K 6217-7:2013
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 原理······························································································································· 2
4 器具及び装置 ··················································································································· 2
5 試薬······························································································································· 3
6 吸着装置の準備 ················································································································ 3
7 試料の前処理 ··················································································································· 3
7.1 一般事項 ······················································································································ 3
7.2 真空式 ························································································································· 4
7.3 ガス流通式 ··················································································································· 4
8 試験手順 ························································································································· 5
8.1 一般事項 ······················································································································ 5
8.2 共通手順 ······················································································································ 5
8.3 精密操作(操作A)········································································································ 5
8.4 簡便操作(操作B) ········································································································ 5
8.5 測定結果の検証 ············································································································· 5
9 外部比表面積の求め方 ······································································································· 6
9.1 一般事項 ······················································································································ 6
9.2 試験手順 ······················································································································ 6
9.3 試験結果の計算 ············································································································· 7
9.4 測定結果の検証 ············································································································· 7
10 精度及びかたより ··········································································································· 7
11 記録 ····························································································································· 7
附属書JA(参考)精度及びかたより ························································································ 8
附属書JB(参考)BET原理の詳細 ························································································· 11
附属書JC(参考)NSA・STSAの計算 ····················································································· 14
附属書JD(参考)単点法窒素比表面積の検定 ··········································································· 16
附属書JE(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 17
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,日本ゴム工業会
(JRMA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべき
との申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS K 6217-7:2008は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS K 6217の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS K 6217-1 第1部:よう素吸着量の求め方(滴定法)
JIS K 6217-2 第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法
JIS K 6217-3 第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法
JIS K 6217-4 第4部:オイル吸収量の求め方(圧縮試料を含む)
JIS K 6217-5 第5部:比着色力の求め方
JIS K 6217-6 第6部:ディスク遠心光沈降法による凝集体分布の求め方
JIS K 6217-7 第7部:ゴム配合物−多点法窒素比表面積(NSA)及び統計的厚さ比表面積(STSA)の
求め方
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日本工業規格 JIS
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ゴム用カーボンブラック−基本特性−
第7部:ゴム配合物−多点法窒素比表面積(NSA)
及び統計的厚さ比表面積(STSA)の求め方
Carbon black for rubber industry-Fundamental characteristics-
Part 7: Rubber compounding ingredients-Determination of multipoint
nitrogen surface area (NSA) and statistical thickness surface area (STSA)
序文
この規格は,2012年に第2版として発行されたISO 18852を基とし,技術的内容を変更して作成した日
本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線及び側線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JEに示す。
1
適用範囲
この規格は,ゴム用配合剤として用いるカーボンブラック,シリカ及び酸化亜鉛(以下,カーボンブラ
ックなどという。)の基本特性のうち,BET(附属書JB参照)のガス吸着理論の多点法に基づく窒素比表
面積(NSA)の求め方について規定する。また,測定範囲を変えることによって,カーボンブラックの統
計的厚さ比表面積(細孔内部の比表面積を含まない外部比表面積)(STSA)の求め方について規定する。
ただし,STSAは,シリカ及び酸化亜鉛には適用できない。この規格は,JIS K 6217-2で規定する単点法
の測定結果を検証するためにも用いる(附属書JD参照)。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 18852:2012,Rubber compounding ingredients−Determination of multipoint nitrogen surface area
(NSA) and statistical thickness surface area (STSA)(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
警告 この規格の利用者は,通常の実験室での作業に精通していることを前提とする。この規格は,
その使用に関連して起こる全ての安全上の問題を取り扱おうとするものではない。この規格の
利用者は,各自の責任において安全及び健康に対する適切な措置をとらなければならない。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)
は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
2
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JIS K 1107 窒素
JIS K 6217-2 ゴム用カーボンブラック−基本特性−第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点
法
注記 対応国際規格:ISO 4652:2012,Rubber compounding ingredients−Carbon black−Determination of
specific surface area by nitrogen adsorption methods−Single-point procedures(MOD)
JIS K 6217-3 ゴム用カーボンブラック−基本特性−第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法
JIS K 6430 ゴム用配合剤−シリカ−試験方法
注記 対応国際規格:ISO 5794-1:2005,Rubber compounding ingredients−Silica, precipitated, hydrated
−Part 1: Non-rubber tests(MOD)
ISO 9298:1995,Rubber compounding ingredients−Zinc oxide−Test methods
3
原理
この試験は,カーボンブラックなどの試料に吸着する窒素量を測定すること及びこの吸着量からNSA・
STSAを計算で求めることからなる。吸着量の測定は,カーボンブラックなどの試料を吸着セル内に入れ,
表面に吸着しているガスなどを脱気する。既知量のガスを液体窒素温度に保たれた吸着セルに導入する。
カーボンブラックなどへのガス吸着が起こり,吸脱着平衡に達するまで圧力が減少していく。吸脱着平衡
圧力での吸着量は,導入したガス量と気相に残ったガス量との差になる。圧力は,吸着系1) の温度ととも
に測定する。吸着系の容積は,ヘリウムのような吸着しないガスによって事前に測定しておく。このよう
にして得られた吸着量に対してBET解析を行ってNSAを求める。また,tプロット解析によってSTSAを
求めることができる。
注記 原理の詳細を附属書JBに記載する。
注1) 吸着系とは,図1の基準容積部及び吸着セル内部をさす。
4
器具及び装置
器具及び装置は,次による。
4.1
定容量法自動吸着装置 定容量法自動吸着装置[以下,吸着装置という(図1参照)。]は,分析に
必要な基準容積部,デュワー瓶及びその他の附属品からなる。市販の吸着装置は,空の吸着セルの校正方
法に二つの方法があり,いずれの方法でもこの測定方法に用いることができる。一つは,空の吸着セルの
容積を事前に求め,吸着セルの校正ファクタを求めるものであり,もう一つは,試料を入れた吸着セルと
平行して空の吸着セルを測定し,空の吸着セルの圧力変化から容積変化を把握することにより計算による
校正を必要としないものである。
4.2
吸着セル 吸着セル(以下,セルという。)は,ガラス製であり,吸着装置に取り付けたときに2.7 Pa
以下の真空(以下,真空という。)に耐えるもので,乾燥後再吸着を避けるため,蓋又はバルブ付きのもの
を用いる。
4.3
圧力センサ 圧力センサは,0〜100 kPaの範囲で,28 kPa以下については±70 Pa,28 kPa以上につ
いては±0.25 %以下の誤差の精度をもつものを用いる。
4.4
はかり はかりは,0.1 mgまではかれるものを用いる。
4.5
前処理装置及び加熱部 前処理装置は,加熱及びパージガスを流すか又は減圧吸引することで,試
料に吸着している物質を除去する装置である。加熱部は,300±10 ℃の温度を維持できるものを用いる。
4.6
基準容積部 基準容積部は,容量既知のガスだめにバルブ又は栓を備えた部分とセル接続部に連結
3
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するアダプタを備えた部分とから構成する。基準容積部の容量をあらかじめ測定してあるものを用いる。
1:容量既知のガスだめ
2:圧力センサ
3:基準容積部
4:真空ポンプ
5:液体窒素液面
6:吸着セル
7:試料
8:デュワー瓶
9:アダプタ
10:N2ボンベ
11:Heボンベ
図1−定容量法自動吸着装置の概略
5
試薬
試薬は,次による。
5.1
液体窒素 液体窒素は,純度99.9 %以上のものを用いる。
5.2
高純度窒素 高純度窒素は,JIS K 1107に規定する2級以上のものを用いる。
5.3
高純度ヘリウム 高純度ヘリウムは,純度99.99 %以上のものを用いる。
6
吸着装置の準備
吸着装置の準備は,次による。
a) 本体装置及びパソコンの電源を入れる。
b) ヘリウム及び窒素のボンベに配管を接続して,2次圧レギュレータが使用装置の規定の圧力になって
いることを確認する。
c) 配管の接続部分からの漏れがないことを確認する。ボンベを新規に交換した場合,又は1か月以上装
置を停止している場合は,本体に接続するまでの配管をガス洗浄する。
なお,吸着装置の漏れの確認及び誤差要因については,装置の説明書を精読する。
7
試料の前処理
7.1
一般事項
NSA・STSAを求めるには,測定前に試料表面に付着したガスなどを事前に取り除く(以下,脱気とい
う。)必要がある。脱気条件は,測定する物質によって異なる。脱気条件(7.2.3及び7.3.3参照)は,カー
ボンブラックに対するものであり,シリカ及び酸化亜鉛に対しては,表1に示す数値に変えなければなら
ない。
脱気方法は,真空式及びガス流通式の2種類がある。それぞれの手法には,試料を加熱する機構がある。
4
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表1−各種物質の脱気条件
物質
温度
℃
時間(最低)
h
引用試験方法
カーボンブラック
300±10
0.5
JIS K 6217-2の3.6.1 b),4.4及び5.6.6
シリカ
155±5
1.0
JIS K 6430のD.4(試料の採取)f)及び
E.3(試験の手順)b)
酸化亜鉛(タイプA又はB)a)
300±10
0.5
−
酸化亜鉛(タイプC)a)
155±5
1.0
−
注a) 種々の酸化亜鉛のグレードは,ISO 9298:1995の表D.1(Classification)による。
7.2
真空式
7.2.1
試料を含まない空のセルを真空脱気後,セルを大気圧の窒素ガス(5.2参照)又はヘリウムガス(5.3
参照)で満たす。セルをアダプタから取り外し,速やかに蓋又はバルブで密閉して,0.1 mgの単位までは
かり,その質量m1を記録する。
7.2.2
試料の窒素吸着比表面積が20 m2〜50 m2 2) に相当する量になるように事前に乾燥した試料をはか
り,セル(4.2参照)の中に入れる。セルの管に付着した試料は,パイプクリーナでセルの中に入れ込む。
注2) 試料の表面積の想定がつかない場合は,事前に予備試験を行って決めることもできる。
7.2.3
試料を入れたセルを前処理装置に接続し,300±10 ℃で0.5時間以上(表1参照)真空加熱脱気す
る。専用前処理装置がないものについては,アダプタ(図1参照)に取り付け,真空加熱脱気する。取扱
いは,説明書の手順に従い行うことが必要である。
7.2.4
真空脱気後,大気圧で7.2.1で用いたものと同じガスを満たす。セルをアダプタから取り外し,速
やかに蓋又はバルブで密閉して,0.1 mgの単位まではかり,その質量m2を記録する。
7.2.5
試料質量は,式(1)によって算出する。
m0=m2−m1 ·············································································· (1)
ここに,
m0: 試料の質量(g)
m1: 吸着セル,ガラス棒,充塡ガス及び蓋又はバルブ質量(7.2.1
参照)(g)
m2: 吸着セル,ガラス棒,蓋又はバルブ,充塡ガス及び試料の質
量(7.2.4参照)(g)
7.3
ガス流通式
7.3.1
試料を含まない空セルをアダプタに接続し,セルに接続しているバルブを開く。窒素ガス(5.2参
照)又はヘリウムガス(5.3参照)の流通チューブを底に当たるまで挿入し空セルにガス導入後,セルを
アダプタから取り外し,速やかに蓋又はバルブで密閉して,0.1 mgの単位まではかり,その質量m1を記録
する。
7.3.2
試料のNSAが20 m2〜50 m2に相当する量になるように事前に乾燥した試料をはかり,セルの中に
入れる。セルの管に付着した試料は,パイプクリーナでセルの中に入れ込む。
7.3.3
試料を入れたセルをアダプタに接続し,セルに接続しているバルブを開く。7.3.1で用いたものと
同じガスの流通チューブを底に当たるまで挿入し,サンプルが飛ばないような適正な流量のガスを流す。
ガスを導入しながら試料を300±10 ℃で0.5時間以上(表1参照)加熱し,経時的に質量が変化し試料の
脱気を終了する。
なお,加熱時間は,試料によって著しく変化することがあるので,時間に余裕をもつことが望ましい。
7.3.4
試料を入れたセルをアダプタから取り外す。速やかにセルに栓をして,0.1 mgの単位まではかり,
その質量m2を記録する。
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7.3.5
試料質量は,7.2.5と同様に算出する。
8
試験手順
8.1
一般事項
試験手順では,測定点の選び方が重要である。測定点を選ぶ方法には,精密に結果を出す方法(操作A)
及び操作Aの結果を基に簡便に値を得る方法(操作B)がある。
なお,ほとんどの操作が自動で行われるが,操作に慣れること及び取扱説明書を忠実に守ることが重要
である。
8.2
共通手順
測定点の選び方以外の操作は,共通である。操作手順は,次による。
a) デュワー瓶中の液体窒素(5.1)の温度は液体窒素に溶解した不純物及び周囲の圧力に影響される。酸
素などの不純物が増加すると容器中の液体窒素の温度が上昇し,そのために飽和蒸気圧は数kPa上昇
する。装置によっては,窒素の飽和蒸気圧を自動的に測定する装置もある。自動測定装置がない場合
は,温度を測定して飽和蒸気圧を求める。
b) 吸着装置で測定する相対圧力範囲,測定点数,飽和蒸気圧,試料質量などの必要情報を説明書に従っ
て,パソコンに入力する。STSAが必要な場合は,相対圧力が0.5になるまで設定する。また,NSA
だけが必要な場合は,相対圧力が0.3まででもよい。ここで,相対圧力とは,飽和蒸気圧に対する測
定圧力の比(P/P0)である(附属書JB参照)。
なお,吸着装置で測定する範囲,測定点数の決め方は,8.3及び8.4による。
c) 測定を開始する前にOリングにきずがないことを確認する。
注記 この操作が正しくないと測定中に漏えいが起こり,測定値を過小評価することがある。
d) 試料を含む脱気したセルをアダプタに接続する。
ガラス棒を吸着セルの管の部分に挿入すると,セルの体積を小さくでき,試験精度が改良できる。
注記 セルの管の部分は,液体窒素液面の変動による誤差の要因となる(図1に液体窒素液面を示
す。)。
e) 測定結果の計算吸着量は,入力された相対圧で測定し,装置の内部で計算され結果が表示される。
8.3
精密操作(操作A)
操作Aは,NSA・STSAを求める回帰直線の始点及び終点の範囲が不明の試料について,この決定のた
めに用いる精密な操作である。測定者は,全相対圧力区間(0〜0.5)で最低10点,望ましくは20点以上
の均等に分割した相対圧力で吸着量を測定する。この操作によって試料の吸着等温線が求まる。この吸着
量のBETプロットからNSAを求める範囲及びNSAが求まり,tプロットからSTSAを求める範囲及びSTSA
が求まる。NSAを求める一般的な始点及び終点は,相対圧力は0.05〜0.3とされているが,NSAが大きく
なると終点が小さくなる傾向にあるので,測定値によって変更することが望ましい。
注記 操作Aで測定する点数が多いほど,NSA・STSAの精度は上がるが,測定には時間がかかる。
8.4
簡便操作(操作B)
操作Bは,操作AでNSAを求める始点及び終点が分かっている品種について用いる簡便操作である。
分かっている始点及び終点の範囲で,2点以上の相対圧力の吸着量を求め,NSAを計算する。
8.5
測定結果の検証
8.5.1
測定結果の検証としてBET定数の確認を行うことが望ましい。通常のカーボンブラックにおいて
は,BET定数は75〜250の範囲にある。ただし,多孔質カーボンブラックにおいては,始点及び終点を0.05
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〜0.3の相対圧力で計算すると,BET定数が負の値をとる。
この場合は,V(1−P/P0)が最大値が得られる相対圧力までを測定区間として,BET定数が負の値をと
らない範囲で,再測定又は再計算しなければならない。
8.5.2
測定の精度を確認するため,定期的に標準物質による校正を行い,この測定値が標準物質の指定範
囲に入っていることを確認する。測定値が標準物質の指定範囲を外れている場合は,7.1〜7.2及び8.1〜8.3
の操作を再度行い,それでも誤差の要因がつかめない場合は,測定機器メーカに相談する。
なお,標準物質には認証標準物質を用いることが望ましい。
認証標準物質は,国家標準機関によって提供され,現在,ドイツBAM及び米国NISTから入手可能であ
る。
Bundesanstalt für Materialforschung und-prüfung (BAM)
Division I. 1 Inorganic Chemical Analysis; Reference Materials
Branch Adlershof,Richard-Willstätter-Straße 11,D-12489 Berlin,Germany
Standard Reference Materials Program
National Institute of Standards and Technology (NIST)
100 Bureau Drive,Stop 2322
Gaithersburg,MD 20899-2322,USA
上記の情報は,この規格の利用者に便宜を与えるためのものであり,それらの製品をJIS(ISO規格)
が保証するものではない。同じ結果を与える場合は,同等の標準物質を使うことができる。
9
外部比表面積の求め方
9.1
一般事項
カーボンブラックの細孔比表面積を除いた外部比表面積は,ゴム配合物性を決定する重要な要因の一つ
である。外部比表面積測定方法には,幾つかの方法がある(JIS K 6217-3など。)。このうちSTSAは,窒
素吸着量の測定データ及び各測定機器メーカ又は過去の文献の基準物質の吸着層厚さを利用して,全比表
面積から,0.86 nm以下の細孔内部と外部比表面積とを分離して外部比表面積を求める方法(tプロット解
析)である。
注記 CTAB(臭化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)の分子は,0.9 nmの分子径をもつため
この分子径以下の細孔を除いた外部比表面積が求められる。
STSAでは,0〜X nm(Xは2 nm未満)の範囲の細孔を除いた外部比表面積を求めることが
できる。Xの値は,測定する相対圧力の範囲で決めることができる。この規格の設定(相対圧
力0.2〜0.5)は,0.86 nmまでの細孔を除いた外部比表面積である。測定相対圧の範囲を上げる
ことによってより大きな細孔を除いた外部比表面積が求めることができる。例えば,1.4 nm以
下の細孔を除くには相対圧力0.6〜0.9の区間で直線を求めることが必要となる。
9.2
試験手順
試験操作は,8.2と同様に行う。
操作Aにおいては,NSA・STSAを求める操作を同時に行うことができる。
操作Bは,操作AでSTSAを求める近似直線の始点及び終点が分かっている品種について用いる簡便操
作であり,比表面積の測定と別個に実施することができる。分かっている始点及び終点の範囲で3点以上
の相対圧力で吸着量を求め,その直線性を確認した上でSTSAを求める。
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9.3
試験結果の計算
9.3.1
この測定値の相対圧力0.2〜0.5の領域でtプロット解析を行い,外部比表面積を計算し求める。
tプロット解析においては,2本の近似直線が求められる。NSAを求める直線は,相対圧力0.05〜0.3程
度にある。STSAを求める直線は,0.2〜0.5程度にある。この近似直線の切片及び傾きから,NSA及びSTSA
が求められる。詳細を附属書JCに示す。
9.3.2
tプロット解析のプログラムの挿入は,装置メーカと相談の上,行う。また,取扱説明書をよく読
んで,実施する。
9.4
測定結果の検証
測定の精度を確認するため,定期的に基準試料による校正を行い,この測定値が基準試料の指定範囲に
入っていることを確認する。測定値が基準試料の指定範囲を外れている場合は,7.2〜7.3及び9.2〜9.3の
操作を再度行い,それでも指定範囲を外れている場合は,測定機器メーカに相談する。
10 精度及びかたより
精度及びかたよりは,SRB-E8多孔質カーボンについて調査した値を附属書JAに記載した(内容は附属
書JA参照)。
11 記録
試験報告書には,次の事項を記載する。
a) この規格の番号
b) 試料の名称
c) 前処理の条件
d) 用いた方法
NSA又はSTSA及びA法・B法
e) 測定結果 [0.1×103 m2/kg(0.1 m2/g)の単位まで記載]
f)
測定点数及び相対圧の範囲
g) 試験年月日
h) 測定者
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附属書JA
(参考)
精度及びかたより
JA.1 窒素吸着比表面積の精度
JA.1.1 この試験方法の精度の計算は,ISO/TR 9272:2005(参考文献[1]参照)のレベル2に従って行った。
用語及び統計上の詳細については,それを参照する。
JA.1.2 得られた精度は,測定の精度を予測するものである。精度のパラメータをカーボンブラックの合否
判定試験に用いる場合には,これらのパラメータが,対象とするカーボンブラック及び採用した試験に適
用できることを,文書で確認しておかなければならない。
JA.1.3 カーボンブラックに対して,タイプ1の試験室間試験プログラムを実施した。表JA.1にその詳細
を示す。得られた併行精度及び再現精度は,短い期間の試験状況を表すものである。
表JA.1−試験室間精度テスト
試験日
試料
試験室数
2012年4月
SRB-E8(NSA)
6
2012年4月
SRB-E8(STSA)
6
2012年6月
多孔質カーボン(A社品)
6
JA.1.4 精度の計算結果を表JA.2に示す。
JA.1.5 BET吸着比表面積の平均値に対する精度は,次のとおりである。
a) 併行精度(試験室内繰返し精度) 併行精度(r)は,0.4 %となった。表JA.2に示す値は,個々の試
料の併行精度の推定として用いることができる。二つの試験結果が,表JA.2の品種の(r)の値より
大きな差がでた場合は,疑わしいと考え,何らかの適切な精査を要する。
b) 再現精度(試験室間精度) 再現精度(R)は,3.8 %となった。表JA.2に示す値は,個々の試料の再
現精度の推定として用いることができる。二つの試験結果が,表JA.2の品種の(R)の値より大きな
差がでた場合は,疑わしいと考え,何らかの適切な精査を要する。
表JA.2−NSAによるカーボンブラック比表面積の精度
評価試料
平均
比表面積
m2/g
試験室内
試験室間
Sr
m2/g
r
m2/g
(r)
%
SR
m2/g
R
m2/g
(R)
%
SRBE-8(N762)
36.25
0.05
0.142
0.4
0.481
1.36
3.8
JA.2 窒素比表面積のかたより
かたよりとは,平均的な測定値と標準値(真の値)との差である。測定値は,この試験方法によってだ
け求められるので,この試験方法に対する標準値というものは存在しない。したがって,かたよりを求め
ることができない。
JA.3 統計的厚さ比表面積(STSA)の精度
JA.3.1 この試験方法の精度の計算は,ISO/TR 9272:2005(参考文献[1]参照)のレベル2に従って行った。
用語及び統計上の詳細については,それを参照する。
9
K 6217-7:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JA.3.2 得られた精度は,測定の精度を予測するものである。精度のパラメータをカーボンブラックの合否
判定試験に用いる場合には,これらのパラメータが,対象とするカーボンブラック及び採用した試験に適
用できることを,文書で確認しておかなければならない。
JA.3.3 タイプ1の室間精度試験を行い,表JA.3に詳細を示した。併行精度及び再現精度は,短い期間の
試験条件を表すものである。
JA.3.4 STSA比表面積の平均値に対する精度は,次のとおりである。
a) 併行精度(試験室内繰返し精度) 併行精度(r)は1.0 %となった。表JA.3に示す値は,個々の試料
の併行精度の推定として用いることができる。二つの試験結果が,表JA.3の品種の(r)の値より大
きな差がでた場合は,疑わしいと考え,何らかの適切な精査を要する。
b) 再現精度(試験室間精度) 再現精度(R)は,3.3 %となった。表JA.3に示す値は,個々の試料の再
現精度の推定として用いることができる。二つの試験結果が,表JA.3の品種の(R)の値より大きな
差がでた場合は疑わしいと考え,何らかの適切な精査を要する。
表JA.3−STSAによるカーボンブラック外部比表面積の精度
評価試料
平均
比表面積
m2/g
試験室内
試験室間
Sr
m2/g
r
m2/g
(r)
%
SR
m2/g
R
m2/g
(R)
%
SRBE-8
35.57
0.129
0.364
1.0
0.481
1.18
3.3
JA.4 STSAのかたより
かたよりとは,平均的な測定値と標準値(真の値)との差である。測定値は,この試験方法によってだ
け求められるので,この試験方法に対する標準値というものは存在しない。したがって,かたよりを求め
ることができない。
JA.5 NSAによる多孔質カーボンブラック比表面積の精度
JA.5.1 この試験方法の精度の計算は,ISO/TR 9272:2005(参考文献[1]参照)のレベル2に従って行った。
用語及び統計上の詳細については,それを参照する。
JA.5.2 得られた精度は,測定の精度を予測するものである。精度のパラメータをカーボンブラックの合否
判定試験に用いる場合には,これらのパラメータが,対象とするカーボンブラック及び採用した試験に適
用できることを,文書で確認しておかなければならない。
JA.5.3 多孔質カーボンブラックに対して,試験室間試験プログラムを実施した。表JA.4にその詳細を示
す。得られた併行精度及び再現精度は,短い期間の試験状況を表すものである。
JA.5.4 精度の計算結果を表JA.4に示す。
JA.5.5 多孔質カーボンブラック比表面積の平均値に対する精度は,次のとおりである。
a) 併行精度(試験室内繰返し精度) 併行精度(r)は0.6 %となった。表JA.4に示す値は,個々の試料
の併行精度の推定として用いることができる。二つの試験結果が,表JA.4の品種の(r)の値より大
きな差がでた場合は,疑わしいと考え,何らかの適切な精査を要する。
b) 再現精度(試験室間精度) 再現精度(R)は,5.8 %となった。表JA.4に示す値は,個々の試料の再
現精度の推定として用いることができる。二つの試験結果が,表JA.4の品種の(R)の値より大きな
差がでた場合は,疑わしいと考え,何らかの適切な精査を要する。
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K 6217-7:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表JA.4−多点法窒素吸着による多孔質カーボンブラック比表面積の精度
評価試料
平均
比表面積
m2/g
試験室内
試験室間
Sr
m2/g
r
m2/g
(r)
%
SR
m2/g
R
m2/g
(R)
%
多孔質カーボン
239.74
0.47
1.32
0.6
4.88
13.81
5.8
JA.6 多孔質カーボンブラック比表面積のかたより
かたよりとは,平均的な測定値と標準値(真の値)との差である。測定値は,この試験方法によってだ
け求められるので,この試験方法に対する標準値というものは存在しない。したがって,かたよりを求め
ることができない。
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K 6217-7:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書JB
(参考)
BET原理の詳細
JB.1 BET測定とは
BET測定は,粉体粒子表面に大きさの分かった分子を吸着させ,その量から試料の比表面積を測定する
方法で,Brunauer,Emmett及びTellerによって導かれたBET式を用いるため,このように呼ばれている。
粉体(吸着媒)の表面積は,吸着ガス分子が吸着媒に吸着してその全表面に単分子膜を形成しているとす
ると,吸着ガス分子1個が占めている面積(a)に単分子層を形成している全分子数を乗じることによって
求めることができる(例えば,吸着ガスが窒素ガスの場合,a=0.162 nm2/77 K)。
JB.2 吸着及び吸着等温線
粉体にある細孔・表面積,表面性状は,清浄にした個体の表面に大きさの分かっている分子を吸着させ
ることによって測定することができる。
相対圧力を上げるにしたがって,吸着量は増大する。相対圧力(P/P0)が低い状況では,まず微細孔部
分から吸着が始まり,表面の吸着に移り,飽和蒸気圧(相対圧力P/P0=1)では個体が液体に完全に浸か
った状況となる。この吸着の状況を吸着量及び相対圧力でグラフ化したものが,吸着等温線である。
吸着等温線は,幾つかの形があり一般のカーボンブラック,及びシリカは,II形である。カーボンブラ
ックでも多孔質カーボンブラックは,I形に分類される(図JB.1参照)。
吸
着
量
相対圧力 P/P0
図JB.1−吸着等温線の形
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注記 図中の破線は,測定点SPのときの一点法の場合である。
図JB.2−BETプロット例
JB.3 BET原理
一般に表面の吸着は,1層が完全に吸着した後,2層に移るような挙動ではない。しかし,計算によって
1層の吸着量を正しく求めることができる。これがBETの理論で,現在でも比表面積決定の根拠となって
いる。吸着量V及び相対圧力(P/P0)を基に1/[V(P0/P−1)]を縦軸,(P/P0)を横軸にプロットすると(BET
プロット。図JB.2参照),細孔吸着の後,相対圧力0.05〜0.3程度で直線が現れる。直線の傾きと切片から
試料の比表面積を求めることができる。相対圧力は0.05〜0.3程度としたが,実際の物質においては多少の
変化があるので,一度は固有の物質について相対圧力0〜0.3の領域で測定し,直線部分を決定する必要が
ある(この操作を操作Aと呼ぶ)。直線領域が分かれば,その範囲内であれば2点の測定でも比表面積を
正しく測定ができる(この簡便操作を操作Bと呼ぶ)。
なお,BET原理は,II形(細孔がないカーボンブラック),IV形(2〜50 nmの細孔をもつカーボンブラ
ックを含む)に属する物質には,正しく適用できる。しかし,2 nm以下の細孔を多数もつ多孔質物質は,
I形に属し測定範囲は別に定めなければならない。この場合は,V(1−P/P0)が最大値が得られる相対圧
力までを測定区間としてBET定数が負の値を取らない範囲で,再測定,又は再計算しなければならない。
JB.4 窒素吸着量の測定
定容量法自動吸着装置(4.1参照)の基準容積部(4.6参照)の体積(ここでは,V1と呼ぶ)は,装置製
作時に検定されている。吸着セルの体積(ここでは,V2と呼ぶ)の測定には幾つかの手法がある。例えば,
セルを取り付け脱気した後に,基準容積部にへリウムを導入し,圧力をP0ではかり,セル部分に通じるバ
ルブを開く。この時圧力が下がりP0ʼとなる。この圧力変化から吸着セルの体積V2をはかる方法などがあ
る。
窒素吸着量は,基準容積部で圧力P1をはかる体積が既知であり,この基準容積部の中の窒素の量が測定
される。
G=P1×V1/(RT)······································································ (JB.1)
ここに,
G: 窒素ガス導入量
バルブを開くと吸着がなければ圧力はP1ʼに低下するはずである。
実際には,試料への吸着があり圧力がP1”になったとすると,圧力P1”における気相における窒素ガスの
残量は,式(JB.2)となる。
Gʼ=P1”×(V1+V2)/(RT) ··························································· (JB.2)
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K 6217-7:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ここに,
Gʼ: 窒素ガス導入量
さらに,圧力P1”における吸着量ADS(1)は式(JB.1)と式(JB.2)の差となる。
ADS(1)=[(P1×V1−P1”×(V1+V2)]/(RT) ······································· (JB.3)
次にセル部に通じるバルブを閉じ,圧力をP2まで上げて同様な操作を行い,次の操作を繰り返す。2点
目の吸着量は窒素ガス導入量が基準容積部だけではなく1点目の測定終了時の残量のガス圧P1”がV2に残
っている。そのため圧力P2”における新たな吸着量ΔADS(2)は,式(JB.4)となり,
ΔADS(2)=[P2×V1+P1”×V2−P2”×(V1+V2)]/(RT) ························· (JB.4)
圧力P2”までの総吸着量ADS(3)は,式(JB.5)となる。
ADS(3)=ADS(1)+ΔADS(2) ························································ (JB.5)
同様の操作を繰り返すとそれぞれの圧力で吸着量が求められる。
14
K 6217-7:2013
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附属書JC
(参考)
NSA・STSAの計算
ほとんどの自動装置では,測定の終了時に必要な計算が実行される。使用者は,自動計算が次の順序で
行われていることを知っておく必要がある。
JC.1 窒素吸着比表面積の計算
JC.1.1 測定したそれぞれの相対圧に対して,試料1 gに吸着した窒素の体積Vを,式(JC.1)によってmL/g
の単位で計算する。
=
0
ads
m
V
V
············································································ (JC.1)
ここに,
V: それぞれの相対圧下で試料1 gに吸着した標準状態(0 ℃,0.1
MPa)における窒素吸着量(mL/g)
Vads: それぞれの相対圧下で試料に吸着した標準状態(0 ℃,0.1
MPa)における窒素吸着量(mL)
m0: サンプル質量(g)
JC.1.2 実際の試料においては,単分子吸着が終了し,次に2分子吸着へと進むようなことはない。しかし,
式(JC.2)のBET式を用いると単分子吸着した量(Vm)を計算することができる。
+
×
−
=
−
C
V
P
P
C
V
C
P
P
V
m
0
m
0
1
1
1
1
·············································· (JC.2)
ここに,
P: 測定圧(kPa)
P0: 窒素の飽和蒸気圧(kPa)
V: それぞれの相対圧下で試料1 gに吸着した窒素吸着量(mL/g)
Vm: 単分子層吸着した試料1 g当たりの窒素吸着量(mL/g)
C: BET定数
JC.1.3 II形,IV形の資料において,吸着量をBETプロット{1/[V(P0/P−1)]及びP/P0の相関曲線}がある
区間で直線となる。この直線を直線回帰分析して,得られる傾きM及び切片Bは,式(JC.3)及び式(JC.4)
によって示される。
C
V
C
M
m
1
−
=
············································································ (JC.3)
C
V
B
m
1
=
·············································································· (JC.4)
ここに,
Vm: 単分子層吸着した試料1 g当たりの窒素吸着量(mL/g)
C: BET定数
直線回帰分析によって,M及びBの値を,0.000 01の桁数まで計算し,更に相関係数を計算する。この
相関係数は0.999 9以上にすることが望ましい。このような相関係数を得るためには,相対圧0.05〜0.3で
測定した,最も良い直線性(最も高い相関係数)を得る相対圧を選び計算を行うことが必要である。その
ような計算は,自動測定装置の計算プログラムの一部としてある。
注記 データの選択を簡単に行うためには,1/[V(P0/P−1)]とP/P0との関係をプロットすることで,制
限のある直線範囲内での測定点を目に見えるようにするとよい。
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K 6217-7:2013
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JC.1.4 M及びBの値から,式(JC.5)によってVm値(mL/g)を計算する。
B
M
V
+
=
1
m
········································································· (JC.5)
JC.1.5 窒素吸着比表面積S(m2/kg)は,式(JC.6)によって0.1×103 m2/kg(0.1 m2/g)の単位まで計算する。
S=Vm×4.35×103 ··································································· (JC.6)
ここに,数値4.35は,窒素1分子の表面積である16.2×10−20 m2から計算される窒素1 mLで占有され
る面積(m2)を示す。
(16.2×10−20 m2)×(6.02×1023)/22 400=4.35 m2/mL
なお,BET定数Cを計算することが望ましい。JC.1.3から,C=(M+B)/Bとなり,これから求めること
ができる。
注記 カーボンブラックのC値は,普通,75〜250の間にある。負の値は,相対圧力が正しく選択さ
れていないか,又は,試料が2 nm以下の細孔を多く含み,BET式から逸脱しているかのいず
れかであることが考えられる。
JC.2 STSAの計算
JC.2.1 それぞれの相対圧力(P/P0)における試料1 gに吸着した窒素の体積Vを式(JC.1)から,統計的厚
さtを式(JC.7)から求める。ただし,式(JC.7)の適応範囲は相対圧0.5を超えてはならない。
98
.2
45
.6
88
.0
0
2
0
+
+
=
P
P
P
P
t
·················································· (JC.7)
現在測定装置メーカからは,相対圧0.9まで適用可能な値,又は数式が準備されている。
JC.2.2 X軸にtを,Y軸にVをとり,得られる第2直線領域の直線回帰分析によって,傾きMt及び相関
係数rを計算する。
相対圧力は,最も高い相関係数が得られる値を用いる。相関係数は,0.999 9以上になるようにすること
が望ましい。
JC.2.3 STSAを式(JC.8)によって0.1 m2/gの単位まで計算する。
St=15.47×Mt········································································ (JC.8)
ここに,
St: 統計的厚さ比表面積(STSA)
Mt: 回帰直線の傾き
15.47: m2/gへの単位の変換係数
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K 6217-7:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書JD
(参考)
単点法窒素比表面積の検定
JD.1 単点法窒素比表面積及び多点法窒素比表面積
単点法窒素比表面積は,相対圧力0.3と原点とを結ぶ直線から比表面積を求めたものである。
比表面積は,[1/(傾き+切片)]に比例する。単点法は,切片は0と仮定しており,傾きが大きくなる。
このため,単点法は,多点法に比較して比表面積は,常に低い数値をとる。しかし,試料比表面積の大小
関係がずれず,また,測定が短時間で済むという利点があるため,多点窒素比表面積で検定した後,工程
管理,出荷管理等の分野で用いることができる。
注記 多孔質カーボンブラックには,単点法測定ではなく多点法測定を用いることが望ましい。
JD.2 校正
同一品種・銘柄等範囲の基準を決め,同一サンプルにて単点法及び多点法の両方で測定する。その測定
値をそれぞれSs,Smとすると,補正係数(α)は式(JD.1)になる。
α=Sm/Ss ············································································· (JD.1)
ここに,
Ss: 単点法でのNSA値(m2/g)
Sm: 多点法でのNSA値(m2/g)
単点法で測定したデータをαで補正して使用する場合,その旨を明示して使用することが望ましい。
参考文献
[1] ISO/TR 9272:2005,Rubber and rubber products−Determination of precision for test method standards
17
K 6217-7:2013
附属書JE
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS K 6217-7:2013 ゴム用カーボンブラック−基本特性−第7部:ゴム配合物−
多点法窒素比表面積(NSA)及び統計的厚さ比表面積(STSA)の求め方
ISO 18852:2012 Rubber compounding ingredients−Determination of multipoint
nitrogen surface area (NSA) and statistical thickness surface area (STSA)
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異
の箇条ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
3 原理
tプロット
3
追加
STSAの解析方法として
追加
STSAは,測定した吸着量をtプロットにて解析した結果得
られるのでその旨を記載した。ISOに提案する。
脱気条件の表
削除
記入場所の変更
脱気条件は,7サンプルの前処理及びひょう量で記載するの
が適当なため記載場所を変更した。ISOに提案する。
4 器具及び
装置
4
4.1 定容量形自
動吸着装置
削除
操作A,操作Bの記入場
所変更
操作A,操作Bは,吸着量を測定する点の選び方について記
載したものである。試験手順に記載すべき項目である記載場
所を変更した。ISOに提案する。
4.2 吸着セル
4.2 吸着セル
変更
吸着セルの耐圧について 吸着セルの耐圧を実情に合わせて変更した。ISOに提案す
る。
4.3 圧力センサ
4.3 圧力センサ
変更
圧力センサの圧力範囲に
ついて
圧力センサの圧力範囲を実情に合わせて変更した。ISOに提
案する。
4.6 基準容積部
4.8 校正体積
変更
校正容器の記載削除と基
準容積部挿入
基準容積部の説明を明確に記載した。
なお,この容積を検定するための校正容器は,分析実施者が
使うことがないため記載から外した。ISOに提案する。
5 試薬
5.1 液体窒素
5
5.3 液体窒素
変更
純度変更
液体窒素の純度は,99.9 %以上必要であり変更した。ISOに
提案する。
5.2 高純度窒素
5.4 高純度窒素
追加
JIS番号記載
高純度窒素の純度は,JIS K 1107に規定する2級以上のもの
が必要な旨を記載した。ISOに提案する。
5.3 高純度ヘリ
ウム
5.5 高純度ヘリ
ウム
追加
純度記載・使用目的追加 高純度ヘリウムの純度は,99.99 %以上必要であり純度を追
加した。ISOに提案する。
5.1 試薬
5.2 水
削除
使用の必要がないので削
除した。
2
K
6
2
1
7
-7
:
2
0
1
3
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
18
K 6217-7:2013
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異
の箇条ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
5 試薬
(続き)
6
削除
装置の内容積の測定,及
び校正は装置破損につな
がるため,してはいけな
いので内容を削除した。
定容量法自動吸着装置の準備は,装置のリーク等の確認を詳
細に記載しているが,手動式装置では記載のような確認はで
きるが自動装置ではそれぞれのバルブを個別に開け閉めし
た確認はできない。また,水を使用した容積の確認は装置の
破損につながり,規格としては適正ではないため削除した。
ISOに提案する。
6 吸着装置
の準備
7
変更
装置の準備に絞って記載
した。
装置の準備とサンプルの前処理は,別の項目である。
箇条6では,測定者がしなければいけない確認に絞って記載
した。ISOに提案する。
7 試料の前
処理
追加
サンプルの前処理は重要
な手順であり,箇条3及
び箇条7に個別記載され
ていた項目を記載した。
箇条3に示されていた前処理条件を箇条7に記載すると同時
に,現在の装置では多く設置されている前処理装置の付いて
いる装置についての記載を追加した。ISOに提案する。
8 試験手順
8
変更
測定点の決め方,測定結
果の検証について記載し
た。
試験手順で重要なのは,測定点の決め方であり,この考え方
を記載した。また,結果が正しいかどうかの検証及び正しく
ない場合の対応について記載した。ISOに提案する。
9
変更
附属書に記載した。
計算は全て自動で行われるので,測定者は実際の分析では本
項目どおりに行わなくてよく,知識として知っておくだけで
よい。したがって,附属書JCに詳細を記載した。ISOに提
案する。
9 外部比表
面積の求め
方
10
変更
考え方・操作・結果の検
証等について記載がなか
ったため追加した。
CTAB測定がなくなったため,外部比表面積は本方法しかな
くなった。このため外部比表面積の考え方を記載し,操作・
結果の考え方・検証について記載した。また,自動計算され
る計算手法については,附属書に移した。ISOに提案する。
11 記録
11
変更
前処理条件を付加
前処理条件は,測定値に影響するので記載した。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 18852:2012,MOD
2
K
6
2
1
7
-7
:
2
0
1
3
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
19
K 6217-7:2013
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
K
6
2
1
7
-7
:
2
0
1
3
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。