K 6750 : 1999
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS K 6750 : 1995は改正され,この規格に置き換えられる。
今回の改正では,国際規格に整合させるために,ISO 2520 : 1974, ISO 2521 : 1974及びISO 2522 : 1974
を基礎として用いた
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 6750 : 1999
りん酸トリクレシル (TCP) 試験方法
Testing methods for tricresyl phosphate
序文 この規格は,1974年に第1版として発行されたISO 2520, Tritoryl phosphate for industrial use−List of
method of test,1974年に第1版として発行されたISO 2521, Tritoryl phosphate for industrial use−Determination
of acidity to phenol red−Volumetric method及び1974年に第1版として発行されたISO 2522, Tritoryl
phosphate for industrial use−Determination of apparent free phenols content−Volumetric methodを元に,対応す
る試験方法については技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格であるが,対応国際規格には
規定されていない規定項目(加熱減量,塩化物検出試験,屈折率,凝固点,加熱後の着色及び体積固有抵
抗)を日本工業規格として追加した。
なお,点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にない事項である。
1. 適用範囲 この規格は,工業用りん酸トリクレシルの試験方法について規定する。
備考1. この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 2520 : 1974 Tritoryl phosphate for industrial use−List of method of test
ISO 2521 : 1974 Tritoryl phosphate for industrial use−Determination of acidity to phenol red−
Volumetric method
ISO 2522 : 1974 Tritoryl phosphate for industrial use−Determination of apparent free phenols
content−Volumetric method
参考 ISO 2520 : 1974, ISO 2521 : 1974及びISO 2521 : 1974では,当該品の化学名を“Tritoryl phosphate
(りん酸トリトリル)”と命名されているが,我が国では,“りん酸トリクレシル”が用いられ
ている。したがって,この規格では,“りん酸トリクレシル”を用いた。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 0061 化学製品の密度及び比重測定方法
JIS K 0068 化学製品の水分測定方法
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8102 エタノール (95) (試薬)
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8322 クロロホルム(試薬)
JIS K 8506 臭化カリウム(試薬)
JIS K 8530 臭素酸カリウム(試薬)
2
K 6750 : 1999
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS K 8550 硝酸銀(試薬)
JIS K 8576 水酸化ナトリウム(試薬)
JIS K 8637 チオ硫酸ナトリウム五水和物(試薬)
JIS K 8800 フェノールレッド(試薬)
JIS K 8913 よう化カリウム(試薬)
ISO 758 Liquid chemical products for industrial use−Determination of density at 20℃
ISO 760 Determination of water−Karl Fischer method (General method)
ISO 2211 Liquid chemical products−Measurement of colour in Hazen units (platinum-cobalt scale)
3. 試料採取方法 製品容器から採取し,試料でほぼ満杯になる程度の大きさで,清浄で,乾いたガラス
栓付きの暗い色の瓶に入れ保存する。この瓶の密閉が必要なときは,どのような方法の場合でも内容物の
汚染を防ぐための注意が必要である。
4. 試験方法
4.1
ハーゼン色番号(白金−コバルト等級)による色の測定 この試験方法は,ISO 2211による。
4.2
20℃における密度の測定 この試験方法は,JIS K 0061の4.2による。
参考 この項目の内容は,ISO 758の該当する項目と同等である。また,JIS K 0061の4.3に規定する
振動式密度計法が使われることがある。
4.3
水分の測定[カールフイッシャー法(一般法)] この試験方法は,JIS K 0068の4.による。
参考 この項目の内容は,ISO 760の当該する項目と同等である。
4.4
フェノールレッドによる酸分の測定(容量法)
4.4.1
原理 エタノール溶液中に存在する酸性物質をフェノールレッド指示薬のもとに水酸化ナトリウ
ム規定液で滴定する。
備考 終点はりん酸水素二ナトリウム (Na2HPO4) の形成に相当する。
4.4.2
試薬 蒸留水(JIS K 0557に規定するA3の水)又は同等の純度をもつ水。
a) エタノール (95) JIS K 8102に規定するもの。
b) 0.1mol/λ水酸化ナトリウム溶液 JIS K 8001の4.5(19.4)によって調製したもの。
c) フェノールレッドエタノール溶液 (0.2g/λ) JIS K 8800に規定するフェノールレッド0.05gにJIS K
8001の4.5(19.4)によって調製した0.05mol/λ水酸化ナトリウム溶液2.85mlを加え,更にJIS K 8102に
規定するエタノール (95) 5mlを加え,暖めて均一にする。次に,JIS K 8102に規定するエタノール (95)
を用いて調製したエタノール (20vol%) で250mlに希釈する。
4.4.3
測定方法
a) 試料量 三角フラスコ300mlに試料約100gを少なくとも0.5gまではかる。
b) 測定
1) 三角フラスコ200mlにエタノール (95) 50mlを入れ,フェノールレッド溶液0.5mlを加え,0.1mol/λ
水酸化ナトリウム溶液で中和する。
2) この溶液を試料が入っている三角フラスコに加え,よく混合した後,0.1mol/λ水酸化ナトリウム溶液
で終点まで滴定する。
4.4.4
結果の表現 酸分(りん酸の質量%)は,次の式によって算出する。
3
K 6750 : 1999
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
=
100
0049
.0
×
×
m
V
m
V
×
49
.0
ここに,
V: 0.1mol/λ水酸化ナトリウム溶液の滴定量 (ml)
0.004
9: 0.1mol/λ水酸化ナトリウム溶液1mlに相当するりん酸の質
量 (g)
m: 試料の質量 (g)
4.5
見掛けの遊離フェノール類含量の測定(容量法)
4.5.1
原理 試料中の遊離フェノール類を水酸化ナトリウム溶液で抽出する。次に,酸の存在下で臭化カ
リウム−臭素酸カリウム溶液でこれらのフェノール類を臭素化する。過剰の臭素をよう化カリウムと反応
させ,チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
備考 この方法は,ベンゼン核の2,4及び6の位置に反応するフェノール類だけ測定する。
4.5.2
試薬 蒸留水(JIS K 0557に規定するA3の水)又は同等の純度をもつ水。
a) クロロホルム JIS K 8322に規定するもの。
b) 塩酸 JIS K 8180に規定するもの。
c) 水酸化ナトリウム溶液 (25g/λ) JIS K 8576に規定する水酸化ナトリウム25gを水に溶かして1λとす
る。
d) よう化カリウム溶液 (100g/λ) JIS K 8913に規定するよう化カリウム100gを水に溶かして1λとする。
e) 臭化カリウム−臭素酸カリウム溶液 JIS K 8530に規定する臭素酸カリウム0.6g及びJIS K 8506に規
定する臭化カリウム3.0gを水に溶かし1λとする。
f)
0.02mol/λチオ硫酸ナトリウム溶液 JIS K 8001の4.5(21.2)に準じて調製する。
g) でんぷん溶液 (2.5g/λ) JIS K 8001の4.4の表8に準じて調製する。
4.5.3
器具
a) よう素フラスコ500ml
4.5.4
測定方法
a) 試料量 試料10gを少なくとも0.01gのけたまではかる。
b) 空試験 同時に同じ操作で空試験を行う。
c) 試験溶液の準備 メスフラスコ100mlに試料10gを0.01gのけたまではかり,水酸化ナトリウム溶液
50mlを加え,約3分間激しく振り混ぜ,水を標線まで加える。水層をウェットろ紙を使って透明にな
るまでろ過する。もし必要ならばもう一度ろ過する。
d) 測定 c)のろ液50mlをよう素フラスコにとり,臭化カリウム−臭素酸カリウム溶液20.0mlを加える。
次に,塩酸5mlを加えて酸性にし,速やかに栓をする。緩やかによう素フラスコを振り動かし,栓の
ところに水を満たし,15分間放置する。放置後注意して栓を開け,水をフラスコの中に流し入れ,よ
う化カリウム溶液10mlを加える。次に,栓及びフラスコ壁を水で洗い流した後よう素フラスコを振
り動かし溶液を均一にする(もし,白い沈殿物がある場合は,クロロホルム1mlを加える)。次いで,
チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し,終点近くになったら指示薬としてでんぷん溶液1mlを加え,よう
素でんぷんの青色が消えるまで滴定する。
4.5.5
結果の表現 見掛けの遊離フェノール類含量は,フェノールの質量%として表示し,次の式によっ
て算出する。
)
(
463
005
.0
100
)
(
10
3.
31
50
9
2
1
2
1
6
V
V
V
V
−
×
=
×
−
×
×
−
ここに,
V1: 空試験に要した0.02mol/λチオ硫酸ナトリウム溶液
4
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の滴定量 (ml)
V2: 本試験に要した0.02mol/λチオ硫酸ナトリウム溶液
の滴定量 (ml)
31.3×10−6: 0.02ml/λチオ硫酸ナトリウム溶液1mlに相当するフ
ェノールの質量 (g)
50
9: 試験溶液 (90ml) と滴定のために取った部分 (50ml)
との比率であり,試料の質量 (10g) で除したもので
ある。
4.6
加熱減量 試料約30gを平形はかり瓶(直径約60mm)2個にそれぞれ1mgのけたまではかりとり,
2個を同時に乾燥器(1)に入れて100〜105℃(2)で3時間加熱した後,乾燥器から取り出し,デシケーターの
中で常温になるまで放置し,それぞれの質量をはかり,次の式から減量の百分率を算出して平均値をとる。
ただし,2個の数値が著しく異なるときは再試験を行うものとする。
100
2
1
×
−
S
L
L
Ln=
ここに, Ln: 加熱減量 (%)
S: 試料の質量 (g)
L1: 乾燥前の質量 (g)
L2: 乾燥後の質量 (g)
注(1) 乾燥器は高さ約400mmの小形電熱乾燥器を用い,そのほぼ中央の棚のほぼ中央に150mm角の耐
熱板を置き,この上に試料を入れた平形はかり瓶を接して左右に並べ,なるべく中央に置く。
(2) 温度計の先端は,試料の液面と同じ高さに置く。
4.7
塩化物検出試験 試料約20mlを試験管に取り,これに硝酸銀アルコール溶液(3)を数滴加えて十分に
振り動かし,濁りが生じるかどうか調べる。
注(3) 硝酸銀アルコール溶液の作り方 JIS K 8550に規定する硝酸銀2gを水5mlに溶かし,JIS K 8102
に規定するエタノール (95) を加えて100mlとする。この溶液は,褐色瓶に保存する。
4.8
屈折率 屈折率は,アッベ屈折計を用いて25±0.2℃で測定する。
4.9
凝固点 試料約40gを内径30〜33mm,高さ約115mmの平底試験管に取り,温度計をコルク栓で試
験管の中央に取り付け,水銀球の上端が液面から3mm下にあるようにする。
次に図1に示すように,あらかじめ約−30℃に保った寒剤の中に,上端25mmを残して垂直に入れた内
径約50mm,高さ約115mmの底の平らな外管の底に敷いたコルク板の中央に試料を入れた試験管を置き,
外管とのすき間が4.5〜6.5mmになるように保って冷却する。試験管に取り付けた温度計の読みが−10℃
となってから2.5℃下がるごとに試験管を取り出して水平に傾け,液面が流動するかどうかを観察し,5秒
間以内に流動を認めれば更に冷やし続け,この操作を繰り返す。このようにして5秒間以上流動しなくな
ったときの温度計の読みを凝固点とする。
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図1 凝固点試験装置
4.10 加熱後の着色 丸底フラスコ100mlに試料約60mlを取り,これを約150±2℃に保った油浴の中で
フラスコを振り動かしながら,1時間加熱する。その後,試料を取り出して室温に冷やし,4.1に準じて(た
だし,ガラス管の中の液の高さを約120mmとする。)試料のハーゼン色数を測定する。
4.11 体積固有抵抗
4.11.1 装置 装置には,原則として次の器具を用いる。体積固有抵抗試験回数は,図2に示すようなもの
とする。
図2 体積固有抵抗試験回路(直偏法の例)
この試験回路においては,検流計,分流器又は接続線などを適当に遮へいし,かつ,この漏えい抵抗を
高くする。また,試料に電圧を印加しない状態では,検流計が分流器目盛のいずれの位置においても振れ
を生じないよう安定に保つ必要がある。
直流検流計 (G) 反照形検流計で電流感度10〜100pA/mm (10−11〜10−10A/mm) 程度のもの。
分流器 (S) 直流検流計の感度を調節するために分流器を用いる。
標準抵抗 (RS) 抵抗値0.01〜1GΩ (107〜109Ω) のもの。
直流電源 電圧300〜500Vの蓄電池,乾電池又は電圧安定装置を備えた交流整流電源でもよい。
電極 測定用電極は,黄銅製同心筒形の構造で,保護電極を備え,電極間げきは1〜2mm,これを空
にしたときの静電容量は50pF程度のものとする。この電極の例を図3に示す。
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備考 この電極は黄銅製で,外部電極は内径32mm,内部電極は外径
30mm,高さ60mmの同筒で,内部電極の上下に保護電極を取り付
ける。
電極間げきは1mm,空の静電容量は約50pF,したがって,電極
定数は約550cmである。高圧及び低圧両電極は常時組み立てられて
おり,使用に当たっては試料をガラス容器に入れ,電極とともに十
分に洗浄した後,電極を差し入れ,そのまま恒温油槽で指定温度に
調節して使用する。
温度は恒温槽の温度による。試料はガラス容器に入れるから電極
は分解する必要はないが,特に水分又はじんあいのある試料を測定
した後は,分解して清掃する方がよい。この場合,電極各部にはノ
ックピンを入れて分解して,元の位置に組み立て得るようにしてあ
る。
図3 電極
4.11.2 試料の準備 試料の適量をガラス容器(図3)に入れ,これに電極を差し入れ,静かに上下し又は
回転して洗浄した後,この試料を捨てる。更に同様に試料を取ってこれを試験用とする。電極が甚だしく
汚れている場合はベンジンで洗浄し,よく乾燥し,更に上記の操作を繰り返して行う。
4.11.3 操作 試料を入れた電極を恒温槽に浸し,この液面から電極が20mm程度出るように支持し,液槽
の温度を30±1℃に約1時間保持してから試験を始める。
図2の試験回路において分流器Sの目盛を感度最低の位置に置き,スイッチKを閉じて試料に印加する。
次いで,検流計 (G) が適当な振れ20〜200mmを示すように分流器目盛を調節し,電圧印加後,1分間後
の振れを記録する。この場合,検流計の周期に注意しながら誤差なく振れを測定しなければならない。次
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に,試料の代わりに標準抵抗を接続し,前と同じ測定を行う。いま,試料測定時の分流器の分流比を1/Mx,
検流計の振れをDx,標準抵抗測定時の分流比及び振れをそれぞれ1/Ms及びDsとすれば
X
S
X
S
s
D
D
M
M
R
C
R =
π
6.3
ここに,
R: 体積固有抵抗 (Ω・cm)
3・6π: 定数 PF
cm
C: 電極を空にした場合の静電容量 (pF)
RS: 標準抵抗 (Ω)
X
M
1
: 試料測定時の分流器の分流比
Dx: 試料測定時の検流計の振れ (cm)
S
M
1
: 標準抵抗測定時の分流器の分流比
Ds: 標準抵抗測定時の検流計の振れ (cm)
8
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可塑剤原案作成委員会・分科会 構成表
氏名
所属
委員会
分科会
(委員長)
荒 木 峻
東京都立大学名誉教授
◎
増 田 優
通商産業省基礎産業局
○
大 嶋 清 治
工業技術院標準部
○
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
○
○
神 代 啓
社団法人日本化学工業協会
○
田 村 正 勝
日本プラスチック工業連盟
○
○
鹿 島 武
日本ビニル工業会
○
○
児 島 健 志
チッソ株式会社有機化学品事業部
○
◎
三 浦 恒 司
協和油化株式会社環境保安部
○
○
森 武 春 男
三菱化学株式会社化成品カンパニー化成
品第1事業部
○
○
柳 澤 邦 夫
積水化学工業株式会社化学品事業本部
○
○
山 中 宏
大八化学工業株式会社
○
◎
矢ヶ部 正
アクゾ・ノーベル株式会社フォスフォラス
ケミカル部
○
○
大 槻 謙 治
可塑剤工業会
○
○
(事務局)
三 須 武
社団法人日本化学工業協会
○
◎ 委員長,分科会主査を示す。
○ 委員会,分科会委員を示す。
文責 山 中 宏