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K6271:2008

(1)

目  次

ページ

序文 

1

警告 

1

1  適用範囲

1

2  引用規格

1

3  用語及び定義 

2

4  試験の種類 

2

5  平行端子電極法 

2

5.1  目的

2

5.2  試験装置 

2

5.3  試験片

3

5.4  試験方法 

5

5.5  計算

5

5.6  試験結果のまとめ方

5

5.7  記録

5

6  二重リング電極法

6

6.1  目的

6

6.2  試験装置 

6

6.3  試験片

6

6.4  試験方法 

7

6.5  計算

9

6.6  試験結果のまとめ方

9

6.7  記録

9

附属書 JA(参考)二重リング電極法における電極材質の特徴及び使用上の注意事項 

11

附属書 JB(参考)二重リング電極法における測定条件の適正範囲

12

附属書 JC(参考)JIS と対応する国際規格との対比表

14

 


K6271:2008

(2)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,日本ゴム工業会

(JRMA)及び財団法人日本規格協会 (JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出

があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。

これによって,JIS K 6271:2001 は改正され,この規格に置き換えられた。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は

もたない。


日本工業規格

JIS

 K

6271

:2008

加硫ゴム及び熱可塑性ゴム

体積抵抗率及び表面抵抗率の求め方

Rubber, vulcanized or thermoplastic

Determination of volume and surface resistivity

序文 

この規格は,1998 年に第 2 版として発行された ISO 1853 を基に作成した日本工業規格であるが,対応

国際規格には規定されていない項目(二重リング電極法)を追加規定するため,技術的内容を変更して作

成した日本工業規格である。

なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。

変更の一覧表にその説明を付けて,

附属書 JC に示す。

警告 

この規格の利用者は,通常の実験室での作業に精通しているものとする。この規格は,その使用に関し

て起こるすべての安全上の問題を取り扱おうとするものではない。この規格の利用者は,各自の責任にお

いて安全及び健康に対する適切な措置をとらなければならない。

適用範囲 

この規格は,加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの体積抵抗率及び表面抵抗率の求め方について規定する。

なお,この規格では,体積抵抗率だけを求める平行端子電極法並びに体積抵抗率及び表面抵抗率を求め

る二重リング電極法の二つの方法を規定している。平行端子電極法は,体積抵抗率 10

8

Ω・cm 以下の材料

を対象とし,二重リング電極法は,体積抵抗率

10

3

∼10

18

Ω・cm の材料を対象とする。

注記  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

ISO 1853:1998,Conducting and dissipative rubbers,vulcanized or thermoplastic−Measurement of

resistivity (MOD)

なお,対応の程度を表す記号(MOD)は,ISO/IEC Guide 21 に基づき,

“修正している”こと

を示す。

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS B 7507  ノギス

JIS K 6200  ゴム用語

JIS K 6250  ゴム−物理試験方法通則


2

K6271:2008

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 6200 によるほか,次による。

3.1 

体積抵抗 

二つの電極間の直流電圧を,電極に挟まれた試験片の内部を流れる電流で除した値。

注記  体積抵抗の記号は,R

v

 (Ω)で表す。

3.2 

表面抵抗 

試験片の同一表面に設けた一対の電極間の直流電圧を,表面層を流れる電流で除した値。

注記  表面抵抗の記号は,R

s

 (Ω)で表す。

3.3 

体積抵抗率 

試験片の内部を流れる電流に対して平行方向の電位差の傾き(単位長さ当たりの電位差)を,その電流

密度で除した値。この数値は,各辺 1 cm の立方体の相対する 2 表面を電極とする二つの電極間の体積抵抗

に等しい。

注記  体積抵抗率の記号は,ρ

v

 (Ω・cm)で表す。

3.4 

表面抵抗率 

試験片の表面層を流れる電流に対して平行方向の電位差の傾きを,表面の単位幅当たりの電流で除した

値。この数値は,各辺 1 cm の正方形の相対する辺を電極とする二つの電極間の表面抵抗に等しい。

注記  表面抵抗率の記号は,ρ

s

 (Ω)で表す。

3.5 

平行端子電極法 

試験片の両端に向き合う形で,平行に設けた電極を用い,体積抵抗率を求める方法。

3.6 

二重リング電極法 

試験片の片面に同心円の二重電極を形成するとともに,反対面にも電極を形成することによって,体積

抵抗率及び表面抵抗率を求める方法。

試験の種類 

試験の種類は,次による。

a)  平行端子電極法   
b)  
二重リング電極法   

平行端子電極法 

5.1 

目的 

この試験は,カーボンブラック又はイオン導電性物質を添加することなどによって,体積抵抗率 10

8

 Ω・

cm 以下の導電性をもつ加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの体積抵抗率を求めることを目的とする。

5.2 

試験装置 

試験装置は,直流電源,電流計,電流電極,電位差電極,電位差計及び絶縁シートによって構成する(


3

K6271:2008

参照)。試験片の前処理を行うための装置として,恒温槽が必要である。

5.2.1 

直流電源  直流電源は,試験片に電流を流すためのもので,その接地抵抗は,10

12

 Ω 以上が望ま

しい。 

5.2.2 

電流計  電流計は,試験片を流れる電流を測定するためのもので,測定精度 5 %以下の装置を用

いる。

注記  微小な電流を測定する場合には,5.2.5 の電位差計と既知の抵抗体とを用いて電圧降下値を測定

し,計算によって電流値を算出することもできる。

5.2.3 

電流電極  電流電極は,試験片に任意の電流を流すための電極であり,厚さ約 10 mm の絶縁樹脂

製の試験片支持具を含む構造とする(

図 参照)。電極は,試験片の長さ方向に 5 mm 以上の幅で全幅に接

し,かつ,試験片を両面から挟み込めるクランプ又はつかみ具付きのものを用いる。二つの電流電極間の

距離は,50  ±1 mm 又は 100  ±1 mm とし,設置した状態での両電極間の絶縁抵抗値が 10

12

 Ω を超えるも

のを用いる。電流電極は,少なくとも三組を準備する。

5.2.4 

電位差電極  電位差電極は,試験片に生じた電位差を測定するための電極であり,試験片幅より

10 mm 以上広い幅をもつ形状とする(図 参照)。電位差電極の電極間距離は,5∼50 mm とし,両電極間

の絶縁抵抗値が 10

12

  Ωを超えるものを用いる。 

5.2.5 

電位差計  電位差計は,電位差電極を用いて,試験片の電位差を測定するための装置であり,10

11

Ω を超える入力抵抗をもつものを用いる。

5.2.6 

絶縁シート  絶縁シートは,試験装置の絶縁抵抗を確保するために,支持具を含んだ電流電極の床

面に設置するものであり,10

11

 Ω・cm を超える体積抵抗率の材料で成形されたシートを用いる。 

5.2.7 

恒温槽  恒温槽は,試験片の前処理のために用いる装置であり,70±1 ℃に制御できる装置を用い

る。

5.3 

試験片 

5.3.1 

試験片の形状及び寸法 

試験片の形状及び寸法は,幅が 10 ±0.5 mm 又は 20 ±0.5 mm,長さが 70 mm 以上,厚さが 1 mm,2 mm,

4 mm 又は 6.3 mm で,厚さの公差は,JIS K 6250 の 8.1(試験片の厚さ)に規定する各寸法の公差とする。

試験片の寸法が異なると,必ずしも同じデータが得られるとは限らないので,比較試験の場合は,同じ寸

法の試験片を用いる。

5.3.2 

試験片の採取及び作製 

試験片の採取及び作製は,JIS K 6250 の 8.(試験片の採取・作製)による。電気抵抗は試験片の列理に影

響を受けやすいため,比較試験を行う場合には,同一列理方向で採取し,通常は列理に平行な方向で採取

する。採取及び作製は,小刀又は打抜き刃で行うが,切出しによる試験片のひずみは,試験結果に影響を

与えるので,ひずみを極小に抑えるよう注意しなければならない。また,試験片の表面を清浄にする必要

がある場合には,フラー土(けい酸アルミニウムマグネシウム)及び水で磨き,蒸留水で洗浄し,乾燥す

る。このとき,表面を研磨することによって摩耗させてはならない。

5.3.3 

試験片の数 

試験片の数は,3 個とする。


4

K6271:2008

1  通電スイッチ 5

絶縁シート

2  直流電源 6

試験片

3  電流計 7

電位差電極

4  電流電極 8

電位差計

図 1−平行端子電極法の試験回路構成図

1 電流電極

2 試験片

3 絶縁樹脂製支持具

4 絶縁シート

図 2−電流電極の構造例

単位  mm

1  絶縁樹脂 2

ステンレス鋼

        3  測定用端子

図 3−電位差電極の形状及び材質 


5

K6271:2008

5.4 

試験方法 

5.4.1 

試験条件 

試験条件は,次による。

a)  試験室の標準条件は,JIS K 6250 の 6.(試験室の標準条件)による。ただし,その他の条件で試験を

行う場合には,受渡当事者間の協定に従い,行ってもよい。

b)  試料及び試験片の保管は,JIS K 6250 の 7.(試料及び試験片の保管)による。

c)  試験片の状態調節は,JIS K 6250 の 9.(試験片の状態調節)による。 

d)  試験片へ通電する電流は, 0.1 µA,1 µA,10 µA,100 µA,1 mA 及び 10 mA の中から選択する。通

電する電流を選択するとき,事前に簡易抵抗計などによって試験片の抵抗値を把握し,試験片内部で

の損失電力が 0.1 W を超えないようにすることが望ましい。

5.4.2 

操作方法 

操作は,次による。

a)  試験直前に,試験片にポリスチレンなどの樹脂製の絶縁支持具を取り付け,その両端近傍に電流電極

を固定する。

b)  試験片を支持具に取り付けたままで,70±1  ℃の恒温槽に入れ,2 時間加熱し,その後,JIS K 6250

の 9.に従って,状態調節を行う。

c)  電位差電極の電極間距離が 5∼50 mm になるように設定し,電極間の距離を 2 %の精度で測定する。

d)  電位差電極は,その先端を試験片に流れる電流に対して直角になるように,また,いずれの電流電極

からも 20 mm 以上離して設置する。このとき,電位差電極が試験片を押し付ける力は,試験片幅が

10 mm の場合には 0.65 N とし,20 mm の場合には 1.30 N となるようにする。

e)  通電を開始してから 1 分間経過した後,電位差電極,電位差計を用い,電流電極間の 3 か所について,

電位差電極の位置を変え,電位差の測定を行う。

f)  すべての試験片について,同様の測定を行う。

5.5 

計算 

各試験片について 3 回測定した電位差の平均を求め,体積抵抗率 ρ

v

は,次の式 (1) によって算出する。

l

I

t

w

V

v

×

×

×

=

ρ

 (1)

ここに,

ρ

v

:  体積抵抗率  (Ω・cm)

V:  電位差の平均 (V)

w  試験片の幅 (cm)

t  試験片の厚さ (cm)

I  通電した電流 (A)

l  電位差電極間の距離 (cm)

5.6 

試験結果のまとめ方 

体積抵抗率の測定は,3 個の試験片について試験を行い,式 (1) によって得られた値の中央値を,有効

数字 2 けたで表す。

5.7 

記録 

試験結果には,次の事項を記録しなければならない。

a)  この規格の番号

b)  試験片の詳細


6

K6271:2008

1)  試験片の採取及び作製方法

2)  試料の詳細及び成形条件(加硫条件など) 
3)  試験片の形状及び寸法

c)  試験の詳細

1)  試験時の温度及び湿度 
2)  電流電極間の電圧

3)  通電した電流

d)  試験結果

1)  3 個の試験片の体積抵抗率の中央値

2)  各試験片の体積抵抗率(必要に応じて)

e)  試験年月日 
f)  その他必要事項 

二重リング電極法 

6.1 

目的 

この試験は,カーボンブラック又はイオン導電性物質を添加することなどによって,体積抵抗率が 10

3

∼10

18

  Ω・cm の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムについての体積抵抗率及び/又は表面抵抗率を求めることを目

的とする。

注記  附属書 JB に体積抵抗率範囲の設定根拠及び測定条件の適正範囲を示す。

6.2 

試験装置 

試験装置は,直流電源,電流計及び電極によって構成する。

6.2.1 

直流電源  直流電源は,試験片に 1  ∼1 000 V の電圧を印加するためのものであり,直流安定化電

源を用いる。

6.2.2 

電流計  電流計は,試験片を流れる電流を測定するためのものであり,測定する試験片の体積抵抗

率に応じて,0.01 pA∼100 mA の測定が可能な微少電流計を選択し用いる。また,電流計の測定精度は 5 %

以下で測定できるものを用いる。

6.2.3 

電極  電極は,次による。 

a)  電極の形状  標準電極は,試験片表面に図 に示す形状で形成し,試験片の電圧印加及び電流測定を

行うために用いる。この形状以外での測定を行う場合には,次の要件を満足する電極形状で行う。

1)  主電極の径は,試験片厚さの 10 倍以上とする。

2)  主電極とリング電極との間の距離は,試験片厚さの 2 倍以上とする。

3)  リング電極の幅は,試験片の厚さ以上とする。 
4)  対向電極は,リング電極の外径より大きい径とする。

b)  電極の材質  電極の材質は,試験片表面に密着固定することのできるステンレス鋼などの金属製電極,

又は銀ペーストなどの導電性塗料電極を用いる。導電性塗料電極を用いる場合には,

図 に示す形状

を試験片上に透湿性の導電性塗料で描き,乾燥させて電極を形成する。

注記  附属書 JA に,電極の材質及び使用上の注意事項を示す。

6.3 

試験片 

6.3.1 

試験片の形状及び寸法 

標準電極を用いる場合には,厚さ 1 mm 又は 2 mm の成形シートから,長さ及び幅をそれぞれ 100 mm に


7

K6271:2008

切り取ったものを用いる。標準以外の電極を用いる場合には,リング電極の外径より大きな寸法で切り取

ったものを用いる。いずれの場合にも,試験片の厚さを,試験片中央部及び 4 か所のコーナー部付近の計

5 か所について 0.01 mm まで測り,各測定点における値が 1±0.1 mm 又は 2±0.2 mm であり,また,5 か

所の平均値の±10  %の範囲内であることを確認する。この 5 か所の平均値を試験片の厚さとする。

6.3.2  試験片の採取及び作製 

試験片の採取及び作製は,JIS K 6250 の 8.による。

6.3.3  試験片の数 

試験片の数は,3 個とする。

単位  mm

1  主電極 3

試験片

2  リング電極 4

対向電極

図 4−標準二重リング電極の形状及び名称 

6.4 

試験方法 

6.4.1 

試験条件 

試験条件は,次による。

a)  試験室の標準条件は,JIS K 6250 の 6.による。ただし,その他の条件で試験を行う場合には,受渡当

事者間の協定に従い,行ってもよい。

b)  試料及び試験片の保管は,JIS K 6250 の 7.による。

c)  試験片の状態調節は,JIS K 6250 の 9.による。さらに,体積抵抗率が 10

8

  Ω・cm 以上の高抵抗材料を

測定する場合には,状態調節を行っている間,試験片の両面を金属板で挟み,金属板同士を短絡し続

けることによって,試験片に帯電した電荷を除去する操作を行う。 

d)  試験片への標準印加電圧は, 1 V, 10 V, 100 V, 500 V 及び 1 000 V の中から選択する。印加電圧

を選択するとき,試験片の電気抵抗値を考慮し,使用する電流計の定格電流を超えることがないよう

にするとともに,試験片内部での損失電力が 0.1 W を超えないように注意する。


8

K6271:2008

内部電流(測定電流)

ガード電流

注記  附属書 JB に,二重リング電極法における測定条件の適正範囲を示す。

6.4.2 

操作方法 

操作は,次による。

a)  使用する主電極の外径及びリング電極の内径を,ノギスで 0.05 mm まで測定する。

なお,使用するノギスは,JIS B 7507 に規定するもの,又はこれと同等以上の精度をもつものを用

いる。

b)  金属製電極を使用するときは,金属製電極を試験片上下に密着し,試験片と電極との間にすき間が生

じないように固定する。このとき,過度の荷重を加えると試験片が変形し,試験結果に影響を及ぼす

ので注意する。また,導電性塗料電極を使用するときは,電極の損傷,はく離などが生じないように

作製する。

c)  直流電源及び電流計を,体積抵抗率を求める場合には図 に示すように,表面抵抗率を求める場合に

図 に示すように,接続する。

d)  接続後,電圧を印加する前に主電極と印加電極とを電気的に短絡し,試験片内部に帯電している電荷

を除去する。この操作は,試験片の状態調節時に,金属板に挟んで除電処理を行った体積抵抗率が 10

8

Ω・cm 以上の高抵抗材料の試験片についても行う。

e)  試験片の除電を行った後,スイッチを切替え,両電極間に規定の電圧を印加し,電流の計測を開始し,

電圧印加後 1 分後に,主電極と印加電極との間を流れる電流を測定し,記録する。

f)  測定を終了した試験片は,試験片内部に電荷が帯電しているため,繰り返し測定を行う場合,又は体

積抵抗率及び表面抵抗率を連続して求める場合には,測定終了試験片の除電処理を行う必要がある。

特に,試験片の体積抵抗率が 10

8

  Ω・cm 以上の高抵抗材料を測定する場合には,連続した測定は行わ

ず,次の測定を行う前に,必ず状態調節時に行う除電処理を行わなければならない。

1  主電極 6

切替えスイッチ

2  ガード電極 (リング電極) 7

除電用短絡側接点

3  試験片 8

電圧印加側接点

4  印加電極 (対向電極) 9

電流計

5  直流電源 10

接地

図 5−体積抵抗率  測定回路図


9

K6271:2008

表面電流(測定電流)

ガード電流

1  主電極 6

切替えスイッチ

2  印加電極 (リング電極) 7

除電用短絡側接点

3  試験片 8

電圧印加側接点

4  ガード電極 (対向電極) 9

電流計

5  直流電源 10

接地

図 6−表面抵抗率  測定回路図

6.5 

計算 

体積抵抗率 ρ

v

及び表面抵抗率 ρ

s

は,次の式(2)及び式(3)によって算出する。

v

2

v

2

v

4

π

4

π

I

t

V

d

R

t

d

ρ

×

×

×

×

×

×

×

 (2)

s

s

π

π

S

I

)

d

D

(

V

)

d

D

(

R

d

D

)

d

D

(

ρ

×

×

+

×

+

 (3)

ここに,

ρ

v

体積抵抗率  (Ω・cm)

ρ

s

表面抵抗率  (Ω)

R

v

体積抵抗  (Ω)

R

s

表面抵抗  (Ω)

d: 主電極の外径 (cm)

D: リング電極の内径 (cm)

t: 試験片の厚さ (cm)

V: 試験片に印加した電圧 (V)

I

v

体積抵抗測定時の電圧印加 1 分後の電流 (A)

I

s

表面抵抗測定時の電圧印加 1 分後の電流 (A)

π:

円周率


10

K6271:2008

6.6 

試験結果のまとめ方 

体積抵抗率及び表面抵抗率の測定は,3 個の試験片について行い,式 (2) 及び式 (3) によって得られた

値の中央値を,有効数字 2 けたで表す。

6.7 

記録 

試験結果には,次の事項を記録しなければならない。

a)  この規格の番号

b)  試験片の詳細

1)  試験片の採取及び作製方法 
2)  試料の詳細及び成形方法(加硫条件など)

3)  試験片の形状及び寸法

c)  試験の詳細 

1)  試験時の温度及び湿度

2)  使用した電極の形状及び材質

3)  使用した測定装置の概要 
4)  主電極及び印加電極間に印加した電圧

5)  電圧印加 1 分後に測定した電流

d)  試験結果 

1)  3 個の試験片の体積抵抗率及び/又は表面抵抗率の中央値

2)  各試験片の体積抵抗率及び/又は表面抵抗率(必要に応じて)

e)  試験年月日 
f)  その他必要事項 


11

K6271:2008

附属書 JA

(参考)

二重リング電極法における電極材質の特徴及び使用上の注意事項

JA.1  一般 

二重リング電極法においては,試験片に主電極,リング電極及び対向電極を形成し測定を行うが,形成

する電極の材質及び試験片との密着状態によって,試験結果に影響を及ぼす場合があるので,電極材質の

選定及び取扱いには注意が必要である。

JA.2  電極材質の特徴及び使用上の注意事項 

代表的な電極材質について,その特徴及び一般的な注意事項を

 JA.1 に示す。

表 JA.1−電極材質の特徴及び使用上の注意事項

電極材質

特徴

使用上の注意事項

金属製電極

電極形状に加工された金属製の電極として

は,ステンレス鋼などが用いられる。主電極,

リング電極及び対向電極が固定され,電気的な
シールドが施された箱形タイプが一般的であ
る。

特別な前処理が不要なため,非常に簡便に測

定を行うことができる。

市販品の中には,試験片の押さえ圧力を調整

できる荷重可変タイプのジグをもつものもあ
る。

金属製電極の場合には,試験片の押さえ圧力

によって,電極と試験片との間の密着状態が変

化するため,表面平滑性の劣る試験片を用いる
場合には,密着性改良手段を講じる必要があ
る。

表面密着性の改良手段として,ワセリンを塗

布する方法をとる場合があるが,ゴム材料への
影響には十分な注意が必要である。また,硬さ

の低い試験片を大きな圧力で押さえた場合に
は,試験片の電気抵抗が変化する場合もあるた
め,同様の注意が必要である。

導電性塗料電極

樹脂バインダーとともに溶剤中に分散され

た銀粒子を用い,試験片表面に塗布した後これ
を乾燥させ,薄膜の銀電極を形成させる方法で

ある。

試験片表面に若干の凹凸が存在する場合に

も,密着性のよい電極形成ができるという利点

があり,試験片電極間の接触不良によるノイズ
という因子を排除できる。

試験片表面に薄膜の電極を形成するため,試

験片の表面状態がブルーム又はブリードによ
って汚染されている場合には,高い密着性が得

られないので,表面の清浄化処理を要する。 
また,電極形成後のブルーム又はブリードによ
って,電極がはく離する場合があるため,電極

形成後の長時間放置は避ける。

導電ゴム電極

測定する試料が,比較的高抵抗領域であり,

かつ,樹脂のような高剛性の材料を対象とする
場合,試験片表面への密着性を向上させるため
に,金属製電極の表面に設置して使用するとき

がある。

電極として使用する導電ゴムの体積抵抗率

が 10

2

∼10

3

 Ω・cm であるため,測定する試験

片の体積抵抗率が十分に高い場合(10

8

 Ω・cm

以上)だけに使用することが望ましい。


12

K6271:2008

附属書 JB

(参考)

二重リング電極法における測定条件の適正範囲

JB.1   一般 

二重リング電極法による測定では,対象とする体積抵抗率の範囲を,10

3

∼10

18

 Ω・cm の範囲に設定して

いる。この上下限の設定根拠を,JB.2 に示す。また,測定の条件によっては,試験片内部で電力損失によ

る異常な発熱を起こす場合がある。これを回避するためには,印加電圧を試験片の抵抗領域によって,適

正に調整したり,検出すべき電流の絶対値に対応した電流計を選択することが望ましい。この規格で規定

する測定範囲,測定装置を使用するときの適正範囲を JB.3 に示した。

これらの点に留意し,測定可能領域に対応した印加電圧,検出可能限界などの範囲で設定することによ

って,より安定した測定を行うことが可能となる。

JB.2   設定した体積抵抗率範囲の根拠 

この規格で規定する体積抵抗率の範囲(10

3

∼10

18

 Ω・cm)の根拠については,次に示す。

a)  体積抵抗率の下限  印加電圧を下限の 1 V に設定した場合,内部損失電力上限を 0.1 W としているた

め,実測抵抗値としては R = V

2

/W =1

2

/0.1=10 Ω が下限となる。この規格で規定している電極形状にて

体積抵抗率に換算した場合,体積抵抗率として約 10

3

Ω・cm となるため,これを下限とした。

b)  体積抵抗率の上限  高抵抗材料を測定する際に用いる微小電流計の性能を考慮した場合,市販されて

いる機器の計測能力上,0.01 pA という電流であれば,十分に測定可能である。一方,印加電圧につい

ては,上限を 1 000 V として設定しているため,1 000 V / 0.01 pA = 10

16

 Ω となる。この数値から,先

ほどと同様にこの規格で規定している電極面積換算を行い,体積抵抗率の上限は,10

18

 Ω・cm とした。

JB.3   測定条件の適正範囲 

図 JB.1 に,二重リング電極法における測定条件の適正範囲を示す。この図中,横軸に示した印加電圧の

1∼1 000 V,たて軸の体積抵抗率 10

3

∼10

18

 Ω・cm の範囲内で,電流計の性能(0.01 pA∼100 mA)及び内

部消費電力の限界ライン(0.1 W)によって囲まれたハッチングのかかった部分が,規定されている電圧印

加条件及び測定可能な体積抵抗率を示す領域である。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


13

K6271:2008

体積抵抗値 R

v 

(Ω)  から,体積抵抗率 ρ

v 

(Ω・cm)  への換算は,標準二重リング電極を用いた場合と

して,次の式による換算を行っている。

v

v

v

2

v

1

98

2

0

4

25

π

4

π

R

.

R

.

R

t

d

×

×

×

×

ρ

による換算

図 JB.1−二重リング電極法における測定条件の適正範囲 

 
 
 


附属書 JC

(参考)

JIS と対応する国際規格との対比表

JIS K 6271 

:2008  加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−体積抵抗率及び表面抵抗率の求め方

ISO 1853 

: 1998, Conducting and dissipative rubbers,vulcanized or thermoplastic−

Measurement of resistivity

(Ⅰ)JIS の規定

(Ⅲ)国際規格の規定

(Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇条ご
との評価及びその内容

箇条番号及
び名称

内容

(Ⅱ) 
国際規格

番号

箇条番号

内容

箇 条 ご と
の評価

技術的差異の内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策

1  適用範囲

1

追加

JIS では平行端子電極法に加え
て,二重リング電極法を追加し
たため,体積抵抗率及び表面抵

抗率の測定を対象とした。また,
測定対象領域は,平行端子電極
法が 10

8

  Ω・cm 以下,二重リン

グ電極法が 10

3

∼10

18

 Ω・cm とし

た。 

ISO 規格では,平行端子電極法だけ
を設定しているが,JIS では二重リ
ング電極法を追加した。二重リング

電極法は,IEC 60093 として,絶縁
材料用の規格が存在するが,一般的
なゴム材料には適用できないため,

国内にて必要なデータを採取した上
で ISO への提案を行う予定。また,
平行端子法の原理から,絶縁領域の

測定では大きな誤差を生じるため,
平行端子法の対象範囲についても,
データを採取の上,ISO に提案予定。

2  引用規格

3  用語及び
定義

追加

JIS では,分かりやすくすること
を目的に,使用する用語の定義
を追加した。

JIS では,平行端子電極法と二重リ
ング電極法の二つの方法を規定し,
用語の定義を追加したため,二重リ
ング電極法の提案と同時に,ISO 

提案予定。

4  試験の種

追加

JIS では,試験法の種類として項
目を設けた。

JIS では,二重リング電極法を追加
したため,二重リング電極法の提案
と同時に,ISO へ提案予定。

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1

2

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(Ⅰ)JIS の規定

(Ⅲ)国際規格の規定

(Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇条ご
との評価及びその内容

箇条番号及

び名称

内容

(Ⅱ) 
国際規格
番号

箇条番号

内容

箇 条 ご と

の評価

技術的差異の内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策

5.1  目的

1

変更

JIS では,適用範囲のうち,平行
端子電極法の対象範囲を目的と
して記載した。 

JIS では,分かりやすくするために
記載したのであり,ISO 規格との技
術的な差異はない。 

5.2.3  電流電極

3.3

追加

JIS では,電流電極の構造例を追
加。

JIS では,分かりやすくするために
記載したのであり,ISO 規格との技
術的な差異はない。

5.2.4  電位差電極 

3.4

変更 

JIS では,電極間距離を 5∼50 
mm に設定した。 

ISO 規格の電極間距離設定に矛盾が
あり,これを解消する内容変更のた

め,二重リング法とともに ISO へ提
案予定。 

5.3.1  試 験 片 の 形
状及び寸法 

4

変更

JIS では,試験片厚さの公差を
JIS K 6250 の一般公差とした。

通常の試験片での測定を可能にする

ため,ISO へ提案予定。

5.3.2  試 験 片 の 採
取及び作製 

4

追加

JIS では,試験片作製方法につい
て JIS K 6250 に準拠すること,

及び試験結果に影響を及ぼす可
能性のある列理方向に関する規
定内容を追加した。 

列理方向の規定は,より高い精度の
測定を可能にするため,ISO に提案

予定。


 
 
 

追加 

 
 

JIS では,通電する電流を 0.1 µA
∼10 mA の 6 点で設定した。ま

た,損失電力限界を安全・発熱
の影響を考慮し,0.1 W 以下とし
た。

二重リング電極法でも同様の設定を
行っているため,ISO に同時提案予

定。

5  平行端子
電極法 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

5.4  試験方法


 
 
 

変更 
 

 

JIS では電極間距離の拡大に伴
い,操作方法の記載内容を変更
した。

引用規格 ISO 471 は廃止されて
いるので,同等規定内容の JIS K 
6250 
へ変更した。 

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(Ⅰ)JIS の規定

(Ⅲ)国際規格の規定

(Ⅳ)JIS と国際規格との技術的差異の箇条ご
との評価及びその内容

箇条番号及

び名称

内容

(Ⅱ) 
国際規格
番号

箇条番号

内容

箇 条 ご と

の評価

技術的差異の内容

(Ⅴ)JIS と国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策

5  平行端子
電極法(続
き)

5.6  試験結 果の ま
とめ方

7

追加

JIS では,得られた中央値の丸め
方として,有効数字 2 けたで丸
めるように規定した。

ISO との技術的な差異はない。

6  二重リン
グ電極法

 

追加

JIS では,“二重リング電極法”
を追加規定。

国内では,二重リング電極法が広く
採用されている方法であり,平行端
子電極法に比べ,体積抵抗率だけで

なく,表面抵抗率も測定でき,かつ,
広範囲な抵抗領域での測定が可能な
どの優れた点も多いことから,ISO

に提案を行う予定。

JIS と国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 1853 : 1998:MOD

注記 1  箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。

    −  追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。 
    −  変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。

注記 2  JIS と国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。

    −  MOD……………  国際規格を修正している。

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