K 7148-2:2019 (ISO 20368:2017)
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 原理······························································································································· 2
5 試料······························································································································· 3
6 装置及び器具 ··················································································································· 4
7 試験手順························································································································· 4
8 結果の表示 ······················································································································ 5
9 精度······························································································································· 5
10 試験報告書 ···················································································································· 6
K 7148-2:2019 (ISO 20368:2017)
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,エポキシ樹脂技術協会(JSERT)及び一般財
団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,日
本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS K 7148の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS K 7148-1 示差走査熱量測定(DSC)による硬化度の測定法
JIS K 7148-2 第2部:フーリエ変換赤外(FTIR)分光光度計による測定方法
日本産業規格 JIS
K 7148-2:2019
(ISO 20368:2017)
プラスチック−エポキシ樹脂−
硬化度の求め方−第2部:フーリエ変換赤外(FTIR)
分光光度計による測定方法
Plastics-Epoxy resins-
Part 2: Determination of degree of crosslinking of crosslinked epoxy resins
by Fourier Transform Infrared (FTIR) Spectroscopy
序文
この規格は,2017年に第1版として発行されたISO 20368を基に,技術的内容及び構成を変更すること
なく作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,エポキシ樹脂が硬化剤と反応することで消費されるエポキシ基をフーリエ変換赤外(FTIR)
分光光度計を用いて,その吸収ピークを測定し,その結果から硬化度を求める方法を規定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 20368:2017,Plastics−Epoxy resins−Determination of degree of crosslinking of crosslinked
epoxy resins by Fourier Transform Infrared (FTIR) Spectroscopy(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
警告 この規格に基づいて試験を行う者は,通常の実験室での作業に精通していることを前提とする。
この規格は,その使用に関連して起こる全ての安全上の問題を取り扱おうとするものではない。
この規格の利用者は,各自の責任において安全及び健康に対する適切な措置を取らなければな
らない。
2
引用規格
この規格には,引用規格はない。
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,ISO及びIECの用語データベースによるほか,次による。
− IEC Electropedia: http://www.electropedia.org
− ISO Online browsing platform; https://www.iso.org/obp/ui
2
K 7148-2:2019 (ISO 20368:2017)
3.1
硬化度(degree of crosslinking)
エポキシ樹脂硬化物の硬化状態を示す単位。
注記1 箇条8の式(4)によって算出する。
注記2 パーセント(%)で表す。
3.2
吸収ピーク高さ(height of absorption peak)
一つのピークにおけるベースラインとFTIRの吸収スペクトルの最大値との差。
注記1 ベースラインは,ピークの開始点と終了点とを直線的につないだものである。
注記2 目的のピークと他のピークとの分離が難しい場合は,目的のピークを含む連続したピークの
開始点と終了点とを直線的につないだものをベースラインとすることができる。
3.3
ピーク高さ比(peak height ratio)
反応で変化しない内部標準ピーク高さ及びエポキシ基のピーク高さ(波数900 cm−1〜915 cm−1)からの
計算値。
注記 内部標準ピーク高さとしては,メチレン基の吸収帯(2 930 cm−1付近)が望ましい。
4
原理
硬化度は,FTIR分光光度計(透過法)を用いた未硬化状態のエポキシ及び硬化状態のエポキシのピーク
高さ比から決定する。
はじめに未硬化状態のエポキシ樹脂を用いて,エポキシの吸収ピーク高さ(Pa1)及び内部標準の吸収ピ
ーク高さ(Pa2)をFTIR分光光度計で測定する(図1参照)。
未硬化状態のピーク高さ比(X)は,式(1)から求める。
X=Pa1/Pa2 ················································································· (1)
次に硬化状態のエポキシ化合物を用いて,エポキシの吸収ピーク高さ(Pb1)及び内部標準の吸収ピーク
高さ(Pb2)をFTIR分光光度計で測定する(図2参照)。
硬化状態のピーク高さ比(Y)は,式(2)から求める。
Y=Pb1/Pb2················································································· (2)
硬化度は,箇条8の式(4)によって算出する。
3
K 7148-2:2019 (ISO 20368:2017)
図1−未硬化状態のスペクトル
図2−硬化状態のスペクトル
5
試料
5.1 エポキシ樹脂 所定の硬化配合物で用いられているもの。
注記 例えば,JIS K 7238に規定するものなどがある。
5.2 硬化剤 所定の硬化配合物で用いられているもの。
注記 例えば,JIS K 6929-1に規定するものなどがある。
5.3 エポキシ樹脂触媒 所定の硬化配合物で用いられているもの。
Pb1
Pb2
Pa2
Pa1
4
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装置及び器具
6.1
FTIR分光光度計 次の条件を満たすもの。
a) 650 cm−1〜4 000 cm−1の波数を測定できる。
b) 積算回数16回以上測定できる。
6.2
マイクロピペット 1 μL〜10 μLの範囲をはかれるもの。
6.3
シリコンウエハ 次の条件を満たすもの。
a) 片側鏡面シリコンウエハである。
b) 厚さが625 μm±15 μmである。
c) 全体厚さむら(TTV)が10 μm以内である。
d) 直径が150 mmである。
6.4
はかり 0.1 mgの精度をもつもの。
7
試験手順
7.1
測定準備
測定に先立ち,FTIR分光光度計の取扱説明書の手順に従って,装置が正しく動作することを確認する。
必要に応じて,標準物質を使用して測定を行い,測定されたスペクトルのピーク,再現性及びその他の値
が適正範囲内であることを確認する。
7.2
予備試験の実施
7.2.1
一般
予備試験では,未硬化状態の配合試料から別々に試料を採取し,同じ装置かつ同じ条件下で,2回連続
して測定する。この規定は,2回のピーク高さの比が7.2.2.6で式(3)を満たすエポキシ樹脂配合物に限り適
用する。
7.2.2
手順
7.2.2.1 エポキシ樹脂と硬化剤などとを所定量混合し,未硬化状態の配合物を得る。
7.2.2.2 マイクロピペットを用いて7.2.2.1で作製した配合物から速やかに試料5 μL〜10 μLを採取し,15
mm±2 mm四方のシリコンウエハの研磨面に置く。マイクロピペットを使用することができない場合は,
試料をはかりで5 mg〜10 mg量りとり,15 mm±2 mm四方のシリコンウエハの研磨面に置く。
その後,試料を載せたシリコンウエハ上に15 mm±2 mm四方のシリコンウエハを研磨面が互いに対向
するように重ね合わせ,密着させ,余剰の試料を取り除く。
これを測定サンプルとする。
7.2.2.3 15 mm±2 mm四方の二つのシリコンウエハを研磨面が互いに対向するように重ね合わせ,FTIR
スペクトルのバックグラウンドを測定する。
注記 なお,バックグラウンド測定には,7.2.2.2の測定サンプルとは異なるシリコンウエハを使用し
てもよい。
7.2.2.4 測定サンプルを用いてFTIRスペクトルを測定する。得られたスペクトルから,箇条4に従って,
ピーク高さ比(X1)を求める。
7.2.2.5 7.2.2.1で作製した配合物から,7.2.2.2に従って2回目の測定サンプルを調製する。1回目と同じ
条件で2回目の測定を行う。その後,箇条4に従ってピーク高さ比(X2)を求める。
2回目の測定は,1回目の測定後,5分以内に行う。
7.2.2.6 X1及びX2が,次の式(3)を満たす場合には,7.3の本試験に進む。
5
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(
)
2
1
2
1
2
X
X
X
X
+
−
≦0.1 ········································································· (3)
7.2.2.7 7.2.2.6の要求を満たす場合,2回の測定から平均ピーク高さを決定する。この平均値を,箇条8
の計算式中の未硬化状態でのピーク高さ比(X)として用いる。
7.3
本試験の実施
7.3.1 所定の加熱条件で硬化状態サンプルを調製する。適した加熱条件例は,9.2を参照する。
7.3.2 7.2.2.3及び7.2.2.4に規定する方法に従って,硬化状態サンプル(7.3.1参照)のFTIRスペクトルを
測定し,箇条4に従いピーク高さ比を決定する。この比をY1とする。
7.3.3 二つ目の硬化状態サンプルの測定を実施し,箇条4に従いピーク高さ比を決定する。この比をY2
とする。2回の測定から平均ピーク高さ比を決定する。この平均値を,箇条8の計算式中の硬化状態サン
プルのピーク高さ比(Y)として用いる。
8
結果の表示
硬化度を,式(4)から求めた値で示す。
Cr=(1−Y/X)×100 ····································································· (4)
ここに,
Cr: 硬化度(%)
X: 予備試験で求めた未硬化状態でのピーク高さ比で,2回
の測定値を平均した値。箇条4の式(1)参照
Y: 本試験で求めた硬化状態サンプルのピーク高さ比で,2
回の測定値を平均した値。箇条4の式(2)参照
9
精度
9.1
一般
この試験の精度は,日本において2015年に8か所の研究機関で実施されたラウンドロビンテストの結果
から求めた。
9.2
試料及び試験条件
試料及び試験条件は,次による。
− 試料 エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂
硬化剤:メチルテトラヒドロフタル酸無水物
触媒:2,4,6-トリス(ジメチルアミノ)フェノール
− 試験条件 硬化条件3水準(100 ℃×60 min,100 ℃×90 min,150 ℃×120 min)
恒温槽仕様 温度範囲:80 ℃〜200 ℃
温度分布:100 ℃±1.5 ℃,200 ℃±2.0 ℃
9.3
試験精度
JIS Z 8402-2に従って解析した結果を,表1に示す。
6
K 7148-2:2019 (ISO 20368:2017)
表1−精度データ
硬化条件
硬化度
%
温度
℃
時間
min
平均値
反復性
再現性
100
60
51.0
2.72
6.85
100
90
67.9
0.99
7.60
150
120
95.2
0.40
0.94
10 試験報告書
試験報告書には,次の事項を記載する。
a) この規格の番号(JIS K 7148-2)
b) 試料の詳細:エポキシ樹脂硬化配合物(エポキシ樹脂,硬化剤,触媒など)を同定できる情報
c) 硬化条件の詳細:硬化温度,硬化時間,装置情報(型式,性能など)
d) 使用したFTIR装置情報
e) 予備試験の試験結果(7.2参照)
f)
吸収ピーク高さの測定方法
g) 箇条8の計算式によって求めた硬化度
h) 得られたスペクトルの写し
i)
試験年月日
参考文献
[1] JIS K 7238 エポキシ樹脂の指定分類
[2] JIS K 6929-1 プラスチック−エポキシ樹脂用硬化剤及び促進剤−第1部:指定分類
[3] JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第2部:標準測定方法の併行精度
及び再現精度を求めるための基本的方法
注記 対応国際規格:ISO 5725-2,Accuracy (trueness and precision) of measurement methods and
results−Part 2: Basic method for the determination of repeatability and reproducibility of a
standard measurement method