K 7209 : 2000 (ISO 62 : 1999)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,日本プラスチック工業連盟 (JPIF) /財団法
人日本規格協会 (JSA) から工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標
準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日本工業規格である。これによってJIS K 7209 : 1984は
改正され,この規格に置き換えられる。
今回の改正では,国際規格に整合させるために,ISO 62を基に翻訳し,技術的内容を変更することなく
作成した日本工業規格である。
JIS K 7209には,次に示す附属書がある。
附属書A(参考) 試験片の吸水率とフィックの拡散法則との相関関係の証明
附属書B(参考) 文献
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 7209 : 2000
(ISO 62 : 1999)
プラスチック−吸水率の求め方
Plastics−Determination of water absorption
序文 この規格は,ISO 62 : 1999, Plastics−Determination of water absorptionを翻訳し,技術的内容及び規格
票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
1. 適用範囲
1.1
この規格は,平板状又は曲がった形状の固形材料について,厚さ方向の水分吸収特性の求め方につ
いて規定する。
また,この規格は,正確に定めた寸法をもつプラスチック試験片を,液に浸せきしたり,状態調節した
湿潤空気にさらす場合に,吸収した水分量を測定する手順について規定する。
単一相の材料については,試験片の厚さ方向で水分吸収特性が一定としてフィックの拡散挙動を仮定し,
厚さ方向の水分拡散係数を求めることができる。このモデルは,通常,ガラス転移温度以下で試験する,
均一な材料及びポリマー複合材料に当てはまる。強じん化エポキシのような2相系材料の中には,多相吸
収モデルが必要な場合があり,この規格は適用できない。
1.2
材料の水分吸収特性及び/又は水分拡散係数の比較は,同一の条件にさらしたプラスチックの平衡
含水量を用いてだけ行われるべきである。水分平衡状態における特性を用いた材料比較は,単一相でのフ
ィックの拡散挙動を仮定していないし,そのため,これに限定されない。
1.3
特定寸法のプラスチック試験片を,任意に定めた時間,条件を調節した浸せき又は湿度にさらして
求める吸水率は,同じ材料のバッチの違いを比較したり,材料の品質管理試験のために用いられる。
この種の比較には,すべての試験片が同一の寸法であり,できる限り,同じ物理的状態(例えば,表面
の滑らかさ,内部応力など)にあることが重要である。しかし,これらの条件の下では水分平衡に達しな
い。そのため,この種の試験から得た結果は,種類の異なるプラスチックの水分吸収特性の比較に用いる
ことができない。比較的に信頼性のよい結果を得るためには,同時に試験するのがよい。
1.4
この規格に規定する方法で得る結果は,ほとんどのプラスチックに適用できるが,余分な吸収作用
や毛細管作用を示すことがある発泡性プラスチック,か粒又は粉末には適用できない。状態調節した湿気
に特定の期間さらすと,プラスチック間の相対的な比較ができる。拡散係数を求める試験は,すべてのプ
ラスチックには適用できない場合がある。沸騰水に浸すときにその形状を保つことができないプラスチッ
クは,6.3のB法を用いて比較すべきではない。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発効年(又は発行年)を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの
規格の規定を構成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年(又は発行年)を付
記していない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
2
K 7209 : 2000 (ISO 62 : 1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS K 7114 プラスチックの耐薬品性試験方法
ISO 294-3 : 1996 Plastics−Injection moulding of test specimens of thermoplastic materials−Part 3:Small
plates
ISO 2818 : 1994 Plastics−Preparation of test specimens by machining
注(1) 近く発行予定。
3. 原理 試験片は,23℃の蒸留水若しくは沸騰した蒸留水に浸すか又は特定の温度で特定の時間,相対
湿度50%にさらす。吸水量は,試験片の質量変化,すなわち,初期質量と水にさらした後の質量の差を測
定して求め,初期質量の百分率として表す。必要に応じて,試験片乾燥後の水分減少量を求めることもで
きる。
適用する材料によっては,70%〜90%の相対湿度,70℃〜90℃の温度が必要な場合がある。受渡当事者
間で協定して,この規格で推奨するよりも高い湿度及び温度条件を用いてもよい。この規格で推奨する以
外の相対湿度及び温度条件を用いる場合には,湿度並びに温度の適切な許容差とともにそれらの条件をす
べて試験報告書に記入する。
4. 装置
4.1
はかり ±0.1mgの正確さをもつもの(6.の備考3.参照)。
4.2
オーブン (50.0±2.0) ℃又は受渡当事者間で協定した他の温度(6.の備考2.参照)で調節できる強
制通風式又は真空式のもの。
4.3
容器 蒸留水又はそれと同等の純度をもつ水を入れるもので,加熱装置を備えて規定の温度に調節
できるもの。
4.4
デシケータ 乾燥剤(例えば,シリカゲル)入りのもの。
4.5
試験片の寸法を測定する手段 必要に応じて,±0.1mmの正確さで試験片の寸法を測定できるもの。
5. 試験片
5.1
一般 各試験材料について3個以上の試験片を用いる。必要な寸法の試験片は,型成形又は押出成
形によって作製してもよい。試験片の作製方法はすべて,試験報告書に記入する。
備考 この試験結果は,試験片の表面状態で影響される場合がある。材料によっては,型成形で作製
した試験片と大きなシートから切り出した試験片では,結果が異なることがある。
水分吸収に影響する可能性のある試験片表面のあらゆる汚れは,プラスチックを侵さない洗浄剤で除去
する必要がある。汚れの程度はJIS K 7114によって求められる。例えば,JIS K 7114の表1の表示の“な
し”(外観変化なし)を参照する。試験開始前に試験片を洗浄した後,23℃及び相対湿度50%で2時間以
上乾燥する。試験片を取り扱う場合は,汚さないように清浄な手袋を用いる。
洗浄剤は,水分吸収に影響を及ぼしてはならない。6.2(A法),6.3(B法)及び6.5(D法)によって水
分平衡を測定する場合には,これらの洗浄剤の影響は無視できる。
5.2
均質なプラスチックの正方形試験片 特定の規定や受渡当事者間の協定がない場合には,正方形試
験片の寸法と許容差は,ISO 294-3のD1形と同じものとする。これは,試験材料に適用する規格に示す条
件(又は材料供給者が推奨する条件)を用いて,ISO 294-3によって成形で作製することができる。
ポリアミド,ポリカーボネートのような材料及び強化プラスチックの中には,1mm厚さの試験片を用い
ても有用な結果が得られない場合がある。さらに,製品の仕様によっては,吸水特性を求めるために,よ
3
K 7209 : 2000 (ISO 62 : 1999)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
り厚い試験片を用いる必要がある。その場合には, (2.05±0.05) mm厚さの試験片を用いてもよい。1mm
厚さの試験片を用いない場合には,試験片の厚さを試験報告書に記入する。試験片の端部や角部の曲率に
関する要求事項はない。しかし,試験中に材料の端や角が欠けることがないように,それらは滑らかで清
浄でなければならない。
材料によっては,成形時に収縮を示すことがある。そのような材料の試験片をISO 294-3に規定する寸
法の下限値の金型によって作製する場合には,試験片の最終寸法が規格に示す許容差を超えるときがある。
このことを試験報告書に記入する。
5.3 拡散作用の異方性によって影響される強化プラスチックの試験片 強化プラスチック材料の中には,
炭素繊維強化エポキシ樹脂のように強化材料によって拡散作用に異方性が生じ,小さな試験片を用いたと
きに,誤った結果を生じる場合がある。このようなおそれがある場合には,次の要求事項の一つを満たす
試験片を用い,その特定の寸法と試験片作製方法を試験報告書に記入する。
a) 次の関係を満たす寸法をもつ,原則として正方形の平板又は曲板
d
W100
≦
ここに, W: 一辺の呼び長さ (mm)
d: 呼び厚さ (mm)
b) 100mm×100mm平方の平板で,端部からの水分吸収を避けるために,端部にステンレス鋼ホイル又は
アルミホイルを接着したもの。この試験片を作製する場合には,ホイルの接着前後に試験片の重量を
測定し,ホイル及び接着剤による質量増加を求めておくことに注意する。接着剤は,結果に影響する
ほどの水分を吸収しないものだけを用いる。
5.4
管状の試験片 特に規定がない場合には,管状試験片は,次の寸法とする。
a) 内径が76mm以下の管については,評価する材料の管から長さ (25±1) mmの部分を切り出す。切断
は,管の長さ方向の軸に直角に行う。また切断は,切削加工,のこ引き又はせん断加工で行うことが
でき,切断面はクラックのない滑らかな端部でなければならない。
b) 内径が76mmを超える管については,管の外面に沿って測定した長さ (76±1) mm,幅 (25±1) mmの
長方形の試験片を切り出す。切断した端部は滑らかで,クラックがあってはならない。
5.5
棒状の試験片 棒状の試験片は,次の寸法とする。
a) 直径が26mm以下の棒については,長さ (25±1) mmの部分を切り出す。切断は,棒の長さ方向の軸
に直角に行い,試験片の直径は,棒の直径のままとする。
b) 直径が26mm以上の棒については,長さ (13±1) mmの部分を切り出す。切断は,棒の長さ方向の軸
に直角に行い,試験片の直径は,棒の直径とする。
5.6
異形製品,押出しコンパウンド,シート又はラミネートから切り出した試験片 特に規定がなけれ
ば,異形品から次の試験片を切り出す。
− 正方形の試験片の要求事項を満たすもの。
− 長さと幅が (61±1) mmで,試験する異形品の形状(厚さ及び曲がり)をもつもの。
試験片の作製に用いる切削加工条件は,すべての受渡当事者間で協定する。ISO 2818にもよるものとし,
このことを試験報告書に記入する。
呼び厚さが1.1mm以上で,関連する適用先に特に規定がない場合には,試験片の厚さは,片方の面だけ
を加工して1.0mm〜1.1mmに減らすものとする。
ラミネートの表面を切削加工すると,適正な結果が得られないほど水分吸収特性に大きく影響する。そ
4
K 7209 : 2000 (ISO 62 : 1999)
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の場合には,試験片は元の厚さで試験し,その寸法を試験報告書に記入する。
6. 試験条件及び手順
備考1. ある種の材料では,試験片を計量容器に入れて量ることが必要な場合がある。
2. 受渡当事者間の協定で,6.2〜6.5に規定した以外の乾燥手順を用いてもよい。
3. 材料の吸水率が約1%又はそれ以上の場合には,試験片は,1mgまで正確に量るか,±1mg
以内の変化であれば質量は一定としてよい。
6.1
一般条件
6.1.1
試験片の全表面積についてcm2当たり8ml以上の蒸留水を用いる。しかし,1個の試験片につき
300ml以上とする(5.参照)。これで試験中に抽出物が水中に過度に濃縮するのを防止できる。
6.1.2
通常,個別の容器 (4.3) に試験片3個を一組にして入れ,水中に完全に浸せきする。
同一組成の試料を幾つか試験する場合には,1個の試験片につき300ml以上の水量で,何組かの試験片
を同じ容器に入れてもよい。
しかし,この場合,試験片相互又は容器の壁面との面接触が大きくなってはならないし,避けるべきで
ある。
備考 ステンレス鋼製の金網が,試験片間の最小間隔を保つのに役立つことがある。
密度が水よりも小さい試験片については,ステンレス鋼製の金網で作られ,ステンレス鋼製ワイヤでお
もりを取り付けたかごの中に試験片を入れ水中に浸せきする。おもりを試験片表面に接触させてはならな
い。
6.1.3
水中への浸せき時間は,6.2及び6.3に規定している。しかし,受渡当事者間の協定で更に長い時
間を用いてもよい。その場合には,次のことに注意する。
− 23℃の水で試験する場合には,例えば,ビーカーを振って内容物を回転させ,少なくとも1日に1回
水をかき混ぜる。
− 沸騰水で試験する場合には,ときどき沸騰水を加えて元の水量を保つようにする。
6.2
A法:23℃の水に浸せき後,吸水量を測定 すべての反復試験片を, (50.0±2.0) ℃に調節したオー
ブン(4.2参照)で (24±1) 時間乾燥する。次に,デシケータに入れて室温まで冷却した後,0.1mgまで量
る。この作業を試験片の質量が,±0.1mg以内で一定(質量m1)になるまで繰り返す。次に蒸留水を入れ
た容器(4.3参照)に試験片を入れる。この蒸留水は,関連規格に従って,23.0℃±1.0℃又は±2.0℃に調
節する。特に規定がない場合,その許容差は,±1.0℃とする。
(24±1) 時間浸せき後,試験片を水から取り出し,表面の水分を清浄で乾いた布又はフィルター紙です
べてふ(拭)き取る。水から取り出して1分以内に,再度試験片を0.1mgまで量る(質量m2)。
飽和水分量を測定するには,試験片を再び浸せきし,一定時間後に再び量る。代表的な浸せき時間は,
24h,48h,96h,192hなどである。これらの時間 (±1h) 浸せき後,試験片を水から取り出し,1分以内に
水分をすべてふき取り,その質量を0.1mgまで量る(例えば,m2/24h)。
6.3
B法:沸騰水に浸せき後,吸水量を測定 すべての反復試験片を, (50.0±2.0) ℃に保持したオーブ
ン (4.2) で (24±1) 時間乾燥する。次に,デシケータに入れて室温まで冷却した後,0.1mgまで量る。こ
の作業を試験片の質量が,±0.1mg以内で一定(質量m1)になるまで繰り返す。
次に試験片を沸騰中の蒸留水の容器に入れる。試験片は,端部で支持し,完全に沈める。 (30±2) 分後,
試験片を沸騰水から取り出し,室温に保った蒸留水に入れて冷却する。 (15±1) 分後,試験片を一度に1
個ずつ水から取り出し,乾いた布で表面の水分をすべてふき取り,速やかに0.1mgまでひょう量する。試
5
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験片厚さが約1.5mm以下の場合,ひょう量操作中に,わずかではあるが測定できるほどの水分脱着が起こ
ることがある。この場合には,試験片はひょう量瓶に入れて量ることが望ましい。
水分飽和率を測定するためには,試験片を水に浸し, (30±2) 分ごとに量る。毎回,試験片を水から取
り出し,蒸留水で冷やし,乾燥した後,上に述べた方法で量る。
浸せき及び乾燥の繰り返しで,クラックが生じることがある。クラックが観察されたときの繰り返し回
数を試験報告書に記入する。
6.4
C法:浸せき中に溶出した水溶性物質の測定 材料が相当量の水溶性成分を含んでいるか又はその
可能性がある場合には,浸せき試験中に失われた水溶性物質について補正する必要がある。このために,
試験片を6.2及び6.3に従って浸せき後,同じく6.2及び6.3で試験前の乾燥期間に行ったように質量一定
(質量m3)になるまで状態を再調節する。状態を再調節した質量m3が最初に状態調節したときの質量m1
より小さい場合には,その差を浸せき試験中に失われた水溶性物質であるとみなす。そのような材料につ
いては,水分の吸収値は,浸せき時の質量増加と水溶性物質の質量の合計とする。
6.5
D法:相対湿度50%にさらした後,吸水量を測定 すべての反復試験片を, (50.0±2.0) ℃に調節
したオーブン (4.2) で (24±1) 時間乾燥する。次に,デシケータ (4.2) に入れて室温まで冷却した後,
0.1mgまで量る。この作業を試験片の質量が±0.1mg以内で一定(質量m1)になるまで繰り返す。
次に試験片を,関連する仕様によって相対湿度 (50±5) %,温度23℃±1℃又は±2℃に保持した空気を
入れた容器若しくはその状態の試験室に置く。特に仕様がない場合には,許容差は,±1℃とする。
試験片を (24±1) 時間,状態調節した後,相対湿度 (50±5) %の空気を入れた容器又はその状態の試験
室から取り出して1分以内に再び試験片を0.1mg(質量m2)まで量る。平衡水分量は,試験片を50%相対
湿度に繰り返しさらし,A法 (6.2) と同じ計量手順と時間間隔によって測定する。
7. 結果の表し方
7.1
吸収した水の質量百分率 各試験片について,次の該当する式から初期質量に対する質量変化の百
分率を算出する。
100
100
1
3
2
1
1
2
×
−
=
×
−
=
m
m
m
c
m
m
m
c
又は
ここに, m1: 初期乾燥後,浸せき前の試験片質量 (mg)
m2: 浸せき後の試験片質量 (mg)
m3: 浸せき後,最終乾燥後の試験片質量 (mg)
計算の結果は,同じ浸せき時間で得た三つの値の算術平均値として表す。
備考 吸収した水分濃度を,乾燥後の試験片質量の百分率として表す必要がある場合には,次の式を
用いる。
100
3
3
2
×
−
=
m
m
m
c
6
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7.2
フィックの法則による飽和含水量及び拡散係数の求め方 ガラス転移温度より十分低い温度におけ
る湿ったポリマーでは,大部分のポリマーの水分吸収は(A,C及びD法),フイックの拡散理論とよく一
致し(附属書A参照),時間と濃度に依存しない拡散係数(附属書Bの[1]参照)が算出できる。その場合,
シート材料(附属書Bの[2],[3]参照)については,試験データをフィックの法則に適合させることによっ
て,質量が一定になるのを待たないで飽和含水量csと拡散係数D (mm2/s) を求めることができる。飽和含
水量は,A,C及びD法によって試験片を水に浸せきする場合には,csと表し,試験片を50%相対湿度の
空気にさらす場合(D法)には,cs (50%) と表す。試験片がフィックの拡散挙動に適合することを示すた
めに図式解法が用いられる場合がある。例えば,対数グラフにプロットし,理論データに適合させるか又
は市販のソフトウェアを用いて,計算したD値を置き換える。ポリマーの水分吸収がフィックの拡散挙動
に従うかどうかを示すためには,ポリマーは水と平衡状態になければならない。
シートの場合について,フィック理論の十分正確な解を附属書Aの図A.1に示す。次の範囲で0.5のこ
う配が得られた。
sc
c 5.0
≦
又は
5.0
/≦
sc
c
又は
51
.0
2
2
≦
d
t
D π
ここに,
t: 試験片の水中浸せき時間又は湿潤空気にさらす時間 (s)
d: 試験片の厚さ (mm)
D・π2・t/d2≧0.5の場合には,c=csとする。
その他の値を,表1に示す。
表1 シートについてフィックの法則から理論的に求めた無次元値
D・π2・t/d2
c/cs
0.01
0.07
0.10
0.22
0.5
0.51
0.7
0.60
1.0
0.70
1.5
0.82
2.0
0.89
3.0
0.96
4.0
0.99
5.0
1.00
計算例:
試験データを理論値のグラフに適合させた後,c/cs=0.7の計算値から濃度c70%を読み取り,次の式を用
いてcsを算出する。
7.0
%
70
c
cs=
ここに, cs及びc70%の単位はmg/gである。
7
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c70%での実測時間t70を用いて,次の関係から拡散係数D (mm2/s) を算出できる。
1
2
70
2
=
d
t
Dπ
又は
70
2
2
t
d
D=π
t70を単位sで表し,π2を10と近似し,平たい試験片厚さを1mmとすると,次の式が得られる
70
10
1
t
D=
備考 23℃のプラスチックの場合,代表的なDの値は10-6mm2/sで,1mm厚さの試験片では,t70は105
秒(又は,1日)になる。この厚さを用いると,cs及びDの算出に必要な水中浸せき時間は,
通常,1週間を超えない。
8. 精度 試験室間データが得られていないので,この試験の精度は分からない。現在,実験室間データ
を採取しつつあり,精度の記載は次の版に追加する。
9. 試験報告書 試験報告書には,必要に応じて,次の項目を記入する。
a) この規格番号
b) 試験した材料又は製品の詳細
c) 試験片の形状,作製方法(特に,切り出したかどうか),寸法,最初の質量及び,必要に応じて,最初
の表面積と表面状態(例えば,切削加工したかどうか)。
d) 用いた測定方法(A,B,C又はD法)及び浸せき時間 (s)
e) 結果の平均値及び標準偏差を含め,7.に示す結果の表し方のいずれかによって算出した吸水率(7.1及
び7.2に規定した計算方法で,吸水率が負の値になった場合には,そのことを試験報告書に明記する
必要がある。)
f)
7.2によって算出した23℃での飽和吸水率cs又はcs (50%)。
g) 7.2によって算出した23℃での拡散係数。
h) 結果に影響したと思われるすべての事柄。
i)
試験年月日
8
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附属書A(参考)
試験片の吸水率とフィックの拡散法則との相関関係の証明
シート状ポリマーの場合には,コンピュータによってデータをフィックの法則の解(2)に適合させること
ができる。時間の関数として試験で求めた水分含有量を次のように表すことによって,最小二乗法で拡散
係数D及び平衡吸水率cSを求めることができる。
∑
=
−
−
−
−
=
20
1
2
2
2
2
2
)1
2(
exp
)1
2(
1
8
)
(
k
s
s
t
d
D
k
k
c
c
t
c
π
π
····························· (1)
ここに,
k= 1, 2, 3,…20
d: 試験片の厚さ
図式解法に比べて,この方法は次の利点をもっている。
− 結果が試験員に依存しない。
− フィックの法則からのずれが分かる。
− c (t) の異常値は,特定して解析から除外することができる。
− 必要な最大浸せき時間tmaxを推定する基準がある。
c=f (t) の図で,t70付近で湾曲点(図A.1参照)を過ぎた後,式 (A.1) を試験データに適合させて求め
たcsとDの値が,浸せき時間をtmaxまで増加しても大きく変化しない場合には,ポリマー試験片の水分吸
収がフィックの法則とよく一致することが分かる。試験が示すところでは,そのような試験片について,
tmax≧t70で求めたcs及びDとtmax→∞で求めたcs及びDとの間のずれは,それぞれ10%以下及び20%以下
である。
注(2) Röhm社Dr. J. Lehman及びDr. Th. Arndtの私信による。
高分子学会編 高分子と水[共立出版(株)]
滝澤 章 コンピュータでみる高分子材料中の物質移動[講談社サイエンティフィク]
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図A.1 フィックの法則をシートに適用した場合の理論解
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附属書B(参考) 文献
[1] Crank, J. and G. S. Park, “Diffusion in Polymers”, 1968, Academic Press, London and New York
[2] Klopfer, H., “Wassertransport durch Diffusion in Feststoffen”, 1974, Bau−Verlag, Wiesbaden und Berlin
[3] Tautz, H., “Wärmeleitung und temperaturausgleich”, 1971, Akademieverlag, Berlin
JIS原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
○ 代 田 忠
代田技術事務所
(委員)
高 根 由 充
財団法人日本ウエザリングテストセンター
○ 金 子 剛
財団法人電気安全環境研究所
峰 松 陽 一
峰松技術事務所
○ 加 藤 登
財団法人化学技術戦略推進機構高分子試験・評価センター
山 本 真
東京都立産業技術研究所研究開発部
大 嶋 清 治
工業技術院標準部
橋 本 進
財団法人日本規格協会技術部
○ 渡 辺 寧
物質工学工業技術研究所国際研究協力室
○ 相 沢 明
三菱樹脂株式会社平塚研究所
須 賀 茂 雄
スガ試験機株式会社
光 井 正 道
株式会社島津製作所試験計測事業部
○ 相 川 次 男
株式会社東洋精機製作所技術サービス部
小 倉 和 雄
岩崎電気株式会社
鈴 木 環
オカモト株式会社開発室
○ 浜 島 俊 行
浜島技術事務所
○ 鈴 木 寛 二
住化エイビーエス・ラテックス株式会社技術室
両 角 三 春
旭硝子株式会社機能商品研究開発センター
伊 藤 信
旭化成工業株式会社アクリル樹脂開発・技術部
長 野 勲
三菱化学株式会社樹脂カンパニー
後 藤 博
日産自動車株式会社材料技術部
(事務局)
○ 三 宅 孝 治
日本プラスチック工業連盟
○印は,分科会委員を兼ねる。