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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 7120-1987 

プラスチックの熱重量測定方法 

Testing Methods of Plastics by Thermogravimetry 

1. 適用範囲 この規格は,プラスチックの熱重量測定を行うための一般的方法について規定する。 

引用規格: 

JIS K 6900 プラスチック用語 

JIS K 7100 プラスチックの状態調節及び試験場所の標準状態 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

対応国際規格: 

ISO 7111-1987 Plastics−Thermogravimetry of polymers−Temperature scanning method 

2. 用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は,JIS K 6900(プラスチック用語)によるほか,次

による。 

(1) 熱重量測定 (TG)  物質の温度を調整されたプログラムに従って変化させながら,その物質の質量を

温度又は時間の関数として測定する方法で,通常試験片の質量の変化を温度の関数として測定する。 

(2) TG曲線 縦軸に質量,横軸に温度又は時間を取り,熱重量測定において描かれる曲線。 

(3) 熱天びん 試料が加熱又は冷却されているとき,その質量を連続的に測定する装置。 

(4) 開始温度 試験片の質量変化又は標準物質の見掛けの質量変化が始まる温度。 

(5) 中点温度 試験片の質量変化又は標準物質の見掛けの質量変化が50%に達する温度。 

(6) 終了温度 試験片の質量変化又は標準物質の見掛けの質量変化がなくなる温度。 

(7) キュリー温度 磁気的性質が強磁性から常磁性に移る臨界温度。 

3. 試験片の状態調節 試験片は,原則として試験前にJIS K 7100(プラスチックの状態調節及び試験場

所の標準状態)の標準温度状態2級及び標準湿度状態2級(温度23±2℃及び相対湿度50±5%)において

24時間以上状態調節する。ただし,当事者間の協定する方法によって状態調節することができる。 

4. 装置及び器具 装置及び器具は,次による。 

(1) 熱天びん 試験片の量が50mg以下の場合には,質量が0.5%の精度で測定でき,試験片の周りをガス

が流れる構造で一定の速度で加熱できること。 

(2) 記録装置 質量及び温度を自動記録できること。 

(3) ガス流量計 毎分50〜100mlの範囲を測定できること。 

5. 試験片 試験片は,粉末又は細かく切断した状態とし,約10mgとする。 

備考 揮発物,添加物及び充てん剤の量を測定する場合には,その含有量に応じて試験片の質量を

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K 7120-1987  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

50mgまで増やし,測定精度を上げる。 

6. 熱天びんの校正 試験を行う前に,次の校正を行わなければならない。 

(1) 質量の校正 質量の計量範囲について化学天びん用分銅を用いて校正しなければならない。 

備考 熱天びんにおいては,加熱によって浮力の変化及び対流が起こり,質量変化のない場合でも,

見掛け上質量の変化が観測され質量測定の精度が低下する。質量の変化を見るために試験片を

入れない状態で,実際の試験の場合と同じ加熱速度及びガス流量によって見掛けの質量変化を

観測しておくとよい。質量測定精度は,その大きさ以下とはならない。 

(2) 温度の校正 純度99.99%以上のニッケル又は国際熱分析連合 (ICTA) −米国国立標準局 (NBS) の標

準物質GM761のキュリー温度を用いて次のように校正しなければならない。 

なお,示差熱分析又は示差走査熱量測定との同時測定が可能な熱天びんでは,示差熱分析又は示差

走査熱量測定用の同様な標準物質を採用することができる。 

(a) 純度99.99%以上のニッケル又はGM-761を熱天びんに装着し,図1に示すように永久磁石又は電磁

石を近づけ,見掛けの質量変化が起こることを確かめる。 

(b) 試験と同じ加熱速度で加熱を開始し,キュリー温度における階段状の見掛けの質量変化から開始温

度,中点温度及び終了温度によって校正する。 

図1 キュリー温度測定における磁石の置き方の例 

7. 操作 操作は,次によって行う。 

(1) 流入ガスは,乾燥空気(水分0.001w/w%以下)とする。ただし,測定の目的に応じて当事者間の協定

によって窒素(水分0.001w/w%以下,酸素0.001v/v%以下)又はその他のガスを用いることができる。 

(2) 流入ガスの流量を毎分50〜100mlに調整する。 

(3) 記録計の縦軸を零に設定する。XY記録計を用いて横軸を温度とする場合には横軸を必要な温度範囲

に設定する。時間送りの2ペン記録計を用いる場合には,縦軸(温度)を必要温度範囲内に設定し,

記録紙の送り速度を毎分1cm程度に設定する。 

(4) 試験片を試験片容器に入れ,加熱前の質量を記録する。 

(5) 加熱開始に先立ってガスの流入を1時間以上行う。 

(6) 加熱速度毎分10±1℃で温度を上昇させる。ただし,当事者間の協定によって他の加熱速度を用いる

こともできる。 

K 7120-1987  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

備考1. 通常の高分子の測定に必要な最高温度は,600〜800℃である。 

2. 試験の前後に化学天びんによって試験片又は試験片容器に入った試験片の質量を測定し,熱

重量測定の精度を確認することが望ましい。 

3. 7.(5)の操作を行う場合,真空脱気及びガス流入を二,三回繰り返し,加熱開始に先立ってガ

ス流入時間を短縮させることができる。 

4. 重縮合反応によって得られる高分子などでは,吸湿水分の影響が大きい場合がある。この影

響を除く必要がある場合には,加熱開始後約180℃に1時間程度保って水分を除く。 

8. TG曲線の読み方 TG曲線の読み方は,次によって行う。 

(1) 質量増加の場合 図2の曲線の質量の最大値をmMとする。 

(2) 一段階質量減少の場合 

(a) 図3において試験加熱開始前の質量m0を通る横軸に平行な線 (a−b) を描く。 

(b) TG曲線における屈曲点間のこう(勾)配が最大になるように接線 (c−d) を描く。 

(c) 次に質量変化がほぼ認められなくなった曲線に接線 (e−f) を描く。 

(d) 線 (a−b) と接線 (c−d) とが交わる点Aの温度を開始温度T1とする。 

(e) 接線 (c−d) と接線 (e−f) とが交わる点Bの温度を終了温度T3とする。 

(f) 交点Bに対応する質量をmBとする。 

(g) 点Bを通り縦軸に平行な線 (g−h) を描く。 

(h) 線 (a−b) と線 (g−h) とが交わる点Cと点Bを結ぶ直線の中点を点Dとする。 

(i) 点Dを通り横軸に平行な線 (i−j) の直線を描く。 

(j) 線 (i−j) とTG曲線とが交わる点Eの温度を中点温度T2とする。 

(3) 多段階質量減少の場合 

(a) 図3に準じてそれぞれ図4について交わる点A1,B1,A2及びB2を求める。 

(b) それぞれの交点に対応する質量をm0,mB1,mA2及びmB2とする。 

(c) 点A1の温度を第一次開始温度とする。 

(d) 点B1の温度を第一次終了温度とする。 

(e) 点A2の温度を第二次開始温度とする。 

(f) 点B2の温度を第二次終了温度とする。 

(g) 図3に倣って点E1,E2を求め,点E1の温度を第一次中点温度,点E2の温度を第二次中点温度とす

る。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図2 TG曲線の質量増加の場合の例 

図3 TG曲線の一段階質量減少の場合の例 

図4 TG曲線の多段階質量減少の場合の例 

9. 計算 

9.1 

質量増加率は,次の式(1)によって算出し,百分率で表す。 

MG=

0

0

m

m

mM−

×100 ··································································· (1) 

ここに, MG: 質量増加率 (%) 
 

mM: 曲線の質量の最大値 (mg) 

m0: 加熱前の質量 (mg) 

9.2 

質量減少率は,次の式(2)によって算出し,百分率で表す。 

ML=

0

0

m

m

m

B

×100 ···································································· (2) 

ここに, ML: 質量減少率 (%) 
 

mB: 終了温度の質量 (mg) 

m0: 加熱前の質量 (mg) 

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多段階質量減少の場合の第一次質量減少率は,次の式(3)によって算出し,百分率で表す。 

ML1=

0

1

0

m

m

m

B

×100 ·································································· (3) 

ここに, ML1: 第一次質量減少率 (%) 
 

mB1: 第一次終了温度の質量 (mg) 

m0: 加熱前の質量 (mg) 

多段階質量減少の場合の第二次質量減少率は,次の式(4)によって算出し,百分率で表す。 

ML2=

0

2

2

m

m

m

B

A−

×100 ································································ (4) 

ここに, ML2: 第二次質量減少率 (%) 
 

mA2: 第二次開始温度の質量 (mg) 

mB2: 第二次終了温度の質量 (mg) 

m0: 加熱前の質量 (mg) 

9.3 

残分率は,次の式(5)によって算出し,百分率で表す。 

R=

0

m

mc×100 ············································································ (5) 

ここに, 

R: 残分率 (%) 

mC: 最終段階のmB (mg) 

m0: 加熱前の質量 (mg) 

10. 数値の丸め方 温度及び変化率は,小数点以下1けたまで求めてJIS Z 8401(数値の丸め方)に定め

る方法によって丸める。 

11. 報告 報告には,必要に応じて次の事項を記入する。 

(1) 試験した材料の種類 

(2) 試験機の製造業者名及び形式 

(3) 試験片容器の形状及び材質 

(4) 試験片の形状及び大きさ 

(5) 試験片の状態調節 

(6) 試験片の質量 

(7) 流入ガス及びその流量 

(8) 加熱速度 

(9) 温度の校正に用いた純物質又は標準物質 

(10) 質量減少率及び質量増加率 

(11) 残分率 

(12) 質量変化温度 (T1,T2,T3)  

(13) 試験年月日 

(14) その他必要とする事項 

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原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員会長) 

金 綱 久 明 

工業技術院繊維高分子材料研究所 

宮 崎 正 浩 

通商産業省基礎産業局 

池 田 喜 好 

工業技術院標準部 

畠 山 立 子 

工業技術院繊維高分子材料研究所 

高 橋 高 子 

工業技術院大阪工業技術試験所 

小 澤 丈 夫 

工業技術院電子技術総合研究所 

柴 崎 芳 夫 

埼玉大学理学部 

中 村 邦 雄 

神奈川県工業試験所 

中 村 茂 夫 

神奈川大学工学部 

金 子   剛 

財団法人日本電気用品試験所 

市 原 祥 次 

三菱油化株式会社 

桃 田 道 彦 

理学電機株式会社 

十 時   稔 

株式会社東レリサーチセンター 

佐 藤 一 太 

鐘淵化学工業株式会社 

河 崎 洋 徳 

徳山曹達株式会社 

渡 辺 修 三 

東洋曹達工業株式会社 

今 村 重 祥 

三菱樹脂株式会社 

寺 本 芳 彦 

セイコー電子工業株式会社 

沖 野 孝 之 

株式会社島津製作所 

岸     証 

真空理工株式会社 

塚 野   隆(樋口秀臣) 財団法人高分子素材センター