K 9521:2020
(1)
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 種類······························································································································· 2
4 性質······························································································································· 2
4.1 性状 ···························································································································· 2
4.2 定性方法 ······················································································································ 2
5 品質······························································································································· 2
6 試験方法························································································································· 3
6.1 一般事項 ······················································································································ 3
6.2 純度[(C6H5)4BNa] ······································································································· 3
6.3 水溶状 ························································································································· 5
6.4 アセトン溶状 ················································································································ 6
6.5 乾燥減量(105 ℃) ········································································································ 6
7 容器······························································································································· 7
8 表示······························································································································· 7
K 9521:2020
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人
日本試薬協会(JRA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を
改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格で
ある。これによって,JIS K 9521:2014は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
K 9521:2020
テトラフェニルほう酸ナトリウム(試薬)
Sodium tetraphenylborate (Reagent)
(C6H5)4BNa FW:342.22
1
適用範囲
この規格は,試薬として用いるテトラフェニルほう酸ナトリウムについて規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0068 化学製品の水分測定方法
JIS K 0113 電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則
JIS K 0114 ガスクロマトグラフィー通則
JIS K 0117 赤外分光分析通則
JIS K 0124 高速液体クロマトグラフィー通則
JIS K 0970 ピストン式ピペット
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8034 アセトン(試薬)
JIS K 8042 アニリン(試薬)
JIS K 8223 過塩素酸(試薬)
JIS K 8227 過塩素酸ナトリウム一水和物(試薬)
JIS K 8355 酢酸(試薬)
JIS K 8541 硝酸(試薬)
JIS K 8550 硝酸銀(試薬)
JIS K 8809 フタル酸水素カリウム(試薬)
JIS K 8886 無水酢酸(試薬)
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS Z 0701 包装用シリカゲル乾燥剤
2
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3
種類
種類は,特級とする。
4
性質
4.1
性状
テトラフェニルほう酸ナトリウムは,白い結晶又は結晶性粉末で,水及びアセトンに極めて溶けやすく,
エタノール(99.5)にやや溶けやすく,ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
4.2
定性方法
定性方法は,次による。
a) 炎色試験は,直径約0.8 mmの白金線を先端から約30 mmまで塩酸(1+1)に浸し,炎の長さ約120 mm,
内炎の長さ約30 mm程度としたブンゼンバーナーの無色炎中に,内炎の最上部から約10 mmの位置
に水平に入れた後,放冷する。この操作を炎に色が現れなくなるまで繰り返す。次に,白金線の先端
約5 mmを,試料0.5 gに水20 mLを加えて溶かした液に浸し,ブンゼンバーナーの無色炎中に入れる
と黄色が現れる。
b) 試料の赤外吸収スペクトルをJIS K 0117に従って測定すると,波数3 057 cm-1,1 579 cm-1,1 479 cm-1,
1 149 cm-1,1 030 cm-1,745 cm-1,713 cm-1,488 cm-1及び467 cm-1付近に主な吸収ピークを認める。こ
の場合,試料調製は,JIS K 0117の5.3 a)(錠剤法)による。錠剤の調製に臭化カリウムを用いたとき
の赤外吸収スペクトルの例を図1に示す。
[出典:国立研究開発法人産業技術総合研究所の有機化合物のスペクトルデータベース(SDBS)
(チャート上にピークの波数を追記)]
図1−赤外吸収スペクトルの例
5
品質
品質は,箇条6によって試験したとき,表1に適合しなければならない。
3
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表1−品質
項目
規格値
試験方法
純度[(C6H5)4BNa]
質量分率 %
99.5以上
6.2
水溶状
−
試験適合
6.3
アセトン溶状
−
試験適合
6.4
乾燥減量(105 ℃)
質量分率 %
0.2以下
6.5
6
試験方法
6.1
一般事項
試験方法の一般的な事項は,JIS K 0050及びJIS K 8001による。
6.2
純度[(C6H5)4BNa]
純度[(C6H5)4BNa]の試験方法は,6.2.1,6.2.2又は6.2.3のいずれかによる。
6.2.1
重量法
重量法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) 酢酸 JIS K 8355に規定するもの。
2) フタル酸水素カリウム溶液(50 g/L) JIS K 8809に規定するフタル酸水素カリウム5.0 gを水に溶
かして100 mLにする。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) 吸引ろ過装置 JIS R 3503に規定するG3のガラスろ過器と吸引瓶とを組み合わせたもの。
2) デシケーター 乾燥剤としてJIS Z 0701に規定するシリカゲル(A形1種)を入れたもの。
3) 電気定温乾燥機 105 ℃±2 ℃に調節できるもの。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料0.5 gを0.1 mgの桁まで,ビーカー100 mLなどにはかりとり,水50 mL及
び酢酸0.5 mLを加えて溶かし,70 ℃〜80 ℃に加熱したフタル酸水素カリウム溶液(50 g/L)25 mL
を一度に加え,かくはんし,冷却する。
2) あらかじめ恒量m1にしたガラスろ過器を用いて,試料溶液を吸引ろ過し,約5 ℃に冷却した水10 mL
で,沈殿を2回洗浄する。
3) 沈殿を含むガラスろ過器を105 ℃で2時間乾燥後,デシケーター中で放冷する。
4) 沈殿を含むガラスろ過器の質量m2をはかる。
d) 計算 純度[(C6H5)4BNa]は,次の式によって算出する。
(
)
100
1
955
.0
1
2
×
×
−
=
m
m
m
A
ここに,
A: 純度[(C6H5)4BNa](質量分率 %)
m: はかりとった試料の質量(g)
0.955 1: 沈殿の質量を(C6H5)4BNaに換算する係数
6.2.2
高速液体クロマトグラフィー
高速液体クロマトグラフィーは,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による
1) アセトニトリル 高速液体クロマトグラフィー用のもの。
4
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2) 過塩素酸ナトリウム溶液(0.1 mol/L) JIS K 8227に規定する過塩素酸ナトリウム一水和物14.05 g
を全量フラスコ1 000 mLにはかりとり,水で溶かし,更に水を標線まで加えて混合する。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) マイクロシリンジ又は試料導入装置 5 μLを導入できるもの。
2) ピストン式ピペット JIS K 0970に規定するもの。
3) 高速液体クロマトグラフ 装置の構成は,JIS K 0124に規定するもの。
c) 分析条件 分析条件は,次による。
なお,別の分析条件でも同等の試験結果が得られることが確認されている場合には,その条件を用
いてもよい。
1) 検出器
・ 種類 紫外可視吸光光度検出器
・ 測定波長 254 nm
2) クロマトグラフィー管
・ 材質 ステンレス鋼
・ 内径 4.6 mm
・ 長さ 150 mm
3) カラム充塡剤 オクタデシル基を結合させた高純度球状シリカゲル
4) カラムの温度 40 ℃
5) 溶離液 アセトニトリルの体積75と過塩素酸ナトリウム溶液(0.1 mol/L)の体積25とを混合する。
6) 溶離液の流量 1.0 mL/min
7) 試料溶液の導入量 5 μL
d) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製 試料5 mgを0.1 mgの桁まではかりとり,ピストン式ピペットを用いて溶離液1
mLを加えて溶かす。
2) 試料溶液の導入及び記録 試料溶液をマイクロシリンジ又は試料導入装置を用いて高速液体クロマ
トグラフに導入してクロマトグラムを記録する。
なお,あらかじめテトラフェニルほう酸ナトリウムのピークの保持時間を確認しておく。
3) ピーク面積の測定 クロマトグラムのピーク面積の測定は,JIS K 0124の10.3(ピーク面積の測定)
による。
e) 定量法 検出したピークの面積を測定し,JIS K 0114の11.5(面積百分率法)によって,純度
[(C6H5)4BNa]を求める。
6.2.3
非水滴定法
非水滴定法の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) 酢酸(非水滴定用) 非水滴定に用いる酢酸は,次の試験に適合したものを用いる。
JIS K 8042に規定するアニリン1 gをJIS K 8355に規定する酢酸で溶かし,更に酢酸で100 mL
にしたものをA液とする。A液25 mLを正確にとり,0.1 mol/L 過塩素酸(酢酸溶液)で電位差滴
定したときの滴定量をV1 mLとする。また,A液25 mLを正確にとり,酢酸75 mLを加え,0.1 mol/L
過塩素酸(酢酸溶液)で電位差滴定したときの滴定量をV2 mLとする。V2−V1は,0.1 mL以下でな
ければならない。
5
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なお,酢酸(非水滴定用)の水分測定は,JIS K 0068の6.3.5 a)(直接滴定)による。試料10 g
を用いる。この場合,滴定溶媒はメタノールに代えて,クロロホルムとアルキレンカルボネートと
を主成分とするカールフィッシャー用脱水溶剤40 mLを用いる。水分は,質量分率0.3 %以下であ
る。
2) 0.1 mol/L 過塩素酸(酢酸溶液)(HClO4:10.05 g/L) JIS K 8223に規定する過塩素酸(質量分率
70.0 %〜72.0 %)及びJIS K 8886に規定する無水酢酸を用い,JIS K 8001のJA.6.4 f)[0.1 mol/L 過
塩素酸(酢酸溶媒)]に従って,調製,標定及び計算したもの。
b) 装置 主な装置は,次による。
・ 電位差滴定装置 電位差滴定の機能をもち,最小吐出量が0.01 mL以下のもの。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料1.0 gをビーカー200 mLなどに0.1 mgの桁まではかりとり,酢酸(非水滴定用)50 mLを加え
て溶かし,0.1 mol/L 過塩素酸(酢酸溶液)でJIS K 0113の5.(電位差滴定方法)によって,指示
電極にガラス電極,参照電極に銀−塩化銀電極,又はそれらを組み合わせた複合電極若しくは複合
金属電極を用い,電位差滴定を行う。
2) 滴定の終点は,変曲点とする。
3) 別に同一条件で空試験を行って滴定量を補正する。
d) 計算 純度[(C6H5)4BNa]は,次の式によって算出する。
(
)
100
222
034
.0
4
3
×
×
−
×
=
m
f
V
V
A
ここに,
A: 純度[(C6H5)4BNa](質量分率 %)
V3: 滴定に要した0.1 mol/L 過塩素酸(酢酸溶液)の体積
(mL)
V4: 空試験の滴定に要した0.1 mol/L 過塩素酸(酢酸溶液)
の体積(mL)
f: 0.1 mol/L 過塩素酸(酢酸溶液)のファクター
m: はかりとった試料の質量(g)
0.034 222: 0.1 mol/L 過塩素酸(酢酸溶液)1 mLに相当する
(C6H5)4BNaの質量を示す換算係数(g/mL)
6.3
水溶状
水溶状の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
1) 硝酸(1+2) JIS K 8541に規定する硝酸(質量分率60 %〜61 %,特級)の体積1と水の体積2と
を混合したもの。
2) 硝酸銀溶液(20 g/L) JIS K 8550に規定する硝酸銀2 gをはかりとり,水を加えて溶かし,更に水
を加えて100 mLにしたもの。褐色ガラス製瓶に保存する。
3) 塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
b) 濁りの程度の適合限度標準 濁りの程度の適合限度標準は,“ほとんど澄明”を用いる。
ほとんど澄明の限度標準の調製は,塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL)0.2 mLを共通すり合わせ平底
試験管[c)参照]にとり,水10 mL,硝酸(1+2)1 mL及び硝酸銀溶液(20 g/L)1 mLを加え,更に
水を加えて20 mLとし,振り混ぜてから15分間放置する。
c) 器具 主な器具は,次による。
6
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・ 共通すり合わせ平底試験管 容量50 mL,直径約24 mmで,目盛のあるもの。
d) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料0.5 gを共通すり合わせ平底試験管にはかりとり,水を加えて溶かし,更に
水を加えて20 mLにする。
2) 試料を溶かした直後に,試料溶液の濁りの程度をb)と比較する。また,ごみ,浮遊物などの異物の
有無を,共通すり合わせ平底試験管の上方又は側方から観察する。
e) 判定 次の1)及び2)に適合するとき,“水溶状:試験適合(規格値)”とする。
1) 試料溶液の濁りは,b)の濁りより濃くない。
2) 試料溶液には,ごみ,浮遊物などの異物は,ほとんど認めない。
6.4
アセトン溶状
アセトン溶状の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) アセトン JIS K 8034に規定するもの。
2) 硝酸(1+2) 6.3 a) 1)による。
3) 硝酸銀溶液(20 g/L) 6.3 a) 2)による。
4) 塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL) 6.3 a) 3)による。
b) 濁りの程度の適合限度標準 濁りの程度の適合限度標準“僅かな微濁”を用いる。
僅かな微濁の限度標準の調製は,塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL)1.2 mLを共通すり合わせ平底試
験管にとり,水10 mL,硝酸(1+2)1 mL及び硝酸銀溶液(20 g/L)1 mLを加え,更に水を加えて
20 mLとし,振り混ぜてから15分間放置する。
c) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 6.3 c)による。
d) 操作 操作は,次による。
1) 試料1.0 gを共通すり合わせ平底試験管にとり,アセトンを加えて溶かし,アセトンを加えて20 mL
にする。
2) 直後に,濁りの程度をb)と比較する。
e) 判定 試料溶液の濁りが,b)の濁りより濃くないとき,“アセトン溶状:試験適合(規格値)”とする。
6.5
乾燥減量(105 ℃)
乾燥減量の試験方法は,次による。
a) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) 平形はかり瓶 JIS R 3503の付図57に規定するもの又は類似のもので,試料を入れた場合,試料の
厚さが5 mm以下になる容量のもの。
2) デシケーター 6.2.1 b) 2)による。
3) 定温乾燥器 105 ℃±2 ℃に調節できるもの。
b) 操作 操作は,次による。
1) 試料1.0 gをあらかじめ恒量にした平形はかり瓶(W1 g)に0.1 mgの桁まではかりとる(W2 g)。こ
の場合,試料量m gは,(W2−W1)gとする。
なお,試料の質量を別途はかり込んでから平形はかり瓶に加えてもよい(m g)。
2) 平形はかり瓶をはかり瓶の蓋をずらすなどし,定温乾燥器に入れ,105 ℃で2時間乾燥する。
3) 乾燥後,平形はかり瓶に蓋をしてデシケーターに入れ,室温まで放冷する。
7
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4) その質量を0.1 mgの桁まではかる(W3 g)。
c) 計算 乾燥減量は,次の式によって算出する。
100
3
2
×
−
=
m
W
W
B
ここに,
B: 乾燥減量(質量分率 %)
d) 判定 計算して得られた値が規格値以下であるとき,“乾燥減量(105 ℃):質量分率0.2 %以下(規格
値)”とする。
7
容器
容器は,気密容器とする。
8
表示
容器には,次の事項を表示する。
a) この規格の番号
b) 名称“テトラフェニルほう酸ナトリウム”及び“試薬”の文字
c) 種類
d) 化学式及び式量
e) 純度
f)
内容量
g) 製造番号
h) 製造業者名又はその略号