2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 8561-1994
硝酸トリウム四水和物(試薬)
Thorium nitrate tetrahydrate
Th (NO3) 4.4H2O
FW : 552.12
1. 適用範囲 この規格は,試薬として用いる硝酸トリウム四水和物について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8005 容量分析用標準物質
JIS K 8007 高純度試薬試験方法通則
2. 共通事項 この規格に共通する事項は,JIS K 8001による。
3. 種類 特級
4. 性質 硝酸トリウム四水和物は,次の性質を示す。
(1) 性状 硝酸トリウム四水和物は,白い結晶又は結晶性粉末で潮解性があり,水及びエタノールに極め
て溶けやすく,ジエチルエーテルに溶けやすい。
(2) 定性方法
(a) 試料1gに水20mlを加えて溶かす(A液)。A液10mlに硫酸10mlを加え冷却した後,硫酸鉄 (II) 溶
液 (100g/l) 10mlを積層させると,二つの液の境界面に褐色の輪帯が現れる。
(b) A液10mlにしゅう酸溶液 (100g/l) 10mlを加えると,白い沈殿が生じる。
5. 品質 品質は,6. によって試験し,表1に適合しなければならない。
2
K 8561-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表1 品質
項目
規格値
純度
98.0%以上
水不溶分
0.01%以下
塩化物 (Cl)
0.002%以下
硫酸塩 (SO4)
0.1%以下
ナトリウム (Na)
0.001%以下
カリウム (K)
0.001%以下
銅 (Cu)
0.001%以下
亜鉛 (Zn)
0.001%以下
アルミニウム (Al)
0.01%以下
チタン (Ti)
0.001%以下
鉛 (Pb)
0.001%以下
鉄 (Fe)
0.001%以下
6. 試験方法 試験方法は,次のとおりとする。
なお,第1法及び第2法を規定している場合は,いずれかの方法によって行う。
(1) 純度 98.0%以上
(a) 操作:
①
試料2.5g(0.1mgのけたまではかる)→全量フラスコ250mlに入れる→水を標線まで加える(試
料溶液)。
ふっ化ナトリウム [JIS K 8005 2. (10)] 0.50〜0.55g(0.1mgのけたまではかる)→全量フラスコ
250mlに入れる→水を標線まで加える→その25ml(正確にとる)+水75ml+アリザリンレッドS
溶液1ml
②
赤が現れる場合→0.1mol/l塩酸を用いて中間色(赤みの黄色)まで中和。
黄色が現れる場合→0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液を塩基性色(赤)になるまで滴加→0.1mol/l塩
酸を用いて中間色(赤みの黄色)まで中和。
③
+クロロ酢酸緩衝液(1)1ml→試料溶液で滴定(終点は液の色が黄から懸濁したうすい紅色に変わる
点)(滴定量aml)。
注(1) クロロ酢酸緩衝液の調製 クロロ酢酸9.45g+水酸化ナトリウム2.0g(NaOH100%として)+水
(→100ml) 。
(b) 計算
100
250
250
25
2
3.287
×
×
×
×
×
a
S
C
B
A=
ここに,
A: 純度 (%)
S: はかりとった試料の質量 (g)
B: はかりとったふっ化ナトリウムの質量 (g)
C: ふっ化ナトリウムの純度 (%)
3.2872: ふっ化ナトリウム1gのTh (NO3) 4・4H2O相当量 (g)
(2) 水不溶分 0.01%以下
試料溶液:試料10g+水50ml→加熱して溶かす→冷却。
操作:JIS K 8001の5.3 (1)(水不溶分)による。残分1mg以下。
3
K 8561-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(3) 塩化物 (Cl) 0.002%以下
試料側溶液:試料1.0g+水 (→20ml) 。
標準側溶液:塩化物標準液 (0.01mgCl/ml) 2.0ml+水 (→20ml) 。
操作:JIS K 8001の5.7 (1)(比濁法)による。
(4) 硫酸塩 (SO4) 0.1%以下
試料溶液:試料2.0g+水1ml+塩酸5ml→水浴上で蒸発乾固+塩酸5ml→再び水浴上で蒸発乾固+水
100ml→沸騰するまで加熱+熱しゅう酸溶液 (100g/l) 30ml→18時間放置→全量フラスコ200mlに入
れる→標線まで水を入れる→ろ紙(5種C)でろ過→ろ液100ml(正確にとる)(試料量1g)塩酸1ml
→沸騰するまで加熱。
操作:JIS K 8001の5.15 (3)(重量法)による。残分2.5mg以下。
(5) ナトリウム (Na) 0.001%以下
(a) 第1法
試料側溶液:試料2.0g+水50ml→約60℃で加熱して溶かす+過酸化水素20ml+アンモニア水でpH3
〜5に調節→水浴上で1時間加熱→冷却→ろ紙(5種C)でろ過→水で洗う(ろ液+洗液)+水 (→100ml)
(X液)[(6)〜(9)の第1法による試験にも用いる]。
標準側溶液:試料2.0g+水50ml+ナトリウム標準液 (0.01mgNa/ml) 2.0ml+カリウム標準液
(0.01mgK/ml) 2.0ml+銅標準液 (0.01mgCu/ml) 2.0ml+亜鉛標準液 (0.01mgZn/ml) 2.0ml+アルミニウム
標準原液 (1mgAl/ml) 0.2ml→約60℃で加熱して溶かす+過酸化水素20ml+アンモニア水でpH3〜5に
調節→水浴上で1時間加熱→冷却→ろ紙(5種C)でろ過→水で洗う(ろ液+洗液)+水 (→100ml) (Y
液)[(6)〜(9)の第1法による試験にも用いる]。
操作:JIS K 8007の9. (3)(誘導結合プラズマ発光分光分析法)により測定波長589.0nmにおけるX
液及びY液の発光強度を測定する。
X液の指示値をn1, Y液の指示値をn2とすると,n1はn2−n1より大きくない。
(b) 第2法
試料側溶液:試料5g+塩酸5ml→約60℃で加熱して溶かす→冷却+水 (→100ml) (X液)[(6)〜(12)
の第2法による試験にも用いる]。
標準側溶液:試料5g+塩酸5ml+ナトリウム標準液 (0.01mgNa/ml) 5.0ml+カリウム標準液
(0.01mgK/ml) 5.0ml+銅標準液 (0.01mgCu/ml) 5.0m1+亜鉛標準液 (0.01mgZn/ml) 5.0ml+アルミニウム
標準原液 (1mgAl/ml) 0.50ml+チタン標準液 (0.01mgTi/ml) (2)5.0ml+鉛標準液 (0.01mgPb/ml) 5.0ml+
鉄標準液 (0.01mgFe/ml) 5.0ml→約60℃で加熱して溶かす→冷却+水 (→100ml) (Y液)[(6)〜(12)の
第2法による試験にも用いる]。
操作:JIS K 8001の5.31(原子吸光法)(1)(直接噴霧法)(d)による。波長589.0nm。
注(2) JIS K 8001の4.3(標準液)(1)(一般用)による。
(6) カリウム (K) 0.001%以下
(a) 第1法
試料側溶液:(5)の第1法のX液。
標準側溶液:(5)の第1法のY液。
操作: JIS K 8007の9. (3)により測定波長766.5nmにおけるX液及びY液の発光強度を測定する。
X液の指示値をn1,Y液の指示値をn2とすると,n1はn2−n1より大きくない。
(b) 第2法
4
K 8561-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
試料側溶液:(5)の第2法のX液。
標準側溶液:(5)の第2法のY液。
操作: JIS K 8001の5.31 (1)(d)による。測定波長766.5nm。
(7) 銅 (Cu) 0.001%以下
(a) 第1法
試料側溶液:(5)の第1法のX液。
標準側溶液:(5)の第1法のY液。
操作:JIS K 8007の9. (3)により測定波長324.7nmにおけるX液及びY液の発光強度を測定する。
X液の指示値をn1,Y液の指示値をn2とすると,n1はn2−n1より大きくない。
(b) 第2法
試料側溶液:(5)の第2法のX液。
標準側溶液:(5)の第2法のY液。
操作:JIS K 8001の5.31 (1)(d)による。測定波長324.7nm。
(8) 亜鉛 (Zn) 0.001%以下
(a) 第1法
試料側溶液:(5)の第1法のX液。
標準側溶液:(5)の第1法のY液。
操作: JIS K 8007の9. (3)により測定波長641.6nmにおけるX液及びY液の発光強度を測定する。
X液の指示値をn1,Y液の指示値をn2とすると,n1はn2−n1より大きくない。
(b) 第2法
試料側溶液:(5)の第2法のX液。
標準側溶液:(5)の第2法のY液。
操作:JIS K 8001の5.31 (1)(d)による。測定波長213.9nm。
(9) アルミニウム (Al) 0.01%以下
(a) 第1法
試料側溶液:(5)の第1法のX液。
標準側溶液:(5)の第1法のY液。
操作:JIS K 8007の9. (3)により測定波長396.2nmにおけるX液及びY液の発光強度を測定する。
X液の指示値をn1,Y液の指示値をn2とすると,n1はn2−n1より大きくない。
(b) 第2法
試料側溶液:(5)の第2法のX液。
標準側溶液:(5)の第2法のY液。
操作:JIS K 8001の5.31 (1)(d)による。この場合アセチレン-一酸化二窒素フレームを用い,測定波長
309.3nm。
(10) チタン (Ti) 0.001%以下
(a) 第1法
試料側溶液:試料2.0g+水20ml→約60℃で加熱して溶かす+塩酸6ml+硝酸2ml→水浴上で加熱+ふ
っ化カリウム溶液 (100g/1) 20ml→冷却→ろ紙(5種C)でろ過→水で洗う(ろ液+洗液)±水 (→100ml)
(X液)[(11)及び(12)の第1法による試験にも用いる]。
標準側溶液:試料2.0g+水20ml+チタン標準液 (0.01mgTi/ml) (2) 2.0ml+鉛標準液 (0.01mgPb/ml) 2.0ml
5
K 8561-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
+鉄標準液 (0.01mgFe/ml) 2.0ml→約60℃で加熱して溶かす+塩酸6ml+硝酸2ml→水浴上で加熱+ふ
っ化カリウム溶液 (100g/1) 20ml→冷却→ろ紙(5種C)でろ過→水で洗う(ろ液+洗液)+水 (→100ml)
(Y液)[(11)及び(12)の第1法による試験にも用いる]。
操作:JIS K 8007の9. (3)により測定波長337.3nmにおけるX液及びY液の発光強度を測定する。
X液の指示値をn1,Y液の指示値をn2とすると,n1はn2−n1より大きくない。
(b) 第2法
試料側溶液:(5)の第2法のX液。
標準側溶液:(5)の第2法のY液。
操作:JIS K 8001の5.31 (1)(d)による。この場合,アセチレン-一酸化二窒素フレームを用い,測定波
長364.3nm。
(11) 鉛 (Pb) 0.001%以下
(a) 第1法
試料側溶液:(10)の第1法のX液。
標準側溶液:(10)の第1法のY液。
操作:JIS K 8007の9. (3)により測定波長661.1nmにおけるX液及びY液の発光強度を測定する。
X液の指示値をn1,Y液の指示値をn2とすると,n1はn2−n1より大きくない。
(b) 第2法
試料側溶液:(5)の第2法のX液。
標準側溶液:(5)の第2法のY液。
操作:JIS K 8001の5.31 (1)(d)による。測定波長283.3nm。
(12) 鉄 (Fe) 0.001%以下
(a) 第1法
試料側溶液:(10)の第1法のX液。
標準側溶液:(10)の第1法のY液。
操作:JIS K 8007の9. (3)により測定波長519.9nmにおけるX液及びY液の発光強度を測定する。
X液の指示値をn1,Y液の指示値をn2とすると,n1はn2−n1より大きくない。
(b) 第2法
試料側溶液:(5)の第2法のX液。
標準側溶液:(5)の第2法のY液。
操作:JIS K 8001の5.31 (1)(d)による。測定波長248.3nm。
7. 容器 気密容器とする。
8. 表示 容器には,次の事項を表示しなければならない。
(1) 名称“硝酸トリウム四水和物”及び“試薬”の文字。
(2) 種類
(3) 化学式,式量
(4) 品質(純度)
(5) 内容量
(6) 製造番号
6
K 8561-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(7) 製造年月又はその略号
(8) 製造業者名又はその略号
参考 取扱い上の注意事項 硝酸トリウムは放射性物質なので,取扱い後は手洗い及びうがいを十分
にする。
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
久保田 正 明
物質工学工業技術研究所計測化学部
細 川 幹 夫
通商産業省基礎産業局生物化学産業課
津 田 博
通商産業省機械情報産業局計量行政室
地 崎 修
工業技術院標準部繊維化学規格課
喜多川 忍
通商産業検査所化学部標準課
野々村 誠
都立工業技術センター無機化学部
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
石 橋 無味男
厚生省国立衛生試験所
川 瀬 晃
社団法人日本分析化学会
柳 瀬 斉 彦
社団法人日本化学工業協会
藤 貫 正
社団法人日本分析化学会
並 木 昭
財団法人化学品検査協会
鶴 田 利 行
硫酸協会
中 村 靖
日本鉱業協会
大 槻 孝
社団法人日本鉄鋼協会
日 暮 喜八郎
第一化学薬品株式会社
北 田 佳 伸
和光純薬工業株式会社
高 野 虞美子
東京化成工業株式会社
中 村 穣
森田化学工業株式会社
山 岡 宏
片山化学工業株式会社
飯 岡 寛 一
柳島製薬株式会社
山 田 和 夫
関東化学株式会社
(事務局)
平 井 信 次
日本試薬連合会