K 7243-1:2005
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,エポキシ樹脂技術協会(JSERT)/日本プラス
チック工業連盟(JPIF)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべ
きとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 21627-1:2002,Plastics―Epoxy resins
―Determination of chlorine content―Part 1:Inorganic chlorineを基礎として用いた。
これによってJIS K 7243:1996は廃止され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
JIS K 7243-1には,次に示す附属書がある。
附属書1(参考)JISと対応する国際規格との対比表
JIS K 7243の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS K 7243-1 第1部:無機塩素
JIS K 7243-2 第2部:易可けん化塩素
JIS K 7243-3 第3部:全塩素
これらの規格は,エピクロルヒドリンを原料としたエポキシ樹脂の製造において発生する塩素不純物含
有量の求め方である。塩素不純物は,硬化樹脂の物性を低下させることから,生成を制御する必要がある
が,化学的性質が大きく異なるため試験方法もそれぞれ必要となる。
JIS K 7243-1〜JIS K 7243-3で対象とする塩素不純物として生成する無機塩素及び有機塩素の種類は,次
のとおりである。
第1部 無機塩素:無機塩素又はイオン性塩素といわれる無機塩素
第2部 易可けん化塩素:脱塩化水素化が不完全な場合に発生する1,2-クロルヒドリンとして存在する
塩素種
第3部 全塩素:エポキシ樹脂中に存在する無機塩素とともに,すべての可けん化塩素,例えば,脱塩
化水素化が不完全な場合に発生する1,2-クロルヒドリン,1,3-クロルヒドリン,1-クロロメチル
-2-グリシジルエーテル(クロロメチル体)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS K 7243-1〜JIS K 7243-3の代表的な不純物としての無機塩素及び有機塩素の化学式を次に示す。
Cl−
無機塩素(又はイオン性塩素)
…… O-CH2-CH-CH2
1,2-クロルヒドリン
OH Cl
CH2Cl
…… O-CH
1,3-クロルヒドリン
CH2OH
…… O-CH2-CH-O-CH2CH-CH2
1-クロロメチル-2-グリシジルエーテル(クロロメチル体)
CH2 O
Cl
上に示す以外の不純物の求め方については,ISO 4615:1979, Plastics―Unsaturated polyesters and epoxide
resins―Determination of total chlorine contentを参照する。
K 7243-1:2005
(3)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 定義 ······························································································································ 2
4. 原理 ······························································································································ 2
5. 試薬 ······························································································································ 2
5.1 アセトン ······················································································································ 2
5.2 2-プロパノール ·············································································································· 2
5.3 酢酸 ···························································································································· 2
5.4 塩化ナトリウム ············································································································· 2
5.5 0.002 mol/L硝酸銀2-プロパノール溶液 ·············································································· 2
6. 器具及び装置 ·················································································································· 2
6.1 電位差滴定装置 ············································································································· 2
6.2 分析用はかり ················································································································ 2
6.3 フラスコ及びビーカ ······································································································· 2
6.4 メスシリンダ ················································································································ 2
6.5 全量ピペット ················································································································ 3
6.6 マグネチックスターラ ···································································································· 3
7. 手順 ······························································································································ 3
8. 計算 ······························································································································ 3
9. 精度 ······························································································································ 3
10. 結果の報告 ··················································································································· 4
附属書1(参考)JISと対応する国際規格との対比表 ··································································· 5
K 7243-1:2005
(4)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 7243-1:2005
エポキシ樹脂の塩素含有量の求め方―
第1部:無機塩素
Plastics―Epoxy resins―Determination of chlorine content―
Part 1:Inorganic chlorine
序文 この規格は,2002年に発行されたISO 21627-1,Plastics―Epoxy resins―Determination of chlorine
content―Part 1:Inorganic chlorineを翻訳し,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,原国際規格を変更している事項である。変更の一覧
表を付けて,附属書1(参考)に示す。
1. 適用範囲 この規格は,無機塩素又はイオン性塩素と呼ばれるエポキシ樹脂中の無機塩素含有量を電
位差滴定によって直接求める方法について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 21627-1:2002,Plastics―Epoxy resins―Determination of chlorine content―Part 1:Inorganic
chlorine (MOD)
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 0113 電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
JIS K 8005 容量分析用標準物質
JIS K 8034 アセトン(試薬)
JIS K 8355 酢酸(試薬)
JIS K 8550 硝酸銀(試薬)
JIS K 8839 2-プロパノール(試薬)
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS R 3505 ガラス製体積計
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第2部:標準測定方法の併行精度及
び再現精度を求めるための基本的方法
備考 ISO 5725-2:1994, Accuracy (trueness and precision) of measurement methods and results―Part2:
Basic method for the determination of repeatability and reproducibility of a standard measurement
2
K 7243-1:2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
methodが,この規格と一致している。
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
3.1
無機塩素(inorganic chlorine) 樹脂中にCl−として存在する塩素。イオン性塩素とも呼ばれる。その
含有量は,樹脂1 kg当たりのmg(mg/kg)で表される。
4. 原理 試料を適切な溶媒に溶解し,硝酸銀標準溶液を用いて電位差滴定によって求める。
5. 試薬 分析操作中,特に指定がない限り分析用試薬特級,及びJIS K 0557に規定する水を使用する。
5.1
アセトン JIS K 8034に規定するもの。場合によって樹脂がアセトンに溶解しないことがある。こ
の場合,2-ブタノン(メチルエチルケトン),THF(テトラヒドロフラン),又は他の適切な溶媒を使用し,
結果の報告(10.)に使用した溶媒を記録する。
5.2
2-プロパノール JIS K 8839に規定するもの。
5.3
酢酸 JIS K 8355に規定するもの。
5.4
塩化ナトリウム JIS K 8005に規定するもの。
5.5
0.002 mol/L硝酸銀2-プロパノール溶液
5.5.1
調製 JIS K 8550に規定する硝酸銀17.0 gを水に溶かした後,水で1 Lに希釈する(0.1 mol/L)。
この水溶液20 mlを1 Lの全量フラスコに採り,2-プロパノールで1 Lに希釈する。
5.5.2
標定 あらかじめ500〜600 ℃で乾燥した塩化ナトリウム(5.4)0.115〜0.120 gを0.1 mgまで正し
くはかりとり,水1 Lに溶解する。この塩化ナトリウム水溶液5 mlをピペット(6.5)で200 mlビーカ(6.3)
に採り,100 mlのアセトン(5.1)と2 mlの酢酸(5.3)とを加える。次いで,5.5.1で調製した硝酸銀溶液
で電位差滴定を行う。
同様に塩化ナトリウム未添加の試験液で空試験を行う。
電位差滴定法はJIS K 0113による。
5.5.3
濃度の計算 硝酸銀2-プロパノール溶液の濃度は,次の式によって算出し,JIS Z 8401によって有
効数字3けたに丸める。
)
(
5
0
1
V
V
A
m
c
−
×
×
=
ここに, c1:硝酸銀2-プロパノール溶液(5.5)の濃度(mol/L)
m:塩化ナトリウム(5.4)の質量(g)
A:58.5(塩化ナトリウムのグラム当量)(g/ mol)
V:終点までの滴定に消費した硝酸銀2-プロパノール溶液(5.5)(ml)
V0:空試験に要した硝酸銀2-プロパノール溶液(5.5)(ml)
6. 器具及び装置 器具及び装置は,通常使用される実験室用器具のほか,次のとおりとする。
6.1
電位差滴定装置 JIS K 0113に規定するガラス−銀電極,滴定用スタンド,及び10 mlミクロビュー
レットをもつ適切な電位差滴定装置。
6.2
分析用はかり 精度0.1 mgのもの。
6.3
フラスコ及びビーカ 容量200 ml。JIS R 3503に規定するもの。
6.4
メスシリンダ 容量100 ml。JIS R 3505に規定するもの。
3
K 7243-1:2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.5
全量ピペット 容量1 ml,2 ml,及び5 ml。JIS R 3505に規定するもの。
6.6
マグネチックスターラ ポリテトラフルオロエチレン被覆のかくはん子をもつもの。
7. 手順 手順は,次による。
a) 200 mlビーカ(6.3)に試料10 gを0.1 mgまで正確にはかりとる。アセトン(5.1)100 mlを加え,マ
グネチックスターラ(6.6)を用いて室温で溶解する。
b) 水2 mlと酢酸(5.3)1 mlとを加える。
c) 滴定用スタンド(6.1)上にビーカを置き,電極が約半分浸るようにセットする。ミクロビューレット
に0.002 mol/Lの硝酸銀溶液(5.5)を満たし, ビューレットの先端がビーカ中の液面約10 mm下に達
するように滴定用スタンドにビューレットをセットする。試験溶液が飛散しないようにかくはん速度
を調整する。最初のビューレット及びセル電位の読みを記録する。
d) 少量の硝酸銀溶液を加え,電位が一定になったらビューレット及びセル電位の読みを記録する。変曲
点の間の領域で,硝酸銀溶液を増量しても電位変化が小さい場合には,0.1 ml以上に増量して添加す
る。セル電位の変化が,0.02 ml当たり5 mV以上になったら,硝酸銀溶液を0.02 ml未満に減少させ
る。
e) セル電位の変化が再び0.02 ml当たり2 V以下になるまで滴定を続ける。滴定した溶液を滴定用スタン
ドから外し,電極を水でよく洗い,乾いた布でふ(拭)き,布やすりで軽く磨く。滴定と滴定との間
は,電極を水に浸せきしておく。
f)
セル電位に対する滴定した硝酸銀溶液の累積容量をプロットする。滴定曲線の変曲点を終点とする。
プロットから,消費した硝酸銀溶液の量を0.01 mlまで読み取る。
g) 同様に空試験を行う。
8. 計算 無機塩素含有量(mg/kg)は,次の式によって小数点1位まで結果を求める。
0
0
1
1
000
1
)
(
)
(Cl
m
V
V
c
B
w
×
×
×
=
−
−
ここに, w1(Cl-):無機塩素含有量(mg/kg)
B:35.5(塩素のグラム当量)(g/mol)
c1:硝酸銀2-プロパノール溶液(5.5)の濃度(mol/L)
V:滴定に要した硝酸銀2-プロパノール溶液(5.5)(ml)
V0:空試験に要した硝酸銀2-プロパノール溶液(5.5)(ml)
m0:試料の質量(g)
9. 精度 規格の精度は,JIS Z 8402-2によって,研究機関10か所において3水準で実施したラウンドロ
ビンテストの結果から求めた(表1参照)。これらのデータには異常値を含んでいるが,併行精度標準偏差
及び室間再現精度の計算には,異常値は含まれていない。特に信頼性又は正確さが試料に依存する場合は,
精度実験に使用した材料の銘柄を付記する。
4
K 7243-1:2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表 1 精度
無機塩素含有量
mg/kg
併行精度
sr
室間再現精度
sR
1以下
0.05
0.13
1〜3
0.14
0.27
3〜5
0.25
0.55
sr :併行精度(室内)標準偏差
sR:室間再現精度(室間)標準偏差
10. 結果の報告 結果の報告には,次の事項を記載する。
a) この規格の番号
b) 試料の特定に必要なすべての情報
c) 使用した溶媒[5.1(アセトン)に示したものと異なる場合]
d) 試験結果
e) 試験年月日及び試験場所
f)
その他必要事項
5
K 7243-1:2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書1(参考)JISと対応する国際規格との対比表
JIS K 7243-1:2005 エポキシ樹脂の塩素含有量の求め方―第1部:無機塩素
ISO 21627-1:2002 Plastics−Epoxy resins−Determination of chlorine content−
Part1:Inorganic chlorine(プラスチックス−エポキシ樹脂−塩素含有量の求め
方−第1部:無機塩素)
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ) 国際規格番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異の項
目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
項目番号
内容
項目
番号
内容
項目ごとの
評価
技術的差異の内容
1.適用範囲
エポキシ樹脂の無
機塩素量を求める
方法を規定する。
1
IDT
―
2.引用規格
2
MOD/変更
1) JISで必要な規格を
追加:10件
2) ISO規格の削除:1件
5年見直しでISOに変更を提案。
3.定義
3
IDT
―
4.原理
4
IDT
―
5.試薬
1) JISで規定する
試薬を使用
2) 濃度の計算:JIS
Z 8401により有効
数字を3けたに丸
める。
5
1) 分析用試
薬使用。水は
純度3級以上
(ISO 3696)。
MOD/変更
1) 試薬の品質は,試薬
JISを引用して規定し
た。
2) 濃度の計算はJIS Z
8401によった。
5年見直しでISOに変更を提案。
5
K
7
2
4
3
-1
:
2
0
0
5
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6
K 7243-1:2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ) 国際規格番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異の項
目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
項目番号
内容
項目
番号
内容
項目ごとの
評価
技術的差異の内容
6.器具及び装
置
6.6 マグネチ
ックスターラ
JISで規定する器
具及び装置を使用
項目を追加し,テ
トラフルオロエチ
レン被覆品使用を
規定し,耐腐食性
仕様であることを
明示した。
6
−
規格の規
定はない。
6.1の電位
差滴定装
置の中に
あるが,仕
様の規定
はない。
MOD/変更
JIS規格品とした。
マグネチックスター
ラは項目を追加し,被
覆仕様を規定した。
5年見直しでISOに変更を提案。
7.手順
7
IDT
―
8.計算
8
IDT
―
9.精度
9
IDT
―
10.結果の報告
10
MOD/追加
試験場所を追加。
5年見直しでISOに変更を提案。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:MOD
備考1. 項目ごとの評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
−IDT………………技術的差異はない。
−MOD/追加………国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
−MOD/変更………国際規格の規定内容を変更している。
2. JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
−MOD ……………国際規格を修正している。
6
K
7
2
4
3
-1
:
2
0
0
5
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。