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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 3838− 1995 

SDS−ポリアクリルアミドゲル 

電気泳動分析通則 

General rules for SDS−polyacrylamid 

gel electrophoresis analysis 

1. 適用範囲 この規格は,たん白質又はポリペプチドに対してドデシル硫酸金属塩[ドデシル硫酸ナト

リウム(以下,SDSという。)など]を作用させ,ポリペプチド−SDS複合体を形成させた後,ポリアク

リルアミドゲルを支持体として電気泳動を行い,たん白質若しくはそのサブユニット又はポリペプチドの

定量分析を行う方法及びそれらの分子量を測定する方法について規定する。 

備考 この規格の引用規格を,付表1に示す。 

2. 共通事項 この規格に共通する事項は,JIS K 0050,JIS K 8001,JIS K 8008及びJIS R 3505による。 

3. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0213,JIS K 3600,JIS K 3610及びJIS Z 8103

によるほか,次のとおりとする。 

(1) 架橋剤 ポリアクリルアミドゲルの三次元の網目構造をつくるために必要なもの。N,Nʼ−メチレンビ

スアクリルアミド,N,Nʼ−プロピレンビスアクリルアミド,ジアクリルアミドメチルエーテルなどの

ビニル化合物がある。 

(2) 重合開始剤 フリーラジカルを放出し,アクリルアミドの重合を開始させるもの。ペルオキソ二硫酸

アンモニウムやリボフラビンなどがある。 

(3) 重合促進剤 重合開始剤からフリーラジカルを放出させやすくするためのもの。N,N,Nʼ,Nʼ−テトラ

メチルエチレンジアミンなどがある。 

(4) 支持板 ゲルのように,それ自体で空間に泳動面を形成できない支持体を支えるためのもの。ガラス

又は合成高分子製の板,筒などがある。 

(5) 相対移動度 試料たん白質の移動距離を標準たん白質の移動距離で除した値。 

(6) 標準たん白質 分子量又は等電点などが既知のたん白質で,分子量,等電点などの指標として試料と

並行して泳動に使用されるたん白質。 

4. 電気泳動装置 

4.1 

構成 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動装置の基本構成は,図1に示すように,①電源部及

び②泳動部からなる(二重実線の連結部分)。泳動部は,電極,電極槽及び泳動槽で構成する。SDS−ポリ

アクリルアミドゲル電気泳動装置には,必要があれば恒温化装置,染色・脱色装置,検出・記録装置,デ

ータ処理装置を接続することができる(実線の連結部分)。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

また,附属装置として,ゲル作製装置,ゲル乾燥装置,ゲル保存装置,転写装置,試料導入装置,試料

前処理装置などがある(点線の連結部分)。 

図1 装置構成の一例 

4.2 

電源部 電源部は,次の条件を満足しなければならない。 

(1) 陽極及び陰極の出力端子を一組とし,少なくとも一つ以上備えること。 

(2) 電極端子間に印加する電圧,電流及び電力のうち,少なくとも一つを調整できること。 

(3) (2)で調整した値の精度が良いこと。 

(4) (2)で調整した値が安定に保たれていること。 

(5) (2)で調整した値によって,ポリアクリルアミドゲルの長さ1cm当たり5〜100Vに電圧を印加できる

こと。 

(6) 電源部を収納する容器の材質が耐薬品性であること。 

(7) 通電中は電極端子が使用者の身体に直接触れることがないようになっていること。 

(8) 使用中は,現在通電中であることの表示が分かりやすい位置にされていること。 

4.3 

泳動部 泳動部は,次のとおりとする。 

(1) 電極端子 電源部出力端子の陽極及び陰極とそれぞれに対応した陽極及び陰極となる電極端子は,そ

れぞれに対応することを明示し,接続が容易な構造となっていること。接続後は,通電部分に使用者

の身体が直接触れないよう設計してあること。電極端子は,耐薬品性のあるものであること。 

(2) 電極 電極は,電極槽中に設置し,白金など電極槽液に対し耐性のある材質を用い,電極端子と確実

に接続したものとする。電極と電極端子の接続部分も電極槽液に対して耐性をもつか,又は電極槽液

と接触しないよう設計してあること。電極及び電極端子の接続部分は,通電中使用者の身体に直接触

れることがないよう設計してあること。 

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(3) 電極槽 電極槽液を収納する容器で,電極槽液を介して電極と支持体とを電気的に接続できる構造の

ものとする。電極槽の材質は,電極槽液によって侵されたり,電極槽液を汚染したりすることのない

ものとする。通電中は,電極槽液に直接触れられないよう設計してあること。 

(4) 泳動槽 泳動液を含浸したポリアクリルアミドゲルを安定に保持でき,泳動液及び電極槽液に耐性の

ある材質で作製されたもので,1個又は数個が同時に使用できるようになっていること(1)。1個の泳動

槽は,形式によって次の(a),(b)のように区別される。 

(a) 平板形泳動槽 一辺10〜300mmのく(矩)形面をもつ平板形で,ポリアクリルアミドゲルの厚さ

を5mm以下にできるもの(2)。 

(b) 円筒形泳動槽 内径0.5〜50mm,長さ10〜300mmの円筒管形のもの。 

注(1) 設置の方式によって,水平形と垂直形に分類される。 

(2) 1枚の支持平板の上にゲルを固定化したものを1個の泳動槽とする場合と,2枚の支持平板と2

枚のスペーサとで作った板状空間内にゲルを作製する場合とがある。前者の場合で泳動液中に

浸せきして電気泳動を行うものを,特に潜水形(サブマリーン形)という。 

(5) 支持体ゲル ポリアクリルアミドゲルのことで,アクリルアミドと架橋剤との混合液を適当な重合促

進剤の存在下で共重合させて作った三次元の網目構造をもつ合成高分子ゲルをいう。 

試料たん白質の量が多いときは,幅が大きく移動距離の長い大きいゲルを使用する。他方,同じ電

位こう(勾)配を用いるときには,移動距離の短いゲルの方が短時間で泳動を終了することができる。 

ゲルの大きさは,平板形の場合には支持平板の大きさで定まる。厚さは,スペーサを用いる場合に

はその厚さで定まる。円筒形ゲルの場合には,その内径と長さによって定まる。 

分離すべきたん白質の分子量に応じて,ゲル濃度を選ぶ。ゲル濃度によってゲルの網目の大きさが

変化する。 

ゲル濃度(T%=X)は,ゲル作製溶液100ml中に含まれるアクリルアミドと架橋剤(例えば,メチレン

ビスアクリルアミド)の合計のグラム数を示したものである。 

架橋度 (C%=Y)は,使用したアクリルアミドと架橋剤の合計量に対する架橋剤のグラム数を百分率 

で示したものである。 

次に,aグラムのアクリルアミドとbグラムの架橋剤を適当な緩衝液に溶かして,総液量Amlのゲ

ル作成溶液を作った場合の計算式を示す。 

100

×

+

=

A

b

a

X

ここに, X: ゲル濃度 T% 
 

a: アクリルアミドの量 (g) 

b: 架橋剤の量 (g) 

A: 総液量 (ml) 

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100

×

+

=

b

a

b

Y

ここに, Y: 架橋度 C% 
 

a: アクリルアミドの量 (g) 

b: 架橋剤の量 (g) 

均一濃度ゲル以外にも,試料液中のたん白質の分子量範囲が非常に大きいときは,濃度こう配ゲル

を用いる。 

また,試料液のたん白質濃度が低い場合には,濃縮ゲルを重層する。緩衝液も等速電気泳動方式を

用いる。 

(6) 泳動液 SDSを含む緩衝液である。緩衝能が高く,たん白質の溶解性を低下させず,ジュール熱の発

生が少ないこと。分離能を向上させるために,たん白質より大きい移動度をもつイオンと,たん白質

より小さい移動度をもつイオンを加える方法が一般的である。目的に応じて他の界面活性剤,キレー

ト剤,還元剤などを添加することができる。 

4.4 

附属装置 電気泳動装置には,主として(1)〜(6)の装置を接続して用いるほか,(7)〜(11)の装置も接

続して用いることができる。 

(1) 恒温化装置 

(2) 試料導入装置 

(3) 検出・記録装置 

(4) 分取装置 

(5) データ処理装置 

(6) 染色・脱色装置 

(7) 試料の前処理装置 

(8) ゲル作製装置(特に,濃度こう配ゲルの場合。) 

(9) 転写装置 

(10) ゲル乾燥装置 

(11) ゲル保存装置 

5. 操作方法 

5.1 

電気泳動装置の設置場所 設置場所は,次の条件を備えていることとする。 

(1) 温度5〜30℃,相対湿度85%以下で急激な変化を生じないこと。 

(2) 振動がなく,直射日光の当たらないこと。 

(3) 腐食性ガスやほこりが少なく,換気がよいこと。 

(4) 大形変圧器,高周波加熱炉などから電磁誘導を受けないこと。 

(5) 供給電源は,電気泳動装置の仕様に指定された電圧,電気容量及び周波数で,電圧変動は10%以下,

周波数の変動がないこと。 

また,接地抵抗100Ω以下の接地点があること。 

5.2 

安全についての注意事項 安全のため,次の事項に十分注意すること。 

(1) 試料及び分析に使用する化学薬品の取扱いは,爆発性,引火性,毒性,有害性などに十分注意して行

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い,それらの廃棄についても無害化などの配慮をすること。 

(2) 電気的災害を防ぐため,絶縁と接地を十分に行うこと。 

(3) 高圧容器詰めのガスを使用するときは,“高圧ガス取締法”の諸規定に従うこと。 

なお,法に規定する高圧容器は,火気のない戸外の日陰に転倒しないように固定して設置すること 

(3)。 

注(3) 高圧ガス取締法に規定する圧力以下の容器を装置の近くで用いるときは,容器が転倒しないよ

う,壁,実験台などに固定すること。 

(4) 電気泳動装置の運転に先立ち,配管の接続部,流液路などからガス漏れ及び液漏れの有無を確認する

こと。 

(5) 装置の点検及び修理は,やむを得ない場合を除いて,電気回路を切って行うこと。 

5.3 

試薬 

5.3.1 

ゲル作製用試薬 

(1) アクリルアミド 純度98.0%以上でアクリル酸含有率0.05%以下の電気泳動用又はこれと同等のもの 

(4)。 

(2) N,Nʼ−メチレンビス(アクリルアミド) 純度98.0%以上でアクリル酸含有率0.1%以下の電気泳動用

又はこれと同等のもの(4)。 

(3) ペルオキソ二硫酸アンモニウム (APS) (過硫酸アンモニウム) 純度99.0%以上の電気泳動用のもの。 

(4) N,N,Nʼ,Nʼ−テトラメチルエチレンジアミン(以下,TEMEDという。) 純度98.0%以上の電気泳動用

のもの(4)。 

(5) 2−メチル−1−プロパノール(イソブタノール) JIS K 8811に規定するもの,又はこれと同等のも

の。 

注(4) 神経性障害又は皮膚障害をおこすことがあるので取扱いに注意する。 

5.3.2 

緩衝液調製用試薬 

(1) 2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール[以下,トリス(ヒドロキシメチル)アミ

ノメタンという。] JIS K 9704に規定するもの,又はこれと同等のもの。 

(2) 塩酸 JIS K 8180に規定する特級,又はこれと同等のもの。 

(3) グリシン(アミノ酢酸) JIS K 8291に規定するもの又はこれと同等のもの。 

5.3.3 

試料調製用試薬 

(1) トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 5.3.2 (1)による。 

(2) ドデシル硫酸ナトリウム(以下,SDSという。) 純度98.0%以上のもの。 

(3) 2−メルカプトエタノール (2-ME)  純度97.0%以上のもの。 

(4) グリセリン JIS K 8295に規定するもの,又はこれと同等のもの。 

(5) ブロモフェノールブルー (BPB) JIS K 8844に規定するもの,又はこれと同等のもの。 

(6) インディアンインク(先端マーカー) 

5.3.4 

検出用試薬(染色剤) 

(1) クマシーブリリアントブルー (R250) C.I.(カラーインデックス)42660 

(2) メタノール JIS K 8891に規定するもの,又はこれと同等のもの。 

(3) 2−プロパノール(固定洗浄液) JIS K 8839に規定するもの,又はこれと同等のもの。 

(4) トリクロロ酢酸 JIS K 8667に規定するもの,又はこれと同等のもの。 

5.3.5 

検出用試薬(脱色剤) 

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(1) 酢酸 JIS K 8355に規定するもの,又はこれと同等のもの。 

(2) メタノール 5.3.4(2)による。 

5.3.6 

標準たん白質 使用するポリアクリルアミドゲルの濃度 (T%) に応じて適当な分子量をもつ標準

たん白質を用いる(5.5.1分析条件の設定を参照)。 

5.4 

試薬溶液の調製 

(1) アクリルアミド保存液 

(a) 分離ゲル液(A液)(T%=30,C%=2.67) アクリルアミド29.2g及びN,Nʼ−メチレンビス(アクリ

ルアミド)0.8gを蒸留水に溶かして,全量を100mlとする。 

溶かした後,不溶物をろ過して取り除き,冷蔵庫に保存する。 

(b) 濃縮ゲル液(B液)(T%=12.5,C%=20) アクリルアミド10.0g及びN,Nʼ−メチレンビス(アクリル

アミド)2.5gを蒸留水に溶かして,全量を100mlとする。 

不溶物をろ過して取り除き,冷蔵庫に保存する。 

(2) 分離ゲル用緩衝液(C液) トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン18.2gに蒸留水70mlと塩酸

2.8mlを加えて溶かし,0.5mol/l塩酸でpHを8.8に調整後,蒸留水を加えて全量を100mlとする。冷

蔵庫に保存する。 

(3) 濃縮ゲル用緩衝液(D液) トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン6.1gに蒸留水70mlと塩酸4.2ml

を加えて溶かし,0.5mol/l塩酸でpHを8.8に調整後,蒸留水を加えて全量を100mlとする。冷蔵庫に

保存する。 

(4) ペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液 (10g/l)(E液) ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.1gを蒸留水

10mlに溶かす(使用時調製)。 

(5) TEMED(F液)(そのまま使用する。) 

(6) クマシーブリリアントブルー溶液 (30g/l) クマシーブリリアントブルー (R250) 3gにメタノール

500mlを加えて溶かす。さらに,酢酸100mlを加えた後,蒸留水を加えて,全量を1 000mlにする。 

(7) 固定液 2−メチル−1−プロパノール70mlにトリクロロ酢酸7gを溶かし,蒸留水30mlを加える。 

(8) 脱色液 メタノール50mlに酢酸70mlを加え蒸留水で全量を1 000mlとする。 

(9) SDS溶液 トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン1.51g,SDS4.0g,ブロモフェノールブルー50mg

に2−メルカプトエタノール10ml,グリセリン20ml,蒸留水50mlを加えて均一になるように溶かし

た後,1mol/l塩酸でpHを6.8に調整後,蒸留水で全量を100mlにする。冷蔵庫に保存する。 

(10) 電気泳動用緩衝液(電極液にもなる。) トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン3.0g,SDS 1g,

グリシン14.42gを蒸留水に溶かし,全量を1 000mlとする。 

5.5 

操作方法 

5.5.1 

分析条件の設定 分析を行う前に,目的とするたん白質の分子量,等電点,溶解性などを調べ,分

析目的に適した泳動液及びポリアクリルアミドのゲル濃度 (T%) を選択する。 

ポリアクリルアミドのゲル濃度 (T%) と分離できる分子量の目安は,表1のとおりである。 

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表1 

分子量(キロダルトン:kDa)(5) 

T% 

           <5 

30 

             5〜  30 

20〜30 

            10〜  50 

15〜20 

            10〜  70 

10 

            20〜 150 

 7.5 

            25〜 200 

 5 

            10〜1 000 

 3.3 

注(5) 1ダルトン (Da) は,1原子質量単位 

(atomic mass unit) のことで,1.66× 
10−24(アボガドロ数の逆数)gに相
当する。数値的には分子量と同じで,
分子量の概念が不適当な染色体,リ
ボソームなどの場合にも質量数を表
すものとして用いる。 

一般的操作方法では,不連続緩衝液系及び濃縮ゲル系のものを用いる。 

5.5.2 

平板ゲルの作製 

(1) 器具 

(a) ガラス板 正ガラス板と副ガラス板の2枚一組のものを用いる。正ガラス板の片面の両サイドに細

長いガラススペーサが付いているもの(6)。洗剤で十分に洗浄後,更に蒸留水で洗浄してから乾燥さ

せたものを使用する。 

注(6) ガラス板の厚さは,通常1〜3mm程度である。 

(b) シリコンゴムスペーサ ガラス板をシールするために用いるもの。 

(c) ダブルクリップ ガラス板とシリコンスペーサの密着及びガラス板を垂直に保持するために用いる

もの。 

(d) サンプルコーム(試料導入溝作成用くし) 濃縮用ゲル上端部に,幾つかの試料導入溝を作成する

ためのもの。 

導入する試料数と容量を規定する必要がある。 

(2) 泳動槽の組立と装着 正ガラス板のガラススペーサの外側に沿ってシリコンゴムスペーサを密着させ,

その上に副ガラス板を正しく重ね,ダブルクリップでガラス板の合わせ面から液漏れしないようにと

める。垂直に立て固定する。 

(3) 分離ゲル用アクリルアミド重合液の調製 次に,T%=Xの分離ゲル用アクリルアミド重合液(均一濃

度ゲル)の調製方法を示す。 

50 mlの試料瓶に分離ゲル液(A液)Xmlと分離ゲル用緩衝液(C液)7.5m1及び蒸留水 (21.5‐X) ml

をとり,小さなマグネットかくはん(攪拌)子を用いてかくはんしながらアスピレータで5分間程度

室温で脱気する。これに氷冷しながら,ペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液 (10g/l)(E液)1.0mlと

TEMED(F液)0.02mlを加え,スターラで静かにかくはんし均一な溶液を調製する。この分離ゲル用

アクリルアミド重合液は,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度で0.375mol/l,pHで約8.8

となる。調製液の液量が異なる場合には,比例計算を行い,各試薬の必要量を求める。よく用いられ

る各種の分離ゲル用アクリルアミド重合液の試薬組成例を表2に示す(この場合,総液量は,30.02ml

となる。)。 

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表2 一般的に用いられる分離ゲル用アクリルアミド重合液の試薬組成例 

ゲル濃度 (T%) 

 5.0 

 7.5 

10.0 

12.5 

15.0 

20.0 

A液 (ml) (=X) 

 5.0 

 7.5 

10.0 

12.5 

15.0 

20.0 

C液  (ml) 

 7.5 

 7.5 

 7.5 

 7.5 

 7.5 

7.5 

蒸留水 (ml) 

16.5 

14.0 

11.5 

 9.0 

 6.5 

1.5 

E液  (ml) 

 1.0 

 1.0 

 1.0 

 1.0 

 1.0 

1.0 

F液  (ml) 

0.02 

0.02 

 0.02 

 0.02  0.02 

 0 02 

(4) 分離ゲルの作製 (2)で組み立てたガラス板の泳動槽に,(3)で調製した分離ゲル用アクリルアミド重合

液を,副ガラス板の中央から静かに副ガラス板の上端から1.5〜2.0cmの所まで注入する。分注終了後,

注射器を用いて分離ゲル用アクリルアミド重合液の表面を乱さないように静かに,2−メチル−1−プ

ロパノールを重層する。 

(5) 濃縮ゲル用アクリルアミドゲル重合液の調製 分離ゲル用アクリルアミド重合液が固化し,重層した

界面がはっきり見えたら,重層した2−メチル−1−プロパノールを捨て蒸留水で数回洗浄した後,余

分の蒸留水を十分除去する。その後,濃縮ゲル用アクリルアミド重合液の調製を行う。次に,濃縮ゲ

ル用アクリルアミド重合液の,T%=3.1,C%=2.0の場合の調整方法を示す。便宜上,調製液の総液

量を12gとするが,調製液の総液量が異なる場合,必要に応じて比例計算を行い,各試薬の必要量を

求めることができる。 

30 mlの試料瓶に,濃縮ゲル液(B液)3.0ml,濃縮ゲル用緩衝液(D液)3.0ml及び蒸留水5.5mlを

とり,小さなマグネットかくはん子を用いてかき混ぜながら,真空ポンプで5分間程度室温で脱気す

る。これを氷冷しながらペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液 (10g/l) (E液)0.5mlとTEMED(F液)

0.05mlを加え,スターラで静かにかくはんし均一な溶液を調製する。この濃縮ゲル用アクリルアミド

重合液は,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度で,0.125mol/l,pHで約6.8となる。 

(6) 濃縮ゲルの作製 サンプルコームを装着した後,(5)で調製した,濃縮ゲル用アクリルアミド重合液を

静かに注入する。このようにして作製した平板ゲルは,ガラス面からゲルがはく(剥)離しないよう

に食品包装用薄膜(ポリ塩化ビニリデン膜など)で十分に包み,冷蔵庫に保存する。 

5.5.3 

電気泳動系の組立と試料の導入 

(1) 平板ゲル泳動槽の装着 ダブルクリップを外しシリコンゴムスペーサを取り除く。次に,平板ゲルか

らサンプルコームを注意深く抜き取り,未重合のアクリルアミドを電気泳動用緩衝液で洗い流し,電

気泳動装置に装着する。この場合,下部電極槽は,5.4(10)の電気泳動用緩衝液を満たしておき,平板

ゲルを斜めに挿入することによって,ゲル下面への気泡の進入を防ぐようにする。 

(2) 泳動用試料溶液及び泳動用標準たん白質溶液の調製 試料溶液(たん白質0.5〜2.0μg/10μl)及び標準

たん白質溶液(1μg/10μl)のそれぞれ1容に対して5.4(9)のSDS溶液1容を加え,十分に混合した後,100℃

で5分間加熱処理を行う。さらに,それぞれ遠心分離によって不溶物を除去し,泳動用試料溶液,泳

動用標準たん白質溶液とする。 

(3) 試料の導入 泳動用試料溶液をマイクロシリンジ又は試料導入装置にとり,濃縮ゲル上の幾つかの試

料導入溝に各試料溶液を注入する。各試料溶液が相互に混入しないように注意する。 

また,1,2個の導入溝に泳動用標準たん白質溶液を導入する。試料の層を乱さないように,5.4(10)

の電気泳動用緩衝液を静かに注入する。 

(4) 電極装着 上部の電極を装着する。 

5.5.4 

通電 

(1) 通電条件 電圧,電流,電力などによってたん白質の移動速度を制御することができる。これらの値

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が大きいほどたん白質の移動速度は速くなり分析時間が短縮されるが,分離能が低下したり,ジュー

ル熱量が増加し気泡などの発生によって分離像が乱れたりする。 

また,たん白質の移動速度が遅すぎても拡散による分離能の低下がみられるため,適切な条件を選

ばなければならない。 

(2) 泳動の終了 マーカーや時間を目安として,試料が分析に最適な位置に来たときに通電を終了する。 

5.5.5 

試料成分の検出 試料成分の検出方法は,次による。 

(1) 泳動中検出法 泳動槽に設けられた検出器によって,電気泳動中に検出する。このほかに,たん白質

に色素を付けたり,放射性化合物(7)で標識しておくことなどもできる。 

注(7) 関係法令を順守し,取扱いには十分注意する。 

(2) 泳動後検出法 泳動終了後支持体を分画した後,各分画中で検出する。支持体を用いた場合は,支持

体から試料成分を抽出して検出するか,支持体上に試料成分を固定し,必要があれば染色し,支持体

上を走査して検出する。ここでは主に,色素染色(クマシーブリリアントブルー,アミドブラックな

ど)が用いられる。このほか,銀染色やたん白質を酵素や放射性化合物で標識して検出を行う方法,

ニトロセルロース膜などに転写してから染色するなどの方法を用いることもできる。 

(3) 染色−脱色法 

(a) 泳動槽から,平板ゲルを挟んでいる2枚のガラス板を取り外し,2枚のガラス板の透き間にスパー

テルを差し込み,テコの要領で副ガラス板を正ガラス板から外す。 

(b) 正ガラス板の両端のガラススペーサとゲル間に切り目を入れ,ゲルを破損しないように注意深く正

ガラス板から遊離し,ゲルを染色用バットへ移す。ブロモフェノールブルーの位置にインディアン

インクで印をつける。 

(c) 固定液でSDSを十分洗浄除去し,同時にたん白質を固定する。 

(d) 5.4(6)のクマシーブリリアントブルー染色液を用い,振とうしながら1時間又は24時間の染色を行

う。 

(e) 染色液を捨て5.4(8)の脱色液を用い,振とうしながら次によって脱色を行う。染色液の色が完全に

脱色されるまで脱色液を2,3回交換して脱色を行う。 

5.5.6 

ゲルの保存と検出結果の記録 

(1) ゲルのまま保存液(JIS K 8355に規定する酢酸5gに水を加えて100gとしたもの)中に保存する。 

(2) グリセリン(JIS K 8295に規定するもの)に浸せきした後,乾燥し保存する。 

(3) 必要に応じて写真撮影(カラー又は白黒)を行う。 

(4) 走査型デンシトメータ又はTV−カメラ・プリンター法によって記録する。 

(5) (4)の方法は,各成分の定量分析に適用する。 

5.5.7 

記録の整理 記録の整理は,次の事項について行う。 

(1) 日付及び測定者名 

(2) 電気泳動装置の製造者名又はその形式記号 

(3) 試料名及び試料導入量(μl又はml) 

(4) 泳動液を調製するために用いた試薬の製造者名及び規格 

(5) 泳動液の種類 

(6) 支持体の種類,泳動断面の形状,大きさ及び長さ(μm又はmm) 

(7) 設定した電圧,電流又は電力 

(8) 泳動槽温度又は室温 (℃)  

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10 

K 3838− 1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(9) 検出器の種類及び操作条件 

(10) 化学反応を利用した場合は,反応液及び反応試薬の種類,量 (ml) 並びに反応条件。 

6. 定性分析及び分子量の測定 

(1) 試料たん白質の移動距離と標準たん白質の移動距離とを比較することによって試料たん白質の定性分

析を行う。 

(2) たん白質の相対移動度は,その分子の形と分子量に依存しており,次の式が成り立つ。 

b

R

a

M

m+

×

=

)

(

log

ここに, 

M: たん白質の分子量 

a: ゲル濃度によって定まる定数 

b: 定数 

Rm: たん白質の相対移動度 

すなわち,分子量既知の標準たん白質のlogMを縦軸に,相対移動度を横軸にプロットして図2の

ような関係線を作成する。この関係線を用いて試料たん白質の相対移動度から,その分子量を読み取

る。 

図2 分子量測定関係線 

(3) ファーガソンプロット (Ferguson plot)  たん白質の相対移動度を対数にとったものが,ゲル濃度に

比例して減少することが知られていて,次の式が成り立つ。 

)

(

log

log

0

T

A

R

R

m

m

×

=

ここに, 

Rm: ゲル濃度Tでの相対移動度 

Rm0: ゲル濃度0での相対移動度 

T: ゲル濃度 (%)  

A: 遅延係数 (retardation coefficient)  

(たん白質分子の大きさと形によって決まる係数) 

この関係を縦軸と横軸にプロットしたものを,ファーガソンプロットといい,その例を図3に示す。 

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K 3838− 1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図3 ファーガソンプロット (Ferguson plot) 

分子量既知の標準たん白質数種類(αkDa,βkDa,γkDa,δkDa)について,それぞれ縦軸に対数目

盛でとった相対移動度を,横軸にゲル濃度をプロットする。このようにして作成された関係線に対し

て,試料たん白質のそれぞれのゲル濃度におけるlogRm値をプロットする(8)。 

注(8) この試料たん白質の直線の外挿値がRm0を切っていれば,このたん白質は正常な挙動をするた

ん白質であり,その遅延係数から分子量を算出した結果は,かなり信頼できる値である。 

7. 定量分析 被検成分を電気泳動によって分画,染色したその光学濃度の記録から定量する。別に,被

検成分についての検量線を作成する。 

SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の場合の走査は,電気泳動図が泳動と直角方向の分画ゾーンの

広がりが一様で,かつ,その方向に吸光度のむらのないことが必要である。 

8. 分離性能の評価 分離性能の評価方法は,適当な対照物質についての理論段数及び分離度によって行

う。 

8.1 

理論段数 (N) 理論段数Nによって分離効率を表す。理論段数は電気泳動図において対照物質の検

出時間又は距離とピーク幅から,次の式によって求める。 

=

21

54

.5

16

2

W

t

W

t

N

s

s

ここに, 

N: 理論段数 

ts: 対照物質の検出時間又は距離 

W: ピーク幅(時間又は距離単位) 

21

W: ピーク半値幅(ピーク高さが21のピーク幅時間又は距離

単位) 

8.2 

分離度 (Rs)  隣接する二つの成分の分離度Rsを次の式によって求める。 

2

1

1

2

)

(2

W

W

t

t

R

s

s

s

+

=

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K 3838− 1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ここに, 

Rs: 隣接する二つの成分の分離度 

ts1: 隣接する二つの成分のうちの一つの検出時間又は距離 

ts2: 隣接する二つの成分のうちのもう一つの検出時間又は距離 

W1: 隣接する二つの成分のうちの一つのピーク幅(時間又は距離

単位) 

W2: 隣接する二つの成分のうちのもう一つのピーク幅(時間又は

距離単位) 

付表1 引用規格 

JIS K 0050 化学分析方法通則 

JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門) 

JIS K 3600 バイオテクノロジー用語 

JIS K 3610 生体工学用語(生体化学部門) 

JIS K 8001 試薬試験方法通則 

JIS K 8008 生化学試薬通則 

JIS K 8180 塩酸(試薬) 

JIS K 8291 グリシン(試薬) 

JIS K 8295 グリセリン(試薬) 

JIS K 8355 酢酸(試薬) 

JIS K 8667 トリクロロ酢酸(試薬) 

JIS K 8811 2−メチル−1−プロパノール(試薬) 

JIS K 8839 2−プロパノール(試薬) 

JIS K 8844 ブロモフェノールブルー(試薬) 

JIS K 8891 メタノール(試薬) 

JIS K 9704 2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1, 3−プロパンジオール(試薬) 

JIS R 3505 ガラス製体積計 

JIS Z 8103 計測用語 

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13 

K 3838− 1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考 ポリアクリルアミドゲル重合架橋反応 

14 

K 3838− 1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

電気泳動装置JIS原案作成委員会 構成表 

(敬称略・順不同) 

氏名 

所属 

(委員長・分科会長) 

奥 山 典 生 

東京都立大学 

島 尾 和 男 

財団法人基礎腫瘍学研究会付属腫瘤研究所 

真 鍋   敬 

姫路工業大学 

本 田   進 

近畿大学 

坂 東 一 彦 

通商産業省機械情報産業局 

地 崎   修 

工業技術院標準部 

坂 岸 良 克 

埼玉大学 

丹 下 順 弘 

武田薬品工業株式会社 

玉 沖 英 恒 

三共株式会社 

柴 谷 武 爾 

田辺製薬株式会社 

村 上 梅 司 

鐘紡株式会社 

日 高 秀 昌 

明治製菓株式会社 

加 藤 和 男 

日本ケミカルリサーチ株式会社 

藤 井 忠 代 

東洋醸造株式会社 

横 尾 義 春 

協和発酵工業株式会社 

○ 須 藤 哲 司 

第一化学薬品株式会社 

○ 岸 井 松 司 

和光純薬工業株式会社 

鈴 木 秀 夫 

オリンパス光学工業株式会社 

八 木 孝 夫 

株式会社島津製作所 

豊 田   隆 

株式会社常光 

○ 重 倉 友 三 

日本バイオラッドラボラトリー株式会社 

○ 河 崎 忠 好 

ファルマシヤ株式会社 

西 村 泰 一 

富士写真フィルム株式会社 

伊 藤 迪 男 

日立計測エンジニアリング株式会社 

千 田 正 昭 

日本分光工業株式会社 

田 中   博 

アブライドバイオシステムジャパン株式会社 

○ 入 江   勉 

株式会社アトー 

瓜 生 敬 志 

ザルトリウス株式会社 

雨 宮 正 剛 

コスモ株式会社 

(事務局) 

柴 田   雄 

財団法人日本規格協会 

備考 ○印は,分科会委員を示す。