K 8580:2011
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 種類······························································································································· 1
4 性質······························································································································· 1
4.1 性状 ···························································································································· 1
4.2 定性方法 ······················································································································ 1
5 品質······························································································································· 2
6 試験方法 ························································································································· 2
6.1 一般事項 ······················································································································ 2
6.2 銅(Cu),鉛(Pb),アンチモン(Sb)及び鉄(Fe) ···························································· 2
6.3 ビスマス(Bi)·············································································································· 4
7 容器······························································································································· 5
8 表示······························································································································· 5
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(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本試薬
協会(JRA)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきと
の申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。これに
よって,JIS K 8580:1992は改正され,この規格に置き換えられた。
なお,平成23年12月21日までの間は,工業標準化法第19条第1項等の関係条項の規定に基づくJIS
マーク表示認証において,JIS K 8580:1992によることができる。
また,令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
K 8580:2011
すず(試薬)
Tin(Reagent)
Sn AW:118.710
序文
この規格は,1953年に制定され,その後4回の改正を経て今日に至っている。前回の改正は1992年に
行われたが,その後の試験・研究開発などの技術進歩に対応するために改正した。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
1
適用範囲
この規格は,試薬として用いるすずについて規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8400 塩化アンチモン(III)(試薬)
JIS K 8541 硝酸(試薬)
JIS K 8563 硝酸鉛(II)(試薬)
JIS K 8982 硫酸アンモニウム鉄(III)・12水(試薬)
JIS K 8983 硫酸銅(II)五水和物(試薬)
3
種類
種類は,特級とする。
4
性質
4.1
性状
すずは,銀色の光沢ある金属で,棒状,粒状,花状又ははく(箔)状で,熱塩酸に溶けやすく,硝酸に
よってメタすず酸に変わる。
4.2
定性方法
定性方法は,次による。
2
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a) 試料1 gに塩酸20 mlを加えて加熱して溶かす(A液)。A液を,水を入れた試験管の外側底部に付着
させ,これをブンゼンバーナーの無色炎中に入れると,試験管の底が青い炎で包まれる。
b) A液に粒状の亜鉛を浸すと,その表面に灰色の海綿状の物質が析出する。
5
品質
品質は,箇条6によって試験したとき,表1に適合しなければならない。
表1−品質
項目
規格値
試験方法
銅(Cu)
質量分率 %
0.005以下
6.2
鉛(Pb)
質量分率 %
0.01以下
6.2
アンチモン(Sb)
質量分率 %
0.01以下
6.2
ビスマス(Bi)
質量分率 %
0.003以下
6.3
鉄(Fe)
質量分率 %
0.005以下
6.2
6
試験方法
6.1
一般事項
試験方法の一般的な事項は,JIS K 0050及びJIS K 8001による。
6.2
銅(Cu),鉛(Pb),アンチモン(Sb)及び鉄(Fe)
銅(Cu),鉛(Pb),アンチモン(Sb)及び鉄(Fe)の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次のものを用いる。
1) 塩酸(2+1) JIS K 8180に規定する塩酸の体積2と水の体積1とを混合する。
2) 混酸(塩酸4,硝酸1) 塩酸の体積4にJIS K 8541に規定する硝酸(質量分率60〜61 %)の体積
1を徐々に加えて混合する。
警告 この操作は,刺激性のある窒素酸化物が発生するので,局所排気装置を用いるなどして安
全及び健康に留意した適切な措置をとらなければならない。
3) 硝酸(1+2) JIS K 8541に規定する硝酸(質量分率60〜61 %)の体積1と水の体積2とを混合す
る。
4) 銅標準液,鉛標準液,アンチモン標準液及び鉄標準液
4.1) 銅標準液(Cu:1 mg/ml),鉛標準液(Pb:1 mg/ml),アンチモン標準液(Sb:1 mg/ml)及び鉄
標準液(Fe:1 mg/ml) 次のいずれかのものを用いる。
4.1.1) 計量標準供給制度[JCSS1)]に基づく標準液で,酸濃度,安定剤の有無などが使用目的に一致し
た場合に用い,必要な場合は,適切な方法で希釈して使用する(以下,“JCSSに基づく標準液”
という。)。
4.1.2) JCSS以外の認証標準液で酸濃度,安定剤の有無などが使用目的に一致した場合に用い,必要な
場合は,適切な方法で希釈して使用する。ただし,JCSS以外の認証標準液がない場合は,市販
の標準液を用いる(以下,JCSS以外の認証標準液及び市販の標準液を合わせて,“JCSS以外の
認証標準液など”という。)。
4.1.3) 銅標準液(Cu:1 mg/ml),鉛標準液(Pb:1 mg/ml),アンチモン標準液(Sb:1 mg/ml)及び鉄
標準液(Fe:1 mg/ml)を調製する場合
3
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4.1.3.1) 銅標準液(Cu:1 mg/ml) JIS K 8983に規定する硫酸銅(II)五水和物3.93 gを全量フラスコ
1 000 mlにとり,硝酸(1+2)25 ml及び水を加えて溶かし,水を標線まで加えて混合する。
4.1.3.2) 鉛標準液(Pb:1 mg/ml) JIS K 8563に規定する硝酸鉛(II)1.60 gを全量フラスコ1 000 ml
にとり,硝酸(1+2)25 ml及び水を加えて溶かし,水を標線まで加えて混合する。
4.1.3.3) アンチモン標準液(Sb:1 mg/ml) JIS K 8400に規定する塩化アンチモン(III)1.87 g(質量
分率100 %としての相当量)をビーカー200 mlなどにとり,塩酸(2+1)53 ml及び水20 ml
を加えて加熱して溶かした後,冷却し,水で全量フラスコ1 000 mlに移し,水を標線まで加え
て混合する。
4.1.3.4) 鉄標準液(Fe:1 mg/ml) JIS K 8982に規定する硫酸アンモニウム鉄(III)・12水8.63 gを全
量フラスコ1 000 mlにとり,硝酸(1+2)25 ml及び水を加えて溶かし,水を標線まで加えて
混合する。
注1) JCSSは,Japan Calibration Service Systemの略称である。
4.2) 銅標準液(Cu:0.01 mg/ml),鉛標準液(Pb:0.01 mg/ml),アンチモン標準液(Sb:0.01 mg/ml)
及び鉄標準液(Fe:0.01 mg/ml) 次のものを用いる。
4.2.1) 銅標準液(Cu:0.01 mg/ml) 銅標準液(Cu:1 mg/ml)10 mlを全量フラスコ1 000 mlに正確
にはかりとり,硝酸(1+2)25 mlを加え,更に水を標線まで加えて混合する。
4.2.2) 鉛標準液(Pb:0.01 mg/ml) 鉛標準液(Pb:1 mg/ml)10 mlを全量フラスコ1 000 mlに正確に
はかりとり,硝酸(1+2)25 mlを加え,更に水を標線まで加えて混合する。
4.2.3) アンチモン標準液(Sb:0.01 mg/ml) アンチモン標準液(Sb:1 mg/ml)10 mlを全量フラスコ
1 000 mlに正確にはかりとり,塩酸(2+1)3 mlを加え,更に水を標線まで加えて混合する。
4.2.4) 鉄標準液(Fe:0.01 mg/ml) 鉄標準液(Fe:1 mg/ml)10 mlを全量フラスコ1 000 mlに正確に
はかりとり,硝酸(1+2)25 mlを加え,更に水を標線まで加えて混合する。
b) 装置 主な装置は,次のとおりとする。
1) フレーム原子吸光分析装置 JIS K 0121に規定するもの。
2) 水浴 沸騰水浴として使用することができ,蒸発皿,ビーカーなどを載せられるもの。
c) 分析種及び測定波長 分析種及び測定波長の例を,表2に示す。
表2−分析種及び測定波長の例
単位 nm
分析種
測定波長
銅 Cu
324.8
鉛 Pb
283.3
アンチモン Sb
217.6
鉄 Fe
248.3
d) 操作 操作は,次のとおり行う。
1) 試料溶液の調製は,試料10 gをビーカー200 mlなどにとり,混酸(塩酸4,硝酸1)60 mlを注意し
ながら徐々に加え,徐々に加熱して溶解する。放冷後,全量フラスコ100 mlに移し,水を加えて
100 mlにする(S液)(S液は,6.3の試験にも用いる。)。S液10 ml(試料量1.0 g)を全量フラスコ
50 mlにとり,塩酸(2+1)1 ml及び水を標線まで加えて混合する(X液)。
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警告 この操作は,刺激性のある窒素酸化物が発生するので,局所排気装置を用いるなどして安
全及び健康に留意した適切な措置をとらなければならない。また,水素を発生するので,
加熱にはマントルヒーターなどを用い,直火で加熱してはならない。
2) 比較溶液の調製は,S液10 ml(試料量1.0 g)を全量フラスコ50 mlにとり,銅標準液(Cu:0.01 mg/ml)
5.0 ml,鉛標準液(Pb:0.01 mg/ml)10 ml,アンチモン標準液(Sb:0.01 mg/ml)10 ml,鉄標準液(Fe:
0.01 mg/ml)5.0 ml,塩酸(2+1)l ml及び水を標線まで加えて混合する(Y液)。
3) 空試験溶液の調製は,混酸(塩酸4,硝酸1)6 mlを水浴上で蒸発乾固する。残分に水を加えて溶
かし,全量フラスコ50 mlに移し,塩酸(2+1)1 ml及び水を標線まで加えて混合する(Z液)。
警告 この操作は,刺激性のある窒素酸化物が発生するので,局所排気装置を用いるなどして安
全及び健康に留意した適切な措置をとらなければならない。
4) フレーム原子吸光分析装置を用いて,表2に示す測定波長付近で吸光度が最大となる波長を設定す
る。X液,Y液及びZ液をそれぞれフレーム中に噴霧し,分析種の吸光度を測定し,X液の指示値
(n1),Y液の指示値 (n2)及びZ液の指示値(n3)を読み取る。
5) 測定結果は,X液の指示値からZ液の指示値を引いたn1−n3とY液の指示値からX液の指示値を
引いたn2−n1とを比較する。
e) 判定 d)によって操作し,次に適合するとき,“銅(Cu):質量分率0.005 %以下(規格値),鉛(Pb):
質量分率0.01 %以下(規格値),アンチモン(Sb):質量分率0.01 %以下(規格値),鉄(Fe)質量分
率0.005 %以下(規格値)”とする。
n1−n3は,n2−n1より大きくない。
注記 分析種の含有率(質量分率 %)は,次の式によって求めることができる。
100
000
1
1
2
3
1
×
×
−
−
×
=m
n
n
n
n
B
A
ここに,
A: 分析種の含有率(質量分率 %)
B: 用いた標準液中の分析種の質量(mg)
m: はかりとった試料の質量(g)
6.3 ビスマス(Bi)
ビスマス(Bi)の試験方法は,次による。
a) 試験用溶液類 試験用溶液類は,次のものを用いる。
1) 塩酸(2+1) 6.2 a) 1)による。
2) 混酸(塩酸4,硝酸1) 6.2 a) 2)による。
3) 硝酸(1+2) 6.2 a) 3)による。
4) ビスマス標準液
4.1) ビスマス標準液(Bi:1 mg/ml) 次のいずれかのものを用いる。
4.1.1) JCSSに基づく標準液 6.2 a) 4.1.1)による。
4.1.2) JCSS以外の認証標準液など 6.2 a) 4.1.2)による。
4.1.3) ビスマス(質量分率99.9 %以上)1.00 gに水20 ml及び硝酸(1+2)25 mlを加え加熱して溶か
し,煮沸して窒素酸化物を除いた後,冷却し,全量フラスコ1 000 mlに移し,水を標線まで加え
て混合する。
5
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警告 この操作は,刺激性のある窒素酸化物が発生するので,局所排気装置を用いるなどして
安全及び健康に留意した適切な措置をとらなければならない。また,水素を発生するの
で,加熱にはマントルヒーターなどを用い,直火で加熱してはならない。
4.2) ビスマス標準液(Bi:0.01 mg/ml) ビスマス標準液(Bi:1 mg/ml)10 mlを全量フラスコ1 000 ml
に正確にはかりとり,硝酸(1+2)25 mlを加え,更に水を標線まで加えて混合する。
b) 装置 主な装置は,次のとおりとする。
1) フレーム原子吸光分析装置 6.2 b) 1)による。
2) 水浴 6.2 b) 2)による。
c) 操作 操作は,次のとおり行う。
1) 試料溶液の調製は,6.2 d) 1)のS液25 ml(試料量2.5 g)を全量フラスコ50 mlにとり,塩酸(2+1)
1 ml及び水を標線まで加えて混合する(X液)。
2) 比較溶液の調製は,6.2 d) 1)のS液25 ml(試料量2.5 g)を全量フラスコ50 mlにとり,ビスマス標
準液(Bi:0.01 mg/ml)7.5 ml,塩酸(2+1)l ml及び水を標線まで加えて混合する(Y液)。
3) 空試験溶液の調製は,混酸(塩酸4,硝酸1)15 mlを水浴上で蒸発乾固する。残分に水を加えて溶
かし,全量フラスコ50 mlに移し,塩酸(2+1)1 ml及び水を標線まで加えて混合する(Z液)。
警告 この操作は,刺激性のある窒素酸化物が発生するので,局所排気装置を用いるなどして安
全及び健康に留意した適切な措置をとらなければならない。
4) フレーム原子吸光分析装置を用いて,Y液をフレーム中に噴霧し,測定波長223.1 nm付近で吸光度
が最大となる波長を設定する。X液,Y液及びZ液をそれぞれフレーム中に噴霧し,ビスマスの吸
光度を測定し,X液の指示値(n1),Y液の指示値(n2)及びZ液の指示値(n3)を読み取る。
5) 測定結果は,X液の指示値からZ液の指示値を引いたn1−n3とY液の指示値からX液の指示値を
引いたn2−n1とを比較する。
d) 判定 c)によって操作し,次に適合するとき,“ビスマス(Bi):質量分率0.003 %以下(規格値)”と
する。
n1−n3は,n2−n1より大きくない。
注記 ビスマスの含有率(質量分率 %)は,6.2 e)の注記によって求めることができる。
7
容器
容器は,気密容器とする。
8
表示
容器には,次の事項を表示する。
a) 日本産業規格番号
b) 名称 “すず”及び“試薬”の文字
c) 種類
d) 元素記号及び原子量
e) 内容量
f)
製造番号
g) 製造業者名又はその略号