2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 8400-1994
塩化アンチモン (III) (試薬)
Antimony (III) chloride
SbCl3 FW : 228.12
1. 適用範囲 この規格は,試薬として用いる塩化アンチモン (III) (1)について規定する。
注(1) 別名:三塩化アンチモン
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 8001 試薬試験方法通則
2. 共通事項 この規格に共通する事項は,JIS K 8001による。
3. 種類 特級
4. 性質 塩化アンチモン (III) は,次の性質を示す。
(1) 性状 塩化アンチモン (III) は,白〜うすい黄色の結晶又は結晶塊で,潮解性が強く,湿気を吸収し
てバター状に変化する。塩酸及びエタノールに極めて溶けやすい。少量の水には溶けるが,多量の水
によって不溶性の塩化酸化物が生じる。この塩化酸化物は酒石酸溶液に溶ける。融点は約75 ℃,沸
点は約230 ℃である。
(2) 定性反応
(a) 試料1 gに塩酸 (1+3) 10 mlを加えて溶かす(A液)。A液5 mlに硫化ナトリウム溶液2 mlを加え
ると黄みの褐色の沈殿が生じる。
(b) A液5 mlに硝酸銀溶液2 mlを加えると白い沈殿が生じる。
5. 品質 品質は6.によって試験し,表1に適合しなければならない。
表1 品質
項目
特級
純度
98.0 %以上
希塩酸溶状
試験適合
硫黄化合物(SO4として) 0.01 %以下
ナトリウム (Na)
0.005 %以下
銅 (Cu)
5 ppm以下
鉛 (Pb)
0.003 %以下
ひ素 (As)
0.002 %以下
鉄 (Fe)
0.002 %以下
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K 8400-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6. 試験方法 試験方法は,次のとおりとする。
(1) 純度 98.0 %以上
試料0.3 g(0.1 mgのけたまではかる)+酒石酸ナトリウムカリウム溶液 (150 g/l) 30 ml+炭酸水素
ナトリウム2 g→溶かす→0.05 mol/lよう素溶液で滴定(指示薬:でんぷん溶液)。
別に同一条件で空試験を行い,滴定量を補正する。
0.05 mol/lよう素溶液1 mlは,0.011 405 g SbCl3に相当する。
[参考]SbCl3+2I+2NaHCO3=SbCl3O+2NaI+2CO2+H2O
(2) 希塩酸溶状
試料4 g+塩酸 (1+3) (→20 ml) →加熱して溶かす……ほとんど澄明以内。
(3) 硫黄化合物(SO4として) 0.01 %以下
試料側溶液:試料1.0 g+塩酸 (2+1) 30 ml+硝酸 (1+1) 5 ml→窒素酸化物が発生しなくなるまで加
熱板上で加熱→塩酸 (2+1) 10 mlを用いて分液漏斗200 mlに移す“+ジイソプロピルエーテル20 ml
→2分間激しく振り混ぜる→静置→有機層を捨てる”(3回繰り返す)→水層を水浴上で蒸発乾固+塩
酸 (2+1) 0.3 ml+水 (→25 ml)。
標準側溶液:試料0.5 g+硫酸塩標準液 (0.01 mgSO4/ml) 5.0 ml+塩酸 (2+1) 30 ml+硝酸 (1+1) 5 ml
→窒素酸化物が発生しなくなるまで加熱板上で加熱→塩酸 (2+1) 10 mlを用いて分液漏斗200 mlに移
す“+ジイソプロピルエーテル20 ml→2分間激しく振り混ぜる→静置→有機層を捨てる”(3回繰り
返す)→水層を水浴上で蒸発乾固+塩酸 (2+1) 0.3 ml+水 (→25 ml)。
操作:JIS K 8001の5.15(硫酸塩)(1)(比濁法)による。
(4) ナトリウム (Na) 0.005 %以下
試料側溶液:試料0.20 g+塩酸 (2+1) 40 ml+水 (→100 ml)(X液)。
標準側溶液:試料0.20 g+塩酸 (2+1) 40 ml+ナトリウム標準液 (0.01 mgNa/ml) 1.0 ml+水 (→100
ml)(Y液)。
空試験溶液:塩酸 (2+1) 40 ml+水 (→100 ml)(Z液)。
操作:JIS K 8001の5.31(原子吸光法)(1)(直接噴霧法)(d)による。測定波長589.0 nm。
(5) 銅 (Cu) 5 ppm以下
試料側溶液:試料2.0 g+塩酸 (2+1) 20 ml+水 (→50 ml)(X液)。
標準側溶液:試料2.0 g+塩酸 (2+1) 20 ml+銅標準液 (0.01 mgCu/ml) 1.0 ml+鉛標準液 (0.01
mgPb/ml) 6.0 ml+鉄標準液 (0.01 mgFe/ml) 4.0 ml+水 (→50 ml)(Y液)。
空試験溶液:塩酸 (2+1) 20 ml+水 (→50 ml)(Z液)。
[X液,Y液及びZ液は,(6)及び(8)の試験にも用いる]
操作:JIS K 8001の5.31(1)(d)による。測定波長324.7 nm。
(6) 鉛 (Pb) 0.003 %以下
試料側溶液:(5)のX液。
標準側溶液:(5)のY液。
空試験溶液:(5)のZ液。
操作:JIS K 8001の5.31(1)(d)による。測定波長283.3 nm。
(7) ひ素 (As) 0.002 %以下
試料側溶液:試料1.5 g+塩酸10 ml→溶かす。
標準側溶液:試料0.5 g+塩酸10 ml→溶かす+ひ素標準液 (0.1 mgAs/ml) (2)0.20 ml。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
操作:試料側溶液,標準側溶液それぞれに,+塩化すず (II) 塩酸溶液 (400 g/l) 10 ml→2時間放置
……試料側の色は標準側の褐色より濃くない。
注(2) ひ素標準液 (0.1 mgAs/ml) の調製 ひ素標準原液 (1 mgAs/ml) 10 ml+水 (→100 ml)。
(8) 鉄 (Fe) 0.002 %以下
試料側溶液:(5)のX液。
標準側溶液:(5)のY液。
空試験溶液:(5)のZ液。
操作:JIS K 8001の5.31(1)(d)による。測定波長248.3 nm。
7. 容器 気密容器とする。
8. 表示 容器には,次の事項を表示しなければならない。
(1) 名称 “塩化アンチモン (III) ”及び“試薬”の文字
(2) 種類
(3) 化学式,式量
(4) 品質(純度)
(5) 内容量
(6) 製造番号
(7) 製造年月又はその略号
(8) 製造業者名又はその略号
参考 取扱い上の注意事項 塩化アンチモン (III) は有害なので皮膚,粘膜への付着を避ける。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
久保田 正 明
物質工学工業技術研究所計測化学部
細 川 幹 夫
通商産業省基礎産業局生物化学産業課
津 田 博
通商産業省機械情報産業局計量行政室
地 崎 修
工業技術院標準部繊維化学規格課
喜多川 忍
通商産業検査所化学部化学標準課
野々村 誠
都立工業技術センター無機化学部
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
石 橋 無味男
厚生省国立衛生試験所
川 瀬 晃
社団法人日本分析化学会
柳 瀬 斉 彦
社団法人日本化学工業協会
藤 貫 正
社団法人日本分析化学会
並 木 昭
財団法人化学品検査協会
鶴 田 利 行
硫酸協会
中 村 靖
日本鉱業協会
大 槻 孝
社団法人日本鉄鋼協会
日 暮 喜八郎
第一化学薬品株式会社
北 田 佳 伸
和光純薬工業株式会社
高 野 虞美子
東京化成工業株式会社
中 村 穣
森田化学工業株式会社
山 岡 宏
片山化学工業株式会社
飯 岡 寛 一
柳島製薬株式会社
山 田 和 夫
関東化学株式会社
(事務局)
平 井 信 次
日本試薬連合会