K 6404-10 : 1999
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
今回の制定は,JIS K 6328 の該当部分を国際規格に整合させるために,ISO 7229 : 1997 Rubber-or plastics
coated fabrics-Measurement of gas permeability
を,基礎として用いた。
JIS K 6404
は一般名称を“ゴム引布・プラスチック引布試験方法”として次の各部によって構成する。
第 1 部:試験及び状態調節の標準雰囲気
第 2 部:ロールの特性値の測定方法
−第 1 節: 長さ,幅及び質量の測定
−第 2 節: 引布の単位面積当たりの総質量並びにコーティング材及び基布の単位面積当た
りの質量の測定
−第 3 節: 厚さの測定
第 3 部:引張試験
第 4 部:引裂試験
第 5 部:接着試験
第 6 部:もみ試験
第 7 部:防水試験
第 8 部:はっ水試験
第 9 部:水浸試験
第 10 部:ガス透過性の測定方法
第 11 部:破裂強さ試験
第 12 部:促進老化試験
第 13 部:低温曲げ試験
第 14 部:ブロッキング試験
第 15 部:透湿試験
第 16 部:染色摩擦堅ろう度試験
第 17 部:耐光試験
第 18 部:耐候試験
第 19 部:オゾン劣化試験
第 20 部:低温ねじり試験
第 21 部:耐炎試験
第 22 部:耐摩耗試験
日本工業規格
JIS
K
6404-10
: 1999
ゴム引布・プラスチック
引布試験方法−
第 10 部:ガス透過性の測定方法
Tesfing methods for rubber-or plasfics-coated fabrics
−
Part10 : Measurement of gas permeability
序文 この規格は,1997 年に第 1 版として発行された ISO 7229, Rubber−or plastics-coated fabrics−
Measurement of gas permeability
を基に,対応する部分については,技術的内容を変更することなく作成し
た日本工業規格であるが,対応国際規格には規定されていない規定内容(試験方法 B)を日本工業規格と
して追加した。
なお,この規格で点線の下線を施してあるところは,対応国際規格にはない事項である。
警告 この規格の使用者は,通常の試験室業務に習熟しているべきである。この規格は,その使用に関連
したすべての安全問題を処理することを意図したものではない。適切な安全と保健実務を確立し,国のい
かなる規制条件も確実に遵守することは,使用者の責任である。
1.
適用範囲
1.1
この規格は,ゴム引布又はプラスチック引布を通じたガス透過,すなわち透過率としての特性を測
定する方法について規定する。
特に試験方法 A に適用できるのは
− 予想される透過率が 3dm
3
/ (d
・m
2
)
(1 日・1 平方メートル当たりの立方デシメートル)未満である場
合。
− 特別な温度又は圧力条件が必要な場合。
− 測定に際して,純ガスであろうが,混合ガスであろうが,特別なガスを用いることが必要とされる場
合。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 7229 : 1997
Rubber-or plastics-coated fabrics Measurement of gas permeability
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発効年(又は発行年)を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの
規格の規定を構成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年(又は発行年)を付
記していない引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
2
K 6404-10 : 1999
JIS B 2401 : 1991
O リング
JIS K 6404-2 : 1999
ゴム引布・プラスチック引布試験方法−第 2 部:ロールの特性値の測定方法
備考 ISO 2286 1986, Rubber-or plastics-coated fabrics−Determination of roll characteristics からの引用
事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS K 6404-1 : 1999
ゴム引布・プラスチック引布試験方法−第 1 部:試験及び状態調節の標準雰囲気
備考 ISO 2231 : 1989, Rubber-or plastics-coated fabrics−Standard atmospheres for conditioning and
testing
がこの規格と一致している。
3.
試験方法 A
3.1
原理 気密シールが施されている測定セルの二つのパーツの間に試験片を置く。便宜的に選ばれた
試験片の一方の表面を一定圧のトレーサーガス(試験対象ガス)にさらし,一方他表面のセルの中へベク
ターガス(キャリアガス)を一定速度で流し試験片に接触させる。セルの出口に設けられている分析装置
によりベクターガス中のトレーサーガスの濃度が測定され,その結果から試験片におけるトレーサーガス
の透過率が測定される。
3.2
装置(図 1 参照)
3.2.1
測定用ガス透過セル 測定用ガス透過セルは,有効直径(O リングの直径)113mm をもち,二つ
の互いにかみ合っている部分からなる(
図 2 参照)。このセルの材質は,使用するガスに対して不活性でな
ければならず,特に,これらの材質は,使用する気体を吸収するものであってはならない。O リングの正
確な寸法は JIS B 2401 に規定されている値から選択する。
図 1 装置(略図)
3
K 6404-10 : 1999
備考 固定装置は図示されていない。
図 2 測定用ガス透過セル
3.2.2
流量計 流量計の選定は必要とされる感度に左右され,一方,この感度はセンサーの感度によって
決まる。
センサーの感度は,3%の正確さ以上のものでなければならない。
3.2.3
分析装置 分析器の選定は,技術的条件と経済的条件とに左右される(100ppm 又は 10
−
4
%
以下の
濃度のガスを検出するのは難しい)
。分析器は 5%以上の正確さをもつものでなければならない。
備考 分析装置は,測定の実行を可能とするのに必要とされる特性を備えている,カセットメータ又
は他の何らかの装置としてもよい。
3.2.4
気体の供給 他の条件が規定されていない限りは,トレーサーガスはヘリウムとし,ヘリウムが用
いられる場合,ベクターガスは窒素とする。
備考 純ガスの既知の混合物をトレーサーガスとして使用する場合は,ベクターガスはそのことを考
慮に入れて選定する必要がある。
3.2.5
温度調節用の囲い 試験中の温度制御を確実に行うため,この囲いの中に測定セルを設置してもよ
い。
3.3
試験片
3.3.1
JIS K 6404-2
の規定に従った 1 枚の生地の有効幅から,5 個の試験片を採取する。
3.3.2
試験片は,直径が (130±2) mm の円形のものでなければならない。
3.4
状態調節
JIS K 6404-1
に規定されているいずれか一つの標準的雰囲気において試験片の状態調節を行う。大気圧
が基準圧とされる。
3.5
試験時の環境
その他の条件が規定されていない限りは,試験は (23±2) ℃において,雰囲気圧において行う。
特別な温度又は圧力の条件を適用してもよい。これらの条件は,事前の同意の対象となる。
備考 試験片は,気密性の囲いの中に置かれるため,相対湿度の概念は,この試験とは無関係である。
4
K 6404-10 : 1999
3.6
手順
3.6.1
試験片の挿入
測定セルの下方部分の上に試験片を置き,上方部分を正しい位置に載せ,装置全体を組み立てる。
備考 ときどき,O リングと試験片の接触状態を改善するために,O リングにわずかに油又はグリー
スを塗る。
3.6.2
浄化
十分な量のガスによってセルの二つの部分を浄化する。
3.6.3
ガスの供給
一定の流量でベクターガスを供給する(流量はある程度濃度に左右されることがある)
。
セルの二つの部分の間において規定された圧力差を得るために,トレーサーガスの圧力を調節する。
備考 濃度の測定値は,かなり短時間のうちに安定する(安定するまでに要する時間は周囲の条件に
よって異なる)
。ガス透過が安定している状態は,濃度変動が 30 分間に 5%未満であることに
よって判定する。
3.7
結果の表示
センサーによってベクターガス中のトレーサーガスの濃度 C が測定され,流量計によってベクターガス
の流量 q
v
(1 時間当たりの立方デシメートル)が測定される。試験片の有効面積 S は,既知である (0.01m
2
)
。
1
時間における 1 平方メートル当たりの立方デシメートル (dm
3
/m
2
)
を単位として表示される,当該の材
料における透過率 P は,次の式によって算出する。
S
q
C
P
v
⋅
=
又は,
p
=100C
・
q
v
ここに,
C
: ベクターガス中におけるトレーサーガスの濃度(容積比)
。
q
V
: 1 時間当たりの立方デシメートル数で表示されるベクターガス
の流量。
S
: 平方メートルで表示される,試験片の有効面積 (0.01m
2
)
。
透過率は 24 倍することによって 1 日当たりに換算して表示してもよい。
備考 クロマトグラフなどの分析装置を用いた場合,測定可能な最低濃度は 100ppm (10
−
4
%)
と考え
られる。
したがって,ベクターガスの流量が 1dm
3
/h
である場合は,測定可能な最小透過率は 0.01dm
3
/
(h
・m
2
)
又は 0.24dm
3
(d
・m
2
)
となる。
3.8
試験報告 試験報告には次の事項を記載する。
a)
適用規格
b)
試験に供された材料を識別するために必要とされるあらゆる詳細。
c)
使用されたトレーサーガス及びベクターガス,並びに採用された圧力差。
d)
必要な場合は,すべての特別な試験条件。
e)
各試験片に関する測定結果。
f)
測定結果の平均値。
g)
使用された O リングのタイプ。
h)
規定された手順から外れた内容。
5
K 6404-10 : 1999
4.
試験方法 B
試験方法 B には,試験方法 B1 と B2 とがある。
4.1
試験方法 B1 ケンブリッジ式ガス透過試験
a)
試験片 試料から直径 (143±1) mm の試験片 3 個を採取する。
b)
試験機
図 3 に示すケンブリッジ式ガス透過試験装置を用いる。
c)
試験条件 試験温度は, (23±1) ℃又はその試験機の指定条件で行い,試験片,試験機,及び水素ボ
ンベ(ボンベ)は,試験前 1 時間以上試験温度中に放置しておかなければならない。
d)
測定 測定は,円形に採取した試験片を,ワックス塗布用プレートの中心部が合致するように挟み込
み,試験の断面が完全にワックスでシールされるように溶融ワックス中に試験片の周囲を浸して塗布
し,試験機本体の試験プレート間に挟み,クランプで締める。
次にスイッチを基準目盛 (STD) に切り換え,ダイヤルでメータの目盛が “0” になるように調整す
る。水素ガスの弁を開いて,ガス流量 200ml/min 以上で約 1 分間ガスを通過させ,試験機本体の下部
チャンバー内の空気を水素ガスで置換し,ガス流量 50ml/min に再調整して測定を開始する。
スイッチを“測定”に切り換えてダイヤルでメータの目盛が “0” からややマイナス側となる位置に
調整する。メータの目盛が “0” を示すと同時にストップウォッチで時間の計測を開始する。次いで
30
秒ごとに検流計の目盛を 0.11 まで読み取り,打点記録する。打点記録は,時間とともに直線的にな
るので,直線と思われる部分が直線になり始めたところから 2 分間の目盛の差を気体透過率とし,
1/m
2
・24h で表す。
備考 変化が直線的になるには,通常 5∼10 分間を必要とする。
4.2
試験方法 B2 マノメータ式ガス透過試験
a)
試験片 試料から直径約 89mm の試験片 3 個を採取し,試験片の周囲を真空グリース,ワックスなど
で密封する。
b)
試験機
図 4 及び図 5 に示すような機構をもつマノメータ式ガス透過試験機を用いる。
c)
試験条件 試験は温度 23±2℃,及び相対湿度 (50±5) %で行う。試験片及び試験機は,試験前少なく
とも 1 時間以上この状態の中に放置しておかなければならない。
d)
測定 試験片をセルに取り付け,セルを完全に密封した後,温度を記録する。マノメータの真空コッ
クを開いてセルマノメータの低圧側及び高圧側の空気を真空度 27Pa {0.2mmHg} 以下まで真空ポンプ
によって排気する。
その後,マノメータの真空コックを閉じて高圧側に水素を,圧力が約 0.1MPa/約 1 気圧}又は規定
の圧力になるまで導入し,その圧力を記録する。
水銀を水銀だめからリザーバレックに移し,セルを水平にする。試験片を通過した水素によるセル
毛管の水銀の高さ変化を適切な時間間隔で打点記録する。この測定を,低圧側の圧力変化の速さが一
定になるまで継続して行い,圧力の変化と時間との関係を求める。
その関係が直線になった最初の水銀の高さを h
0
とし,時間を t
0
として記録する。その後適切な時間
t
とそのときの水銀の高さ h を打点記録した直線から読み取る。
e)
計算 ガス透過率は,次の式によって算出する。
なお,結果には,測定時の温度,湿度,アダプタ及びセルの種類並びに試験片の平均厚さ (mm) を
付記する。
GTR (t
−t
0
)
=g (h)
6
K 6404-10 : 1999
( )
(
) (
)
{
}
r
B
L
t
V
h
h
h
h
a
S
h
h
h
h
RTS
A
h
g
+
−
−
+
−
−
−
×
×
=
0
0
0
2
2
1
10
67
.
4
ここに
GTR (cm
3
/m
2
・s・Pa) :
ガス透過率
S
:
定常状態における直線部のこう配
a
:
毛管 AB 面積 (mm
2
)
A
t
:
透過面積
h
0
:
定常状態になったときの毛管の水銀の高さ
(mm)
h
:
ある時間における毛管の水銀の高さ (mm)
h
B
:
毛管の基準面から上部補正線 B までの水銀の
高さ (mm)
h
L
:
セルリザーバ側の基準面からの水銀の高さ
(mm)
P
:
透過ガスの圧力 (Pa)
R
:
気体定数 [=8.314] (J/mol・K)
t
0
:
定常状態になった最初の時間(h
0
に対する時
間)
t
:
時間(h に対応する時間)
T
:
絶対温度 (K)
V
r
:
低圧側の容積 (V
BC
+V
CD
) (mm
3
)
V
BC
:
B
から C までの容積 (mm
3
)
V
CD
:
へこみの容積 (mm
3
)
4.3
試験結果 試験報告に次の事項を記載する。
a)
適用規格
b)
試験年月日
c)
ガス透過率
d)
その他必要事項
7
K 6404-10 : 1999
図 3 試験機
8
K 6404-10 : 1999
図 4 ガス透過セル
図 5 ガス透過式測定装置の構成図
9
K 6404-10 : 1999
ゴム引布・プラスチック引布試験方法原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
荒 木 峻
東京都立大学(名誉教授)
(委員)
西 出 徹 雄
通商産業省基礎産業局化学課
大 嶋 清 治
通商産業省工業技術院標準部
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
神 代 啓
社団法人日本化学工業協会
鈴 木 守
社団法人日本ゴム協会
今 井 修 二
社団法人化学品検査協会
御 船 直 人
社団法人鉄道総合技術研究所
寺 岡 憲 吾
防衛庁装備局
吉 田 實
アキレス株式会社
真 野 洋 三
シバタ工業株式会社
恩 田 健 二
東洋ゴム工業株式会社
三 木 茂 機
藤倉ゴム工業株式会社
當 間 満 義
日本ゴム工業会
(事務局)
三 須 武
社団法人日本化学工業協会
濱 島 俊 行
社団法人日本化学工業協会
岩 瀬 剛
日本ゴム工業会
(解説文責 今井 修二)