K 6560:2020
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 原理······························································································································· 2
5 器具,装置及び試薬 ·········································································································· 2
6 試験片及び複合試験片の調製 ······························································································ 3
7 試験手順························································································································· 4
8 判定······························································································································· 4
9 試験報告書 ······················································································································ 4
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································· 6
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本皮革産業連合会(JLIA)
及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出
があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
K 6560:2020
革試験方法−染色堅ろう度試験−
汗に対する染色堅ろう度試験
Leather-Tests for colour fastness-Colour fastness to perspiration
序文
この規格は,2012年に第2版として発行されたISO 11641を基とし,国内の実情を反映させるため,技
術的内容を変更して作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,革の汗に対する染色堅ろう度の試験方法について規定する。
なお,この規格は,全ての種類の革に適用可能である。特に,汗に接触する頻度が高い革,例えば,手
袋用革,衣料用革,靴裏革及び裏地を付けない靴甲革に対して適用可能である。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 11641:2012,Leather−Tests for colour fastness−Colour fastness to perspiration(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 6556-1 革試験方法−試料採取及び調製−第1部:試料採取部位
注記 対応国際規格:ISO 2418,Leather−Chemical, physical and mechanical and fastness tests−
Sampling location
JIS K 6556-2 革試験方法−試料採取及び調製−第2部:試料調製及び状態調節
JIS L 0801 染色堅ろう度試験方法通則
注記 対応国際規格:ISO 105-A01,Textiles−Tests for colour fastness−Part A01: General principles of
testing
JIS L 0803 染色堅ろう度試験用添付白布
JIS L 0804 変退色用グレースケール
注記 対応国際規格:ISO 105-A02,Textiles−Tests for colour fastness−Part A02: Grey scale for
assessing change in colour
JIS L 0805 汚染用グレースケール
2
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注記 対応国際規格:ISO 105-A03,Textiles−Tests for colour fastness−Part A03: Grey scale for
assessing staining
JIS L 0809 計器による変退色及び汚染の判定方法
JIS L 0848 汗に対する染色堅ろう度試験方法
注記 対応国際規格:ISO 105-E04,Textiles−Tests for colour fastness−Part E04: Colour fastness to
perspiration
JIS R 6252 研磨紙
3
用語及び定義
この規格で使用する主な用語及び定義は,JIS K 6556-1及びJIS L 0801による。
4
原理
試験片と添付白布とで調製した複合試験片を,人工汗液に浸し,汗試験機で規定時間加圧した後,複合
試験片を汗試験機から取り出し乾燥する。乾燥した試験片の変退色の程度を変退色用グレースケールと,
添付白布の汚染の程度を汚染用グレースケールとそれぞれ比較して判定する。
一般的な染色堅ろう度の原理は,素材が革であることを考慮したうえで,JIS L 0801の規定を参照する。
5
器具,装置及び試薬
5.1
汗試験機 JIS L 0848に規定する汗試験機。
5.2
定温乾燥機 37 ℃±2 ℃に維持できるもの。
5.3
添付白布 JIS L 0803に規定するもの。
5.4
イオン交換水 イオン交換水又はこれと同等のもの。
5.5
アルカリ性人工汗液 アルカリ性人工汗液は,次のいずれかによる。
a) JIS L 0848の6.2(アルカリ性人工汗液)に規定するもの。
b) 塩化ナトリウム5.0 g,トリスヒドロキシメチルアミノメタン5.0 g,尿素0.5 g及びニトリロ三酢酸0.5
gにイオン交換水を加え,更に2 mol/L塩酸及びイオン交換水を加えて,pH計(5.12)を用いて,pH
が8.0で全容が約1 Lになるようにする。
警告 アルカリ性人工汗液は,口に吸い込んではならない。口でピペットを操作しない。
注記 アルカリ性人工汗液の組成は,a)とb)とでは異なる。b)に規定するアルカリ性人工汗液は,pH
の変化がなく数週間保存が可能である。しかし,a)に規定するアルカリ性人工汗液は,pHの安
定性が低く,できるだけ試験直前に新しく調製した試験溶液を使用し,必要であれば冷暗所に
保存する。革の染色堅ろう度に対して影響する最も重要な因子はpHであって,その組成では
ないことが示されているので,どちらを使用しても同じ結果を得ることができる。
5.6
酸性人工汗液 必要があれば,次の組成のものを使用する。L−ヒスチジン塩酸塩一水和物0.5 g,
塩化ナトリウム5.0 g,りん酸二水素ナトリウム・二水和物2.2 g,0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液約15 mL
とイオン交換水を加えて,pH計(5.12)を用いて,pHが5.5±0.2で全容が約1 Lになるようにする。
注記1 革の染色は,酸性条件下で固着されているので,酸性汗に対する染色堅ろう度は,アルカリ
性汗に対する染色堅ろう度に比較して重要性ははるかに低い。しかし,酸性人工汗液は,し
ばしば他の試験方法で使用されているため,ここに含めた。例えば,ISO 17072-1における
重金属のように,革から物質を抽出するために使用される。
3
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注記2 ヒスチジンは,人工汗液中では,幾らか不安定であるので,できるだけ試験直前に新しく調
製した試験液を使用し,必要があれば冷暗所に保存する。
5.7
研磨紙 JIS R 6252に規定するP 180のもの。
5.8
汚染用グレースケール JIS L 0805に規定するもの。
5.9
変退色用グレースケール JIS L 0804に規定するもの。
5.10 変退色及び汚染を判定するための測色計 JIS L 0809の4.a)(測色計)に規定するもの。
5.11
真空排気の容器 例えば,真空デシケータ。
5.12 真空ポンプ 真空排気の容器(5.10)を真空排気できるポンプで,4分間以内に5 kPaまで減圧でき
るもの。
5.13 pH計 ガラス電極を装備し,測定範囲が0〜14,目盛が0.01間隔のもの。一連の測定を行う前に,
pH標準液(5.15)を用いて,pH計をその取扱説明書に従って,ガラス電極を校正する。
5.14 ビーカー 適切な容量のもの。
5.15 水酸化ナトリウム溶液 0.1 mol/L
5.16 pH標準液 ガラス電極の校正用に用いるもので,市販のpH標準液を購入することを推奨する。pH
標準液の保存期間は,組成及び使用方法によって異なる。このため,pH標準液の精度管理が不可欠である。
また,使用済みのpH標準液は,廃棄しなければならない。
5.17 塩酸 2 mol/L
5.18 抜型 100 mm×40 mmのサイズの試験片を,1回の操作で採取することが可能なもので,JIS K
6556-2の箇条4(抜型のデザイン)に規定するもの。
6
試験片及び複合試験片の調製
6.1
試験片の調製
6.1.1
JIS K 6556-1に規定する方法で試験片を採取する。
6.1.2
表面を塗装などの仕上げした革は,そのままの状態,又は仕上げ面を研磨した状態でも試験するこ
とができる。一般的には,そのままの状態で試験するが,革の使用による摩耗を模した状態で試験をする
場合は,仕上げ面を研磨した状態で試験する。試験片は,次のいずれかによる。
なお,アルカリ性汗及び酸性汗の両者を試験する場合は,それぞれ別の試験片が必要となる。
a) 仕上げした革を,仕上げ面を研磨した状態で試験する場合は,試験試料を次のように準備する。革か
ら,約120 mm×50 mmの試料を切り取って,仕上げ面を下向きにして,作業台の上に平らにして置
いた約150 mm×200 mmの研磨紙(5.6)のシート上に置く。試料の上に約9.8 Nの力を均一にかけ,
試料を研磨紙の上で約100 mmの間で10回往復する。試料の研磨面をブラッシングし,くず(屑)を
全て取り除き,研磨面に抜型(5.16)を置き,100 mm×40 mmの試験片を採取する。仕上げ面を研磨
して試験した場合は,試験報告書に記載する必要がある。
注記 習熟すれば,研磨紙を手に握って実施することも可能である。
b) 仕上げをしていない場合,又は仕上げしているが,そのままの状態で試験する場合は,100 mm×40 mm
の試験片を切り取り,試験片の表面のくず(屑)を全て取り除く。表面を塗装した家具用革を試験す
る場合は,革の端の繊維が水に接触して生じる汚れによる影響を排除するために,大きな試験片,例
えば,110 mm×50 mmの試験片を使用する。
4
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6.2
複合試験片の調製
複合試験片の調製は,JIS L 0801の6.2.2(2枚の単一繊維布を使用する複合試験片)のa)(試験片が布
の場合)によって,100 mm×40 mmの大きさの試験片を,100 mm×38 mmの大きさの添付白布2枚の間に
挟むか,又は添付白布と同じ大きさの多繊交織布1枚に隣り合わせ,短片の一つに沿って縫い合わせて複
合試験片とする。このとき,添付白布は,試験片の両側の長辺に約1 mmの隙間ができるように,試験片
の中心に置く。
なお,多繊交織布を使用しないときは,60 mm×60 mmの大きさの試験片を使用してもよい。
7
試験手順
7.1
別々のビーカー(5.13)容器に入れた人工汗液(5.5)中に複合試験片を入れ,曲がったガラス棒な
どで押さえる。複数の試験片を試験する場合,人工汗液を繰り返して使用してはならない。真空排気の容
器(5.10)に入れて,真空ポンプで4分間以内に5 kPaまで減圧し,この減圧状態を2分間保持した後に,
通常の圧力に戻す。更にこの手順を2回,計3回繰り返す。複合試験片を取り出し,余分な試験液を流し
出し,複合試験片を2本のガラス棒の間に挟んで余分の試験液がしたたり落ちない程度までしごきとる。
複合試験片をガラス板又は硬質プラスチック板2枚の間に挟む。
7.2
おもりを使用する場合は,事前におもりを37 ℃±2 ℃の乾燥機(5.2)で少なくとも1時間温めて
おく。2枚のプレートに挟まれた複合試験片を,汗試験機(5.1)に置き,力をかける。この場合,100 mm
×40 mmの試験片には約50 Nの力をかけ,60 mm×60 mmの試験片には約45 Nの力をかける。過剰な人
工汗液が排出されるように,汗試験機を両側に数秒間ずつ約30°傾ける(複数の複合試験片を同時に試験
する場合,力が均等にかかるようにそれぞれを2枚のプレート間の中心部分に配置するように注意する。)。
力のかかった汗試験機を定温乾燥機に入れ,37 ℃±2 ℃で180分±60分静置する。
7.3
180分±10分後に力を取り除き,汗試験機から複合試験片を取り出し,JIS L 0848の図2(乾燥方法)
に規定するように,縫い合わせた一つの短辺をほどく。その後,試験片と添付白布とが縫い留めた点でだ
け接触した状態でつるし,室温で乾燥する。
7.4
表面に塗装仕上げした家具用革を試験する場合は,7.1の手順をとらず,添付白布だけを人工汗液に
浸す。この場合,試験片については,人工汗液で表面を濡らすが,人工汗液中に浸してはならない。添付
白布(5.3)をガラス板,又は硬質プラスチック板上に置き,その上に試験面を下向きにして試験片を覆う。
この複合試験片を2枚目のガラス板,又は硬質プラスチック板で覆う。このとき,試験片と添付白布との
間に気泡が入らないようにする。7.2の操作を行った後,180分後に圧力を取り除き,汗試験機から試験片
及び添付白布を取り出し,室温で乾燥する。
8
判定
試験片の変退色及び添付白布の汚染の判定は,JIS L 0801の箇条10(染色堅ろう度の判定)による。革
と白布とを固定した周辺,及び切断面から染み出た汚染については,評価を行わない。
9
試験報告書
試験報告書には,次の事項を記載する。
a) この規格の規格番号
b) 試料を識別するための詳細情報及び試料採取に関するJIS K 6556-1との相違点
c) 試験した面の説明,家具用革を試験した場合はその記載
5
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d) 試験片の仕上げ面を研磨した場合は,その記載
e) 使用した汗液の種類
f)
判定方法(計器法で判定した場合だけ,“計器法”と記載する。)
g) 試験片における変退色の等級,及び添付白布の汚染について,繊維の種類ごとの等級の結果[JIS L
0801の箇条11(試験報告書)に規定する方法による。]
例 (アルカリ性) 変退色3級,汚染3-4級(綿),3級(毛)
(アルカリ性) 変退色4級,汚染2-3級(綿),3級(毛)(計器法)
h) この規格で規定した方法との相違点
参考文献 ISO 17072-1,Leather−Chemical determination of metal content−Part 1: Extractable metals
6
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附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS K 6560:2020 革試験方法−染色堅ろう度試験−汗に対する染色堅ろう度試
験
ISO 11641:2012,Leather−Tests for colour fastness−Colour fastness to perspiration
(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
3 用語及び
定義
−
−
追加
JISでは用語及び定義を追加した。 実質的な差異はない。
5 器具,装
置及び試薬
5.1 汗試験機
4.1
JISとほぼ同じ。
変更
JISではJIS L 0848の記載を採用し
た。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
5.3 添付白布
4.3
JISとほぼ同じ。
変更
JISではJIS L 0803を引用した。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
5.4 イオン交換水
4.4
脱イオン水
変更
ISO規格ではISO 3696グレード3
であるが,JISではイオン交換水と
した。
実質的な差異はない。
5.5 アルカリ性人工
汗液
4.5
JISと成分が異なる。
追加
JISではJIS L 0848で規定する汗液
についても引用した。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
5.7 研磨紙
4.7
JISとほぼ同じ。
変更
JISではJIS R 6252を引用した。
実質的な差異はない。
5.10 変退色及び汚
染を判定するため
の測色計
4.10
JISとほぼ同じ。
変更
JISではJIS L 0809を引用した。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
5.13 pH計
4.13
pH計
追加
JISではpH計の仕様を記載した。
実質的な差異はない。
5.14 ビーカー
−
−
追加
JISではビーカーを追加した。
容器を記載しただけで,実質的な
差異はない。
−
4.14
全量フラスコ
削除
本文中で使用していないことから,
JISでは削除した。
実質的な差異はない。
5.16 pH標準液
−
−
追加
JISではpH標準液を追加した。
実質的な差異はない。
5.18 抜型
−
−
追加
JISでは抜型を追加した。
実質的な差異はない。
2
K
6
5
6
0
:
2
0
2
0
7
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(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
6 試験片及
び複合試験
片の調製
6.1.2
5
追加
JISでは試験の内容を分かりやすく
するために説明を記載した。
実質的な差異はない。
6.2 複合試験片の調
製
5
変更
追加
試験片の調製と複合試験片の調製
とに記載を分けた。複合試験片の調
製はJIS L 0801を引用した。JISで
は,多繊交織布を使用しないとき
は,60 mm×60 mmの大きさのもの
を使用してもよいことにした。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
7 試験手順 7.1
6.1
−
追加
JISでは試験方法の詳細について記
載した。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
7.2
6.2
−
追加
JISでは60 mm×60 mmの試験片を
使用する場合について加える力を
記載した。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
7.4
6.1
−
追加
JISでは注意事項及び汗試験機から
取り出し後の操作について記載し
た。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
8 判定
−
7
判定
変更
JISでは判定及び精度をまとめて記
載した。
実質的な差異はない。
8
精度
7
判定
追加
JISでは判定の際の注意事項を記載
した。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
9 試験報告
書
f)
−
−
追加
JISでは判定方法について記載する
こととした。
我が国の試験事情による。実質的
な差異はない。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 11641:2012,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
K
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5
6
0
:
2
0
2
0