水浴。
8.6
遠心分離機 3 000回転/分以上の能力のもの。
8.7
ピペット 適切な大きさのピぺット又は可変量ピペット。
8.8
振とう器 相の効率的な混合を保証するもの。
注記 1秒間に5周期が可能で,かつ,振り幅が20 mm〜50 mmのものが使用可能である。
8.9
クロマトグラフ 8.9.1〜8.9.4から選択したもの。
8.9.1
薄層クロマトグラフ(TLC)又は高性能薄層ク口マトグラフ(HPTLC)装置 関連検出器を付帯
するもの。
8.9.2
高速液体クロマトグラフ(HPLC) 勾配溶離,ダイオードアレイ検出器(DAD)又は質量選択検
出器(MS)付きのもの。
8.9.3
ガスクロマトグラフ(GC) 水素炎イオン化検出器(FID)又は質量選択検出器(MS)を装備した
もの。
8.9.4
キャピラリー電気泳動装置(CE) ダイオードアレイ検出器(DAD)付きのもので,ポリテトラフ
ルオロエチレン製メンブレンフィルタは,孔径が0.2 μmのもの。
注記 クロマトグラフィー条件の詳細を,附属書Aに示す。
5
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試験手順
9.1
一般
JIS L 1940-1の試験でアニリン及び1,4-フェニレンジアミン又はアニリンだけが検出された試験片は,こ
の規格を適用する。JIS L 1940-1の10.1(キシレンを用いた分散染料の抽出)によって検出された場合は,
9.3を適用する。また,JIS L 1940-1の10.2(顔料で着色された繊維製品及び/又は分散染料以外の色素で
染色された繊維製品)によって検出された場合は,9.4を適用する。
9.2
試験片の準備
多色の繊維製品の場合は,それぞれの色について,可能な限り色ごとに別々に試料を採取しなければな
らない。複数の繊維部品で構成されている繊維製品は,それぞれの繊維部品の繊維の種類ごと及び/又は
色別に試験しなければならない。
試料から全質量が1 gになるように試験片を切り取る。分散染料の色素の抽出(9.3)に供する試験片で,
8.1に規定する装置を用いる場合は,細長くひも状に切り,その他の装置を用いる場合又は還元分解だけに
供する試料については,細かく切断する(9.4及び9.5)。
9.3
分散染料の色素の抽出−抽出による調製
JIS L 1940-1の10.1でアニリン及び1,4-フェニレンジアミンが陽性となった場合,同じ組成の別の試験
片を使って,試験片から滴下する溶媒が無色になるまで25 mLの沸騰キシレンによって30分間〜40分間
抽出装置(8.1)に保持する。キシレン抽出物を抽出器から取り出す前に,室温まで冷却する。試験片は,
抽出器から取り出し廃棄する。
抽出液を,ロータリーエバポレーター(8.5)で45 ℃〜75 ℃で濃縮した後,メタノール(7.3)7 mLを2
分し,2回に分けて残さに加え,1回ごとに超音波浴(8.2)を用いて色素を分散溶解する。
続いて,還元分解(9.5)を行う。
複数の段階を経て移すのがよい。例えば,4 mLのメタノールを添加し,ガラスフラスコ中の残さを超音
波浴で溶解する。次に,溶解液をピペットで定量性を確保しながら反応容器に移す。引き続き,1 mLのメ
タノールで3回洗浄し,定量性を確保しながら洗浄液を反応容器に移すのがよい。
4-アミノアゾベンゼンを放出する分散染料(例えば,C.I.Disperse Yellow 23)を直接定量する場合は,メ
タノール溶液の一定量を直ちにLC-DAD-MSで分析するのがよい。
9.4
分散染料以外の染料で染色された繊維製品−非抽出による調製
JIS L 1940-1の10.2(顔料で着色された繊維製品及び/又は分散染料以外の色素で染色された繊維製品)
でアニリン及び1,4-フェニレンジアミンが陽性となった場合は,試験片を直接反応容器に入れる。
9.5
還元分解
小片に切断した試験片及び/又は抽出液(メタノール溶液)の入った反応容器(8.3)に,9 mLの水酸
化ナトリウム水溶液(7.2)を加えて密閉し,激しく振とうする。
次に,アゾ基を還元分解するため1.0 mLの亜ジチオン酸ナトリウム水溶液(7.1)を加えて激しく振と
う後,密閉して40 ℃±2 ℃で正確に30分間反応させる。反応後,1分間以内に室温(20 ℃〜25 ℃)に下
げる。
9.6
4-アミノアゾベンゼンの分離及び濃縮
5 mLのt-ブチルメチルエーテル(7.5)又は5 mLの内部標準(IS)のt-ブチルメチルエーテル溶液(7.9.1)
を,還元処理液に加える。次に,7 gの塩化ナトリウム(7.6)を加える。
その後,混合物を水平往復振とう器(8.8)で45分間振とうする。振とう速度は,5周期/秒とする。
冷却から振とうまでの時間は5分間以内とし,完全な相分離を得るために,混合物は遠心分離器を使用
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することが望ましい。
次に,t-ブチルメチルエーテル相の一定分量を試験用小瓶に移す。移した後,直ちに試験用小瓶を密閉
する。4-アミノアゾベンゼンの検出及び定量は,8.9に規定するクロマトグラフ分析法による。
引き続き,試験のために,溶剤の変更又は9.5の抽出液を濃縮し,それを別の適切な溶剤(例えば,メ
タノール)に移すことが必要な場合がある。制御されていない状態で,溶剤の除去(真空蒸発装置での濃
縮及び乾燥)を行った場合は,かなりの量の4-アミノアゾベンゼンを消失させる可能性がある。
必要な場合は,50 ℃を超えない条件で,ロータリーエバポレーターの真空度をあまり上げ過ぎて絶乾さ
せずに,t-ブチルメチルエーテル抽出物を濃縮し,約1 mLとすることが望ましい。その後,残りの溶剤を
真空にせず,低速流の不活性ガスで注意深く除去する。
試験の一連の工程で,マトリックス効果によって検体の損失の可能性があるため,溶剤変更は避けるこ
とが望ましい。マトリックス効果のため,4-アミノアゾベンゼンが不安定な状態を示すことがある。分析
作業に遅れが生じると,検体の多大の損失が生じる可能性がある。全試験を24時間以内に実行できない場
合は,試験片は−18 ℃未満の環境で保管する。
9.7
校正溶液
9.7.1
抽出なしの場合の校正溶液の調製
5 mLのt-ブチルメチルエーテル(7.5)又は5 mLの内部標準(IS)のt-ブチルメチルエーテル溶液(7.9.1)
のそれぞれに100 μLの4-アミノアゾベンゼンの校正溶液(7.9.2)を加える。この混合液は校正に使用する。
この試験手順による相分離で得られる4-アミノアゾベンゼンの回収率は,95 %〜100 %である。アミンが5
mg/kgを超えて検出された場合,その定量は,JIS L 1940-1に規定する検量線による。
9.7.2
抽出を行う場合の校正溶液の調製
100 μLの4-アミノアゾベンゼンの校正溶液(7.9.2)に6.9 mLのメタノール(7.3),9 mLの水酸化ナト
リウム水溶液(7.2),1 mLの水(7.10)及び7 gの塩化ナトリウム(7.6)並びに5 mLのt-ブチルメチルエ
ーテル(7.5)又は5 mLの内部標準(IS)のt-ブチルメチルエーテル溶液(7.9.1)をそれぞれ加える。
この混合物を水平往復振とう器(8.8)で45分間振とうし,確実に混合する。
引き続き,試験のために,t-ブチルメチルエーテル相から一定分量を採取する。採取した試験用小瓶は
直ちに密閉する。
注記 マトリックス中のメタノール含有量が高いため,異なる回収率が観察され得る。この場合,メ
タノール含有マトリックスを用いて少なくとも3点の検量線を作成する必要がある。
9.8
試験手順の検証
9.8.1
抽出なしの場合
試験手順を検証するために,100 μLの4-アミノアゾベンゼンの校正溶液(9.7.1)を9.5によって試験す
る。4-アミノアゾベンゼンの回収率は,最低でも60 %でなければならない。
注記 試験手順の検証では,9.7.1に規定する校正溶液に直接1.0 mLの亜チジオン酸ナトリウムを加
えて,還元分解することになる。
9.8.2
抽出を行う場合
試験手順を検証するために,100 μLの4-アミノアゾベンゼン校正溶液(9.7.2)に6.9 mLのメタノール
を加える。この混合液を9.5によって試験する。
4-アミノアゾベンゼンの回収率は,最低でも60 %でなければならない。
注記 試験手順の検証では,この混合液に直接1.0 mLの亜チジオン酸ナトリウムを加えて,還元分解
することになる。
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9.9
クロマトグラフによる分析
4-アミノアゾベンゼンの検出は8.9に規定するクロマトグラフによる。有効性が証明されればその他の
方法も使用できる。
一つのクロマトグラフィーによる試験で4-アミノアゾベンゼンが検出された場合は,他の一つ以上の試
験方法で確認を行う。両方の方法で検出が確認された場合だけ,試験結果を有効とみなす。
10
評価
10.1
計算
4-アミノアゾベンゼンの量は,通常ソフトウェアのプログラムによって計算する。計算は手動でも可能
で,その方法を,附属書Bに示す。
注記 4-アミノアゾベンゼンの定量は,試料1 kg当たりのアミン量(mg)を算出し,計算結果は四捨
五入によって整数位に丸めるのがよい。
10.2
試験方法の信頼性
試験方法の信頼性については,附属書Cを参照する。
11
試験報告書
試験報告書には,少なくとも次の事項について記載しなければならない。
a) この規格の規格番号
b) 試料の種類,生産国及び表示(該当する場合は,試料の部位)
c) 試料受領日及び試験実施日
d) サンプリング手順
e) 検出方法及び定量方法
f)
試験結果,4-アミノアゾベンゼンの検出及び検出限界(mg/kg)
4-アミノアゾベンゼン濃度が30 mg/kg以下で検出された場合は,解釈には注意する。結果の解釈を,附
属書Dに示す。
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附属書A
(参考)
クロマトグラフ分析法
A.1 予備的所見
分析機器(8.9)は,試験機関によって異なるため,クロマトグラフ分析全般に適用可能な説明は不可能
であるが,次のパラメータは,実際の試験で良好に使用できる。
A.2 薄層クロマトグラフィー(TLC)
プレート(HPTLC) :蛍光指示薬F254配合シリカゲル60,200 mm×100 mm
注入量
:2 μL〜5 μL 点状に注入
移動溶媒1
:クロロホルム/酢酸 容量比で,90:10
展開
:飽和形展開槽
検出
:1 蛍光指示薬F254のTLCプレート
2 UVランプ 試薬1及び試薬2の連続処理の後,反応時間は約5分間とする。
両方又はいずれか一方の条件で検出する。
試薬1
:窒素酸化物(NOx)発生には,硫酸約1 mLを入れたビーカーに,固体亜硝酸ナ
トリウム少量を加える。即座に,チャンバーを閉じて反応させる。
チャンバー内に乾燥したプレートを置き,5分間後にそれを取り出して冷たい
空気流中で乾燥する。
試薬2
:次に,乾燥したプレートに1 molの水酸化カリウム(KOH)及びメタノールで
調製した0.2 %のα-ナフトール溶液を噴霧する。
プレート(TLC)
:蛍光指示薬F254配合シリカゲル60,200 mm×100 mm
注入量
:10.0 μL 線状に注入
移動溶媒2
:クロロホルム/酢酸エチル/酢酸 容量比で60:30:10
移動溶媒3
:クロロホルム/メタノール 容量比で95:5
移動溶媒4
:n-酢酸ブチル/トルエン 容量比で30:70
展開
:飽和形展開槽
移動溶媒2及び3
:連続的に注入しプレートを乾燥させない。
検出
:1 蛍光指示薬F254のTLCプレート
2 UVランプ 試薬1及び試薬2の連続処理の後,反応時間は約5分とする。
両方又はいずれか一方の条件で検出する。
プレート(TLC)
:シリカゲル60,200 mm×200 mm
注入量
:10.0 μL 線状に注入
移動溶媒2
:クロロホルム/酢酸エチル/酢酸 容量比で60:30:10
移動溶媒3
:クロロホルム/メタノール 容量比で95:5
移動溶媒2及び3
:注入は連続的に行い,プレートは乾燥させない。
展開
:飽和形展開槽
検出
:試薬1及び試薬2での連続した処理を行う。反応時間は約5分間とする。
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L 1940-3:2019 (ISO 14362-3:2017)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
A.3 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(図A.3及び図A.4参照)
A.3.1 高速液体クロマトグラフィー/ダイオードアレイ検出器(HPLC/DAD)
溶離液1
:メタノール
溶離液2
:0.68 gのりん酸二水素カリウムを1 000 mLの水に溶解し,次いで,150 mLの
メタノールを加える。
固定相
:Zorbax Eclipse XDB C18® 1)(3.5 μm),150 mm×4.6 mm
流量
:0.6 mL/min〜2.0 mL/min(流量勾配は,勾配の項目を参照)
カラム
:32 ℃
注入量
:5 μL
検出
:ダイオードアレイ検出器(DAD),分光器
定量化
:240 nm,380 nmで定量
勾配
: 時間(min) 容離液1(%) 流量(mL)
0.00
10.0
0.6
22.50
55.0
0.6
27.50
100.0
0.6
28.50
100.0
0.95
28.51
100.0
2.0
29.00
100.0
2.0
29.01
10.0
2.0
31.0
10.0
0.6
35.00
10.0
0.6
注1) Zorbax Eclipse XDB C18®は,商業的に入手可能な適切な製品の例である。この情報は,この規
格のユーザーの便宜のために提供されたものであり,製品を保証するものではない。
A.3.2 高速液体クロマトグラフ分析法/質量選択検出器(HPLC/MS)
溶離液1
:アセトニトリル
溶離液2
:5 mmolの酢酸アンモニウムを1 000 mLの水に溶解し,pH 3.0とする。
固定相
:Zorbax Eclipse XDB C18® 1)(3.5 μm),2.1 mm×50 mm
流量
:300 μL/ min
勾配
:溶離液1を10 %でスタートし,1.5分間以内に溶離液1を20 %まで増加し,6
分間以内に溶離液1を90 %まで直線的に増加
カラム温度
:40 ℃
注入量
:2.0 μL
検出
:4重極及び/又はイオントラップ質量検出器,走査形及び/又はプロダクトイ
オン質量選択検出器
噴霧ガス
:窒素(ボンベ詰め又は発生器)
イオン化
:APIエレクトロスプレー,フラグメンター電圧 120 V
A.4 キャピラリーガスクロマトグラフィー/質量選択検知器(GC/MS)(図A.1及び図A.2参照)
キャピラリーカラム :DB-35MS (J&W)® 2),長さ35 m 内径0.25 mm 膜厚0.25 μm
注入方法
:分割(スプリット)又は連続(スプリットレス)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注入温度
:260 ℃
キャリアガス
:ヘリウム
温度設定
:100 ℃で2分間 100 ℃〜310 ℃で15 ℃/分 310 ℃で2分間
注入量
:分割する場合は,1.0 μL スプリット比 1:15
検出
:MS(質量選択検出器)
注2) DB-35MS (J&W)® は商業的に入手可能な適切な製品の一例である。この情報は,この規格のユ
ーザーの便宜のために提供されたものであり,製品の保証を意味するものではない。
A.5 キャピラリー電気泳動(CE)
試料溶液(9.6)200 μLに50 μLの塩酸(c=0.01 mol/L)を混合し,膜ろ過器(0.2 μm)でろ過する。こ
の溶液をキャピラリー電気泳動によって分析する。
キャピラリー1
:560 mmで被覆なし,内径50 μm 拡張光路付[agilent® 3)]
キャピラリー2
:560 mm ポリビニルアルコール(PVA)で被覆した内径50 μm,拡張光路付
[agilent® 3)]
緩衝液
:りん酸塩緩衝液(c=50 mmol/L) pH2.5
カラム温度
:25 ℃
電圧
:30 kV
注入時間
:4秒間
フラッシュ時間
:5秒間
検出
:ダイオードアレイ検出器(DAD)214 nm,254 nm,分光器
定量化
:240 nm及び380 nmで計算
注3) agilent®(登録商標)は,商業的に入手可能な適切な製品の例である。この情報は,この規格の
利用者の便宜のために提供されたものであり,本製品に関する保証を意味するものではない。
X 時間(分)
Y 検出量
1 内部標準
2 4-アミノアゾベンゼン
図A.1−4-アミノアゾベンゼンの総イオン電流クロマトグラム−GC/MSによる分析結果
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
X m/z
Y 検出量
図A.2−4-アミノアゾベンゼンのGC/MS70eVスぺクトル
X 時間(分)
Y mAUでの検出量
1 240 nm
2 380 nm
図A.3−4-アミノアゾベンゼンのクロマトグラム−HPLC/DAD分析結果
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
X 波長(nm)
Y 吸収度(mAU)
図A.4−4-アミノアゾベンゼンのスぺクトル−HPLC/DAD分析結果
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附属書B
(参考)
計算方法
B.1
一般
4-アミノアゾベンゼンの濃度は,ピーク面積から算出する。4-アミノアゾベンゼンの濃度は,B.2及び
B.3に規定する式の一つから,試験片との質量比(W)としてmg/kg単位で計算する。
注記 試験結果は,四捨五入によって整数位に丸めるのがよい。
B.2
内部標準による校正
E
ISS
C
ISC
S
C
m
A
A
V
A
A
W
×
×
×
×
×
=ρ
ここに,
W: 4-アミノアゾベンゼンの試験片の質量に対する質量比濃
度(mg/kg)
ρC: 校正溶液中の4-アミノアゾベンゼンの濃度(μg/mL)
AS: 試験片溶液中の4-アミノアゾベンゼンのピーク面積(面
積単位)
AC: 校正溶液中の4-アミノアゾベンゼンのピーク面積(面積
単位)
AISS: 試験片溶液中の内部標準のピーク面積(面積単位)
AISC: 校正溶液中の内部標準のピーク面積(面積単位)
V: 9.6によって調製した試料の最終容量(mL)
mE: 繊維試験片の質量(g)
B.3
内部標準を使用しない校正
E
C
S
C
m
A
V
A
W
×
×
×
=ρ
ここに,
W: 4-アミノアゾベンゼンの試験片の質量に対する質量比濃
度(mg/kg)
ρC: 校正溶液中の4-アミノアゾベンゼンの濃度(μg/mL)
AS: 試験片溶液中の4-アミノアゾベンゼンのピーク面積(面
積単位)
AC: 校正溶液中の4-アミノアゾベンゼンのピーク面積(面積
単位)
V: 9.6によって調製した試料の最終容量(mL)
mE: 繊維試験片の質量(g)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C
(参考)
分析結果の信頼性
表C.1は,絹及びポリエステルのそれぞれの繊維について,各国の試験機関で試験した結果を示す。
表C.1−各国試験機関の試験結果4-アミノアゾベンゼンの濃度
条件
絹
ポリエステル
GC/MS
HPLC
GC/MS
HPLC
参加試験機関数
10
11
10
9
異常値数
0
3
0
1
異常値除去後の試験機関数
10
8
10
8
平均値x(mg/kg)
77.3
80.7
71.1
52.7
繰返し精度r(mg/kg)
22.6
11.2
32.6
10.0
繰返し精度の標準偏差sr(mg/kg)
8.1
4.0
11.6
3.6
再現精度R(mg/kg)
54.7
52.3
54.3
48.2
再現精度の標準偏差sR(mg/kg)
19.6
18.7
19.4
17.2
この試験方法は,ドイツ連邦政府の消費者保護及び食品安全(BVL)局の§64LFGB専門委員会“禁止さ
れたアゾ色素の分析方法”によって開発され,試験機関11機関の参加の下で検証試験が実施された。
a) 検証試験の繰返し精度及び再現精度の評価は,次の点を考慮しなければならない。
1) 検証試験は,色素の還元剤との比及び還元剤の作成後からの時間経過が,定量の結果に重大な影響
があることを示した。したがって,還元分解は,9.5に記載された条件(時間,温度及び量)に厳密
に従って,実行することが重要である。
2) もう一つの重要な要素は,液−液抽出である。例えば,4-アミノアゾベンゼンのアゾ結合の更なる
反応を防止するため,水溶性相と有機相とを分離することが重要である。したがって,9.6に規定す
る条件を正確に実行することが重要である。
3) 他の適切な内部標準を使用することは,GC-MS試験方法の信頼性を更に高める。しかし,今回の検
証試験では考慮されなかった。
b) 試験に使用された絹及びポリエステルの試験片は,今回の試験機関間の試験用に特に作成されたもの
である。このため,染色は,4-アミノアゾベンゼンを放出する色素だけを使用して実施し,他の使用
制限のない,いかなるアゾ色素も使用していない。
これは,還元剤を消費する物質が含まれていないことを意味している。この染色方法は,追加的な
影響要因を排除する。したがって,別の試験方法で使用制限のない他のアゾ色素があっても,4-アミ
ノアゾベンゼンの損失がないことが証明された。
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L 1940-3:2019 (ISO 14362-3:2017)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D
(参考)
評価指針−分析結果の解釈
極微量のアミンの検出は,誤って陽性の結果を生むことがあるため,REACH規則1907/2006/附属書17
は限界値として30 mg/kgを定めている。この数値は繊維素材及び着色が均一な試料にだけ適用される。異
なる種類の組成からなる試料については適用しない。
4-アミノアゾベンゼンの検出量が30 mg/kgを超えた場合は,特定のアゾ色素が使用されていると考えな
ければならない。30 mg/kg以下の場合は,特定のアゾ色素が使用されていることを明らかにするために,
色素の種類,純度,使用原材料などの追加情報が必要である。
以上から,分析結果は,次のように報告することが望ましい。
− 分析結果で得られた4-アミノアゾベンゼンの濃度が≦30 mg/kgの場合 実施した分析によって,アゾ
基の還元分解で4-アミノアゾベンゼンを放出する可能性があるアゾ色素は,依頼された製品から検出
されなかった。
− 分析結果で得られた4-アミノアゾベンゼンの濃度が>30 mg/kgの場合 実施した分析によって,試験
依頼された製品は4-アミノアゾベンゼンを放出するアゾ色素を使用して,製造又は加工されたことを
示している。
参考文献
[1] IEC Electropedia: available at http://www.electropedia.org/
[2] ISO Online browsing platform:available at http://www.iso.org/obp