K 9550:2020
(1)
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 種類······························································································································· 2
4 性質······························································································································· 2
4.1 性状 ···························································································································· 2
4.2 定性方法 ······················································································································ 2
5 品質······························································································································· 2
6 試験方法························································································································· 3
6.1 一般事項 ······················································································································ 3
6.2 水溶状 ························································································································· 3
6.3 乾燥減量(105 ℃) ······································································································· 3
6.4 強熱残分(硫酸塩) ······································································································· 4
6.5 粘度(4 %,20 ℃) ······································································································· 5
6.6 吸光分析適合性 ············································································································· 5
6.7 けん化度 ······················································································································ 6
7 容器······························································································································· 7
8 表示······························································································································· 7
K 9550:2020
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人
日本試薬協会(JRA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を
改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格で
ある。これによって,JIS K 9550:1994は改正され,この規格に置き換えられた。
なお,令和2年8月19日までの間は,産業標準化法第30条第1項等の関係条項の規定に基づくJISマ
ーク表示認証において,JIS K 9550:1994を適用してもよい。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
K 9550:2020
ポリビニルアルコール(試薬)
Polyvinyl alcohol (Reagent)
1
適用範囲
この規格は,試薬として用いるポリビニルアルコールについて規定する。
注記 別名:エテノール(Ethenol)
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS H 6201 化学分析用白金るつぼ
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0117 赤外分光分析通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8102 エタノール(95)(試薬)
JIS K 8116 塩化アンモニウム(試薬)
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8283 くえん酸一水和物(試薬)
JIS K 8541 硝酸(試薬)
JIS K 8550 硝酸銀(試薬)
JIS K 8576 水酸化ナトリウム(試薬)
JIS K 8580 すず(試薬)
JIS K 8799 フェノールフタレイン(試薬)
JIS K 8891 メタノール(試薬)
JIS K 8951 硫酸(試薬)
JIS K 9547 フェニルフルオロン(試薬)
JIS R 1301 化学分析用磁器るつぼ
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS Z 0701 包装用シリカゲル乾燥剤
JIS Z 8803 液体の粘度測定方法
2
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3
種類
種類は,特級とする。
4
性質
4.1
性状
ポリビニルアルコールは,白からうすい黄の粒又は粉末で,水にやや溶けやすく,エタノール(99.5)
及びジエチルエーテルにほとんど溶けない。
4.2
定性方法
試料の赤外吸収スペクトルをJIS K 0117によって測定すると,波数3 300 cm-1,2 940 cm-1,1 731 cm-1,
1 415 cm-1,1 371 cm-1,1 239 cm-1,1 087 cm-1及び849 cm-1付近に主な吸収ピークを認める。この場合,試
料調製は,JIS K 0117の5.2 b)(錠剤法)による。錠剤の調製に臭化カリウムを用いたときの赤外吸収ス
ペクトルの例を図1に示す。
図1−赤外吸収スペクトルの例
5
品質
品質は,箇条6によって試験したとき,表1に適合しなければならない。
3
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表1−品質
項目
規格値
試験方法
水溶状
−
試験適合
6.2
乾燥減量(105 ℃)
質量分率 %
10.0以下
6.3
強熱残分(硫酸塩)
質量分率 %
1.0以下
6.4
粘度(4 %,20 ℃)
mPa・s
35〜55
6.5
吸光分析適合性
−
試験適合
6.6
けん化度
mol %
78〜82
6.7
6
試験方法
6.1
一般事項
試験方法の一般的な事項は,JIS K 0050及びJIS K 8001による。
6.2
水溶状
水溶状の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
1) 硝酸(1+2) JIS K 8541に規定する硝酸(質量分率60 %〜61 %,特級)の体積1と水の体積2と
を混合したもの。
2) 硝酸銀溶液(20 g/L) JIS K 8550に規定する硝酸銀2 gをはかりとり,水を加えて溶かし,更に水
を加えて100 mLにしたもの。褐色ガラス製瓶に保存する。
3) 塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
b) 濁りの程度の適合限度標準 濁りの程度の適合限度標準は,“澄明”を用いる。
澄明の限度標準の調製は,塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL)0.2 mLを共通すり合わせ平底試験管[c)
参照]にとり,水10 mL,硝酸(1+2)1 mL及び硝酸銀溶液(20 g/L)1 mLを加え,更に水を加えて
20 mLとし,振り混ぜてから15分間放置する。
c) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 容量50 mL,直径約24 mmで,目盛のあるもの。
d) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料0.10 gを共通すり合わせ平底試験管にはかりとり,水を加えて溶かし,更
に水を加えて20 mLにする(この溶液は,6.6の試験にも用いる。)。
2) 試料を溶かした直後に,試料溶液の濁りの程度をb)と比較する。また,ごみ,浮遊物などの異物の
有無を共通すり合わせ平底試験管の上方又は側方から観察する。
e) 判定 次の1)及び2)に適合するとき,“水溶状:試験適合(規格値)”とする。
1) 試料溶液の濁りは,b)の濁りより濃くない。
2) 試料溶液には,ごみ,浮遊物などの異物は,ほとんど認めない。
6.3
乾燥減量(105 ℃)
乾燥減量(105 ℃)の試験方法は,次による。
a) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) 平形はかり瓶 JIS R 3503の付図57に規定するもの又は類似のもので,試料を入れた場合,試料の
厚さが5 mm以下になる容量のもの。
2) デシケーター 乾燥剤としてJIS Z 0701に規定するシリカゲル(A形1種)を入れたもの。
3) 定温乾燥器 105 ℃±2 ℃に調節できるもの。
4
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b) 操作 操作は,次による。
1) 試料1.0 gをあらかじめ恒量にした平形はかり瓶(W1 g)に0.1 mgの桁まではかりとる(W2 g)。こ
の場合,試料量m gは,(W2−W1)gとする。
なお,試料の質量を別途はかり込んでから平形はかり瓶に加えてもよい(m g)。
2) 平形はかり瓶の蓋をずらすなどし,定温乾燥器に入れ,105 ℃で3時間乾燥する。
3) 乾燥後,平形はかり瓶に蓋をしてデシケーターに入れ,室温まで放冷する。
4) その質量を0.1 mgの桁まではかる(W3 g)。
c) 計算 乾燥減量(105 ℃)は,次の式によって算出する。
100
3
2
×
−
=
m
W
W
A
ここに,
A: 乾燥減量(105 ℃)(質量分率 %)
6.4
強熱残分(硫酸塩)
強熱残分(硫酸塩)の試験方法は,次による。
a) 試薬 試薬は,次による。
・ 硫酸 JIS K 8951に規定するもの。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) るつぼ JIS R 1301に規定する磁器るつぼ,これと類似の形状の石英るつぼ又はJIS H 6201に規定
する白金るつぼ。るつぼの大きさは,試料がその容量の1/3以下になるもの。
2) デシケーター 6.3 a) 2)による。
3) 電気炉又は湿式灰化装置 500 ℃±50 ℃に調節できるもの。
c) 操作 操作は,次による。
なお,排気に注意して行う。
1) 試料1.0 gをあらかじめ恒量としたるつぼ(W4 g)に0.1 mgの桁まではかりとる(W5 g)。この場合,
試料量m gは,(W5−W4)gとする。
なお,試料の質量を別途はかり込んでからるつぼに加えてもよい(m g)。
2) 硫酸1 mLを可能な限り試料全体に行き渡るように加える。
3) 熱板(ホットプレート)上又は湿式灰化装置で硫酸の白いミストが生じなくなるまで加熱する。炭
化が不十分な場合,冷却後に硫酸1 mLを加え,再び硫酸の白いミストが生じなくなり,炭化する
まで加熱する。
なお,炭化の過程で,内部に空間ができ,炭化物がるつぼからあふれそうになる状態になる場合,
一旦冷却後,少量の水で炭化物を潤し,清浄なガラス棒で炭化物を潰し,ガラス棒に付着した炭化
物を少量の水でるつぼ内に洗い入れ,加熱して水分を蒸発させてから,操作を続けるとよい。
4) るつぼを電気炉又は湿式灰化装置で,500 ℃±50 ℃で炭化物がなくなるまで強熱する。
5) 電気炉又は湿式灰化装置から取り出したるつぼを速やかにデシケーターに入れる。
なお,強熱後のるつぼをデシケーターに入れるとデシケーター内部の空気が膨張し,デシケータ
ーの蓋が落下しやすいため,蓋をずらして空気を抜くとよい。
6) デシケーター内で放冷後,るつぼを取り出し,0.1 mgの桁まで質量をはかる(W6 g)。
d) 計算 強熱残分(硫酸塩)は,次の式によって算出する。
5
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100
4
6
×
−
=
m
W
W
B
ここに,
B: 強熱残分(硫酸塩)(質量分率 %)
e) 判定 計算して得られた値が規格値以下であるとき,“強熱残分(硫酸塩):質量分率1.0 %以下(規
格値)”とする。
6.5
粘度(4 %,20 ℃)
試料4.0 gをビーカー100 mLなどにはかりとり,水約80 mLを加えて溶かし(必要に応じて加熱してよ
い。),冷却後,水を加えて100 gとする。ただし,試験方法に応じて,同じ比率で調製量を変更してよい。
JIS Z 8803の箇条6(細管粘度計による粘度測定方法),箇条8(共軸二重円筒形回転粘度計による粘度測
定方法),箇条9(単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法),箇条10(円すい−平板形回転粘度計によ
る粘度測定方法)又は箇条11(振動粘度計による粘度測定方法)のいずれかによって,粘度を測定する。
6.6
吸光分析適合性
吸光分析適合性の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) 塩化アンモニウム JIS K 8116に規定するもの。
2) 塩酸(1+11) JIS K 8180に規定する塩酸(特級)の体積1と水の体積11とを混合したもの。
3) くえん酸溶液(100 g/L) JIS K 8283に規定するくえん酸一水和物10.9 gをはかりとり,水を加え
て溶かし,更に水を加えて100 mLにしたもの。
4) フェニルフルオロン・メタノール溶液(0.1 g/L) JIS K 9547に規定するフェニルフルオロン0.01 g
を全量フラスコ100 mLにはかりとり,JIS K 8891に規定するメタノール10 mL及び塩酸(1+2)3
mLを加えて溶かし,更にJIS K 8891に規定するメタノールを標線まで加えて混合したもの。
なお,塩酸(1+2)の調製は,JIS K 8180に規定する塩酸(特級)の体積1と水の体積2とを混
合する。
5) すず標準液(0.02 mg/mL) JIS K 8580に規定するすず0.100 gにJIS K 8951に規定する硫酸2.5 mL
を加え,加熱して溶かす。硫酸7.5 mLを加え,全量フラスコ50 mLに移し,水を標線まで加えて
混合する。その5 mLを全量フラスコ500 mLに正確にとり,硫酸1 mL及び水4 mLを加え,硫酸
(1+2)150 mLを加え,水を標線まで加えて混合したもの。
なお,硫酸(1+2)の調製は,水の体積2を冷却し,かき混ぜながら,JIS K 8951に規定する硫
酸の体積1を徐々に加える。
b) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液Iの調製は,全量フラスコ50 mLにすず標準液(0.02 mg/mL)2.0 mLを正確にとり,塩酸
(1+11)1.5 mL,塩化アンモニウム1.0 g,くえん酸溶液(100 g/L)5 mL及び6.2の試料溶液0.5 mL
を加えて溶かし,水30 mLを加える。
2) 試料溶液IIの調製は,全量フラスコ50 mLにすず標準液(0.02 mg/mL)2.0 mLを正確にとり,塩酸
(1+11)1.5 mL,塩化アンモニウム1.0 g,くえん酸溶液(100 g/L)5 mL及び6.2の試料溶液5 mL
を加えて溶かし,水25 mLを加える。
3) 空試験溶液の調製は,全量フラスコ50 mLにすず標準液(0.02 mg/mL)2.0 mLを正確にとり,塩酸
(1+11)1.5 mL,塩化アンモニウム1.0 g及びくえん酸溶液(100 g/L)5 mLを加え,水30 mLを加
える。
4) 試料溶液I,試料溶液II及び空試験溶液にフェニルフルオロン・メタノール溶液(0.1 g/L)5 mLを
6
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加え,水を標線まで加えて混合し,30分間放置する。
5) 白の背景を用いて,試料溶液I,試料溶液II及び空試験溶液それぞれを上方又は側方から観察して,
色を比較する。
c) 判定 次に適合するとき,“吸光分析適合性:試験適合(規格値)”とする。
試料溶液I及び試料溶液IIから得られる液は透明で,その色は,空試験溶液から得られた液の色よ
り,黄みの赤が強い。
6.7
けん化度
けん化度の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) フェノールフタレイン溶液 JIS K 8799に規定するフェノールフタレイン1.0 gをはかりとり,JIS
K 8102に規定するエタノール(95)90 mLを加えて溶かし,水を加えて100 mLにしたもの。
2) 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液(NaOH:4.000 g/L) JIS K 8576に規定する水酸化ナトリウムを
用い,JIS K 8001のJA.6.4 r) 4)(0.1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液)に従って,調製,標定及び計算
したもの。
3) 0.2 mol/L 水酸化ナトリウム溶液(NaOH:7.999 g/L) JIS K 8576に規定する水酸化ナトリウムを
用い,JIS K 8001のJA.6.4 r) 3)(0.2 mol/L 水酸化ナトリウム溶液)に従って,調製,標定及び計算
したもの。
4) 0.1 mol/L 硫酸 JIS K 8951に規定する硫酸を用い,JIS K 8001のJA.6.4 y) 3)(0.1 mol/L 硫酸)に
従って,調製,標定及び計算したもの。
b) 操作 操作は,次による。
1) 試料0.5 gを共通すり合わせ三角フラスコ300 mLなどに0.1 mgの桁まではかりとり,水100 mLを
加えて,約60 ℃に加熱して溶かし,冷却後,0.2 mol/L 水酸化ナトリウム溶液25 mLを正確に加え,
2時間放置する。
2) 0.1 mol/L 硫酸25 mLを正確に加え,指示薬としてフェノールフタレイン溶液3滴を加え,0.1 mol/L
水酸化ナトリウム溶液で滴定する。終点は,液の色がうすい紅色を保つ点とする。
3) 別に,同一条件で空試験を行って,滴定量を補正する。
c) 計算 けん化度は,次の式によって算出する。
(
)f
b
a
A
×
−
×
=
609
008
.0
S
A
B
×
=100
(
)B
B
A
S
A
A
C
×
−
−
×
=
−
+
×
=
100
05
.
44
09
.
86
09
.
86
05
.
44
05
.
44
09
.
86
100
09
.
86
C
D
−
=100
ここに,
a: 滴定に要した0.1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液の体積
(mL)
b: 空試験の滴定に要した0.1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液
の体積(mL)
A: 残存酢酸ビニルの含有量(g)
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B: 残存酢酸ビニルの含有率(%)
C: 残存酢酸ビニルの含有率(mol %)
D: けん化度(mol %)
S: はかりとった試料の質量(g)
f: 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液のファクター
0.008 609: 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液1 mLに相当する酢酸ビ
ニルの質量を示す換算係数(g/mL)
86.09: 酢酸ビニルの式量
44.05: ビニルアルコールの式量
7
容器
容器は,気密容器とする。
8
表示
容器には,次の事項を表示しなければならない。
a) この規格の番号
b) 名称“ポリビニルアルコール”及び“試薬”の文字
c) 種類
d) 化学式
e) 内容量
f)
製造番号
g) 製造業者名又はその略号