K 8824:2020
(1)
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 種類······························································································································· 2
4 性質······························································································································· 2
4.1 性状 ···························································································································· 2
4.2 定性方法 ······················································································································ 2
5 品質······························································································································· 3
6 試験方法························································································································· 3
6.1 一般事項 ······················································································································ 3
6.2 純度(C6H12O6)(GC)及びD(−)-フルクトース(C6H12O6) ················································· 4
6.3 水溶状 ························································································································· 6
6.4 比旋光度[]20
D
α ················································································································ 6
6.5 乾燥減量(105 ℃) ········································································································ 6
6.6 強熱残分(硫酸塩) ······································································································· 7
6.7 酸(CH3COOHとして) ································································································· 8
6.8 塩化物(Cl) ················································································································ 8
6.9 硫酸塩及び亜硫酸塩(SO4として) ··················································································· 9
6.10 カルシウム(Ca),鉛(Pb)及び鉄(Fe) ········································································ 9
6.11 ひ素(As) ················································································································· 10
6.12 デキストリン及びでんぷん ···························································································· 12
7 容器······························································································································ 12
8 表示······························································································································ 12
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人
日本試薬協会(JRA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を
改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格で
ある。これによって,JIS K 8824:1992は改正され,この規格に置き換えられた。
なお,令和2年9月22日までの間は,産業標準化法第30条第1項等の関係条項の規定に基づくJISマ
ーク表示認証において,JIS K 8824:1992を適用してもよい。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
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D(+)-グルコース(試薬)
D(+)-Glucose (Reagent)
C6H12O6:FW:180.16
1
適用範囲
この規格は,試薬として用いるD(+)-グルコースについて規定する。
注記 別名:デキストロース,ブドウ糖,6-(ヒドロキシメチル)オキサン-2,3,4,5-テトラオール
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS H 6201 化学分析用白金るつぼ
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0063 化学製品の旋光度測定方法
JIS K 0114 ガスクロマトグラフィー通則
JIS K 0115 吸光光度分析通則
JIS K 0117 赤外分光分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8012 亜鉛(試薬)
JIS K 8085 アンモニア水(試薬)
JIS K 8102 エタノール(95)(試薬)
JIS K 8136 塩化すず(II)二水和物(試薬)
JIS K 8155 塩化バリウム二水和物(試薬)
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8355 酢酸(試薬)
JIS K 8374 酢酸鉛(II)三水和物(試薬)
JIS K 8529 臭素(試薬)
JIS K 8541 硝酸(試薬)
JIS K 8550 硝酸銀(試薬)
2
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JIS K 8576 水酸化ナトリウム(試薬)
JIS K 8580 すず(試薬)
JIS K 8777 ピリジン(試薬)
JIS K 8799 フェノールフタレイン(試薬)
JIS K 8913 よう化カリウム(試薬)
JIS K 8920 よう素(試薬)
JIS K 8951 硫酸(試薬)
JIS K 9512 N,N-ジエチルジチオカルバミド酸銀(試薬)
JIS R 1301 化学分析用磁器るつぼ
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS Z 0701 包装用シリカゲル乾燥剤
3
種類
種類は,特級とする。
4
性質
4.1
性状
D(+)-グルコースは,α形,β形又はその混合物で,無色若しくは白い結晶,又は結晶性粉末で,水に溶
けやすく,エタノール(99.5)に溶けにくい。水溶液中で一部が鎖状構造となり,末端のアルデヒド基が
還元性を示す。
4.2
定性方法
試料の赤外吸収スペクトルをJIS K 0117によって測定すると,波数3 311 cm-1,1 460 cm-1,1 341 cm-1,
1 205 cm-1,1 149 cm-1,1 112 cm-1,1 023 cm-1,996 cm-1,839 cm-1及び777 cm-1付近に主な吸収ピークを認
める。この場合,試料調製は,JIS K 0117の5.2 b)(錠剤法)による。錠剤の調製に臭化カリウムを用い
たときの赤外吸収スペクトルの例を図1に示す。
3
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図1−赤外吸収スペクトルの例
5
品質
品質は,箇条6によって試験したとき,表1に適合しなければならない。
表1−品質
項目
規格値
試験方法
純度(C6H12O6)(GC)
面積分率 %
98.0以上
6.2
水溶状
−
試験適合
6.3
比旋光度[]20
D
α
°
+52.5〜+53.3
6.4
乾燥減量(105 ℃)
質量分率 %
0.2以下
6.5
強熱残分(硫酸塩)
質量分率 %
0.03以下
6.6
酸(CH3COOHとして)
質量分率 %
0.003以下
6.7
塩化物(Cl)
質量分率 %
0.004以下
6.8
硫酸塩及び亜硫酸塩(SO4として)
質量分率 %
0.005以下
6.9
カルシウム(Ca)
質量分率 %
0.005以下
6.10
鉛(Pb)
質量分率ppm
5以下
6.10
鉄(Fe)
質量分率ppm
5以下
6.10
ひ素(As)
質量分率ppm
1以下
6.11
D(−)-フルクトース(C6H12O6)
質量分率 %
2.0以下
6.2
デキストリン及びでんぷん
−
試験適合
6.12
6
試験方法
6.1
一般事項
試験方法の一般的な事項は,JIS K 0050及びJIS K 8001による。
4
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6.2
純度(C6H12O6)(GC)及びD(−)-フルクトース(C6H12O6)
純度(C6H12O6)(GC)及びD(−)-フルクトース(C6H12O6)の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) クロロトリメチルシラン 純度(GC)が,面積分率97.0 %以上のもの。
2) ピリジン JIS K 8777に規定するもの。
3) D(−)-フルクトース 純度(HPLC)が,面積分率98.0 %以上のもの。
4) 1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン 純度(GC)が,面積分率95.0 %以上のもの。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) マイクロシリンジ又は液体試料導入装置 1.0 μL又は使用する装置に適切な量を注入できるもの。
2) ガスクロマトグラフ 装置の構成は,JIS K 0114に規定するもの。
c) 分析条件 分析条件は,次の1)又は2)による。
なお,別の分析条件でもα-D(+)-グルコース,β-D(+)-グルコース及びD(−)-フルクトースの各トリ
メチルシリル化誘導体の分離度が1.5以上である場合,その条件を用いてもよい。
1) パックドカラムの場合の分析条件 パックドカラムの場合の分析条件は,次による。
・ 検出器の種類 水素炎イオン化検出器
・ カラム固定相剤及び担体 メチルシリコーン2 %を150 µm〜250 μmのシラン処理したけい藻土
を担体に含浸させたもの。
・ カラムの材質,内径及び長さ
材質 ほうけい酸ガラス,ステンレスなど,
内径 0.5 mm〜4 mm
長さ 2 m〜4 m
・ 設定温度
カラム槽 180 ℃〜210 ℃
試料気化室 230 ℃〜250 ℃
検出器槽 230 ℃〜250 ℃
・ キャリヤーガスの種類及び流量
種類 ヘリウム
流量 50 mL/min〜60 mL/min
・ 試料の導入方式 直接注入法
・ 試料の導入量 1.0 μL又は使用する装置に適切な量
2) キャピラリーカラムの場合の分析条件 キャピラリーカラムの場合の分析条件は,次による。
・ 検出器の種類 水素炎イオン化検出器
・ キャピラリーカラム
材質 ほうけい酸ガラス又は石英ガラス
内径 0.25 mm〜0.53 mm
長さ 20 m〜50 m
固定相液体の種類 ジメチルポリシロキサン,ポリエチレングリコールサクシネート,ニトリ
ルシリコーンなど
固定相液体の膜厚 0.25 μm〜1.0 μm
・ 設定温度
5
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カラム槽 初期温度105 ℃で2分間保持し,毎分10 ℃で300 ℃になるまで昇温する。
試料気化室 200 ℃〜250 ℃
検出器槽 240 ℃〜300 ℃
・ キャリヤーガス
種類 ヘリウム
流速 30 cm/s
・ 試料の導入方式 スプリット注入法(スプリット比1:50〜1:100又は使用する装置に適切な量)
・ 試料の導入量 1.0 μL又は使用する装置に適切な量
d) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料0.50 gを全量フラスコ25 mLにはかりとり,ピリジン12 mL,1,1,1,3,3,3-
ヘキサメチルジシラザン8 mL及びクロロトリメチルシラン4 mLを加えて振り混ぜて溶解し,更に
ピリジンを標線まで加えて混合し,24時間放置する。
2) D(−)-フルクト−ス比較溶液の調製は,試料0.50 gを全量フラスコ25 mLにはかりとり,D(−)-フ
ルクトース10 mgを加え,ピリジン12 mL,1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン8 mL及びクロロト
リメチルシラン4 mLを加えて振り混ぜて溶解し,更にピリジンを標線まで加えて混合し,24時間
放置する。
3) 試料及びD(−)-フルクト−ス比較溶液をマイクロシリンジ又は液体試料導入装置を用いてガスクロ
マトグラフに導入してクロマトグラムを記録する。
なお,あらかじめα-D(+)-グルコース,β-D(+)-グルコース及びD(−)-フルクトースの各トリメチ
ルシリル誘導体の保持時間を確認しておく。
4) ピリジン,1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン及びクロロトリメチルシランに起因するピークが多
い場合,空試験を行って,面積を補正してもよい。
5) クロマトグラムのピーク面積の測定は,JIS K 0114の11.3 a)(データ処理ソフト又はデータ処理装
置を用いる方法)による。
e) 計算 純度(C6H12O6)(GC)及びD(−)-フルクトース(C6H12O6)の計算は,次による。
1) 純度(C6H12O6)(GC)は,α-D(+)-グルコース及びβ-D(+)-グルコースの各トリメチルシリル誘導
体の合量を,JIS K 0114の11.5(面積百分率法)によって,ピリジン,1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシ
ラザン及びクロロトリメチルシランに起因する面積を差し引き,純度(C6H12O6)(GC)の含有量を
算出する。
2) D(−)-フルクトース(C6H12O6)は,次の式によって算出する。
100
000
1
10
1
2
1
×
×
−
=
m
S
S
S
A
ここに,
A: D(−)-フルクトース(C6H12O6)(質量分率 %)
S1: 試料溶液から得られたD(−)-フルクトースのトリメチル
シリル誘導体のピーク面積
S2: D(−)-フルクト−ス比較溶液から得られたD(−)-フルク
トースのトリメチルシリル誘導体のピーク面積
m: はかりとった試料の質量(g)
10/1 000: 比較溶液中のD(−)-フルクトースの量(g)
6
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6.3
水溶状
水溶状の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
1) 硝酸(1+2) JIS K 8541に規定する硝酸(質量分率60 %〜61 %,特級)の体積1と水の体積2と
を混合したもの。
2) 硝酸銀溶液(20 g/L) JIS K 8550に規定する硝酸銀2 gをはかりとり,水を加えて溶かし,更に水
を加えて100 mLにしたもの。褐色ガラス製瓶に保存する。
3) 塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
b) 濁りの程度の適合限度標準 濁りの程度の適合限度標準は,“澄明”を用いる。
澄明の限度標準の調製は,塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL)0.2 mLを共通すり合わせ平底試験管[c)
参照]にとり,水10 mL,硝酸(1+2)1 mL及び硝酸銀溶液(20 g/L)1 mLを加え,更に水を加えて
20 mLとし,振り混ぜてから15分間放置する。
c) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 容量50 mL,直径約24 mmで,目盛のあるもの。
d) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料5.0 gを共通すり合わせ平底試験管にはかりとり,水を加えて混合し,更に
水を加えて20 mLにする。
2) 試料を溶かした直後に,試料溶液の濁りの程度をb)と比較する。また,ごみ,浮遊物などの異物の
有無を共通すり合わせ平底試験管の上方又は側方から観察する。
e) 判定 次の1)及び2)に適合するとき,“水溶状:試験適合(規格値)”とする。
1) 試料溶液の濁りは,b)の濁りより濃くない。
2) 試料溶液には,ごみ,浮遊物などの異物は,ほとんど認めない。
6.4
比旋光度[]20
D
α
比旋光度[]20
D
αの試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
・ アンモニア水(2+3) JIS K 8085に規定するアンモニア水の体積2と水の体積3とを混合したも
の。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) セル 100 mm又は200 mmのもの。
2) 旋光計 装置の構成は,JIS K 0063に規定するもの。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料5.0 gを全量フラスコ50 mLに0.1 mgの桁まではかりとり,水20 mL及び
アンモニア水(2+3)0.4 mLを加えて溶かし,水を標線まで加えて混合する。
2) 30分間放置後に,JIS K 0063の3.4(操作)に従って旋光度を測定する。
d) 計算 JIS K 0063の3.5(計算及び結果の表示)に従って,比旋光度を算出する。
6.5
乾燥減量(105 ℃)
乾燥減量(105 ℃)の試験方法は,次による。
a) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) 平形はかり瓶 JIS R 3503の付図57に規定するもの又は類似のもので,試料を入れた場合,試料の
厚さが5 mm以下になる容量のもの。
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2) デシケーター 乾燥剤としてJIS Z 0701に規定するシリカゲル(A形1種)を入れたもの。
3) 定温乾燥器 105 ℃±2 ℃に調節できるもの。
b) 操作 操作は,次による。
1) 試料1.0 gをあらかじめ恒量にした平形はかり瓶(W0 g)に0.1 mgの桁まではかりとる(W1 g)。こ
の場合,試料量m gは,(W1−W0)gとする。
なお,試料の質量を別途はかり込んでから平形はかり瓶に加えてもよい(m g)。
2) 平形はかり瓶をはかり瓶の蓋をずらすなどし,定温乾燥器に入れ,105 ℃で6時間乾燥する。
3) 乾燥後,平形はかり瓶に蓋をしてデシケーターに入れ,室温まで放冷する。
4) その質量を0.1 mgの桁まではかる(W2 g)。
c) 計算 乾燥減量(105 ℃)は,次の式によって算出する。
100
2
1
×
−
=
m
W
W
A
ここに,
A: 乾燥減量(105 ℃)(質量分率 %)
6.6
強熱残分(硫酸塩)
強熱残分(硫酸塩)の試験方法は,次による。
a) 試薬 試薬は,次による。
・ 硫酸 JIS K 8951に規定するもの。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) るつぼ JIS R 1301に規定する磁器るつぼ,これと類似の形状の石英るつぼ又はJIS H 6201に規定
する白金るつぼ。るつぼの大きさは,試料がその容量の1/3以下になるもの。
2) デシケーター 6.5 a) 2)による。
3) 電気炉又は湿式灰化装置 500 ℃±50 ℃に調節できるもの。
c) 操作 操作は,次による。
なお,排気に注意する。
1) 試料10 gをあらかじめ恒量としたるつぼ(W3 g)に0.1 mgの桁まではかりとる(W4 g)。この場合,
試料の質量m gは,(W4−W3)gとする。
なお,試料の質量を別途はかり込んでからるつぼに加えてもよい(m g)。
2) 硫酸3 mLを可能な限り試料全体に行き渡るように加える。
3) 熱板(ホットプレート)上又は湿式灰化装置で硫酸の白いミストが生じなくなるまで加熱する。炭
化が不十分な場合,冷却後に硫酸1 mLを加え,再び硫酸の白いミストが生じなくなり,炭化する
まで加熱する。
なお,炭化の過程で,内部に空間ができ,炭化物がるつぼからあふれそうになる場合,一旦冷却
後,少量の水で炭化物を潤し,清浄なガラス棒で炭化物を潰し,ガラス棒に付着した炭化物を少量
の水でるつぼ内に洗い入れ,加熱して水分を蒸発させてから,操作を続けるとよい。
4) るつぼを電気炉又は湿式灰化装置で,500 ℃±50 ℃で炭化物がなくなるまで強熱する。
5) 電気炉又は湿式灰化装置から取り出したるつぼを速やかにデシケーターに入れる。
なお,強熱後のるつぼをデシケーターに入れるとデシケーター内部の空気が膨張し,デシケータ
ーの蓋が落下しやすいため,蓋をずらして空気を抜くとよい。
6) デシケーター内で放冷後,るつぼを取り出し,0.1 mgの桁まで質量をはかる(W5 g)(残分は,6.10
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の試験に用いる。)。
d) 計算 強熱残分(硫酸塩)は,次の式によって算出する。
100
3
5
×
−
=
m
W
W
B
ここに,
B: 強熱残分(硫酸塩)(質量分率 %)
e) 判定 計算して得られた値が規格値以下であるとき,“強熱残分(硫酸塩):質量分率0.03 %以下(規
格値)”とする。
6.7
酸(CH3COOHとして)
酸(CH3COOHとして)の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
1) 0.05 mol/L 水酸化ナトリウム溶液(NaOH:2.000 g/L) 1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液10 mLを全
量フラスコ200 mLに正確にとり,水を標線まで加えて混合したもの。
なお,1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液は,JIS K 8576に規定する水酸化ナトリウムを用い,JIS K
8001のJA.6.4 r) 1)(1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液)に従って調製,標定及び計算する。
2) 二酸化炭素を除いた水 JIS K 8001の5.8 c)(二酸化炭素を除いた水)による。
3) フェノールフタレイン溶液 JIS K 8799に規定するフェノールフタレイン1.0 gをはかりとり,JIS
K 8102に規定するエタノール(95)90 mLを加えて溶かし,水を加えて100 mLにしたもの。
b) 器具 主な器具は,次による。
・ メスピペット又はミクロビュレット 最小目盛0.01 mLのもの。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料10 gを共通すり合わせ三角フラスコ100 mLなどにはかりとり,二酸化炭
素を除いた水50 mL及びフェノールフタレイン溶液3滴を速やかに加え,0.05 mol/L 水酸化ナトリ
ウム溶液0.10 mLをメスピペット又はミクロビュレットを用いて加えて混合する。
2) 液の色を観察する。
d) 判定 試料溶液から得られた液の色が,赤を示すとき,“酸(CH3COOHとして):質量分率0.003 %以
下(規格値)”とする。
注記 0.05 mol/L 水酸化ナトリウム溶液1 mLは,0.003 002 5 g CH3COOHに相当する。
6.8
塩化物(Cl)
塩化物(Cl)の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
1) 硝酸(1+2) 6.3 a) 1)による。
2) 硝酸銀溶液(20 g/L) 6.3 a) 2)による。
3) 塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL) 6.3 a) 3)による。
b) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 6.3 c)による。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料0.5 gを共通すり合わせ平底試験管にはかりとり,水10 mL及び硝酸(1+
2)5 mLを加えて溶かし,更に水を加えて25 mLにする。
2) 比較溶液の調製は,塩化物標準液(Cl:0.01 mg/mL)2.0 mLを共通すり合わせ平底試験管にとり,
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硝酸(1+2)5 mLを加え,水を加えて25 mLにする。
3) 試料溶液及び比較溶液に,硝酸銀溶液(20 g/L)1 mLを加えて振り混ぜた後,15分間放置する。
4) 黒の背景を用いて,試料溶液及び比較溶液から得られたそれぞれの液を,共通すり合わせ平底試験
管の上方又は側方から観察して,濁りを比較する。
d) 判定 試料溶液から得られた液の濁りが,比較溶液から得られた液の白濁より濃くないとき,“塩化物
(Cl):質量分率0.004 %以下(規格値)”とする。
6.9
硫酸塩及び亜硫酸塩(SO4として)
硫酸塩及び亜硫酸塩(SO4として)の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) エタノール(95) JIS K 8102に規定するもの。
2) 塩酸(2+1) JIS K 8180に規定する塩酸(特級)の体積2と水の体積1とを混合したもの。
3) 塩化バリウム溶液(100 g/L) JIS K 8155に規定する塩化バリウム二水和物11.7 gを水に溶かして
100 mLにしたもの。
4) 臭素水 JIS K 8529に規定する臭素4 mLに水を加えて100 mLにし,激しく振り混ぜ,放置後,上
澄み液を取り出したもの。
5) 硫酸塩標準液(SO4:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
b) 器具 主な器具は,次による。
・ 共通すり合わせ平底試験管 6.3 c)による。
c) 操作 操作は,次による。
なお,有害な臭素ガスが発生するので,排気に注意する。
1) 試料溶液の調製は,試料1.0 gをビーカー100 mLなどにはかりとり,水20 mLを加えて溶かし,臭
素水1 mLを加えて2分間煮沸する。冷却後,共通すり合わせ平底試験管に移し,塩酸(2+1)0.3 mL
を加え,水を加えて30 mLにする。
2) 比較溶液の調製は,硫酸塩標準液(SO4:0.01 mg/mL)5.0 mLをビーカー100 mLなどにとり,水15
mL及び臭素水1 mLを加えて2分間煮沸する。冷却後,共通すり合わせ平底試験管に移し,塩酸(2
+1)0.3 mLを加え,水を加えて30 mLにする。
3) 試料溶液及び比較溶液に,エタノール(95)3 mL及び塩化バリウム溶液(100 g/L)2 mLを加えて
振り混ぜた後,1時間放置する。
4) 黒の背景を用いて,試料溶液及び比較溶液から得られたそれぞれの液を,共通すり合わせ平底試験
管の上方又は側方から観察して,濁りを比較する。
d) 判定 試料溶液から得られた液の濁りが,比較溶液から得られた液の白濁より濃くないとき,“硫酸塩
及び亜硫酸塩(SO4として):質量分率0.005 %以下(規格値)”とする。
6.10
カルシウム(Ca),鉛(Pb)及び鉄(Fe)
カルシウム(Ca),鉛(Pb)及び鉄(Fe)の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
1) 塩酸(2+1) 6.9 a) 2)による。
2) カルシウム標準液(Ca:0.1 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
3) 鉛標準液(Pb:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
4) 鉄標準液(Fe:0.01 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
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1) フレーム原子吸光分析装置 装置の構成は,JIS K 0121に規定するもの。
2) 水浴 沸騰水浴として使用することができ,蒸発皿,ビーカーなどを載せられるもの。
c) 分析種の測定波長 分析種の測定波長の例を,表2に示す。
表2−分析種の測定波長の例
分析種
測定波長 nm
カルシウム(Ca)
422.7
鉛(Pb)
283.3
鉄(Fe)
248.3
d) 操作 操作は,次による。
なお,塩酸ガスが発生するので,排気に注意する。
1) 試料溶液の調製は,6.6の残分(試料量10 g)に塩酸(2+1)5 mLを加え,沸騰水浴上でほとんど
蒸発乾固する。水10 mLを加えて溶かし,全量フラスコ50 mLに移し,水を標線まで加えて混合す
る(X液)。
2) 比較溶液の調製は,塩酸(2+1)5 mLをビーカー50 mLなどにとり,沸騰水浴上でほとんど蒸発乾
固する。水10 mLを加えて溶かし,全量フラスコ50 mLに移す。カルシウム標準液(Ca:0.1 mg/mL)
5.0 mL,鉛標準液(Pb:0.01 mg/mL)5.0 mL及び鉄標準液(Fe:0.01 mg/mL)5.0 mLを加え,水を
標線まで加えて混合する(Y液)。
3) フレーム原子吸光分析装置を用いて,Y液をアセチレン−空気フレーム中に噴霧し,表2の測定波
長付近で吸光度が最大となる波長を設定する。X液及びY液をそれぞれアセチレン−空気フレーム
中に噴霧し,分析種の吸光度を測定し,X液の指示値n1及びY液の指示値n2を読み取る。
4) 測定結果は,X液の指示値n1とY液の指示値n2とを比較する。
e) 判定 n1が,n2より大きくないとき,“カルシウム(Ca):質量分率0.005 %以下(規格値),鉛(Pb):
質量分率5 ppm以下(規格値),鉄(Fe):質量分率5 ppm以下(規格値)”とする。
注記 分析種の含有率(質量分率 %)は,次の式によって,おおよその値を求めることができる。
なお,含有率(質量分率 %)に104を乗じると,含有率(質量分率 ppm)に変換される。
100
000
1
2
1
×
×
×
=m
n
n
B
A
ここに,
A: 分析種の含有率(質量分率 %)
B: 用いた標準液中の分析種の質量(mg)
m: X液に含まれる試料の質量(g)
6.11
ひ素(As)
ひ素(As)の試験方法は,次による。
a) 試薬及び試験用溶液類 試薬及び試験用溶液類は,次による。
1) 亜鉛(ひ素分析用) JIS K 8012に規定する粒径150 μm〜1 400 μmのもの。
2) ピリジン JIS K 8777に規定するもの。
3) 塩化すず(II)溶液(N,N-ジエチルジチオカルバミド酸銀法用)[塩化すず(II)溶液(AgDDTC法
用)] JIS K 8136に規定する塩化すず(II)二水和物40 gをJIS K 8180に規定する塩酸(ひ素分
11
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析用)に溶かし,更にJIS K 8180に規定する塩酸(ひ素分析用)で100 mLにしたもの。JIS K 8580
に規定する小粒状のすず2,3個を加えて,褐色ガラス製瓶に保存する。この液を,使用時に水で
10倍に希釈する。
4) 塩酸(ひ素分析用)(1+1) JIS K 8180に規定する塩酸(ひ素分析用)の体積1と水の体積1とを
混合したもの。
5) 酢酸鉛(II)溶液(100 g/L) JIS K 8374に規定する酢酸鉛(II)三水和物11.6 gを水に溶かして
100 mLにした後,JIS K 8355に規定する酢酸0.1 mLを加えたもの。
6) N,N-ジエチルジチオカルバミド酸銀・ピリジン溶液(AgDDTC・ピリジン溶液) JIS K 9512に規
定するN,N-ジエチルジチオカルバミド酸銀0.5 gをJIS K 8777に規定するピリジンに溶かし,更に
JIS K 8777に規定するピリジンで100 mLにしたもの。褐色ガラス製瓶に入れ,冷所に保存する。
7) よう化カリウム溶液(200 g/L) JIS K 8913に規定するよう化カリウム20 gを水に溶かして100 mL
にしたもの。使用時に調製する。
8) ひ素標準液(As:0.001 mg/mL) JIS K 8001のJA.4(標準液)による。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) 吸収セル 光路長が10 mmのもの。
2) ひ素試験装置 例を図2に示す。
3) 分光光度計 装置の構成は,JIS K 0115に規定するもの。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料3.0 gを水素化ひ素発生瓶Aにはかりとり,水を加えて溶かし,更に水を
加えて20 mLにする。
2) 比較溶液の調製は,ひ素標準液(As:0.001 mg/mL)3.0 mLを水素化ひ素発生瓶Aにとり,水を加
えて20 mLにする。
3) 空試験溶液の調製は,水20 mLを水素化ひ素発生瓶Aにとる(空試験溶液は,吸光度を測定する場
合に調製する。)。
4) 試料溶液,比較溶液及び空試験溶液に,塩酸(ひ素分析用)(1+1)5 mLを加え,水で40 mLにす
る。これらによう化カリウム溶液(200 g/L)15 mL及び塩化すず(II)溶液(AgDDTC法用)5 mL
を加えて振り混ぜ,10分間放置する。
5) 亜鉛(ひ素分析用)3 gを加え,直ちに水素化ひ素発生瓶Aと導管B(あらかじめ水素化ひ素吸収
管CにAgDDTC・ピリジン溶液5 mLを入れ,導管Bと水素化ひ素吸収管Cとを連結しておく。)
とを連結して約25 ℃の水中で約1時間放置した後,水素化ひ素吸収管Cを離し,ピリジンを5 mL
の標線まで加える。
6) 白の背景を用いて,試料溶液及び比較溶液から得られたそれぞれの液を水素化ひ素吸収管Cの上方
又は側方から観察して色を比較する。
なお,必要があれば吸収セルを用い,分光光度計で波長519 nmにおける吸光度を空試験溶液から
のAgDDTC・ピリジン溶液を対照液としてJIS K 0115の6.(特定波長における吸収の測定)によっ
て測定する。
d) 判定 次の1)又は2)に適合するとき,“ひ素(As):質量分率1 ppm以下(規格値)”とする。
1) 試料溶液から得られた液の色は,比較溶液から得られた液の赤より濃くない。
2) 試料溶液から得られた液の吸光度は,比較溶液から得られた液の吸光度より大きくない。
12
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A:
B:
C:
D:
E:
F:
G:
水素化ひ素発生瓶100 mL
導管
水素化ひ素吸収管
ゴム栓又はすり合わせ
酢酸鉛(II)溶液(100 g/L)
で湿したガラスウール
40 mLの標線
5 mLの標線
図2−ひ素試験装置の例
6.12
デキストリン及びでんぷん
デキストリン及びでんぷんの試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次による。
・ 0.05 mol/L よう素溶液(I2:12.69 g/L) JIS K 8913に規定するよう化カリウム及びJIS K 8920に
規定するよう素を用い,JIS K 8001のJA.6.4 w)(0.05 mol/L よう素溶液)に従って調製,標定及び
計算したもの。
b) 器具及び装置 主な器具及び装置は,次による。
1) 共通すり合わせ平底試験管 6.3 c)による。
2) 水浴 6.10 b) 2)による。
c) 操作 操作は,次による。
1) 試料溶液の調製は,試料1.0 gを共通すり合わせ平底試験管にはかりとり,水10 mLを加えて溶か
す。
2) 沸騰水浴中で3分間加熱する。
3) 冷却後,0.05 mol/L よう素溶液0.05 mLを加えて,振り混ぜる。
4) 直後に,試料溶液の色を共通すり合わせ平底試験管の上方又は側方から観察する。
d) 判定 試料溶液の色が,赤又は青とならないとき,“デキストリン及びでんぷん:試験適合(規格値)”
とする。
7
容器
容器は,気密容器とする。
8
表示
容器には,次の事項を表示する。
a) この規格の番号
b) 名称“D(+)-グルコース”及び“試薬”の文字
c) 種類
d) 化学式及び式量
13
K 8824:2020
e) 純度
f)
内容量
g) 製造番号
h) 製造業者名又はその略号