令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業
規格”を“日本産業規格”に改めた。
日本産業規格 JIS
K 8392-1994
サリチル酸(試薬)
Salicylic acid
C7H6O3 FW : 138.12
1. 適用範囲 この規格は,試薬として用いるサリチル酸について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 0064 化学製品の融点測定方法
JIS K 0067 化学製品の減量及び残分試験方法
JIS K 0117 赤外分光分析方法通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
2. 共通事項 この規格に共通する事項は,JIS K 8001による。
3. 種類 特級
4. 性質 サリチル酸は,次の性質を示す。
(1) 性状 サリチル酸は,白い針状結晶又は結晶性粉末で,エタノール及びジエチルエーテルに溶けやす
く,水に溶けにくい。
(2) 定性方法 試料の赤外吸収スペクトルをJIS K 0117によって測定すると,波数3 240cm−1,3 070cm−1,
1 660cm−1,1 480cm−1,1 250cm−1,1 160cm−1,760cm−1及び700cm−1付近に主な吸収を認める。この
場合,試料調製はJIS K 0117の6.2(1)(錠剤法)による。赤外吸収スペクトルの一例を,図1に示す。
2
K 8392-1994
図1 赤外吸収スペクトルの一例
5. 品質 品質は,6.によって試験し,表1に適合しなければならない。
表1 品質
項目
規格値
純度
99.5 %以上
エタノール溶状
試験適合
融点
158〜161 ℃
強熱残分(硫酸塩)
0.01 %以下
塩化物 (Cl)
0.002 %以下
硫酸塩 (SO4)
0.005 %以下
重金属(Pbとして)
5 ppm以下
鉄 (Fe)
3 ppm以下
硫酸着色物質
試験適合
6. 試験方法 試験方法は,次のとおりとする。
(1) 純度 99.5%以上
試料0.5g(0.1mgのけたまではかる)+エタノール (95) 5ml+二酸化炭素を含まない水30ml→
0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液で滴定[指示薬:フェノールフタレイン溶液]。
別に,同一条件で空試験を行って滴定量を補正する。
0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液1mlは,0.013 812gC7H6O3に相当する。
(2) エタノール溶状 試料3g+エタノール (95) (→20ml) ……澄明。
(3) 融点 158〜161℃
JIS K 0064の3.1(目視による方法)による。
(4) 強熱残分(硫酸塩) 0.01%以下
3
K 8392-1994
JIS K 0067の4.4.4(4)(第4法 硫酸塩として強熱する方法)による。試料10g,硫酸1mlを用い,
残分1mg以下。
(5) 塩化物 (Cl) 0.002%以下
試料側溶液 試料5g+水90ml→加熱して溶かす→冷却+水 (→100ml) →洗浄ろ紙(5種C)でろ過
→初めのろ液20mlを捨てる→ろ液(A液)[(6)の試験にも用いる]。
A液15ml(試料量0.75g)+硝酸 (1+2) 5ml+水 (→25ml)。
標準側溶液 塩化物標準液 (0.01mgCl/ml) 1.5ml+硝酸 (1+2) 5ml+水 (→25ml)。
操作 JIS K 8001の5.7(1)(比濁法)による。
(6) 硫酸塩 (SO4) 0.005%以下
試料側溶液 A液30ml(試料量1.5g)+塩酸 (2+1) 0.3ml。
標準側溶液 硫酸塩標準液 (0.01mgSO4/ml) 7.5ml+水 (→30ml) +塩酸 (2+1) 0.3ml。
操作 JIS K 8001の5.15(1)(比濁法)による。
(7) 重金属(Pbとして) 5ppm以下
試料側溶液 試料4.0g+水5ml+水酸化ナトリウム溶液 (300g/l) 5ml→溶かす+塩酸 (2+1) 6ml→
よくかき混ぜる→冷却→ブフナー漏斗型ガラスろ過器(3G3)で吸引ろ過→(ろ液+洗液)+酢酸ナトリ
ウム溶液 (200g/l) でpH約4に調節+水 (→25ml)。
標準側溶液 水酸化ナトリウム溶液 (300g/l) 5ml+水5ml+塩酸 (2+1) 6ml+鉛標準液
(0.01mgPb/ml) 2.0ml→酢酸ナトリウム溶液 (200g/l) でpH約4に調節+水 (→25ml)。
操作 JIS K 8001の5.24(1)(硫化ナトリウム法)による。
(8) 鉄 (Fe) 3ppm以下
試料側溶液 試料1.0g+エタノール (95) 10ml+塩酸 (2+1) 1ml+水 (→15ml)。
標準液溶液 鉄標準液 (0.01mgFe/ml) 0.30ml+エタノール (95) 10ml+塩酸 (2+1) 1ml+水 (→
15ml)。
操作 JIS K 8001の5.22(2)(1, 10−フェナントロリン法)による。
(9) 硫酸着色物質 JIS K 8001の5.26(3)(c)(固体試料の場合)による。試料1g及び硫酸5mlを用い,比
色標準液(1)2.5ml+水2.5mlの赤より濃くない。
注(1) 比色標準液 JIS K 8001の5.26(1)の比色原液をそれぞれ(a)[塩化コバルト (II) 比色原液]0.20ml
+(b)[塩化鉄 (III) 比色原液]1.2ml+(c)[硫酸銅 (II) 比色原液]0.10ml+水 (→10ml)。
7. 容器 気密容器とする。
8. 表示 容器には,容易に消えない方法で次の事項を表示しなければならない。
(1) 名称 “サリチル酸”及び“試薬”の文字
(2) 種類
(3) 化学式,式量
(4) 品質(純度)
(5) 内容量
(6) 製造番号
(7) 製造業者名又はその略号
4
K 8392-1994
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
久保田 正 明
物質工学工業技術研究所計測化学部
細 川 幹 夫
通商産業省基礎産業局生物化学産業課
津 田 博
通商産業省機械情報産業局計量行政室
地 崎 修
工業技術院標準部繊維化学規格課
喜多川 忍
通商産業検査所化学部化学標準課
野々村 誠
都立工業技術センター無機化学部
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
石 橋 無味男
厚生省国立衛生試験所
川 瀬 晃
社団法人日本分析化学会
柳 瀬 斉 彦
社団法人日本化学工業協会
藤 貫 正
社団法人日本分析化学会
並 木 昭
財団法人化学品検査協会
鶴 田 利 行
硫酸協会
中 村 靖
日本鉱業協会
大 槻 孝
社団法人日本鉄鋼協会
日 暮 喜八郎
第一化学薬品株式会社
北 田 佳 伸
和光純薬工業株式会社
高 野 虞美子
東京化成工業株式会社
中 村 穣
森田化学工業株式会社
山 岡 宏
片山化学工業株式会社
飯 岡 寛 一
柳島製薬株式会社
山 田 和 夫
関東化学株式会社
(事務局)
平 井 信 次
日本試薬連合会