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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 2
3 エポキシ樹脂の試験方法 ···································································································· 3
3.1 物理的性質 ··················································································································· 3
3.2 化学的性質 ··················································································································· 5
附属書JA(参考)特性と試験方法規格との対応一覧表 ································································ 8
附属書JB(参考)JISと対応する国際規格との対比表 ································································· 9
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,エポキシ樹脂技術協会 (JSRT),日本プラス
チック工業連盟 (JPIF) 及び財団法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を制
定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格であ
る。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は
もたない。
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日本工業規格 JIS
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プラスチック−エポキシ樹脂−試験方法通則
Plastics-Epoxy resins-Test methods
序文
この規格は,2005年に第1版として発行されたISO 18280を基に,技術的内容を変更して作成した日本
工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表にその説明を付けて,附属書JBに示す。
この規格の目的は,硬化前のエポキシ樹脂の特性を求めるために用いる,有用,かつ,必要な試験方法
に関する多くのJIS及びISO規格の概略をまとめその理解,選定などを容易にすることである。
注記 エポキシ樹脂は,粘性のある液体から高融点の固体を含む合成樹脂の一種である。その樹脂分
子は,二つ以上の通常グリシジル基の形をしたオキシラン又はエポキシ基を反応基としてもつ。
最も商業的に重要なエポキシ樹脂は,エピクロルヒドリンとビスフェノールAとの縮合によっ
て作られるビスフェノールAのグリシジルエーテルである。異なった特性をもつエポキシ樹脂
もエピクロルヒドリンと他の物質との反応によって商業的に製造されている。エポキシ樹脂を
使用するためには,硬化剤を用いて架橋する必要があり,用途に応じたエポキシ樹脂系の設計
においては,硬化剤の選択が重要である。エポキシ樹脂中の主な反応基であるエポキシ基及び
水酸基は,多くの他の基と反応するため,多くの化学物質を硬化剤として用いることができる。
硬化剤は,酸無水物,脂肪族アミン,芳香族アミン,ポリアミノアミドなどが挙げられる。硬
化剤によっては,室温で硬化するもの,加熱によって硬化するものがある。
1
適用範囲
この規格は,硬化前のエポキシ樹脂の特性を求める試験方法について規定する。この規格中の試験項目
の選択は,受渡当事者間の協定による。
熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂は,その特異性のため,硬化(架橋)前の特性(加工時に有用である
特性)及び硬化後の特性(固有の特性)に区別している。硬化後の固有特性を求める方法は,JIS K 7238-2
による。
注記1 この規格の利便性を増すために,各特性と試験方法規格との対応を附属書JAに示す。
注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 18280 : 2005,Plastics−Epoxy resins−Test methods (MOD)
なお,対応の程度を表す記号 (MOD) は,ISO/IEC Guide 21に基づき,修正していること
を示す。
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引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)
は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 2249 原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表
注記 対応国際規格:ISO 3675 Crude petroleum and liquid petroleum products−Laboratory determination
of density−Hydrometer method (MOD)
JIS K 2265-4 引火点の求め方−第4部:クリーブランド開放法
注記 対応国際規格:ISO 2592 Determination of flash and fire points−Cleveland open cup method
(MOD)
JIS K 5601-1-2 塗料成分試験方法−第1部:通則−第2節:加熱残分
注記 対応国際規格:ISO 3251 Paints,varnishes and plastics−Determination of non-volatile-matter
content (MOD)
JIS K 6756 液状エポキシ樹脂の結晶化傾向試験方法
注記 対応国際規格:ISO 4895 Plastics−Liquid epoxy resins−Determination of tendency to crystallize
(MOD)
JIS K 6757 エポキシ樹脂の抽出水電気伝導度の求め方
注記 JIS K 6757は2005年に制定されたが,その後この規格に対応する国際規格が,2007年にISO
21318 Plastics−Epoxy resins−Determination of electrical conductivity of aqueous resin extracts
として制定されている。
JIS K 6901 : 1999 液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法
注記 対応国際規格:ISO 3521 : 1997 Plastics−Unsaturated polyester and epoxy resins−Determination
of overall volume shrinkage及びISO 4615 : 1979 Plastics−Unsaturated polyesters and epoxide
resins−Determination of total chlorine content(全体評価:MOD)
JIS K 7117-1 プラスチック−液状,乳濁状又は分散状の樹脂−ブルックフィールド形回転粘度計によ
る見掛け粘度の測定方法
注記 対応国際規格:ISO 2555 Plastics−Resins in the liquid state or as emulsions or dispersions−
Determination of apparent viscosity by the Brookfield Test method (MOD)
JIS K 7117-2 プラスチック−液状,乳濁状又は分散状の樹脂−回転粘度計による定せん断速度での粘
度の測定方法
注記 対応国際規格:ISO 3219 Plastics−Polymers/resins in the liquid state or as emulsions or
dispersions−Determination of viscosity using a rotational viscometer with defined shear rate
(MOD)
JIS K 7146 エポキシ樹脂中の1, 2-グリコール含有量の求め方
注記 対応国際規格:ISO 21048 Plastics−Epoxy resins−Determination of 1,2-glycol content (MOD)
JIS K 7232 エポキシ樹脂及び硬化剤の比重試験方法
JIS K 7233 エポキシ樹脂及び硬化剤の粘度試験方法
JIS K 7234 エポキシ樹脂の軟化点試験方法
JIS K 7235 溶剤希釈型エポキシ樹脂の不揮発分試験方法
JIS K 7236 エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方
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注記 対応国際規格:ISO 3001 Plastics−Epoxy compounds−Determination of epoxy equivalent
(MOD)
JIS K 7237 エポキシ樹脂のアミン系硬化剤の全アミン価試験方法
JIS K 7238-2 プラスチック−エポキシ樹脂−第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方
注記 対応国際規格:ISO 3673-2 Plastics−Epoxy resins−Part 2: Preparation of test specimens and
determination of properties (MOD)
JIS K 7239 エポキシ樹脂の酸無水物系硬化剤中の遊離酸分測定方法
注記 対応国際規格:ISO 7327 Plastics−Hardeners and accelerators for epoxide resins−Determination
of free acid in acid anhydride (MOD)
JIS K 7243-1 エポキシ樹脂の塩素含有量の求め方−第1部:無機塩素
注記 対応国際規格:ISO 21627-1 Plastics−Epoxy resins−Determination of chlorine content−Part 1:
Inorganic chlorine (MOD)
JIS K 7243-2 エポキシ樹脂の塩素含有量の求め方−第2部:易可けん化塩素
注記 対応国際規格:ISO 21627-2 Plastics−Epoxy resins−Determination of chlorine content−Part 2:
Easily saponifiable chlorine (MOD)
JIS K 7243-3 エポキシ樹脂の塩素含有量の求め方−第3部:全塩素
注記 対応国際規格:ISO 21627-3 Plastics−Epoxy resins−Determination of chlorine content−Part 3:
Total chlorine (MOD)
JIS K 7245 プラスチック−エポキシ樹脂用アミン系硬化剤−第一,第二,第三アミノ基窒素含有量
の求め方
注記 対応国際規格:ISO 9702 Plastics−Amine epoxide hardeners−Determination of primary,
secondary and tertiary amine group nitrogen content (MOD)
JIS K 7250-1 プラスチック−灰分の求め方−第1部:通則
注記 対応国際規格:ISO 3451-1 : 1997 Plastics−Determination of ash−Part 1 : General methods (IDT)
ISO 1523 Determination of flash point−Closed cup equilibrium method
ISO 1675 Plastics−Liquid resins−Determination of density by the pyknometer method
ISO 3146 : 2000 Plastics−Determination of melting behaviour (melting temperature or melting range) of
semi-crystalline polymers by capillary tube and polarizing-microscope methods
ISO 4630-1 Clear liquids−Estimation of colour by the Gardner colour scale−Part 1 : Visual method
ISO 5661 Petroleum products−Hydrocarbon liquids−Determination of refractive index
ISO 6271-1 Clear liquids−Estimation of colour by the platinum-cobalt scale−Part 1 : Visual method
ISO 11357-3 Plastics−Differential scanning calorimetry (DSC)−Part 3 : Determination of temperature and
enthalpy of melting and crystallization
ISO 12058-1 Plastics−Determination of viscosity using a falling-ball viscometer−Part 1 : Inclined-tube
method
3
エポキシ樹脂の試験方法
3.1
物理的性質
3.1.1
溶融範囲の求め方
3.1.1.1
キャピラリによる溶融範囲の求め方
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キャピラリによる溶融範囲の求め方は,ISO 3146 : 2000に規定するA法による。
a) 方法要旨 試料をキャピラリに充てんし,一定速度で昇温し,形状の変化を目視で観察する。
収縮点は,粉末状樹脂の最初の物理的性質の変化が観察される温度である。溶融終点は,樹脂全体
が液状になる温度又は(部分的結晶化物の溶融に対しては)樹脂全体が半透明(透明ではない)にな
るときの温度,及び/又は樹脂が収縮しキャピラリ管壁から離れ始めるときの温度である。樹脂粉末
中の水分は,溶融範囲の測定に影響を及ぼす。そのため,溶融範囲の測定は,受け取った試料をその
まま測定すべきで,測定前に試料を乾燥してはならない。しかし,比較試験においては,試料の水分
を考慮することが望ましい。この場合,樹脂粉末を一定水分になるように五酸化二りん又は同様の乾
燥剤で48時間以上乾燥してもよい。
注記 エポキシ樹脂は,単一の化学物質ではなく,多分子性の化合物である。このことは,エポキ
シ樹脂の溶融挙動によって明らかである。すなわち,溶融は,一点の温度で起こるのではな
く,温度範囲において起こる。
溶融範囲は,収縮点(sinter point又はstick pointとも呼ばれる。)と溶融終点 (melted stage)
との間である。キャピラリ法は,繰返し精度(併行精度)はよいが,再現精度(室間再現精
度)は,悪くなるおそれがあるため,異なる測定者が正確に判定できるように,収縮点及び
溶融終点の正確な定義を明確にしておく必要がある。
b) 試料の調製 粉末状樹脂試料は,樹脂が塊及びフレークの場合,乳鉢で粉砕し,目開き250 μmのふ
るいを通過した試料を測定に用いる。
3.1.1.2
DSCによる溶融範囲の求め方
DSCによる溶融範囲の求め方は,ISO 11357-3による。
3.1.2
軟化点の求め方
軟化点の求め方は,JIS K 7234による。
a) 方法要旨 規定の環に試料を充てんし,環を水又はグリセリン浴中に水平に支える。規定の質量の球
を試料の中央に置き,浴温を規定の速さで上昇させ,球の重さで軟化した試料が環台の底板に触れた
ときの温度を,軟化点とする。
3.1.3
密度及び比重の求め方
密度の求め方は,ISO 1675(密度/比重瓶法)又はJIS K 2249(密度/浮きばかり法)による。比重の
求め方は,JIS K 7232(比重瓶法,比重カップ法,浮きばかり法,水中置換法)による。結果は,小数点3
けたまで求め,密度は,g/cm3で表示する。
比重瓶法及び比重カップ法は,すべての液状樹脂に適し,浮きばかり法は,粘度が1 Pa・s未満の液状樹
脂に適する。また,固形のエポキシ樹脂に対しては,水中置換法が適する。
3.1.4
屈折率の求め方
屈折率の求め方は,ISO 5661による。
3.1.5
粘度の求め方
粘度の求め方は,次による。
− 円すい−平板システム回転粘度計のような一定のせん断速度での粘度の求め方(JIS K 7117-2を参照)
− ブルックフィールド形回転粘度計(JIS K 7117-1を参照)又は単一円筒回転粘度計(JIS K 7233を参
照)を用いる求め方
− 落球粘度計(ISO 12058-1を参照)を用いる求め方
− 毛細管粘度計又は泡粘度計(JIS K 7233を参照)を用いる求め方
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注記 多くの場合,液状エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂溶液は,非ニュートン流体であるため,測定
した値は,用いた試験方法によって異なる可能性があるので,比較試験を行う場合は,いつも
同じ方法で測定する必要がある。
3.1.6
結晶化傾向の求め方
結晶化傾向の求め方は,JIS K 6756による。
a) 方法要旨 炭酸カルシウムとエタノールに溶解した液状エポキシ樹脂とを混合する。その混合物を特
定の低温に保持し,特定の経時間隔ごとに流動性及び結晶化の変化を比較観察する。
3.1.7
体積収縮率の求め方
体積収縮率の求め方は,JIS K 6901 : 1999の附属書3による。
a) 方法要旨 体積収縮率は,硬化前後の試験片の密度から算出する。
まず,硬化温度まで加熱したエポキシ樹脂組成物の各成分を混合した直後に測定した密度を,硬化
前の密度とする。次いで,硬化及び調整後の最終試験片の23 ℃で測定した密度を,硬化後密度とす
る。その後,硬化後の密度に対する硬化前後の密度変化との分率 (%) を算出し,これを体積収縮率と
する。
混合した直後の密度は,混合成分を一定の時間ごとに測定し,ゼロ時間へ外挿して求める。昇温時
に反応を起こす成分については,成分のそれぞれの密度から混合物の密度を算出する。硬化及び調整
後の最終試験片の23 ℃における密度は,シリコーンオイル又は蒸留水中で,質量をはかることによ
って求める。
3.1.8
引火点の求め方
引火点の求め方は,ISO 1523(密閉式)又はJIS K 2265-4(クリーブランド開放式)による。
a) 密閉式の方法要旨 密閉式カップに試料を充てんし,そのカップを液浴槽に規定の深さまでつけ加熱
する。液浴温度とカップ中の試料温度との差が2 ℃を超えないような速度で液浴温度をゆっくりと上
げ,かつ,加熱は,試料の温度が1.5 分で約0.5 ℃より上がらないようにする。加熱の間,1.5 分以
上の間隔で着火試験を行う。引火した最も低い温度を記入し,これと再試験から試料の引火点を計算
し,求められた引火点を101.3 kPa (1 013 mbar) の標準大気圧に補正する。
b) クリーブランド開放式の方法要旨 クリーブランド開放式カップ法による引火点及び発火点の求め方
で,試料を試験カップの標線まで入れた後,最初は,急激に試料温度を上げ,それから引火点が近づ
くにつれてゆっくり一定の速度で加熱する。規定の温度間隔で試験炎をカップ上で通過させる。液体
表面上部の蒸気が試験炎によって着火したときの温度を,周囲の気圧下での引火点とする。
3.1.9
色数の求め方(色の評価)
色数の求め方は,ISO 4630-1又はISO 6271-1による。
a) 方法要旨 標準の径の試験管における試験サンプルの色を観察し,任意の標準色数の色と比較する。
試料の色に最も近い標準色数を試料の色数とし,色数をガードナー色数 (ISO 4630-1) 又はプラチナ・
コバルト色数(ハーゼン単位色数)(ISO 6271-1) とする。
3.2
化学的性質
3.2.1
エポキシ当量の求め方
エポキシ当量の求め方は,JIS K 7236による。
a) 方法要旨 0.1 mol/L過塩素酸溶液とテトラエチルアンモニウムブロマイドとの反応によって発生す
る臭化水素とエポキシ化合物のエポキシ基とを反応させる。指示薬としてクリスタルバイオレットを
用いる滴定又は電位差滴定によって終点を求める。
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3.2.2
塩素含有量の求め方
エピクロルヒドリンを原料としてエポキシ樹脂を製造するとき,塩素を含む不純物が生成する。塩素を
含む不純物は,無機塩素(イオン性塩素),1,2-クロルヒドリン,1,3-クロルヒドリン及び1-クロロ-2-グリ
シジルエーテルである。これらの化学的活性は,大きく異なるため,次のように塩素の種類によって異な
った塩素含有量の求め方を用いる。
3.2.2.1
無機塩素
無機塩素の求め方は,JIS K 7243-1による。
a) 方法要旨 試料を適切な溶媒に溶かす。無機塩素は,標定した硝酸銀溶液による電位差滴定によって
求める。
3.2.2.2
易可けん化塩素
易可けん化塩素の求め方は,JIS K 7243-2による。
注記 易可けん化塩素は,主に1,2-クロルヒドリンとして存在する塩素から成る。
a) 方法要旨 グリシジルエステルを除くエポキシ樹脂を,ブトキシエタノール中で,室温で水酸化ナト
リウム水溶液と反応させる。グリシジルエステルの場合は,メタノール中で,50 ℃で水酸化ナトリウ
ムと反応させる。
反応混合物を酸性にし,けん化によって生成した塩化物イオンを,標定した硝酸銀溶液による電位
差滴定で求める。補正には,JIS K 7243-1に規定する方法を用いて測定した試料の無機塩素量を用い
る。
3.2.2.3
全塩素
全塩素の求め方は,次の二つの方法による。
a) けん化法 試験片をジエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し,その溶液を水酸化カリウム
のアルコール溶液によって還流温度でけん化する。全塩素量は,標定した硝酸銀溶液による電位差滴
定で求める。詳細はJIS K 7243-3による。
b) 燃焼法 試験片を過酸化ナトリウム(A法)又は酸素ガス(B法)によって酸化し,生成した塩化物
を電気滴定又は容量滴定によって求める。詳細はJIS K 6901 : 1999による。
3.2.3
灰分の求め方
灰分の求め方は,JIS K 7250-1に規定するA法による。
a) 方法要旨 有機物を燃焼させた残分を,質量が一定になるまで高温で加熱するなどの直接焼成によっ
て,灰分を求める。
3.2.4
エポキシ樹脂のアミン系硬化剤の第一,第二及び第三アミノ基窒素含有量の求め方
この窒素含有量の求め方は,JIS K 7245による。
a) 方法要旨 脂肪族アミン及び芳香族アミンの窒素含有量の求め方は,次による。
1) 脂肪族アミン 脂肪族アミンは,次による。
− 全アミノ基窒素含有量:臭化水素酸又は過塩素酸の氷酢酸溶液で全アルカリ度を電位差滴定によっ
て求める。
− 第三アミノ基窒素含有量:第一及び第二アミノ基を,無水酢酸と反応させてアミド基に変えてマス
キングした後,第三アミノ基だけを,氷酢酸と無水酢酸との混合液中で,臭化水素酸又は過塩素酸
を用いて電位差滴定をして求める。
− 第一アミノ基窒素含有量:第一アミノ基は,N,N-ジメチルホルムアミド中で過剰の2,4-ペンタンジ
オン(アセチルアセトン)と反応し,イミンを生成する。過剰のアセチルアセトンを水酸化カリウ
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ムで電位差滴定して,第一アミノ基と反応したアセチルアセトン量を求め,第一アミノ基窒素含有
量を算出する。
− 第二アミノ基窒素含有量:第二アミノ基窒素含有量は,全アミノ基窒素含有量から第三アミノ基窒
素含有量及び第一アミノ基窒素含有量を差し引いて求める。
2) 芳香族アミン 芳香族アミンは,次による。
− 全アミノ基窒素含有量:脂肪族アミンと同じ。
− 第三アミノ基窒素含有量:脂肪族アミンと同じ。
− 第二と第三アミノ基窒素含有量との和:第一アミノ基を,氷酢酸中でサリチルアルデヒドと反応さ
せてシッフ塩基に変えてマスキングした後,第二及び第三アミノ基だけを,氷酢酸中で,塩酸を用
いる電位差滴定によって求める。
− 第一アミノ基窒素含有量:第一アミノ基窒素含有量は,全アミノ基窒素含有量から第二と第三アミ
ノ基窒素含有量との和を差し引いて求める。
− 第二アミノ基窒素含有量:第二アミノ基窒素含有量は,第二と第三アミノ基窒素含有量との和から
第三アミノ基窒素含有量を差し引いて求める。
3.2.5
エポキシ樹脂のアミン系硬化剤の全アミン価の求め方
全アミン価の求め方は,JIS K 7237による。
a) 方法要旨 過塩素酸酢酸溶液で溶液の電位差又はpHを測定して算出する。
3.2.6
酸無水物硬化剤中の遊離酸の求め方
遊離酸の求め方は,JIS K 7239による。
a) 方法要旨 酸無水物硬化剤中の少量の遊離酸は,ローダミン6 Gと反応してピンク色に呈色する。分
光光度計で,呈色した試料の約510 nmでの吸光度を測定し,検量線から遊離酸含有量を求める。
3.2.7
不揮発分含有量
不揮発分含有量の求め方は,JIS K 5601-1-2又はJIS K 7235による。
a) 方法要旨 ある条件で揮発した残分の質量を元の質量に対する分率 (%)で求める。
3.2.8
エポキシ樹脂の抽出水電気伝導度の求め方
抽出水電気伝導度の求め方は,JIS K 6757による。
a) 方法要旨 エポキシ樹脂(抽出温度で液状である)から水で抽出されるイオン成分を電気伝導度とし
て求める。
3.2.9
1,2-グリコール含有量の求め方
1,2-グリコール含有量の求め方は,JIS K 7146による。
a) 方法要旨 1,2-グリコールは,過剰のオルト過よう素酸の存在下でアルデヒド化合物に酸化される。
次いで,反応液に硫酸の存在下でよう化カリウムを加える。発生したよう素を標定済みのチオ硫酸ナ
トリウム溶液で滴定する。1,2-グリコールの含有量は,チオ硫酸ナトリウムの消費量から求める。
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附属書JA
(参考)
特性と試験方法規格との対応一覧表
序文
この附属書は,硬化前のエポキシ樹脂の特性とその試験方法を規定する規格との関係を一覧表にしたも
ので,規定の一部ではない。試験方法に対応する規格が複数ある場合は,該当する基準となる規格を選ぶ。
表JA.1−各特性と試験方法規格との対応
特性
規格
方法
1 物理的性質
1.1
溶融範囲及び軟化点
ISO 3146,A法
キャピラリ法
ISO 11357-3
DSC法
JIS K 7234
軟化点
1.2
密度及び比重
ISO 1675
密度(密度/比重瓶法)
JIS K 2249
密度(密度/浮きばかり法)
JIS K 7232
比重(比重瓶法,比重カップ法
浮きばかり法,水中置換法)
1.3
屈折率
ISO 5661
1.4
粘度
JIS K 7117-2
円すい−平板システム回転粘度計
JIS K 7117-1
ブルックフィールド形回転粘度計
ISO 12058-1
落球粘度計
JIS K 7233
毛細管粘度計,単一円筒回転粘度計
泡粘度計
1.5
結晶化傾向
JIS K 6756
1.6
体積収縮率
JIS K 6901 附属書3
1.7
引火点
ISO 1523
密閉式平衡法
JIS K 2265-4
クリーブランド開放式カップ法
1.8
色数
ISO 4630-1
ガードナー色数
ISO 6271-1
ハーゼン単位色数
(プラチナ・コバルト色数)
2 化学的性質
2.1
エポキシ当量
JIS K 7236
電位差滴定法,指示薬滴定法
2.2
塩素含有量
無機塩素
JIS K 7243-1
硝酸銀滴定
易可けん化塩素
JIS K 7243-2
けん化法
全塩素
JIS K 7243-3
けん化法
JIS K 6901
燃焼法
2.3
灰分
JIS K 7250-1,A法
燃焼法
2.4
アミン系硬化剤の窒素含有量
JIS K 7245
電位差滴定法
2.5
アミン系硬化剤の全アミン価
JIS K 7237
電位差滴定法,指示薬滴定法
2.6
酸無水物硬化剤中の遊離酸
JIS K 7239
吸光度測定法
2.7
不揮発分含有量
JIS K 5601-1-2
JIS K 7235
2.8
エポキシ樹脂の抽出水電気伝導度
JIS K 6757
電気伝導度測定法
2.9
1,2-グリコール含有量
JIS K 7146
逆滴定法
9
K 7147:2008
著
作
権
法
に
よ
り
無
断
で
の
複
製
,
転
載
等
は
禁
止
さ
れ
て
お
り
ま
す
。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書JB
(参考)
JISと対応する国際規格との対比表
JIS K 7147 : 2008 プラスチック−エポキシ樹脂−試験方法通則
ISO 18280 : 2005,Plastics−Epoxy resins−Test methods
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ)
国際規
格番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異の箇条
ごとの評価及びその内容
(Ⅴ) JISと国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策
箇条番号
及び名称
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
3エポキ
シ樹脂の
試験方法
3.1.2軟化点の求め方
3.1.3 密度及び比重の
求め方
3.1.7 体積収縮率の求
め方
3.2.5 エポキシ樹脂の
アミン系硬化剤の全ア
ミン価の求め方
3.2.8 エポキシ樹脂の
抽出水電気伝導度の求
め方
3.2.9 1, 2-グリコール
含有量の求め方
3
規定なし
3.1.3 密度の求め方
3.1.6体積収縮率の求め方
規定なし
規定なし
規定なし
追加
追加
変更
追加
追加
追加
・軟化点の試験方法を追加し
た。
・比重の求め方を追加した。
・エポキシ樹脂での求め方を
記載した。
・アミン系硬化剤の全アミン
価の求め方を追加した。
・抽出水電気伝導度の試験方
法を追加した。新たにISO規
格が制定された (ISO 21318)。
・1, 2-グリコール含有量の試
験方法を追加した。
理由:
・固形エポキシ樹脂の熱特性として,
DSCによる融点より,軟化点を用い
ることが多いため,この試験方法を
追加した。
・日本で用いられる方法を追加した。
・対応国際規格の誤りを正した(不
飽和ポリエステルでの求め方となっ
ている。)。
・評価実績の多い試験方法であるこ
の試験方法を追加した。
・評価実績の多い試験方法であるこ
の試験方法を追加した。
・評価実績の多い試験方法であるこ
の試験方法を追加した。
対応:5年見直し時ISOに改正提案
をする。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 18280 : 2005:MOD
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K 7147:2008
著
作
権
法
に
よ
り
無
断
で
の
複
製
,
転
載
等
は
禁
止
さ
れ
て
お
り
ま
す
。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD…………… 国際規格を修正している。
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