K 9502:2020
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 種類······························································································································· 2
4 性質······························································································································· 2
4.1 性状 ···························································································································· 2
4.2 定性方法 ······················································································································ 2
5 品質······························································································································· 3
6 試験方法························································································································· 3
6.1 一般事項 ······················································································································ 3
6.2 純度(C6H8O6) ············································································································· 3
6.3 水溶状 ························································································································· 4
6.4 比旋光度[]20
D
α················································································································· 5
6.5 乾燥減量(105 ℃) ········································································································ 5
6.6 強熱残分(硫酸塩) ······································································································· 5
6.7 塩化物(Cl) ················································································································ 6
6.8 硫酸塩(SO4) ·············································································································· 7
6.9 銅(Cu),亜鉛(Zn),鉛(Pb),鉄(Fe)及びニッケル(Ni) ·············································· 7
7 容器······························································································································ 11
8 表示······························································································································ 11
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 12
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人
日本試薬協会(JRA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を
改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格で
ある。これによって,JIS K 9502:2015は改正され,この規格に置き換えられた。
なお,令和2年9月22日までの間は,産業標準化法第30条第1項等の関係条項の規定に基づくJISマ
ーク表示認証において,JIS K 9502:2015を適用してもよい。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
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L(+)-アスコルビン酸(試薬)
L(+)-Ascorbic acid (Reagent)
C6H8O6 FW:176.12
序文
この規格は,1987年に第1版として発行されたISO 6353-3を基とし,技術的内容を変更して作成した
日本産業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,試薬として用いるL(+)-アスコルビン酸について規定する。
注記1 別名:(R)-3,4-ジヒドロキシ-5-[(S)-1,2-ジヒドロキシエチル]フラン-2(5H)-オン,ビタミンC
注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 6353-3:1987,Reagents for chemical analysis−Part 3: Specifications−Second series R 70
L-Ascorbic acid(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS H 6201 化学分析用白金るつぼ
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0063 化学製品の旋光度測定方法
JIS K 0116 発光分光分析通則
JIS K 0117 赤外分光分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 0970 ピストン式ピペット
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8085 アンモニア水(試薬)
JIS K 8102 エタノール(95)(試薬)
2
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JIS K 8155 塩化バリウム二水和物(試薬)
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8284 くえん酸水素二アンモニウム(試薬)
JIS K 8377 酢酸ブチル(試薬)
JIS K 8454 N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(試薬)
JIS K 8541 硝酸(試薬)
JIS K 8550 硝酸銀(試薬)
JIS K 8659 でんぷん(溶性)(試薬)
JIS K 8913 よう化カリウム(試薬)
JIS K 8920 よう素(試薬)
JIS K 8951 硫酸(試薬)
JIS R 1301 化学分析用磁器るつぼ
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS Z 0701 包装用シリカゲル乾燥剤
JIS Z 8802 pH測定方法
3
種類
種類は,特級とする。
4
性質
4.1
性状
L(+)-アスコルビン酸は,白の結晶又は結晶性粉末で,長期間保存するとうすい黄に着色することがあ
る。水に溶けやすく,エタノール(99.5)に溶けにくく,ジエチルエーテルにはほとんど溶けない。融点
は,約190 ℃(分解)である。
4.2
定性方法
試料の赤外吸収スペクトルをJIS K 0117によって測定すると,波数3 527 cm-1,3 412 cm-1,3 317 cm-1,
3 220 cm-1,3 032 cm-1,2 916 cm-1,1 754 cm-1,1 674 cm-1,1 322 cm-1,1 141 cm-1,1 121 cm-1,1 026 cm-1,
989 cm-1及び756 cm-1付近に主な吸収ピークを認める。この場合,試料調製はJIS K 0117の5.2 b)(錠剤法)
による。錠剤の調製に臭化カリウムを用いたときの赤外吸収スペクトルの例を図1に示す。
3
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[出典:国立研究開発法人産業技術総合研究所の有機化合物のスペクトルデータベース(SDBS)(チャート上にピー
クの波数を追記)]
図1−赤外吸収スペクトルの例
5
品質
品質は,箇条6によって試験したとき,表1に適合しなければならない。
表1−品質
項目
規格値
試験方法
純度(C6H8O6)
質量分率 %
99.6以上
6.2
水溶状
−
試験適合
6.3
比旋光度
20
D]
[α
°(度)
+20.5〜+21.5
6.4
乾燥減量(105 ℃)
質量分率 %
0.1以下
6.5
強熱残分(硫酸塩) 質量分率 %
0.05以下
6.6
塩化物(Cl)
質量分率 %
0.005以下
6.7
硫酸塩(SO4)
質量分率 %
0.002以下
6.8
銅(Cu)
質量分率ppm
0.3以下
6.9
亜鉛(Zn)
質量分率ppm
0.2以下
6.9
鉛(Pb)
質量分率ppm
5以下
6.9
鉄(Fe)
質量分率ppm
2以下
6.9
ニッケル(Ni)
質量分率ppm
5以下
6.9
6
試験方法
6.1
一般事項
試験方法の一般的な事項は,JIS K 0050及びJIS K 8001による。
6.2
純度(C6H8O6)
純度(C6H8O6)の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
4
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1) でんぷん溶液 JIS K 8659に規定する特級又は1級のでんぷん(溶性)1.0 gに水10 mLを加え,か
き混ぜながら熱水200 mL中に入れて溶かし,これを約1分間煮沸した後に冷却したもの。冷所に
保存し10日以内に使用する。
2) 溶存酸素を除いた水 JIS K 8001の5.8 d)(溶存酸素を除いた水)による。
3) 硫酸(1+3) 水の体積3を冷却してかき混ぜながら,JIS K 8951に規定する硫酸の体積1を徐々
に加えたもの。
4) 0.05 mol/L よう素溶液(I2:12.69 g/L) JIS K 8913に規定するよう化カリウム,JIS K 8920に規定
するよう素及びJIS K 8180に規定する塩酸を用い,JIS K 8001のJA.6.4 w)(0.05 mol/L よう素溶液)
に従って,調製,標定及び計算したもの。
b) 操作 操作は,次による。
1) 試料0.2 gを0.1 mgの桁まではかりとり,溶存酸素を除いた水80 mLを加えて溶かし,硫酸(1+3)
2 mLを加えて0.05 mol/L よう素溶液で滴定する。
2) 終点間際で,指示薬としてでんぷん溶液約0.5 mLを加えて,滴定を続ける。終点は,液の色が無色
から僅かに青に変わった点とする。
c) 計算 純度(C6H8O6)は,次の式によって算出する。
100
806
008
.0
1
×
×
×
=
m
f
V
A
ここに,
A: 純度(C6H8O6)(質量分率 %)
m1: はかりとった試料の質量(g)
V: 滴定に要した0.05 mol/L よう素溶液の体積(mL)
f: 0.05 mol/L よう素溶液のファクター
0.008 806: 0.05 mol/L よう素溶液1 mLに相当するC6H8O6の質量を
示す換算係数(g/mL)
6.3
水溶状
水溶状の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
1) 硝酸(1+2) JIS K 8541に規定する硝酸(質量分率60 %〜61 %,特級)の体積1と水の体積2と
を混合したもの。
2) 硝酸銀溶液(20 g/L) JIS K 8550に規定する硝酸銀2 gを水に溶かして100 mLにしたもの。褐色
ガラス製瓶に保存する。
3) 塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
b) 濁りの程度の適合限度標準 濁りの程度の適合限度標準は,“澄明”を用いる。
塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL)0.2 mLを共通すり合わせ平底試験管[c)参照]にとり,水10 mL,
硝酸(1+2)1 mL及び硝酸銀溶液(20 g/L)1 mLを加え,更に水を加えて20 mLとし,振り混ぜて
から15分間放置する。
c) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 容量50 mL,直径約24 mmで目盛のあるもの。
d) 操作 操作は,次による。
1) 試料2.0 gを共通すり合わせ平底試験管にはかりとり,水20 mLを加えて溶かす。
2) 直後に濁りの程度をb)と比較する。また,ごみ,浮遊物などの異物の有無を,共通すり合わせ平底
5
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試験管の上方又は側方から観察する。
e) 判定 試料溶液の濁りが,b)の濁りより濃くなく,ごみ,浮遊物などの異物をほとんど認めないとき,
“水溶状:試験適合(規格値)”とする。
6.4
比旋光度
20
D]
[α
比旋光度
20
D]
[α
の試験方法は,JIS K 0063の3.(測定方法)による。この場合,試料溶液の調製は,試料
5.0 gを全量フラスコ50 mLに0.1 mgの桁まではかりとり,水を標線まで加えて混合する。
a) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) セル 100 mm又は200 mmのもの。
2) 旋光計 装置の構成は,JIS K 0063に規定するもの。
b) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料5.0 gを全量フラスコ50 mLに0.1 mgの桁まではかりとり,水を加えて溶
かし,更に水を標線まで加えて混合する。
2) 直ちに,JIS K 0063の3.4(操作)に従って,20 ℃で旋光度を測定する。
6.5
乾燥減量(105 ℃)
乾燥減量(105 ℃)の試験方法は,次による。
a) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) 平形はかり瓶 JIS R 3503の付図57に規定するもの又は類似のもので,試料を入れた場合,試料の
厚さが5 mm以下になる容量のもの。
2) デシケーター 乾燥剤としてJIS Z 0701に規定するシリカゲル(A形1種)を入れたもの。
3) 定温乾燥器 105 ℃±2 ℃に調節できるもの。
b) 操作 操作は,次による。
1) 試料2.0 gをあらかじめ恒量にした平形はかり瓶(W1 g)に0.1 mgの桁まではかりとる(W2 g)。こ
の場合,試料量m2 gは,(W2−W1)gとする。
なお,試料の質量を別途はかり込んでから平形はかり瓶に加えてもよい(m2 g)。
2) 平形はかり瓶をはかり瓶の蓋をずらすなどし,定温乾燥器に入れ,105 ℃で2時間乾燥する。
3) 乾燥後,平形はかり瓶に蓋をしてデシケーターに入れ,室温まで放冷する。
4) その質量を0.1 mgの桁まではかる(W3 g)。
c) 計算 乾燥減量(105 ℃)は,次の式によって算出する。
100
2
3
2
×
−
=
m
W
W
B
ここに,
B: 乾燥減量(105 ℃)(質量分率 %)
6.6
強熱残分(硫酸塩)
強熱残分(硫酸塩)の試験方法は,次による。
a) 試薬 試薬は,次による。
・ 硫酸 JIS K 8951に規定するもの。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) るつぼ JIS R 1301に規定する磁器るつぼ,これと類似の形状の石英るつぼ,又はJIS H 6201に規
定する白金るつぼ。るつぼの大きさは,試料がその容量の1/3以下になるもの。強熱残分の残さを
用いて,金属分析を行う場合は,白金るつぼ又は石英るつぼを用いることが望ましい。
6
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2) デシケーター 6.5 a) 2)による。
3) 電気炉又は湿式灰化装置 500 ℃±50 ℃に調節できるもの。
c) 操作 操作は,次による。
なお,硫酸ミストが発生するため,排気に注意して,操作する。
1) 試料2.0 gをあらかじめ恒量としたるつぼ(W4 g)に0.1 mgの桁まではかりとる(W5 g)。この場合,
試料量m3 gは,(W5−W4)gとする。
なお,試料の質量を別途はかり込んでからるつぼに加えてもよい(m3 g)。
2) 硫酸1 mLを可能な限り試料全体に行き渡るように加える。
3) 熱板(ホットプレート)上又は湿式灰化装置で硫酸の白いミストが生じなくなるまで加熱する。炭
化が不十分な場合,冷却後に硫酸1 mLを加え,再び硫酸の白いミストが生じなくなり,炭化する
まで加熱する。
なお,炭化の過程で,内部に空間ができ,炭化物がるつぼからあふれそうになる状態になる場合,
一旦冷却後,少量の水で炭化物を潤し,清浄なガラス棒で炭化物を潰し,ガラス棒に付着した炭化
物を少量の水でるつぼ内に洗い入れ,加熱して水分を蒸発させてから,操作を続けるとよい。
4) るつぼを電気炉又は湿式灰化装置で,500 ℃±50 ℃で炭化物がなくなるまで強熱する。
5) 電気炉又は湿式灰化装置から取り出したるつぼを速やかにデシケーターに入れる。
なお,強熱後のるつぼをデシケーターに入れるとデシケーター内部の空気が膨張し,デシケータ
ーの蓋が落下しやすいため,蓋をずらして空気を抜くとよい。
6) デシケーター内で放冷後,るつぼを取り出し,0.1 mgの桁まで質量をはかる(W6 g)。残分は,6.9.1
の試験に用いる。
d) 計算 強熱残分(硫酸塩)は,次の式によって算出する。
100
3
4
6
×
−
=
m
W
W
C
ここに,
C: 強熱残分(硫酸塩)(質量分率 %)
6.7
塩化物(Cl)
塩化物(Cl)の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) 硝酸 JIS K 8541に規定する硝酸(質量分率60 %〜61 %,特級)
2) 硝酸銀溶液(20 g/L) 6.3 a) 2)による。
3) 塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL) 6.3 a) 3)による。
b) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 6.3 c)による。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料0.2 gを共通すり合わせ平底試験管にはかりとり,水10 mL及び硝酸5 mL
を加えて溶かし,更に水を加えて20 mLにする。
2) 比較溶液の調製は,塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL)1.0 mLを共通すり合わせ平底試験管にとり,
硝酸5 mL及び水を加えて20 mLにする。
3) 試料溶液及び比較溶液に,硝酸銀溶液(20 g/L)1 mLを加えて振り混ぜた後,15分間放置する。
4) 黒の背景を用いて,試料溶液及び比較溶液から得られたそれぞれの液を,共通すり合わせ平底試験
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管の上方又は側方から観察して,濁りを比較する。
d) 判定 試料溶液から得られた液の濁りが,比較溶液から得られた液の白濁より濃くないとき,“塩化物
(Cl):質量分率0.005 %以下(規格値)”とする。
6.8
硫酸塩(SO4)
硫酸塩(SO4)の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) エタノール(95) JIS K 8102に規定するもの。
2) 塩化バリウム溶液(100 g/L) JIS K 8155に規定する塩化バリウム二水和物11.7 gを水に溶かして
100 mLにしたもの。
3) 硫酸塩標準液(SO4:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
b) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 6.3 c)による。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料5.0 gをはかりとり,水で25 mLにする(A液)。
2) 試料溶液の調製は,A液15 mL(試料量3.0 g)を共通すり合わせ平底試験管にとり,水を加えて20
mLにする。
3) 比較溶液の調製は,A液5 mL(試料量1.0 g)及び硫酸塩標準液(SO4:0.01 mg/mL)4.0 mLを共通
すり合わせ平底試験管にとり,水で20 mLにする。
4) 試料溶液及び比較溶液に,エタノール(95)3 mL及び塩化バリウム溶液(100 g/L)2 mLを加えて
振り混ぜた後,1時間放置する。
5) 黒の背景を用いて,試料溶液及び比較溶液から得られたそれぞれの液を,共通すり合わせ平底試験
管の上方又は側方から観察して,濁りを比較する。
d) 判定 試料溶液から得られた液の濁りが,比較溶液から得られた液の白濁より濃くないとき,“硫酸塩
(SO4):質量分率0.002 %以下(規格値)”とする。
6.9
銅(Cu),亜鉛(Zn),鉛(Pb),鉄(Fe)及びニッケル(Ni)
銅(Cu),亜鉛(Zn),鉛(Pb),鉄(Fe)及びニッケル(Ni)の試験方法は,6.9.1又は6.9.2のいずれ
かによる。
6.9.1
ICP発光分光分析法
ICP発光分光分析法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) 硝酸 6.7 a) 1)による。
2) 塩酸(1+1) JIS K 8180に規定する塩酸(特級)の体積1と水の体積1とを混合したもの。
3) 銅標準液(Cu:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
4) 亜鉛標準液(Zn:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
5) 鉛標準液(Pb:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
6) 鉄標準液(Fe:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
7) ニッケル標準液(Ni:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) ピストン式ピペット JIS K 0970に規定するもの。
2) 水浴 沸騰水浴として使用することができ,蒸発皿,ビーカーなどを載せられるもの。
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3) ICP発光分光分析装置 装置の構成は,JIS K 0116に規定するもの。
c) 分析種の測定波長 分析種の測定波長の例を表2に示す。
なお,別の分析条件でも同等の試験結果が得られることを確認した場合には,その条件を用いても
よい。
表2−分析種の測定波長の例
分析種
測定波長 nm
銅(Cu)
324.754
亜鉛(Zn)
213.857
鉛(Pb)
220.353
鉄(Fe)
259.940
ニッケル(Ni)
216.555
d) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,6.6の残分(試料量2 g)に塩酸(1+1)3 mL及び硝酸0.10 mLを加え,沸騰水
浴上又は約100 ℃の熱板(ホットプレート)上で,時計皿をかぶせて,約100 ℃で約20分間加熱す
る。その後,時計皿を取り除き,蒸発乾固する。冷却後,塩酸(1+1)1 mL及び水約3 mLを加え
て加熱し,更に水を加え10 mLにする(X液)。
2) 検量線溶液の調製は,塩酸(1+1)15 mL及び硝酸0.50 mLをとり,沸騰水浴上又は約100 ℃の熱
板(ホットプレート)で,蒸発乾固する。冷却後,塩酸(1+1)5 mLを加えて加温して溶解し,水
を加え10 mLにする(B液)。4個の全量フラスコ20 mLそれぞれに,B液2 mL及び塩酸(1+1)1
mLを入れる。それぞれの全量フラスコに,ピストン式ピペットを用いて,表3に示す各標準液の
体積を4段階加え,水を加えて10 mLにする(それぞれ,Y1液,Y2液,Y3液及びY4液とする。)。
表3−採取する標準液の体積
標準液
mg/mL
採取量 μL
Y1
Y2
Y3
Y4
銅(Cu)
0.01
0
30
60
90
亜鉛(Zn)
0.01
0
20
40
60
鉛(Pb)
0.01
0
500
1 000
1 500
鉄(Fe)
0.01
0
200
400
600
ニッケル(Ni)
0.01
0
500
1 000
1 500
3) ICP発光分光分析装置の一般事項は,JIS K 0116の箇条4(ICP発光分光分析)による。
4) ICP発光分光分析装置は,高周波プラズマを点灯するなどによって,発光強度を測定できる状態に
する。
5) 同一分析種ごとに複数波長を選択し,Y1液,Y2液,Y3液及びY4液を用いて検量線を作成し,検量
線のy切片が低く,感度及び直線性が良好な波長を選択する。この条件を満たせない場合,分析結
果に対する影響(定量限界,再現精度)を考慮して選択する。
6) X液,Y1液,Y2液,Y3液及びY4液をアルゴンプラズマ中に噴霧し,各分析種の発光強度を測定す
る。
e) 計算 JIS K 0116の4.7.3 a) 1)[検量線法(発光強度法)]によって検量線を作成し,各分析種の含有
9
K 9502:2020
率を計算する。
f)
判定 計算して得られた含有率が,規格値を満たすとき,“銅(Cu):質量分率0.3 ppm以下(規格値),
亜鉛(Zn):質量分率0.2 ppm以下(規格値),鉛(Pb):質量分率5 ppm以下(規格値),鉄(Fe):質
量分率2 ppm以下(規格値),ニッケル(Ni):質量分率5 ppm以下(規格値)”とする。
6.9.2
フレーム原子吸光法
フレーム原子吸光法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) 酢酸ブチル JIS K 8377に規定するもの。
2) アンモニア水(2+3) JIS K 8085に規定するアンモニア水(質量分率28.0〜30.0 %)の体積2と
水の体積3とを混合したもの。ポリエチレン製瓶などに保存する。
3) 塩酸(2+1) JIS K 8180に規定する塩酸(特級)の体積2と水の体積1とを混合したもの。
4) くえん酸水素二アンモニウム(100 g/L) JIS K 8284に規定するくえん酸水素二アンモニウム10 g
を水に溶かして100 mLにしたもの。
5) N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム溶液(10 g/L)[NaDDTC溶液(10 g/L)] JIS K 8454
に規定するN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物1.3 gを水に溶かして100 mLにし
たもの。
6) 銅標準液(Cu:0.01 mg/mL) 6.9.1 a) 3)による。
7) 亜鉛標準液(Zn:0.01 mg/mL) 6.9.1 a) 4)による。
8) 鉛標準液(Pb:0.01 mg/mL) 6.9.1 a) 5)による。
9) 鉄標準液(Fe:0.01 mg/mL) 6.9.1 a) 6)による。
10) ニッケル標準液(Ni:0.01 mg/mL) 6.9.1 a) 7)による。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) 分液漏斗300 mL JIS R 3503に規定するもの。
2) 水浴 6.9.1 b) 2)による。
3) pH計 JIS Z 8802に規定する形式II以上の性能のもの。
4) フレーム原子吸光分析装置 装置の構成は,JIS K 0121に規定するもの。
c) 分析種の測定波長 分析種の測定波長の例を表4に示す。
なお,別の分析条件でも同等の試験結果が得られることを確認した場合には,その条件を用いても
よい。
表4−分析種の測定波長の例
分析種
測定波長 nm
銅(Cu)
324.8
亜鉛(Zn)
213.9
鉛(Pb)
283.3
鉄(Fe)
248.3
ニッケル(Ni)
232.0
d) 操作 操作は,次による。
1) 銅(Cu)及び亜鉛(Zn)の場合
10
K 9502:2020
1.1) 試料溶液の調製は,試料30 gをビーカー200 mLなどにはかりとり,水100 mLを加えて溶かし,
アンモニア水(2+3)で中和した後,塩酸(2+1)1 mL及び水を加えて150 mLとする。
1.2) 比較溶液の調製は,試料30 gをビーカー200 mLなどにはかりとり,水100 mLを加えて溶かし,
銅標準液(Cu:0.01 mg/mL)0.90 mL及び亜鉛標準液(Zn:0.01 mg/mL)0.60 mLを加え,アンモ
ニア水(2+3)で中和した後,塩酸(2+1)1 mL及び水を加えて150 mLとする。
1.3) 空試験溶液の調製は,試料の中和に用いた量のアンモニア水(2+3)を,水浴上で蒸発乾固し,
塩酸(2+1)1 mL及び水を加えて5 mLとする。
1.4) 調製した試料溶液,比較溶液及び空試験溶液を,次の操作で分析する。
1.4.1) 試料溶液及び比較溶液のそれぞれに,くえん酸水素二アンモニウム溶液(100 g/L)2 mLを加え,
pH計を用いて,塩酸(2+1)又はアンモニア水(2+3)でpH 5.5に調節し,更にNaDDTC溶液
(10 g/L)5 mLを直ちに加える。
1.4.2) これらの溶液のそれぞれを,分液漏斗300 mLに入れ酢酸ブチル20 mLを加えた後,1分間激し
く振り混ぜ,二層に分かれるまで放置する。この上層(酢酸ブチル相)を分取する。試料溶液か
らの酢酸ブチル相をX液とし,下層(水相)は保存する。比較溶液からの酢酸ブチル相をY液
とし,下層(水相)は捨てる。
1.4.3) 保存していた試料溶液からの水相を分液漏斗300 mLにとり,酢酸ブチル20 mLを加えて1分間
激しく振り混ぜ,二層に分かれるまで放置して下層(水相)を分取する。この場合の上層(酢酸
ブチル相)は捨てる。再び,水相に酢酸ブチル20 mLを加えて1分間激しく振り混ぜ,二層に
分かれるまで放置して下層(水相)を分取し,上層(酢酸ブチル相)は捨てる。ここで得た水相
に1.3)又は2.3)の空試験溶液を加え,pH計を用いて,アンモニア水(2+3)でpH 5.5に調節し,
NaDDTC溶液(10 g/L)5 mLを直ちに加え,酢酸ブチル20 mLを加えて1分間激しく振り混ぜ,
二層に分かれるまで放置し,上層(酢酸ブチル相)を分取してZ液とする。
1.4.4) フレーム原子吸光分析装置は,あらかじめ酢酸ブチルを噴霧してアセチレン−空気フレームの状
態を最適にしておき,Y液をアセチレン−空気フレーム中に噴霧し,表4に示す測定波長付近で
分析種の吸光度が最大となる波長を設定する。X液,Y液及びZ液をそれぞれアセチレン−空気
フレーム中に噴霧し,分析種の吸光度を測定し,X液の指示値,Y液の指示値及びZ液の指示値
を読み取る。
1.4.5) 測定結果は,X液の指示値からZ液の指示値を引いた値とY液の指示値からX液の指示値を引
いた値とを比較する。
2) 鉛(Pb),鉄(Fe)及びニッケル(Ni)の場合
2.1) 試料溶液の調製は,試料10 gをビーカー200 mLなどにはかりとり,水100 mLを加えて溶かし,
アンモニア水(2+3)で中和した後,塩酸(2+1)1 mL及び水を加えて130 mLとする。
2.2) 比較溶液の調製は,試料10 gをビーカー200 mLなどにはかりとり,水90 mLを加えて溶かし,鉛
標準液(Pb:0.01 mg/mL)5.0 mL,鉄標準液(Fe:0.01 mg/mL)1.0 mL及びニッケル標準液(Ni:
0.01 mg/mL)5.0 mLを加えて,アンモニア水(2+3)で中和した後,塩酸(2+1)1 mL及び水を
加えて130 mLとする。
2.3) 空試験溶液の調製は,試料の中和に用いた量のアンモニア水(2+3)を,水浴上で蒸発乾固し,
塩酸(2+1)1 mL及び水を加えて5 mLとする。
2.4) 2.1)〜2.3)で調製した試料溶液,比較溶液及び空試験溶液の分析は1.4)による。
11
K 9502:2020
e) 判定 X液の指示値からZ液の指示値を引いた値が,Y液の指示値からX液の指示値を引いた値より
大きくないとき,“銅(Cu):質量分率0.3 ppm以下(規格値),亜鉛(Zn):質量分率0.2 ppm以下(規
格値),鉛(Pb):質量分率5 ppm以下(規格値),鉄(Fe):質量分率2 ppm以下(規格値),ニッケ
ル(Ni):質量分率5 ppm以下(規格値)”とする。
注記 分析種の含有率(質量分率 ppm)は,次の式によって,おおよその値を求めることができる。
6
4
1
2
3
1
10
000
1
×
×
−
−
×
=m
n
n
n
n
B
A
ここに,
A: 分析種の含有率(質量分率ppm)
B: 用いた標準液中の分析種の質量(mg)
m4: はかりとった試料の質量(g)
n1: X液の指示値
n2: Y液の指示値
n3: Z液の指示値
7
容器
容器は,気密容器で,遮光する。
8
表示
容器には,次の事項を表示する。
a) この規格の番号
b) 名称“L(+)-アスコルビン酸”及び“試薬”の文字
c) 種類
d) 化学式及び式量
e) 純度
f)
内容量
g) 製造番号
h) 製造年月又はその略号
i)
製造業者名又はその略号
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K 9502:2020
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS K 9502:2020 L(+)-アスコルビン酸(試薬)
ISO 6353-3:1987,Reagents for chemical analysis−Part 3: Specifications−Second series
R 70 L-Ascorbic acid
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1 適用範囲 試薬として用いる
L(+)-アスコルビン酸
について規定。
一致
3 種類
種類は,特級とする。
−
−
追加
種類の項目を追加。
編集上の差異であり,技術的な差
はない。
4 性質
性状及び定性方法を
記載。
−
−
追加
性質の項目を追加。
一般的な説明事項であり,技術的
な差異はない。
5 品質
次の項目を規定。
純度,水溶状,比旋光
度,乾燥減量,強熱残
分,塩化物,硫酸塩,
銅,亜鉛,鉛,鉄,ニ
ッケル
R 70.1
変更
・差異のあるもの:純度
・追加したもの:水溶状,亜鉛,ニ
ッケル
・ISO規格の項目をJISでは分割し
たもの:重金属から銅及び鉛に分割
ISO規格は長期間見直しが行われ
ておらず,近年の分析能力の向上
に対応していないため,項目は市
場の実態に合っていない。
6.1 一般事
項
一般的な事項に関す
る引用規格を記載。
−
−
追加
技術的な差異はない。
一般的な試験及び検査方法の条件
並びに結果に関する事項のため,
技術的な差異はない。
6.2 純度
(C6H8O6)
よう素滴定法
R 70.3.1
よう素滴定法
変更
試料量,試薬溶液の濃度などを変
更。
技術的な差異は軽微であり,対策
は考慮しない。
6.3 水溶状
適合限度との比較
−
−
追加
項目を追加。
品質確保のため必要。
2
K
9
5
0
2
:
2
0
2
0
13
K 9502:2020
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
6.4 比旋光
度
20
D]
[α
試料は,5.0 g
R 70.3.2
変更
・試料量などを変更。
・JIS K 0063を引用。
技術的な差異は軽微であり,対策
は考慮しない。
6.5 乾燥減
量(105 ℃)
105 ℃,2時間乾燥
R 70.3.7
105 ℃,恒量になるまで
乾燥。
変更
・乾燥時間の変更など。
6.6 強熱残
分(硫酸塩)
強熱温度 500 ℃±
50 ℃,1時間強熱。
R 70.3.8
強熱温度 650 ℃±
50 ℃,15分間強熱。
変更
・強熱温度の変更など。
6.7 塩化物
(Cl)
比濁法
R 70.3.3
比濁法
変更
・試料量,標準液量など変更。
6.8 硫酸塩
(SO4)
比濁法
R 70.3.4
種晶添加比濁法
変更
・試料量,標準液量など変更。
・JIS K 8001を引用。
6.9
銅
(Cu),亜鉛
(Zn),鉛
(Pb),鉄
(Fe)及びニ
ッケル(Ni)
ICP発光分光分析法
フレーム原子吸光法
R 70.3.5
R 70.3.6
重金属(Pbとして)
比色法
鉄 比色法
亜鉛及びニッケル
項目がない。
変更
・ISO規格は比色法で,JISはICP
発光分光分析法又はフレーム原子
吸光法。
・ISO規格は重金属,JISは鉛及び
銅として分析。
使用者に,より具体的な情報を提
供するために,分析方法を変更。
亜鉛及びニッケルは,品質確保の
ために必要なので追加。
7 容器
気密容器かつ遮光
追加
項目を追加。
規格適合性を評価するために必要
な項目。
8 表示
表示事項を記載。
追加
項目を追加。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 6353-3:1987,MOD
関連する外国規格
REAGENT CHEMICALS−American Chemical Society Specifications ACS(2010)
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 一致 ················ 技術的差異がない。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
K
9
5
0
2
:
2
0
2
0