K 7372 : 2000 (ISO 1159 : 1978)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
今回の制定は,国際規格に整合させるために,ISO 1159 : 1978 (Plastics−Vinyl chloride-vinyl acetate
copolymers−Determination of vinyl acetate) を基礎として用いた。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 7372 : 2000
(ISO 1159 : 1978)
プラスチック−塩化ビニル・
酢酸ビニルコポリマー−
酢酸ビニル含有量の求め方
Plastics−Vinyl chloride-vinyl acetate copolymers−
Determination of vinyl acetat
序文 この規格は,1978年に発行されたISO 1159 : Plastics−Vinyl chloride-vinyl acetate coplymers−
Determination of vinyl acetateを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業
規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は原国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲 この規格は,塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー中の酢酸ビニルの含有量の求め方につい
て規定する。
2. 原理 試料を精製したテトラヒドロフランに溶かし,水酸化カリウム・エタノール溶液で酢酸基を加
水分解する。指示薬にはチモールブルーを用い,過剰の水酸化カリウムを硫酸で逆滴定する。加水分解の
間に遊離した塩化水素は硝酸銀で滴定する。
3. 試薬 試薬は次のものを用いる。
3.1
水酸化カリウム・エタノール溶液 (0.5mol/l) JIS K 8574に規定する水酸化カリウム (KOH) 33gをJIS
K 8102に規定するエタノール (95) 500mlに溶かす。これにエタノールを加えて1000mlとする。一夜静置
して上澄みを取る。
3.2
水酸化カリウム・エタノール溶液 (0.2mol/l) 3.1と同様に調製する。ただし,JIS K 8574に規定する
水酸化カリウム13.5gをエタノールに溶かす。
3.3
0.05mol/l硫酸 JIS K 8001の4.5 (26.3) によって調製する。
3.4
0.025mol/l硫酸 3.3の0.05mol/l硫酸を正しく2倍に薄める。
3.5
0.1mol/l硝酸銀標準液 JIS K 8001の4.5 (14) によって調製する。
3.6
0.05mol/l硝酸銀標準液 3.5の0.1mol/l硝酸銀溶液を正しく2倍に薄める。
3.7
テトラヒドロフラン JIS K 9705に規定するものを7.2の方法で更に精製したもの。
3.8
エタノール・水混合液(体積比1 : 1) JIS K 8102に規定するエタノール (95) とJIS K 0557に規
定するA3の水で調製し,チモールブルー指示薬で中性を示したもの。
2
K 7372 : 2000 (ISO 1159 : 1978)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3.9
チモールブルー指示薬 JIS K 8643に規定するチモールブルー0.1gをJIS K 8102に規定するエタノ
ール (95) 100mlに溶かす。
3.10 水酸化カリウム JIS K 8574に規定するもの。
3.11 クロム酸カリウム溶液 (50g/l) JIS K 8312に規定するクロム酸カリウムを用いて調製する。
4. 装置及び器具 装置及び器具は,次のものを用いる。
4.1
ビュレット 25ml,酸滴定用
4.2
ビュレット 10ml,硝酸銀滴定用
4.3
マグネチック・スターラ
4.4
恒温水槽 温度30℃±0.5℃に保持できるもの(7.1参照)。
4.5
はかり 0.000 1gまで正確にはかれるもの。
4.6
全量フラスコ 容量100mlのもの。
4.7
ピペット 容量1,5,20,30mlのもの。
5. 操作
5.1
酢酸基を定量的に加水分解するに必要な時間は,酢酸ビニル含有量,使用する水酸化カリウム・エ
タノール溶液の濃度及び試料の温度と量に依存する。したがって,コポリマーの予想酢酸ビニル含有量及
び加水分解を行う温度を考慮して,表に掲げた条件の中から適切なものを選択する。
5.2
乾燥コポリマー試料を表の指示に従って,正確にはかりとって全量フラスコ(4.6)に入れ(7.3参照)
ピペットを用いてテトラヒドロフラン(3.7)20mlを加える。マグネチック・スターラ(4.3)を用いてコポリマ
ーを溶かす。
完全に溶かした後,全量フラスコを30℃の恒温水槽に浸し,10分間放置する。
次いで,表に掲げる濃度の水酸化カリウム・エタノール溶液5mlをピペットを用いて加え,全量フラス
コをゆっくり回して内容物をよく混合する。この段階でコポリマーの部分的沈殿が生じる場合には,再溶
解しなければならない。表に規定された時間で加水分解を行う。
5.3
加水分解した後,かき混ぜながらエタノール・水混合液(3.8)30mlを滴下する。これによって微細な
コポリマー粒子の沈殿が生ずる。チモールブルー指示薬(3.9)1mlを加える。かき混ぜながら過剰の水酸化
カリウムを濃い緑からオレンジ色に変化するまで表に掲げる濃度の硫酸で滴定する。同じ試験条件下で,
コポリマーのない空試験を行う。青から黄色になるまで滴定する。
5.4
酸滴定終了後,硫酸(3.3)1mlを加え,この混合物を連続的にかき混ぜながら,表に掲げる濃度の硝酸
銀標準液で電位差滴定する。ここに用いた硝酸銀標準液の量は,コポリマーの加水分解の間に発生した塩
化水素と当量である(7.4)。
6. 結果の表し方
6.1
0.05mol/l硫酸及び0.1mol/l硝酸銀標準液を用いた場合,酢酸ビニル含有量は質量百分率として,次
の式によって算出する。
(
)
m
V
V
V
3
2
1
9
860
.0
−
−
×
ここに,
V1: 空試験に要した硫酸の量 (ml)
V2: 測定に要した硫酸の量 (ml)
3
K 7372 : 2000 (ISO 1159 : 1978)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
V3: 測定に要した硝酸銀標準液の量 (ml)
m: 試料の質量 (g)
0.8609: この係数は次の式から算出したものである。
酢酸ビニルは1mol当たりは86.09g/mol,使用した硫酸,硝酸
銀標準液はいずれも0.1N溶液で,したがってコポリマーmg
中の酢酸ビニル含有量は質量百分率で
(
)
100
000
/1
1.0
09
.
86
3
2
1
×
×
×
−
−
×
m
V
V
V
(
)
m
V
V
V
3
2
1
9
860
.0
−
−
×
=
6.2
0.025mol/l硫酸及び0.05mol/l硝酸銀標準液を用いた場合,酢酸ビニル含有量は質量百分率として,
次の式によって算出する。
(
)
m
V
V
V
3
2
1
4304
.0
−
−
×
ここに, V1,V2,V3,mは6.1に同じである。ただし,使用した硫酸,硝酸銀
標準液はいずれも0.05N溶液で,したがってコポリマーmg中の酢酸
ビニル含有量は質量百分率で
(
)
100
000
/1
05
.0
09
.
86
3
2
1
×
×
×
−
−
×
m
V
V
V
(
)
m
V
V
V
3
2
1
4
430
.0
−
−
×
=
6.3
測定は2回行う。その差が酢酸ビニル含有量で0.4%を超える場合は,試験を繰り返さなければなら
ない。2回の測定値の平均を報告する。
表 塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマーの加水分解条件
酢酸ビニル推
定含有量
試料量
水酸化カリウ
ム・エタノー
ル標準液
硫酸及び硝酸
銀標準液*
加水分解時間 (h)
恒温水槽
(4.4)
室温
% (m/m)
g
mol/l
mol/l
30℃±0.5
20〜25℃
25〜30℃
0〜5
0.4〜0.5
0.2
0.025
(0.05)
2
3.5
2.5
5〜10
0.18〜0.2
0.2
0.025
(0.05)
2
3.5
2.5
30〜60
0.18〜0.2
0.5
0.05
(0.1)
2
3.5
2.5
60以上
0.13〜0.15
0.5
0.05
(0.1)
3
6
4
注* 硝酸銀標準液の濃度は下に( )で示した。
7. 操作上の注意
7.1
恒温水槽を使用せず室温で行う場合には,表の条件に従う。
7.2
テトラヒドロフランの精製 テトラヒドロフランは,しばしば水酸化カリウムと反応する物質を含
有している。この種の不純物を含む溶剤を使用した場合,理論値より大きな結果になることがある。
精製は,次のように行う(図参照)。
テトラヒドロフラン1l及び水酸化カリウム(3.1)50gを2口付き2l蒸留フラスコ [e)] に入れる。一方の
口を通じてフラスコの底にJIS K 1107に規定する。窒素を導入する(窒素は不活性雰囲気を形成するとと
もに,内容物をかき混ぜる。)。もう一方の口には還流冷却器 [b)] 及び液体シール [c),d)] を接続する。窒
4
K 7372 : 2000 (ISO 1159 : 1978)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
素は最初の15分間は5l/hで,その後はゆっくり(1秒間で泡1個)通気する。フラスコを水浴中で加熱し,
約5時間還流させる。
5時間経過後,次いで,還流冷却器を外し,窒素を少量(1秒間で泡1個)通気しながら水酸化カリウム
中でテトラヒドロフランを蒸留する。留出物の最初の50mlを捨て,次いで,留出物を捕集して,すり合
わせガラス栓付き褐色瓶に貯蔵する。
得られた溶媒の純度は次のようにして検定できる:ピペットを用いテトラヒドロフラン10mlを共栓付
きフラスコ100mlに,また,蒸留水10mlを第2のフラスコに取る。2個のフラスコそれぞれに0.5mol/l水
酸化カリウム・エタノール溶液(3.1)5mlを加えて栓をし,1時間放置する。次に,エタノール・水混合液(3.8)
約30mlを加えて希釈し,チモールブルー指示薬(3.9)1mlを加えて,この混合物を0.05mol/l硫酸(3.3)で黄
色になるまで滴定する。両者の滴定に要した0.05mol/l硫酸(3.3)の量の差が0.1mlを超えてはならない。
精製したテトラヒドロフランを1週間以上貯蔵することは推奨できない。できるだけ蒸留した新鮮なテ
トラヒドロフランを使うべきである。上記に従って精製したにもかかわらず,1週間以上貯蔵したテトラ
ヒドロフランは水酸化カリウムを添加し,少量の窒素を通気しながら精製する必要がある。この操作で使
用する窒素は,0.1% (v/v) 以上の酸素を含んではならない。
7.3
未知試料を分析するときは,酢酸ビニル含有量が10〜30% (m/m) のコポリマーに対応する条件で予
備試験を行う。
7.4
電位差滴定に代えて若干精度は劣るがモール (Mohr) 法を行ってもいい。この場合には,溶液は酸
性化させずにガラスフィルタでろ過する。沈殿及びフィルタは硝酸銀反応が見られなくなるまで洗浄する。
滴定すべき溶液(黄色)が指示薬としてクロム酸カリウム溶液(3.11)1mlを加えると緑に変化するときには,
0.05mol/l硫酸(3.3)滴を元の黄色が回復するまで加える。
モール法においては,加水分解時間を忠実に守るべきである。時間の増加で溶液の暗色化が進み,目視
による滴定を困難にするからである。しかしながら,電位差滴定ではこの暗色化は不都合とならず滴定で
きる。
8. 試験報告
試験報告には,次の事項を記載しなければならない。
a) JIS規格番号
b) 試験材料を特定できる事項
c) 試料樹脂の酢酸ビニル含有量
d) 試験実施日
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K 7372 : 2000 (ISO 1159 : 1978)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図 テトラヒドロフラン精製装置