K 6261-1:2017
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目 次
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序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
1A 引用規格 ······················································································································ 1
2 用語及び定義 ··················································································································· 1
3 低温試験の種類 ················································································································ 1
3.1 一般事項 ······················································································································ 1
3.2 低温衝撃ぜい化試験 ······································································································· 2
3.3 低温ねじり試験(ゲーマンねじり試験)············································································· 2
3.4 低温弾性回復試験(TR試験) ·························································································· 3
3.5 結晶化の影響を測定する試験方法······················································································ 3
4 各試験方法の有効性 ·········································································································· 3
5 試験方法の比較 ················································································································ 3
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································· 5
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(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本ゴム工業会(JRMA)及び
一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があ
り,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。これによって,JIS
K 6261:2006は廃止され,その一部を分割して制定したこの規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS K 6261の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS K 6261-1 第1部:一般事項及び指針
JIS K 6261-2 第2部:低温衝撃ぜい化試験
JIS K 6261-3 第3部:低温ねじり試験(ゲーマンねじり試験)
JIS K 6261-4 第4部:低温弾性回復試験(TR試験)
日本工業規格 JIS
K 6261-1:2017
加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−低温特性の求め方−
第1部:一般事項及び指針
Rubber, vulcanized or thermoplastic-Determination of low-temperature
properties-Part 1: General introduction and guide
序文
この規格は,2014年に第1版として発行されたISO 18766を基とし,技術的内容を変更して作成した日
本工業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの低温特性の求め方の指針を規定する。
この規格は,各種低温特性の意味を理解し,適切な試験方法の選択を手助けすることを目的としている。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 18766:2014,Rubber, vulcanized or thermoplastic−Low temperature testing−General introduction
and guide(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
1A 引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 6200 ゴム−用語
2
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 6200によるほか,次による。
2.1
低温試験(low temperature test)
試験室の標準温度より低い温度での特性を測定する試験。
3
低温試験の種類
3.1
一般事項
ゴム材料は,温度の低下とともに硬くなり,最後には,ゴム弾性を失ってもろくなる。この現象は,ガ
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ラス転移と呼ばれる。また,変形を加えた場合,その回復は,温度が低いほど,より緩慢になる。これら
低温での挙動を知るためには,使用状況に合った適切な温度条件で物性(例えば,引張強さ,動的弾性率,
反発弾性率,電気抵抗率など)の変化を測定することが望ましい。
ガラス転移温度(Tg)は,一般的には,示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry DSC)又は動
的熱機械測定(dynamic mechanical analysis DMA)で測定できる。
注記 力学的に測定するTgは,用いた試験方法の周波数,昇温速度,降温速度などに依存する。熱分
析的に測定する方法としては,DSCを用いる方法があり,JIS K 6240[1]を参照するとよい。
さらに,実利的利便性の高いものとして,低温での挙動傾向を測定するための数々の低温試験方法が開
発され,広く規格化されてきた。
これらの低温試験方法は,次のように分類できる。
− 低温衝撃ぜい化試験(ぜい化特性)
− 低温ねじり試験(ねじり剛性の変化)
− 低温弾性回復試験(伸長回復率)
加えて,天然ゴム又はクロロプレンゴムのような結晶性ゴムは,低温で部分結晶化を起こし硬くなる。
この結晶化は,数日又は数週間にわたりゆっくりと進行し,それぞれのゴムに特有の温度で,例えば,天
然ゴムの場合は,−25 ℃で最も早くなる。したがって,結晶化の影響を測定する試験では,低温で状態調
節した後,硬さ又は回復の変化を測定する必要がある。
3.2
低温衝撃ぜい化試験
JIS K 6261-2[2]は,材料がもろくなる温度を測定する低温衝撃ぜい化試験方法を規定している。この試
験方法の原理は,片方を固定した試験片を規定の速度で動く打撃棒で打撃するものである。結果は,合格
又は不合格であり,不合格とは,亀裂が入った場合及び試験片が完全に破壊された場合である。種々の形
態の装置があり,試験は,液体又は気体の媒体中で実施する。
測定方法は,ぜい化限界温度を求める方法,50 %ぜい化温度を求める方法及び所定温度での合否を判定
する方法の三つがある。ぜい化限界温度を求める方法は,試験片が一つも破壊しない最低温度を求める方
法であり,50 %ぜい化温度を求める方法は,試験片の50 %が破壊する温度を求める方法である。後者は,
再現性が高いが,より多数の試験片を使用する場合がある。製品の低温性能評価の場合には,所定温度で
の合否を判定してもよい。
3.3
低温ねじり試験(ゲーマンねじり試験)
室温以下の温度で引張特性又は圧縮弾性率を測定することは,恒温槽を含む試験装置に費用がかかり,
測定にも時間を要するものであった。ねじり試験は,室温での剛性測定としては,ほとんど使われていな
かったが,温度の低下に伴う剛性の変化を測定するのに便利であることが見出された。JIS K 6261-3[3]は,
ねじりワイヤを介して短冊状の試験片をねじり,そのねじれ角を測定することによって,ねじり剛性を求
めるゲーマンねじり試験方法を規定している。
ねじり剛性は,温度上昇の関数として測定する。試験片を液体媒体又は気体媒体中に入れ,段階的に又
は連続的に媒体の温度を上げて測定する。一般に,媒体の種類にかかわらず同じ結果が得られる。
結果は,比モジュラス(23 ℃での弾性率に対して計算する)が2倍,5倍,10倍及び100倍となる温度
で表される。必要な場合,各温度における見掛けのねじりモジュラスを計算することもできるが,試験条
件に依存するため,絶対値として扱うことはできない。
温調型恒温槽を備えた一般的な試験機,特に動的熱機械測定装置を用いると,もっと一般的な変形方式
で,本質的に同じデータが得られる。しかしながら,従来のゲーマンねじり試験(JIS K 6261-3)の方法
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も広く使われている。
3.4
低温弾性回復試験(TR試験)
JIS K 6261-4[4]は,伝統的に広く使用されている張力の回復を測定するTR試験を規定している。伸長し
た試験片を,ガラス転移温度以下の熱媒体に入れ,その後,温度上昇に伴い試験片は,弾性を回復して収
縮していく。温度に対する収縮率のグラフから,収縮率が10 %,30 %,50 %,及び70 %になる温度を読
み取る。このような結果の表し方は,剛性について試験するゲーマンねじり試験の結果の表し方と原理的
に同じである。
他の低温弾性回復試験方法として,変形からの回復を測定する最も簡単な方法は,通常の圧縮永久ひず
み又は引張永久ひずみ試験を適用することである。JIS K 6262[5]には,低温での圧縮永久ひずみの求め方
を規定している。この試験方法は,本質的に通常の圧縮永久ひずみ試験と同じであるが,低温の容器内で
試験片を除重し,回復を測定する必要があるため,事実上,困難である。誤差が大きくなる可能性があり,
特別に設計された装置を用いる必要があるため一般的ではない。
3.5
結晶化の影響を測定する試験方法
原理的には,標準的な試験よりもはるかに長い時間,試験片を低温に保持することによって,いずれの
低温試験方法も結晶化の影響を検討するために用いることができる。このような試験方法は,例えば,低
温弾性回復試験(TR試験)の規格で規定している。一方,ISO 3387[6]では,硬さ測定に基づく結晶化の
測定手順を規定している。試験片を低温の試験槽に保持した後,すぐに硬さを測定する。その後,24時間
又は168時間の間,試験片を低温下に保持し,硬さを測定する。この方法は,低温圧縮永久ひずみの求め
方と同様に,低温の容器内部で測定するため,実用的には困難である。硬さ試験方法を導入する理由の一
つは,加硫ゴムと同様に未加硫ゴムにも用いることができることである。未加硫ゴムの結晶化の検討は,
他の低温試験方法では実現可能でない。
4
各試験方法の有効性
試験結果は,特定の試験条件に依存するため,いずれの試験方法も絶対値を表すものではなく,異なる
試験条件は,異なる結果を与える。したがって,試験結果は,低温特性に関する指針として使用すること
はできるが,特定の製品の性能を正確に表すものではない。しかし,低温ねじり試験(ゲーマンねじり試
験)及び低温弾性回復試験(TR試験)の試験結果は,試験条件にほとんど依存せず,本質的に特性の変
化の尺度を表す。
異なる試験方法は,低温性能の異なる側面を測定しており,したがって,相補的である。与えられた状
況で,どの試験方法が望ましいかは,どのような側面又は特性が使用状況に関連しているかに依存する。
例えば,低温でも柔軟性を保つことが唯一の考慮事項である場合,衝撃ぜい化試験が適切である。シール
のように,変形からの回復が重要である場合は,永久ひずみ又は低温弾性回復試験(TR試験)がより関
連している。前述したように,これらの低温試験規格以外の特性が特定の状況において適切な場合もある。
5
試験方法の比較
様々な試験方法が性能の異なる側面を測定しているという事実にもかかわらず,試験結果をどのように
比較するかについて多くの議論がある。試験方法の比較については,文献[7]を参照するとよい。配合ゴム
の特性比較は,常に全ての試験方法で同じではないが,合理的な相関関係が,同じような測定値(例えば,
硬さとゲーマンねじり試験のねじりモジュラスとの間),又は同じような剛性の程度を表す測定値(例えば,
ぜい化温度とゲーマンねじり試験のt10又はTR試験のTR10との間)で認められることが,報告されてい
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る。
参考文献
[1] JIS K 6240 原料ゴム−示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度の求め方
[2] JIS K 6261-2 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−低温特性の求め方−第2部:低温衝撃ぜい化試験
注記 対応国際規格:ISO 812,Rubber, vulcanized or thermoplastic−Determination of low-temperature
brittleness(MOD)
[3] JIS K 6261-3 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−低温特性の求め方−第3部:低温ねじり試験(ゲーマ
ンねじり試験)
注記 対応国際規格:ISO 1432,Rubber, vulcanized or thermoplastic−Determination of
low-temperature stiffening (Gehman test)(MOD)
[4] JIS K 6261-4 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−低温特性の求め方−第4部:低温弾性回復試験(TR試
験)
注記 対応国際規格:ISO 2921,Rubber, vulcanized−Determination of low-temperature retraction (TR
test)(MOD)
[5] JIS K 6262 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方
注記 対応国際規格:ISO 815-2,Rubber, vulcanized or thermoplastic−Determination of compression
set−Part 2: At low temperatures(MOD)
[6] ISO 3387,Rubber−Determination of crystallization effects by hardness measurements
[7] Brown R.P. Physical Testing of Rubber. Springer, 2006
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附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS K 6261-1:2017 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−低温特性の求め方−第1部:一
般事項及び指針
ISO 18766:2014,Rubber, vulcanized or thermoplastic−Low temperature testing−General
introduction and guide
(I)JISの規定
(II)国際
規格番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1A 引用規
格
−
追加
用語としてJIS K 6200を引用して
いるため追加した。
分かりやすくするための追加であ
り,技術的差異はない。
3 低温試験
の種類
3.1 一般事項
注記
3.1
General
追加
熱的なガラス転移温度の測定方法
としてJIS K 6240を引用した。
分かりやすくするための追加であ
り,技術的差異はない。
3.2及び3.3
3.3及び
3.2
変更
箇条の順番を,規格群の部番号に合
わせ,入替えた。
旧規格での箇条の順番を踏襲した
もので,技術的差異はない。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 18766:2014,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
K
6
2
6
1
-1
:
2
0
1
7