2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 7077-1991
炭素繊維強化プラスチックの
シャルピー衝撃試験方法
Testing method for Charpy impact strength of
carbon fiber reinforced plastics
1. 適用範囲 この規格は,炭素繊維強化プラスチック(以下,CFRPという。)のシャルピー衝撃試験(以
下,衝撃試験という。)方法について規定する。
備考1. この方法による試験は,衝撃曲げ試験の一種である。すなわち,規定寸法の試験片を,単純
支持はりの状態で支持し,その中央を規定の速度及び破断に要するエネルギーより大きな規
定のエネルギーでフラットワイズ衝撃し,1回の衝撃によって試験片を破断するのに要したエ
ネルギーを測定し,そのCFRPの耐衝撃性,もろさ,粘り強さなどの特性を測定するもので
ある。
2. この規格の中で{ }を付けて示してある単位は,従来単位によるものであって,参考とし
て併記したものである。
3. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 7502 外側マイクロメータ
JIS B 7507 ノギス
JIS B 7739 非金属材料用振り子形衝撃試験機
JIS K 6900 プラスチック用語
JIS K 7072 炭素繊維強化プラスチックの試料の作製方法
JIS K 7100 プラスチックの状態調節及び試験場所の標準状態
JIS Z 8103 計測用語
JIS Z 8401 数値の丸め方
2. 用語の定義 この規格に用いる主な用語の定義は,JIS K 6900及びJIS Z 8103によるほか,次のとお
りとする。
(1) シャルピー衝撃試験 シャルピー衝撃試験機を用い,試験片を規定寸法に隔たっている二つの試験片
支持台で支え,かつ,試験片の中央をハンマで,1回の衝撃によって試験片を破断し,シャルピー衝
撃値を測定する試験。
(2) 吸収エネルギー 試験片を破断するのに要したエネルギー (J) {kgf・cm}。
(3) シャルピー衝撃値 吸収エネルギー (J) {kgf・cm} を試験片の中央部の元の断面積で除した値 (kJ/m2)
{kgf・cm/cm2}。
(4) 破断 試験片が一回の衝撃によって二つ以上に分離すること。ただし,衝撃後,破断片が非常に薄い
2
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表面層(成形時の表面スキン層)又は強化繊維でつながっている場合がある。この場合は,破断した
ものとみなす。
(5) フラットワイズ衝撃 板状の材料から作製した試験片を,板の面に垂直な方向から衝撃すること。
(6) ひょう量 ハンマの,試験片衝撃位置に対する持上げ位置の位置エネルギーの大きさの呼び。
(7) 試験片支持台の水平面 試験片支持台の,試験片を置く面。
(8) 試験片支持台間の距離 左右2個ある試験片支持台の支持台端部分相互間の最短距離(図2参照)。
(9) 衝撃刃の刃縁 試験片に衝撃を与えるハンマの刃先部分の頂部の直線部分。
(10) 打撃点 理想的な形状・寸法の試験片を,その試験片に対応する正常な位置に調整された試験片支持
台の水平面上に載せ,これに衝撃刃の刃縁を接触させたとき,刃縁側に生じる接触部分の中点(図2
参照)。
(11) 打撃中心 ハンマが水平回転軸中心線の周りを揺動するとき,ハンマの全質量がその点に集中して運
動しているとみなせる位置。
(12) 衝撃速度 ハンマが試験片を衝撃する瞬間におけるハンマの打撃中心の線速度。
(13) 空振り 試験支持台に試験片を載せないで,持上げ位置からハンマを振り降ろし,振上がり側に振り
上がらせること。
(14) 試験機のエネルギー損失 指針(置き針)を伴って,ハンマを持上げ位置から空振りさせたときの振
上がり位置を測定し,それから計算した二つの位置間における位置エネルギーの差。
(15) 衝撃試験時のエネルギー損失 衝撃試験時にハンマが持上げ位置から,試験片を衝撃し,破断させた
後,振上がり位置まで運動する間に,ハンマと指針(置き針)の空気抵抗及び摩擦抵抗によって生じ
るエネルギー損失。
3. 試験片の状態調節並びに試験温度及び湿度
3.1
試験片の状態調節 試験片は,原則として,試験前にJIS K 7100の標準温度状態2級及び標準湿度
状態2級[温度23±2℃及び相対湿度 (50±5) %]において48時間以上行う。
3.2
試験温度及び湿度 試験は原則として3.1と同じ温湿度[温度23±2℃及び相対湿度 (50±5) %]の
室内で行う。
備考 CFRPは,吸湿によってシャルピー衝撃値が影響されることがあるので注意しなければならな
い。
3.3
標準状態以外での試験 前項以外の状態で試験を行う場合には,指定の状態に保った気槽又は液槽
の中に,試験片を必要な時間保持した後,試験片支持台に載せ,ハンマで衝撃を与える。このとき,気槽
又は液槽から試験片を取り出してから衝撃を与えるまでの時間は,5秒以内でなければならない。
4. 装置及び器具
4.1
試験機 衝撃試験を行う試験機は,JIS B 7739に適合したものでなければならない。衝撃試験機の
一例を図1に示す。
3
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図1 衝撃試験機の一例
備考1. 試験機は,その主要部分の分解・再組立,模様替え又は据付け替えを行った場合には,改め
てJIS B 7739の6.(検査)の規定に適合することを確認した後使用する。
2. 前項に該当しないときでも,使用頻度に応じ,一定期間ごとに精度の再確認を行うことが必
要である。
3. 衝撃速度は,毎秒3.8±0.38mとする。
4.2
試験機は,ハンマの回転軸を水平に置き,試験片の破断時に振動その他の不都合なことが生じない
ように,強固に据え付けて使用しなければならない。
4.3
試験機は,その使用前後において,JIS B 7739の6.9(ハンマのエネルギー損失の検査)の(2)で規定
する試験機のエネルギー損失の検査を行うことが望ましい。
4.4
寸法測定器
4.4.1
マイクロメータ マイクロメータは,試験片の幅及び厚さを測定するもので,JIS B 7502に規定す
るマイクロメータで,測定範囲0〜15mmのもの又はこれと同等以上の精度のものとする。
4.4.2
ノギス ノギスは,試験片の長さ及び試験片支持台間の距離を測定するためのもので,JIS B 7507
に規定するノギスの最大測定長300mm,最小読取値0.05mmのもの又はこれと同等以上の精度のものとす
る。
5. 試験片
5.1
試験片の形状及び寸法 試験片の形状及び寸法は,長さ (l) 80±1mm,幅 (b) 10±0.2mm,厚さ(1) (t)
(板厚)2±0.2mmとする。必要に応じて,厚さ3±0.2mmの試験片を用いてもよい。
注(1) 試験片の厚さは,衝撃方向の試験片の寸法とする。
5.2
試験片の作製 試験片の作製は,次による。
(1) 試験片は,JIS K 7072又は受渡当事者間の協定によって,圧縮成形,オートクレーブ成形などによっ
て作製した積層板から機械加工によって作る。この場合,機械加工などによって試験片の厚さの調整
を行ってはいけない。機械加工するときに切削熱,クラックなどによって材料の性質が変化しないよ
うに,十分に注意しなければならない。
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(2) 異方性のある板状の材料を試験する場合は,縦方向及び横方向からそれぞれ試験片を作る。
5.3
試験片の数 それぞれの条件ごとに,原則として10個の試験片について試験することとする。ただ
し,試験する材料のシャルピー衝撃値のばらつきが少ない(2)ときは,5個の試験片でもよい。
注(2) ばらつきの少ないことの目安は,試験結果の変動係数が10%以内であることとする。
6. 操作 操作は,次のとおりとする。
(1) 試験片の中央部付近の厚さ及び幅bを±0.01mmまで測定する。
(2) 使用する試験機のひょう量は,試験片を破断するのに要するエネルギーがひょう量の10〜80%(3)にな
るように選ぶ。
注(3) 可能ならば,試験の実際の諸条件からひょう量の10〜70%で行うことが,更に望ましい。
(3) 試験片支持台間の距離を,60±0.5mmに設定する。
また,試験片支持台の状態がJIS B 7739の5.7(ハンマと支持台との相互関係)の条件を満たすよ
うに試験片支持台の位置を調整する。このとき,試験片支持台の水平面上に載せられた試験片の上下
方向の中央と刃縁の打撃点との食い違いは,1mm以下でなければならない。
(4) ハンマを持上げ位置にハンマ支持装置で保持し,指針をハンマの回転軸に取り付けられた指針駆動金
具に接触させる。
備考 ハンマの持上げ角度は,原則として150°とする。
(5) 試験片を図2に示すように試験片支持台の水平面上に載せる。
(6) ハンマの支持を静かに外してハンマを振り降ろし,1回の衝撃で試験片を破断させ,そのときの振上
がり角度を読み取る。
図2 試験片支持台,ハンマの衝撃刃及び試験片間の関係
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7. 計算
7.1
吸収エネルギー 吸収エネルギーは,式(1)によって算出する。
)]
'
)(
cos
'
(cos
)
cos
[(cos
α
α
β
α
α
α
α
β
+
+
−
−
−
=WR
E
·································· (1)
ここに,
E: 吸収エネルギー (J) {kgf・cm}
WR: ハンマの回転軸の周りのモーメント (N・m) {kgf・cm}
α: ハンマの持上げ角度 (°)
αʼ: ハンマを持上げ角度αから空振りさせたときの振上がり角度
(°)
β: 試験片破断後のハンマの振上がり角度 (°)
7.2
シャルピー衝撃値 シャルピー衝撃値は,式(2)によって算出する。
3
10
×
=bt
E
auc
············································································ (2)
ここに,
auc: シャルピー衝撃値 (kJ/m2)
E: 吸収エネルギー (J)
b: 試験片の中央部の幅 (mm)
t: 試験片の中央部の厚さ (mm)
参考 シャルピー衝撃値aucを従来単位 {kgf・cm/cm2} によるときは,式(3)によって算出する。
bt
E
auc=
·················································································· (3)
ここに,
auc: シャルピー衝撃値 {kgf・cm/cm2}
E: 吸収エネルギー {kgf・cm}
b: 試験片の中央部の幅 (cm)
t: 試験片の中央部の厚さ (cm)
7.3
試験結果の丸め方 シャルピー衝撃値auc (kJ/m2) {kgf・cm/cm2} は,各試験片ごとに算出し,その平
均値をJIS Z 8401によって整数位に丸める。
7.4
標準偏差及び変動係数 標準偏差及び変動係数は,式(4)及び(5)によって算出し,JIS Z 8401によっ
て有効数字2けたに丸める。
1
)
(
2
−
−
∑
=
n
x
x
s
········································································· (4)
100
×
=xs
CV
············································································ (5)
ここに,
s: 標準偏差
CV: 変動係数 (%)
x: 個々の測定値
x: 測定値の平均値
n: 測定値の数
8. 報告 報告には,必要に応じて次の事項を記入する。
(1) 試験した材料の種類,等級,製造業者名
(2) 試験片の種類,構成,炭素繊維の体積又は質量含有率
(3) 試験片の採取方向
(4) 試験片の作製方法
(5) 試験片の形状及び寸法
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(6) 試験した試験片の数
(7) 試験片の状態調節の温度,湿度及び時間
(8) 試験室の温度及び湿度
(9) 試験機の性能(ひょう量,衝撃速度,ハンマの持上げ角度など)
(10) 試験結果(試験片で得られた個々の値,平均値,測定値の範囲又は標準偏差及び変動係数,破断しな
い試験片の有無,層間はく離の有無,破断面の観察,状態など)
(11) 試験年月日
(12) その他特記すべき事項
関連規格 JIS K 7111 硬質プラスチックのシャルピー衝撃試験方法
JIS Z 2242 金属材料衝撃試験方法
JIS Z 8203 国際単位系 (SI) 及びその使い方
炭素繊維複合材料本委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
宮 入 裕 夫
東京医科歯科大学医用器材研究所
阿 部 己喜雄
通商産業省基礎産業局
岩 井 篤
通商産業省基礎産業局
和 田 正 武
通商産業省生活産業局
細 川 幹 夫
工業技術院
金 原 勲
東京大学工学部
影 山 和 郎
工業技術院機械技術研究所
野 口 義 男
科学技術庁航空宇宙技術研究所
劔 持 潔
工業技術院製品科学研究所
渡 辺 寧
工業技術院繊維高分子材料研究所
近 藤 春 樹
工業技術院大阪工業技術試験所
(植 村 幸 生) 工業技術院大阪工業技術試験所
則 竹 佑 治
防衛庁技術本部第3研究所
代 田 忠
代田技術事務所
犬 竹 紀 弘
石川島播磨重工業株式会社
井 出 正
富士重工業株式会社
酒 谷 芳 秋
三菱重工業株式会社
三 好 一 雄
三菱電機株式会社
(木名瀬 武 男) 三菱電機株式会社
村 島 善 樹
トヨタ自動車株式会社
星 郁 夫
日立化成工業株式会社
棚 橋 良 次
ヤマハ株式会社
笹 島 洋 一
住友電気工業株式会社
松 井 醇 一
東レ株式会社
山 内 啓 司
東邦レーヨン株式会社
奥 田 謙 介
呉羽化学工業株式会社
松 本 嘉 生
旭化成工業株式会社
山 口 金 哉
昭和高分子株式会社
藤 田 利 仁
日東紡績株式会社
(事務局)
鹿 毛 紀久雄
財団法人高分子素材センター
新 鍋 秀 文
財団法人高分子素材センター
7
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
衝撃特性小委員会及び衝撃試験方法分科会 構成表
氏名
所属
(分科会長)
小 林 政治郎
工業技術院大阪工業技術試験所
(植 村 幸 生)
工業技術院大阪工業技術試験所
西 村 正 美
工業技術院標準部
野 口 祐 成
工業技術院機械技術研究所
永 井 正 洋
東京医科歯科大学医用器材研究所
大 沢 勇
東京大学工学部
津久井 啓太郎
三菱電機株式会社
石 丸 裕
住友化学工業株式会社
(林 政範,山蔦浩司) 住友化学工業株式会社
山 田 晃
株式会社上島製作所
近 西 邦 夫
三菱レイヨン株式会社
石 田 喜 克
ヤマハ株式会社
伊 藤 基
東レ株式会社
小 池 常 夫
油化シェルエポキシ株式会社
(事務局)
鹿 毛 紀久雄
財団法人高分子素材センター
新 鍋 秀 文
財団法人高分子素材センター