2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 6504-1976
植物タンニンエキスの分析方法
Analytical Method for Vegetable Tannin Extracts
1. 適用範囲 この規格は,皮をなめすのに用いる塊状,粉末状及び液状の植物タンニンエキスの分析方
法について規定する。
備考 この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,国際単位系 (SI) によるものであっ
て,参考として併記したものである。
引用規格:5ページに示す。
2. 分析条件
2.1
温度及び湿度 分析は,温度20±5℃,相対湿度65±10%の室内で行う。ただし,恒温,恒湿の設
備のない場合は,常温,常湿の状態で分析してもよい。この場合は,分析時の温度及び湿度を付記する。
2.2
時間 分析は下記例の要領で行い,試料液の調製から分析終了まで,4日以上にわたってはならない。
第1日
試料溶液の調製及び皮粉のクロム処理
第2日
湿潤皮粉の調製,全固形分,可溶性固形分,非タンニン分の測定液の粗乾燥及び色,
pHの測定まで。
第3日
乾燥及びひょう量
3. 装置,器具及び薬品
3.1
装置
3.1.1
乾燥器 恒温装置付で100±2℃に保つことができるものを用いる。
3.1.2
回転振とう機 300mlの振とうびんをその側面と軸の中心との距離が5〜8cmになるように取り付
けられるようになっているもので,回転速度は1分間当たり60±2回転であること。
2
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図 振とう機側面図
3.2
器具
3.2.1
メスフラスコ JIS R 3505(ガラス製化学用体積計)の1000mlのものを用いる。
3.2.2
ピペット JIS R 3505の全量ピペット50ml及び100mlのものを用いる。
3.2.3
振とうびん 内容300mlで密せんできるガラスびんを用いる。
3.2.4
漏斗 JIS R 3503(化学分析用ガラス器具)の外径120mmのものを用いる。
3.2.5
平底蒸発ざら 硬質ガラス製,外径約70mm,高さ約30mmでその切口をまるくし,特に底は平ら
なものを用いる。
3.2.6
布 さらしてない綿布(1)を用いる。
注(1) 糸の太さ20番 (30tex) で,幅2.54cm間に縦・横総本数136本のもの,又はこれに類似のもの。
3.2.7
ろ紙 JIS P 3801〔ろ紙(化学分析用)〕の5種B径18.5cmのものを用いる。
3.2.8
デシケーター JIS R 3503の内径210mmのもの。乾燥剤として塩化カルシウム又はシリカゲル(2)
を用いる。
注(2) 常に乾燥したものを用いる。それには塩化コバルトで着色したものを用いると便利である。
3.3
薬品
3.3.1
蒸留水 pH5.5〜7.0で,その100mlを蒸発・乾燥し,ひょう量したとき,固形分が0.5mg以下のも
のを用いる。
3.3.2
カオリン 微粉末状で,その1gを100mlの蒸留水 (3.3.1) に分散させたとき,液のpHが4.0〜6.0
であること。また,その1gを100mlの蒸留水 (3.3.1) に分散させ,10分後ろ紙 (3.2.7) でろ過し,ろ液50ml
を蒸発・乾燥・ひょう量したとき,固形分が1mg以下であるものを用いる。
3.3.3
3%クロムみょうばん溶液 JIS K 8310〔硫酸クロムカリウム(試薬)〕の特級3gを100mlの蒸留
水に室温で溶かす。ただし,調製してから1箇月以内に使用する。
3.3.4
皮粉 白色又は淡黄色の繊維状粉末,灰分0.3%以下であって,その7gをN/10塩化カリウム (KCl)
溶液100mlで振り混ぜ,液のpHを測定したとき5.0〜5.5であり,また非タンニン分定量 (5.3.1) の際の空
試験で,4mg以上の固形分を残さないものを用いる。
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参考 皮粉は,次の機関で品質の証明が得られる。
日本皮革技術協会皮粉委員会
4. 試料溶液の作り方 塊状及び粉末状の場合は試料を清浄なつや紙上に広げ,水分の蒸発をできるだけ
防ぐように注意しながら,大きな塊は砕き(3),手早く混合して四分法により約50gを採る。これを磁製乳
ばちで粉砕して,茶かっ色びんに密封して貯蔵する。
液状の場合は,試料をよくかき混ぜてから約50gを採り,茶かっ色びんに密封して貯蔵する。
分析するときの試料溶液の濃度が,できるだけ純タンニン分として1000ml当たり4gとなるように,純
タンニン分相当量4gの試料をはかりびんで0.1mgまで正確に量り取る。もし分析の結果,純タンニン分
が1000ml当たり3.75〜4.25gの範囲内になかったときは繰り返して行う。これをビーカー500mlに移し,
更に90±20Cの蒸留水ではかりびん中に残った試料をビーカー中に洗い落とす。液量を約300mlとし,90
±2℃の水浴上でよくかき混ぜて溶かす。この溶液をメスフラスコ (3.2.1) に移し,90±2℃の蒸留水で全
量を約1000mlとする。これを15〜25℃の場所に1夜静置する。翌朝20℃の水中にこのメスフラスコを浸
し,静かに揺り動かしながら20〜22℃の蒸留水を加えて正確に1000mlとし,これを試料溶液とする。
備考 発酵しやすい試料溶液(ミラボラン,デビイデビイなど)には,溶液に約40%ホルマリン1ml
を加える。また,かびの発生防止には,トルエンを2〜3滴加えると効果がある。
注(3) 鉄製品を使用してはならない。
5. 試験方法
5.1
全固形分及び水分
5.1.1
全固形分 よく混合した試料溶液50mlをピペット (3.2.2) で蒸発ざら (3.2.5) に正確に採り,水浴
上で蒸発し,ほとんど液が流動しなくなってから乾燥器 (3.1.1) に入れ,100±2℃で5時間乾燥し,デシ
ケーター (3.2.8) 中で20分間冷却し,0.1mgまで量る(4)。更に1時間乾燥し,冷却・ひょう量を行い,恒
量となる(5)まで繰り返す。全固形分を次の式により算出する。
100
20×
×
S
W
TS=
ここに
TS: 全固形分 (%)
W: 固形量 (g)
S: 試料の重量 (g)
注(4) デシケーターには蒸発ざら3個を入れる。
(5) 2回のひょう量の差が1mg以下になったときをもって恒量とする。
5.1.2
水分 水分を次の式により算出する。
M=100−TS
ここに
M: 水分 (%)
TS: 全固形分 (%)
5.2
可溶性固形分及び不溶性固形分
5.2.1
可溶性固形分 カオリン (3.3.2) 1gを入れたビーカー200mlに試料溶液約5mlを加えてよくかき混
ぜ,均一な乳状とする。これに試料溶液100mlを加え,良くかき混ぜる。この液を漏斗 (3.2.4) 上に置い
たひだ付ろ紙 (3.2.7) でろ過する。ろ液が約40ml出たとき,そのろ液をろ紙上にもどす。この操作を1時
間繰り返す。
1時間後ろ紙上に残った液をサイホンにより静かに取り除き捨てる。新たに試料溶液100mlをろ紙上の
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カオリンをできるだけ壊さないようにろ紙上に入れる。最初のろ液20mlを捨て,ろ液の受器を乾燥した
フラスコに取り替え,次のろ液50mlをピペットで蒸発ざらに採り(6),5.1.1の要領で,蒸発・乾燥・ひょ
う量する(5)。可溶性固形分を次の式により算出する。
100
20×
×
S
W
SS=
ここに
SS: 可溶性固形分 (%)
W: 固形量 (g)
S: 試料の質量 (g)
注(6) これらの操作中は,できるだけ蒸発を防ぐために,容器類は時計ざらなどでふたをしておくこ
と。
5.2.2
可溶性固形分 不溶性固形分を次の式により算出する。
I=TS−SS
ここに
I: 不溶性固形分 (%)
TS: 全固形分 (%)
SS: 可溶性固形分 (%)
5.3
非タンニン分及びタンニン分
5.3.1
非タンニン分 非タンニン分の求め方は,次のとおりとする。
(1) 湿潤皮粉の調製 定量用(7),空試験用(8),水分定量用及び機械的損失を含めた乾燥皮粉(9)の所要量を
次の式により算出し,この量 (W) に相当する風乾皮粉を量り採る。
W=6.3× (n+1) +10
ここに
W: 乾燥皮粉の所要量 (g)
n: 試験回数
これに風乾皮粉の10倍量の20℃の蒸留水を加え,よくかき混ぜた後30分間放置する。この間3〜4
回かき混ぜ,次に3%クロムみょうばん溶液 (3.3.3) を風乾皮粉1gにつき1mlの割合で加えて,よく
混ぜ合わせる。これを2時間にわたり時々かき混ぜた後,ふたをして15〜25℃の所に1夜放置する。
翌朝漏斗上に広げた布 (3.2.6) の上に全部を空け,水分が約75%となるように軽く絞る。布ごとビー
カーにもどし,風乾皮粉の15倍の蒸留水を加えてよくかき混ぜ,15分間放置し,この間時々かき混
ぜ,再び軽く絞る。この操作を4回繰り返して行い,最後に水分が72.5±1.5%となるように絞り,こ
れを湿潤皮粉とする。
注(7) 1回の定量に要する乾燥皮粉は6.3gである。
(8) 3.3.4にある空試験に該当し,乾燥皮粉6.3gが必要である。
(9) 風乾皮粉をはかりびんに正確にはかり採り,乾燥器中で17±2時間,100±2℃で乾燥,ひょう
量して水分を求め,乾燥量に換算して乾燥皮粉量とする。
(2) 操作 試料溶液100mlをピペットで振とうびん (3.2.3) に採り,5.3.1(1)により調製した湿潤皮粉の
22.9g(乾燥皮粉量で6.3g相当)を速やかに投入し,直ちにせんをして振とう機 (3.1.2) に取り付け,
正確に10分間,毎分60±2回の速度で回転する。次に内容物を漏斗上に置いた乾いた布 (3.2.6) の上
に空け,皮粉を軽く絞り,出た液をビーカーに集める。皮粉と試料溶液の接触時間は15分以内とする。
この液にカオリン1gを加えてよくかき混ぜ,均一に乳状とし,ひだ付ろ紙を用いてろ過する。ろ液が
約40ml出たとき,そのろ液をろ紙上にもどし,透明となるまで繰り返しろ過する。透明となった液
50mlをピペットで蒸発ざらに採り(6),5.1.1の要領で,蒸発・乾燥・ひょう量する。
非タンニン分を次の式により算出する。
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K 6504-1976
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
100
20×
×
×
S
F
W
N=
ここに
N: 非タンニン分 (%)
W: 固形量 (g)
S: 試料の質量 (g)
F:
100
)g(
g
9.
22
100
中の含水量
湿潤皮粉
+
(10)
S: 資料の質量 (g)
注(10) 湿潤皮粉は,調製後3〜5gをはかりびんに正確にはかり採り,乾燥器で17±2時間,100±2℃で
乾燥ひょう量して水分を求める。
5.3.2
タンニン分 タンニン分を次の式により算出する。
T=SS−N
ここに
T: タンニン分 (%)
SS: 可溶性固形分 (%)
N: 非タンニン分 (%)
6. 色 可溶性固形分測定時のろ液の一部をロビボンド比色計の1cmセルで測定し,次の式により試料溶
液1l当たり5gのタンニン分濃度に補正する。
T
CD
C
5
×
=
ここに
C: 色度
CD: 比色計による測定値
T: 試料溶液1l中のタンニン量 (g)
7. pH 試料溶液を用い,JIS Z 8802(pH測定方法)のガラス電極によるpH測定方法でpHを測定する。
8. 報告 各分析結果の値は,色は小数点以下1けたまで,その他は小数点以下2けたまで求め,JIS Z 8401
(数値の丸め方)により小数点以下1けたに丸め,次の順序で報告する。
(1) 水分
(2) 全固形分
(3) 可溶性固形分
(4) 不溶性固形分
(5) 非タンニン分
(6) タンニン分
(7) 色
(8) pH
引用規格:
JIS K 8310 硫酸クロムカリウム(クロムみょうばん)(試薬)
JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS R 3505 ガラス製化学用体積計
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K 6504-1976
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8802 pH測定方法
高分子部会 植物タンニンエキス分析方法専門委員会 構成表(昭和39年7月1日制定のとき)
氏名
所属
(委員会)
井 上 吉 之
東京農工大学
仏 木 敏 行
日本皮革株式会社
池 田 敬 二
山陽皮革株式会社
内 富 実
明治製革株式会社
三 好 富士彦
大阪帯革製造所
山 口 寿 男
新田帯革株式会仕
増 井 諟 司
東京皮革株式会社
井 上 統 五
宝皮革株式会社
相 沢 孝 亮
森本産業株式会社
篠 正 一
川村商店
山 崎 金五郎
川真田化学工業株式会社
服 部 裕
兵庫県皮革工業指導所
飯 塚 義 富
近畿大学
中 城 真
和歌山県工業試験所
菅 野 英二郎
工業技術院東京工業試験所
小 幡 八 郎
工業技術院標準部繊維化学規格課
(事務局)
山 脇 政 次
工業技術院標準部繊維化学規格課
安 達 孝 明
工業技術院標準部繊維化学規格課
(事務局)
青 木 誠 治
工業技術院標準部繊維化学規格課(昭和51年3月1日改正のとき)
石 川 哲之介
工業技術院標準部繊維化学規格課(昭和51年3月1日改正のとき)