K6934-1:2006 (ISO 2580-1:2002)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,日本ABS樹脂工業
会(JARIA)/日本プラスチック工業連盟(JPIF)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日
本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日
本工業規格である。
これによって,JIS K 6934-1:1999は改正され,この規格に置き換えられる。
改正に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 2580-1:2002,Plastics−
Acrylonitrile-butadiene-styrene (ABS) moulding and extrusion materials−Part 1 : Designation system and basis for
specificationsを基礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
JIS K 6934の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS K 6934-1 第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎
JIS K 6934-2 第2部:試験片の調製及び諸性質の測定方法
K 6934-1:2006 (ISO 2580-1:2002)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 2
3. 呼び方のシステム ············································································································ 2
3.1 一般 ···························································································································· 2
3.2 データブロック1 ··········································································································· 3
3.3 データブロック2 ··········································································································· 3
3.4 データブロック3 ··········································································································· 4
3.5 データブロック4 ··········································································································· 6
3.6 データブロック5 ··········································································································· 6
4. 呼び方の例 ····················································································································· 7
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 6934-1:2006
(ISO 2580-1:2002)
プラスチック−アクリロニトリル−ブタジエン
−スチレン (ABS)成形用及び押出用材料−
第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎
Plastics-Acrylonitrile-butadiene-styrene(ABS)
moulding and extrusion materials-
Part 1:Designation system and basis for specifications
序文 この規格は,2002年に第5版として発行されたISO 2580-1,Plastics−Acrylonitrile-butadiene-styrene
(ABS) moulding and extrusion materials−Part 1 : Designation system and basis for specificationsを翻訳し,技術
的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある“参考”は,原国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲
1.1
この規格は,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンプラスチック (ABS) の成形用材料及び押出
用材料の呼び方のシステムについて規定する。この呼び方のシステムは,仕様表記の基礎として用いるこ
とができる。
1.2
ABSを,次の特性の適切な水準,並びに組成,意図する用途及び/又は成形方法,重要な特性,添
加剤,着色剤,充てん材及び強化材に関する情報に基づいて区分する。
a) ビカット軟化温度
b) メルトボリュームフローレイト
c) ノッチ付きシャルピー衝撃強さ
d) 引張弾性率
1.3
この規格は,主としてスチレン(及び/又はアルキル基で置換したスチレン)及びアクリロニトリ
ルのコポリマーからなる連続相,主としてポリブタジエンからなる弾性体の分散相,並びに本体に規定す
る含有量の上記以外の成分からなるすべてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン熱可塑性材料に適
用する。この規格は,粉状,か粒状,ペレット状又はチップ状で,着色剤,添加剤,充てん材などの添加
の有無を問わず,通常使用されるABS材料に適用できる。
この規格は,次には適用しない。
− ノッチ付きシャルピー衝撃強さが3 kJ/m2未満のもの
− 分散相中の弾性体(エラストマー)中のブタジエンが質量分率50 %未満のもの
− 連続相中のアクリロニトリルが質量分率15 %未満のもの
2
K 6934-1:2006 (ISO 2580-1:2002)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
1.4
この規格で,同じ呼び方をする材料が,必ずしも同一の性能を示すとは限らない。この規格は,特
定用途及び/又は成形方法のための材料を規定するときに必要な技術的なデータ,性能データ,又は成形
条件に関するデータを提供するものではない。
このような追加の特性が必要な場合には,JIS K 6934-2に規定する試験方法が適用できる場合,それに
従って測定する。
1.5
特定の用途向けに熱可塑性材料を規定するため,又は再現性よく成形するために,追加要求事項を
データブロック5に入れてもよい(3.1参照)。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 2580-1:2002,Plastics−Acrylonitrile-butadiene-styrene (ABS) moulding and extrusion materials
−Part 1 : Designation system and basis for specifications (IDT)
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 6899-1 プラスチック−記号及び略語−第1部:基本重合体(ポリマー)及びその特性
備考 ISO 1043-1:1997,Plastics−Symbols and abbreviated terms−Part 1 : Basic polymers and their
special characteristicsが,この規格と一致している。
参考 ISO 1043-1の最新版は,2001年版であり,この国際一致規格としてJIS K 6899-1を改正中で
ある。
JIS K 6934-2 プラスチック−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)成形用材料及び押出
用材料−第2部:試験片の調製及び諸性質の測定方法
備考 ISO 2580-2:1994,Plastics−Acrylonitrile/butadiene/styrene (ABS) moulding and extrusion materials
−Part 2 : Preparation of test specimens and detemination of propertiesが,この規格と一致してい
る。
参考 ISO 2580-2は,2003年に改正版が発行されたため,この国際一致規格としてJIS K 6934-2も
改正する予定である。
3. 呼び方のシステム
3.1
一般 熱可塑性プラスチックの呼び方のシステムは,次による。
呼び方
種類ブロック
識別項目ブロック
(記載任意)
個別項目ブロック
規格番号
ブロック
データ
ブロック
1
データ
ブロック
2
データ
ブロック
3
データ
ブロック
4
データ
ブロック
5
この呼び方は,記載任意な種類ブロック(“熱可塑性プラスチック”と記載する。),並びに規格番号ブロ
ック及び個別項目ブロックとからなる識別項目ブロックで構成する。個別項目ブロックを,更に次に示す
五つのデータブロックに細分し,表示があいまいにならないようにする。
3
K 6934-1:2006 (ISO 2580-1:2002)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
データブロック1: JIS K 6899-1 による略号(ABS)を用いた,プラスチックの識別及びポリマー組成
に関する情報(3.2参照)。
データブロック2: コードの文字位置1:意図する用途及び/又は成形方法(3.3参照)
コードの文字位置2〜8:重要な特性,添加剤及び補足情報(3.3参照)
データブロック3: 呼び方に使用する特性(3.4参照)
データブロック4:
データブロック5:
充てん材又は強化材及びこれらの公称含有率(3.5参照)
仕様を表記するために,追加情報を含む第5番目のデータブロックを加えてもよい
(3.6参照)。
個別項目ブロックの最初の文字は,ハイフンとする。それぞれのデータブロックは,互いにコンマで区
切る。
なお,データブロックを使わない場合には,“,,”のように分離記号を二つ続ける。
3.2
データブロック1 ハイフンの後に,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンプラスチックを,JIS
K 6899-1による略号 (ABS) で識別する。その後に1字分空けて表1に記載の組成を示す1けたのコード
(番号)及び表2に記載の他の成分のモノマーを示すコード(文字)を付けて識別する。
表 1 データブロック1に使用する組成を示すコード(番号)
コード(番号)
組成
0
アクリロニトリル,ブタジエン並びにスチレン(及び/又はアルキル基で置換したスチレン)
からなるモノマー及び/又はポリマー以外のモノマー及び/又はポリマーが,質量分率5 %
を超えないプラスチック。
1
アクリロニトリル,ブタジエン並びにスチレン(及び/又はアルキル基で置換したスチレン)
からなるモノマー及び/又はポリマー以外のモノマー及び/又はポリマーが,質量分率5 %
以上で,質量分率15 %を超えないプラスチック。
2
アクリロニトリル,ブタジエン並びにスチレン(及び/又はアルキル基で置換したスチレン)
からなるモノマー及び/又はポリマー以外のモノマー及び/又はポリマーが,質量分率
15 %以上で,質量分率30 %を超えないプラスチック。
表 2 データブロック1に使用する他成分モノマーを示すコード(文字)
コード(文字)
モノマー
A
アクリル酸エステル
M
無水マレイン酸及び他の酸無水物
P
N-フェニルマレイミド及び他のマレイミド
X
上記以外又は規定しないモノマー
3.3
データブロック2 コードの文字位置1で意図した用途及び/又は成形方法に関する情報を識別す
る。データブロックの位置2〜8で,重要な特性,添加剤及び着色剤に関連する情報を識別する。表3に,
使ってよいコード(文字)を示す。
なお,位置2〜8に情報を記載しているが,位置1に情報がない場合には,文字“X”(表示なしを示す。)
を,位置1に挿入する。
4
K 6934-1:2006 (ISO 2580-1:2002)
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表 3 データブロック2に使用するコード(文字)
コード(文字)
コードの文字位置1
コード(文字)
コードの文字位置2〜8
A
成形安定処方
B
ブロッキング防止処方
C
着色品
D
粉末
E
押出用
F
フィルム押出用
F
特殊燃焼特性処方
G
一般用
G
か粒
H
熱安定化処方
L
耐光処方
M
射出成形用
N
自然色(非着色品)
R
離型剤処方
S
滑剤処方
X
表示なし
Z
帯電防止処方
3.4
データブロック3
3.4.1
一般 ビカット軟化温度の範囲は,3けたのコード(番号)で表示する(3.4.2参照)。メルトボリ
ュームフローレイトの範囲は,2けたのコード(番号)で表示する(3.4.3参照)。ノッチ付きシャルピー衝
撃強さの範囲は,2けたのコード(番号)で表示する(3.4.4参照)。引張弾性率の範囲は,2けたのコード
(番号)で表示する(3.4.5参照)。これら四つのコード(番号)は,それぞれをハイフンで区切る。
なお,特性値が,範囲の境界上にあるか,又は範囲の境界に近い場合には,製造業者がその材料をいず
れの範囲とするかを表明する。その後,たとえ各試験値がその範囲を外れても,製造の許容誤差範囲内な
ら,そのコード(番号)を変える必要はない。
備考 現在入手可能な材料について,表記に使う特性値のすべての組合せができるとは限らない。
3.4.2
ビカット軟化温度 ビカット軟化温度(VST)は,JIS K 6934-2に従って測定する。試験片は乾燥
材料を用いて成形し,測定するまで(23±2)℃のデシケータ内で保存する。
ビカット軟化温度の値は,表4に規定する六つの範囲に分割し,それぞれを3けたのコード(番号)で
表示する。
表 4 データブロック3のビカット軟化温度に使用するコード(番号)
コード(番号)
ビカット軟化温度の範囲
℃
085
≦ 90
095
90<〜≦100
105
100<〜≦110
115
110<〜≦120
125
120<〜≦130
135
130<
3.4.3
メルトボリュームフローレイト メルトボリュームフローレイト(MVR)は,JIS K 6934-2に従って
測定する。メルトボリュームフローレイトを測定する材料は,(80±2)℃で4時間状態調節し,その後,
測定するまで(23±2)℃のデシケータ内で保存する。
表5に規定するように,メルトボリュームフローレイトの値を五つの範囲に分割し,それぞれを2けた
5
K 6934-1:2006 (ISO 2580-1:2002)
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のコード(番号)で表示する。
表 5 データブロック3のメルトボリュームフローレイトに使用するコード(番号)
(220 ℃/10 kgで測定)
コード(番号)
メルトボリュームフローレイトの範囲
cm3/10 min
04
≦ 5
08
5<〜≦10
15
10<〜≦20
30
20<〜≦40
50
40<
3.4.4
ノッチ付きシャルピー衝撃強さ ノッチ付きシャルピー衝撃強さは,JIS K 6934-2 に従って測定す
る。表6で規定するように,ノッチ付きシャルピー衝撃強さを,五つの範囲に分割し,それぞれ2けたの
コード(番号)で表示する。
表 6 データブロック3のノッチ付きシャルピー衝撃強さに使用するコード(番号)
コード(番号)
ノッチ付きシャルピー衝撃強さの範囲
kJ/m2
05
3≦〜≦ 7
09
7<〜≦14
16
14<〜≦23
25
23<〜≦35
35
35<
3.4.5
引張弾性率 引張弾性率は,JIS K 6934-2 に従って測定する。引張弾性率の値を表7で規定するよ
うに,四つの範囲に分割し,それぞれ2けたのコード(番号)で表示する。
表 7 データブロック3での引張弾性率に使用するコード(番号)
コード(番号)
引張弾性率の範囲
MPa
15
≦1 800
20
1 800<〜≦2 300
25
2 300<〜≦2 800
30
2 800<
6
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3.5
データブロック4 位置1に充てん材及び/又は強化材の種類を1字のコード(文字)で表示する。
データブロックの位置2にその物理的形状を,別の1字のコード(文字)で表示する。これらのコード(文
字)を,表8に示す。このコードに続けて,空白なしで位置3にその質量分率を2けたの数字で表示する。
表 8 データブロック4で使用する充てん材及び強化材コード(文字)
コード(文字)
材料(位置1)
コード(文字)
形状(位置2)
B
ほう素
B
球,ビーズ又は中空球
C
カーボン (1)
D
粉末又はドライブレンド
F
繊維
G
ガラス
G
摩砕粉又は粉砕
H
ウイスカ
K
炭酸カルシウム
M
鉱物(1),(2)又は金属(1)
S
うろこ又はフレーク
T
タルク
X
規定なし
X
規定なし
Z
その他(2)
Z
その他
注(1) これらの材料は,例えば,これらの化学記号,又は関連JISに規定する追加の記号によ
って,更に規定してもよい。金属 (M) の場合は,化学記号を用いて金属の種類を表示す
ることが必す(須)である。
(2) 鉱物充てん材は,化学記号で表示できるならば,これを用いて更に正確に表記する。
備考 数種の材料又は異なる形状の混合物を表す場合には,“+”の記号を使って,関連するコ
ード(文字)を結合し,その全体を括弧でくくる。例えば,ガラス繊維 (GF)25 %と鉱
物粉末 (MD) 8 %との混合物は,(GF25+MD08) と表示する。
3.6
データブロック5 このデータブロックには,特定用途の材料仕様書を作成するときなど,必要な追
加事項を表示する。例えば,適切な日本工業規格,又は一般に用いられている標準的な仕様を引用する。
7
K 6934-1:2006 (ISO 2580-1:2002)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4. 呼び方の例 N-フェニルマレイミド質量分率8 % (1P)で,射出成形用 (M),着色品 (C),帯電防止処
方(Z),ビカット軟化温度121 ℃ (125),メルトボリュームフローレイト5 cm3/10 min (04),ノッチ付きシ
ャルピー衝撃強さ16 kJ/m2 (16)及び引張弾性率2 600 MPa (25) であるABS成形材料は,次のように呼ぶ。
種類
ブロック
(記載任意)
規格番号
ブロック
個別項目ブロック
データ
ブロック
1
データ
ブロック
2
データ
ブロック
3
(熱可塑性プラスチック)
JIS K 6934-1 (ISO 2580-1) -ABS 1P,
M C Z,
125-04-16-25
規格番号
データブロック1:記号
組成
データブロック2:コードの文字位置1: 射出成形用
コードの文字位置2: 着色品
コードの文字位置3: 帯電防止処方
データブロック3:コードの文字位置1: ビカット軟化温度
コードの文字位置2: メルトボリュームフローレイト
コードの文字位置3: ノッチ付きシャルピー衝撃強さ
コードの文字位置4: 引張弾性率
呼び方:(熱可塑性プラスチック)JIS K 6934-1 (ISO 2580-1)-ABS 1P,MCZ,125-04-16-25