K 3850-1:2006
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 測定方法の種類 ················································································································ 2
5 浮遊繊維状粒子の捕集 ······································································································· 3
5.1 試料捕集装置 ················································································································ 3
5.2 試料の捕集 ··················································································································· 5
6 測定方法························································································································· 5
6.1 位相差顕微鏡法 ············································································································· 5
6.2 位相差・分散顕微鏡法 ···································································································· 9
6.3 走査電子顕微鏡法 ········································································································· 11
7 測定値の記録 ·················································································································· 14
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,財団法人建材試験
センター(JTCCM)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべき
との申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS K 3850-1:2000は改正され,この規格に置き換えられたこの規格は,著作権法で保護
対象となっている著作物である。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任をもたない。
JIS K 3850の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS K 3850-1 第1部:光学顕微鏡法及び走査電子顕微鏡法
JIS K 3850-2 第2部:直接変換−透過電子顕微鏡法
JIS K 3850-3 第3部:間接変換−透過電子顕微鏡法
JIS K 3850-4 第4部:固定発生源−プラントからのアスベスト飛散−繊維計数測定法
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日本工業規格 JIS
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空気中の繊維状粒子測定方法−
第1部:光学顕微鏡法及び
走査電子顕微鏡法
Determination of airborne fibrous particles−
Part 1 : Optical microscopy method and
scanning electron microscopy method
1
適用範囲
この規格は,空気中に浮遊している繊維状粒子を測定する方法について規定する。空気中に浮遊してい
る繊維状粒子は種類が多く,種類に応じて位相差顕微鏡,位相差・分散顕微鏡,走査電子顕微鏡又は透過電
子顕微鏡を用いるが,この規格では,これらのうち,位相差顕微鏡,位相差・分散顕微鏡及び走査電子顕
微鏡を用いて測定する方法について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。
これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS A 1481 建材製品中のアスベスト含有率測定方法
JIS B 7551 フロート形面積流量計
JIS K 3802 膜用語
JIS K 8034 アセトン(試薬)
JIS R 3702 顕微鏡用カバーガラス
JIS R 3703 顕微鏡用スライドガラス
JIS Z 8122 コンタミネーションコントロール用語
JIS Z 8401 数値の丸め方
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 3802及びJIS Z 8122によるほか,次による。
3.1
繊維状粒子
繊維状粒子のうち,空気中に浮遊しているアスペクト比(長さ/幅)3以上の粒子(JIS A 1481参照)。
3.2
アスベスト
岩石を形成する鉱物で,蛇紋石の群に属する繊維状のけい酸塩鉱物(クリソタイル)及び角せん(閃)
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石の群に属する繊維状のけい酸塩鉱物(アモサイト,クロシドライト,トレモライト,アクチノライト及
びアンソフィライト)(JIS A 1481参照)。
3.3
繊維数濃度
一定体積(cm3又はL)の空気に含まれている繊維状粒子の数。単位は,本/cm3(f/cm3又はf/ml)又は
本/L(f/L)で表す。
なお,位相差顕微鏡を用いて計数した繊維状粒子は,アスベスト以外の有機質繊維,無機質繊維などを
含んでいるため,この場合は総繊維数濃度と呼ぶ。低温灰化装置を用いてフィルター及び有機質繊維を消
失させた場合は,無機質繊維だけが残るため,この場合は無機質繊維数濃度と呼ぶ。
3.4
ポリカーボネートフィルター
ポリカーボネート製薄膜に,直径0.02〜2.0 μmの均一な微細孔をもつ粒子捕集用のフィルター。
3.5
バックアップフィルター
ろ過捕集フィルターを用いて浮遊粒子を捕集するときに,捕集フィルターの補強,汚染防止などのため
に後側に置くフィルター。
注記
ガラス繊維フィルター,アセチルアセテートメンブレンフィルターなどが用いられる。
3.6
ガラス繊維フィルター
直径約0.2〜10 μmのガラス繊維を積層させた織布。
注記
粒子捕集フィルターとして,様々な捕集効率のものがある。
3.7
アイピースグレーティクル
位相差顕微鏡又は位相差・分散顕微鏡の接眼レンズ付近に設置する円形の透明ガラス板で,顕微鏡観察
及び計数がしやすくなるように,必要な情報(視野限定のための範囲,基準目盛など)を視野内に写し出
すもの。
注記
目的に応じて,いろいろな種類が作られている。
4
測定方法の種類
測定方法の種類は,次のとおりであるが,アスベスト繊維数濃度を求めたい場合は,6.2の位相差・分散
顕微鏡又は6.3の走査電子顕微鏡を用いた方法による。
a) 位相差顕微鏡法 位相差顕微鏡法の測定の対象及び測定方法の概要は,次による。
1) 測定の対象 この測定方法は,位相差顕微鏡を用いて繊維状粒子を測定する一般的な方法であり,
得られた結果は総繊維数濃度が表される。
2) 測定方法の概要 この測定方法は,空気中に浮遊している繊維状粒子を5.1 a)に規定するフィルタ
ーに捕集し,アセトン蒸気の浸透によってフィルターを透明にした後,位相差顕微鏡によって,フ
ィルター上の繊維状粒子の数を計数し,繊維数濃度を測定する方法である。
b) 位相差・分散顕微鏡法 位相差・分散顕微鏡法の測定の対象及び測定方法の概要は,次による。
1) 測定の対象 この測定方法は,位相差・分散顕微鏡を用い,アスベストの屈折率を利用して,その
繊維数濃度を求める方法である。対象となる繊維状粒子の屈折率が判明している場合は,その屈折
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率を利用して,繊維数濃度を求めることができる。
2) 測定方法の概要 この測定方法は,空気中に浮遊している繊維状粒子を5.1 a)に規定するフィルタ
ーに捕集し,フィルターを固定した後に,低温灰化装置を用いてフィルターを灰化し,それにアス
ベストの屈折率に対応した浸液を滴下し,位相差・分散顕微鏡によって,スライドガラス上のアス
ベストの数を計数し,アスベストの繊維数濃度を測定する方法である。また,目的とする繊維状粒
子の屈折率に対応した浸液を使用することによって,目的とする繊維数濃度を求めることができる。
なお,この測定方法は,繊維状粒子の屈折率を利用しないで,6.1.3 a)に規定する繊維状粒子を計
数した場合には,総繊維数濃度として求めることができる。
c) 走査電子顕微鏡法 走査電子顕微鏡法の測定の対象及び測定方法の概要は,次による。
1) 測定の対象 この測定方法は,走査電子顕微鏡を用いてアスベストなどの繊維数濃度を測定する方
法である。特に,アスベストなど繊維の種類を同定しながら計数するとき,又は位相差顕微鏡で測
定する繊維より小さい繊維を含む場合に有効である。
2) 測定方法の概要 この測定方法は,空気中に浮遊している繊維状粒子を5.1 a)に規定するフィルタ
ーに捕集し,走査電子顕微鏡で観察試料に変換して,走査電子顕微鏡で観察試料上のアスベストそ
の他の繊維の種類,数,寸法などを測定する方法である。
5
浮遊繊維状粒子の捕集
5.1
試料捕集装置
試料捕集装置の構成を図1に,個人捕集装置の構成例を図2に示す。捕集装置の構成要素は,次による。
支持具
吸引口
フィルターホルダ
連結管
圧力計
流量計
流量調節弁
連結管
バイパス
吸引ポンプ
フィルター
図1−試料捕集装置の構成
a) フィルター フィルターは,捕集効率が直径0.3 μmの粒子に対して,99 %以上の,セルロースエステ
ル製のフィルター(メンブレンフィルター)とする。
なお,6.3.2 a)に規定する走査電子顕微鏡法のポリカーボネートフィルター法の場合は,孔径0.8 μm
のポリカーボネートに金又はカーボンを蒸着したものとする。
注記 アスベストの繊維数濃度の測定に使用するメンブレンフィルターは,通常孔径が0.8 μmのもの
である。
4
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吸引口
フィルターホルダ
(カウル付 ,長さ50mm)
固定用クリップ
連結用チューブ
吸引ポンプ
図2−個人捕集装置の構成例
b) フィルターホルダ フィルターホルダは,フィルターの大きさに応じたものを用い,フィルターの脱
着が容易にでき,完全に密閉できるオープンフェース形の構造のものとし,次による。
なお,カウル付きオープンフェース形及びオープンフェース形フィルターホルダの例を図3に,使
捨てオープンフェース形フィルターホルダの例を図4に示す。
1) 図4に示すオープンフェース形のフィルターホルダの2形は,フィルターホルダがあることによっ
て,フィルターが突発的に汚染されることはなくなる。吸引ノズルは静電気の影響で繊維が付着し
ないようなプラスチック製のものがよい。
2) 図4に示すオープンフェース形のフィルターホルダの2形を用いる場合は,バックアップとして組
み込まれているろ紙の変形,破損などに留意する。
3) ポリカーボネートフィルターを用いる場合は,補強及び汚染防止のために,バックアップフィルタ
ーとして,ガラス繊維フィルター又はメンブレンフィルターを用いる。
c) 流量計 流量計は,JIS B 7551に規定するフロート形面積流量計又は基準流量計によって校正された
流量計を用いる。
d) 吸引ポンプ 吸引ポンプは,目的とする吸引量及び吸引圧力をもち,脈動を生じることなく,長時間
の連続運転に耐えるものとする。
e) 連結管 フィルターホルダ,流量計及び吸引ポンプを連結する管は,吸引圧力に耐えるものを使用し,
連結管の接続部に漏れがないか事前に確認する。
フィルターホルダ
フィルター
フィルターホルダ
(カウル付 ,長さ50mm)
バックアップフィルター
金網
パッキン
フィルター
金網
フィルターホルダ
a) カウル付オープンフェース形 b) オープンフェース形フィルターホルダ
1形
図3−カウル付きオープンフェース形及びオープンフェース形フィルターホルダ例
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栓
キャップ
(使用時にとる)
フィルターホルダ(カウル付,長さ50mm)
フィルターホルダ
フィルター
栓(使用時にとる)
2形
図4−使捨てオープンフェース形フィルターホルダ例
5.2
試料の捕集
試料の捕集は,次の方法による。
a) 測定場所・測定点・測定点数 試料を捕集する測定場所,測定点及び測定点数は,作業環境,大気環
境又は室内環境などの測定の目的に応じて設定する。
注記1 アスベスト取扱い作業場内でアスベストの作業環境測定をする場合は,昭和51年労働省告示
第46号“作業環境測定基準”があり,測定場所,測定点,測定点数などを設定する方法が規
定されている。
注記2 アスベスト及びアスベスト製品を製造・加工する事業所であって,大気汚染防止法に規定す
る特定粉じん発生施設をもつ事業所の敷地境界におけるアスベストを測定する場合は,平成
元年環大企第490号“大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について”について規定
されている。
注記3 環境大気中のアスベストを測定する場合は,“アスベストモニタリングマニュアル(改訂版)”
(平成5年環境庁大気保全局大気規制課)に規定されている。
b) 試料の捕集 試料の捕集は,作業環境,大気環境又は室内環境などの測定の目的に応じて,吸引流量
及び吸引時間を設定し,図3又は図4のフィルターホルダを測定点に置き,吸引ポンプを作動して行
う。
注記
採じん量が多いと,測定に影響を与えるので,吸引空気量(吸引流量×吸引時間)は,デジ
タル粉じん計を利用して,浮遊中の粉じん量を推定して設定する。
c) 試料捕集後の処置 規定の吸引空気量を吸引後,他の繊維状粒子によって汚染されないように試料を
密閉して保存する。
6
測定方法
6.1
位相差顕微鏡法
6.1.1
位相差顕微鏡
使用する位相差顕微鏡は,接眼レンズの倍率10倍以上,対物レンズの開口数0.65以上及び倍率40倍で,
アイピースグレーティクルを装着したものとする。
なお,図5に,位相差顕微鏡で用いるアイピースグレーティクル及びその大円(通常,直径300 μm)を
示す。
対物レンズは,ダークコントラスト(ポジティブコントラスト)又はブライトコントラスト(ネガティ
ブコントラスト)のいずれを用いてもよい。
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単位 μm
300
100
5
10
3
3
5
7
9
5×5/3
10×3
20×3
3
5
10
2
0
5
5
5×5/3
10×3
20×3
図5−アイピースグレーティクル例
6.1.2
標本の作製
標本の作製は,繊維状粒子に汚染されていない清浄な場所で行い,次の方法(アセトン−トリアセチン)
による。
a) フィルターホルダから試料を捕集したフィルターを取り出し,採じん面を下にして,スライドガラス
上に置く。ただし,湿度の高い状態で捕集したフィルターについては,あらかじめデシケーター中で
十分に乾燥した後に行う。
b) アセトン蒸気発生装置(図6に例を示す。)を準備し,a)のスライドガラスをステージの規定の位置に
置く。スライドガラスは,JIS R 3703に規定するものを,カバーガラスは,JIS R 3702に規定する厚
さNo.1を,アセトンは,JIS K 8034に規定するものを用いる。スライドガラスは,片側すりガラスの
ものが望ましい。
ON
OFF
注入口
パイロットランプ
電源スイッチ
アセトン蒸気
拡散防止用カバー
スライドガラス
吸着剤ケース
図6−アセトン蒸気発生装置例
c) マイクロピペッターにアセトンをとり,注入口から,一定の割合でフィルターから粒子が飛散しない
ように注意しながら5〜6秒間でアセトンを注入する。
注記 直径25 mmのフィルターの場合,アセトンの注入量は,250〜300 μl程度である。
d) アセトン蒸気の浸透によってフィルターが透明になったら,ステージからスライドガラスを取り出し,
速やかにマイクロシリンジ又は皮下用注射器を用いて,トリアセチルグリセリン2〜3滴をフィルター
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中心部に滴下し,その上にカバーガラスを載せる。
なお,トリアセチルグリセリンは,精密分析用など純度の高いものを用いる。また,標本の透明度
が悪い場合は,ホットプレートなどを用いて,約50 ℃で5〜10分間加熱する。
6.1.3
計数
接眼レンズ部分にアイピースグレーティクルを装着し,調整した位相差顕微鏡(倍率400倍以上)を用
いて,標本中の繊維状粒子の数を計数する。操作は次による。
a) 計数する繊維状粒子 計数する繊維状粒子は,長さ5 μm以上,幅(直径)3 μm未満で,アスペクト
比3以上とする。アスベスト及びアスベスト製品を製造・加工している事業所の場合には,これに合
致する繊維状粒子をアスベスト繊維とみなして計数する。
注記
位相差顕微鏡の分解能は,対物レンズの開口数が0.65〜0.70の場合,0.4 μm程度である。
b) 計数する繊維状粒子の幅の限界の確認 計数する繊維状粒子の幅(直径)の限界の確認は,図7の
“HSE/NPL”の検出限界試験用スライドを用いて行う。繊維状粒子の計数は,図7の“HSE/NPL”の
検出限界試験用スライドのグループ5以上が観察できる者に行わせるとよい。
単位 μm
G番号
1
2
3
4
5
6
7
1グループ当たり20本
試験用スライド(75×25)
エポキシ樹脂レプリカ
カバースリップ
グループ番号
線の細さ
1
1.08
2
0.77
3
0.64
4
0.53
5
0.44
6
0.36
7
0.25
図7−HSE/NPL検出限界試験用スライド
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c) 計数方法 繊維状粒子の計数方法は,次による。
1) 顕微鏡視野内のアイピースグレーティクル領域内に存在する繊維状粒子を,計数する。
2) 顕微鏡ステージを縦横ランダムに移動させて,繊維状粒子の積算数が100本以上になるまで計数す
る。アスベストの場合は,繊維状粒子の積算数が200本以上になるまで計数する。
3) 繊維状粒子の積算数がそれぞれの規定数に満たない場合は,最低50視野を計数する。
d) 繊維状粒子の数の判定 繊維状粒子の数の判定方法は,次による(図8参照)。
1) 単繊維の場合は,a)で定義する繊維状粒子を1本と数える。
2) 単繊維が曲がっている場合には,繊維の直線部分を目安にして曲がっている部分に沿って真の長さ
を推定して判定する。
3) 枝分かれした繊維の場合には,一つの繊維から枝分かれした部分を含む全体を1本と数える。
4) 数本の繊維が交差している場合には,交差しているそれぞれの繊維状粒子を1本と数える。
5) 繊維がからまって正確に数を読みとることができない場合には,数えない。
6) 粒子が付着している繊維状粒子の場合には,粒子の幅が3 μmを超えるものは数えない。
e) 計数視野領域内境界に交差している繊維状粒子の取扱い 計数視野領域の境界内に繊維状粒子の両
端が入っている場合は,1本と数え,境界内に片方の端しか入っていない場合は,1/2本と数える。(図
8参照)
5 μm
3 μm
3
5
3
5
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
⑯
⑰
⑱
⑲
⑳
21
22
23
単位 本
①:0
②:1
③:0
④:1
⑤:0
⑥:1
⑦:1/2
⑧:4
⑨:0
⑩:1
⑪:1
⑫:1
⑬:0
⑭:3
⑮:1/2
⑯:0
⑰:0
⑱:2
⑲:0
⑳:1
○
21:0
○
22:0
○
23:1
図8−繊維状粒子の数の判定
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6.1.4
繊維数濃度の算出
繊維数濃度は,式(1)によって算出し,JIS Z 8401によって有効数字2けたに丸める。
Q
n
a
N
N
A
C
b
F
×
×
−
×
=
)
(
····································································· (1)
ここに, CF: 繊維数濃度(f/L又はf/cm3)
A: フィルターの有効面積(mm2)
N: 計数繊維総数(f)
Nb: ブランクの値(f)
a: 顕微鏡視野の面積(mm2)
n: 計数視野数
Q: 吸引空気量(L又はcm3)
6.1.5
定量下限の算出
定量下限は,式(2)によって算出する。
Q
n
a
A
S
×
×
×
=
645
.2
··········································································· (2)
ここに, S: 定量下限(f/L又はf/cm3)
A: フィルターの有効面積(mm2)
a: 顕微鏡視野の面積(mm2)
n: 計数視野数
Q: 吸引空気量(L又はcm3)
6.2
位相差・分散顕微鏡法
6.2.1
位相差・分散顕微鏡
使用する位相差・分散顕微鏡は,接眼レンズの倍率10倍以上,対物レンズの開口数0.70以上及び倍率40
倍で,アイピースグレーティクルを装着し,JIS A 1481の附属書1に規定しているものとする。
6.2.2
試料採取のフィルターの処理
試料採取のフィルターは,測定対象のアスベスト種類の数に応じて,外科用ブレードなどを用いてフィ
ルターを分割する。
注記 フィルターの切断器具には,四等分カッターがある。
6.2.3
標本の作製
標本の作製は,繊維状粒子に汚染されていない清浄な場所で行い,操作は,次による。
a) 6.2.2で処理したフィルターの採じん面を下にして,スライドガラス上に置く。ただし,湿度の高い状
態で捕集したフィルターについては,あらかじめデシケーター中で十分に乾燥した後に行う。
b) アセトン蒸気発生装置を準備し,a)のスライドガラスをステージの規定の位置に置く。
c) マイクロピペッターにアセトンをとり,注入口から一定の割合でフィルターから粒子が飛散しないよ
うに注意しながら5〜6秒間でアセトンを注入する。
d) アセトン蒸気の浸透によってフィルターを固定した後,ステージからスライドガラスを取り出す。
e) 取り出したスライドガラスを,低温灰化装置で灰化する。低温灰化装置は,比較的低温において酸素
プラズマ雰囲気中での可燃性の有機物,メンブレンフィルターなどを灰化する装置で,構成を図9に
示す。
f)
灰化した試料に,表1に示す測定対象のアスベストの屈折率に対応した浸液3〜4滴を滴下し,清しょ
く(拭)したカバーガラスを載せる。浸液の温度は,25 ℃に保ったものを使用する。
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6.2.4
計数
接眼レンズ部分にアイピースグレーティクルを装着し,調整した位相差・分散顕微鏡(倍率400倍以上)
を用いて,標本中の繊維状粒子の数を計数する。操作は,次による。
電源
高周波発振部
試料管
石英製試料皿
リーク弁
メイン弁
調節弁
高周波供給部
流量計
酸素調節弁
酸素ボンベ
真空ポンプ
真空計
図9−低温灰化装置の構成
表1−浸液の屈折率
アスベストの種類
浸液の屈折率 nD25℃
クリソタイル
1.550
アモサイト
1.680
1.700
クロシドライト
1.680
1.690
1.700
アンソフィライト
1.605
アクチノライト
1.640
トレモライト
1.605
1.640
a) 計数するアスベスト粒子 計数するアスベスト粒子は,長さ5 μm以上,幅(直径)3 μm未満及びア
スペクト比3以上で,表2の分散色を示すものをアスベストの種類ごとに計数する。
注記 アスベスト粒子以外の特定の繊維状粒子を計数する場合は,特定の繊維状粒子の屈折率と同等
な屈折率の浸液を滴下して,特定の繊維状粒子が示す分散色の繊維を計数するとよい。
表2−アスベストの分散色
アスベストの種類
屈折率 nD25℃
分散色
クリソタイル
1.550
赤紫〜青
アモサイト
1.680
桃
1.700
青
クロシドライト
1.680
橙色
1690
桃
1.700
青
アンソフィライト
1.605
橙色
アクチノライト
1.640
青
トレモライト
1.605
橙色
1.640
青
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
b) 計数するアスベスト粒子の幅の限界の確認 計数するアスベスト粒子の幅の限界の確認は,6.1.3 b)に
よる。
c) 計数方法 計数方法は,6.1.3 c)による。
d) アスベスト粒子の数の判定計数方法 アスベスト粒子の数の判定計数方法は,6.1.3 d)による。
e) 計数視野領域内境界に交差しているアスベスト粒子の取扱い 計数視野領域内境界に交差している
アスベスト粒子の取扱いは,6.1.3 e)による。
6.2.5
アスベスト繊維数濃度の算出
アスベスト繊維数濃度の算出は,6.1.4による。
6.2.6
定量下限の算出
定量下限の算出は,6.1.5による。
6.3
走査電子顕微鏡法
6.3.1
走査電子顕微鏡
使用する走査電子顕微鏡(SEM)は,エネルギー分散形X線分析器(EDS)をもち,加速電圧15〜25 kV,
倍率100〜10 000倍及び分解能60 nmを満たすものとする。また,EDSは,けい素(リチウム)半導体検
出器を用いるもので,6.3.3に規定する同定方法の要求を満たすものとする。
用いるSEMの倍率の正確さは,繊維数濃度及び繊維寸法の測定結果に直接影響するので,必要に応じ
て標準ポリエチレンラテックス球状粒子,標準グレーテンググリッドレプリカ(一定間隔の升目のレプリ
カカーボン膜からなる標準寸法を示す電子顕微鏡用標準試料)などの倍率の校正用標準試料を用いて倍率
校正を行う。
6.3.2
標本の作製
標本の作製は,ポリカーボネートフィルター法(SEM-1法)又は低温灰化法(SEM-2法)のいずれかに
よる。
SEM-1法は,試料捕集及び輸送時のフィルターの取扱いに多少難があるが,試料作製が簡単で電子顕微
鏡像も見やすい。一方,SEM-2法は,メンブレンフィルターを灰化した後の残渣が観察時に妨げになるこ
とがあるが,試料捕集が容易,フィルターが取扱いやすい,位相差顕微鏡と同一フィルターの観察もでき
るなどの利点がある。
a) SEM-1法 SEM-1法は,次による。
1) SEM試料台に5〜10 mm角の導電性カーボン両面テープを接着し,その上に5.2の方法によって試
料採集を行ったポリカーボネートフィルターを,同じく5〜10 mm角に切り取って粉じん面を上側
にして接着する。
なお,SEM試料台は,黄銅又はアルミニウム製の直径1〜3 cm,高さ1 cm程度の円柱状金属とし,
試料の接着剤は,導電性をもつカーボン製の両面接着テープを用いる。
2) フィルターの端の部分にカーボンペーストを塗って導電処理をした後,乾燥させ,カーボン蒸着又
は金蒸着を施し,観察標本とする。
なお,カーボン蒸着又は金蒸着は,カーボン蒸着装置又はイオンスパッタリング装置を用いる。
カーボン蒸着装置及びイオンスパッタリング装置の例を,図10に示す。
b) SEM-2法 SEM-2法は,次による。
1) 5.2の方法によって試料捕集を行ったメンブレンフィルターを10〜15 mm角に切り,金蒸着を施し
た同一寸法のスライドガラス片又はニッケル板に,粉じん面をスライドガラス又はニッケル板側に
して載せ,これを6.1.2で規定するアセトン蒸気発生装置によってアセトン蒸気を発生させて,接着
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する。スライドガラス及びアセトンは,6.1.2 b)に規定するものを用いる。
真空吸引口
試料
スプリング
カーボン棒
アルゴン
排気
試料
S
N
S
同軸円筒形磁石
陽極
ターゲット
(陰極)
プラズマ領域
a) カーボン装着装置 b) イオンスパッタリング装置
図10−カーボン蒸着装置及びイオンスパッタリング装置例
2) 低温灰化装置によってフィルター,その他有機物などを灰化する。
3) 6.3.2 a)に規定するSEM試料台に導電性カーボン両面テープを5〜10 mm角に切って接着し,その上
に試料粉じんを載せたスライドガラス又はニッケル板を接着し,固定する。
4) カーボンペーストを塗って導電性処理を行い,乾燥させ,カーボン蒸着又は金蒸着を施して,観察
標本とする。
6.3.3
計数
ディスプレイ画面上に見られる像から繊維形態を識別する。必要に応じて装置に附属するEDS検出器を
用いて調べて,それらの種類を同定しながら計数する。
a) 計数繊維の決定 計数繊維の決定に当たっては,まず計数繊維の最小の大きさ(下限寸法)を決め,
次に各々の繊維の種類の同定を行う。例えば,“長さ1 μm以上,幅0.01 μm以上かつ3 μm未満の繊
維”のように示す。
b) アスベストの同定 アスベストの同定は,a)で決定した計数する寸法の繊維について,EDSスペクト
ルによって,アスベストかその他の繊維かを判定し,アスベストの場合には,その種類を同定する。
SEMで電子線を細く絞って繊維に照射し発生する特性X線を,EDS検出器で受けてEDSスペクト
ルを得る。アスベストの種類ごとに特徴的なスペクトルを示すので,ほとんどの場合,アスベストの
種類の同定は,そのEDSスペクトルから決定できる。アスベストのEDSスペクトルの例を図11に示
す。
c) 観察条件 6.1.3 a)で規定する位相差顕微鏡又は6.2.4 a)で規定する位相差・分散顕微鏡で観察できる同
等の大きさの繊維を計数する場合は,加速電圧15〜25 kV,倍率2 000〜3 000倍で行う。ただし,同
定のためのEDS分析時などは,必要に応じて倍率を10 000〜20 000倍に適宜上げて観察を行う。
d) 計数視野数及び計数繊維数 6.1.3 a)で規定する位相差顕微鏡又は6.2.4 a)で規定する位相差・分散顕微
鏡で観察できる同等の大きさの繊維を計数する場合は,画面を1視野として,その1視野が観察試料
面上で何mmに相当するか,倍率校正標準試料などを用いて実測しておく。計数視野数は,式(3)によ
って決定する。
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1
2
3
4
5
6
7keV
0
0
Mg
Si
Fe
1
2
3
4
5
6
7keV
1
2
3
4
5
6
7keV
0
Mg
Si
Mn
FeKα
FeKβ
Na
Mg
Si
FeKα
FeKβ
a) クリソタイル b) アモサイト c) クロシドライト
0
1
2
3
4
5
6
7keV
Mg
Si
CaKα
CaKβ
Fe
1
2
3
4
5
6
7keV
0
Mg
Si
CaKα
CaKβ
Fe
1
2
3
4
5
6
7keV
0
Mg
Si
Fe
d) トレモライト e) アクチノライト f) アンソフィライト
図11−アスベストのEDSスペクトル例
S
Q
a
A
n
E
E
×
×
=
········································································· (3)
ここに, nE: 必要な計数画面数
A: フィルターの有効面積又はろ過面積(mm2)
aE: 1画面の観察試料上での面積(mm2)
Q: 吸引空気量(L)
S: 必要な定量下限値(f/L又はf/cm3)
注記 ただし,これは,一応の目安であって,必要とする繊維数濃度の定量下限及び標準誤差によっ
て,必要な計数画面数又は計数繊維数を設定するとよい。繊維数濃度の定量下限値及び標準誤
差の見積りは,6.3.5を参照する。
e) 繊維状粒子の数の判定 種々の形態及び集合状態で観察される繊維状粒子の数の判定は,基本的には
位相差顕微鏡法6.1.3 d)に従って行う。また,個々の繊維については,図8を参考にする。
6.3.4
繊維数濃度の算出
繊維数濃度は,式(4)によって算出する。
Q
n
a
N
N
A
C
E
E
b
F
×
×
−
×
=
)
(
····································································· (4)
ここに, CF: 繊維数濃度(f/L又はf/cm3)
N: 計数総繊維数 (f)
Nb: ブランク値(f)
aE: 1画面の観察試料上での面積(mm2)
Q: 吸引空気量(L)
S: 必要な定量下限値(f/L又はf/cm3)
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6.3.5
定量下限値及び標準誤差
a) 定量下限値 定量下限値は,式(5)によって算出する。計数画面数と吸引空気量に反比例して小さくな
る。
Q
n
a
A
S
E
E
×
×
×
=
645
.2
········································································· (5)
ここに,
S: 必要な定量下限値(f/L又はf/cm3)
A: フィルターの有効面積又はろ過面積(mm2)
aE: 1画面の観察試料上での面積(mm2)
nE: 必要な計数画面数
Q: 吸引空気量(L)
b) 標準誤差の算出 得られた繊維数濃度の測定値がどの程度の標準誤差をもっているかは,式(6)によっ
て算出する。
一般に,計数された繊維数が多くなれば測定値の標準誤差は小さくなり,計数繊維数が少なくなれ
ば標準誤差は大きくなる。フィルター上に捕集されているアスベストが比較的少なくてポアソン分布
をしていると仮定すると,繊維数濃度と標準誤差との関係は,式(6)で表す。
Q
n
a
C
A
x
E
E
F
×
×
×
×
=
2
100
··································································· (6)
ここに,
x: s2
s: 標準誤差[100/N(%)]
A: フィルターの有効面積又はろ過面積(mm2)
CF: 繊維数濃度(f/L又はf/cm3)
aE: 1画面の観察試料上での面積(mm2)
nE: 必要な計数画面数
Q: 吸引空気量(L)
7
測定値の記録
次の項目について記録する。
a) 測定の年月日及び時刻
b) 気象条件(温度・風速)
c) 予想される繊維状粒子の種類
d) 測定場所
e) 測定位置(測定点,測定高さ及び測定点数)
f)
測定時刻
g) 吸引時間(min)
h) 吸引空気量Q(cm3又はL)
i)
フィルター有効面積A(mm2)
j)
使用した顕微鏡の種類
k) 顕微鏡倍率
l)
浸液の屈折率(位相差・分散顕微鏡法に限る。)
m) HSE/NPL検出限界用スライドのグループ番号(位相差顕微鏡法又は位相差・分散顕微鏡法に限る。)
n) 加速電圧(kV)(SEMに限る。)
o) 顕微鏡視野の面積a(mm2)(SEMの場合は,1画面の試料上の面積)
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p) 計数視野数n(SEMの場合は,画面数)
q) 計数繊維総数N(f)
r) フィルターのブランク計数繊維総数Nb(f)(位相差顕微鏡法に限る。)
s)
繊維数濃度CF(f/cm3又はf/L)又はアスベスト繊維数濃度(位相差・分散顕微鏡法又はSEMに限る。)
t)
定量下限S(f/cm3又はf/L)
u) 標準誤差χ(SEMに限る。)
v) 測定者名
w) その他必要事項