サイトトップへこのカテゴリの一覧へ

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 7123-1987 

プラスチックの比熱容量測定方法 

Testing Methods for Specific Heat Capacity of Plastics 

1. 適用範囲 この規格は,プラスチックの比熱容量を測定する方法について規定する。 

引用規格: 

JIS K 6900 プラスチック用語 

JIS K 7100 プラスチックの状態調節及び試験場所の標準状態 

JIS K 7121 プラスチックの転移温度測定方法 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

2. 用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は,JIS K 6900(プラスチック用語)及びJIS K 7121

(プラスチックの転移温度測定方法)によるほか,次による。 

等温ベースライン 温度を一定に設定し,定常状態になった後に得られるDSC曲線。 

3. 試験片の状態調節 試験片の状態調節は,次の二つの方法のいずれかによる。 

(1) 標準状態で調整し比熱容重を測定する場合 試験片は,原則として試験前にJIS K 7100(プラスチッ

クの状態調節及び試験場所の標準状態)の標準温度状態2級及び標準湿度状態2級(温度23±2℃及

び相対湿度50±5%)において24時間以上状態調節する。ただし,当事者間の協定する方法によって

状態調節することができる。 

(2) 一定の熱処理を行った後,比熱容量を測定する場合 (1)の状態調節後試験片をDSC装置の容器に入

れ,非結晶性の場合にはガラス転移終了時より少なくとも約30℃高い温度まで,結晶性の場合には融

解ピーク終了時より少なくとも約30℃高い温度まで加熱溶融し,それぞれの温度に10分間保った後,

冷却速度毎分5℃又は毎分10℃で比熱容量測定範囲の下限温度より約20℃低い温度まで冷却する。 

4. 試験方法 試験方法は,次のいずれかによる。 

(1) 入力補償示差走査熱量測定(入力補償DSC) 

(2) 熱流束示差走査熱量測定(熱流束DSC) 

5. 装置及び器具 

5.1 

装置 

background image

K 7123-1987  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.1.1 

DSC装置 二つの容器ホルダーをもちそのホルダーの熱容量が同等で,かつ同一な熱交換条件で

加熱冷却が可能である構造であること。入力補償DSCの場合は,試験片及び標準物質の温度が等しくなる

ように基準物質と試験片とに加えた単位時間当たりの熱エネルギーの入力の差が測定できるように構成さ

れていること。熱流束DSCは,試験片と基準物質との温度差が単位時間当たりの熱エネルギーの入力の差

に比例するように構成されていること。 

(1) 加熱速度 加熱速度は,毎分10℃で昇温でき,その精度は毎分±0.5℃以内であること。 

(2) 冷却速度 冷却速度は,毎分5℃又は毎分10℃で冷却できる装置であること。 

(3) ガス流入装置 ガス流入装置は,試験片の周りをガスが流入できる構造であること。 

(4) 容器 容器は,試験片によって侵されることのない熱伝導率の高い材料であること。 

(5) 記録 DSC曲線を自動記録できること。 

(6) ノイズレベル ノイズレベルは,比熱容量測定用標準物質測定時のDSC曲線と,等温ベースラインの

縦軸方向との差(図のl)の101以下であること。 

5.2 

器具 

5.2.1 

ガス流量計 ガス流量計は,毎分10〜50mlの範囲を測定できるもの。 

5.2.2 

化学天びん 化学天びんは,感量0.01mg以上のもの。 

6. 試験片 試験片は,試験片の直径又は各辺の長さが0.5mm以下の場合にはそのまま使用する。0.5mm

を超えるものについては0.5mm以下に切断する。厚さが0.5mm以下のシート及びフィルムは,容器に合

わせて無理なく入るように切断する。成形物及びペレットのように薄く切れるものは,厚さ0.5mm以下に

薄く切り,容器に合わせて無理なく入るように切断する。 

7. 温度の校正 温度の校正は,実際の試験の場合と同じガス流量及び加熱速度で純度99.99%以上の表1

に示す純物質又は国際熱分析連合 (ICTA) −米国国立標準局 (NBS) の標準物質GM-757, 758によって行

う。求めようとする温度に近い2種類以上の純物質又は標準物質の補外転移開始温度を用いて内挿法によ

って温度目盛を校正する。 

純物質は,表面の酸化層を落として使用する。容器がアルミニウムで純物質に亜鉛を用いるときには,

溶融時に合金となるおそれがあるので第1回の加熱昇温時の値だけを用いる。 

表1 純物質融点 

純物質名 

融点℃ 

インジウム 

156.4 

すず 

231.9 

鉛 

327.4 

亜鉛 

419.5 

8. 操作 操作は,次のとおり行う。 

8.1 

容器の選定 容器の選定は,ほぼ同じ質量(質量差2%以内)の容器(ふたを含む。)を4個用意す

る。 

8.2 

感度の設定及び等温ベースラインの調整 感度の設定及び等温ベースラインの調整は,次のとおり

行う。 

(1) ふたを固定した空の容器を二つの容器ホルダーに1個ずつ載せる。 

background image

K 7123-1987  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(2) 窒素ガスの流量を毎分10〜50mlに調整しガスを流入させる。流量を変えることなく試験終了まで流

入を続ける。 

(3) 測定開始温度 (Tb) 及び終了温度 (Tf) を次によって設定する。 

(a) 通常TfとTbとの差は,50〜100℃とする。これより広い温度域を測定する場合には,二つ以上の区

間に分けて測定する。この際約20℃の温度範囲を重複して測定する。 

(b) 測定温度範囲に転移がある場合には,転移が開始する温度より約20℃以上低温にTbを,転移が終

了する温度より約20℃以上高温にTfを設定する。 

(4) 感度の設定は,空の容器のDSC曲線と試験片を詰めた容器の転移のない領域におけるDSC曲線の縦

軸方向との差(図のh)がチャート幅の51以上になるようにする。 

(5) 昇温前後の等温ベースライン(図のIとII)が縦軸上ほぼ同じ位置になるように装置を調整する。 

(6) Tbで装置を安定させ等温ベースライン(図のI)を描かせた後毎分10℃で昇温する。Tfで昇温を止め,

等温ベースライン(図のII)を描く。 

8.3 

比熱容量測定用標準物質の測定 比熱容量測定用標準物質の測定は,化学天びんを用いて0.01mgま

で量った質量10〜30mgの比熱容量用標準物質である純度99.9%以上のα−アルミナ(合成サファイヤなど)

を容器に入れ,ふたを固定して容器ホルダーに装着し,8.2(6)と同様の操作を行う。 

なお,α−アルミナの各温度における比熱容量を次の表2に示す。 

表2 α−アルミナの各温度における比熱容量 

絶対温度 

℃ 

比熱容量 

J/g℃ 

絶対温度 

℃ 

比熱容量 

J/g℃ 

絶対温度 

℃ 

比熱容量 

J/g℃ 

120 

−153.15 

0.196 9 

330 

 56.85 

0.837 2 

540 

266.85 

1.069 2 

130 

−143.15 

0.235 0 

340 

 66.85 

0.854 8 

550 

276.85 

1.075 6 

140 

−133.15 

0.274 0 

350 

 76.85 

0.871 3 

560 

286.85 

1.081 6 

150 

−123.15 

0.313 3 

360 

 86.85 

0.887 1 

570 

296.85 

1.087 5 

160 

−113.15 

0.352 5 

370 

 96.85 

0.902 0 

580 

306.85 

1.093 1 

170 

−103.15 

0.391 3 

380 

106.85 

0.916 1 

590 

316.85 

1.098 6 

180 

 −93.15 

0.429 1 

390 

116.85 

0.929 5 

600 

326.85 

1.103 8 

190 

 −83.15 

0.465 9 

400 

126.85 

0.942 3 

610 

336.85 

1.108 8 

200 

 −73.15 

0.501 4 

410 

136.85 

0.954 4 

620 

346.85 

1.113 6 

210 

 −63.15 

0.535 5 

420 

146.85 

0.966 0 

630 

356.85 

1.118 2 

220 

 −53.15 

0.568 2 

430 

156.85 

0.977 0 

640 

366.85 

1.122 7 

230 

 −43.15 

0.599 4 

440 

166.85 

0.987 5 

650 

376.85 

1.127 0 

240 

 −33.15 

0.629 2 

450 

176.85 

0.997 5 

660 

386.85 

1.131 3 

250 

 −23.15 

0.657 6 

460 

186.85 

1.007 0 

670 

396.85 

1.135 3 

260 

 −13.15 

0.684 5 

470 

196.85 

1.016 0 

680 

406.85 

1.139 2 

270 

 −3.15 

0.710 1 

480 

206.85 

1.024 7 

690 

416.85 

1.143 0 

280 

   6.85 

0.734 2 

490 

216.85 

1.033 0 

700 

426.85 

1.146 7 

290 

  16.85 

0.757 1 

500 

226.85 

1.040 8 

720 

446.85 

1.153 7 

300 

  26.85 

0.778 8 

510 

236.85 

1.048 4 

740 

466.85 

1.160 4 

310 

  36.85 

0.799 4 

520 

246.85 

1.055 6 

760 

486.85 

1.166 7 

320 

  46.85 

0.818 8 

530 

256.85 

1.062 6 

780 

506.85 

1.172 6 

8.4 

試験片の測定 試験片の測定は,次によって行う。 

(1) 0.01mgまで量った質量5〜15mgの試験片を次の要領で容器に詰める。 

(a) 試験片の直径又は各片の長さが0.5mm以下の場合には容器に平らにかつ均一に入れ,容器のふたを

載せ固定する。このとき容器の底が平らになっていない場合は,ふたの中央部を押して容器の底が

background image

K 7123-1987  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

平らになるようにする。 

(b) シート及びフィルム状の場合は必要量を容器に敷き込み,容器のふたを載せ固定する。このとき容

器の底が平らになっていない場合には,ふたの中央部を押して容器の底が平らになるようにする。 

(c) 薄く切った試験片で容器に合う大きさの場合には,シート及びフィルムと同様の方法による。 

また,容器に対して試験片が小さい場合には,すきまのないよう平らに敷き詰める。 

備考 これらの操作は,試験片相互,試験片と容器及び容器と容器ホルダーとの熱接触をよくす

るために重要である。 

(2) 試験片を詰めた容器を容器ホルダーに装着し,8.3と同様の操作を行う。 

8.5 

等温ベースラインの確認 等温ベースラインは,操作8.2(6), 8.3及び8.4(2)によって得られたDSC

曲線の等温ベースラインがほぼ重なることを確認する。 

9. 比熱容量の求め方(図参照) 

9.1 

比熱容量を求めるための作図方法 比熱容量を求めるための作図方法は,TbとTfを合わせ,操作8.2 

(6), 8.3及び8.4(2)で得られたDSC曲線を縦軸に平行移動させ,Tb及びTfの等温ベースラインが互いにほぼ

重なり合うようにする。 

図 DSCによる比熱容量の求め方の例 

9.2 

データの読取り方 データの読取り方は9.1で作成した図で比熱容量を求めようとする温度におい

て,空の容器のDSC曲線と試験片を入れた容器のDSC曲線及び比熱容量測定用標準物質を入れた容器の

DSC曲線までの縦軸方向の距離h及びHを求める。 

9.3 

比熱容量の計算 次の式によって比熱容量を算出する。 

Cp=

p

C

m

m

H

h

'

'

ここに, Cp: 試験片の比熱容量 (J/g℃)  
 

m: 試験片の質量 (mg)  

m': 比熱容量測定用標準物質の質量 (mg)  

C'p: 比熱容量測定用標準物質の比熱容量 (J/g℃)  

h: 空の容器と試験片を入れた容器のDSC曲線の縦軸方向の差 

H: 空の容器と標準物質を入れた容器のDSC曲線の縦軸方向の差 

K 7123-1987  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

10. 数値の丸め方 比熱容量 (J/g℃) は,小数点以下3けたまで求めてJIS Z 8401(数値の丸め方)に定

める方法によって丸める。 

11. 報告 報告には,必要に応じて次の事項を記入する。 

(1) 試験した材料の種類 

(2) 試験機の製造業者名及び形式 

(3) 試験片の形状,大きさ及び質量 

(4) 試験片の状態調節 

(5) 窒素ガスの流入速度 

(6) 加熱速度 

(7) 比熱容量測定用標準物質名,純度及び形状 

(8) 比熱容量及び温度 

(9) 試験年月日 

(10) その他必要とする事項 

原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員会長) 

金 綱 久 明 

工業技術院繊維高分子材料研究所 

宮 崎 正 浩 

通商産業省基礎産業局 

池 田 喜 好 

工業技術院標準部 

畠 山 立 子 

工業技術院繊維高分子材料研究所 

高 橋 高 子 

工業技術院大阪工業技術試験所 

小 澤 丈 夫 

工業技術院電子技術総合研究所 

柴 崎 芳 夫 

埼玉大学理学部 

中 村 邦 雄 

神奈川県工業試験所 

中 村 茂 夫 

神奈川大学工学部 

金 子   剛 

財団法人日本電気用品試験所 

市 原 祥 次 

三菱油化株式会社 

桃 田 道 彦 

理学電機株式会社 

十 時   稔 

株式会社東レリサーチセンター 

佐 藤 一 太 

鐘淵化学工業株式会社 

河 崎 博 徳 

徳山曹達株式会社 

渡 辺 修 三 

東洋曹達工業株式会社 

今 村 重 祥 

三菱樹脂株式会社 

寺 本 芳 彦 

セイコー電子工業株式会社 

沖 野 孝 之 

株式会社島津製作所 

岸     証 

真空理工株式会社 

塚 野   隆(樋口秀臣) 

財団法人高分子素材センター