K 8012:2006
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本試薬
協会(JRA)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出
があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS K 8012:1994は改正され,この規格に置き換えられる。
改正に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 6353-2:1983,Reagents for chemical
analysis‐Part 2:Specifications‐First seriesを基礎として用いた。
また,令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任をもたない。
JIS K 8012には,次に示す附属書がある。
附属書(参考) JISと対応する国際規格との対比表
K 8012:2006
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 一般事項 ························································································································ 1
4. 種類 ······························································································································ 1
5. 性質 ······························································································································ 1
5.1 性状 ···························································································································· 1
5.2 定性方法 ······················································································································ 1
6. 品質 ······························································································································ 2
7. 試験方法 ························································································································ 2
7.1 特級 ···························································································································· 2
7.2 ひ素分析用 ··················································································································· 4
8. 容器 ······························································································································ 4
9. 表示 ······························································································································ 4
附属書(参考)JISと対応する国際規格との対比表 ····································································· 5
日本産業規格 JIS
K 8012:2006
亜鉛(試薬)
Zinc
Zn AW:65.409
序文 この規格は,1983年に第1版として発行されたISO 6353-2,Reagents for chemical analysis―Part
2:Specifications―First series を翻訳し,技術的内容を変更して作成した日本産業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,原国際規格を変更している事項である。変
更の一覧表をその説明を付けて,附属書(参考)に示す。
1. 適用範囲 この規格は,試薬として用いる亜鉛について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide21に基づき,IDT(一致している),MOD(修
正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 6353-2:1983,Reagents for chemical analysis―Part 2:Specifications―First series (MOD)
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8129 塩化コバルト(Ⅱ)六水和物(試薬)
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8529 臭素(試薬)
JIS K 8541 硝酸(試薬)
3. 一般事項 試験方法の一般的な事項は,JIS K 8001による。
4. 種類 種類は,特級及びひ素分析用とする。
5. 性質
5.1 性状 亜鉛は,青白の金属で,削ったもの,塊状,棒状,板状,粒状,花状又は砂状である。塩酸,
硫酸及び水酸化ナトリウム溶液と反応して水素を発生する。
5.2 定性方法 定性方法は,次による。
a) 試料0.3 gに塩酸(2+1)10 mlを加え加熱して溶かし,水10 mlを加える(A液)。A液3 mlに水酸
化ナトリウム溶液(300 g/l)3 mlを加えると,白い沈殿が生じる。さらに水酸化ナトリウム溶液(300
g/l)5 mlを加えると,その沈殿は溶ける。
2
K 8012:2006
b) A液3 mlにヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム溶液(50 g/l)1 mlを加えると,白い沈殿が生じる。
6. 品質 品質は,7. によって試験したとき,表1に適合しなければならない。
表 1―品質
項目
規格値
特級
ひ素分析用
銅(Cu)
質量分率% 0.005 以下
−
カドミウム(Cd)
質量分率% 0.005 以下
−
鉛(Pb)
質量分率% 0.007 以下
−
ひ素(As)
質量分率ppm 0.1 以下
0.05 以下
鉄(Fe)
質量分率% 0.005 以下
−
7. 試験方法
7.1
特級
7.1.1
試験条件及び試験結果 試験条件は,JIS K 8001の3.7(試験操作など)(1)(試験の環境)による。
湿度管理は,必要に応じ実施する。また,表1で規定する各品質項目の試験は,次の各試験方法によって
行い,得られる計算値及び操作結果は,JIS K 8001の3.5(測定値)による。
7.1.2
銅(Cu) 溶液の調製及び操作は,次による。
a) 試料側溶液 試料5.0 gに水20 mlを加え(1),塩酸・硝酸溶液(2)25 mlを注意しながら徐々に加える。
次に徐々に加熱して溶かし,冷却後,水を加えて100 mlにする(S液)。S液20 ml(試料量1 g)に水
を加えて100 mlにする(X液)(X液は,7.1.3,7.1.4及び7.1.6の試験にも用いる。)。
注(1) これ以下の操作は,刺激性のある窒素酸化物が発生するので,ドラフト内で行う。
なお,加熱するときは水素が発生するので,マントルヒーターを用いる。
(2) 塩酸・硝酸溶液は,JIS K 8541に規定する硝酸5 mlをJIS K 8180に規定する塩酸30 mlに徐々
に加えて混合し,調製する。この操作は,刺激性のある窒素酸化物を発生するので,ドラフト
内で行う。
b) 標準側溶液 S液20 ml(試料量1 g)に銅標準液(Cu:0.01 mg/ml)5.0 ml,カドミウム標準液(Cd:
0.01 mg/ml)5.0 ml,鉛標準液(Pb:0.01 mg/ml)7.0 ml,鉄標準液(Fe:0.01 mg/ml)5.0 ml及び水を
加えて100 mlにする(Y液)(Y液は,7.1.3,7.1.4及び7.1.6の試験にも用いる。)。
c) 空試験溶液 塩酸・硝酸溶液(2)5 mlに水を加えて100 mlにする(Z液)(Z液は,7.1.3,7.1.4及び7.1.6
の試験にも用いる。)。
d) 操作 JIS K 8001の5.31(原子吸光法)(1)(直接噴霧法)(d)による。
7.1.3
カドミウム(Cd) 溶液の調製及び操作は,次による。
a) 試料側溶液 7.1.2のX液を用いる。
b) 標準側溶液 7.1.2のY液を用いる。
c) 空試験溶液 7.1.2のZ液を用いる。
d) 操作 JIS K 8001の5.31(1)(d)による。
7.1.4
鉛(Pb) 溶液の調製及び操作は,次による。
a) 試料側溶液 7.1.2のX液を用いる。
b) 標準側溶液 7.1.2のY液を用いる。
c) 空試験溶液 7.1.2のZ液を用いる。
3
K 8012:2006
d) 操作 JIS K 8001の5.31(1)(d)による。
7.1.5
ひ素(As) 装置,溶液の調製及び操作は,次による。
a) 装置 図1に示す蒸留装置を用いる。材質は,硬質ガラス製でその接触部はすり合せにする。
b) 試料側溶液 試料13 gを蒸留フラスコ300 mlにとり,蒸留装置に連結する(1)。JIS K 8541に規定す
る硝酸30 mlを受器にとり,更にJIS K 8529に規定する臭素0.4 mlを加え,栓をして振り混ぜて溶か
す。栓をとり,逆流止めの先端を液に浸す。塩酸(ひ素分析用)(2+1)100 ml及び塩化コバルト(Ⅱ)
溶液(3)2 mlを注入用分液漏斗にとり,蒸留フラスコに徐々に加える。すり合せコックを閉じて,水素
が発生しなくなるまで放置した後,徐々に加熱して蒸留する。初留約20 mlをとった後,蒸発皿に移
し,硫酸(1+5)10 mlを加えて加熱板上で硫酸の白煙が発生し始めるまで加熱する。冷却後,水10 ml
を加えて再び加熱板上で硫酸の白煙が発生し始めるまで加熱する。冷却後,水を加えて20 mlにする。
注(3) 塩化コバルト(Ⅱ)溶液の調製 JIS K 8129に規定する塩化コバルト(Ⅱ)六水和物1 gに,
水を加えて溶かし100 mlにする。
c) 標準側溶液 試料3 g及びひ素標準液(As:0.001 mg/ml)1.0 mlを蒸留フラスコ300 mlにとり,蒸留
装置に連結する。以下,試料側溶液と同一操作を行う。
d) 操作 JIS K 8001の5.19[ひ素(As)](3)(AgDDTC法)による。
図 1 蒸留装置の一例
A :蒸留フラスコ300 ml
B :受器(有栓メスシリンダー100 ml)
C :注入用分液漏斗
D :逆流止め(約100 ml)
E :分留トラップ
F :小孔(径は管の内径程度)
G :球管冷却器
H :すり合せコック
4
K 8012:2006
7.1.6
鉄(Fe) 溶液の調製及び操作は,次による。
a) 試料側溶液 7.1.2のX液を用いる。
b) 標準側溶液 7.1.2のY液を用いる。
c) 空試験溶液 7.1.2のZ液を用いる。
d) 操作 JIS K 8001の5.31(1)(d)による。
7.2
ひ素分析用 試験方法は,7.1による。ただし,ひ素(As)は,次による。
a) ひ素(As) 7.1.5による。この場合,試料側溶液の試料は25 g,塩酸(ひ素分析用)(2+1)は150 ml
を用いる。また,標準側溶液の試料は5 g,塩酸(ひ素分析用)(2+1)は150 mlを用いる。
8. 容器 容器は,気密容器とする。
9. 表示 容器には,次の事項を表示する。
a) 名称 “亜鉛”及び“試薬”の文字
b) 種類
c) 元素記号及び原子量
d) 内容量
e) 製造番号
f)
製造業者名又はその略号
5
K 8012:2006
附属書(参考)JISと対応する国際規格との対比表
JIS K 8012 : 2006 亜鉛(試薬)
ISO 6353-2:1983 化学分析用試薬―第2部:仕様―第1シリーズ
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ) 国際
規格番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異の
項目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線又は側線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術的差異の理由
及び今後の対策
項目
番号
内容
項目
番号
内容
項目ごとの
評価
技術的差異の内容
1. 適用範囲
試薬として用いる亜鉛
について規定。
1
化学分析用試薬40
品目の仕様について
規定。
MOD/変更
JISは1品目1規格。
試薬の規格使用者及び試薬は,各規格
に多く引用されやすくするため1品目1
規格としている。
なお,対応国際規格は20年間以上見
直しが行われれていないため市場の実
態に合わない。国際規格の改正を検討
する。
2. 引用規格
JIS K 8001
JIS K 8129
JIS K 8180
JIS K 8529
JIS K 8541
1
ISO 6353-1
MOD/変更
ISO規格1件を削除
し,JISを追加・引用,
基本的には同等内容。
該当する対比項目を参照。
3. 一般事項
JIS K 8001による。
−
−
MOD/追加
項目を追加。
編集上の差異であり,技術的な差異で
はない。
4. 種類
−
−
MOD/追加
種類の項目を追加。
JISは種類として“特級”及び“ひ素分
析用”がある。ISO規格には,種類別
の区分がない。JIS特級がISO規格品に
対応する。“ひ素分析用”は,JIS独自
のものである。
5. 性質
−
−
MOD/追加
亜鉛の性質の項を追
加。
一般的な説明事項であり,技術的な差
異はない。
2
K
8
0
1
2
:
2
0
0
5
5
K
8
0
1
2
:
2
0
0
6
6
K 8012:2006
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ) 国際
規格番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異の
項目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線又は側線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術的差異の理由
及び今後の対策
項目
番号
内容
項目
番号
内容
項目ごとの
評価
技術的差異の内容
6. 品質
R40.1
MOD/変更
1) 品質に差異のある
項目:鉛,鉄。
2) 追加した項目:銅,
カドミウム。
3) 種類の区分を設け
た。
ISO規格は,長期間内容の見直しが行
われず,国際市場でISO規格品が用い
られることはほとんどない。また,技
術的差異も軽微(1)(2)(3)である。
7. 試験方法
7.1 特級
7.1.1 試験条
件及び試験
結果
R40.2
−
MOD/追加
項目を追加。
一般的な試験条件及び試験結果に関す
る事項であり,技術的な差異はない。
7.1.2 銅(Cu) 原子吸光法
−
−
MOD/追加
項目を追加。
これまでの実績からJISとして必要。
ISO規格の見直し時に,改正提案の検
討を行う予定。
7.1.3 カドミ
ウム(Cd)
原子吸光法
−
−
MOD/追加
項目を追加。
7.1.4 鉛(Pb) 原子吸光法
R40.2.2
原子吸光法
MOD/変更
1) 試料の量,試薬の
量などを変更。
2) JIS K 8001の5.31
を引用。
JISは,定期的に見直しを行っている
が,ISO規格は,長年見直しが行われ
ていないことから実績のある従来の
JIS法を踏襲。技術的な差異は軽微であ
り,対策は考慮しない。
7.1.5 ひ素
(As)
AgDDTC法
R40.2.1
AgDDTC法
MOD/変更
1) 試料を直接ひ素試
験装置で溶解し,
蒸留して測定する
方法から,試料を
蒸留装置で溶解
し,蒸留した後,
ひ素試験装置で測
定する方法に変
更。
2) JIS K 8001の5.19
を引用。
6
K
8
0
1
2
:
2
0
0
6
2
K
8
0
1
2
:
2
0
0
5
7
K 8012:2006
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ) 国際
規格番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異の
項目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線又は側線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術的差異の理由
及び今後の対策
項目
番号
内容
項目
番号
内容
項目ごとの
評価
技術的差異の内容
7.1.6 鉄(Fe) 原子吸光法
R40.2.2
原子吸光法
MOD/変更
1) 試料の量,試薬の
量などを変更。
2) JIS K 8001の5.31
を引用。
JISは,定期的に見直しを行っている
が,ISO規格は,長年見直しが行われ
ていないことから実績のある従来の
JIS法を踏襲。技術的な差異は軽微であ
り,対策は考慮しない。
7.2 ひ素分析
用
a) ひ素(As)
AgDDTC法
−
−
MOD/追加
項目を追加。
用途上で必要。
ISO規格の見直し時に,提案の検討を
行う予定。
8. 容器
−
−
MOD/追加
項目を追加。
規格適合性を評価する関係で必要な項
目を追加。
9. 表示
−
−
MOD/追加
項目を追加。
注(1) 理由:軽微な技術的差異。6.品質の(Ⅳ)欄の1)〜3)は,いずれも一般用途の試薬としては軽微な技術的差異であり,この差が取引上の障害になる可能性はほと
んどない。ISO規格,JISとも品質項目の設定・品質水準の設定は,市場での長い使用実績・経験を踏まえたものである。ISO規格とJISとの質量分率ppm〜質
量分率pptレベルの不純物のごくわずかの差異は,経験上,一般用途の試薬としては実用上差し支えないものと考えられる。
なお,不純物のごくわずかの差異がどのような影響を及ぼすか,あらゆる用途を想定して検証することは現実的ではない。 (Ⅳ)の1)〜3)の品質項目及び品質水
準が不満足な場合は,通常,JIS試薬,ISO規格試薬とも対応できない。この場合,対応策としては,目的に合致した高純度試薬など特殊用途の試薬を使用する
ことになる。
(2) ISO試薬規格の状況:ISO規格の試薬は,規格の維持管理が行われていない(規格制定後約20年経過)。このため,ISO規格の内容が現在の市場の要求にこたえ
ているかどうかの検討が行われていない(JISとの差)。また,ISO規格の試薬は,我が国だけではなく,国際市場でも商取引がほとんどなく国際規格としての
存在意義が乏しい。
(3) 今後の対策:(1)及び(2)の理由から,当面,対策を考慮しない。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:MOD
備考1. 項目ごとの評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
― MOD/追加……… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
― MOD/変更……… 国際規格の規定内容を変更している。
2.
JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
― MOD…………… 国際規格を修正している。
2
K
8
0
1
2
:
2
0
0
5
7
K
8
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1
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:
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0
6