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K 3850-2 : 2000 (ISO 10312 : 1995) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日

本工業規格である。 

JIS K 3850-2には,次に示す附属書がある。 

附属書A(規定) プラズマ灰化装置の操作条件の設定 

附属書B(規定) 校正方法 

附属書C(規定) 構造体計数基準 

附属書D(規定) 繊維識別方法 

附属書E(規定) 長さ5μmを超えるアスベスト繊維及び繊維束,並びにPCM相当アスベスト繊維

の濃度の測定 

附属書F(規定) 結果の計算 

附属書G(参考) 空気サンプル採取の計画 

附属書H(参考) 硫酸カルシウム(ギプサム)繊維の除去方法 

附属書J(参考) 文献 

JIS K 3850シリーズは,次に示す四つの部からなる。 

第1部 位相差顕微鏡法及び走査電子顕微鏡法 

第2部 直接変換−透過電子顕微鏡法 

第3部 間接変換−透過電子顕微鏡法 

第4部 固定発生源−プラントからのアスベスト飛散−繊維計数測定法 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 3850-2 : 2000 

(ISO 10312 : 1995) 

空気中の繊維状粒子測定方法− 

第2部:直接変換−透過電子顕微鏡法 

Measuring method for airborne fibrous particles− 

Part 2 : Direct-transfer transmission electron microscopy method 

序文 この規格は,1995年に第1版として発行されたISO 10312,Ambient air−Determiation of asbestos fibres

−Direct-transfer transmission electron microscopy methodを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更する

ことなく作成した日本工業規格である。ただし,原国際規格の序文にある一般事項は,附属書Kに示す。 

なお,この規格で点線の下線を施してある“参考”は,原国際規格にない事項である。 

この規格は,屋内空気環境を含む広範囲の環境大気中における浮遊アスベストの測定に適用されるもので

あり,アスベスト構造体の存在が予想される大気環境の詳細な評価に用いるものである。最新の医学的根

拠によれば,繊維数濃度及び繊維サイズが吸入の危険性評価に関係する因子であるので,繊維計数技術は

唯一の合理的な方法である。環境大気中の浮遊繊維の多くはアスベストではないので,繊維を識別する必

要がある。環境大気中の多くの浮遊アスベストは,位相差顕微鏡の分解能より細い繊維径をもっている。

この規格は,透過電子顕微鏡法に基づいている。透過電子顕微鏡は微細な繊維の識別に必要な分解能をも

ち,かつ,個々のアスベスト繊維のほとんどを明確に識別することのできる現在唯一の技術である。アス

ベストは単繊維としてだけでなく,他の粒子を付着したりしなかったりする集合構造体として非常に複雑

なものとしても検出される。環境大気中に浮遊する繊維は,十分な分析を行えば明確に識別することがで

きる。しかし,この方法によって個々の繊維を識別するのには,分析費用が非常にかかることになる。装

置不備や粒子の性質によって,アスベストに違いないような場合でも幾らかの繊維はアスベストと明確に

判定できないこともある。そのため,主観的要因が影響するので,アスベスト繊維の識別と計数のための

方法を細かく定義する必要がある。この規格に規定する方法は,空気サンプル中のアスベスト含有粒子の

特性,個数濃度及びサイズについて最良の記載ができるよう明記している。 

この規格は,用いる装置の技術が複雑で,また分析の主観的見方を減らすために詳細かつ合理的手順を規

定する必要からやむを得ず複雑になっている。この規格に規定されたデータ記録方法は,新たな医学的知

見が提供されたとき,構造体計数データの再評価ができるよう計画されている。すべての試料作製技術は,

実際には浮遊粒子に幾らかの変化をもたらしている。3次元の空気中の分布から2次元のフィルタ表面へ

の粒子捕集は粒子状態に変化をもたらし,大抵のサンプル中の幾らかの粒子は試料作製処理によって変化

することになる。しかしながら,この規格で規定した処理法は捕集した粒子状物質の乱れを最小にし,こ

れらの乱れによる影響を評価できるように考えられている。 

この規格は,1枚の空気捕集フィルタの分析方法を規定している。しかし,環境大気中のアスベスト計測

における最も可能性の高い誤りの一つは,フィルタサンプル間の可変性に関係している。この理由から,

この規格の正確さ及び精度を調べるために繰り返しサンプリングを計画する必要がある。 

K 3850-2 : 2000 (ISO 10312 : 1995) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

1. 適用範囲 

1.1 

測定物質 この規格は,環境大気中のアスベスト構造体の濃度測定(アスベスト構造体の長さ,幅

及びアスペクト比の計測を含む。)に透過電子顕微鏡(以下,TEMという。)を用いた方法について規定す

る。この方法は,実在するアスベスト繊維の種類を特定できる。しかし,角せん(閃)石鉱物の中の個々

のアスベスト繊維とそれと類似の非アスベストとの識別はできない。 

1.2 

試料の種類 この方法は,既知の空気量が吸引されたポリカーボネートフィルタ又はセルロースエ

ステル(セルロースの混合エステル又はニトロセルロース)フィルタについて規定している。この方法は

屋外及び建物内空気中のアスベスト分析に適している。 

1.3 

計測範囲 分析できる濃度範囲は,フィルタ上で50〜7 000構造体/mm2である。これらの数値で表

される空気中,濃度は,採気した空気量の関数である。検出できるアスベスト繊維の寸法に下限はない。

実際上は,顕微鏡観察者が非常に小さいアスベスト繊維を検出する能力は様々である。したがって,報告

結果に採用される最小のアスベスト繊維の長さは0.5μmである。 

1.4 

検出限界 検出限界は,理論的にはろ過採気量を大きくすることによって,及び電子顕微鏡による

分析試料を増加することによってどこまでも下げることができる。実際上,分析したTEM試料の特定の

面積に対する最小検出限界は,総浮遊粒子濃度によって変わる。 

清浄な大気に相当する約10μg/m3の浮遊粒子濃度をもつ大気4 000Lをろ過したと仮定すると,もし,TEM

試料の0.195mm2の面積を分析するならば,0.5構造体/Lの分析感度が得られ,これは1.8構造体/Lの

検出限界に相当する。もし,より高い総浮遊粒子濃度であるなら,フィルタ上で受容できる粒子負荷を維

持するためにろ過空気量を減らさなくてはならない。これは分析感度の向上にもなる。 

このような場合には,TEM試料の分析面積を増やすことによってより低い検出限界を得ることができる。

5μmより長い繊維・繊維束及びPCM相当繊維に対してより低い検出限界を得るために,観察繊維寸法を

制限して,TEM試料をより早く,かつ,広い領域の観察を行うためのより低い観察倍率が用いられる。も

し,試料捕集の一般粒子負荷がフィルタ表面上で約10μg/cm2を超えていると,これは捕集フィルタの約

10%が粒子によって覆われていることに相当し,この直接分析方法を用いることはできない。もし,浮遊

粒子の多くが有機質物質であるなら,間接処理方法によって検出限界を十分に下げることができる。 

2. 引用規格 次に掲げる規格及び規範は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部

を構成する。これらの引用規格は,発行年の記載の年の版だけがこの規格の規定を構成するものであって,

その後の改正版・追補には適用しない。 

ISO 4225 : 1994 Air quality−General Aspects−Vocabulary 

ISO 4226 : 1993 Air quality−General Aspects−Units of measurement 

ISO Standard Handbook NO.2 : 1993 Quantities and units 

ISO Standard Handbook NO.3 : 1989 Statistical Methods 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,ISO 4225によるほか次による。 

3.1 

針状 (acicular) 例えば,針のように長さに比較して細い直径をもつ極めて細長い結晶によって表さ

れる形。 

3.2 

角せん石 (amphibole) 鉄マグネシウム系けい酸塩鉱物の造岩鉱物群で,次の組成式をもつもの。 

A0-1B2C5T8O22 (OH, F, Cl)2 

ここに, A: カリウム,ナトリウム 

K 3850-2 : 2000 (ISO 10312 : 1995) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

B: 第二鉄,マンガン,マグネシウム,カルシウム,ナトリウム 

C: アルミニウム,クロム,チタン,鉄,マグネシウム,第二鉄 

T: けい素,アルミニウム,クロム,第二鉄,チタン 

角せん石の類縁鉱物の中には,これらの元素がリチウム,鉛又は亜鉛によって部分的に置き換わったも

のもある。 

角せん石は,けい素と酸素の比率4 : 11のSi-O4面体の複鎖構造で特徴づけられる。円柱状又は繊維状

のプリズム状結晶を示し,約56°と124°の角度で交差する2方向のプリズム状へき開をもつ。 

3.3 

角せん石アスベスト (amphibole asbestos)  アスベスト様形態をもつ角せん石。 

3.4 

分析感度 (analytical senstivity)  構造体/Lで表される計算で求められた浮遊アスベスト構造体濃

度。1本のアスベスト構造体が計数された場合と等しい。この方法では,分析感度について細かく規定し

ていない。 

3.5 

アスベスト様形態 (asbestiform)  繊維が高い抗張力と柔軟性をもつ鉱物の繊維形態の特殊なタイ

プ。 

3.6 

アスベスト (asbestos)  破砕又は加工したときに,長く,細く,柔軟で強い繊維に容易に分かれ,

アスベスト様形態の特性をもつ結晶化した蛇紋石及び角せん石族に属するけい酸塩鉱物グループに適用さ

れる用語。最も一般的なアスベスト種のCAS(1)登録番号は,クリソタイル (12001-29-5) ,クロシドライ

ト (12001-28-4) ,グリュネライト・アスベスト(アモサイト) (12172-73-5) ,アンソフィライト・アス

ベスト (77536-67-5) ,トレモライト・アスベスト (77536-68-6) 及びアクチノライト・アスベスト 

(77536-66-4)。 

注(1) Chemical Abstract Service 

3.7 

アスベスト構造体 (asbestos structure)  単独繊維,又は他の粒子を付着若しくは付着していないア

スベスト繊維又は繊維束の集団。 

3.8 

アスペクト比 (aspect ratio)  繊維状物質の長さと幅の比。 

3.9 

ブランク (blank)  バックグラウンド値の測定のために行う未使用のフィルタから作られたTEM

試料で計数した構造体数。 

3.10 カメラ長 (camera length)  レンズ操作のない状態での,試料とその電子回折パターン間の距離に等

しい投影長さ。 

3.11 クリソタイル (chrysotile)  次の名目組成をもつ蛇紋石群に属する繊維状鉱物の一つ。 

Mg3Si2O5 (OH)4 

ほとんどの天然クリソタイルは,この名目的組成からわずかにずれている。クリソタイルのある種類に

おいては,けい素が三価アルミニウムイオンに少し置換されている。マグネシウムが三価アルミニウムイ

オン,二価鉄イオン,三価鉄イオン,二価ニッケルイオン,二価マンガンイオン及び二価コバルトイオン

によって少し置換されていることもある。クリソタイルは最も普及しているアスベストの種類である。 

3.12 へき開 (cleavage)  結晶学的方向の一つに沿って鉱物が割れること。 

3.13 へき開片 (cleavage fragment)  へき開面に沿って割れた結晶の破片。 

3.14 クラスタ (cluster)  2本以上の繊維又は繊維束が一つの集合体中でランダムに配向している一つの

構造体。 

3.15 d間隔 (d-spacing)  結晶中のある原子面と全く等しい隣接する平行な原子面の間の距離。 

3.16 電子回折 (electron diffraction)  試料の結晶構造を調べるのに用いる電子顕微鏡の技術。 

K 3850-2 : 2000 (ISO 10312 : 1995) 

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3.17 電子散乱力 (electron scattering power)  物質の薄い層が飛散してきた電子をその元の方向から散

乱させる大きさ。 

3.18 エネルギー分散X線分析 (energy dispersive X-ray analysis)  半導体の検出器と多チャンネル分析

装置を用いたX線のエネルギーと強度の測定。 

3.19 ユーセントリック (eucentric)  観察対象領域が電子ビームと交差する傾斜軸上にあり,かつ,焦点

面内にあるときの状態。 

3.20 フィールドブランク (field blank)  空気捕集場所へ持っていき,フィルタカセットを開け,その後

閉じたフィルタ。このフィルタをバックグラウンド構造体数の測定のために用いる。 

3.21 単繊維 (fibril)  これ以上繊維の性質や外観を失うことなく,より小さく長さ方向に裂けることの

できないアスベストの単一の繊維。 

3.22 繊維 (fibre)  平行又は階段状の側面をもつ長く伸びた粒子。この規格においては,繊維はアスペク

ト比が5 : 1かそれ以上で,最短長さが0.5μmのものと定義する。 

3.23 繊維束 (fibre bundle)  より細い繊維径をもつ繊維が長さ方向に平行にそろった構造体。繊維束は,

片端又は両端が分岐していることが多い。 

3.24 繊維構造体 (fibrous structure)  他の粒子を付着しているか又は付着していない繊維若しくは連結

繊維の集合体。 

3.25 晶癖 (habit)  特徴的な不規則性を含む鉱物の特徴的な結晶成長形態又はこれらの複合した形。 

3.26 検出限界 (limit of detection)  計算で求められた構造体/Lで表される浮遊アスベスト構造体濃度

で,分析において2.99アスベスト構造体の計数に相当するもの。 

3.27 マトリックス (matrix)  1本又はそれ以上の繊維又は繊維束をもち,繊維でない一つの粒子又は塊

状集団によって一部が隠されている構造体。 

3.28 ミラー指数 (Miller index)  結晶軸に関して結晶面の位置を特定するために用いる三つ又は四つの

整数値の組合せ。 

3.29 PCM相当繊維 (PCM equivalent fiber)  長さが5μmを超え,径が0.2〜3.0μmの間にあるアスペク

ト比3 : 1以上の繊維。 

3.30 PCM相当構造体 (PCM equivalent structure)  長さが5μmを超え,径が0.2〜3.0μmの間にあるア

スペクト比3 : 1以上の繊維構造体。 

3.31 基本構造体 (primary structure)  TEM像において分離独立して存在する繊維構造体。 

3.32 レプリカ作製 (replication)  電子顕微鏡の試料作製方法の一つで,表面の薄膜複製の作製。 

3.33 制限視野電子回折 (selected area election diffraction)  試料の微小領域の結晶構造を調べるための

電子顕微鏡技術。 

3.34 蛇紋石 (serpentine)  次の名目組成式をもつ造岩鉱物の1群 

Mg3Si2O5 (OH)4 

3.35 構造体 (structure)  単一の繊維,繊維束,クラスタ又はマトリックス。 

3.36 双晶 (twinning)  同じ種類の単結晶が互いにある一定の結晶学的相対位置関係で接合して産出し

た形態。 

3.37 未開綿繊維 (unopened fibre)  それを構成する単繊維又は繊維に分離されていない大きい直径のア

スベスト繊維束。 

3.38 晶帯軸 (zone-axis)  同一結晶帯に属する結晶面の交差端に平行な結晶の中心を通る線又は結晶学

的方向。 

K 3850-2 : 2000 (ISO 10312 : 1995) 

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4. 原理 浮遊粒子試料は,電池式又は電源式吸引ポンプを用いてある量の空気を,最大ポアサイズ0.4μm

のキャピラリーポア・ポリカーボネート (PC) メンブレンフィルタ又は最大ポアサイズ0.45μmのセルロー

スエステル(セルロース又はセルロースニトレートの混合エステル)メンブレンフィルタを通過吸引させ

ることによって捕集する。TEM試料は真空蒸着によってフィルタ表面にカーボン薄膜を付けたポリカーボ

ネートフィルタから作ることができる。カーボン蒸着フィルタから切り取った小片をTEM試料グリッド

に載せ,フィルタ素材を溶媒抽出法によって除去する。この処理は,TEM試料グリッドの目開きを埋める

薄いカーボン膜を残し,個々の粒子を元のフィルタの位置のままにする。セルロースエステルフィルタか

らTEM試料を作る場合は,フィルタの細孔構造をつぶすための化学処理を施し,フィルタ表面にすべて

の粒子が露出するよう酸素プラズマ中でエッチングする。カーボン薄膜をフィルタ表面上に蒸着し,その

フィルタの小片を切り取る。これらの小片をTEM試料グリッドに載せ,フィルタの素材を溶媒抽出法に

よって除去する。 

構造体計数を行う前にこのどちらか一方の処理方法で作られたTEMグリッドが分析に適するかどうか

判定するため,任意に選んだグリッド目開きを高低両倍率で調べる。このTEM分析において,電子回折 

(ED) は繊維の結晶構造分析に用い,基本組成分析はエネルギー分散形X線分析 (EDXA) によって行うこ

とができる。幾つかの理由から,個々の繊維を明確に識別することは不可能であり,繊維の識別手順によ

って分類される。個々の繊維の分類は単純な決まり(コード)に従って記録する。繊維の分類方法は,次

に行う形態的分類,制限視野電子回折パターン,定性及び定量のエネルギー分散形X線分析に基づいて行

われる。クリソタイルの識別は定量ED分析によってだけ確定でき,角せん石は定量EDXA分析及び定量

晶帯軸EDによってだけ確定できる。 

大気捕集サンプル中には,単独の繊維だけでなく,しばしば他の粒子と結合したより複雑な繊維の集合

体を含んでいる。ある粒子は他の物質とアスベスト繊維との混成物である。単独の繊維及びこれらの複雑

な構造体を“アスベスト構造体”と呼ぶ。コードシステムは,繊維構造体の種類を記録し,これらの複雑

な個々の構造体の見掛けの形状を記載する。この二つのコードは,顕微鏡観察者の構造体計数データの説

明を不用にし,後でTEM試料を再分析せずに評価することができる。また,何段階かの分析レベルにつ

いて詳述し,繊維のより厳密な判断を行えるようにした。この方法は,特別なサンプルについて事前に知

り得た知識に基づいて判断する場合,又はその知識に欠く場合の最小判定基準である。個々の繊維識別に

この最小判定基準を適用した後,判断の程度を個々の繊維について記録しておく。分類した構造体のすべ

てについて長さ及び幅を記録する。顕微鏡試料の既知面積内で検出されたアスベスト構造体数,及びこの

面積を通過したろ過空気を用いて,空気中のアスベスト構造体/Lで表される浮遊アスベスト濃度の計算

に用いる。 

5. 単位記号及び略号 

5.1 

単位記号(ISO 4226及びISO No.2を参照) 

eV 

:電子ボルト 

kV 

:キロボルト 

L/min 

:リットル/毎分 

μg 

:マイクログラム(10−6グラム) 

μm 

:マイクロメートル(10−6メートル) 

nm 

:ナノメートル(10−9メートル) 

:ワット 

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5.2 

略号 

DMF 

:ジメチルホルムアミド 

ED 

:電子回折 

EDXA 

:エネルギー分散X線分析 

FWHM 

:半値幅 

HEPA  

:高性能粒子除去 

MEC  

:混合エステル・セルロース 

PC 

:ポリカーボネート 

PCM  

:位相差顕微鏡 

SAED  

:制限視野電子回折 

SEM 

:走査電子顕微鏡 

STEM  

:走査透過電子顕微鏡 

TEM  

:透過電子顕微鏡 

UICC  

:国際対がん連合 

6. 試薬類 分析において規定のないものについても,認知された分析用試薬及び水だけを用いる。 

警告 健康管理及び安全規則に従って試薬類を用いる。 

6.1 

繊維フリーの水 新しく蒸留した繊維を含まない水,又は他の方法で処理した繊維を含まない水を

用いる。 

6.2 

クロロホルム 分析用のもので蒸留し,1% (v/v) エタノールで保持したもの。 

6.3 

1−メチル−2−ピロリドン 

6.4 

ジメチルホルマイド 

6.5 

氷酢酸 

6.6 

アセトン 

7. 器具類 

7.1 

空気捕集−装置及び消耗品 

7.1.1 

フィルタカセット 直径25〜50mmの3ピースカセットで,フィルタ前面に2cm未満の突出のあ

るカウル (cowls) のついた装置をサンプル捕集に用いる。このカセットは最大ポアサイズ0.4μmのポリカ

ーボネートフィルタ又は最大ポアサイズ0.45μmのMEC又はニトロセルロースフィルタのいずれかを用い

る。両方の種類のフィルタはポアサイズ5μmのMEC又はニトロセルロースフィルタによってバックアッ

プし,セルロースバックアップパッドで支持する。フィルタを取り付けたら,空気漏れを防ぐために伸縮

セルロースバンド又は粘着テープを用いる。フィルタの周囲で大きい空気漏れが起きないようにフィルタ

組み立てがしっかり締まっていることを確認するなど適切な予防策をとる。 

フィルタロットから取り出した代表的フィルタについて空気捕集のためにフィルタを用いる前にアスベ

スト構造体の有無を9.7によって分析を行う。 

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7.1.2 

捕集ポンプ 捕集ポンプは,必要な分析精度を得るのに十分な吸引性能をもたなければならない。

フィルタを通過する線速度は4.0〜25.0cm/sまでとする。捕集ポンプはフィルタを通過する空気流にぶれが

なく,捕集時間を通して±10%以内の吸引流量を持続できるものを用いる必要がある。一定流量又はクリ

ティカルオリフィス (critical orifice)による制御ポンプはこれらの条件を満たす。柔軟なチューブをフィル

タカセットと捕集ポンプとの接続に用いる。個々のポンプの吸引量の校正が必要である。 

7.1.3 

架台 架台は,捕集に必要な高さにフィルタカセットを固定し,ポンプ (7.1.2) の振動が伝わらな

いようにして用いる。 

7.1.4 

可変面積流量計 おおよそ1〜10L/minの可変範囲の流量計が空気捕集システムの校正に必要であ

る。 

流量計から捕集サンプルへのアスベストの移動汚染を防ぐため,用いる前に可変面積流量計を洗浄する。 

7.2 

試料作製室 アスベスト特にクリソタイルは,多くの実験室試薬中に様々の量が含まれている。多

くの建築材料は,かなりの量のアスベスト又は他の鉱物繊維を含んでいて試料作製中に不注意に混入して

分析の妨げになることがある。TEM試料作製中に外来のアスベスト繊維による汚染が最小であることを確

かめることは最も重要である。すべての試料作製段階において試料汚染が最小である環境を維持しなくて

はならない。試料作製室の基本条件はブランク値検査結果が9.7の規定を満たすことである。TEM試料作

製に適している最低限の装置は正圧流出フードである。しかし,試料作製作業に慣れることは,清潔な装

置を用いることよりも重要であることが確認されている。試料作製はブランク値が許容できることを確認

した後にだけ行う。 

備考 バルクアスベスト試料の操作を含む処理は,TEM試料が汚染される可能性があるので,TEM

試料作製と同じ場所で行わないことが望ましい。 

7.3 

分析機器 

7.3.1 

透過電子顕微鏡 1.0nm以下の解像度,及び約300〜100 000の倍率範囲をもつ加速電圧80〜120kV

で作動するTEMを用いることが望ましい。スクリーン上で直接約100 000の倍率を得る性能が繊維形態を

見るために必要である。この倍率が直接に得られない場合,双眼鏡でスクリーン像を光学的に拡大するこ

とでもよい。幅1mmに至るまで繊維像の長さと幅が,像の方向は気にせずに1mmの増加量として計るこ

とができるよう,顕微鏡の校正された観察スクリーンが必要である。これは,図1に示すように,校正さ

れた段階的に増加する同心円を用いることによって満たされる。 

background image

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図1 TEM観察スクリーンに印された計測用目盛の例 

0.01ラジアンより小さなブラッグ角によって,スクリーン倍率20 000倍の焦点合致像を得ることによっ

て,TEMは0.6μm2以下の面積からのED観察ができることになる。この性能要求は,独立のEDパターン

を個々の粒子から得て粒子を区別する最小の間隔を示している。もし,制限視野電子回折 (SAED) を用い

るならば,特定のTEM装置の性能は,次の関係式を用いて一般に計算される。 

A=0.785 4× (D/M+2 000・Cs・θ 3)2 

ここに, 

A: SAED有効面積 (μm2) 

D: SAED絞り径 (μm) 

M: 対物レンズの倍率 

Cs: 対物レンズの球面収差係数 (mm) 

θ: 最大必要ブラッグ角(ラジアン) 

対物レンズの球面収差係数によって決まる基本的限界があるので,より小さいSAED絞りを用いること

によって有効SAED面積をどこまでも小さくすることは不可能である。 

もし,晶帯軸ED分析を行うならば,TEMにゴニオメータ台を組み込み,TEM試料が次のどちらかに

なるようにする。 

a) 360°回転し,試料面中の軸に対して少なくとも+30°〜−30°傾斜する両方の動き,又は 

b) 試料面中の二つの方向に対して少なくとも+30°〜−30°傾斜する。 

もし,ゴニオメータがユーセントリックな傾斜をするなら分析は非常に容易になるが,これは絶対必要

というものではない。もし,EDXAと晶帯軸EDを同じ繊維に対して行うならば,試料ホルダの変更なし

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

に試料の傾斜とEDXAスペクトルが得られるタイプのゴニオメータが必要である。 

TEMは,直径250nm未満の電子プローブを作ることのできる電子源及びコンデンサレンズシステムを

もつことが必要である。 

備考 装置の必要な性能を得るために,試料の周辺に汚染防止トラップを用いることが推奨される。 

7.3.2 

エネルギー分散X線分析 TEMは,MnKαピークで180eV (FWHM) よりよい分解能が得られるエ

ネルギー分散X線分析装置を附属する。TEMとEDXA装置の独特の組合せの性能は,多数の幾何学的要

因に依存しているので,その必要性能は,既知の電子ビーム径を用いて,細い繊維から実際にX線強度を

測定して明らかにされる。半導体のX線検出器は低エネルギー域では最低の感度であり,そのため,クロ

シドライトのナトリウムの分析は,性能検査によく用いられる。この電子顕微鏡及びX線分析器の組合せ

で加速電圧80kVで直径250nm以内の電子プローブで照射する通常の分析条件下で,直径50nm以下の

UICCクロシドライト繊維からバックグラウンドを引いたNaKαの積算ピークとして1カウント/秒 (cps) 

以上の計数率をもたらす。この性能試験におけるピーク/バックグラウンド比は,1.0を超える。 

EDXAユニットは,バックグラウンド値の減算処理法,元素ピーク値の定性及びバックグラウンド値を

差し引いたピーク面積の計算法を備えている。 

7.3.3 

コンピュータ 多くの繰り返し演算計算が必要であり,これらは比較的単純なコンピュータプログ

ラムで容易に処理できる。晶帯軸EDパターン分析のために,より複雑なプログラムを組み込む必要があ

るので十分なメモリのついたコンピュータが必要である。 

7.3.4 

プラズマ灰化装置 試料捕集フィルタの灰化のため,及びMECフィルタからTEM試料を作製す

るために,50W以上の放射周波数能力をもつプラズマ灰化装置が必要である。灰化装置は制御された酸素

流量が供給される。必要があれば改良して,急速な空気導入が粒子状態をかく乱しないように空気導入速

度を制御するバルブを付ける。 

備考 酸素供給及び空気導入ラインにフィルタを介在させることが推奨される。 

7.3.5 

真空蒸着装置 0.013Pa以下の真空状態にできる真空蒸着装置を,メンブレンフィルタ上へのカー

ボン蒸着のため用いる。試料支持台は,顕微鏡用スライドガラスを蒸着処理中連続的に回転させられるも

のが必要である。 

備考 蒸着処理の間,回転するスライドが約45°の角度で傾斜させることのできる機構が推奨される。

拡散ポンプに付いている液体窒素のコールドトラップは,ポンプ装置からの油によるフィルタ

表面の汚染の可能性を最小にするために用いる。真空蒸着装置は,TEM試料のEDパターンの

内標準が必要なときに,金又は他の標準物質の薄膜蒸着を行うためにも用いる。 

7.3.6 

スパッタ蒸着装置 金ターゲットをもったスパッタ蒸着装置は,EDパターンの内標準用金蒸着の

ために用いる。他の標準物質の使用も可能である。経験からスパッタ蒸着装置は,標準物質の厚さをより

よく制御できることが知られている。 

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10 

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7.3.7 

溶媒溶解器 (Jaffe washer)  溶媒溶解器の目的は,フィルタ上の繊維及び他の粒子を保持している

蒸着カーボン膜をそのままにしてフィルタ表面からフィルタポリマーを溶解させるためのものである。

様々の溶媒とフィルタ材質に対して満足できる溶解器の一例を図2に示す。一般にクロロホルム又は1メ

チル−2ピロリドンがポリカーボネートフィルタの溶解に用い,ジメチルホルムアミド又はアセトンがセ

ルロースエステルフィルタの溶解に用いる。クロロホルムとアセトンは高い蒸発率のため10〜50mlの溶

媒槽を必要とし,更に処理の間に溶媒の補給を必要とするかもしれない。ジメチルホルムアミドと1−メ

チル−2−ピロリドンは低い蒸気圧をもつので,溶媒の量はかなり少なくてもよい。すべての洗浄は排気フ

ードの中で行い,溶媒溶解の間ペトリ皿のふたをして,試料を挿入したり移動したりしないことが推奨さ

れる。溶解器はそれぞれの試料群ごとに用いる前に洗浄しておく。 

7.3.8 

凝縮溶解器 (Condensation washer)  フィルタポリマーをより速く溶解させるため,又はフィルタ

ポリマーの溶解が困難である場合に,フラスコ,凝縮器,冷却アセンブリー,加熱マントル及び温度制御

器からなる凝縮溶解器を用いる。フィルタのタイプによってアセトン又はクロロホルムを溶媒として用い

る適切な組合せ例を図3に示す。 

備考 溶媒は液面がステンレス網の下面に接するまで加える。 

図2 溶媒溶解器 (Jaffe washer) の例 

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11 

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図3 凝縮溶解器の概略図 

7.3.9 

スライド加熱器又はオーブン セルロースエステルフィルタからTEM試料を作製する際にスライ

ドを加熱するためにスライド加熱器又はオーブンを用いる。これは65〜70℃の温度に維持できることが必

要である。 

7.3.10 超音波浴槽 超音波浴槽は,試料捕集フィルタから灰化し水に懸濁させるためとTEM試料作製の

ための器具類の洗浄に用いるものである。超音波浴槽は,周波数約50kHzで0.05〜0.1W/mlの間で50ml

のガラスビーカ中の40mlの水にエネルギー吸収を行わせるのに十分な能力が必要である。 

7.3.11 カーボン格子レプリカ 1mm当たり約2 000平行線のカーボン格子レプリカは,TEMの倍率の校

正に用いる。 

7.3.12 EDXAの校正用グリッド 校正用標準鉱物を分散させたTEM試料グリッドがEDXAシステムの校

正に用いる。校正用鉱物に適したものはリーベカイト(青石綿,クロシドライト),クリソタイル,ハロイ

サイト,フロゴパイト(金雲母),ウォラストナイト(けい灰石)及びバスタマイトである。ナトリウムの

ためのEDXAシステム校正用鉱物は,金製TEMグリッド上に用意する必要がある。 

7.3.13 カーボン棒削り器 くびれたカーボン棒を用いることによって,最小の加熱でカーボンをフィルタ

上に蒸着させることができる。 

7.3.14 使い捨てマイクロピペットチップ 使い捨てマイクロピペットチップは,pH調整のために約50μl

の容量のもの及びセルロースエステルフィルタからTEM試料の作製の際に約30μlの容量の溶液と移し替

えできるもの。 

7.4 

消耗品 

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7.4.1 

銅製電子顕微鏡グリッド 200メッシュのTEMグリッドが推奨される。9.6.2の規定に適合する均

一サイズのグリッド目開きをもつグリッドを選定する。精度管理上,各グリッド目開きの移動を容易にす

るため,各グリッド目開きに番号又はアルファベット付けたグリッドを用いることが推奨される。 

7.4.2 金製電子顕微鏡グリッド ナトリウム分析が繊維識別の上で必要なときTEM試料を載せるための,

200メッシュの金TEMグリッドを推奨する。9.6.2の規定に合致する均一サイズのグリッド目開きをもつ

グリッドを選ぶべきである。精度管理上,各グリッド目開きの移動を容易にするため,各グリッド目開き

の番号又はアルファベット付けしたグリッドを用いることが推奨される。 

7.4.3 

カーボン棒電極 真空蒸着装置でフィルタへのカーボン蒸着をするのに用いる分析化学的に純粋

なカーボン。 

7.4.4 

電子顕微鏡用器具及び消耗品 先鋭ピンセット,メス用ホルダとメス刃,顕微鏡用スライドガラス,

両面粘着テープ,レンズティッシュ,金線,タングステンフィラメント及びその他の通常用いる消耗品が

必要である。 

7.4.5 対照用アスベスト試料 基本的なアスベスト鉱物の対照用TEM試料作製のためのアスベスト試料。

UICC鉱物セットはこれに適している。 

8. 空気サンプル捕集 

8.1 

必要とする分析感度は,サンプル捕集に優先して確立されるべきパラメータである。分析感度は,

分析中の1構造体の検出に相当する構造体濃度として定義される。直接変換TEM試料作製における分析

感度は,捕集空気量,捕集フィルタの有効面積,及びTEM試料上の構造体計数面積の関数である。もし,

総浮遊粉じんのレベルが高いなら,必要空気量を捕集する前に捕集を終了させることが必要である。 

こうした場合は,必要な分析感度を得るためにより多くの目開きの構造体を計数するか,又は間接TEM

試料作製技術によってアスベスト構造体濃度を調整することが必要になる。表1に示すように,必要な分

析感度をもたらす捕集空気流量と捕集時間を設定する。空気サンプルを捕集する前に,ブランクフィルタ

の平均アスベスト構造体数分析のため,9.7に規定するように未使用フィルタを分析する。 

8.2 

空気サンプルは,フィルタカセット (7.1.1) を用いて捕集する。捕集時間中,カセットは,ポンプ 

(7.1.2) の振動から隔離されたスタンド (7.1.3) で支持する。カセットは,地面又は床から約1.5〜2.0mの

高さで垂直で下向きにし,柔軟なチューブでポンプと接続して保持する。 

8.3 

校正した可変面積流量計 (7.1.4) をカセットの入口に臨時に取り付けて,捕集の初めと終わりに,カ

セットの前面での捕集空気流量を計測する。これらの二つの測定の平均値を総捕集空気量の計算に用いる。 

8.4 

浮遊アスベストの環境発生源モニタリングのための基本方策は,附属書Gに記載してある。捕集後,

カセットの開口面にふたをし,実験室へ戻るためにフィルタ面を上向きにしてカセットをこん(梱)包す

る。9.7に記載したように,現場ブランクフィルタも同様にこん包し,試料と同様な分析処理を行う。 

備考 表1において,捕集フィルタの面積を385mm2,TEMグリッドの目開きのすき間は85μmと仮

定する。検出限界は,構造体の計数0に対するポアソン分布の上側95%信頼限界として定義さ

れる。バックグラウンド値が0の場合には,分析感度の2.99倍に等しい。ブランクフィルタの

分析中に観察されたバックグラウンド値が0でない場合は検出限界を悪くする。 

リットル当たりの構造体数で表される分析感度Sは,次の式を用いて計算する。 

V

kA

A

S

g

f

=

ここに, Af: サンプル捕集フィルタの有効面積 (mm2) 

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13 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

Ag: 分析したグリッド目開きの平均面積 (mm2) 

k: 分析したグリッド目開きの数 

V: 捕集空気量 (L) 

表1 特定の分析感度及び検出限界を得るのに要求される最小グリッド目開き数 

分析感度 

(構造体/L) 

検出限界 

(構造体/L) 

捕集空気量 (L) 

500 

1 000 2 000 4 000 5 000 

0.1 

0.30 

1 066 

533 

267 

134 

107 

0.2 

0.60 

533 

267 

134 

67 

54 

0.3 

0.90 

356 

178 

89 

45 

36 

0.4 

1.2 

267 

134 

67 

34 

27 

0.5 

1.5 

214 

107 

54 

27 

22 

0.7 

2.1 

153 

77 

39 

20 

16 

1.0 

3.0 

107 

54 

27 

14 

11 

2.0 

6.0 

54 

27 

14 

3.0 

9.0 

36 

18 

4.0 

12 

27 

14 

5.0 

15 

22 

11 

7.0 

21 

16 

10 

30 

11 

9. 分析方法 

9.1 

一般的事項 TEM試料を作製するために用いる技術は,ポリカーボネートとセルロースエステルフ

ィルタとで異なる。試料作製方法は,空気捕集に用いたメンブレンフィルタの種類に応じて,9.3又は9.4

のいずれかを適用する。開放前のサンプルカセットの清掃,カーボン蒸着装置の準備,試料グリッドの受

容基準,及びブランク値分析条件は,両者の作製技術について同一である。TEM分析,構造体計数,繊維

同定,及び結果報告は,用いたフィルタの種類又は作製技術によってそれぞれ異なる。 

ブランクサンプル基準の適合性能は,装置及び消耗品の清浄度に依存している。顕微鏡スライド及びガ

ラス器具のようなすべての消耗品は,アスベストの潜在的な汚染源であると考えられる。ガラス器具は,

使用前にすべて洗浄することが必要である。空気捕集フィルタ又はTEM試料作製中に接触する道具及び

ガラス器具は,使用前及び個々のサンプルを扱うたびに,すべて洗浄する。可能ならば使い捨ての消耗品

を用いるべきである。 

9.2 

サンプルカセットの洗浄 アスベスト繊維は,空気捕集カセットの外部表面に付着し,処理中の不

注意によってこの繊維がサンプルに移動する。こうした汚染を防ぐため,カセットをきつくシールしたこ

とを確認した後,それを洗浄装置やカバーフードのところへもっていく前に,各捕集カセットの外部表面

をふいておく。 

9.3 

ポリカーボネート分析用フィルタからTEM試料の作製 

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9.3.1 

カーボン蒸着用のフィルタ領域の選別 カーボン蒸着中にポリカーボネートフィルタの代表的な

部分の小片を載せる支持台として清浄な顕微鏡用スライドを用いる。フィルタの一部分をスライドガラス

に固定するのに両面粘着テープが用いられる。装着の間,ポリカーボネートフィルタを引っ張ってはなら

ない。新しく洗浄したピンセットを用いて,ポリカーボネートフィルタをペトリ皿から移し,切断用平面

として用いる別の清浄な顕微鏡用スライドガラス上に置く。新しく洗浄した湾曲メス刃を用いて,フィル

タと接したところで押し,そこから刃を揺すりながらフィルタを切断する。必要によってこの操作を繰り

返す。数個の小片が同一の顕微鏡用スライドガラス上に載せられることになる。各々のフィルタ処理の間

に,メス刃及びピンセットを洗浄並びに乾燥しなくてはならない。スライドガラスにフィルタ小片の識別

を記入する。 

9.3.2 

フィルタ小片へのカーボン蒸着 蒸着源から10〜12cm離して,回転傾斜台の上にフィルタの一部

分を載せたスライドガラスを置き,蒸着チャンバを0.013Pa以下に真空引きする。カーボン蒸着は非常に

短い時間の照射によって行い,電極棒を数秒間冷却する。もし,カーボン蒸着が速すぎるとポリカーボネ

ートフィルタの小片が湾曲し始め,表面が丸まってしまう。この丸まりはクロロホルム中で容易に溶解し

ないポリマーの層を作り,満足なTEM試料を作ることが不可能になる。必要なカーボンの厚さはフィル

タ上の粒子のサイズによるが,約30〜50nmあれば十分である。もし,カーボン膜が薄すぎると,大きな

粒子が後の作製段階中に膜を破り,試料上のグリッド目開きはほとんど不完全な損傷のあるものとなる。

厚すぎるカーボン膜はコントラストのないTEM像をもたらし,EDパターン分析がしにくくなる。カーボ

ン膜の厚さは可能な限り薄くすべきであるが,TEM試料のほとんどのグリッド目開きを損傷のない状態に

残す必要がある。 

9.3.3 

溶媒溶解器の準備 図2に示すように,ステンレス鋼製のブリッジ上に数片のレンズティッシュを

置き,クロロホルム又は1−メチル−2−ピロリドンをメッシュの下側に液面が接する高さまで容器に満た

し,レンズティッシュに十分にしみ込ませる。 

9.3.4 

溶媒溶解器への試料挿入 湾曲メス刃を用いて,カーボン蒸着フィルタの一部分から3片の3mm

角のカーボン蒸着ポリカーボネートフィルタを切る。フィルタの有効面の中心及び周囲を考慮して3片の

正方形試料を選ぶ。TEMグリッド上にカーボン面を上にして各正方形フィルタ小片を置き,溶媒溶解器内

の十分に溶剤を含んだレンズティッシュ上にグリッドとフィルタを置く。同じレンズティッシュ片上に1

サンプルからの3試料グリッドを置く。溶媒溶解器にふたをし,溶解器を少なくとも8時間保持させる。 

備考 幾つかのポリカーボネートフィルタは,溶媒溶解器内で完全に溶解せず,3日間程度クロロホ

ルムに浸しても溶解しないことがある。もし,カーボン蒸着中にフィルタの表面が過度に加熱

されていると,この問題はより厳しくなる。残留未溶解フィルタポリマーの問題は幾つかの方

法で解消できることが分かっている。 

a) 溶解処理後に溶媒としてクロロホルムを用いたTEMグリッド凝縮溶解によって,約30分間で残留フ

ィルタの材質の多くを取り去ることができる。この処理法を行うため,試料グリッドを載せたレンズ

ティッシュ片を定常処理状態にある凝縮溶解器の冷却フィンガーへ移す。グリッドを挿入後,約30

分間で溶解が行われる。 

b) 溶媒溶解器の使用において,ポリカーボネートフィルタの溶解にクロロホルムよりも1−メチル−2−

ピロリドンの方がより効果的な溶媒であることが分かっている。もし,レンズペーパーを用いず,グ

リッドを溶媒溶解器のステンレス鋼製メッシュ上に直接置くならば,この溶媒はより効果的である。2

〜6時間の溶解時間で十分であることが分かっている。完全に溶解した後,ステンレス製メッシュを

溶解器から取り出し,グリッドを乾燥させる。1−メチル−2−ピロリドンの蒸発は非常に遅い。もし,

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グリッドをもっと速く乾燥させたいなら,ステンレス鋼製ブリッジをもう一つのペトリ皿に移し,液

面がメッシュの下側に接するまで蒸留水を加える。約15分後,メッシュを取り出し,グリッドを乾燥

させる。 

TEMグリッド上に水溶解性粒子試料を保持しておきたい場合は,2回目の溶解の蒸留水をエタノー

ルに変えることができる(附属書H参照)。 

c) 20%の1, 2−ジアミノエタン(エチレンジアミン)と80%の1−メチル−2−ピロリドンとの混合液は,

溶媒溶解器中でフィルタ表面が過熱されていても15分間でポリカーボネートフィルタを完全に溶解

させる。この溶媒を用いるために,グリッドを溶媒溶解器のステンレス鋼製メッシュ上に直接置き,

レンズペーパーは用いない。15分後,もう一つのペトリ皿にステンレス鋼製ブリッジを移し,液面が

メッシュの下側に接するまで蒸留水を加える。約15分後,メッシュを移動し,グリッドを乾燥させる。

水溶解性粒子試料をTEMグリッド上に保持したい場合は,2回目の溶解に蒸留水の代わりにエタノー

ルを用いるとよい(附属書H参照)。 

9.3.5 

PCフィルタからTEM試料の迅速作製法 

備考 9.3.4a)に規定したフィルタ溶解手順を用いることによって,TEM試料をPCフィルタから迅速

に作製することができる。クロロホルムを用いて試料を溶媒溶解器中で約1時間溶解し,次に

凝縮溶解器中で約30分間溶解する。 

9.4 

セルロースエステル分析用フィルタからTEM試料の作製 

9.4.1 

作製前のフィルタ領域の選別 清浄なピンセットを用いて,フィルタをペトリ皿から取り出し,そ

れを清浄な顕微鏡用スライドガラス上に置く。清浄な湾曲メス刃を用いて,フィルタの一部分を切り離す。 

9.4.2 

セルロースエステルフィルタを処理するための溶液の準備 35mlのジメチルホルムアミドと50ml

の新鮮な蒸留水及び15mlの氷酢酸を混合する。この混合液を清浄な瓶に貯える。混合液は安定で,作製

後3か月間は使用可能である。 

9.4.3 

フィルタ処理手順 使い捨てチップ付きマイクロピペットを用いて,清浄な顕微鏡用スライドガラ

ス上に15〜25μl/cm2の処理液を移し,ピペットチップの端を用いてフィルタ小片を置く領域全体に液体を

広げる。空気泡ができないよう約20度の角度でフィルタの端を傾け,処理液の上に捕集面を上にしてフィ

ルタ小片を置く。ティッシュペーパーをフィルタの端に接触させておくことによってフィルタに吸収され

ていない液を取り除く。一つ以上のフィルタ小片を1枚のスライドガラス上に置くことができる。スライ

ドガラスを9分間温度65〜70℃の温度制御スライド加温器上又はこの温度のオーブン内に置く。フィルタ

は元の厚さの約15%までゆっくり崩壊する。この処理法は,上側表面に粒子及び繊維を埋め込んだ薄い透

明なポリマー膜を作る。 

9.4.4 

フィルタ表面のプラズマエッチング 特定のプラズマ灰化装置の操作条件は,附属書Aに示す。

プラズマ灰化装置中に崩壊処理したフィルタ片を載せた顕微鏡用スライドガラスを置き,決められた時間

と条件のもとでエッチングする。適正な状態でエッチングが行われるように注意する。エッチングの後,

チャンバ内にゆっくり空気を導入し顕微鏡用スライドガラスを取り出す。 

備考 プラズマ灰化装置の空気導入には,チャンバが大気圧に到達する時間が2分間を超えるように

バルブを調整しておく。急速な空気導入はエッチングフィルタ表面上の粒子を乱すことになる。 

9.4.5 

カーボン蒸着 9.3.2に記載されているように崩壊フィルタ小片を載せた顕微鏡用スライドガラス

にカーボンを蒸着処理する。 

16 

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9.4.6 

溶媒溶解器の準備 ステンレス鋼製ブリッジ上に数片のレンズティッシュを置き,液面がメッシュ

の下側に接するレベルまでジメチルホルムアミド又はアセトンで溶解器を満たし,レンズティッシュに十

分しみ込ませる。 

9.4.7 

溶媒溶解器への試料挿入 9.3.4に記載されているように溶媒溶解器中に試料を置く。試料は,通

常約4時間で透明化される。 

9.4.8 

セルロースエステルフィルタからTEM試料の迅速作製法 溶解処理法より迅速にTEM試料を作

製することができるセルロースエステルフィルタ溶解処理のもう一つの改良方法は,試料を約1時間溶媒

溶解器中で溶解した後,試料を載せたレンズティッシュ片をアセトン溶媒を用いた凝縮溶解器の冷却フィ

ンガーへ移す。凝縮溶解器を約30分間運転する。この処理は残留フィルタポリマーをすべて取り除く。 

備考 ジメチルホルムアミドは,凝縮溶解器には用いない。 

9.5 

TEM試料グリッドの許容の判断基準 TEM試料が特別な質的基準に合致していないと,有効なデ

ータを得ることはできない。グリッド目開きの完全性を検査するため,電子顕微鏡の十分に低い倍率 (×

300〜×1 000) でTEMグリッドを検査する。もし,次の場合は,グリッドを破棄する。 

a) TEM試料のフィルタ材質がフィルタ溶解段階で取り除かれていない。もし,TEM試料に未溶解フィ

ルタ材質の領域が見られ,もし,三つの試料グリッドの少なくとも二つが透明化されていない場合に

は,更に溶媒溶解を行うか,又は分析用フィルタから新しい試料を作製することになる。 

b) 試料粒子が過負荷である。もし,試料グリッドの大多数のグリッド目開きの約10%がふさがっている

なら,試料は過負荷と判定される。グリッドが過負荷すぎると,ED及びEDXAによる個々の粒子の

選別分析が難しくなり,そのフィルタでは満足な分析ができない。他の粒子による繊維の覆い隠しに

よって,構造体数の低い評価をもたらすことになる。より少ない分取量をろ過したフィルタから作っ

た試料を選別する。 

c) 試料上の粒子沈殿がグリッド目開きごとに均一に分布していない。もし,試料上の粒子沈殿が,ある

グリッド目開きから次の目開きへ明らかに均一になっていないなら,試料は不均一と判定される。こ

の状態は水懸濁液のろ過においてフィルタの不適切な挿入,又は少量の分取液の希釈中の不十分な混

合によって引き起こされる。多数のグリッド目開きの計測を行わなければ,このフィルタの満足すべ

き分析はできない。 

d) 正確な計数を行うのに,多すぎる繊維構造体をTEMグリッドが負荷している。もし,グリッドが約7 

000構造体数/mm2を超えていると正確な計数はできない。この場合,少ない分取量をろ過したフィ

ルタから作った試料を選択する。 

e) 全グリッドを被うカーボン膜がグリッド目開きの約25%を超えて破れている。カーボン膜の破損は過

度の沈殿面でしばしば起きるので,破損のない目開きで計数すると構造体数の低い評価をもたらす。

分析用フィルタの他の部分から試料を作製するか,又は少ない分取液をろ過したグリッドを選ぶ。 

備考 もし,許容できない数のグリッド目開きが破損したカーボンレプリカ膜をもつために試料が不

合格である場合,カーボン蒸着フィルタに再度カーボン蒸着処理を行い,新しい試料を作製す

る。より大きな粒子ほどより厚いカーボン膜で保持される。もし,この処理で許容できる試料

グリッドにならない場合,このフィルタは分析できない。より少ない粒子を載せた分析用フィ

ルタから作製したグリッドを選ぶ。 

もし,b),c),d)又はe)の状態が一つ以上存在したなら,この方法によってサンプルを分析することは

可能でないかもしれない。 

9.6 

TEMによる構造体計数の方法 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

9.6.1 

はじめに この計測は,特定の数のグリッド目開き上に現れたアスベスト構造体を計数することで

ある。繊維構造体は形態観察,EDパターン及びEDXAスペクトルに基づいてグループ分けが行われる。

計数するアスベスト構造体の総数は,必要とする統計精度によって変わる。アスベスト構造体がない場合,

計測しなくてはならないTEM試料グリッドの領域は要求される分析感度によって決まる。計数された構

造体数の正確さは,計数された構造体の総数だけでなく,グリッド目開きごとの均一分布性に依存してい

る。よりよい正確さが必要な場合には,更に構造体計数を追加する。 

捕集したフィルタ上の構造体密度の推定は,一つの試料グリッドの小さい領域内で見つかる構造体たい

積物からは求まらないので,作製した三つのグリッドのうち二つのグリッドの目開きを幾つか分析する。

その後,この結果を構造体密度の計算に結びつける。構造体計数はおおよそ20 000倍の倍率で行い,分析

したグリッド目開きが最低四つになるまで続ける場合を除き,100個目のアスベスト構造体を観察したグ

リッド目開きの分析で終了する。さもなければ,特定の分析感度が得られるグリッド目開き数まで構造体

計数を続ける。 

備考 分析すべきグリッド目開きの数の範囲は通常4〜20である。もし,十分な空気量がフィルタを

通して捕集されていないと,9.6.4の計算は,分析するグリッド目開きの数が実際的でないくら

い大きくなることを示している。このような状態のときは,分析感度のより大きな値を受け入

れなくてはならない。 

9.6.2 

平均グリッド目開き面積の測定 平均グリッド目開き面積は,用いているTEM試料グリッドの形

から測定する。10グリッドから選んだ10目開きの平均の標準偏差が5%以下とする。一つの追加の方法と

して,もし5%の標準偏差判断基準が達成されない場合,各グリッド目開きの大きさは,校正された倍率

でその都度測定しなくてはならない。 

9.6.3 

TEMの調整及び校正の手順 構造体計数を行う前に,装置の仕様書に基づいてTEMを調整する。

附属書Bの手順に従ってTEM及びEDXAシステムを校正する。 

9.6.4 

終了点の決定 構造体計数を始める前に,選択した分析感度を得るために必要な分析試料面積を計

算する。次の式を用いて分析するグリッド目開きの最大数を計算する。 

VS

A

A

k

g

f

=

ここに, 

k: 分析すべきグリッド目開きの数で,大きい方の整数に丸める。 

Af: サンプルフィルタの面積 (mm2) 

Ag: TEMグリッド目開きの面積 (mm2) 

V: 空気捕集量 (L) 

S: 必要とされる分析精度 (構造体/L) 

9.6.5 

構造体計数及びサイズ分析の一般的手順 フィルタから用意された少なくとも二つの試料グリッ

ドについて構造体計数を行う。各グリッドから任意に数個のグリッド目開きを選び,そのデータから計算

結果を得る。 

構造体計数データを記録するため図4に示すような様式を用いる。最初の試料グリッドをTEMに挿入

する。 

備考 異なる電子顕微鏡観察者が同じグリッド目開きを再分析する精度管理測定を容易にするため,

試料ホルダ軸に平行又は直角な標準的移動方向にそって試料にグリッドを挿入する。これはグ

リッド目開きのバーに平行な走査方向を与える。観察者は,全員グリッド目開き上の同じ開始

点から走査を始め,同様の走査パターンをとっていることを確認する。この手順によって,観

察者が必要によって追加分析を行う際に繊維構造体の再配置を迅速にできる。 

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代表的なグリッド目開きを選び,蛍光板上の倍率を校正値(約20 000倍)に設定する。TEM蛍光板の中心

の映像がユーセントリック点になるまでサンプル高さを調整する。ゴニオメータ傾斜角をゼロに設定する。

構造体計数様式の項目1に,グリッドを識別するのに用いる番号と文字を記入する。項目2に,観察する

グリッド目開きの識別を記録する。グリッド目開きの一つが蛍光板上に見えるように試料の位置決めをす

る。試料移動ハンドルによってある一方向に像を動かし,グリッド目開きの反対側に達するまで繊維構造

体を探して試料を注意深く分析する。他の試料移動ハンドルを用いて直角方向に蛍光板の直径より少ない

あらかじめ決めた距離まで像を移動し,先の方向と反対方向へ像を走査する。全部のグリッド目開きが図

5に示すものと同様のパターンで分析されるまで,この方法で計測を続ける。繊維状構造体が検出された

ときは,構造体計数様式の3列目の基本構造の欄に加算数を記入し,附属書Eに詳述されているように必

要な識別手順を実行し,5列目におおよその成分的分類を記入する。附属書Dの手順によって構造体の形

態学的分類を行い,6行目にその結果を記入する。TEM観察蛍光板上で基本構造体の長さと幅をmm単位

で計測し,7及び8行目にこれらの計測値を記入する。分散クラスタ又は分散マトリックスに対し,それ

ぞれの構造体構成物に構成物分類及び形態の分類を指定し,長さ及び幅を計測し,4〜8行目にデータを記

入する。構造体構成物の計数を行い,総構造体の加算数を表にするため構造体計数様式の4行目を用いる。

もし,アスベスト以外の繊維が検出されたら,分かる範囲の形態とタイプを記入する。一つの繊維構造体

の分析と測定が終了したら,試料位置を元の観察位置に正確に戻す。これを怠ると余分の観察又は2回の

繊維計数をすることになる。100番目の繊維状構造体が記録されたグリッド目開きが終了するまで,又は

9.6.4によって計算される特定の分析感度に達するのに必要なグリッド目開き数になるまでのどちらかの

測定を続ける。最低二つの試料グリッドからおおよそ同じデータが出るはずである。9.6.4によって計算さ

れた値は気にせず,最小四つのグリッド目開き上の繊維状構造体の計数を行う。 

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図4 構造体計数様式の例 

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図5 TEM試料測定のための試料走査手順の例 

9.6.6 

長さ5μmを超えるアスベスト繊維及び繊維束の濃度測定 より低い倍率でのTEM試料の追加分析

によって,5μmを超える長さのアスベスト繊維及び繊維束だけの計数を行い,統計的な信頼性を向上させ

る検討を行う。附属書Fに記載した手順に従って,長さ5μmを超える繊維及び繊維束の追加分析を行う。

長さ5μmを超えるすべてのアスベスト繊維及び繊維束の計数には,おおよそ10 000倍の倍率,又はもし,

径の範囲が0.2〜3.0μmの繊維及び繊維束だけの計数を行う場合にはおおよそ5 000倍の倍率を用いる。100

繊維及び繊維束が記録されたグリッド目開きが終了するまで,又は必要な分析感度を得るのに十分な試料

領域を計測するまで続ける。クリソタイル又は角せん石鉱物の1種というように識別又は推測できる構造

体についてだけ基本TEM測定若しくは追加TEM測定で記録する。この制限は関心のある鉱物に対し最良

の統計的正確さが得られることを確認する意図をもっている。 

9.7 

ブランク及び精度管理分析 空気サンプルを採取する前に,分析手順の平均バックグラウンドのア

スベスト構造体数を求めるため100枚のフィルタのロット当たり最低2枚の未使用フィルタを分析する必

要がある。もし,平均バックグラウンドとして全種類のアスベスト構造体数が10構造体/mm2を超える

か,又は平均バックグラウンドとして長さ5μmを超えるアスベスト繊維数が1.0繊維/mm2を超えること

が分かったなら,フィルタをロットごと破棄する。 

試料作製過程での外来のアスベスト繊維による汚染は,報告する試料の結果に比べて重要でないと確認

するために,ブランク値測定の継続的プログラムを確立する。少なくとも一つの漏斗及び一つの空のビー

カのブランク値は各サンプル処理段階ごとに確認する。さらに,少なくとも1枚の未使用フィルタを1枚

の顕微鏡用スライドガラス上で作製した試料の組ごとに加える。 

最初の分析と,その後の一定間隔をおいて行った分析において,既知のアスベスト濃度の試料を十分に

分析して確認する。構造体計数手順中に主観による部分があるので,主観の影響を最小限にするため幾つ

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かの試料を異なった顕微鏡観察者によって再計数することが必要である。このような再計数は,異なる顕

微鏡観察者による計数間の比較による方法が適用され,顕微鏡観察者間及び分析室間の多様性が特徴付け

られる。これらの精度管理分析は,おおよそ分析の10%を構成している。再現結果は5%信頼レベルで異

なってはならない。 

9.8 

結果の算出 附属書Fに規定した手順を用いて結果を計算する。試料のTEM分析に先立って,分析

レベルを詳述する。結果を計算する前に,結果に含まれる構成物成分及び形態の分類について詳述する。

クラスタ及びマトリックスの計数基準の適用によって先に,カイ二乗適合度テストは,各グリッド目開き

から見つけられた基本のアスベスト構造体の数を用いて遂行する。濃度結果はクラスタ及びマトリックス

計数基準の適用の後,アスベスト構造体の数を用いて計算する。 

10. 測定結果の特質 

10.1 はじめに 継続的精度管理手順と一緒にこの分析方法を用いることが重要である。精度管理プログ

ラムは標準サンプルとブランクサンプルに用い,及び分析室間並びに分析室内の分析を含んでいる。 

10.2 繊維識別上の妨害と限界 装置上の限界と幾つかの繊維の特性によって,すべてのクリソタイル繊

維を明りょうに識別することは不可能である。校正されたEDパターンは,選択した繊維の誤った識別の

可能性を取り除くのに必要である。しかし,形態及びEDパターンともに視覚による検査にだけ基づいて

いるために,繊維の誤った識別の可能性が存在している。識別の誤りの最も多いのは,ハロイサイト,巻

いたバーミキュライト又はパリゴルスカイトと混同することである。これらはEDXAの使用とEDパター

ン中のクリソタイルの0.73nm (002) 反射の観察によってクリソタイルと区別することができる。 

クリソタイル繊維の場合のようにすべての角せん石繊維を完全に識別することは,装置上の限界と幾つ

かの繊維の特性から不可能である。さらに,その完全な識別は時間とコストの限界から実際上困難である。

晶帯軸ED技術を分類基準に含めないときは,ある角せん石の組成とほぼ同じ組成をもつ多くの他の鉱物

粒子が角せん石として誤って分類される。しかし,ランダム方向のED技術の援助と同じくすべての繊維

について定量EDXA測定を行う場合は,識別を間違いそうもない。特に,同じサンプル中の他の似た繊維

が晶帯軸法によって角せん石と識別されたときは間違いはない。角せん石はアスベスト形態の性質を表し

やすい鉱物であるので,アスペクト比を増すことでその識別ミスを更に減らすことができる。 

10.3 精度及び正確さ 

10.3.1 精度 得られる分析精度は,計数した構造体数と分析フィルタ上の粒子たい積の均一性に依存して

いる。構造体が分析用フィルタ上にランダムにたい積していると仮定して,もし,100構造体が計数され

負荷が少なくとも3.5構造体/グリッド目開きであるなら,計数手順のコンピュータモデリングによると

約10%の変動率が予測される。Nを計数した構造体数とすると計数される構造体数が減少するにつれて,

精度も,また,おおよそNの割合で減少する。実際上,環境大気サンプルのろ過捕集によって得られた

粒子たい積物が理想的に分布していることはまれであり,精度はそれに対応して減少することが分かって

いる。精度の低下は,次のような数個の要因に関係した結果である。 

a) ろ過捕集した粒子たい積物の不均一性 

b) 構造体計数基準の適用による繊維分布のかたより 

c) 繊維構造体の判断について顕微鏡観察者間の変動 

d) 繊維の検出及び識別能力についての顕微鏡観察者間の変動 

この分析方法を用いた1個の構造体濃度測定方法についての95%信頼区間は,100構造体が10グリッド

目開きにわたって計数されたとき,約±25%である。 

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10.3.2 正確さ 正確さを決めるのに有効な個別の方法はない。 

備考 ポリカーボネートメンブレンフィルタにカーボン蒸着後,粒子状物質は検出可能な損失なしに

TEM試料に変換されることが実証されている。しかし,フィルタが粒子を大量に捕集している

とカーボン蒸着の前に幾らかの物質が消失しているかもしれない。直接変換キャピラリーポア

ポリカーボネート法と直接変換セルロースエステルフィルタ法との良好な類似性は,実験室内

で発生させたクリソタイル・アスベストのエアロゾルで明らかになっている。 

10.3.3 分析室間及び分析室内の分析 分析室間及び分析室内の分析は,この方法を用いるときに顕微鏡観

察者間で生じる系統的な誤りを監視するために必要である。これらの分析は,方法全体と個々の顕微鏡観

察者の能力の両方を試験するためのものである。1枚のフィルタの異なる部分の切片からTEMグリッドを

繰り返し作製し,異なる顕微鏡観察者によって分析を行うことは,方法全体の再現性試験である。繊維計

数の正しさの確認(二人以上の分析者によってTEMグリッドの同じグリッド目開き上のアスベスト構造

体を計数したときに差異があってはならない)は,訓練用及び異なる顕微鏡観察者の能力分析の両方に用

いることができる。7.4.1及び7.4.2に定められた目印付きTEMグリッドを用いることは,特別なグリッド

目開きの再装着を容易にするために推奨される。 

10.4 検出限界 この方法の検出限界は,捕集フィルタの領域,TEM中で調べた試料面積及びTEMで分

析した試料の面積によって変わる。また,未使用フィルタ上のアスベスト構造体のバックグラウンド値に

関係する。検出限界は各試料分析ごとに見積もる。 

備考 実際上,分析フィルタ上の各粒子は,粒子を障害物なしに識別することができるのに十分な距

離で隣接粒子から離れていなければならないことから,検出下限界はしばしば総浮遊粒子濃度

によって決定される。TEM試料の作製において,分析フィルタ上で約25μg/cm2を超える粒子

負荷は一般的に起こらないようにする。もし,許される消費時間内に分析を行うのなら,全サ

イズの構造体についてTEM分析できる試料領域は,大抵の場合10〜20のグリッド目開きに限

定される。典型的な大気環境又は建物内環境では,1構造体/Lの分析感度が得られることが

分かっている。空気が特別に清浄な幾つかの環境においては,分析感度を0.1構造体/L又は

それ以下に下げることが可能である。5μmより長い繊維と繊維束に対しては,特別に低い倍率

で測定することで許容消費時間内に分析できるTEM試料面積を拡大することができ,結果と

して検出下限界を下げることになる。もし,分析中に構造体が検出されなかったら,フィルタ

上の構造体がポアソン分布をしていると仮定すると,95%の上側信頼限界は,分析感度の2.99

倍に相当する濃度として表される。計数構造体がゼロに対するこの95%信頼限界は,検出限界

として与えられる。未使用サンプルフィルタのアスベスト構造体汚染がしばしばあるので,こ

のことも検出限界の議論に加えなくてはならない。 

11. 試験報告 試験報告は,少なくとも次の項目を含むものとする。 

a) この規格の参照 

b) サンプルの明記 

c) サンプル捕集日時とすべての必要なサンプル捕集データ 

d) 測定日 

e) 測定者 

f) 

この規格に規定されていない手法又は付加手法として認められているもの。 

g) 構造体計数データの完全な記載。表には,次のデータを含むものとする。 

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グリッド目開き数,構造体数,識別の規範,構造体の種別,構造体の長さ及び幅 (μm) ,構造体に

関するあらゆる注釈。 

h) 適用した最小許容識別規範と最大許容識別規範の説明(表D.1及び表D.2参照) 

i) 

濃度値の計算に用いた識別及び構造体分類を明記する。 

j) 

濃度値をクリソタイルと角せん石構造体とに分け,アスベスト構造体/Lで表す。 

k) 濃度値に対する95%信頼区間限界,アスベスト構造体/Lで表す。 

l) 

分析感度,アスベスト構造体/Lで表す。 

m) 検出限界,アスベスト構造体/Lで表す。 

n) 角せん石があれば,その基本的種類を示す成分データ 

o) 5μmより長いすべてのアスベスト繊維及び繊維束に対する項目g)〜m) 

p) PCM相当アスベスト繊維に対する項目g)〜m) 

構造体計数データに適した様式の例は,図6及び図7に示す。 

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図6 試料と準備するデータの報告様式の例 

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図7 構造体計数データの報告様式の例 

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附属書A(規定) プラズマ灰化装置の操作条件の設定 

A.1 はじめに MEC又はセルロースエステル分析フィルタからTEM試料を作製する処理によって,フィ

ルタのスポンジ状の構造が溶媒の作用によって崩壊し,より薄いポリマー膜になる。崩壊によって元のフ

ィルタ表面上にあった幾らかの粒子はポリマーの中に完全に埋没する。試料作製処理は,ポリマーの表面

層を酸化するためのプラズマエッチング処理も伴っている。フィルタ崩壊段階で埋没した粒子はエッチン

グ処理で露出させ,その後,粒子は元のフィルタ上での位置を変えることなく蒸着カーボン膜に付着する。

エッチングの程度は極めて敏感で,個々の灰化装置は性能が異なる。したがって,個々のプラズマ灰化装

置について,崩壊したフィルタ表面のエッチング量が分かるように校正しておく。校正は,放射周波数出

力と酸素流入率を調整して,分析フィルタと同じ種類のポアサイズの未崩壊の直径25mmセルロースエス

テルフィルタについて,それが完全に酸化するのに要する時間を計測して行う。 

A.2 方法 用いたものと同種の未使用の径25mmMEC又はニトロセルロースフィルタを顕微鏡用スライド

ガラスの真ん中に置く。灰化装置のチャンバのほぼ中央にスライドを置く。チャンバを閉じ,チャンバに

酸素を8〜20ml/minの速度で導入しながら約40Paの圧力にする。プラズマ強度が最大となるよう,装置の

目盛を調整する。フィルタが完全に酸化する時間を計測する。約15分間でフィルタが完全に酸化する作動

条件を設定する。崩壊したフィルタのエッチングには,この操作条件で8分間作動させる。 

備考 高い放射周波数出力でのプラズマ酸化は,未崩壊のセルロースエステルフィルタを縮ませたり,

巻いたりし,しばしば突然の猛烈な発火を引き起こす。より低い出力では,フィルタが移動せ

ずに残り,フィルタがほとんど透明になるまでゆっくり薄くなる。このような猛烈な発火が起

きないような放射周波数出力で用いる。多数のフィルタをエッチングするときはエッチング速

度が減少するので,対応した条件に校正する。 

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附属書B(規定) 校正方法 

B.1 TEMの校正 

B.1.1 蛍光板上のTEM像の倍率校正 電子顕微鏡は,製造業者の取扱説明書に従って設置する。最初に,

一定期間ごとに回折格子レプリカを用いて分析に用いる倍率を校正する。校正を行う前にユーセントリッ

ク位置に試料高さを合わせる。観察蛍光板上で,格子像の繰り返しの都合のよい数が占める距離を測定し,

倍率を計算する。装置のメンテナンスの後,又は作動状態を変更した後は,常に校正を行う。観察蛍光板

上の像の倍率は,写真のプレート又はフィルムで得られる倍率と同じではない。これらの間の比率は同一

形のTEMでは一定である。 

B.1.2 EDカメラ常数の校正 EDモードで用いるときのTEMのカメラ常数を校正する。カーボン膜上に

金の薄膜を蒸着又はスパッタリングした試料グリッドを用いる。試料をユーセントリック位置に合わせ,

ED条件を選び膜上の金の像を得る。得られたパターンが見えるよう対物レンズ電流を調整し,観察蛍光

板上又は記録像上で一番内側の二つの環の直径を計る。次の関係から,蛍光板及び写真プレート又はフィ

ルムの両方について,環直径を基礎としたカメラ常数λ×Lを計算する。 

(

)

2

2

2

0.2

l

k

h

D

a

L

+

+

×

×

=

×

λ

ここに, 

λ: 入射電子の波長 (nm) 

L: カメラ長 (nm) 

a: 金の単位胞の寸法 (nm : 0.407 86nm) 

D: (hkl) 回折環直径を基礎としたリングの直径 (nm) 

校正物質として金を用いたときのカメラ常数は,次の式で求める。 

λ×L=0.117 74×D mm.nm(1番目のリング) 
λ×L=0.101 97×D mm.nm(2番目のリング) 

B.2 EDXAシステムの校正 EDXAシステムの低エネルギー及び高エネルギーピークに対するエネルギー

校正を定期的に行う。EDXAシステムの強度スケールの校正は,ナトリウム,マグネシウム,アルミニウ

ム,けい素,カリウム,カルシウム,マンガン及び鉄元素を含む参照けい酸塩鉱物のEDXAスペクトル及

び関連の参照鉱物から得られる元素濃度が約10%の精度で定量組成データを得られるようにする。もし,

定量的分析がこれ以外の元素を含む鉱物について必要なら,本体中に示した以外の参照標準を必要とする。

物性がよく調べられた鉱物標準によって,本体7.3.1及び本体7.3.2の装置取扱説明に合致したTEM−

EDXA組合せの校正ができ,それによって異なる装置間のEDXAデータの比較ができる。校正には参照鉱

物が必要である。参照鉱物の選択基準は,角せん石又は蛇紋石に限りなく近いマトリックスをもったけい

酸塩鉱物であること,それらの個々の小片が組成的に数パーセント以内で均質であることなどである。 

これらの標準物質の組成を電子線マイクロプローブ分析,又は化学的方法によって分析する。選択され

た同一標準鉱物を小片に砕き,粉砕した鉱物を水に分散させ,すぐにその懸濁液をろ過してフィルタ試料

を用意する。これらのフィルタからTEM試料を作製する方法は,本体9.に記載してある。これらのTEM

試料はあらゆるTEM−EDXAシステムの校正に用いることができる。それによって,比較可能な組成分析

結果を異なった装置から得ることができる。 

備考 標準鉱物のマイクロプローブ分析は,文献(附属書J)に見られるような通常の技術によって

得られる。要するに,鉱物はまずポリメチルメタクリレイト又はエポキシ樹脂の台中に埋め込

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む。鉱物小片を埋め込んだ台は,表面が平らな鏡面のように磨き上げられる。どこでも入手可

能な,できれば個々の元素の酸化物から成る適切な参照標準を用いてこの表面を分析する。鉱

物中の水含有量を量ることが必要であり,クリソタイルの場合は質量比で13%に達する。この

水含有量は真空装置内での損失によって変化することがある。 

標準鉱物の水懸濁液は,アルカリ及びアルカリ土類金属がこれらの元素を含む鉱物から部分的

に溶出することがあるので準備の後,直ぐにろ過しなくてはならない。 

電子マイクロプローブ分析の結果は,けい素に対する原子又は質量パーセント比で表す。EDXAシステ

ムから得られるけい素に対する同元素のX線ピーク比は,ピーク面積比と原子又は質量パーセント比間の

関係を計算するために用いる。方法はCliffとLorimerによって規定されている(附属書Jを参照)。 

入射電子ビームによって薄膜試料内で発生したX線は,試料と相互作用する可能性は低い。したがって,

質量吸収及び蛍光発生による影響は無視できる。元素iを含むけい酸塩鉱物試料について,次の関係がTEM

で定量分析を行う際に用いる。 

si

i

i

si

i

A

A

k

C

C=

ここに, 

Ci: 元素iの濃度又は原子比率 

Csi: けい素の濃度又は原子比率 

Ai: 元素iの積分ピーク面積 

Asi: けい素の積分ピーク面積 

ki: けい素に対する元素iのk比(定数) 

特定の装置の配置及び特定の粒子サイズに対して,kiの値は一定である。 

粒子サイズによるピーク面積比への影響を補正に取り入れるために(附属書J中のSmallらを参照),異

なった範囲の繊維径に対する常数kiの値を別々に得てCliffとLorimerの方法を発展させる。繊維径の各範

囲ごとに20回のEDXA分析を行うことを推奨する。繊維径の範囲は,<0.25μm,0.25〜0.5μm,0.5〜1.0μm,

>1.0μmが適している。 

TEMにTEMグリッドを挿入し,約20 000倍より高い校正した倍率で像を得て,試料高さをユーセント

リック点に合わせる。もし,X線検出器が横挿入形であるなら,X線検出器に対して試料を傾ける。幅0.5μm

より小さい独立した繊維又は粒子を選び,適切な径の電子プローブを用いてEDXAスペクトルを積算する。

良好なスペクトルが得られたら,バックグラウンド減算を行い,ピーク中心部のエネルギーのウインドウ

を用いて各元素についてのバックグラウンドを補正したピーク面積を計算する。各特定元素のピーク面積

とけい素のピーク面積の比を計算する。校正に用いるバックグラウンドを差し引いたピーク面積は,すべ

て400カウントを超える。 

各標準鉱物の20粒子について,この処理を繰り返す。明らかに外部から侵入した粒子の分析を破棄する。

各標準鉱物の各特定元素ごとに及び繊維の各直径範囲ごとにピーク面積比の算術平均ki(k比)を計算す

る。検出器性能の低下がないことを確認するため定期的にこの決められた検査を行う。これらのk比は,

CliffとLorimerの関係式を用いて未知の繊維の基本的濃度を計算するのに用いる。 

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K 3850-2 : 2000 (ISO 10312 : 1995) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書C(規定) 構造体計数基準 

C.1 はじめに 独立した繊維に加えて,粒子及び繊維の集合体が空気サンプル中にしばしば捕集される。

“アスベスト構造体”とされるアスベスト繊維及び粒子の分類は,繊維束,クラスタ及びマトリックスと

して画定される。分析者が繊維の集合体をどのようにして1本の存在として割り当てるか,又は集合体を

形成している個々の繊維の数をどのように見積もるかが,TEM試料の計数結果に大きく影響している。そ

のため,これらの複雑なマトリックスの判断がすべての分析者に対して同じで,計数結果が意味をもつも

のにするために,計数基準の合理的なシステムを定義することが重要である。特定の構造体計数基準を課

すことは,一般に,その一部は不確定の健康影響情報を根拠とした解釈が,検出された個々のアスベスト

構造体からなされることによる。健康影響に基づくいかなる説明をすることもこの規格の意図ではなく,

構造体計数データを記録することとこれらのデータを後で説明することを明確に分けることが意図である。

この規格に指定した記録システムは,もし,異なる範囲の判断基準が必要となった場合でも試料を再分析

する必要がないよう,後の判断に適した簡明な方法で記録するために構造体の明確な形態的記載をしてい

る。実際上,この記録システムは5μmより長い繊維を含む構造体かどうかなどの各々の複雑な繊維状構造

体の寸法の記録を可能にしている。この扱い方は,吸入性粒子の考察やアスベスト暴露歴一覧との比較な

ど,データの後の評価を可能にする。構造体の形態的な様々の種類の例及びそれらを記録する方法につい

て図C.1に示した。 

C.2 構造体の定義及び扱い 独立して存在する個々の繊維構造体は,本構造体と呼ぶことにする。各々の

基本構造体は繊維,繊維束,クラスタ又はマトリックスと呼ぶ。 

C.2.1 繊維 最小長さ0.5μmでアスペクト比5 : 1以上の平行又は階段状側面をもつ粒子を1本の繊維と定

義する。クリソタイル・アスベストに対しては,単繊維を1本の繊維と定義する。階段状側面をもつ繊維

の幅は,最大幅と最小幅の平均値とする。この平均値は,アスペクト比を決める幅として用いる。 

C.2.2 繊維束 見掛け上くっついている平行な繊維からなる集まりは1本の繊維束として定義し,その幅

は束の幅の平均値とし,長さはその構造体の最大長さとする。繊維束の包括的アスペクト比は,繊維束に

含まれている5 : 1以上のアスペクト比をもつ独立の構成繊維を含めるものである。繊維束は,一端又は両

端が分岐した繊維を示すことがある。 

C.2.3 クラスタ 繊維束を伴うか,又は伴わない2本以上のランダムな方向を向いた繊維の集団をクラス

タと定義する。クラスタには,2種類がある。 

分散クラスタ(タイプD) 繊維が分散又は広がった網状形態で,独立の繊維又は繊維束の少なくとも

一つが分離して識別でき,その寸法を測定できる。 

密集クラスタ(タイプC) 複雑で密に結合した網状形態で,独立の繊維又は繊維束の一端若しくは両

端が不明りょうであり,独立の繊維及び繊維束の寸法を明確には計測できない。 

実際には,同じ構造体中にこの両タイプのクラスタの特性が表れる。その場合は,その構造体は分散ク

ラスタとし,計数基準によって構造体構成物を記録する論理的処理を行う。クラスタの扱い方は,図C.2

の例に図解した。 

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図C.1 種々の構造体の基本的な形態 

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図C.2 複雑なアスベスト・クラスタの記録例 

C.2.4 マトリックス 1本以上の繊維又は繊維束が一つの粒子又は重複した非繊維状粒子に付着している

か,又は部分的に覆い隠されている。この構造体をマトリックスと定義する。そのTEM像では,繊維に

付着した粒子とTEM像の中で偶然に重複した粒子との区別ができない。それは,そのような構造体が,

実際に複雑な粒子であるか,又はフィルタ上で粒子と繊維が単純な重複によってできたのか分からないか

らである。 

マトリックス構造体は2本以上の繊維を伴うので,マトリックスの計数方法を詳細に決めることは重要

である。マトリックスは異なる特性を呈し,二つのタイプが決められる。 

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a) 分散マトリックス(タイプD) 一つの粒子又は関連する粒子集団によって構成される構造体,重複

又は付着した繊維若しくは繊維束を伴い,その中の独立の繊維又は繊維束の少なくとも一つが分離し

て識別でき,その寸法が計測できる。 

b) 密集マトリックス(タイプC) 一つの粒子又は関連する粒子集団によって構成される構造体で,そ

の中の独立の繊維又は繊維束が構造体の中に又は構造体から突き出ているように見え,独立の繊維及

び繊維束の寸法は明確には計測できない。 

実際には,同じ構造体中にこの両タイプのマトリックスの特性が表れる。その場合は,構造体は分

散マトリックスとすることにし,計数基準に従い構造体構成物を記録する論理的処理を行う。処理の

例を図C.3に示す。 

C.2.5 5μmより大きいアスベスト構造体 最大寸法が5μmを超える繊維,繊維束,クラスタ又はマトリッ

クス。5μmより大きいアスベスト構造体は,5μmより長いアスベスト繊維又は繊維束を必ずしも含まない。 

C.2.6 5μmより長いアスベスト繊維又は繊維束 5μmを超える長さのあらゆる幅の繊維又は繊維の束。 

C.2.7 PCM相当構造体 5μmより長く,径が0.2〜3.0μmの間にあり,アスペクト比が3 : 1以上のあらゆ

る繊維,繊維束,クラスタ又はマトリックス。PCM相当構造体は,5μmを超える長さの繊維又は繊維束若

しくはPCM相当繊維を含む必要はない。 

C.2.8 PCM相当繊維 5μmより長く,径が0.2〜3.0μmの間にあり,アスペクト比が3 : 1以上の平行又は

階段状側面をもつ粒子。クリソタイルにおいては,PCM相当繊維は常に繊維束である。 

C.3 他の構造体計数基準 

C.3.1 グリッドバーと交差する構造体 図C.4に図解したように,グリッド目開き部の2側面のグリッド

バーと交差する構造体だけを計数する。その構造体の寸法は,図C.4の破線で示されるように,構成物の

隠れた部分が隠れていない部分に相当すると考えて記録する。例えば,グリッドバーと交差する繊維の長

さは,見えている長さの2倍として測る。グリッド目開きの他の二つの側面のどちらかと交差する構造体

は,計数に含めない。 

C.3.2 視野外に延びる繊維 グリッド目開き部の走査の間に,視野外に延びた繊維の2重計数を避けなが

ら組織的に正しく計数する。一般に,視野外に延びた繊維は二つの象限にあるときだけ計数するように規

定することが望ましい。その方法は図C.5に示した。試料を繊維の他端に移動することによって繊維の長

さをはかり,次の走査計数を始める前に試料位置を元の視野に戻す。視野内に末端のない繊維は数えない。 

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図C.3 複雑なアスベスト・クラスタの記録例 

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図C.4 グリッドバーにかかった構造体の計数の仕方 

図C.5 観察視野からはみ出した繊維の計数の仕方 

C.4 データ記録方法 

C.4.1 はじめに 特定された形態的コードは,コンピュータデータ処理を楽にし,個々のアスベスト構造

体の重要な特徴を完全に再現する記録を残すように設計されている。その方法は,顕微鏡観察者が個々の

基本構造体を四つの基本カテゴリー(繊維,繊維束,クラスタ及びマトリックス)の一つに分類するよう

に指定している。 

C.4.2 繊維 構造体計数様式上に,C.2.1で定義した繊維を記号 “F” と記録する。もし,繊維がクラスタ

かマトリックスの部分として計数される場合は,それがクラスタ又はマトリックスの構成物であるかに応

じて,繊維を記号 “CF” 又は “MF” と記録する。 

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C.4.3 繊維束 構造体計数様式上に,C.2.2で定義した繊維束を記号 “B” と記録する。もし,繊維束がク

ラスタかマトリックスの分離して計数される部分であるなら,それがクラスタかマトリックスかの構成物

に応じて,繊維束を記号 “CB” 又は “MB” と記録する。 

C.4.4 分散クラスタ(タイプC) 構造体計数様式上に,C.2.3に定義したタイプCの独立したクラスタを

記号 “CC” と記録し,2けたの数字が続く。構造体を構成する繊維及び繊維束の合計数の分析者の概算を

最初の数字は表している。数字は1〜9であり,もし,9より多い繊維又は繊維束からなる構成物であるな

ら “+” で表す。2番目の数字は同じ方法で構造体に含まれる5μmより長い繊維又は繊維束の合計を表す。

クラスタの全体寸法は,2直角方向の最大寸法で表し記録する。長さを減らすため,五つまでの繊維又は

繊維束までコード “CF” (クラスタ繊維)及び “CB” (クラスタ繊維束)を用いて別に記録する。突き出

た構成物の繊維及び繊維束を計数した後に,もし,クラスタの中に繊維の集団が残った場合,それは “CR” 

(クラスタ残留)と記録する。もし,クラスタ残留がクラスタ中の二つ以上の場所で残っていたら,二つ

以上のクラスタ残留を記録する必要がある。どんなクラスタについても6以上のクラスタ残留は記録しな

い。クラスタ残留は計測し,2けたの数字で表し,全体のクラスタと同様の詳述方法で規定する。もし,

基本のクラスタ又はクラスタ残留中の構成繊維及び繊維束の数が1〜9の範囲外であるなら,構成繊維及び

繊維束の数に関する付加情報を“備考”欄に記入する。 

C.4.5 密集クラスタ(タイプC) 構造体計数様式上に,C.2.3に定めたようなタイプCの独立したクラス

タは記号 “CC” と記録し,次に2けたの数字を続ける。構成繊維及び繊維束の数を表す2けたの数字はタ

イプCのクラスタと同じ方法で記入する。2直角方向のクラスタ全体寸法は,タイプCのクラスタと同じ

方法で記録する。定義によって,密集クラスタの構成要素である繊維及び繊維束は独立して計測すること

ができないので,構成する繊維及び繊維束を別々に図表に記入することはできない。 

C.4.6 分散マトリックス(タイプC) 構造体計数様式上に,C.2.4に規定したようなタイプCの独立した

マトリックスは記号 “MC” と記録し,次に2けたの数字を続ける。2けたの数字はタイプCのクラスタと

同じ方法で記入する。マトリックス全体寸法は,タイプCのクラスタと同じ方法で記録する。規定の長さ

を少なくするため,五つまでの構成繊維又は繊維束までコード “MF” (マトリックス繊維)及び “MB” (マ

トリックス繊維束)を用いて別に記録する。突き出た構成繊維及び繊維束を計数した後に,もし,クラス

タの中に繊維の集団が残るなら,それは “MR” (マトリックス残留)と記録する。もし,マトリックス残

留がマトリックス中の二つ以上の場所に現れたら,二つ以上のマトリックス残留を記録する必要がある。

どんなマトリックスについても6以上のマトリックス残留は記録しない。マトリックス残留は計測し,2

けたの数字を割り当て,全体のマトリックスと同様の詳述方法で示す。もし,基本のマトリックス又はマ

トリックス残留中の構成繊維及び繊維束の数が1〜9の範囲外であるなら,構成繊維及び繊維束の数に関す

る付加情報を“備考”欄に記入する。 

C.4.7 密集マトリックス(タイプC) 構造体計数様式上に,C.2.4に定めたようなタイプCの独立したマ

トリックスは記号 “MC” と記録し,次に2けたの数字を続ける。2けたの数字はタイプCのクラスタと同

じ方法で記入する。2直角方向のマトリックス全体寸法は,タイプCのクラスタと同じ方法で記録する。

定義によって,密集マトリックスの構成要素である繊維及び繊維束は独立して計測することができないの

で,構成繊維及び繊維束を別々に図表に記入することはできない。 

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C.4.8 部分的に不明りょうな繊維及び繊維束の記録方法 他の粒子によって不明りょうとなっている繊維

又は繊維束の長さの割合は,1本の繊維又は繊維束が独立した構成物として計測されるか,又はタイプC

のマトリックスの一部分又はマトリックス残留の一部分と考えられるかの判断に基づいて決められる。も

し,不明りょうな部分の長さが全体の長さの三分の一より大きい可能性がないと判断されたなら,繊維又

は繊維束は,別々に記録する突き出し形と考える。個々の部分的に不明りょうな繊維又は繊維束に割り当

てた長さは,見える長さに不明りょうな部分の最大可能長さを加えた長さとする。マトリックスを横断し

て現れる,若しくは両端がほぼ現れている繊維又は繊維束は,最大数5まで含められ,分離した繊維又は

繊維束の計数基準に従い記録する。もし,不明りょうな長さが全体の長さの三分の一より大きいなら,繊

維又は繊維束はタイプCの密集マトリックスの一部分,若しくはマトリックス残留の部分として考える。 

C.5 PCM相当構造体計数のための特別な考慮 PCM相当構造体の計数のための最小アスペクト比として

3 : 1を用いる。この比率の定義は歴史的な位相差顕微鏡計測的分析における構造体のサイズ範囲に対する

結果との比較を行うために必要であるが,このアスペクト比の定義の使用は,最小5 : 1のアスペクト比で

全繊維サイズ分布を説明する能力に顕著に影響するものではない。PCM相当構造体だけの計数を必要とす

る場合もある。コード化システムでは5μmより長い繊維及び繊維束を含むPCM相当構造体並びにそうで

はない構造体とを区別することにしている。 

備考 一般に,クラスタとマトリックスは,計数する繊維の最小寸法を大きくするにつれて構成要素

の数が小さくなる。したがって,5μmより長い繊維及び繊維束だけを計数するために倍率を低

くしたときの計数値よりも,全繊維サイズについて計数したときの方が粒子構造体の構成繊維

の数は大きくなることが分かる。しかし,構造体を構成している繊維及び繊維束をより短いも

のまで記録しようとする場合,そのデータが計数すべき繊維のサイズ範囲及び使用倍率にかか

わらず粒子構造体に対して一貫していなければならない。 

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附属書D(規定) 繊維識別方法 

D.1 はじめに アスベスト繊維の識別に用いる判断基準は,分析の意図する目的に応じて選ぶことができ

る。ある場合は,繊維を特定の鉱物種としてはっきりと識別したい要求がある。他の場合には,サンプル

の個々の繊維の厳密な識別を行わなくて十分なこともある。分析を行うのに要する時間,すなわち,分析

コストについては,識別基準に応じて大きく変えることができる。特定の分析で繊維の識別のために考慮

する判断基準の組合せを,分析を始める前に特定する。この基準の組合せは,分析の“レベル”として言

及するものとする。装置上の限界とサンプルの特性に関係する種々の要因は,すべての個々の繊維を細か

に特定する繊維識別基準を完全に満足することを妨げることがある。したがって,分析に含まれる個々の

浮遊アスベストの可能性のある繊維に対して満足できる識別判断基準を記録する。例えば,EDとEDXA

の両方を個々の繊維の識別決定に用いたとき,ある理由からEDはん(斑)点は生じないがクリソタイル

に相当するEDXAスペクトルをもたらしたクリソタイルの形態をもつ繊維は,識別についての信頼性のレ

ベルを知らせる方法の一つである。 

D.2 ED及びEDXA技術 

D.2.1 一般的事項 はじめに,繊維を管状形態の繊維と管状形態でない繊維の基本的形態によって二つの

カテゴリーに分類する。ED及びEDXA技術を用いて個々の繊維の分析を行う。繊維をED及びEDXAに

よって分析するときに次の手順を用いる。 

クリソタイルのようなある種の鉱物繊維の結晶構造は,EDXA分析に要する高密度電流によって容易に

損傷を受ける。したがって,繊維からEDXAスペクトルを得る分析が行われる前にこれらの敏感な繊維の

ED分析を完了する。角せん石のような比較的安定した繊維は,ED及びEDXAのどちらの分析を先にして

もよい。 

D.2.2 ED分析 ED分析は,定性及び定量のどちらもできる。定性ED分析は,詳細な分析なしにTEM観

察スクリーン上でランダムに向く繊維から得られるEDパターンの一般的特性の視覚的分析から成る。ク

リソタイルのように円筒対称な繊維から得られるEDパターンは,繊維の軸が回転したときも変化しない。

ランダムな方向を向くこれらの鉱物繊維からのパターンは,定量的に分析できる。円筒対称でない繊維に

対しては,入射電子線方向にほとんど平行に繊維の基本結晶軸が向いているときに得られるEDパターン

だけが定量分析できる。この種のEDパターンを晶帯軸EDパターンという。晶帯軸EDパターン状態で定

量分析するために,EDパターンを写真上に記録し,既知の鉱物構造体のパターンに照らして一致度を点

検する。晶帯軸EDパターン分析と既知の鉱物構造体から計算された対応するデータとを比較するために,

コンピュータプログラムを用いる。特別の方向にある繊維についての晶帯軸EDパターンは,鉱物繊維を

明確に識別するのに十分ではないが,繊維を他の角度に傾けたり,他の晶帯軸に対応する異なるEDパタ

ーンを記録することは可能である。予想される鉱物の構造との一致度をみるために二つの晶帯軸間の角度

を調べておく。 

EDパターンの視覚分析の際には,TEMのカメラ長をおおよそ250mmの低い値に設定し,EDパターン

を拡大双眼鏡を通して観察する。この方法は,電子照射による繊維損傷の可能性を最小にする。しかし,

観察時に観察蛍光板を傾斜させなくてはならないが,それによってパターンがひずむ。もし,パターンを

正確に測定するためにEDパターンを記録する際には,少なくとも2mのカメラ長を用いる。視覚的に評

価したり記録するためにEDパターンを得る際,サンプル高さをユーセントリック(真正)点に正確に合

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わせ,制限視野絞り内の像に焦点を合わせる必要がある。もし,これをしないと,制限視野領域からED

パターンが得られない構造体があるかもしれない。一般に,必要最小限の大きさのED絞りを用いる必要

がある。 

EDパターンの精密計測については,校正用内標準を用いる。金の薄膜又は他の適切な校正物質をTEM

試料の下地に加える。このコーティングは,真空蒸着又はより簡便なスパッタリングによって行う。多結

晶性の金薄膜は,すべてのEDパターンに回折リングを生じ,これらのリングは校正に必要な情報をもた

らす。 

EDパターンを作るために,繊維の像を観察蛍光板の中心に移動し,試料の高さをユーセントリック位

置に合わせ,適当な制限視野絞りを電子線通路に挿入する。これによって繊維又はその一部分が照射領域

の大部分を占めるように成る。その絞りのサイズと繊維の部分は,分析する粒子以外の他の粒子を制限領

域から除外する。双眼鏡を通してEDパターンを観察する。観察の間に最も完全なEDパターンが得られ

るように対物レンズ電流を合わせる。もし,不完全なEDパターンが依然として得られるなら,最適ED

パターンを得るため,粒子を制限視野内で動かしてみたり隣接粒子からの妨害の可能性を除去してみる。 

もし,晶帯軸ED分析を繊維について行うとするなら,試料を適切な試料ホルダに装てんする。最も適

した試料ホルダは,試料グリッドの回転及び1軸方向の傾斜を完全に行うことができるものである。繊維

の長さ方向とゴニオメータの傾斜軸が一致した繊維像を示すまで試料を回転し,繊維がユーセントリック

位置になるまでサンプル高さを調整する。EDに対称的な2次元のスポットの配列が現れるまで繊維を傾

ける。晶帯軸配列状態の認識には,操作者に若干の経験が要求される。晶帯軸状態を得るために繊維を傾

斜させる間に,スポットの強度が変化する様子を観察する。もし,弱い反射が強い反射のマトリックス部

分に起きていたら,双晶又は多重回折が存在する可能性があり,計測と解釈のための回折スポットの選択

に注意を要する。電子回折及び多重回折についての十分な議論は,附属書Jに掲げたJ. A. Gard, P. B. Hirsch, 

H. R. Wenkらの附属書Jに見られる。得られる晶帯軸パターンはすべてが決定的なわけではない。少なく

とも1方向の低い指数に相当する近接する面間隔の反射だけ記録する。パターン中の約0.3nmより小さい

d−間隔パターンは,正確ではない。有用な指針は,最も低い反射角のスポットが最も内側の金の回折リン

グ (111) の内側に生じていることと,より小さい反射間隔をもつパターンが通常最も決定的であるという

ことである。 

図D.1に示すように,中心のスポットに最も近く,晶帯軸パターンの交差する二つの方向に沿った5個

のスポットを測定のために選ぶ。中心スポットからこれらのスポットまでの距離とその四つの角度は,計

測に必要なデータである。中心スポットは通常過剰露光であるので,計測の正確な原点にはならない。そ

のため,中心スポットをはさんで対称に配置する幾つかの対スポットで,かつ繰り返し出現しているスポ

ット間の測定によって必要な間隔が得られる。その距離は0.3mmよりよい精度,角度は2.5°よりよい精

度で測定しなくてはならない。校正パターンの1番目又は2番目のリング(111及び200)の直径も,0.3mm

よりよい精度で測定しなくてはならない。 

校正物質として金を用いた場合,リングの直径を用いたカメラ定数は,次のように与えられる。 

λ×L=0.117 74×D mm.nm(1番目のリング) 
λ×L=0.101 97×D mm.nm(2番目のリング) 

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図D.1 晶帯軸SAEDパターン計測の例 

D.2.3 EDMA測定 EDXAスペクトルの解釈は,定性的又は定量的のどちらでも行うことができる。スペ

クトルの定性的解釈には,繊維中の元素から生じたX線ピークが記録される。定量的解釈のためにバック

グラウンドを差し引いた正味ピーク面積を,繊維中の元素から生じたX線ピークについて求める。この方

法は,シリコンを含む鉱物の定量分析に用いる。EDXAスペクトルを得るため,繊維の像を蛍光板の中心

に動かし,対物絞りを取り除く。適切な電子ビーム直径を選び,ビームを偏向させて繊維に当たるように

合わせる。装置によってはX線検出器に向けて試料を傾けたり,またある装置ではSTEM操作モードを用

いることが必要となる。 

適切なスペクトルを得る積算時間は,繊維の径及び装置上の要因によって変わる。定量分析では,スペ

クトルの各ピークが統計的に根拠のあるカウント数をもっていなくてはならない。ナトリウムを含んだ細

い径の繊維の分析は,ナトリウムがX線検出器の最も敏感でない低いエネルギー範囲にあるので,最も微

妙である。そのため,繊維中にナトリウムの存在を確認するのには十分長い時間積算してスペクトルを得

ることが必要である。もし,バックグラウンドを補正したけい素Kα値が10 000カウントを超えて積算さ

れたなら,満足できる定量分析が行えることが分かる。そうしたスペクトルのバックグラウンドを補正し,

それぞれの元素ピークの正味面積を求める。 

正味ピーク面積についてのコンピュータ解析による繊維の定量的EDXA識別の後は,その装置でのスペ

クトル比較によって同じサンプル中の他の繊維の識別も可能になる。目視比較は,しばしば短い積算時間

で行うことができる。 

D.3 繊維分析データの解釈 

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D.3.1 クリソタイル クリソタイルの形態的構造は特徴的であり,経験上,難なく認識できる。しかし,

わずかではあるが他の鉱物でも同じような形態をしているものがあるので,形態観察単独ではほとんどの

サンプルに対して不十分である。もし,その鉱物のEDパターンの特徴が参照クリソタイルからのパター

ンに符合しているなら,クリソタイルから得られるEDパターンは,その鉱物に特有なものである。しか

し,その繊維の過去の履歴や多くの他の要素によって,その繊維の結晶構造は損傷を受け,EDパターン

が出現しないこともある。この場合,EDXAスペクトラムは,このような形態観察を補足するための唯一

のデータになる。 

D.3.2 角せん石 クリソタイル以外のアスベスト繊維に対する繊維識別方法は,複雑で時間がかかるので,

Rhoades(附属書J参照)によって開発されたコンピュータプログラムを晶帯軸EDパターンの解釈に用い

ることが推奨される。この文献は,空気サンプルのTEM分析中に遭遇しやすいすべての繊維状鉱物に対

する組成と結晶構造データを含んでおり,未知の繊維からの化学組成又は結晶構造データは文献によるデ

ータと比較する。他の鉱物からのデータとも一致する可能性もあるので,分析が特定のテスト鉱物とデー

タとの一致をみることでは,未知のものを一義的に識別したことにはならない。しかし,ある別種の構造

の鉱物が,定量的EDXAと二つの晶帯軸EDパターンによって識別された角せん石繊維データと一致する

データをもたらすことはありえない。 

角せん石繊維と推定される繊維は,まず最初に化学組成に基づいて分類される。定性的又は定量的EDXA

情報がこの分類の基礎として用いられる。既知の鉱物組成データから,未知の繊維の分析に用いる組成と

符合する鉱物群のリストを作るべきである。さらに進めて,D.2.2の図解に一致させて,最初の晶帯軸ED

パターンを得る必要がある。 

幾つかのEDパターンが特徴的であると考えられるので,角せん石の識別のために特徴的な晶帯軸パタ

ーンを特定することは可能である。不運にも,TEMグリッド上のランダム方向を向いた繊維に対し,現在

用いられている試料ホルダ及びゴニオメータはどれも不便で,あらかじめ選定した二つの晶帯軸への迅速

な位置決めができない。容易に得ることのできる低指数パターンを用い,EDXAデータに基づいてあらか

じめ選定した鉱物の構造との一致性を試験するというのが最も実際的な扱い方である。ある特定の方向を

向いた非角せん石鉱物は角せん石構造と一致する同様なパターンを生じることがあるので,このあらかじ

め選択されたリスト中の非角せん石鉱物の構造についても,未知の繊維の晶帯軸データと対照して調べな

ければならない。 

晶帯軸EDの解釈は,そのEDXAデータと化学的に合致するとして鉱物データファイルからあらかじめ

選んだ鉱物のすべてと対照させなくてはならない。普通,この方法は,答えを見つけるのに用いる鉱物リ

ストを短縮する。また,識別の確認又はあいまいさを取り除くために,同じ繊維から得られる他のパター

ンからの2番目の晶帯軸データの組合せを処理する。さらに,二つの晶帯軸の方向の間の角度がその鉱物

の構造を関連付けて調べられる。もし,その繊維がc軸双晶を含んでいるとその二つの晶帯軸EDパター

ンはその離れた双晶から生じている可能性があるので,二つの晶帯軸間の回転に注意する。実際には,繊

維の完全な識別を必要とする特別な場合を除いて,その完全な識別が必要とされる繊維は非常にまれであ

る。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

D.4 繊維分類カテゴリ 繊維の決定的な識別を行うことは,常に可能ではない。これは,装置上の限界又

は繊維の実際の特性のどちらかに起因している。多くの分析において,もし,サンプルについて適用でき

る他の知見があったり,又はもし,濃度が関心のあるレベル以下である場合には,個々の繊維の決定的識

別は実際面で必要としないことがある。したがって,分析方法は,装置上の限界と分析上の種々の要求の

両方を考慮しなくてはならない。繊維識別のためのシステムはデータを正確に記録するのを可能にする。

分類方法は,表D.1及び表D.2に示されており,クリソタイルと角せん石それぞれの識別に向けられてい

る。繊維は,これらのカテゴリに従って報告することになる。 

この分析方法での一般原則は,まず初めに最も明確な繊維を分類すること,又は行おうとする分析のレ

ベルを決めることである。次に分析した個々の繊維について実際に分類した結果を記録する。その後,結

果の使用目的に応じて,繊維を“識別済”とした承認基準をどの分析後にもはっきりさせる。 

未知のサンプルについて,次のような場合にクリソタイルが確認されたと認められる。CDカテゴリ中

の1繊維から校正済みEDパターンが記録した場合,又はEDパターンが,その校正済み装置によって記

録された場合,AZQ,AZZ又はAZZQカテゴリ中に分類される繊維に対し,例外なく角せん石という記録

データが得られることによってだけ,角せん石が確認されたとして認められる。 

表D.1 管状形態をした繊維の分類 

カテゴリ 

記載 

TM 

管状形態,クリソタイルとするには不十分な特徴をしている。 

CM 

クリソタイルの形態の特徴を示す。 

CD 

SAEDでクリソタイルと確認された。 

CQ 

定量EDXAでクリソタイルの組成が確認された。 

CMQ 

クリソタイルの形態と定量EDXAによるクリソタイルの組成が確認された。 

CDQ 

SAEDでクリソタイルパターンを示し,かつ,定量EDXAでクリソタイルの組成が得られたもの。 

NAM 

非アスベスト鉱物。 

表D.2 管状形態を呈さない繊維の分類 

カテゴリ 

記載 

UF 

未同定繊維。 

AD 

ランダム方向SAEDによる角せん石(0.53nm間隔の層線パターンを示す。)。 

AX 

定性EDXAによる角せん石。スペクトルは角せん石に一致する元素をもっている。 

ADX 

ランダム方向SAEDと定性EDXAによる角せん石。 

AQ 

定量EDXAによる角せん石。 

AZ 

晶帯軸SAEDパターンによる角せん石。 

ADQ 

ランダム方向SAEDと定量EDXAによる角せん石。 

AZQ 

晶帯軸SAEDパターンと定量EDXAによる角せん石。 

AZZ 

二つの晶帯軸SAEDパターンによる角せん石で,互いの角度が矛盾がない。 

AZZQ 

AZZと定量EDXAによる角せん石。 

NAM 

非アスベスト鉱物。 

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D.4.1 クリソタイルと予想される,管状の形態をもつ繊維の分類方法 時折,クリソタイルに似た管状形

態をもっている繊維に遭遇することがあり,そのED又はEDXAによる分析で明らかな特徴が得られるこ

とがある。非晶質の可能性がある場合は,ED技法は有効でない。又はグリッドがEDXAスペクトルが得

られる位置の外にあったのかもしれない。もし,そうでないとしたら,繊維は有機物起源なのかもしれな

い。ただ形態と組成が不明りょうで無視できなかったのかもしれない。このように個々の繊維を十分に識

別し,記録する必要がある。繊維の分類には様々の度合いの成功がある。図D.2は管状形態を呈する繊維

に用いる分類方法を示している。この表の説明などは要しない。すべての繊維は,非アスベスト鉱物 (NAM) 

として分類から外すか,又は後の判断基準によってクリソタイル繊維計数に用いるのと同じ方法で分類す

る。 

形態は最初に行う検討であり,もし,これがクリソタイル標準サンプルに通常見られるのと同じでない

なら,TMとして最初の分類をする。疑わしい形態は気にせず,図D.2に従ってその繊維のED又はEDXA

を行う。形態がより決定的である場合には,クリソタイル形態 (CM) をもつ繊維として分類することが可

能である。 

CMとして分類するには,次のような形態的特徴が必要である。 

a) 個々の単繊維が5 : 1を超える高いアスペクト比をもっており,直径が約30〜40nmである。 

b) その繊維の電子散乱力は,60〜90kVの加速電圧で内部構造が見えるくらい,十分に低い。 

c) UICCクリソタイル試料が示すものと同じような管状の形態を思わせる内部構造のこん跡がある。こ

れらは電子ビームによって劣化しているかもしれない。 

これらの形態的特徴をもつすべての繊維をED法によって分析し,図D.3に示す明確な特徴をもった回

折パターンを呈するものだけをEDによるクリソタイル (CD) として分類する。クリソタイル確定のため

のEDパターンに関する特徴は,次のとおりである。 

a) (002) 反射が0.73nmの間隔であることを確かめる。 

b) 層ラインの繰り返し間隔は,0.53nmである。 

c) (110) 及び (130) 反射にしま模様(ストリーク)がある。 

TEM観察蛍光板上のミリメートル目盛を用い,これらの観察が装置上で直ちに行われるようにする。も

し,文書による繊維識別証明が必要なら,少なくとも一つの代表的な繊維のTEM顕微鏡写真を撮り,別

のフィルム又は写真板にEDパターンを記録する。このフィルム又は写真板は,金のような多結晶性の既

知の物質からの校正リングを撮る。この校正パターンは特定の繊維がクリソタイルであることを証明し,

ハロイサイト,パリゴルスカイト,タルク又はバーミキュライトのような他の管状又は渦巻き状をしたも

のではないことを証明する唯一の記録された証拠である。EDによってクリソタイルとしてはっきりと識

別できた繊維の割合は,いろいろでその一部は装置及び操作者の手順にも依存している。識別可能なED

パターンをもたらさない繊維は,EDXAによる分析がないとTM又はCMカテゴリに残される。 

クリソタイルのEDXA分析で重要な二つの元素がある。繊維分類のためのEDXA分析は,定量的でな

くてはならない。もし,スペクトルがマグネシウムとけい素の顕著なピークが適切な面積比率を表してお

り,他の元素からのピークが小さいなら,その繊維は定量的EDXA分析によってクリソタイルとして,CQ,

CMQ又はCDQのカテゴリ別に分類される。 

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図D.2 管状形態をした繊維に対する分類チャート 

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図D.3 クリソタイルのSAEDパターン 

D.4.2 角せん石と予想される管状形態でない繊維の分類方法 管状形態でなく,明らかに生物起源ではな

く,5 : 1以上のアスペクト比をもち,平行又は階段状側面をもつすべての粒子は,まず角せん石繊維と推

定する。ED及びEDXA法による繊維の分析は,繊維の特性及び数多くの装置上の限界によって成功の程

度が変化する。例え,もし,時間とコストに関係ないとしても,すべての繊維を完ぺきに識別することは

不可能である。さらに,角せん石の存在を確認することは,非常に時間のかかる方法である晶帯軸EDパ

ターンの定量分析によってだけ達成できる。したがって,未知の発生源からの日常試料に対しては,この

分析方法は,晶帯軸ED分析の要求をそれぞれの代表的組成をもつ1繊維だけに制限する。ある試料にお

いては,晶帯軸方法によって繊維を更に詳しく識別する必要がある。発生源がよく分かっている試料に対

しては,晶帯軸方法による識別費用は正当化されないだろう。 

ランダム方向EDパターンの0.53nm層間隔は角せん石を診断づけるものではない。しかし,多くの繊維

にc−軸双晶があることは異なる軸方向をもった幾つかの結晶が平行に並んだことによってパターン中に

スポットの層の配列をもたらす。回析スポットの層ライン上のランダムな配列は,繊維の高いアスペクト

比が関係しているとしても,角せん石アスベストの特徴であり,このような限られた判断上の価値をもっ

ている。もし,このタイプのパターンが得られない場合,電子ビームに対して不適切な方向であるために

又は繊維がある他の鉱物種であるかもしれないので,繊維の識別は,まだ不明りょうということになる。 

図D.4は,角せん石繊維と予測される繊維に用いる繊維分類チャートを示している。このチャートはED

及びEDXA分析が組織的に行われた際に,角せん石繊維と予測される繊維に適用可能な分類経路をすべて

示している。まず最初にEDXAスペクトル又はランダム方向のEDパターンのどちらを得る試みがなされ

たかによって,二つの経路が可能である。未知起源の試料の通常の分析方法は,ランダム方向ED,定性

EDXA,定量EDXA,及び晶帯軸EDの順序で繊維を分析する。最終的に割り当てられる繊維分類は,最

高要求レベルで成功した分析による決定か,又は装置上の限界のもとで決定されたものかである。結果の

質に影響するあらゆる装置上の限界は,記入しておく。各繊維から得られた最高の分類を計数シートの適

切な欄に記録する。種々の分類カテゴリは繊維濃度計算の際に必要に応じて結合される。個々の繊維の識

別を行う際に得られた結果の完全な記録は,必要によってデータを再利用できるようにしておく。 

未知のサンプルにおいて,もし,角せん石の存在があいまいに確認されているなら晶帯軸分析が必要と

なる。このレベルの分析に対して,すべての角せん石繊維と予測される繊維をランダム方向EDパターン

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及びEDXAスペクトラム分析によってADQカテゴリに分類することを試みる。さらに,識別を確認する

ために晶帯軸方法によって見つかった各種の予想される角せん石繊維から少なくとも1繊維を分析する。

多くの場合,空気サンプル捕集場所に近接するアスベストの発生源の可能性についての情報があるので,

ある程度の識別のあいまいさは許容することができる。したがって,このような場合には低レベルの分析

を許容することができる。 

図D.4 管状形態をもたない繊維の分類チャート 

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附属書E(規定) 長さ5μmを超えるアスベスト繊維及び繊維束, 

並びにPCM相当アスベスト繊維の濃度の測定 

長さ5μmを超えるアスベスト繊維及び繊維束に対して統計的正確さと分析感度を向上させるために,こ

の寸法範囲内の繊維及び繊維束だけの計数を低倍率で付加的に行うことがある。結果は“5μmを超える長

さの繊維及び繊維束”として特記する。この分析のために,おおよそ10 000倍の倍率を用い,附属書D中

の方法に従って各構造体形態コードを割り当てることを続ける。長さが5μmを超える繊維及び繊維束だけ

を記録する。また,長さが5μmを超えるクラスタ及びマトリックスの構成物を記録する。 

歴史的に労働環境におけるリスク予測の基礎となってきた繊維径が,0.2〜3μmの間にあり長さが5μm

を超える繊維状構造体(PCM相当アスベスト繊維)に対する統計的正確さと分析感度を向上させることが

行われることがある。この拡大繊維計数には,おおよそ5 000倍の倍率を用いる。結果は“PCM相当アス

ベスト繊維”として特記する。この寸法範囲内のアスベスト構造体は,5μmを超えるアスベスト繊維及び

アスベスト繊維束と一体化する必要はない。 

アスベスト構造体が100個計数されるまで,又は本体表1に従って計算された必要な分析感度を得るの

に十分な試料面積が分析されるまで,試料の計数分析を続ける。 

備考 PCM繊維計数方法で分析するフィルタ面積に対応する試料面積は0.785mm2であり,200メッ

シュグリッドの約100グリッド目開きに相当する。 

ある国の基準では,長さが2.5μmを超える径が0.2〜3.0μmの間のアスベスト繊維計数を必要

としている。この寸法範囲内での繊維計数には,おおよそ5 000倍の倍率を用いる。 

PCM繊維計数方法及びある国の基準において定義されている繊維の最小アスペクト比は3 : 

1である。このアスペクト比を試験報告中に特記するのであれば,アスペクト比3 : 1の使用は,

この規格の中で許されている。 

試験報告は,本体11.に特記したすべての項目を含んでいなくてはならない。 

47 

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附属書F(規定) 結果の計算 

F.1 はじめに 次に規定した方法を用いて結果を計算する。結果はコンピュータプログラムを用いて簡便

に計算することができる。 

F.2 TEMグリッド上の繊維状構造体分布の均一性試験 グリッド目開き上で検出されたアスベスト構造

体がグリッド目開きごとにランダムかつ均一に分布しているかどうかはカイ二乗試験を用いて点検する。 

k個のグリッド目開き中で検出された構造体合計をnとし,k個のグリッド目開きの個々の面積をA1〜Ak

とするならば,分析したTEM試料の合計面積は, 

=

=

=

k

i

i

iA

A

1

個々のグリッド目開き面積で表される観察された総分析面積に対する割合は,Ai /Aで与えられる。分析

したk個のグリッド目開きにわたって構造体がランダムに均一に分散しているなら,面積Aiの1グリッド

目開き中に存在している構造体の予測数はnpiとなる。そのグリッド目開き上で検出された構造体の観察

数をniとするなら, 

(

)

=

=

=

k

i

i

i

i

i

np

np

n

1

2

2

χ

この値は,自由度 (k−1) をもつχ2分布の有意点と比較される。0.1%より低い信頼水準の場合は,非常

に均一でないたい積に相当するのでサンプル分析を破棄することになる。もし,構造体計数がこの試験に

不合格なら,結果の精度は不確かなものである。結果の精度はグリッド目開きの追加分析によって改善で

きる。粒子の不均一なたい積は灰化後の残留物の不完全な分散の結果,又は水懸濁液ろ過中の不完全な分

散の結果として起きる。したがって,最適な扱いは元の試料捕集フィルタから新たにTEM試料を作製す

ることである。 

F.3 分析感度の計算 次の式を用いて,構造体/Lで表される分析感度Sを計算する。 

V

kA

A

S

g

f

=

ここに, 

S: 必要な分析感度(構造体/L) 

Af: 分析フィルタの有効面積 (mm2) 

k: 分析したグリッド目開き数 

Ag: TEM試料グリッド目開きの面積 (mm2) 

V: 空気捕集量 (L) 

F.4 構造体濃度の平均及び信頼区間の計算 この規格に従って進める構造体計数において,グリッド目開

きの数は全体グリッド目開きから分析領域として選び,この小領域を基にして全グリッド目開きの構造体

計数を分析する必要がある。95%信頼をもつそのサンプル平均の区間は,集団の平均を含むことが必要で

ある。 

F.4.1 平均構造体濃度の計算 構造体/Lで表される平均構造体濃度Cを計算する。 

48 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

C=S×n 

ここに, S: 分析感度(構造体/L) 
 

n: 全分析グリッド目開きで検出された合計構造体数 

F.4.2 信頼区間の計算 グリッド目開き上の構造体の分布は理論的にポアソン分布に近似されなければな

らない。繊維の凝集及びサイズ依存識別効果のために,実際の構造体計数値は,しばしばポアソン分布に

従わない。特に構造体計数が高い場合には顕著である。したがって,構造体計数データがポアソン分布に

従って分布しているという仮定は,そのデータによって判定されるより狭い信頼区間を導くことになる。

さらに,もし,ポアソン分布が仮定されるなら,分散は計数された構造体の総数にだけ関係する。したが

って,1グリッド目開き上で計数された構造体数は,多くのグリッド目開き上で検出された同じ構造体数

と同じ信頼区間をもつことと考えられる。しかし,実際に計数した面積はフィルタの全面積に関して非常

に小さく,この理由から,たい積体の代表的な評価を行っていることを確かめるために,フィルタの異な

る面積から採った最小4グリッド目開きについて計数する。 

ある試料の分散が予測できる,グリッド目開き当たり十分な構造体数がある高い構造体計数において,

その分布は平均及び分散とは独立の値をもつガウス分布に近似できる。暗黙のポアソン分布の仮定を超え

る場合の試料の分散の推定には,実際のデータによって求まった分散をもつガウス分布統計方法を用いる

のが信頼区間の計算の最も控え目な扱い方である。 

少ない構造体計数においては,試料の信頼できる分散予測を得ることは不可能であり,分布はまた非対

称となり,必ずしもポアソン分布ではない。構造体が30かそれ以下では,ポアソン分布は非対称となり,

ガウス分布との適合理由はなくなり,試料の分散予測は信頼できない。したがって,構造数31以下の計数

について,ポアソン分布の仮定は,信頼区間の計算のために用いる。 

F.4.3 ポアソン分布95%信頼区間の計算例 計数された構造体の合計数は4未満に対して,95%信頼下限

界は1構造体未満に相当する。したがって,計数された構造体数4未満に対する信頼下限値を見積もるこ

とは意味がなく,ポアソン分布の一方の95%信頼上限界に対応して結果は“未満”として特記する。これ

らは,次のようになる。 

0構造体:その分析感度の2.99倍 

1構造体:その分析感度の4.74倍 

2構造体:その分析感度の6.30倍 

3構造体:その分析感度の7.75倍 

4を超える合計計数に対しては,95%信頼区間は表F.1に示す値を用いて計算される。表F.1は,構造体

計数470までの両側ポアソン分布の95%信頼区間の上限及び下限を与える。 

F.4.4 ガウス分布95%信頼区間の計算例 サンプル予測分散S 2は,次の式によって計算される。 

(

)

(

)

=

=

=

k

i

i

i

i

k

np

n

S

1

2

2

1

ここに, ni: i番目のグリッド目開き上の構造体数 
 

n: k個のグリッド目開き中に検出された構造体合計数 

pi: i番目のグリッド目開きによって代表される分析合計面積の割合 

k: グリッド目開きの数 

もし,計数された構造体の平均値がnと計算されたなら,ガウスの95%信頼区間の上限及び下限の値は,

次の式で求める。 

ここに, 

49 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

k

ts

k

n

L

k

ts

k

n

L

i

u

=

+

=

ここに, Lu: 95%信頼上限界 
 

Li: 95%信頼下限界 

n: 分析した全グリッド目開き中の合計構造体数 

t: 自由度 (k−1) に対するスチューデントテストのtの値(確率0.975) 

s: 標準偏差(サンプル予測分散の平方根) 

k: グリッド目開きの数 

F.4.5 結果計算方法のまとめ 要約すると,構造体計数データは,次のように計算する。 

構造体が不検出 構造体濃度は,ポアソン分布の片側95%信頼上限界に相当する濃度未満であると報告す

る。これは,分析感度の2.99倍に等しい。 

1〜3の構造体 1〜3の構造体が計数されたときは,結果をポアソン分布の片側95%信頼上限界に相当未

満として報告する。これらは次のとおりとする。 

1構造体 :分析感度の4.74倍 

2構造体 :分析感度の6.30倍 

3構造体 :分析感度の7.75倍 

4〜30構造体 平均構造体濃度及び95%信頼区間はポアソン分布の仮定に基づいて,表F.1に示す値によ

って報告する。 

30を超える構造体 30を超えて構造体が計数されたときは,ガウス分布95%信頼区間及びポアソンの95%

信頼区間の両方を計算する。これらの二つの区間のうち大きい方を構造体濃度の精度説明に用いる。ガウ

スの95%信頼区間が報告データに選ばれたときにも,ポアソンの95%信頼区間は特記しておく。 

F.5 構造体の長さ,幅及びアスペクト比の分布の計算 分布はすべて対数正規として近似されるので,分

布計算のためのサイズ範囲間隔は対数的にとるべきである。サイズ間隔の選択に必要な他の特性は,それ

らがサイズクラスの数を十分に与える。一方,個々のクラス中に統計的に有効な構造体数を保持している。

個々のサイズクラスが10間隔の繰り返しで,5μmがサイズクラス境界であるなら,判断は容易である。1

クラスからの次への割合が1.468ならこれらの条件のすべてを満足するので,この値を用いるべきである。

対数正規分布に近似できる分布を対数確率紙表したとき,対数目盛を縦軸にガウス分布を横軸に用いてプ

ロットする。 

F.5.1 構造体長さの累積度数分布の計算 この分布は,測定するある与えられた長さより短いか長いかど

ちらかの構造体の合計数に対する割合を与える。これは,次の関係式を用いて計算される。 

()

100

1

1

×

=∑∑

=

=

=

=

p

i

i

i

k

i

i

i

k

n

n

P

C

ここに, C(P)k: k番目のクラスの上限界より短い長さの構造体の累積度数百分率 (%) 
 

ni: i番目の長さクラス中の構造体数 

P: 長さクラスの合計数 

50 

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F.5.2 構造体の幅累積度数分布の計算 この分布は,測定するある与えられた幅より狭いか広いかどちら

かの構造体の合計数に対する割合を与える。F.5.1で用いられているものと同じ方法で,構造体長さを用い

て計算する。 

F.5.3 構造体アスペクト比の累積度数分布の計算 この分布は,測定するアスペクト比より小さいか大き

いかどちらかのアスペクト比をもつ構造体の合計数の割合をもたらす。F.5.1で用いられているものと同じ

方法で,構造体アスペクト比を用いて計算する。 

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表F.1 95%信頼区間の上限及び下限 

計数構造体 

下側限界 

上側限界 

計数構造体 

下側限界 

上側限界 

計数構造体 

下側限界 

上側限界 

3.689(1) 

46 

33.678 

61.358 

92 

74.164 

112.83 

0.025 

5.572 

47 

34.534 

62.501 

93 

75.061 

113.94 

0.242 

7.225 

48 

35.392 

63.642 

94 

75.959 

115.04 

0.619 

8.767 

49 

36.251 

64.781 

95 

76.858 

116.14 

1.090 

10.242 

50 

37.112 

65.919 

96 

77.757 

117.24 

1.624 

11.669 

51 

37.973 

67.056 

97 

78.657 

118.34 

2.202 

13.060 

52 

38.837 

68.192 

98 

79.557 

119.44 

2.814 

14.423 

53 

39.701 

69.326 

99 

80.458 

120.53 

3.454 

15.764 

54 

40.567 

70.459 

100 

81.360 

121.66 

4.115 

17.085 

55 

41.433 

71.591 

110 

90.400 

132.61 

10 

4.795 

18.391 

56 

42.301 

72.721 

120 

99.490 

143.52 

11 

5.491 

19.683 

57 

43.171 

73.851 

130 

108.61 

154.39 

12 

6.201 

20.962 

58 

44.041 

74.979 

140 

117.77 

165.23 

13 

6.922 

22.231 

59 

44.912 

76.106 

150 

126.96 

176.04 

14 

7.654 

23.490 

60 

45.785 

77.232 

160 

136.17 

186.83 

15 

8.396 

24.741 

61 

46.658 

78.357 

170 

145.41 

197.59 

16 

9.146 

25.983 

62 

47.533 

79.482 

180 

154.66 

208.33 

17 

9.904 

27.219 

63 

48.409 

80.605 

190 

163.94 

219.05 

18 

10.668 

28.448 

64 

49.286 

81.727 

200 

173.24 

229.75 

19 

11.440 

29.671 

65 

50.164 

82.848 

210 

182.56 

240.43 

20 

12.217 

30.889 

66 

51.042 

83.969 

220 

191.89 

251.10 

21 

13.00 

32.101 

67 

51.922 

85.088 

230 

201.24 

261.75 

22 

13.788 

33.309 

68 

52.803 

86.207 

240 

210.60 

272.39 

23 

14.581 

34.512 

69 

53.685 

87.324 

250 

219.97 

283.01 

24 

15.378 

35.711 

70 

54.567 

88.441 

260 

229.36 

293.62 

25 

16.178 

36.905 

71 

55.451 

89.557 

270 

238.75 

304.23 

26 

16.983 

38.097 

72 

56.335 

90.673 

280 

248.16 

314.82 

27 

17.793 

39.284 

73 

57.220 

91.787 

290 

257.58 

325.39 

28 

18.606 

40.468 

74 

58.106 

92.901 

300 

267.01 

335.96 

29 

19.422 

41.649 

75 

58.993 

94.014 

310 

276.45 

346.52 

30 

20.241 

42.827 

76 

59.880 

95.126 

320 

285.90 

357.08 

31 

21.063 

44.002 

77 

60.768 

96.237 

330 

295.36 

367.62 

32 

21.888 

45.175 

78 

61.657 

97.348 

340 

304.82 

378.15 

33 

22.715 

46.345 

79 

62.547 

98.458 

350 

314.29 

388.68 

34 

23.545 

47.512 

80 

63.437 

99.567 

360 

323.77 

399.20 

35 

24.378 

48.677 

81 

64.328 

100.68 

370 

333.26 

409.71 

36 

25.213 

49.840 

82 

65.219 

101.79 

380 

342.75 

420.22 

37 

26.050 

51.000 

83 

66.111 

102.90 

390 

352.25 

430.72 

38 

26.890 

52.158 

84 

67.003 

104.00 

400 

361.76 

441.21 

39 

27.732 

53.315 

85 

67.897 

105.11 

410 

371.27 

451.69 

40 

28.575 

54.469 

86 

68.790 

106.21 

420 

380.79 

462.18 

41 

29.421 

55.622 

87 

69.684 

107.32 

430 

390.32 

472.65 

42 

30.269 

56.772 

88 

70.579 

108.42 

440 

399.85 

483.12 

43 

31.119 

57.921 

89 

71.474 

109.53 

450 

409.38 

493.58 

44 

31.970 

59.068 

90 

72.370 

110.63 

460 

418.92 

504.04 

45 

32.823 

60.214 

91 

73.267 

111.73 

470 

428.47 

514.50 

注(1) 0構造体に対する片側上側95%信頼限界は2.99 

52 

K 3850-2 : 2000 (ISO 10312 : 1995) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書G(参考) 空気サンプル採取の計画 

G.1 はじめに サンプル採取計画の重要な部分は,その目的を述べることであり,そのため十分な試料の

数を捕集する。測定場所は,必要な正確さと精度で十分規定し,TEM分析に適した量の粉じん量が捕集さ

れた試料フィルタをすべての捕集場所で得るようにする。 

G.2 屋外環境での空気サンプル捕集 天候状況は,屋外環境での空気サンプルを十分に捕集することを制

限するので,可能なときは,常にサンプル採取は風が弱く低い湿度状態のもとで行う。天候状態,サンプ

ル採取期間中の風速と風向きを詳しく記録する。地方の地勢図に関係するすべての有用な情報,及び発生

源の種類と位置について記録する。 

連続した多数の点でのサンプル採取では,複雑な場所及び発生源に関する十分な特徴を記述しておくこ

とが必要である。多数のサンプルは,場所の風上,風下で採取するとともに経験的に最大浮遊濃度が予想

される風下の位置で最低限2サンプルを採取することを勧奨する。サンプルの位置は注意して記録する。 

G.3 建物内での空気サンプル採取 アスベスト含有建材が建物内大気中のアスベスト濃度に寄与している

かどうかの分析のため,これらの材料が用いられている建物内で空気サンプルがたびたび採取される。空

気サンプル捕集の最適な位置は,空気の流れのパターンを把握するために建物を徹底的に調査した後に決

める。アスベスト建築材料が現に使用されている区域から何度もサンプルを捕集し,浮遊アスベスト繊維

が予想されない付近の区域で対照サンプルを捕集する。空調システムの空気取り入れ口は,対照サンプル

の捕集場所としてしばしば用いる。可能なときは常に,建物の通常使用中に4時間を超える時間にわたっ

て,フィルタ面での流速(面速度)が4〜25cm/sで定点サンプルを採取する。 

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K 3850-2 : 2000 (ISO 10312 : 1995) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書H(参考) 硫酸カルシウム(ギプサム)繊維の除去方法 

建築物及び都市環境内で捕集した浮遊粒子の中に,硫酸カルシウム(ギプサム)繊維を見つけることは

よくある。特に建築物の解体又は建設作業中に採取したサンプル中に見つけられる。この繊維は,しっく

い及びセメント製品をかき混ぜるときに容易に発散する。ある環境では,空気フィルタ上に捕集されたカ

ルサイト又はドロマイトの粒子が,大気中の硫黄酸化物と反応して硫酸カルシウムの長い繊維を形づくる。

硫酸カルシウム繊維は,位相差顕微鏡及び電子顕微鏡の両方法で繊維数を高く計数させる。硫酸カルシウ

ム繊維は,しばしば2〜6μmの長さがあり,10/1を超えるアスペクト比をもっている。ときには,これら

の繊維は角せん石アスベストと似た外観をもっており,また,あるサンプル中では,それらは形態的にク

リソタイルと非常に似ている。TEMにおいてこれらの長い繊維は,高いコントラストをもち,高い倍率で

の電子線照射のもとで変化した特徴的なまだら状の外観を呈する。ある硫酸カルシウム繊維は,EDXA分

析なしにアスベストと区別することは容易でない。このような硫酸カルシウム繊維を含むTEM試料は,

それを排除する前に,TEMでの分析時間を延長しEDXAによって各々の繊維を分析することが必要であ

る。 

硫酸カルシウム繊維を水抽出によって選択的に除去することは可能である。溶媒溶解器(本体7.3.7)又

は凝縮溶解器(本体7.3.8)を用意するが,溶媒としては水(本体6.1)を用いる。あらかじめTEMで最初

の分析をしたTEM試料を,繊維の分解のため溶解器内に置く。もし,溶媒溶解器を用いるなら,溶解器

を数分間90〜100℃に加熱することによって,処理時間を短縮できる。もし,凝縮溶解器を用いるなら,

硫酸カルシウム繊維は約10分間の処理で分解する。この処理の効果は,硫酸カルシウム繊維を除去して,

アスベスト繊維を容易に識別できるカーボンレプリカ(本体7.3.11)を残すことである。 

備考 未処理のTEM試料グリッドの分析で,硫酸カルシウム繊維がアスベスト繊維の存在とは独立

しているように見えるときにだけ,この処理方法を用いる。もし,この処理を硫酸カルシウム

とアスベストのマトリックスに行うと,アスベスト繊維の消失が起きることがある。 

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K 3850-2 : 2000 (ISO 10312 : 1995) 

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附属書J(参考) 文献 

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