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K 4834:2013  

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 1 

4 一般事項························································································································· 4 

5 装置及び器具 ··················································································································· 4 

6 操作方法························································································································· 5 

6.1 装置の校正 ··················································································································· 5 

6.2 測定 ···························································································································· 6 

6.3 測定データの解析 ·········································································································· 7 

7 試験報告書 ····················································································································· 10 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人全国火薬類保安協会及び一般財団法

人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工

業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

  

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日本工業規格          JIS 

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化学物質の爆発危険性評価手法としての 

発熱分解エネルギーの測定方法 

Measurement method of exothermic decomposition energy  

for explosive estimation 

序文 

この規格は,2009年に第5版として発行された危険物輸送に関する国連勧告“試験方法及び判定基準の

マニュアル[Transport of Dangerous Goods−Manual of Tests and Criteria, fifth revised edition(以下,TDGとい

う。)]”に対応して,評価のための試験方法を明確にするために作成した日本工業規格である。 

適用範囲 

この規格は,示差走査熱量計を用いて化学物質(固体又は液体)の爆発危険性を判断するための発熱分

解エネルギーの測定方法について規定する。 

警告 この規格では測定対象物質が爆発危険性を有する可能性がある。化学物質の取り扱いに,十分

に精通していなければならない。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS K 0129 熱分析通則 

JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門) 

JIS K 0215 分析化学用語(分析機器部門) 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 0129,JIS K 0211及びJIS K 0215によるほか,次による。 

なお,括弧内の対応英語は,参考のために示す。 

注記 必要に応じてJIS K 0129:2005及びJIS K 0215:2005の定義を補足,補強などの変更を行ってい

る。変更を行った用語には,* を付した。 

3.1 

入力補償示差走査熱量測定(power-compensation differential scanning calorimetry) 

試料及び基準物質で構成される試料部の温度を,一定のプログラムによって変化させながら,その試料

及び基準物質の温度が等しくなるように,両者に加えた単位時間当たりの熱エネルギーの入力差を温度の

関数として測定する方法。 

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3.2 

熱流束示差走査熱量測定*(heat-flux differential scanning calorimetry) 

試料及び基準物質で構成される試料部の温度を,一定のプログラムによって変化させながら,その試料

と基準物質との温度差を,温度の関数として測定する方法。この温度差と単位時間当たりの熱エネルギー

差には相関がある。 

3.3 

示差走査熱量計(differential scanning calorimeter) 

示差走査熱量測定に用いる装置。 

3.4 

基準物質(熱分析の)*[reference materials (for thermal analysis)] 

熱分析において,試料の熱的変化との比較の基準として用いる,熱的に安定で相転移を起こさない物質。 

3.5 

標準物質(熱分析の)[standard materials (for thermal analysis)] 

示差走査熱量計において,温度又は熱量の校正に用いる物質。 

3.6 

DSC曲線*(DSC curve) 

縦軸を試料及び基準物質の温度が等しくなるように両者に加えた単位時間当たりの熱エネルギーの入力

差又は試料と基準物質との温度差(単位時間当たりの熱エネルギー差に相関),横軸を温度又は時間とし,

示差走査熱量測定において得られる曲線。 

3.7 

ベースライン*(baseline) 

DSC曲線において,試料に変化を生じない温度又は時間領域。 

3.8 

ピーク(peak) 

DSC曲線において,曲線がベースラインから離れて,再度ベースラインに戻るまでの部分。 

3.9 

補外転移開始温度(extrapolated onset temperature of transition) 

相転移が起きた際に,加熱測定における低温側のベースラインを高温側へ延長した直線と,ピークの低

温側の曲線に勾配が最大となる点で引いた接線との交点の温度。 

3.10 

密封試料容器(sealed cell) 

蓋があり,密封性をもつ試料容器。 

3.11 

高圧用密封試料容器(high-pressure sealed cell) 

耐圧性の高い[設計圧力が50×105 Pa以上1)]密封試料容器。 

注1) 消防法に準じる。 

3.12 

設計圧力(design pressure) 

高圧用密封試料容器において,使用し得る最高圧力。 

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3.13 

リファレンス(reference) 

示差走査熱量計における基準物質側。 

3.14 

液体(liquid) 

50 ℃において300 kPa(3 bar)以下の蒸気圧をもち,20 ℃,標準気圧101.3 kPaでは完全にガス状では

なく,かつ,標準気圧101.3 kPaにおいて融点又は融解が始まる温度が20 ℃以下の物質。 

3.15(gas) 

50 ℃で300 kPa以上の蒸気圧をもつ物質,又は20 ℃,101.3 kPaの標準気圧において完全にガス化する

物質。 

3.16 

固体(solid) 

液体又は気体の定義に当てはまらない物質又は混合物。 

3.17 

相転移(phase transition) 

同じ物質において,温度及び/又は圧力の変化によって,物質の物理的な性質が異なる状態に変化する

現象。 

3.18 

揮発性有機化合物(volatile organic compound VOC)2) 

沸点の範囲が50 ℃〜100 ℃から240 ℃〜260 ℃である有機化合物又は25 ℃での飽和蒸気圧が102 kPa

より大きい物質3)。 

注2) この用語の定義は,世界保健機構(WHO:World Health Organization)が定めたものである。 

3) 一部の化合物の沸点は,求めることが困難であったり不可能であったりする。その理由は,そ

れらの化合物が大気圧下では沸騰する前に分解するためである。蒸気圧は,化合物の揮発性を

分類するための別の基準であり,有機化合物の分類に使用できる。 

3.19 

高揮発性有機化合物(very volatile organic compound VVOC)2) 

沸点が0 ℃以下から50 ℃〜100 ℃である有機化合物又は蒸気圧が15 kPaより大きい物質3)。 

3.20 

安全データシート,SDS(Safety Data Sheet) 

化学品について,化学物質・製品名・供給者・危険有害性・安全上の予防措置・緊急時対応などに関す

る情報を記載する文書。 

注記 SDSは,JIS Z 7250:2010などで“製品安全データシート”,“化学物質等安全データシート”又

は“MSDS(Material Safety Data Sheet)”と定義していたものである(JIS Z 7253参照)。 

3.21 

発熱分解エネルギー(exothermic decomposition energy) 

化学物質が分解時に放出するエネルギー。発熱分解エネルギーは,反応熱,発熱量,発熱エンタルピー

などとも表現される。 

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一般事項 

示差走査熱量測定の一般事項は,JIS K 0129による。示差走査熱量測定(以下,DSC)は,測定試料及

び基準物質(加熱されても発熱反応及び吸熱反応を起こさない物質)を一定速度で加熱し,このときの両

者の熱量差を計測する熱分析の手法である。 

注記 DSCにおいては,測定試料が分解する際の発熱又は吸熱の様子を少量(数 mg)の試料で観察

でき,熱量を正確に知ることができる。DSCで得られる発熱分解エネルギーと化学物質の爆発

性とには相関性が認められており,DSCは従来危険性評価試験として使用されてきた。我が国

では,消防法において,DSCは化学物質が危険物第5類(自己反応性物質)に該当するか否か

を判断する試験として使用されている。 

装置及び器具 

装置及び器具は,次による。 

a) DSC装置 DSC装置は,次の2種類のいずれかを用いる。 

1) 入力補償DSC装置 入力補償DSCにおいては,試料(S)及び基準物質(R)は個別のヒーターで

加熱される。試料(S)と基準物質(R)の温度が測定され,両者は各々同じ温度調節プログラムで

制御される。試料(S)及び基準物質(R)が等しい温度に保持されるために必要な電力の差が,時

間又は温度に対して記録される。図1に,入力補償DSC装置の構成例を示す。 

図1−入力補償DSC装置の構成例 

2) 熱流束DSC装置 熱流束DSCにおいては,試料(S)と基準物質(R)は同一のヒーターで同じ温

度調節プログラムで制御される。試料(S)と基準物質(R)との温度差及び試料の温度を測定する。

試料(S)と基準物質(R)との温度差から,試料(S)と基準物質(R)各々への単位時間当たりの

熱流量の割合の差が導かれ,時間又は基準物質(R)に対して記録される。図2に,熱流束DSC装

置の構成例を示す。 

TS 試料の温度 

TR 基準物質の温度 

ΔT 試料と基準物質との温度差 

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図2−熱流束DSC装置の構成例 

b) 試料容器 試料容器は高圧用密封試料容器とし,容器材質はステンレス鋼製のものとする。ステンレ

ス鋼は耐食性が高く,炭素含有量が0.15 %以下のものに限定する。高圧用密封試料容器の中で内蓋を

使用する容器は,この材質もステンレス鋼製とする。 

c) 電子天びん 電子天びんは最小目盛が0.01 mg以下であるものとする。 

d) DSC装置用附属装置 

1) サンプルシーラ サンプルシーラは試料を高圧用密封試料容器内に密封するためのシール機能をも

つ附属装置である。シーラは軸のセンターがずれたり,蓋を容器に押し込む棒が変形すると,高圧

用密封試料容器は漏れやすくなる。シーラの取扱説明書によって,定期的にメンテナンスを行う必

要がある。 

2) オートサンプラ(自動試料供給装置) オートサンプラは試料容器を容器ホルダに自動的に装着す

る機能をもち,測定の開始及び終了に合わせて容器ホルダに装着されている密封試料容器を交換す

る装置である。 

3) 冷却装置 冷却装置は室温以下の温度領域において,加熱,冷却,急速冷却などの温度制御を行う

附属装置である。 

操作方法 

6.1 

装置の校正 

試験を行う前に,温度及び熱量について,JIS K 0129に規定する方法を用いてDSC装置を校正する。加

熱速度などの測定条件を変化させる場合には,測定対象物質の測定前に,必ず再校正をする。また,装置

は定期的(6か月を目安)に校正を行う。 

a) 標準物質 校正用標準物質は熱量校正用の認証標準物質又は純度99.99 %以上の金属を用いる。表1

に一般的に熱量校正に用いられる標準物質をまとめる。使用する標準物質は,試料瓶を窒素,アルゴ

ンなどの不活性ガスによって封入して保存する。標準物質(金属の場合)は測定前に前処理が必要な

場合がある。装置又は標準物質のメーカに確認をとり,適切な方法で取り扱う。 

注記 標準物質が非金属化合物の場合,認証標準物質でなくても,該当の有機物,無機塩類などを

精製して利用することがある。 

TS 試料の温度 

TR 基準物質の温度 

ΔT 試料と基準物質との温度差 

TS,TR及びΔT 

測定回路 

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表1−校正に使用する標準物質 

物質 

相転移
の種類 

相転移温度 

℃ 

相転移 

エンタルピー 

J/g 

認証標準物質の標準物質番号 

ビフェニル 

融解 

69.2 

120.2 

LGC2610 

インジウム(In) 

融解 

156.60 

28.62 

SRM2232,LGC2601など 

すず(Sn) 

融解 

231.93 

60.40 

SRM2220,LGC2609など 

鉛(Pb) 

融解 

327.46 

23.16 

LGC2608 

亜鉛(Zn) 

融解 

419.53 

107.38 

LGC2611 

アルミニウム(Al) 

融解 

660.32 

398.1 

LGC2612 

b) 温度校正 温度の校正では,実際の測定対象物質測定の場合と同じ密封試料容器周囲雰囲気及び加熱

条件で,表1に示す標準物質又は純物質を用いて,JIS K 0129又は装置の取扱説明書に基づいて行う。

測定する温度範囲に近い2種類以上の標準物質の補外転移開始温度を用いて,通常補間法によって温

度を測定し校正する。このとき,必ず加熱測定で校正を行う。冷却測定では,液体の過冷却に対処で

きないので,凝固点では校正してはならない。 

c) 熱量校正 熱量校正は,測定対象物質測定の場合と同じ密封試料容器周囲雰囲気及び加熱条件で,あ

らかじめ,表1に示すインジウム,すず,鉛,亜鉛の4種類の標準物質で熱量評価を行い,2次近似

(又は3次近似)曲線を作成して行う。このとき,必ず加熱測定で熱量校正を行う。校正に使用する

標準物質の量など,具体的な校正時の熱量評価方法は,装置の取扱説明書に基づいて決定する。 

d) 装置校正の確認 装置校正後,装置の校正が適切に実施されたかを確認する。校正の確認作業には,

校正に使用した標準物質を用いる。得られた熱量が相転移エンタルピーに対して±9.7 %以内のばらつ

き許容範囲内に入るようにする(ASTM E 537-07参照)。 

6.2 

測定 

測定は,次による。 

a) 試料の調製 測定対象物質に塊などが存在する場合,測定対象物質は細かく粉砕する。このとき,揮

発・飛散及び変質が起こる可能性があるため,試料に熱的及び機械的履歴を与えないように考慮する。

測定対象物質の物理的・化学的性質をSDSで調べて,その性状に応じて光,温度,酸素,水分(湿度)

などの影響に注意し,遮光,除湿などの処置を講じる。物質によっては,試料を細かく粉砕すること

で発火・爆発の危険性がある。摩擦及び衝撃に対する感度が不明な場合,粉砕前にこれらの危険性に

対する感度試験(JIS K 4810:2003参照)を行って危険性を確認することを推奨する。 

b) 試料の質量 試料の質量は,約1 mgを目安とする。測定対象物質が,揮発性有機化合物又は高揮発

性有機化合物の条件に該当する場合,試料量を0.5 mg,1 mgの2水準で測定し,得られた熱量値が異

なる場合は,高い熱量値を示す方を試料の質量とする。 

c) 測定試料側密封試料容器の準備 

1) 使用する高圧用密封試料容器 測定試料側に使用する高圧用密封試料容器は,毎回新しい容器を使

用する。高圧用密封試料容器の中で,専用のジグを用いて蓋を締めるタイプの場合は,その再使用

を認めないこととする。密封試料容器はあらかじめ洗浄し,汚れのない状態のものを使用する。密

封試料容器の洗浄法は,ステンレス鋼材質及びメーカでの出荷前最終処理法によって変わるため,

メーカに確認をとり,適切な方法を選択する。 

注記 高圧用密封試料容器の中で,専用のジグを用いて蓋を締めるタイプの場合,測定後試料容

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器を洗浄することで,数回の再使用が可能となる。この場合,測定ごとに,測定によって

密封試料容器がダメージを受ける可能性があり,ダメージの有無の定量的・客観的な判断

は難しい。 

2) 試料の準備 測定対象物質は,約1 mgを正確に0.01 mgの桁まで密封試料容器にひょう量する。通

常,空気雰囲気下での取扱いとなるが,物理的・化学的性質をSDSで調べ,光,酸素,水分(湿度)

などによって試料の性状が変化する場合は,遮光,除湿,不活性ガス雰囲気下で操作するなどの処

置を講じる。試料は均一にして,なるべく薄く平らになるように試料容器に入れる。 

3) 注意事項 サンプルシーラを用いて,機械的に圧力をかけながら蓋を容器に押し込む高圧用密封試

料容器においては,蓋を容器に斜めに押し込むと容器からのガス漏れの原因となる。これは,測定

誤差の要因となるため,蓋が斜めにならないように十分に留意する。 

d) リファレンス側密封試料容器の準備 密封試料容器は,あらかじめ洗浄し,汚れのない状態のものを

使用する[c) 1) 参照]。リファレンス側密封試料容器を繰り返し使用すると,ステンレス鋼に特有の

粒界腐食による発熱ピークが出現し,誤差の原因となる。毎回新しい密封試料容器を使用する。 

e) 装置操作条件の設定 

1) 密封試料容器のDSC装置への設置 測定試料側密封試料容器及びリファレンス側密封試料容器は,

各々ホルダからはみ出さないように中央部におく。中央部から位置がずれると,測定誤差となるた

め,注意を要する。オートサンプラを使用する場合,同装置の動作確認を定期的に実施し,装置の

取扱説明書に従い,メンテナンスを行う必要がある。 

2) 加熱速度 加熱速度は,10 ℃/minとする。 

3) 加熱温度 温度は室温から500 ℃まで加熱する。反応が500 ℃までに終了しない(ピークがベース

ラインに戻らない)場合には,使用するDSC装置の上限温度又は高圧用密封試料容器の耐圧性能限

界まで温度を上げて試験を行う。同測定条件下で,反応が終了しない物質は,この規格の適用範囲

外物質とする。室温より低い温度から反応が開始するときには,DSC装置に附随する冷却装置を用

いて,必要な温度から試験を開始する。 

4) 測定回数 同一条件下で測定を3回行い,再現性を確認し,平均値を求める。同一試料に対して,

同一の装置を用い,同一の試験室で同一分析者がDSC測定を行った場合,平均値に対して±9.7 %

より大きく熱量のばらつきが生じてはならない。発熱量のばらつきが大きい場合,測定回数を増や

して,少なくとも3回の測定結果が平均値に対して±9.7 %以内のばらつき許容範囲内に入るように

する(ASTM E 537-07参照)。数回の測定で,ばらつきが大きく,許容範囲外となる場合は,その

物質はこの規格の適用範囲外とする。 

f) 

測定終了後の確認事項 測定終了後に測定試料側密封試料容器の質量は正確に0.01 mgの桁までひょ

う量し,測定の前後で試料容器から,試料の漏れがなかったかを確認する。 

g) 密封試料周囲雰囲気の調整 測定に当たっては,密封試料容器周囲の雰囲気が設定した条件で十分に

安定していることを確認してから測定を開始する。 

h) 測定開始温度の選定 測定は,目的とする温度領域で試料部分の加熱速度の制御が可能となるような

温度から開始する。 

i) 

試料温度及び熱量出力の安定性の確認 測定を開始する前に,試料温度及び熱量の出力値,すなわち, 

ベースラインが十分安定していることを確認する。 

6.3 

測定データの解析 

測定データの解析は,次による。 

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a) ベースライン 

1) 空試験のベースライン 測定対象物質を測定する直前に,空の密封試料容器を実際の測定対象物質

での試験の場合と同じ加熱条件で測定したDSC曲線(空試験のベースライン)を確認する。室温か

ら500 ℃(又は測定温度)の範囲で,DSC曲線が大きなカーブを描く場合には,容器を設置せずに

ベースラインを測定し,装置の状態を確認する必要がある。容器を設置しない状態でDSC曲線が大

きなカーブを描く場合はホルダ部に問題がある場合があるので,装置メーカに相談するなどして,

装置の調整を行う。一般的にホルダが汚れるなどして劣化すると,ベースラインは大きくカーブを

描くようになる。 

2) 測定対象物質測定時のベースライン 発熱の開始部分と終了部分とを結ぶ直線を引く。例を図3に

示す。ベースラインの引き方によっては,解析誤差の要因となる。1) で得られた空試験のベースラ

インが水平でない場合は,通常装置に附随する解析ソフトを用いて,ベースラインを差し引く。測

定対象物質の測定において,反応の前後で試料の熱容量が顕著に変化する場合は,S字型ベースラ

イン(Sigmoidal baseline,図4参照)を使用してもよい。熱容量が反応の前後で変化したか否かは,

測定対象物質の測定直前に空試験のベースラインを測定し,ベースラインの形状を把握しておくと

分かる。 

b) 発熱分解エネルギー 測定によって得られたピークを時間に対して積分する(ベースラインとピーク

とで囲まれる面積を求める。)と熱量が得られる。この熱量の値を試料の質量で除することで,グラム

当たりの発熱分解エネルギーQDSC(J/g)が算出される。通常は装置に附随する解析ソフトによって自

動的に求めることができる。 

注記 発熱分解エネルギーは,反応熱,発熱量,発熱エンタルピなどとも表現される。 

c) 解析上の注意事項 

1) ピークに肩がある場合には,発熱分解エネルギーに加える(図5よい例を参照)。 

2) 複数のピークが生じる場合には,発熱分解エネルギーは全てのピークで得られる発熱分解エネルギ

ーの合計とする(図6参照)。 

図3−DSC曲線データの解析(直線型ベースライン) 

0

100

200

300

400

500

温度 (℃)

(QDSC)

(J/g)

発熱分解エネルギー

(m

W)

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図4−DSC曲線データの解析(S字型ベースライン) 

図5−DSC曲線データの解析方法(例1) 

0

100

200

300

400

500

よい例

悪い例

温度 (℃)

(

m

W

)

0

100

200

300

400

500

(

m

W

)

温度 (℃)

発熱分解エネルギー

(QDSC)(J/g)

熱容量の変化

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10 

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図6−DSC曲線データの解析方法(例2) 

試験報告書 

試験報告書には,次の事項を記入する。 

a) この規格の番号(JIS K 4834) 

b) 試料の名称 

c) DSC装置のメーカ名及び形式 

d) 測定年月日 

e) 試料の形状及び状態 

f) 

試料の質量 

g) 試料容器の種類と材質 

h) 熱量校正に用いた標準物質名 

i) 

解析結果(DSC曲線と発熱分解エネルギー) 

参考文献  

[1] ASTM E 537-07:Standard Test Method for The Thermal Stability of Chemicals By Differential Scanning 

Calorimetry (Research Reports:E27-1003, July11, 2002) 

[2] ISO 11357-1:1997,Plastics−Differential scanning calorimetry (DSC)−Part 1: General principles 

[3] ISO 16000-6:2004,Indoor air−Part 6: Determination of volatile organic compounds in indoor and test 

chamber air by active sampling on Tenax TA®sorbent, thermal desorption and gas chromatography using 

MS/FID 

[4] LEWIS, R. G. & GORDON, S. M., Sampling of organic Chemicals in Air. In: Keith, L. H. (ed.) Principles of 

Environmental Sampling, 2nd Ed. ACS Professional Reference Book, American Chemical Society, Washington 

DC, 1996, pp. 401 ‒ 470 

[5] JIS K 4810:2003 火薬類性能試験方法 

[6] 社団法人火薬学会編:エネルギー物質ハンドブック,共立出版株式会社(1999) 

[7] JIS Z 7253 GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法−ラベル,作業場内の表示及び安全デ

ータシート(SDS) 

0

100

200

300

400

500

発熱分解エネルギー 

= A + B 

温度 (℃) 

 (

m

W

)

A J/g

B J/g