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日本工業規格

JIS

 K

7161

-1994

(ISO 5271

: 1993)

プラスチック−引張特性の試験方法

第 1 部:通則

Plastics

−Determination of tensile properties−

Part 1 : General principles

日本工業規格としてのまえがき 

この規格は,ISO 527-1 (Plastics−Determination of tensile properties−Part 1 : General principles)  を翻訳し,技

術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で下線(点線)を施してある箇所は,原国際規格にはない事項である。

原国際規格のまえがき(抜粋) 

ISO

推奨規格 R 527 : 1966 を廃棄し,技術上の改訂を行った ISO 527-1 及び同規格の他部(パート)に

置き換える。

ISO 527  (JIS K 7161

7165)  は一般名称を”プラスチック−引張特性の試験方法”とし,次の各部(パ

ート)によって構成される。

プラスチック−引張特性の試験方法 (Plastics−Determination of tensile properties)

−  第 1 部:通則  (Part1 : General principles)

参考  日本工業規格 JIS K 7161(プラスチック−引張特性の試験方法−第 1 部:通則)が,この国際

規格に相当する。

−  第 2 部:型成形(

1

)

,押出成形及び注型(

2

)

プラスチックの試験条件  (Part2 : Test conditions for moulding and

extru-sion plastics)

参考  日本工業規格 JIS K 7162(プラスチック−引張特性の試験方法−第 2 部:型成形,押出成形及

び注型プラスチックの試験条件)が,この国際規格に相当する。

−  第 3 部:板及びフィルムの試験条件  (Part3 : Test conditions for sheet and film)

参考  日本工業規格 JIS K 7163 が,この国際規格に相当するものとなる予定である。

−  第 4 部:等方性及び面内等方性繊維強化プラスチックの試験条件  (Part4 : Test conditions for isotropic and

orthotropic fibre_reinforced plastic composites)

参考  日本工業規格 JIS K 7164 が,この国際規格に相当するものとなる予定である。

−  第 5 部:一方向繊維強化プラスチックの試験条件  (Part5 : Test conditions for unidirectional fibre-reinforced

plastic composites)

参考  日本工業規格 JIS K 7165 が,この国際規格に相当するものとなる予定である。

(

1

)

“moulding”の訳語:射出成形,中空成形など金型を用いる成形方法。

(

2

)  JIS K 7162 (ISO 527-2)

の 1.2 に,適する材料として“moulding, extrusion and cast materials”と


2

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

“cast”

(注型)が併記されており,原国際規格の名称及び 1.3 項は編集上の誤りとみられる。

誤解を防ぐために”注型”を追記した。

JIS K 7161

ISO 527 の第 1 部)の

附属書 は,参考情報である。

1.

適用範囲

1.1

本規格(ISO 527 の第 1 部)は,定められた条件下でのプラスチック及びプラスチック複合材の引張

特性を測定するための一般原則について規定する。

JIS K 7162

7165ISO 527 の他の部(パート)

]は,各々の材料に適するように,数種の異なった形の

試験片を規定する。

1.2

本試験方法は,試験片の引張挙動を調べる目的,並びに規定された条件下での引張強さ,引張弾性

率,及び他の引張応力−ひずみ特性を測定する目的に用いる。

1.3

本試験方法は,特に次の材料に適する。

−  型成形,押出成形,及び注型(

2

)

の硬質・半硬質熱可塑性プラスチック材料:非充てんプラスチックの

ほか,充てん材入り及び強化材入りのコンパウンドを含む。硬質・半硬質熱可塑性樹脂の板及びフィ

ルム。

−  硬質・半硬質の熱硬化性型成形材料:充てん材入り及び強化材入りのコンパウンドを含む。硬質・半

硬質熱硬化性型成形樹脂板:積層品を含む。

−  繊維強化熱硬化及び熱可塑性複合材料:一方向強化及び非一方向強化材料,例えば,マット,織物,

ロービング織物,チョップドストランド,組合せ強化材,ハイブリッド強化材,ロービング及びミル

ドファイバーを含む。予備含浸材料(プリプレグ)から作った板。

−  サーモトロピック液晶ポリマー

本試験方法は通常,硬質発泡材料及び発泡材料を用いたサンドイッチ構造物には適さない。

1.4

本試験方法は,規定の寸法に型成形した試験片,又は型成形品,積層品,フィルム,押出成形板,

注型板のような完成品若しくは半完成品を切削若しくは打抜によって機械加工した試験片を用いる。場合

によっては,多目的試験片(ISO 3167 : 1993 参照)を用いることができる。

1.5

本試験方法では,試験片の推奨寸法を規定する。異なる寸法の試験片又は異なる条件で作られた試

験片による試験結果は,互いに比較することができない。その他の因子,例えば,試験速度,試験片の状

態調節などの因子も結果に影響を及ぼす。したがって,比較可能なデータが要求されるときは,これらの

因子を注意深く管理し,記録しなければならない。

2.

引用規格

次の規格は,本規格に引用されることによって,本規格の規定の一部を構成する。本規格の発行時点で

は,ここに示す版の規格が有効である。すべての規格は改訂されることがあるので,本規格の使用者は,

引用規格の最新版を適用できるかどうか検討するのが望ましい。

ISO 291 : 1977 Plastics

−Standard atmospheres for conditioning and testing.

ISO 2602 : 1980 Statistical interpretation of test results

−Estimation of the mean−Confidence interval.

ISO 5893 : 1985 Rubber and plastics test equipment

−Tensile, flexural and compression types (constant rate of

traverse)

−Description.

3.

原理


3

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

試験片が破壊に至るまで,又は応力(荷重)若しくはひずみ(伸び)が規定値に達するまで,試験片を

主縦軸に沿って一定速度で引っ張り,その間に試験片にかかる荷重と伸びを測定する。

4.

定義

本規格で使用される用語の定義は,次のとおりとする。

4.1

標線間距離  (gauge length)    L

o

:試験片中央部の初め(応力をかける前)の標線間隔。JIS K 7162

7165

ISO 527 の他の部(パート)

]に示す試験片の図を参照。単位:mm

4.2

試験速度 (speedof testing)   v:試験中に試験機の二つのつかみ具が互いに離れていく速度。単位:

mm/min

4.3

引張応力  (tensile stress)

σ

:試験中,試験片の標線間距離内の初め(応力をかける前)の断面の単

位面積にかかる引張力[10.1 式(3)参照]

。単位:MPa

4.3.1

引張降伏応力  (tensile stress at yield; yield stress)

σ

y

:応力の増加を伴わずにひずみの増加する最初

の応力。最大応力より小さい場合もある(

図 曲線 b 及び c 参照)。単位:MPa

4.3.2

引張破壊応力  (tensile stress at break)

σ

B

:試験片破壊時の引張応力(

図 参照)。単位:MPa

4.3.3

引張強さ  (tensile strength)

σ

M

:引張試験中に加わった最大引張応力(

図 参照)。単位:MPa

4.3.4

x%

ひずみ時引張応力  (tensile stress at x%strain)

σ

x

:ひずみが規定の値  (x%)  に達したときの応力

4.4 参照)

。例えば,応力−ひずみ曲線が降伏点を示さないときに用いられる(

図 曲線 d 参照)。この場

合,の値は試験される材料の規格,又は受渡当事者間の協定に従う。ただし,いずれの場合も の値は

引張強さに対応するひずみより小さくなければならない。単位:MPa

4.4

引張ひずみ  (tensile strain)

ε

:標線間距離の増加量を初めの標線間距離で除した値[10.2 式(4)及び

(5)

参照]

。これは,降伏点(4.3.1 参照)に達するまでのひずみに使用し,降伏点を超えるひずみについて

は,4.5 引張呼びひずみを用いる。単位:無次元の比又は%

4.4.1

引張降伏ひずみ  (tensile strain at yield)

ε

y

:

引張降伏応力(4.3.1 参照)に対応する引張ひずみ(4.3.1

図 曲線 b 及び c 参照)。単位:無次元の比又は%

4.4.2

引張破壊ひずみ  (tensile strain at break)

ε

B

:降伏を伴わずに破壊する場合の引張破壊応力(4.3.2

参照)に対応する引張ひずみ(

図 曲線 a 及び d 参照)。降伏後に破壊する場合は 4.5.1 引張破壊呼びひず

みを用いる。単位:無次元の比又は%

4.4.3

引張強さ時ひずみ  (tensile strain at tensile strength)

ε

M

:降伏点又は降伏する前に引張強さ,すなわ

ち,最大引張応力(4.3.3 参照)が現れる場合,その引張強さに対応する引張ひずみ(

図 曲線 a 及び d 参

照)

。強さの値が降伏応力より高い場合は 4.5.2 引張強さ呼びひずみを用いる。単位:無次元の比又は%

4.5

引張呼びひずみ  (nominal tensile strain)

ε

t

:つかみ具間距離の増加量を初めのつかみ具間距離で除

した値[10.2 式(6)及び(7)参照]

。これは降伏点(4.3.1 参照)を超えたひずみに使用される。降伏点に達す

るまでのひずみに対しては 4.4 引張ひずみを用いる。試験片のつかみ具間に起こるすべての相対伸びを表

す。単位:無次元の比又は%

4.5.1

引張破壊時呼びひずみ  (nominal tensile strain at break)

ε

tB

:試験片が降伏後に破壊する場合の引張

破壊応力(4.3.2 参照)に対応する引張呼びひずみ(

図 曲線 b 及び c 参照)。降伏を伴わずに破壊する場

合は 4.4.2 引張破壊ひずみを用いる。単位:無次元の比又は%

4.5.2

引張強さ時呼びひずみ  (nominal tensile strain at tensile strength)

ε

tM

:引張強さ(4.3.3 参照)が降伏

後に発生する場合の引張強さに対応する引張呼びひずみ(

図 曲線 b 参照)。降伏点又は降伏する前に引張

強さが現れる場合は 4.4.3 引張強さひずみを用いる。単位:無次元の比又は%


4

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

4.6

引張弾性率  (modulus of elasticity in tension)    E

t

:規定された 2 点のひずみ

ε

1

=0.0005,及び

ε

2

=0.0025

に対応する応力をそれぞれ

σ

1

,

及び

σ

2

とするとき,応力の差(

σ

2

σ

1

)をひずみの差(

ε

2

ε

1

)で除した値

図 曲線 d 及び 10.3 式(8)参照]。

なお,この定義はフィルムとゴムには適用しない。単位:MPa

備考1.  コンピュータ付きの装置では,規定された2点のひずみ

ε

1

,及び

ε

2

の間の曲線の線形回帰によ

って引張弾性率 E

t

を求めることができる。

4.7

ポアソン比  (Poisson's ratio)

µ

:縦方向対法線方向のひずみ曲線の初期の直線部分において,引張

方向のひずみ

ε

と,それに対応する引張方向と直交する二つの軸のいずれか一方のひずみ

ε

n

との負の比率

10.4 式(7)参照]

。ポアソン比はそれぞれの軸の方向によって,

µ

b

(幅方向)

µ

h

(厚さ方向)と示される。

ポアソン比は長繊維強化材料に使用されることが多い。単位:無次元の比

5.

装置

5.1

試験機

5.1.1

原則

試験機は ISO 5893 に従うもので,本規格 5.1.2 から 5.1.5 までの規定に適合すること。

5.1.2

試験速度

引張試験機は,

表 に示す試験速度(4.2 参照)を保持できるものを使用する。

表 1  推奨試験速度

速度  mm/min

許容範囲  %

1

±20

1)

2

±20

5

±20

10

±20

20

±10

1)

50

±10

100

±10

200

±10

500

±10

1)

この許容範囲は ISO 5893 に規定さ
れたものより狭い。

5.1.3

つかみ具

試験片つかみ具は,試験片の主軸がつかみ具の中心線を通る引張方向と一致するように,試験機に取り

付ける。これは,例えば,つかみ具にしん出しのピンなどを付けると調整できる。試験片は可能なかぎり,

つかみ具から滑らないように取り付ける。試験片に加わる引張荷重の増加に伴い,つかみ圧力が増加する

タイプのつかみ具を用いると,滑りを防ぐことができる。

また,つかみ部分は,そこで破壊が起きないものでなければならない。

5.1.4

荷重指示計

荷重指示計は,つかみ具に装着した試験片に加わる引張荷重を指示する機構をもつものとする。この機

構は規定の試験速度において慣性による遅れがなく,測定値の±1%又はそれと同等以上の精度で荷重を指

示するものでなければならない(ISO 5893 参照)

5.1.5

伸び計

伸び計は,ISO 5893 による。試験中に試験片の標線間距離の変化を試験中常に測定できるものとする。


5

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

この変化は自動的に記録できるものが望ましいが必す(須)ではない。伸び計は規定の試験速度において,

実質的な慣性遅れがなく,測定値の±1%以上の精度で標線間距離の変化を測定できるものとする。これは,

50mm

の標線間距離で弾性率を測定する場合には,±1

µm に相当する。

伸び計を試験片に取り付ける際には,試験片の変形及び損傷を最小限にするように注意しなければなら

ない。また,伸び計と試験片の間に滑りが生じないようにすることも重要である。

試験片に縦方向のひずみゲージを用いて測定してもよい(

3

)

。この場合,精度は測定値の±1%又はそれと

同等以上でなければならない。これは弾性率の測定の場合 20×10

-6

(20 マイクロストレイン)のひずみに

相当する。ひずみゲージ,表面処理,及び接着剤は試験材料に対して適切なものを選ばなければならない。

(

3

)

例えば,引張弾性率が約2×10

3

MPa

以上の材料には有効であるが,それ以下の材料では,ひず

みゲージ自体の弾性率が影響し,正確な測定ができない場合があるので,注意を要する。

5.2

試験片の幅及び厚さの測定装置

5.2.1

硬質材料

0.02mm

以下まで読み取れる試験片の厚さ及び幅測定用のマイクロメータ又はそれと同等以上の測定精

度をもつものを用いる。アンビルの寸法及び形状は,試験片の測定に適合するもので,測定寸法を明らか

に変えるほど大きな力を試験片にかけないものでなければならない。

5.2.2

軟質材料

0.02mm

以下まで読み取れる厚さ測定用のダイヤルゲージ。20kPa±3kPa の圧力を加える円板測定子を備

えたものを用いる。

6.

試験片

6.1

形状と寸法

JIS K 7162

7165ISO 527 の各パート)のうち試験される材料に適用する規格(パート)を参照する。

6.2

試験片の作製

JIS K 7162

7165ISO 527 の各パート)のうち試験される材料に適用する規格(パート)を参照する。

6.3

標線

光学式伸び計を使用する際,特に薄い板やフィルムの場合,標線間距離を示すために試験片上に標線を

つける必要がある。個々の標線は中心点からほぼ等距離とし,標線間の距離は±1%又はそれと同等以上の

精度で測定しなければならない。

引っかいたり,穴をあけたり又は刻印を押したりして,試験片に傷をつけるような方法で標線を付けて

はならない。

標線は,

試験材料に損傷を全く与えないことが保証されている材料で描かなければならない。

標線を線で描く場合,その線はできる限り細くする。

6.4

試験片の検査

試験片はねじれがなく,表裏面及び側面各々の平行面は相互に直交し,表面,辺縁部には傷,穴,ひけ

及びバリがあってはならない。試験片は,直線定規,直角定規,及び定盤を用いた目視並びにキャリパー

によって,上記の要求事項に適合するか検査すること。これらの要求事項の一つにでも適合しない試験片

は,廃棄するか又は適合する寸法・形状に更に機械加工する。

6.5

異方性

JIS K 7162

7165ISO 527 の各パート)のうち試験される材料に適用する規格(パート)を参照する。


6

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

7.

試験片の数

7.1

要求される試験方向,及び求める特性(弾性率,引張強さなど)の各々の試験について,最低 5 個

の試験片を用いて試験を行う。より高精度の平均値を必要とする場合は,5 個以上の試験片で測定を行う。

信頼区間(確率 95%ISO 2602 参照)によって,この平均値を評価することができる。

7.2

ダンベル形試験片の場合,肩の部分で破壊したもの,及び降伏が肩の全幅に及んだものは廃棄し,

別の試験片で試験しなければならない。

7.3

短冊形試験片の場合,つかみ具内ですべつたもの,上下のつかみ具の端部から 10mm 以内のところ

で破壊したもの,及び容易に破壊するような明確な欠陥のあるものは,そのデータを採用してはならない。

新しい試験片で追加試験を実施する。

上記以外の理由では,データにいかにばらつきがあっても,解析データから除外してはならない。デー

タのばらつきは試料の種々の因子によって起こる。

備考2.  破壊の多くが,上記の条件に該当しデータを採用できない場合でも,そのデータの統計解析

をしてもよいが,その結果は多くの場合内部データ以外に使用できない。そのような場合に

は,ダンベル試験片で試験を繰り返して行い,採用できる結果が得られるようにする。

8.

状態関節

試験片は試験される材料の規格に規定された方法によって状態調節を行う。この規定がなく,受渡当事

者間の協定もない場合は,ISO 291 の中の最も適した条件を選んで行う。

9.

手順

9.1

試験環境

試験は状態調節と同じ環境で行う。ただし,高温・低温試験など,受渡当事者間で取り決めた場合は,

この限りではない。

9.2

試験片の寸法

各試験片の中央及び標線間距離の両端から 5mm 以内のところで,幅 は 0.1mm まで,厚さ は 0.02mm

まで測定する。

各試験片の幅と厚さの最小及び最大値を記録し,試験される材料に適用される規格で規定された許容範

囲に入っていることを確認する。

各試験片の幅と厚さの算術平均を計算し,10.の計算に用いる。

備考3.  射出成形による試験片では,個々の試験片の寸法を測定する必要はない。寸法が,使用する

試験片の形に一致していることが確認されれば,各ロットの中の1個の試験片を測定すること

で十分である。試験片の形は,JIS K 71627165ISO 527の各パート)のうち試験される材

料に適用される規格(パート)を参照する。多キャビティ金型では,試験片の寸法は各々の

キャビティに対し同一であることを確認する。

備考4.  板又はフィルム材料から打ち抜いた試験片では,打抜き刃の中央平行部分の平均幅を試験片

の相当する部分の幅とみなしてよい(

4

)

。この方法を採用する場合は,定期的な比較測定を行

う必要がある。

(

4

)

軟質材料の厚い板(約1mm 以上)の場合,打抜き断面が台形となり幅が厚さ方向に変化するこ

とがあるので注意を要する。

9.3

つかみ方法


7

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

試験機の軸に試験片の縦軸が一致するようにつかみ具に取り付ける。しん出しピンがついているつかみ

具の場合,正確にしん出しするには,つかみ具を締め付ける前にわずかに試験片を引っ張るとよい(9.4

参照)

。試験片の滑りを防ぐためには,つかみ具を均等にしっかりと締めなければならない。

9.4

試験片装着時の応力

試験に先立って試験結果に影響を及ぼすような応力が試験片に加わらないようにしなければならない。

このような応力はフィルム試料ではしん出し中に,特に比較的硬くない試料の場合,つかみ具のつかみ圧

力によって生じる。

試験開始時に残留する応力

σ

0

は,弾性率を求める場合次の値を超えてはならない。

σ

0

│≦5×10

-4

E

t

 (1)

これは,ひずみ

ε

0

=0.0005 のときの応力に相当する。

また,応力

σ

すなわち,

σ

σ

y

,

σ

M

,

σ

B

などの応力を測定する場合は,次の値を超えてはならない。

σ

0

≦10

-2

σ

 (2)

9.5

伸び計類の装着

試験片装着時の応力を除去した後,5.1.5 に適合する校正済みの伸び計又はひずみゲージを,試験片の標

線間に装着する(

5

)

。必要があれば,初め間隔(標線間距離)を測定する。ポアソン比の測定には,2 個の

伸び計又はひずみゲージを,縦軸方向及びその直角方向のひずみが同時に測定できるように装着しなけれ

ばならない。

光学式伸び計の場合,6.3 に従って試験片に標線を付ける。

つかみ具の移動から試験片の伸びを測定し,引張呼びひずみ

ε

t

の計算に用いる(4.5 参照)

(

5

)

ひずみゲージはあらかじめ試験片に接着し,配線したものを試験機に装着する。

9.6

試験速度

試験される材料の規格に従って試験速度を設定する。その規格がない場合は,5.1.2 

表 に従って受渡

当事者間で取り決める。

降伏点に達するまでの応力−ひずみ特性及び弾性率を測定する場合と,引張強さ及び破壊伸びを測定す

る場合では,異なった速度で試験する必要がある。そのためには,試験速度ごとに別の試料を用いなけれ

ばならない。

弾性率の測定には,できる限り 1 分間に標線間距離の 1%に近いひずみを与える速度を用いなければな

らない。他の形の試験片に対する試験速度は,JIS K 71627165ISO 527 の各パート)のうち試験される

材料に適用する規格(パート)に示す。

9.7

データの記録

試験中の荷重並びにこれに対応する標線間距離及びつかみ具間距離の増加量を記録する。

このためには,

応力−ひずみ曲線を描く自動記録装置を使用することが望ましい[10.式(3),式(4)及び式(5)参照]

応力及びひずみを,4.の定義に従い,応力−ひずみ曲線(

図 参照)から又は他の適切な方法によって

求める。

データを採用してはならない破壊が生じた場合は,7.2 及び 7.3 を参照する。

10.

計算及び結果の表示

10.1

応力の計算


8

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

引張応力(4.3 参照)は,試験片の初め(応力をかける前)の断面積をもとに,次の式(3)によって算出

する。

A

F

=

σ

 (3)

ここに,

σ

:  引張応力(MPa)

F:  測定荷重 (N)

A:  試験片の初めの断面積 (mm

2

)

10.2

ひずみの計算

引張ひずみ(4.4 参照)は,標線間距離(4.1 参照)をもとに,次の式(4)又は(5)によって算出する。

0

0

L

∆L

=

ε

 (4)

( )

0

0

100

%

L

∆L

×

=

ε

 (5)

ここに,

ε

引張ひずみ(無次元の比又は

%

L

0

試験片の標線間距離

 (mm)

L

0

試験片の標線間距離の増加

 (mm)

引張呼びひずみ(4.5 参照)の値は,初めのつかみ具間距離をもとに,次の式

(6)

又は

(7)

によって算出す

る。

L

∆L

t

=

ε

 (6)

( )

L

∆L

t

×

= 100

%

ε

 (7)

ここに,

ε

t

引張呼びひずみ(無次元の比又は

%

L

初めのつかみ具間距離

 (mm)

L

つかみ具間距離の増加

 (mm)

10.3

弾性率の計算

引張弾性率(4.6 参照)は,

2

点の規定されたひずみの値をもとに,次の式

(8)

によって算出する。

1

2

1

2

ε

ε

σ

σ

=

t

E

 (8)

ここに,

E

t

引張弾性率

 (MPa)

σ

1

ひずみ

ε

1

0.0005

において測定された引張応力

 (MPa)

σ

2

ひずみ

ε

2

0.0025

において測定された引張応力

 (MPa)

コンピュータを用いて求める場合は,4.6 

備考 1.を参照する。

10.4

ポアソン比

必要な場合には,ポアソン比(4.7 参照)を,互いに直交する

2

方向のひずみの値をもとに,次の式

(9)

によって算出する。

ε

ε

µ

n

n

=

 (9)

ここに,

µ

n

ポアソン比  無次元の比

η

b

(幅)

,又は

n

h

(厚さ)となり,選択した方向を示す。

ε

縦ひずみ

ε

n

横ひずみ,

n

b

(幅)

,又は

n

h

(厚さ)

10.5

統計処理


9

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

試験結果の算術平均値を計算する。必要に応じ,ISO 2602 に規定する方法で平均値の標準偏差及び

95%

信頼区間を計算する。

10.6

有効数字

引張応力及び弾性率は,有効数字

3

けたまで,ひずみ及びポアソン比は,

2

けたまで計算する。

11.

精度

JIS K 7162

7165ISO 527 の各パート)のうち試験される材料に適用する規格(パート)を参照する。

12.

報告

試験報告は,次の事項を含むこと。

a)

規格番号:JIS K 71627165ISO 527 の各パート)のうちの使用規格(パート)の番号

b)

試験材料の特定に必要なすべての事項:形式,出所,製造番号及び履歴を含む。

c)

材料の特性や形態についての次のような事項:完成品又は半完成品,試験用の板又は試験片の区別,

並びに主要寸法,形状,製造方法,積層の状態及び前処理方法。

d)

試験片の形,平行部の幅及び厚さ(平均,最小及び最大値)

e)

試験片の作製方法,及びその詳細。

f)

完成品又は半完成品を試料とした場合,採取した方向。

g)

試験片の数。

h)

状態調節の温度,湿度,時間などの条件及び試験の温度,湿度の条件:試験される材料又は製品の規

格で特別な状態処理が規定されている場合は,その処理。

i)

試験機の精度:ISO 5893 参照。

j)

伸び計又はひずみゲージの形式。

k)

つかみ具の形式及び分かる場合はつかみ圧力。

l)

試験速度。

m)

個々の試験結果。

n)

測定値の平均値。

o)

必要に応じ,平均値の標準偏差及び

95%

信頼区間。

p)

廃棄又は取り替えた試験片の有無,有る場合はその理由。

q)

測定日。


10

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

図 1  代表的な応力−ひずみ曲線


11

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

附属書 A(参考)  引張弾性率と関連値

高分子材料の特性の多くは,粘弾性的挙動があるため,温度だけではなく時間とかかわりがある。この

ため,引張試験では,線形粘弾性の範囲内であっても応力−ひずみ曲線は直線にならない(ひずみ軸の方

へ曲がる)

。これはもろくないポリマーに顕著である。その結果,もろくない材料で応力−ひずみ曲線の最

初のほうでとった接線弾性率の値は,用いたスケール次第ではしばしば異なる。そこで従来から用いてい

る方法(応力−ひずみ曲線の初期の点での接線)では,このような材料の真の弾性率を求められない。

以上の理由によって,本規格の引張弾性率測定方法では,

2

点の規定ひずみ値,

0.0025

0.0005

を用い

る(応力−ひずみ曲線の開始点による測定弾性率の誤差を避けるために低い方のひずみの値は

0

に設定し

ていない。

もろい材料については,本規格でも従来方法[前の版

    (

ISO/R527 

: 1966)

]でも同じ値になる。しかし,

新法ではもろくないプラスチックについても,正確で再現性のある弾性率を求めることができる。したが

って,本規格からは初期接線から求める弾性率の定義を削除した。

このことは,

“オフセット降伏点”についても同様にである。従来方法では,応力−ひずみ曲線上で,多

くの場合正確に決められない直線(前述の初期接線)からのひずみの偏差(オフセット)としてオフセッ

ト降伏点が定義されていた(

A1

)

。したがって,オフセット降伏点も正確に求められないので,その代わりに,

規定ひずみ

x%

x%

ひずみ応力

σ

X

4.3.4

参照)の点にすることにした。

このオフセット降伏点の代替の定義は,もろくない材料にだけ重要であり,一般にこの規定ひずみ

x

降伏ひずみに近い値にする必要がある。

(

A1

)

JIS K 7113

-1981

の図  参照。

なお,同規格では“オフセット降伏点”を“引張耐力”という。


12

K 7161-1994 (ISO 5271: 1993)

JIS

原案作成委員会  構成表

氏名

所属

本委員会

分科会

(委員長)

近  藤  春  樹

大阪大学基礎工学部

宮  入  裕  夫

東京医科歯科大学医用器材研究所

小  林  政治郎

小林技術事務所

中  山  和  郎

物質工学工業技術研究所

田  中  正  躬

通商産業省基礎産業局

地  崎      修

工業技術院標準部

高  野  忠  夫

財団法人高分子素材センター試験・検査事業部

馬  場  文  明

三菱電機株式会社材料デバイス研究所

我  妻      誠

 NTT

電話サービス技術協力センター

斎  藤      満

株式会社東洋精機製作所

小  泉  親  秀

株式会社島津製作所試験計測事業部

斎  藤  英  隆

株式会社オリエンテック技術部

今  井      敏

鐘淵化学工業株式会社中央研究所

川  村  好  宏

三菱樹脂株式会社平塚研究所

浜  島  俊  行

日本石油化学株式会社研究部

小  林  敏  男

三菱油化株式会社四日市総合研究所

(田辺  久光)

千  野  修  一

ポリプラスチック株式会社技術部

飯  森      博

三井東圧化学株式会社化成品建材事業部

岸  本  祐一郎

三菱レイヨン株式会社樹脂応用第一技術センター

中  井  了  一

旭化成工業株式会社テナック技術開発部

(事務局)

樋  口  秀  臣

財団法人高分子素材センター試験・検査事業部

三  宅  孝  治

財団法人高分子素材センター試験・検査事業部

田  村  正  勝

日本プラスチック工業連盟

○:委員