K 8937:2020
(1)
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 種類······························································································································· 2
4 性質······························································································································· 2
5 品質······························································································································· 2
6 試験方法························································································································· 2
6.1 一般事項 ······················································································································ 2
6.2 留分(80 ℃〜110 ℃) ····································································································· 2
6.3 不揮発物 ······················································································································ 2
6.4 酸(H2SO4として) ········································································································ 2
6.5 硫化物及び還元性物質 ···································································································· 3
6.6 硫酸着色物質 ················································································································ 4
6.7 銅腐食試験 ··················································································································· 5
7 容器······························································································································· 5
8 表示······························································································································· 5
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人
日本試薬協会(JRA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を
改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格で
ある。これによって,JIS K 8937:2015は改正され,この規格に置き換えられた。
なお,令和2年9月22日までの間は,産業標準化法第30条第1項等の関係条項の規定に基づくJISマ
ーク表示認証において,JIS K 8937:2015を適用してもよい。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
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リグロイン(試薬)
Ligroin (Reagent)
1
適用範囲
この規格は,試薬として用いるリグロインについて規定する。
警告1 リグロインは,引火性があるので火気に注意し,また,有害なので,換気のよい場所で取り
扱い,蒸気の吸入,及び皮膚・粘膜に付着しないようにする。
警告2 この規格に基づいて試験を行う者は,通常の実験室での作業に精通していることを前提とす
る。この規格は,その使用に関連して起こる全ての安全上の問題を取り扱おうとするもので
はない。この規格の利用者は,安全データシート(SDS)などを参考にして各自の責任にお
いて安全及び健康に対する適切な措置をとらなければならない。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS H 3100 銅及び銅合金の板及び条
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0066 化学製品の蒸留試験方法
JIS K 0067 化学製品の減量及び残分試験方法
JIS K 0113 電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則
JIS K 0970 ピストン式ピペット
JIS K 1107 窒素
JIS K 2513 石油製品−銅板腐食試験方法
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8085 アンモニア水(試薬)
JIS K 8101 エタノール(99.5)(試薬)
JIS K 8102 エタノール(95)(試薬)
JIS K 8103 ジエチルエーテル(試薬)
JIS K 8129 塩化コバルト(II)六水和物(試薬)
JIS K 8142 塩化鉄(III)六水和物(試薬)
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8550 硝酸銀(試薬)
JIS K 8576 水酸化ナトリウム(試薬)
JIS K 8842 ブロモチモールブルー(試薬)
2
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JIS K 8951 硫酸(試薬)
JIS R 3505 ガラス製体積計
3
種類
種類は,特級とする。
4
性質
リグロインは,主成分が炭素数7〜8の炭化水素の混合物であり,無色の揮発性の液体で特異な臭いがあ
る。エタノール(99.5)及びジエチルエーテルに極めて混ざりやすく,水にほとんど混ざらない。密度は,
0.68 g/mL〜0.75 g/mLである。
5
品質
品質は,箇条6によって試験したとき,表1に適合しなければならない。
表1−品質
項目
規格値
試験方法
留分(80 ℃〜110 ℃)
体積分率 %
90以上
6.2
不揮発物
質量分率 %
0.001以下
6.3
酸(H2SO4として)
質量分率ppm
5以下
6.4
硫化物及び還元性物質
−
試験適合
6.5
硫酸着色物質
−
試験適合
6.6
銅腐食試験
−
試験適合
6.7
6
試験方法
6.1
一般事項
試験方法の一般的な事項は,JIS K 0050及びJIS K 8001による。
6.2
留分(80 ℃〜110 ℃)
留分(80 ℃〜110 ℃)の試験方法は,JIS K 0066の附属書(B法による方法)による。
6.3
不揮発物
不揮発物の試験方法は,JIS K 0067の4.3.4 (1)(第1法 水浴上で加熱蒸発する方法)による。この場
合,試料100 g(約140 mL)をはかりとり,蒸発させる容器に適量ずつ入れて,残分は0.1 mgの桁までは
かる。
6.4
酸(H2SO4として)
酸(H2SO4として)の試験方法は,次による。
a) ガス及び試験用溶液類 ガス及び試験用溶液類は,次による。
1) 窒素 純度が,JIS K 1107に規定する2級以上のもの。
2) 二酸化炭素を除いた水 JIS K 8001の5.8 c)(二酸化炭素を除いた水)による。
3) ブロモチモールブルー溶液 JIS K 8842に規定するブロモチモールブルー0.10 gをJIS K 8102に規
定するエタノール(95)50 mLに溶かし,水で100 mLにしたもの。褐色ガラス製瓶に保存する。
4) 0.02 mol/L 塩酸 1 mol/L 塩酸10 mLをとり,水を加えて500 mLとしたもの。気密容器に入れて保
存する。
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なお,1 mol/L 塩酸は,JIS K 8180に規定する塩酸(特級)を用い,JIS K 8001のJA.6.4 e) 2)(1
mol/L 塩酸)に従って,調製,標定及び計算したもの。
5) 0.02 mol/L 水酸化ナトリウム溶液 1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液10 mLをとり,水を加えて500
mLとしたもの。ポリエチレンなどの樹脂製気密容器に入れ,使用時に調製する。
なお,1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液は,JIS K 8576に規定する水酸化ナトリウムを用い,JIS K
8001のJA.6.4 r) 1)(1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液)に従って,調製,標定及び計算したもの。
6) 0.05 mol/L 水酸化ナトリウム溶液(NaOH:2.000 g/L) 1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液10 mLを全
量フラスコ200 mLに正確にとり,二酸化炭素を除いた水を標線まで加えて混合したもの。ポリエ
チレンなどの樹脂製気密容器に入れ,使用時に調製する。
なお,1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液は,5)による。
b) 器具 主な器具は,次による。
・ メスピペット又はピストン式ピペット JIS R 3505に規定する呼び容量0.1 mL〜0.5 mLのもの,又
はJIS K 0970に規定する1 000 µL以下のもの。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,あらかじめ窒素を約200 mL/minの流量で約2分間通じて,空気を置換した分液
漏斗100 mLに,二酸化炭素を除いた水25 mL及び指示薬としてブロモチモールブルー溶液3滴を
速やかに加え,液面に窒素を通じながら,0.02 mol/L 塩酸又は0.02 mol/L 水酸化ナトリウム溶液を
中和するまでメスピペット又はピストン式ピペットを用いて加える。直ちに試料50 g(69.9 mL)を
加え,2分間激しく振り混ぜ,あらかじめ窒素を2分間通じて空気を置換した三角フラスコ100 mL
などに下層(水相)を移す。
なお,指示薬の中和の色が分かりにくい場合,JIS K 8001のJA.7(緩衝液)に規定するpH 6.8
の緩衝液をこの操作で中和したときと同じ液量をとり,ブロモチモールブルー溶液3滴を加えたも
のと比較するとよい。
2) 分離した水相の表面に,窒素を流しながら,メスピペット又はピストン式ピペットを用いて0.05
mol/L 水酸化ナトリウム溶液0.10 mLを加え,液の色を観察する。
d) 判定 試料溶液から得られた水相の色が,中和の色からアルカリ性側の色(青)を示すとき,“酸
(H2SO4として):質量分率5 ppm以下(規格値)”とする。
なお,0.05 mol/L 水酸化ナトリウム溶液1 mLは,0.002 452 0 g H2SO4に相当する。
6.5
硫化物及び還元性物質
硫化物及び還元性物質の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) アンモニア水 JIS K 8085に規定する質量分率25.0 %〜27.9 %のもの。
2) エタノール(99.5) JIS K 8101に規定するもの。
3) 硝酸銀溶液(20 g/L) JIS K 8550に規定する硝酸銀2 gを水に溶かして100 mLにしたもの。褐色
ガラス製瓶に保存する。
b) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 容量50 mL,直径約24 mmで目盛のあるもの。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,共通すり合わせ平底試験管にアンモニア水1 mL,エタノール(99.5)5 mL及び
硝酸銀溶液(20 g/L)0.5 mLをとり,混合したものに,試料5 mLを加えて振り混ぜる。光を遮り,
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約50 ℃で5分間温める。
2) 白の背景を用いて,試料溶液の色を,共通すり合わせ平底試験管の側方から観察する。
d) 判定 試料溶液に,褐色が現れないとき,“硫化物及び還元性物質:試験適合(規格値)”とする。
6.6
硫酸着色物質
硫酸着色物質の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
1) 硫酸[質量分率(95±0.5)%] JIS K 8951に規定する硫酸で質量分率(95±0.5)%のもの,又は
質量分率(95±0.5)%に調製された市販のもの。硫酸[質量分率(95±0.5)%]の調製が必要な場
合,あらかじめJIS K 8951に規定する硫酸の純度を求め,計算量の水をとり,硫酸を注意して徐々
に加え,硫酸濃度を質量分率(95±0.5)%に調節する。
硫酸の純度の求め方は,共通すり合わせ三角フラスコ100 mLの質量を0.1 mgの桁まではかりと
り,硫酸試料1.0 gを入れ,再び0.1 mgの桁まで質量をはかる。共通すり合わせ三角フラスコを冷
却しながら水20 mLを徐々に加える。ブロモチモールブルー溶液数滴を加え,1 mol/L 水酸化ナト
リウム溶液で滴定し,終点を液の色が黄から青みの緑に変わる点とするか,又はJIS K 0113の5.
(電位差滴定方法)によって,指示電極にガラス電極,参照電極に銀−塩化銀電極を用いて,1 mol/L
水酸化ナトリウム溶液で滴定を行い,終点を2番目の変曲点とする。
硫酸の純度は,次の式によって算出する。
100
04
049
.0
1
2
×
−
×
×
=
m
m
f
V
A
ここに,
A: 純度(H2SO4)(質量分率 %)
V: 滴定に要した1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液の体積
(mL)
f: 1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液のファクター
m2: 硫酸を入れた共通すり合わせ三角フラスコの質量(g)
m1: 共通すり合わせ三角フラスコの質量(g)
0.049 04: 1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液1 mLに相当するH2SO4
の質量を示す換算係数(g/mL)
なお,ブロモチモールブルー溶液及び1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液の調製は,次による。
・ ブロモチモールブルー溶液の調製は,6.4 a) 3)による。
・ 1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液の調製は,6.4 a) 5)による。
2) 塩化コバルト(II)比色原液 JIS K 8129に規定する塩化コバルト(II)六水和物59.5 g(質量分率
100 %としての相当質量)をビーカー1 000 mLにはかりとり,塩酸(1+39)を加えて溶かし,全量
フラスコ1 000 mLに移し,更に塩酸(1+39)を標線まで加えて混合したもの。
なお,塩酸(1+39)の調製は,JIS K 8180に規定する塩酸(特級)の体積1と水の体積39とを
混合する。
3) 塩化鉄(III)比色原液 JIS K 8142に規定する塩化鉄(III)六水和物45.0 g(質量分率100 %とし
ての相当質量)をビーカー1 000 mLにはかりとり,塩酸(1+39)を加えて溶かし,全量フラスコ1 000
mLに移し,更に塩酸(1+39)を標線まで加えて混合したもの。
なお,塩酸(1+39)の調製は,2)による。
b) 着色の程度の適合限度標準 着色の程度の適合限度標準“比色標準液H”は,次による。
表2に示す割合によって比色標準液H 5.0 mLを共通すり合わせ平底試験管に調製する。
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表2−硫酸着色物質試験用比色標準液H
単位 mL
比色標準液
の記号
比色原液
水
塩化コバルト(II)
塩化鉄(III)
H
0.2
1.5
3.3
c) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 6.5 b)による。
d) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,共通すり合わせ平底試験管に試料5 mLを入れ,約10 ℃に冷却する。振り混ぜ
ながら,約10 ℃に冷却した硫酸[質量分率(95±0.5)%]5 mLを,30 ℃を超えないように注意し
て徐々に加え,約10 ℃に冷却し,更に約10 ℃で15分間放置する。
2) 白の背景を用いて,試料溶液から得られた下層(硫酸相)の色を,共通すり合わせ平底試験管の側
方から観察して比較する。
e) 判定 試料溶液から得られた下層(硫酸相)の色が,比色標準液Hの色より濃くないとき,“硫酸着
色物質:試験適合(規格値)”とする。
6.7
銅腐食試験
銅腐食試験の試験方法は,次による。
a) 試薬 試薬は,次による。
1) エタノール(99.5) 6.5 a) 2)による。
2) ジエチルエーテル JIS K 8103に規定するもの。
3) 銅板 JIS H 3100のC1100P,C1201P又はC1220Pの長さ約75 mm,幅約12.5 mm,厚さ1.5 mm〜
3.0 mmのもの。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) 共通すり合わせ平底試験管 6.5 b)による。
2) 水浴 沸騰水浴として使用することができ,蒸発皿,ビーカーなどを載せられるもの。
c) 操作 操作は,次による。
1) 銅板の準備は,JIS K 2513の8.(試験の準備)による。
2) 試料40 mLを共通すり合わせ平底試験管にとり,新しく磨いた銅板を浸し,共通すり合わせ平底試
験管の口をコルクで軽く閉じ,50 ℃の水浴中で3時間温める。銅板を取り出し,ジエチルエーテル
で洗浄し,続いてエタノール(99.5)で洗浄する。
3) 別の新しく磨いた銅板の表面の色と,浸せきし,洗浄した銅板の表面の色とを比較する。
d) 判定 浸せきし,洗浄した銅板の表面の色が,新しく磨いた銅板の表面の色とほとんど変わらないと
き,“銅腐食試験:試験適合(規格値)”とする。
7
容器
容器は,気密容器とする。
8
表示
容器には,次の事項を表示する。
6
K 8937:2020
a) この規格の番号
b) 名称“リグロイン”及び“試薬”の文字
c) 種類
d) 内容量
e) 製造番号
f)
製造業者名又はその略号