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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 7085-1993 

炭素繊維強化プラスチックの 

多軸衝撃試験方法 

Testing method for multiaxial impact behaviour  

of carbon fibre reinforced plastics 

1. 適用範囲 この規格は,炭素繊維強化プラスチック(以下,CFRPという。)の多軸衝撃試験方法につ

いて規定する。 

備考1. この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS B 0601 表面粗さの定義と表示 

JIS B 7502 外側マイクロメータ 

JIS K 6900 プラスチック用語 

JIS K 7072 炭素繊維強化プラスチックの試料の作製方法 

JIS K 7100 プラスチックの状態調節及び試験場所の標準状態 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

2. この規格の中で{ }を付けて示してある単位は,従来単位によるものであって,参考とし

て併記したものである。 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 6900によるほか,次のとおりとする。 

(1) ストライカ 先端に半球面をもつ圧子,荷重計及び重錘からなり,試験片に衝撃荷重を加えるジグ。 

(2) ストライカ径 ストライカの圧子の円筒部及び半球面の直径。 

(3) 支持枠径 試験片を固定する枠の内径。 

(4) 衝撃速さ ストライカが試験片に接触するときの速さ。 

(5) 落下高さ 試験片の表面から所定の高さに固定したストライカ先端までの距離。 

(6) 衝撃エネルギー 試験片に加えるエネルギー。 

(7) 衝撃荷重 試験片に加わる時々刻々の荷重。 

(8) 変位 ストライカが試験片に接触してから時々刻々変わる試験片の中央部の移動量。 

(9) 最大荷重 荷重−時間線図又は荷重−変位線図から得られる最大の荷重。 

(10) 初期破壊 最初にき裂が発生したときの破壊。 

(11) 貫通破壊 ストライカの圧子が貫通したときの破壊で,荷重−時間線図において荷重がゼロ又は変化

が認められなくなったとき。 

(12) 最大変位 荷重−変位線図における最大の変位。 

(13) 全吸収エネルギー 荷重−変位線図において最大変位までの囲まれた全面積。 

(14) 弾性変形エネルギー 荷重−変位線図において最大荷重点までの囲まれた面積。 

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(15) エネルギー指数 全吸収エネルギーを弾性変形エネルギーで除した値。 

3. 試験片の状態調節並びに試験温度及び湿度 

3.1 

試験片の状態調節 試験片は,原則として試験前にJIS K 7100の標準温度状態2級及び標準湿度状

態2級[温度23±2 ℃及び相対湿度 (50±5) %]において,48時間以上状態調節する。 

3.2 

試験温度及び湿度 試験は,原則として3.1に規定する温度及び湿度[温度23±2 ℃及び相対湿度 

(50±5) %]の室内で行う。 

備考 CFRPは,吸湿によって衝撃特性が影響されることがあるので注意しなければならない。 

4. 試験装置及び器具 

4.1 

試験装置 試験装置は,衝撃試験中にストライカの状態が試験片に対して垂直かつ所定の落下高さ

に保持できる構造で,次のもので構成する。 

(1) ストライカ ストライカは,半球面をもつ円筒部分と重錘とからなり,図1に示す基本構造のものと

する。 

図1 ストライカの一例 

(2) 支持枠 試験中の試験片が移動しないように機械的な方式,空気圧,油圧などの方式で強固に支持で

きるものとし,支持枠径の標準寸法は80±0.1mmとする。標準寸法以外の場合はその寸法を記録する。 

また,支持枠自体は,衝撃荷重,衝撃時の振動などの影響を受けない鋼製の頑丈なものとする。支

持枠の一例を図2に示す。 

備考 試験片に接触するストライカの先端及び支持枠の表面は,JIS B 0601に規定する中心線平均粗

さで6.3aとする。 

図2 支持枠の一例 

(3) 荷重計 荷重計は,試験中に試験片に加えられる衝撃荷重のすべてを時間経過に伴って記録すること

ができるもので,荷重値の±5%又はそれ以上の精度で指示できる機構のものとする。荷重センサーは,

圧子の先端部に取り付けることが望ましい(図1参照)。荷重センサーとして加速度センサーを使用す

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る場合は,その信号を荷重値に変換できる機能のものとする。 

(4) 変位計 変位計は,試験中の試験片の変位をストライカの移動量に置き換えて測定するもので,時間

の経過に伴って記録できるものとする。 

備考 変位計を使用できない場合は,衝撃荷重を加速度に変換して,それを時間積分することによっ

て求めたストライカの運動履歴を試験片の変位としてもよい。 

(5) 速度計 速度計は,ストライカの圧子先端が試験片に接触する瞬間の速さを測定するためのものであ

る。 

備考 変位を直接測定できる場合は,変位−時間の関係から衝撃速さを算出できるので,速度計を必

要としない。 

4.2 

寸法測定器具 

4.2.1 

マイクロメータ 試験片の中央部の厚さを測定するもので,JIS B 7502に規定する外側マイクロメ

ータで,測定範囲0〜25mmのもの又はこれと同等以上の精度のものとする。 

5. 試験片 

5.1 

試験片の標準寸法 試験片の標準寸法は,次のとおりとする。 

大きさ:100×100mm 

厚さ :2.0±0.4mm 

5.2 

標準厚さ以外の試験片 標準厚さ以外の試験片を用いる場合,その寸法を記録する。 

5.3 

試験片の作製 試験片の作製は,次による。 

(1) 試験片は,JIS K 7072又は受渡当事者間の協定によって,圧縮成形,オートクレーブ成形などで成形

した積層板から所定の寸法に作製する。 

(2) 試験片を切り出すときは,切削工具によって試験片の縁から不用意にき裂を発生させないように注意

する。 

(3) CFRP積層板の表面及び裏面の差が試験結果に影響を及ぼすことがあるので,試験片の切り出し時は,

表裏面が識別できるようにする。 

5.4 

試験片の数 同一条件で行う試験片の数は,5個以上とする。 

備考 異常な結果を示した試験片の値は捨て,この分の試験片を追加する。 

6. 試験条件 

6.1 

衝撃速さ 衝撃速さは,毎秒4.4m(1)を標準とするが,標準以外の場合はそのときの衝撃速さを記録

する。 

注(1) 衝撃速さ毎秒4.4mは,落下高さ1mに相当する。 

備考 CFRPは,速度依存性が少ない材料なので,衝撃エネルギーを調節する場合は,落下高さを変

えるのが実際的である。 

6.2 

ストライカの質量 ストライカの質量は,貫通破壊を起こさせる場合,次の式(1)によって算出する。 

gH

Ut

m

2

 ·················································································· (1) 

ここに, 

m: ストライカの質量 (kg) 

Ut: 全吸収エネルギー (J) {kgf・m} 

g: 重力の加速度 (9.81m/s2) 

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H: 落下高さ (m) 

備考1. 必要とするストライカの質量は,試験片の衝撃特性と衝撃速さによって決められるべきであ

るが,試験片の厚さが2mm,落下高さが1mとすると,貫通可能なストライカの質量は4kg程

度である。 

2. 初期破壊が生じる限界の挙動を調べる場合は,試験片の強さに応じたストライカの質量を用

いる。 

6.3 

ストライカ径 ストライカ径は,10±0.1mmを標準とする。 

また,試験の目的に応じてストライカ径は,20±0.1mmを用いてもよい。 

備考 ストライカ径は,試験結果に影響を及ぼすので,ストライカ径の異なる試験結果は相互比較す

ることができない。 

7. 操作 操作は,次のとおり行う。 

(1) 試験片の中央部の厚さを0.01mmまで測定する。 

(2) 試験片を支持枠に固定し,ストライカの落下中心が試験片の中心になるよう支持枠の位置を調節する。 

(3) ストライカを所定の高さに位置させ,ストライカを落下させる。 

(4) 衝撃速さを測定する。 

(5) 荷重−時間線図及び変位−時間線図を求め,これを基に,荷重−変位線図を作成する。必要があれば,

試験中のストライカの速度変化も記録する。 

備考1. 加速度−時間線図から2重積分によって変位−時間線図を求める場合,正確な衝撃速さが必要

となるが,通常,速度計は試験片から少し離れた所に設置される。この場合は衝撃速さを補

正しなければならない。 

2. 通常,衝撃波形には高周波成分の波形が合成されて計測される。このような場合は原波形を

平滑化してから演算処理を行い,その旨報告する。原波形を平滑化する場合,例えば,ロー

パスフィルターを用いるときは,2.5kHz以上の性能をもつものが望ましい。 

(6) 試験片の破損又は破壊状況を記録する。 

8. 計算 

8.1 

全吸収エネルギー (Ut)  全吸収エネルギーは,図3に示す現象波形に囲まれた全面積で表す。 

8.2 

弾性変形エネルギー (Ue)  弾性変形エネルギーは,図3に示す荷重−変位線図において最大荷重

点とそのときの変位に囲まれた面積で表す。 

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図3 荷重−変位線図の一例 

8.3 

エネルギー指数 (Ux)  エネルギー指数は,衝撃荷重に対して材料のじん(靱)性を表す指標となる

もので,次の式(2)によって算出する。 

Ue

Ut

Ux=

 ·················································································· (2) 

ここに, Ux: エネルギー指数 
 

Ut: 全吸収エネルギー (J) {kgf・m} 

Ue: 弾性変形エネルギー (J) {kgf・m} 

8.4 

試験結果の丸め方 各試験結果は個々に算出し,その平均値をJIS Z 8401によって有効数字を3け

たに丸める。 

8.5 

標準偏差及び変動係数 標準偏差及び変動係数を必要とするときは,次の式(3)及び式(4)によって算

出し,JIS Z 8401によって有効数字2けたに丸める。 

1

)

(

2

n

x

x

s

Σ

 ········································································· (3) 

100

×

x

s

CV=

············································································· (4) 

ここに, 

s: 標準偏差 

CV: 変動係数 (%) 

x: 個々の測定値 

x: 測定値の平均値 

n: 測定値の数 

9. 報告 報告には,必要に応じて,次の事項を記入する。 

(1) 試験した材料の種類,等級及び製造業者名 

(2) 試験片の種類,積層構成及び炭素繊維の体積含有率 

(3) 試験片の厚さ,作製方法及び上下面の採取方向 

(4) 試験した試験片の数 

(5) 試験片の状態調節の温度,湿度及び時間 

(6) 試験温度及び湿度 

(7) 試験条件[ストライカの質量及びストライカ径,支持枠径,衝撃速さ(又は落下高さ),平滑化の条件

など] 

(8) 試験結果(代表的な荷重−変位線図,最大荷重とそれまでの変位,弾性変形エネルギー,全吸収エネ

ルギー,最大変位及びエネルギー指数の値及びそれらの平均値,標準偏差及び変動係数,破壊の様相

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など) 

(9) 試験年月日 

(10) その他特記すべき事項 

関連規格 JIS Z 8203 国際単位系 (SI) 及びその使い方 

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炭素繊維複合材料本委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

宮 入 裕 夫 

東京医科歯科大学医用器材研究所 

中 島 邦 夫 

通商産業省基礎産業局 

森   康 晃 

通商産業省基礎産業局 

長 田 直 俊 

通商産業省生活産業局 

地 崎   修 

工業技術院標準部 

金 原   勲 

東京大学工学部 

影 山 和 郎 

東京大学工学部 

野 口 義 男 

科学技術庁航空宇宙技術研究所 

野 口 祐 成 

工業技術院機械技術研究所 

古 江 治 美 

工業技術院機械技術研究所 

劔 持   潔 

工業技術院製品科学研究所 

渡 辺   寧 

工業技術院繊維高分子材料研究所 

小 牧 和 夫 

工業技術院大阪工業技術試験所 

則 竹 佑 治 

防衛庁技術本部第3研究所 

代 田   忠 

代田技術事務所 

犬 竹 紀 弘 

石川島播磨重工業株式会社 

葭 田 雄次郎 

富士重工業株式会社 

野 尻 邦 夫 

三菱重工業株式会社 

三 好 一 雄 

三菱電機株式会社 

村 島 善 樹 

トヨタ自動車株式会社 

星   郁 夫 

日立化成工業株式会社 

山 内 啓 司 

東邦レーヨン株式会社 

広 瀬 博 光 

東レ株式会社 

松 岡 廣 典 

三菱レイヨン株式会社 

藤 田 利 仁 

日東紡績株式会社 

(事務局) 

鹿 毛 紀久雄 

財団法人高分子素材センター 

新 鍋 秀 文 

財団法人高分子素材センター 

衝撃試験方法分科会 構成表 

氏名 

所属 

(分科会長) 

野 口 祐 成 

工業技術院機械技術研究所 

永 井 正 洋 

東京医科歯科大学医用器材研究所 

永 井   功 

工業技術院大阪工業技術試験所 

樫 山 節 夫 

三菱レイヨン株式会社 

上 田   收 

旭化成工業株式会社 

池 田   斌 

三菱化成株式会社 

小 林   勝 

工業技術院標準部 

宮 入 裕 夫 

東京医科歯科大学医用器材研究所 

影 山 和 郎 

東京大学工学部 

山 内 啓 司 

東邦レーヨン株式会社 

(事務局) 

鹿 毛 紀久雄 

財団法人高分子素材センター 

新 鍋 秀 文 

財団法人高分子素材センター