K 3600 : 2000
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人バイオインダストリー (JBA) /財
団法人日本規格協会 (JSA) から工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工
業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって,JIS K 3600-1989
は改正され,この規格に置き換えられる。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 3600 : 2000
バイオテクノロジー用語
Biotechnology−Vocabulary
1. 適用範囲 この規格は,バイオテクノロジー分野で用いる主な用語について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発効年(又は発行年)を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの
規格の規定を構成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年(又は発行年)を付
記していない引用規格は,その最新版(追補を含む)を適用する。
JIS K 3610 : 1992 生体工学用語(生体化学部門)
JIS K 3611 : 1995 生体工学用語(生体システム部門)
3. 用語の分類 用語は次のように分類する。
3.1
基礎事項
a) 一般的事項
b) 酵素,タンパク質工学
c) 微生物,微生物工学
d) 動物細胞,植物細胞,細胞工学
3.2
基礎技術
a) 培養,培養工学
b) 細胞融合
c) 遺伝子操作,遺伝子工学
d) 一般的操作
e) 器具・装置
3.3
応用技術
a) 発酵
b) バイオリアクター
c) バイオインフォマティックス
d) バイオレメディー
e) その他
4. 定義 用語及び定義は次のとおりとする。
備考1. 二つ以上の用語を並べた場合は,その順位に従って優先使用する。
2. 用語を特定分野に限定して用いる場合には,用語の次に丸括弧書きで記す。例えば,固定化
2
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(生体触媒の)
3. 用語の定義の中で丸括弧を付けた部分は,詳細な説明をするためのものである。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
1101
アーサス現象/
アルチュス現象
あーさすげんしょ
う/
あるちゅすげんし
ょう
Arthus
phenomenon/
Arthus reaction
感作動物の皮内に抗原を注射したときに,免疫複合体により
起こされる炎症反応。即時型反応 (immediate-typ reaction)
よりは遅れるが,遅延型反応 (delayed-type reaction) よりも早
くみられるので,アレルギー反応の第3型 (acutetype reaction)
とよばれることもある。
1102
アーティファク
ト
あーてぃふぁくと
artefact
実験又は処理の過程で起こった人工的変化。極限的な研究,
初期の電子顕微鏡像などについてよく現れていた。
1103
RNA/リボ核酸
あーるえぬえー/
りぼかくさん
ribonucleic acid
D−リボースを糖成分とする核酸。アデニン,グアニン,シ
トシン,ウラシルが塩基成分のほとんどを占めるが,他にチ
ミンをはじめ様々な微量塩基を含むものがある。
1104
RQ/呼吸商
あーるきゅう/
こきゅうしょう
respiratory
quotient
CO2呼出量とO2吸収量との比。ガス分析で求められる量で,
体内でどの栄養素が酸化されてエネルギー源となっているか
を知るための指標となる。
1105
アガロース
あがろーす
agarose
寒天の主成分 (70%) で,β- (1→4) -D-galactosyl-α- (1→4)
-L-3,6-anhydrogalactoseを単位とする多糖。冷水には溶けない
が熱水に溶ける。濃度0.5〜2%の溶液で作ったゲルは巨大網
状構造をもち,高分子でも自由に拡散できるので,免疫沈降
法,電気泳動の支持体として用いる。
1106
アクチン
あくちん
actin
細胞骨格を構成する主要な球状たん白質の1つ。筋収縮,原
形質流動などの細胞運動に関与している。(分子量約42KDa)
1107
アジュバント
あじゅばんと
adjuvant
免疫系を刺激して,抗原に対する免疫応答を修飾する物質の
総称。通常,抗体産生や細胞性免疫の強化に用いられる。り
ん酸アルミニウム,フロイントアジュバントなどがある。
1108
アポトーシス/
プログラム死
あぽとーしす/
ぷろぐらむし
apoptosis/
programed cell
death
生理的条件下で細胞自らが積極的に引き起こす細胞の死。細
胞は萎縮し,細胞の内容物が細胞外に放出されることなく周
囲の細胞に速やかに取り込まれて処理されるので炎症を引き
起こさない。
1109
アミノ酸
あみのさん
amino acid
同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物。た
だし,たん白質の構成アミノ酸の場合にはプロリン,ハイド
ロキシプロリンのようなイミノ酸もアミノ酸として取り扱
う。
1110
アミノ酸残基
あみのさんざんき
aminoacid residue
ポリペプチドの構成単位で,ペプチド結合する際に除かれた
−H,−OH以外のアミノ酸部分の総称。したがってたん白質
やペプチドのなかでは,N,C両末端以外のアミノ酸はすべ
て同様のアミノ酸残基の形で存在する。残基とは結合のとき
に除去される原子団以外の基という意味。
1111
アミノ酸組成
あみのさんそせい
amino acid
composition
たん白質やペプチドに含まれるアミノ酸のmol量比を試料の
分子量がはっきりしないときは量比をmol%で示す。アミノ
酸組成からそのたん白質の概略の性質を推定できる。
1112
アミノ糖
あみのとう
amino sugar
糖の水酸基がアミノ基で置換された構造をもつ化合物の総
称。天然界では多糖,糖たん白質,糖脂質の構成分や抗生物
質の成分として存在する。
1113
α−ヘリックス
あるふぁーへりっ
くす
α-helix
たん白質やポリペプチドが示す二次構造の1種でら旋状に伸
びた構造。Glu,Met,Ala,Leuはαヘリックスを形成しやす
い。シート状の構造をもつβシートと対応する。
1114
αフェトプロテ
イン
あるふぁふぇとぷ
ろていん
α-fetoprotein
電気泳動的にα1グロブリン領域にくる胎児性たん白質。分子
量約70KDaの1本のポリペプチド鎖よりなり,約4%の糖を
含む。一時,肝細胞癌及び卵黄のう(嚢)腫瘍の特異的診断
3
K 3600 : 2000
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
法として注目されたが,正常人血清中にもわずかにその存在
が知られ,特異的診断法としての意義は,少し薄らいだ。
1115
アルブミン
あるぶみん
albumin
動植物細胞,体液中に含まれる硝酸アンモニウム50%飽和溶
液に可溶なたん白質の総称。分子量は64KDa程度である。等
電点は5〜6のものが多い。代表的なものとして,血清アルブ
ミン,オボアルブミンなどがある。
1116
アレルギー
あれるぎー
allergy
感作動物にもう一度その抗原が入った場合に起こる強い免疫
反応。抗体の関与する即時型アレルギー,感作Tリンパ球が
関与する遅延型アレルギーとアーサス現象がある。
1117
アレルゲン
あれるげん
allergen
アトピー又はアレルギーを起こす物質の総称。
1118
アロステリック
効果
あろすてりっくこ
うか
allosteric effect
(1)酸素の基質結合部位とは異なる部位とエフェクター物質
との結合による酵素分子の構造変化に伴う酵素活性の正若し
くは負の変化。
(2)たん白質との結合によって,その高次の構造に変化が生じ
る現象。
1119
アンジオテンシ
ン
あんじおてんしん
angiotensin
血中に含まれ,血圧や体液調節に関与するペプチド。I II III
の三種類あり,Iは昇圧作用があり,IIは昇圧作用とアルドス
テロン分泌作用があり,IIIはIIの半分の昇圧作用と等価のア
ルドステロン分泌作用がある。
1120
イオノフォア
いおのふぉあ
ionophore
細胞膜又は人工脂質膜に作用して,イオン透過性を高める働
きをする物質。イオンと疎水性の複合体を作り,膜の疎水性
領域を通過することによってイオンの透過性を高める。バリ
ノマイシン,モネンシンなどの抗生物質が知られている。
1121
イオンポンプ/
イオンチャンネ
ル/イオン輸送
いおんぽんぷ/
いおんちゃんねる
/いおんゆそう
ion pump/
ion channel/
ion transport
細胞膜を通してイオンを選択的に輸送するたん白質複合体。
能動輸送 (active transport) をポンプ,受動輸送 (passive
transport) をチャンネルという。能動輸送はイオンポンプなど
のように膜内外の電気化学的ポンテンシャルの勾配に逆らっ
て輸送される現象。受動輸送には輸送体を介さない拡散と輸
送体を介する促進拡散 (facilitated diffusion) がある。
1122
異化作用
いかさよう
catabolism/
dissimilation
物質代謝において,化学物質をより簡単な物質に分解する過
程。異化作用で放出される化学エネルギーはATPに移されい
ろいろな生物活動に利用される。
1123
いき値
いきち
threshold value
作用を起こせる最小有効値。生体に作用を及ぼす物質の作用
限界点を示すのに用いられる。致死いき値,刺激いき値など
という。
1124
育種
いくしゅ
breeding
微生物や動植物において,野生又は既存の株や系統・品種を
用い,従来のものよりも遺伝的に優れたものを育成すること。
交配,誘導変異に加えて,遺伝子操作が用いられる。
1125
異数体
いすうたい
heteroploid
ある生物種において,その種に固有の基本数の倍数(その種
が単相であれば半数)より一個若しくは数個多いか,又は少
ない染色体数をもつ個体。異数体は細胞分裂の異常によるも
のと考えられている。
1126
一次構造(たん
白質の)/アミ
ノ酸配列
いちじこうぞう
(たんぱくしつ
の)/あみのさん
はいれつ
primary structure
(of protein) /
amino acid
sequence
たん白質におけるアミノ酸の連結している配列順序及びジス
ルフィド結合の存在位置を含めた一次元的な全共有結合構
造。この構造はその構造遺伝子であるDNA上の塩基配列に
よって一義的に定まっている。たん白質の高次構造は基本的
に,その一次構造によって規定されると考えられる。
1127
一代雑種
いちだいざっしゅ
first filial
generation
ある対立遺伝子について,各々は全く同一の遺伝子組をもつ
が互いに異なる対立遺伝子組をもつ両親の間の交雑によって
生じた子。F1で表すことがある。雑種に両親よりも優れた形
4
K 3600 : 2000
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
質が現れること(雑種強勢)を利用した育種に応用される。
1128
インターフェロ
ン
いんたーふぇろん
interferon
リンパ球や繊維芽細胞など様々な細胞が生産し,抗ウイルス
作用や抗ガン作用などを示す生理活性たんぱく質。α,β,γ
の主要サブタイプがあり,生理作用の違いから,α/βをI型,
γをII型と呼ぶ場合もある。
1129
インテイン
いんていん
intein
タンパク質が自己触媒作用によって成熟タンパク質になる際
に切り出されるタンパク質の領域。
1130
エクソトキシン
えくそときしん
exotoxin
細菌が生産し,菌体外に容易に放出される毒性物質。ジフテ
リアトキシン,ボツリヌストキシンなどの高分子たん白質は
熱に不安定で,毒性が強い。
1131
SOS修復/
SOS機能
えすおーえすしゅ
うふく/
えすおーえすきの
う
SOS repair/
SOS function
DNAが傷害を受けたときその傷害部位を越えてDNA複製を
行って修復する機構。エラーがち修復 (error-prone repair) と
もいい,変異を伴うことが多い。特定の修復機構で修復でき
ないような傷害を修復するための緊急機構と考えられる。
1132
HLA/
人白血球抗原
えっちえるえー/
ひとはっけっきゅ
うこうげん
human leukocyte
antigen
すべての有核細胞表面上に表現されているヒトの主要組織適
合抗原。その遺伝子は,ヒト第6染色体短腕上に密に連鎖し
て存在する。移植抗原,免疫監視機能,免疫応答の遺伝的制
御,ある種の難病の発症に関与している。
1133
H鎖/重鎖
えっちさ/
じゅうさ
H-chain/
heavy chain
免疫グロブリン分子を構成する2種類のポリペプチド鎖のう
ち,長い方の鎖。一次構造の特徴から可変部と定常部からな
る。
1134
F因子
えふいんし
F-factor/
fertility factor
大腸菌の性決定因子。F因子は伝達性のプラスミドの1種で,
F+菌の線毛を媒体としてF−菌と接触,接合してプラスミドゲ
ノムを伝達する。F因子が大腸菌の染色体に組み込まれると
Hfr菌となり,接合伝達のときF因子に隣り合う染色体DNA
を,一定方向で受容菌に移入できる。
1135
LAL/カブトガ
ニの血球溶解成
分
えるえーえる/
かぶとがにのけっ
きゅうようかいせ
いぶん
limulus
amebocyte
lysate
カブトガニの白血球の溶解成分を原料とする試薬。エンドト
キシン,β (1→3) -D-グルカンを検出,又は定量するために調
製された。
1136
L鎖/軽鎖
えるさ/けいさ
L-chain/
light chain
免疫グロブリン分子を構成する2種類のポリペプチド鎖のう
ち,短い方の鎖。一次構造の特徴から可変部と定常部からな
る。
1137
塩基性たん白質
えんきせいたんぱ
くしつ
basic protein
等電点がアルカリ性側にあるたん白質。アルギニンやリジン
などの塩基性アミノ酸の含量が酸性アミノ酸に比べて多い。
ヒストン,プロタミン,リゾチームなどが代表例である。
1138
塩基対
えんきつい
base pair
核酸の塩基のうち定まった組合せの2個が水素結合によって
対合したもの。DNAではアデニンとチミン,グアニンとシト
シン,RNAではアデニンとウラシル,グアニンとシトシンが
対合する。核酸の複製,転写,mRNAとtRNAの相互作用に
重要な役割を果たす。
1139
塩基配列
えんきはいれつ
base sequence
核酸分子鎖においてヌクレオチドの連結している順序。遺伝
情報はこれによって定まっている。
1140
エンドサイトー
シス
えんどさいとーし
す
endocytosis
細胞膜を介する外界からの物質取込み作用の総称。細胞膜は
小胞を形成し,これがリゾチームと融合する。膜成分は最終
的に細胞膜に復帰すると考えられている。
1141
エンドトキシン
/
内毒素
えんどときしん/
ないどくそ
endotoxin
グラム陰性細菌の菌体成分中にある毒性物質。その本体はリ
ポ多糖で,発熱,インターフェロン誘導活性を示す。
1142
オリゴ糖/少糖
おりごとう/しょ
oligosaccharide
2〜10個程度の単糖分子が脱水縮合した構造をもつ物質。天
5
K 3600 : 2000
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
うとう
然のオリゴ糖の大半は元来配糖体や複合糖質として存在して
いたものである。
1143
オリゴマーたん
白質
おりごまーたんぱ
くしつ
oligomer protein
二つ以上のポリペプチド鎖から構成されたたん白質。各構成
ペプチド鎖単位は,サブユニットまたはプロトマーとよばれ
る。ヘモグロビンなどが代表例である。
1144
カードラン
かーどらん
curdlan
Alcaligenes gaecalisから抽出された高分子物質で,β (1→3)
-D-グルカンの直鎖状高分子とβ (1→6) との枝分かれ構造を
もつ。分子量70KDa〜90KDa。
1145
解糖
かいとう
glycolysis
嫌気的条件下におけるぶどう糖又はグリコーゲンから乳酸へ
の分解反応。ほとんどの生物に存在するエネルギー獲得系で
ある。
1146
化学的酸素要求
量/COD
かがくてきさんそ
ようきゅうりょう
/しーおーでぃー
chemical oxygen
demand/COD
水の汚染度を表す指標。被検水に酸化剤として重クロム酸カ
リウムなどを加えて反応させ,その消費量から化学的に消費
される酸素量を求め,ppmを単位として表す。BODに比べて
短時間に測定できるが,生物学的酸化を受けやすい有機物と
安定な有機物及び無機被酸化物を区別できない。
1147
核酸
かくさん
nucleic acid
ヌクレオチド残基が多数つながった高分子物質の総称。糖部
分がリボースかデオキシリボースかによってRNAとDNAの
2種に大別される。
1148
核酸塩基
かくさんえんき
nucleic acid base
DNAやRNAの構成要素となっている窒素を含む複素環式化
合物。アデニン,グアニン,シトシン,ウラシル,チミンが
その主なものである。
1149
核小体/仁
かくしょうたい/
じん
nucleolus
真核細胞の核内にあるリボゾームRNAの合成とリボゾーム
の組立を行っている小体。
1150
核内低分子
RNA
かくないていぶん
しあーるえぬえー
small nuclear
RNA/snRNA
真核生物の核中に存在する低分子RNA。スプライシング,プ
ロセッシングなどに関与していると考えられている。
1151
カスケード反応
かすけーどはんの
う
cascade reaction
連鎖的反応増幅機構。血液凝固などで見られる。
1152
活性酸素
かっせいさんそ
active oxygen
1O2,・O2−,H2O2,・OHなどの高い反応性を示す酸素分子種。
一酸化窒素,オゾン,過酸化脂質なども広義の活性酸素に含
められる。生体防御系や細胞内シグナル系で重要な働きをす
るが,生体成分に様々な酸化障害を起こし,老化や疾病の原
因となる。
1153
カップリング/
共役
かっぷりんぐ/
きょうえき
coupling
二つ以上の反応について,一つの反応の生成物が,他方の反
応の基質となるような系列をつくっているとき,これらの反
応は共役(カップリング)しているという。その共通の中間
体としては,化合物のこともあるし,また,電子やイオン濃
度の差であることもある。
1154
カリオプラスト
/核体
かりおぷらすと/
かくたい
karyoplast
サイトカラシンで処理された培養細胞は,マイクロフィラメ
ントの網目構造が破壊されて細胞膜でつつまれた核が突出す
る。これを遠心分離して細胞質体(サイトプラスト)と分け
たもの。
1155
機能性高分子
きのうせいこうぶ
んし
functional polymer
特定の機能をもった合成ポリマー。生体由来のたん白質を含
めることもある。
1156
キメラ
きめら
chim(a)era/
chim(a)eric
(1)2個以上の遺伝的に異なる体細胞からなる単一個体。
(2)2個以上の異なる分子の部分的複合体を表す形容詞。
例えば,キメラ個体,キメラたん白質,キメラDNA。同様な
現象をモザイクということもある。
1157
凝集反応(抗原
の)
ぎょうしゅうはん
のう(こうげんの)
agglutination
reaction
細菌,赤血球などの表面抗原又は粒子表面に吸収させた抗原
(凝集原)とそれに対応する抗体(凝集素)との抗原抗体反
6
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
応に由来する巨大塊形成反応。
1158
組換え体の第一
種利用
くみかえたいのだ
いいっしゅりよう
the type 1 uses of
recombinant
organisms
工場や施設内の限定した区域などの人為的に外界から隔離さ
れた条件下での組換え体の利用。
1159
共通塩基配列
きょうつうえんき
はいれつ
consensus
sequence
ある遺伝子領域(例えば,プロモーター,ターミネーターな
ど)に最も頻度高く出現する塩基配列から帰納した理論的配
列。理論的配列に近い実際の配列を指すこともある。
1160
キラー因子
きらーいんし
killer factor
異なる二つの系統のゾウリムシや酵母を同じ容器で培養する
とキラーたん白質(キラー因子)を出して一方が他方を殺す
ことがある。キラー因子の遺伝子は,プラスミド上にあるが,
その保持は核遺伝子支配である。有用酵母の育種に応用され
ている。
1161
金属たん白質
きんぞくたんぱく
しつ
metalloprotein
重金属イオンを構成成分の一つとして結合しているたん白
質。ヘムたん白質,各種金属酵素(ニトロゲナーゼ,アルコ
ールデヒドロゲナーゼ,フェレドキシンなど)がある。
1162
組換え体の第二
種利用
くみかえたいのだ
いにしゅりよう
the type 2 uses of
recombinant
organisms
バイオレメディエーションなど人為的に制御がなされていな
い自然条件下の限定された区域での組換え体の利用。
1163
クラススイッチ
くらすすいっち
class switch
免疫グロブリン産生においてクラスの変換が起こること。
lgMが最初に産生され,ついでlgG産生に置き代わる,すな
わち免疫グロブリン遺伝子の中でH鎖のC領域をコードする
部位の上流にあるS領域 (switch region) での組換え。
1164
グリコシド/
配糖体
ぐりこしど/
はいとうたい
glycoside
糖の還元基と,糖又は,他の化合物の水酸基(まれにSH基,
NH2基)の脱水縮合により結合した物質の総称。多糖類をは
じめとしてO-グリコシドは広く生物界に存在する。N-グリコ
シドとして核酸,補酵素などがあげられる。
1165
クローン
くろーん
clone
1)共通の祖先から無性生殖によって生じた遺伝的に均一な細
胞又は個体。2)無性的に生じた個体で,親と全く遺伝的に同
じ個体(クローンカエル)。3)遺伝子操作で特定の遺伝子を
ベクターに結合させ,均一な遺伝子集団を得られるようにな
ったもの。
1166
クロマチン/
染色質
くろまちん/
せんしょくしつ
chromatin
真核生物の染色体物質で,DNA,RNA,たん白質,脂質から
なる複合体。その基本構造はヌクレオソームである。
1167
血清
けっせい
serum
凝固していない全血液から血球を除いたもの。動物細胞培養
の重要な構成分の一つでもある。凝固した血液から凝固部分
を除去したものを血漿という。
1168
ゲノム
げのむ
genome
生物個々の種を特徴づけながら,生命を維持できる最小限の
遺伝子群を含む染色体の組。ヒトでは1ゲノムの染色体数は
23本である。
1169
抗イディオタイ
プ抗体
こういでぃおたい
ぷこうたい
anti-idiotype
antibody
抗体の可変領域(V領域)をエピトープとする抗体。つまり
抗体のレプリカに対するそのまたレプリカが抗イディオタイ
プ抗体である。目的の抗体産生を,抗原そのものを用いる代
わりに抗イディオタイプ抗体で誘導できることになる。
1170
好塩基顆粒
こうえんきかりゅ
う
basophil/
basophilic leukocyte
酸性の糖たん白質を含む顆粒球をもつ多形核白血球。ヒスタ
ミンとヘパリンを放出してアナフィラキシーを起こす。血流
中の白血球の約0.5%を占める。
1171
抗原
こうげん
antigen
抗原抗体反応又は免疫応答を誘発し得る物質の総称。免疫原
性をもつ完全抗原に対して,比較的小さな分子で免疫原性を
もたない抗原をハプテンという。ハプテンを適当な担体と結
合させると抗原性がでてくる。
7
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
1172
抗原決定基/
エピトープ
こうげんけってい
き/えぴとーぷ
antigenic
determinant/
epitope
抗原抗体反応において,抗原たん白質の分子表面に存在する
抗体と特異的に結合する特定部位。ハプテンは抗原決定基に
相当し,構造既知の抗原決定基をエピトープという。抗原決
定基は相対的な生物学的意味を表し,対応する抗体によって
初めて決まる。
1173
光合成
こうごうせい
photosynthesis
光のエネルギーによって二酸化炭素と電子供与体から有機物
を合成する生物反応。
1174
高次構造(たん
白質の,核酸の)
こうじこうぞう
(たんぱくしつ
の,かくさんの)
higher-order
structure
たん白質のような鎖状高分子は分子鎖が折りたたまれて2次
構造,3次構造,4次構造をつくる。3次構造以上を高次構造
という。活性や機能の発現に必す(須)である。
1175
抗生物質
こうせいぶっしつ
antibiotics
微生物などの生物が生産し,病原微生物・ウイルス・寄生虫・
癌細胞などの発育若しくは機能を選択的に阻害する又は致死
的に作用する物質及びそれらの合成誘導体。
1176
抗体
こうたい
antibody
免疫反応において,抗原の刺激によって生体内に作られ,そ
の抗原と特異的に結合するたん白質の総称。免疫グロブリン
がその本体であり,生体防御を引き起こす役割を担う。
1177
硬たん白質
こうたんぱくしつ
scleroprotein
分子間に共有結合性の架橋などが存在するため,通常の塩溶
液などには不溶で,酵素や化学処理にも抗抵性のあるたん白
質。コラーゲン,ケラチン,エラスチンなどがある。
1178
固定化(生体触
媒の)
こていか(せいた
いしょくばいの)
immobilization
(of biocatalyst)
酵素や微生物などの生体由来の触媒をある一定の空間内に閉
じ込めた状態にすること。固定化の方法には,非水溶性の担
体 (carrier) に結合させる担体結合法,試薬によって架橋する
架橋法,適当な素材で包み込む包括法がある。
1179
コンビナトリア
ルケミストリー
こんびなとりある
けみすとりー
combinatorial
chemistry
基本骨格と様々な修飾基を自動合成手法で結合させることに
よって多様な化合物群を同時に合成すること。
1180
シクロデキスト
リン
しくろできすとり
ん
cyclodextrin
グルコースが環状構造に結合したもの。グルコース6分子,7
分子,8分子からなるものをそれぞれα,β,γ−シクロデキス
トリンという。ドーナツ状の構造をしており,適当な大きさ
の有機分子をその中に包接できる。また人工酵素のモデルと
しても利用されている。
1181
最小致死量/
MLD
さいしょうちしり
ょう/
えむえるでぃー
minimum lethal
dose
一定条件下で生物集団を死亡させるに足る薬剤などの最小
量。毒物,病原微生物,ワクチンなどの力価測定に適用され
る。
1182
最少培地
さいしょうばいち
minimum
medium
生育に必要最少限の成分だけからなる培地。栄養要求性変異
株の取得,各種栄養物の生物に対する効果を検討するための
基本培地。
1183
最適温度
さいてきおんど
optimum
temperature
酵素,細胞又は生体組織に最大の活性を発現させる温度。
1184
最適pH
さいてきぴーえい
ち
optimum pH
酵素,細胞又は生体組織に最大の活性を発現させるpH条件。
1185
サイトカイン
さいとかいん
cytokine
リンパ球,マクロファージ,繊維芽細胞などが産生するリン
パ球に作用して分化を誘導するたん白性物質の総称。
1186
サイトカラシン
さいとからしん
cytocharasin
カビの代謝産物で,マイクロフィラメント系の関与する現象
を可逆的に阻害する物質。動物細胞をこの薬剤で処理すると
濃度によって多核細胞や脱核を起こす。サイトカラシンBが
最もよく利用される。
1187
栽培漁業
さいばいぎょぎょ
う
cultured fishery
特定の海域に魚礁,海藻の人工造林などを行い,漁場の改善・
造成を図り,人工育成した種苗を放流して漁業の増産を図る
こと。増殖・養殖を含めていうことが多い。
1188
細胞骨格
さいぼうこっかく
cytoskeleton
真核細胞の細胞質に縦横にはりめぐらされた網目状の構造
8
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
体。細胞の形,運動を制御。チューブリンからなる微小管,
アクチンからなる微小繊維,デスミンやビメンチンからなる
中間腺維などから構成されている。
1189
雑種不稔性
ざっしゅふねんせ
い
hybrid sterility
交配又は融合によって生じた雑種が,通常の交配などにより
子孫を残せない現象。自然集団の局所的種間で起こる交雑に
多くみられる。
1190
サテライト
DNA
さてらいとでぃー
えぬえー
satellite DNA
細胞から取り出したDNAを平衡密度勾配遠心にかけると,
主要なDNAバンドのほかに現れる低分子DNAバンド。これ
はプラスミドのような独立の分子に由来することが多いが,
大きな核DNAから切り出された特異な断片(反復塩基配列
など)のこともある。
1191
サブユニット構
造
さぶゆにっとこう
ぞう
subunit
structure
一つの機能発現単位が非共有結合で会合した複数個の構成成
分から成り立っている構造。アロステリック効果の発現にお
いてサブユニットの会合や解離を伴うことが多い。また2種
類の全く異なる酵素の会合によって,新しい酵素機能が発現
することもある。
1192
酸化的りん酸化
さんかてきりんさ
んか
oxidative
phosphorylation
呼吸によって有機物の酸化から生じる電子の伝達系に共役し
てATPを生産するりん酸化反応。生体にATPを供給する主要
な反応である。ミトコンドリア内膜又は原核細胞の形質膜に
おいて行われる。
1193
酸性たん白質
さんせいたんぱく
しつ
acidic protein
等電点が酸性側にあるたん白質。アスパラギン酸とグルタミ
ン酸のような酸性アミノ酸の含量が塩基性アミノ酸に比べて
多い。代表的なものにペプシン,リボヌクレアーゼT1などが
ある。
1194
C領域/恒常部
/定常部/定常
領域
しーりょういき/
こうじょうぶ/
ていじょうぶ/
ていじょうりょう
いき
constant region
免疫グロブリンのH及びL鎖のうち,クラス又はサブクラス
に共通して存在する構造領域。
1195
シグナルペプチ
ド
しぐなるぺぷちど
signal peptide
分泌たん白質のアミノ末端にある細胞膜透過機構に関与する
15〜30個ほどの主として疎水性アミノ酸からなる配列。膜通
過に当たって先導役を務めると考えられている。この配列を
目的たん白質に接続して,細胞外へそのたん白質を排出させ
るために利用できると考えられている。
1196
脂質二重層/
脂質二分子膜
ししつにじゅうそ
う/
ししつにぶんしま
く
lipid bilayer
りん脂質などの極性脂質が,2分子の厚さに整列した膜状構
造。これが主体膜の基本構造であると考えられている。
1197
ジスルフィド結
合/S-S結合
じするふぃどけつ
ごう/えすえすけ
つごう
disulfide bond
二つのSH基が酸化されることによって形成される結合。た
ん白質のジスルフィド結合は,二つのシステインが酸化され
てできたシスチン残基に由来するものでたん白質の三次元構
造の保持に重要な役割を担う。
1198
ジベレリン
じべれりん
gibbereline
植物ホルモンの一つ。茎や葉の伸長生長,休眠打破などを促
進する。種なしぶどう,梨や苺の肥大に実用化されている。
1199
肪脂酸
しぼうさん
fatty acid
天然の脂質の加水分解によって得られる脂肪族モノカルボン
酸を指す。広義にはジカルボン酸も含まれる。
1200
種特異性
しゅとくいせい
species specificity
生物がその種に特異的な構成分をもっていたり,特定の物質
又は環境に対して種独自の反応性を示すこと。ヒトインター
フェロンは,ヒト細胞が作ったもので他の動物には作用しな
い。このような場合,インターフェロンには種特異性がある
9
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
という。
1201
消泡剤(発酵液
の)
しょうほうざい
(はっこうえき
の)
anti-foaming
agent/defoamer
通気発酵中に生じる泡を消す材料。大豆油,合成界面活性剤
などを使用する。
1202
小胞体/ER
しょうほうたい/
いーあーる
endoplasmic
reticulum
真核細胞の細胞質内にある膜状の構造体。膜の細胞質側の面
にリボソームがついているのを粗面小胞体,ついていないの
を滑面小胞体という。たん白質の合成あるいは貯蔵が行われ
る場所。
1203
植物ホルモン
しょくぶつほるも
ん
plant hormone
植物体内で作られ,伸長生長,肥大生長,細胞分裂,花芽形
成,気孔の開閉,発芽,発根などの生理作用を示す物質。オ
ーキシン,ジベレリン,アブシジン酸,エチレンなどが知ら
れている。植物ホルモンと同様な作用を示すが,天然には存
在しない合成化合物は植物生長調整物質 (plant growth
regulator, plant growth substance) と呼ぶ。
1204
人為突然変異/
誘発変異
じんいとつぜんへ
んい/
ゆうはつへんい
artificial
mutation/induced
mutation
突然変異の誘発原を作用させて起こす突然変異。自然突然変
異の対語。アルキル化剤,アクリジン色素などの化学物質,γ
線などの物理的処理,トランスポゾン挿入などの生物学的処
理などで変異を誘発できる。
1205
真核生物
しんかくせいぶつ
eukaryote
静止期において,核膜に包まれた核をもつ細胞からなる生物。
共通の構造物として,ミトコンドリア,ゴルジ体,リソソー
ム,膜系の小胞体及び細胞内骨格をもつ。
1206
人工血液
じんこうけつえき
artificial blood
酸素及び二酸化炭素運搬・交換能力をもち,血液を代替する
化合物。
1207
水素供与体/
電子供与体
すいそきょうよた
い/
でんしきょうよた
い
hydrogen donor/
electron/donor
酸化還元反応において,他に水素を与えてそれ自身は酸化さ
れる物質。電子の移動と水素の移動とは等価であるので両者
を区別せずに用いる。
1208
生合成
せいごうせい
biosynthesis
生体によって行われる同化的な物質の合成。全く新しく合成
される全合成 (de novo synthesis) と異化作用の過程で生じる
分解物の一部が再利用される半合成 (salvage synsthesis) に分
けられる。
1209
生体工学/
バイオニックス
せいたいこうがく
/
ばいおにっくす
bionics/
biological
engineering
生体のもつ機能を人工的手段で実現し,活用しようとする工
学分野。特に生物の情報機能に注目しているところから生体
情報工学ということもある。
1210
生体膜
せいたいまく
biomembrane
基本構造が脂質二重層で構成され,細胞及び細胞内小器官を
覆っている膜。二重層の中を膜たん白質が膜を貫き又はその
表面に付着している
1211
生理活性物質
せいりかっせいぶ
っしつ
physiologically
active substance
生物の生理作用を抑制又は助長させる物質。ホルモン,ビタ
ミンなどを指す。
1212
接合
せつごう
conjugation
外観上配偶子と栄養細胞の区別がみられない細胞同士の合体
によって,有性生殖が行われる現象。大腸菌では,遺伝子の
移行は一方的で,片方が供与体 (donor) ,他方が受容体
(recipient) として働く。
1213
接合子
せつごうし
zygote
2個の配偶子又は配偶子嚢が接合して生じた細胞。つまり受
精卵又はそれから生じた個体をいう。
1214
接合伝達
せつごうでんたつ
conjugal transfer
接合によって遺伝因子が一方から他方に移行する現象。ある
種のプラスミドは細胞と細胞の接触によって伝達される。F
因子,薬剤耐性因子(R因子)などがこの代表例。
1215
染色体異常
せんしょくたいい
じょう
chromosome
aberration
染色体の数や形に変化の起こる現象。数の変化には倍数性,
異数性がある。形の異常として欠失,転座,逆位,重複,挿
10
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
入,環状染色体などがある。
1216
染色体不稔性
せんしょくたいふ
ねんせい
chromosomal
sterility
正常な受粉が行われる交配において,親の染色体間の相同性
の欠如から生じる不稔性。植物の育種に利用されている。例
えば種なし西瓜や十字科の野菜の育種に応用されている。
1217
全能性
ぜんのうせい
totipotency
細胞,未受精卵及び発生初期の胚細胞が組織,器官に分化し,
個体を形成する能力を有すること。細胞は通常分化に従って
全能性を失う。
1218
相同染色体
そうどうせんしょ
くたい
homologous
chromosomes
同数の同一若しくは対立遺伝子が同じ順序に配列している1
対の染色体。2倍体の生物においては父方及び母方から由来
した形態の相等しい1対の染色体。
1219
早老病
そうろうびょう
progeria
ハッチンソン・ギルフォード症候群に代表される早期老化を
起こす遺伝性疾患。多くは循環器障害を起こし死亡する。
1220
組織適合(性)
抗原
そしきてきごう
(せい)こうげん
histocompatibility
antigen
動物の細胞膜表面にある,同種移植の正否を決定する抗原。
移植拒否反応は免疫現象であり,その主役は細胞性免疫であ
る。
1221
体細胞クローン
動物
たいさいぼうくろ
ーんどうぶつ
somatic cell
clone animal
体細胞の核を脱核した卵細胞に移植することによって作製さ
れたクローン動物。1997年にヒツジの乳腺の培養体細胞の核
を用いてドリーと呼ばれるクローン個体が作製された。
1222
体細胞変異
たいさいぼうへん
い
somatic
mutation
生殖細胞以外のすべての細胞(体細胞)に生じる突然変位。
放射線や化学物質などの変異原物質で処理して突然変異を誘
発するほか,細胞培養中に突然変異が生じることもある。育
種や高生産性細胞株の選抜などに利用される。
1223
代謝
たいしゃ
metabolism
生命活動を維持するため,生体又は細胞内で起こっている合
成・分解などすべての化学反応を総合した概念。
1224
代謝調節変異株
たいしゃちょうせ
つへんいかぶ
metabolic
regulatory
mutant
代謝産物の生合成は,その最終産物又はその関連物質による
主要生合成酵素の生成抑制と活性阻害によって制御されてい
るが,この制御が変化を受けた変異株の総称。工業微生物の
改良にしばしば用いられる。
1225
多数体/
倍数体
たすうたい/
ばいすうたい
polyploid
2組以上のゲノムをもった個体。ゲノムの重複はコルヒチン
などの薬剤処理で高頻度で起こすことができる。奇数倍数体
はしばしば稔性が低く,三倍体の種なし西瓜はこの原理によ
る。
1226
多糖
たとう
polysaccharide
数個以上の単糖分子が脱水縮合した構造をもつ物質。同一種
類の単糖から構成されるものは,単純多糖,異種のものは複
合多糖という。
1227
単クローン抗体
/モノクローナ
ル抗体
たんくろーんこう
たい/ものくろー
なるこうたい
monoclonal
antibody
単一な抗原決定基と反応する一次構造が均一な抗体で,細胞
融合で得られるハイブリドーマによって産生される抗体。特
異性の高いものを選ぶこと,均質な製品を作ること,大量生
産ができることなどの特徴がある。これに対して複数の抗原
決定基と反応するものをポリクローナル抗体という。
1228
単細胞たん白質
/SCP
たんさいぼうたん
ぱくしつ/えすし
ーぴー
single cell
protein
たん白質として利用することを目的として生産された微生物
又はその加工品。酵母,細菌,糸状菌,藻類等の微生物を殺
菌乾燥したもの又はそのたん白質を加工したもの。
1229
単純脂質
たんじゅんししつ
simple lipid
炭素,水素,酵素より構成される脂肪酸とアルコールとのエ
ステル。これらは一般にアセトンに可溶性である。
1230
単純たん白質
たんじゅんたんぱ
くしつ
simple protein
ポリペプチドのみからなるたん白質。溶解性に基づきアルブ
ミン,グルテリン,プロラミン,ヒストン,プロタミンなど
がある。
1231
担体(輸送物質
の)
たんたい(ゆそう
ぶっしつの)
carrier/support
細胞内,又は細胞間の輸送において生体膜若しくは体液中に
存在する物質の特異的輸送体。
11
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
1232
単糖
たんとう
monosaccharide
加水分解によってそれ以上簡単な分子にならない糖質で,少
糖及び多糖の構成単位となるもの。炭素数に応じてジオース,
トリオース,テトロース,ペントース,ヘキソース,ヘプト
ースなどと呼ぶ。
1233
たん白質
たんぱくしつ
protein
L-α−アミノ酸からなるポリペプチドが高次構造を形成した
ものを主要成分とする高分子物質。アミノ酸だけから構成さ
れているたん白質を単純たん白質,アミノ酸以外の構成成分
を含むものを複合たん白質という。
1234
沈降反応(免疫
反応の)
ちんこうはんのう
(めんえきはんの
うの)
precipitation
reaction
抗体と可溶性抗原とが特異的に作用して沈降物を作る反応。
抗原分子間が抗体で架橋され,順次大きな結合物となって沈
殿する。
1235
DNA/
デオキシリボ核
酸
でぃーえぬえー/
でおきしりぼかく
さん
deoxyribonucleic
acid
デオキシリボースを糖成分とする核酸。DNAは遺伝子の化学
的本体の一つである。
1236
テロメア/
テロメア仮説
てろめあ/
てろめあかせつ
telomere/telomere
hypothesis
直鎖状染色体の末端部分には数塩基(ヒトの場合6塩基)か
らなる繰り返し配列が存在し,特有のヘアピン構造をもつ。
この部分をテロメアという。テロメア長が細胞分裂ごとに短
縮し,テロメアの短縮に依存して細胞老化が生じるとする仮
説。
1237
伝達物質
でんたつぶっしつ
transmitter
シナプス(神経細胞同士又は神経細胞と筋細胞などが互いに
接触して機能的連結を行う場所)において,一方の神経細胞
から分泌されて他方の細胞に興奮性若しくは抑制性の効果を
伝える物質。アセチルコリン,アドレナリン,ドパミンなど
が知られている。
1238
同化作用
どうかさよう
anabolism
物質代謝において,原料物質の化学的複雑性を増加する合成
的な化学変化。ATPなどの形で蓄えられたエネルギーを利用
して,簡単な前駆体からたん白質,核酸,多糖,脂質などを
合成すること。
1239
糖鎖
とうさ
suger chain
細胞膜に存在するたん白質や脂質に結合している数種の単
糖,又はその複合体。
1240
糖脂質
とうししつ
glycolipid
細胞膜に存在する脂質のうち,糖鎖をもつもの。
1241
糖たん白質
とうたんぱくしつ
glycoprotein
ポリペプチドに糖質が共有結合したたん白質。生体を構成す
るほとんどのたん白質が糖たん白質として存在する。ムチン
や血清糖たん白質が代表例である。
1242
等電点
とうでんてん
isoelectric point
たん白質等の両性電解質において,分子の正味の電荷がゼロ
になるpH値。たん白質では等電点の近くで溶解度,安定性
などの特性が大きく変化することが多い。
1243
動物実験代替シ
ステム
どうぶつじっけん
だいたいしすてむ
alternative
systems to
animal testing
医薬品,化粧品,化学物質などの安全性評価に使用される動
物実験を代替する実験系。
1244
突然変異(体)
とつぜんへんい
(たい)
mutation (mutant)
遺伝子の塩基配列に変化が生じたためにもたらされる遺伝形
質の変化。変化したものを突然変異体という。
1245
トリソミー/
三染色体性
とりそみー/
さんせんしょくた
いせい
trisomy
異数体の1種で,相同染色体組の他に,どれかの染色体を1
個分余分にもつ個体又は細胞。ヒトではダウン症候群で第21
番目の染色体がトリソミーになっている。
1246
ドルトン/
ダルトン/
原子質量単位
どるとん/だると
ん/げんししつり
ょうたんい
dalton/
atomic mass
unit (a.m.u)
軽水素の相対原子質量を1とする単位。1ドルトンは1.66×
10−24(アボガドロ数の逆数)gに相当する。Daで示す。分子
量の概念が不適当な染色体,リボソームなどの質量を表す場
合にも用いる。1 atomic mass unit=1 dalton
1247
内分泌攪乱物質
ないぶんぴかくら
endocrine
環境中に偏在し,微量でホルモンと同じ作用を示すことで生
12
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
/環境ホルモン
んぶっしつ/かん
きょうほるもん
disrupting
chemicals/EDC
体内の内分泌系をかく(攪)乱する作用がある化学物質。ビ
スフェノールA,ダイオキシンなどがその例である。
1248
二次構造(たん
白質の)
にじこうぞう(た
んぱくしつの)
secondary structure
(of protein)
たん白質の立体構造において,ペプチド鎖のC=O基とNH
基との間の水素結合によって形成される比較的狭い範囲にみ
られる構造でα−ヘリックスやβシート構造などの規則的構
造。
1249
二重らせん(構
造)
にじゅうらせん
(こうぞう)
double helix
(structure)
核酸などにおいて2本の分子鎖が塩基対の水素結合で結合
し,ねじり合わされている構造。DNAの二重らせん構造が
WatsonとCrickによって発見され,その後の分子生物学の発
展の元になった。
1250
二倍体
にばいたい
diploid
生存に必要最小限の種固有な基本的染色体数の2倍に相当す
る染色体数をもつ細胞又は個体。高等生物の体細胞は通常二
倍体であり,減数分裂によって配偶子(半数体)を生じる。
動植物では四倍体になると花や実が大型化することが多い。
1251
認定宿主
にんていしゅくし
ゅ
authorized host
組換えDNA実験指針に記載の宿主,Escherichia coli K-12,
Bacillus subtilis Marburg strain, Saccharomyces cerevisiae及び動
物細胞を指す。これらは通常科学技術庁又は文部省に申請せ
ずに当該部署の安全委員会の許可によって組換え実験の宿主
として使用できる。この外13種の微生物についても限定され
たDNA供与体を用いる場合は認定宿主として扱える。
1252
ヌクレオソーム
ぬくれおそーむ
nucleosome/
nubody
真核生物の染色体の基本構成単位。8個のヒストン分子より
なる粒子を1巻き80塩基対のDNAが2巻きしている。
1253
ヌクレオチド
ぬくれおちど
nucleotide
プリン又はピリミジン塩基,糖,りん酸からなる化合物。リ
ボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドがある。
1254
能動輸送
のうどうゆそう
active transport
生体膜における,膜の両側の化学ポテンシャル(イオン輸送
の場合は電気化学ポテンシャル)の勾配に逆らう物質の輸送
機構。
1255
バイオインダス
トリー
ばいおいんだすと
りー
bioindustry
バイオテクノロジーに関連したあらゆる分野の産業。バイオ
テクノロジーに用いられる装置・器具などの周辺産業までも
含めていうことがある。発酵工業,医薬品,化学品,農林水
産畜産業,食品工業,エネルギー,廃棄物処理などを含む。
1256
バイオテクノロ
ジー
ばいおてくのろじ
ー
biotechnology
狭義には遺伝子の組換え技術及びその周辺技術。広義におい
ては,生物又はその機能を利用又は応用する技術。従来の発
酵技術や育種技術に加えて,遺伝子組換え技術,酵素工学技
術,細胞工学技術,発生工学技術,たん白質工学技術などを
含む。
1257
バイオハザード
/生物災害
ばいおはざーど/
せいぶつさいがい
biohazard
生物実験において起こる可能性のある生物学的災害。遺伝子
操作による異種遺伝子をもつ微生物や細胞による災害が危惧
されているが,本来病原性をもつ,又は生態系に悪影響を及
ぼすウイルスや生物が管理区域から漏れ出して,研究者や地
域住民に危害をもたらすこと。
1258
バイオマス
ばいおます
biomass
地球生物圏の物質循環系に組み込まれた生物体又は生物体か
ら派生する有機物の集積。太陽の光エネルギーが植物の光合
成作用によって物質の形に変換され,蓄えられたものが大部
分。目的に合う生物体を有効生産する(新種探索,品種改良)
と利用技術の開発としてエネルギー(アルコールの生産,メ
タン発酵),セルロース,リグニンの有効利用,化学工業原料
の生産などが挙げられる。
1259
バイオミメティ
クス/
ばいおみめてぃく
す/
biomimetics
生物の機能を人為的に模倣する技術。人工酵素,バイオチッ
プ、人工血液,人工臓器,人工骨などがこの分野にはいる。
13
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
生体模倣技術
せいたいもほうぎ
じゅつ
1260
架橋法
はしかけほう/
かきょうほう
cross-linking
method
生体触媒などを2個以上の官能基をもつ試薬で共有結合を形
成させ,不溶化する方法。トルエンジイソシアナート,シア
ニルクロライド,グルタールアルデヒドなどを用いて酵素と
担体を直接結合させる。
1261
発生工学
はっせいこうがく
embryo
engineering
発生初期段階のはい(胚)に核移植,外来遺伝子導入など人
為的操作を加え,個体発生や生命現象の解析を行うこと。
1262
半数体
はんすうたい
haploid
生物の生存に必要最小限の,種に固有な基本的染色体数をも
つ細胞又は個体。単為生殖をする生物では半数体が多い。
1263
半数致死量/
LD50
はんすうちしりょ
う/
えるでぃーふぃふ
てぃー
50% lethal dose
化学物質を投与した生物の半数が死亡すると推定される量。
生物種及び投与経路を必ず付記。化学物質の急性毒性の指標。
1264
ビタミン
びたみん
vitamin
動物体内で生合成できないが,生物が正常な代謝を保持し成
長していくのに必要な有機化合物の一群。ユビキノン,リポ
酸,オロット酸等のように細胞で合成できるビタミン様作用
物質も含まれる。
1265
必須アミノ酸
ひっすあみのさん
essential amino
acid
動物の生育や窒素平衡を維持するうえに不可欠なアミノ酸。
動物の種類・性別・年齢によってその種類が異なる。ヒトの
場合は,Val,lle,Leu,Thr,Lys,Met,Phe,Trp(いずれも
L型)の8種である。
1266
必須脂肪酸
ひっすしぼうさん
essential fatty
acid
人体内で合成できないため,食事又は静脈栄養法などで摂取
しなければならない脂肪酸。リノール酸,γ−リノレイン酸,
アラキドン酸を指す。これらはプロスタグランジンの前駆体。
1267
ヒト化抗体
ひとかこうたい
humanized
antibody
マウスの抗原結合部位 (CDR) の遺伝子配列だけをヒト抗体
遺伝子に移植したヒト様抗体。マウスの抗体部分が少ないた
め,ヒトへの投与により適している。
1268
V領域/可変部
/可変領域
ぶいりょういき/
かへんぶ/
かへんりょういき
variable region
免疫グロブリンのH及びL鎖のうち,抗原に結合する部位で,
抗原の種類に応じて様々に変化する。
1269
封入体
ふうにゅうたい
inclusion body
細胞内に蓄積された物質が特有の形態をもって存在する場
合,これを封入体という。遺伝子組換え体において,合成さ
れた異種たん白質が,大量に生産された場合にも封入体を形
成する。
1270
複合脂質
ふくごうししつ
complex lipid
単純脂質にりん酸や塩基などを含む脂質群。したがって親水
性部分と疎水性部分からなり,一般的にアセトンに難溶。
1271
複合たん白質
ふくごうたんぱく
しつ
conjugated
protein
ポリペプチド以外に他の有機物質や無機物質を含むたん白
質。糖たん白質,リポたん白質,金属たん白質などがある。
1272
複合糖質/
複合多糖
ふくごうとうしつ
/ふくごうたとう
complex
carbohydrate/
conjugated
polysaccharide/
glycoconjugate
糖質にポリペプチド又は脂質が共有結合した化合物。細胞表
面で,各種の抗原決定基群を形成したり,細胞間相互作用,
レセプター,細胞骨格物質などとして重要な役割を果たして
いる。
1273
復帰突然変異
ふっきとつぜんへ
んい
reverse mutation
突然変異体を再び親株又はそれに近い表現型に戻す突然変
異。
1274
不飽和脂肪酸
ふほうわしぼうさ
ん
unsaturated fatty
acid
二重結合又は三重結合を含む脂肪酸の総称。魚類,植物など
に多く含まれる。劣化されやすく保存に問題があるが,この
中には必す(須)脂肪酸が含まれる。
1275
フラクトオリゴ
ふらくとおりごと
fructo-
庶糖分子の果糖残基にさらに果糖残基が2〜4分子結合した
14
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
糖
う
oligosaccharide
糖。腸内のビフィズス菌の増殖を促進する。また虫歯の原因
になりにくいなどの特徴がある。
1276
フロイントアジ
ユバント
ふろいんとあじゅ
ばんと
Freundʼs adjuvant
流動パラフィンと表面活性剤を混ぜたもので,これに結核菌
死菌体を混ぜたものを完全フロイントアジュバント,加えな
いものを不完全フロイントアジュバントという。前者は細胞
性免疫を,後者は抗体産生を増強させるために用いる。
1277
プロスタグラン
ジン
ぷろすたぐらんじ
ん
prostaglandin
エイコサポリエン酸から動物組織で合成される生理活性物
質。プロスタン酸を基本構造とし,五員環部分につく酸素原
子と二重結合の違い,側鎖の二重結合の数によって分類され
る。血圧降下,気管支拡張,子宮収縮,血小板凝集抑制,脂
肪酸遊離抑制などの作用がある。
1278
分配係数
ぶんぱいけいすう
distribution
coefficient/parti-
tion coefficient
互いに溶け合わない2種類の液体が共存し,ここに溶質が溶
解し平衡に達しているときの二つの液体中の溶質の濃度比は
一定温度で一定である。この比を分配係数という。
1279
分泌たん白質
ぶんぴつたんぱく
しつ
secretory protein
細胞内で合成され細胞膜外へ分泌されるたん白質。多くの場
合そのたん白質のN末端側に疎水性アミノ酸に富むシグナル
配列を含む前駆体として生合成され,細胞膜通過の際シグナ
ル配列は切断され,成熟型として分泌される。
1280
ペプチド
ぺぷちど
peptide
ペプチド結合を含む化合物。狭義にはアミノ酸残基数が100
以下位のものをいう。
1281
ペプチドグリカ
ン
ぺぷちどぐりかん
peptidoglycan
糖鎖にペプチド鎖が結合した化合物。メタン菌のような始原
細菌などを除く,多くの原核生物の細胞壁成分である。
1282
ペプチド結合
ぺぷちどけつごう
peptide bond
2個のアミノ酸分子の間で,一方のカルボキシル基と他方の
アミノ基が脱水的に縮合することによって生じるアミド結
合。共鳴があるため,ほぼ平面構造をもつ。
1283
変異原
へんいげん
mutagen
突然変異を誘発する物理的又は化学的作用原。アルキル化剤,
アクリジン色素,γ線などがある。またトランスポゾンを挿入
する生物学的方法もある。
1284
変性(たん白質
の,DNAの)
へんせい(たんぱ
くしつの,でぃー
えぬえーの)
denaturation
(of protein)
高次構造が熱,化学薬品などで破壊されて物性が変化するこ
と。物性の変化は溶解度の減少,結晶性の喪失,生物活性の
喪失又は低下がその典型。変性たん白質のゲル濾過や電気泳
動は分子量の決定に用いられる。(→リホールディング)
1285
包接
ほうせつ
inclution
一つの原子又は分子の集合体の中に形成された空間中に特定
の化合物が決まった比率で存在する状態。シクロデキストリ
ン,クラウンエーテルなどが包接化合物の代表である。
1286
飽和脂肪酸
ほうわしぼうさん
saturated fatty acid
脂肪酸のうち脂肪族鎖が飽和のものを指す。分枝鎖を含む場
合は分枝脂肪酸,水酸基を含む場合はヒドロキシ脂肪酸と呼
ぶ。種子油,動物脂質中に多い。
1287
補体
ほたい
complement
感染,炎症反応,免疫反応などに動員されて,種々の生物学
的活性を発現する体液(主として血清)成分の総称。少なく
とも13個のたん白質が関与している。
1288
ホメオボックス
ほめおぼっくす
homeo box
ショウジョウバエのホメオティック遺伝子(体節における器
官形成に関与する遺伝子)の3領域に見つけられた約180塩
基からなる共通配列。ショウジョウバエからヒトまでに同様
の配列が見つけられ,これを含む遺伝子は発生過程を制御し
ていると考えられている。
1289
ポリエチレング
リコール
ぽりえちれんぐり
こーる
Polyethyleneg-
lycol/PEG
エチレングリコールが重合したポリマー。細胞融合を促進す
る物質として利用されている。融合させる種によって好適な
分子量に違いがある。
1290
ポリヌクレオチ
ぽりぬくれおちど
Polynucleotide
ヌクレオチドが30個程度以上重合したポリマー。
15
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
ド
1291
ポリペプチド
ぽりぺぷちど
Polypeptide
アミノ酸残基が30個程度以上結合したポリマー。たん白質と
の区別は必ずしも明確でないが,最近は高次元構造をもつポ
リペプチドをたん白質と呼ぶ傾向にある。
1292
ホルモン
ほるもん
hormone
生物の代謝又は活動作用を微量で調節する生物体内で合成さ
れる有機物の総称。特定の細胞が内外からの情報に応じて生
産・分泌し,体液を介して標的細胞に運ばれ,細胞膜のレセ
プターに結合して第2メッセンジャーの生産調節に関与する
もの,又は,細胞内若しくは核内のレセプターと結合して作
用するものがある。
1293
マーカーレスキ
ュウ
まーかーれすきゅ
う
marker rescue
2種類の不完全ウイルスがそれらのゲノム同士の組換え又は
再配列によって完全な感染性のあるウイルス粒子が回収され
る現象。
1294
ミスセンス変異
みすせんすへんい
missense mutation
突然変異によってコドンが変化して別のアミノ酸が取り込ま
れるような変異。アミノ酸が一つ置き代わるだけの変異なの
で一般に検出は難しいので,条件致死変異として検出する。
1295
無菌状態
むきんじょうたい
sterile condition
微生物がいない状態。殺菌・除菌によって達成できる。狭義
には病原菌のいない状態を指す。
1296
メディエーター
めでぃえーたー
mediater/
messenger
受容体とホルモンの結合によって発生した信号を伝達する物
質。細胞内メディエーター又はメッセンジャーとも呼ぶ。
cAMP,Ca2+などがある。
1297
免疫
めんえき
immunity
生体の内部環境に外来性又は内因性の異物が存在したとき,
それを排除しようとする機構。生物体が自己と非自己を識別
して,非自己を排除する機構である。細胞性と体液性の二つ
がある。
1298
免疫グロブリン
めんえきぐろぶり
ん
immunoglobulin
抗体及びこれと構造上・機能上の関連性のあるたん白質の総
称。イムノグロブリン (Ig) ともよばれ,IgG,IgM,IgA,IgE,
IgDのクラスに分類される。
1299
モノカイン
ものかいん
monokine
サイトカインの1種で,マクロファージが産生する生物学的
活性をもった可溶性因子。インターロイキン−1,TNF,顆粒
球・マクロファージコロニー刺激因子 (GM-CSF) などがその
例。
1300
ラジカル捕捉剤
らじかるほそくざ
い
radical
scavenger
短寿命のフリーラジカルと付加反応を起こし,不対電子が共
鳴安定化され,比較的長寿命のフリーラジカルになるような
不飽和結合をもつ反磁性化合物。ESRによるフリーラジカル
の解析に使用される。
1301
ラセミ化
らせみか
racemization
熱・光又は酸・塩基などの作用で,光学活性物質の一部がそ
の対掌体に変化することによって施光度を減少,又は,全く
失う光学不活化。
1302
リボソーム
りぼそーむ
ribosome
たん白質とRNAからなるたん白質の合成の場となる細胞質
内の顆粒。原核細胞では,沈降係数70Sの粒子で,50Sと30S
のサブユニットから成る。真核細胞では,80Sの粒子で,60S
と40Sのサブユニットからなる。
1303
リポたん白質
りぽたんぱくしつ
lipoprotein
脂質とたん白質の複合体の総称。広義には構造リポたん白質
(細胞膜,ミトコンドリア膜など)と可溶性リポたん白質(血
しょうリポたん白質,ミルクリポたん白質など)にわけられ
る。狭義には形態的に一定で,かつ一定の構成成分比をもつ
可溶性蛋リポたん白質をいう。
1304
リンフォカイン
りんふぉかいん
lymphokine
サイトカインの1種で,リンパ球が活性化されて放出する
種々の生物学的活性をもった可溶性因子の総称。マクロファ
16
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
ージ,リンパ球,好中球それぞれに作用するものが知られて
いる。インターロイキン−2,−3,−4,インターフェロン−
γなどがその例。
1305
レクチン
れくちん
lectin
自然界に広く分布する糖たん白質で,特異的な糖鎖構造を認
識し,結合するたん白質の総称。ただし,免疫学的産物を除
く。赤血球の血液型特異的凝集,ある種のガン細胞の特異的
凝集,リンパ球の分裂促進,細胞毒性などを示す。
1306
連鎖(遺伝子の) れんさ(いでんし
の)
linkage
同一染色体上の遺伝子群の結合。隣接する二つの遺伝子の間
にはスペーサーがあり,完全な連鎖はまれであり,組換えが
ある頻度で起こる。
1307
ロイコトリエン
/LT
ろいことりえん/
えるてぃ
leukotrienes/LT
分子中に三つの共役2重結合をもつ一群の化合物で,プロス
タグラニジンと同じ経路によって合成される。
1308
ワクチン
わくちん
vaccine
ある種の伝染病の予防又は治療のために使用される能動免疫
源の諸形態の総称。病原性を弱めた弱毒生ワクチン,病原体
を不活化した不活化ワクチンと病原体を含まず免疫を得るた
めに必要な成分からなるコンポーネントワクチンがある。
b) 酵素,たん白質
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
1401
アイソザイム/
イソ酵素
あいそざいむ/
いそこうそ
isozyme
同じ個体にあって,同じ反応を触媒する酵素群で,物理化学
的に異なる性質(例えば,電気泳動の移動度)を示すたん白
質分子。
1402
アポ酵素
あぽこうそ
apoenzyme
補酵素をもつ酵素(ホロ酵素)のたん白質部分。一般に酵素
分子をアポの状態にしたときには,本来もっていた活性は失
われる。
1403
アルカリホスフ
ァターゼ
あるかりほすふぁ
たーぜ
alkaline
phosphatase
最適pHをアルカリ側にもち,ほとんどすべてのりん酸モノ
エステル結合をほぼ同じ速度で分解する特異性の広い酵素
(EC3.1.3.1. )。
1404
異性化酵素/
イソメラーゼ
いせいかこうそ/
いそめらーぜ
isomerase
分子内の位置的又は構造的転換反応を触媒する酵素 (EC5.
□.□.□)。
1405
エキソペプチダ
ーゼ
えきそぺぷちだー
ぜ
exopeptidase
ペプチド鎖を末端残基から順次分解して,アミノ酸を遊離す
るプロテアーゼ。ジペプチドを遊離するものも含まれる。N
末端から作用するものとして,アミノペプチダーゼ,ジペプ
チジルペプチダーゼなど,C末端から作用するものとしてカ
ルボキシペプチダーゼなどがある (EC3.4.□.□)。
1406
S1ヌクレアーゼ えすわんぬくれあ
ーぜ
S1 nuclease/
endonuclease
S1 (Aspergillus)
Aspergillus oryzae由来の核酸分解酵素で,一本鎖核酸に特異
的で,DNA,RNAの区別はできない (EC3.1.30.1)。
1407
エンドヌクレア
ーゼ
えんどぬくれあー
ぜ
endonuclease
ポリヌクレオチド鎖の内部を切断する酵素。SIヌクレアーゼ,
制限酵素はこの酵素群の1種。様々の特異性を示すものが知
られていて核酸の解析,遺伝子操作などに利用されている
(EC3.1.30-31.□)。
1408
エンドペプチダ
ーゼ
えんどぺぷちだー
ぜ
endopeptidase
ペプチド結合鎖を内部側のペプチド結合で分解するプロテア
ーゼ。セリンプロテアーゼ,チオールプロテアーゼ,カルボ
キルプロテアーゼ,メタルプロテアーゼなどがある (EC3.4.
□.□)。
1409
加水分解酵素
かすいぶんかいこ
うそ
hydrolase
エステル結合,ペプチド結合,グルコシル結合などの加水分
解を触媒する酵素 (EC3.□.□.□)。
1410
活性中心(酵素
の)
かっせいちゅうし
ん(こうその)
active center (of
enzyme)
酵素分子上の触媒機能を発揮する部位。活性部位ともいう。
一般に分子表面に存在する明瞭な割れ目又はくぼみ構造部分
に活性中心が存在し,補酵素や補欠分子若しくは金属などが
17
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
含まれることもあるが,少数のアミノ酸残基が特異的空間配
置をとっている。
1411
活性半減期(酵
素の)
かっせいはんげん
き(こうその)
half-life
(of enzyme)
酵素活性が最初の値の半分に減少するのに要する時間。工業
用酵素の重要な指標の一つ。
1412
基質
きしつ
substrate
(1)酵素の作用を受けて化学的変化を受ける物質。
(2)代謝の出発物質。
1413
基質阻害
きしつそがい
substrate
inhibition
高濃度の基質によって,酵素の反応速度又は細胞などの代謝
速度が減少すること。
1414
基質特異性
きしつとくいせい
substrate
specificity
ある酵素が特定の基質にだけ作用し,特定の化学反応の触媒
作用を示すこと。特異性は基質分子が酵素分子の活性部位に
近接するとともに,活性部位の立体構造に変動を生じて,基
質と相補的な複合体形成をすると考えられている。
1415
競争阻害/
拮抗阻害
きょうそうそがい
/きっこうそがい
competitive
inhibition
阻害剤が酵素分子の基質結合部位と同じ部位に結合すること
によってもたらされる酵素反応速度の低下。阻害剤の分子構
造は基質のそれと類似している。
1416
菌体外酵素
きんたいがいこう
そ
extracellular
enzyme
微生物の細胞外に分泌される酵素。細胞内でシグナルペプチ
ドのついたプレたん白質として合成され,合成の途中から膜
を通過しはじめ,膜内にあるシグナルペプチダーゼ (signal
peptidase) によってシグナル部位が除かれる。
1417
菌体内酵素
きんたいないこう
そ
intracellular
enzyme
微生物の細胞外に分泌されず,細胞内に存在する酵素。
1418
酵素
こうそ
enzyme
選択的な触媒作用をもつたん白質などの生体高分子物質。多
くは単体で細胞内外で作用するが,複数個の酵素が複合体を
形成して触媒作用を行うものもある。
1419
酵素前駆体
こうそぜんくたい
proenzyme/
zymogen/
enzyme precursor
/ (preenzyme)
他の酵素又は自己の活性酵素作用によって,活性型に転換さ
れる酵素の母体。活性化にはプロテアーゼによって限定分解
やホスホリラーゼによるりん酸化などがある。さらにその前
駆体をpre-pro-enzymeという。
1420
酵素阻害剤
こうそそがいざい
enzyme inhibitor
酵素の反応速度を低下させる物質。種々の外来物質や基質ア
ナログなどが阻害剤として用いられる。
1421
酵素命名法
こうそめいめいほ
う
enzyme
nomenclature
国際生化学連合 (IUB) 及び国際純正応用化学連合 (IUPAC)
の酵素命名委員会が定めた酵素の命名に関する規則。酵素を
反応の種類によって6種に分類し,それぞれ酵素番号,推奨
名と系統名が決められている。
1422
抗体酵素
こうたいこうそ
catalytic antibody
抗原又はその類似化合物に対する反応に触媒作用をもつよう
にした抗体。
1423
国際単位(酵素
活性の)
こくさいたんい
(こうそかっせい
の)
international unit (of
enzyme activity)
国際生化学連合の酵素委員会で勧告された酵素活性を表す単
位。1ユニット (U) は1分間に1マイクロモルの基質を変換
する活性量。1カタール (kat) は1秒間に1モルの基質を変
換する活性量。
1424
固定化酵素
こていかこうそ
immobilized
enzyme
1)不溶性担体に酵素を共有結合,イオン結合,吸着などによ
って結合させる,2)酵素を互いに架橋させる,3)高分子の
網目構造の内部に酵素を包括するなどの方法によって不溶化
した酵素のこと。固定化したことの利点は,安定性の増加,
酵素の再利用と反応の連続化,反応生成物の純度と収率の向
上があげられる。
1425
最大速度
さいだいそくど
maximum elocity
酵素反応において,基質が過剰に存在する場合に与える反応
速度。ときには基質阻害を起こす酵素もあるので,最大速度
を求めるときには注意が必要である。Vmaxと略記。
1426
細胞壁溶解酵素
さいぼうへきよう
cell wall digesting
細胞壁を溶解してプロトプラストを作る酵素。リゾチーム,
18
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
かいこうそ
enzyme
セルラーゼ,ペリケナーゼなどがある。
1427
酸化還元酵素
さんかかんげんこ
うそ
oxidoreductase
酸化還元反応を触媒する酵素 (EC 1.□.□.□)。
1428
三次構造(たん
白質の)
さんじこうぞう
(たんぱくしつ
の)
tertiary tructure
(of protein)
ポリペプチド鎖のアミノ酸配列において,互いに離れたアミ
ノ酸残基同士の水素結合,ジスルフィド結合などによって二
次構造が折りたたまれた立体構造。三次構造の安定化は側鎖
間の相互作用によるもので,なかでも疎水結合が最も大きく
寄与する。ドメインがその具体例。
1429
酸素移動容量係
数
さんそいどうよう
りょうけいすう
oxygen-transfer
coefficient
酸素吸収液(又は培養液)単位体積当たりの気(相)液(相)
間の酸素移動速度に関する係数。移動係数KLと接触面積a
とで表現されるが,区別して測定することは困難なので,全
体 (KLa) として測定される。通気かくはん槽の場合通気量と
かくはん力によって変化する。
1430
残存活性
ざんぞんかっせい
remaining activity
各種処理を施した後に,その処理によって,失活せずに残っ
た酵素活性。
1431
失活
しっかつ
inacitivation
酵素が熱・酸などによってたん白質が高次構造をが破壊され,
酵素活性を失うこと。
1432
シャペロン/
分子シャペロン
しゃぺろん/ぶん
ししゃぺろん
chaperon/molec
ular chaperon
たん白質が機能を発現する立体構造の構築を助け,その最終
構築物内には残らないたん白質。たん白質質の合成直後,膜
透過時,高温などストレス環境下で働く。
1433
修飾酵素(DNA
の)
しゅうしょくこう
そ(でぃーえぬえ
ーの)
DNA
modification
enzyme
DNA上の特定の配列を認識して,特定の塩基(アデニン,シ
トシンなど)をそのコーディングを変えることなく修飾する
酵素。一般にメチル化が行われる。
1434
受容体/
レセプター
じゅようたい/
れせぷたー
(1)receptor
(2)recipient
(1)外来性の化学的又は物理的刺激を認識して,細胞に応答を
誘起するたん白質複合体。認識部位は酵素の活性中心のよう
に特異な立体構造をとっている。(2)遺伝子移行の受取り側。
1435
初速度
しょそくど
initial velocity
反応時間を零に外挿した時点での反応速度であり,反応が定
常状態になったときの反応速度と通常等しい。
1436
人工酵素
じんこうこうそ
synthetic enzyme/
artificial enzyme/
synzyme
酵素機能をもつ人工触媒。生体機能の模倣技術の一つで,天
然酵素のもつ基質特異性,反応特性,高効率性を備えること
が重要。広義には天然酵素を修飾した物も含まれる。
1437
生産物阻害
せいさんぶつそが
い
product inhibition
酵素の反応生成物が,その酵素が関与する反応速度を減少さ
せること。反応産物の酵素への親和性が強いとき,反応産物
が酵素から離れず,基質の酵素への結合を阻害する。
1438
生体触媒
せいたいしょくば
い
biocatalyst
反応を触媒する機能をもつ生体又は生体由来のもの。
1439
ターミナルトラ
ンスフェラーゼ
/末端転移酵素
たーみなるとらん
すふぇらーぜ/
まったんてんいこ
うそ
terminal
transferase
1本鎖DNA又は3ʼ末端が1本鎖として突出している2本鎖
DNAの3ʼ末端ヌクレオシドの3ʼOH基にヌクレオチドを一つ
一つ添加していく反応を触媒する酵素。突出末端を付加する
ために重要 (EC2.7.7.31)。
1440
多機能酵素
たきのうこうそ
multifunctional
enzyme
2種以上の反応特異性を示す酵素。
1441
脱共役剤/除共
役剤
だつきょうやくざ
い/じょきょう
やくざい
uncoupler
酸化的りん酸化反応において,酵素呼吸を阻害せずにりん酸
化だけを阻害する化合物。CCCP(カルボニルシアニドm-ク
ロロフェニルヒドラゾン)やDNP(2, 4-ジニトロフェノール)
などがその例である。
1442
Taqポリメラー
ゼ
たっくぽりめらー
ぜ
Taq polymerase
耐熱性DNA合成酵素の一つで,Thermus aquaticusから精製さ
れた。PCRに使用される (EC2.7.7.□)。
1443
治療用酵素
ちりょうようこう
そ
therapeutic
enzymes
遺伝疾患による酵素の欠損を補う治療薬として用いられる酵
素又はその製剤。
19
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
1444
DNAポリメラ
ーゼ/DNA合
成酵素
でぃーえぬえーぽ
りめらーぜ/でぃ
ーえぬえーごうせ
いこうそ
DNA polymerase
デオキシヌクレオチド三りん酸を基質として鋳型DNAの塩
基配列に相補的DNA鎖の合成を触媒する酵素 (EC2.7.7.7)。
1445
テロメラーゼ
てろめらーぜ
telomerase
すべての自己複製能をもつ線状染色体に必要な末端構造物で
あるテロメアの繰返し配列の合成に関与する酵素。正常体細
胞では発現していないが,多くのガン細胞では発現しており,
細胞不死化に関係する(→テロメア)。
1446
転移酵素
てんいこうそ
transferase
供与体から受容体に,メチル基やグルコシル基などを含む基
を転移する酵素 (EC2.□.□.□)。
1447
ドメイン(たん
白質の)
どめいん(たんぱ
くしつの)
domain
生体高分子特にたん白質の構造上又は機能上のまとまりをも
つ領域。
1448
比活性
ひかっせい
specific activity
単位重量の酵素分子あたりの活性。酵素1mg当たりの酵素活
性の単位で与えられる。各酵素に固有の値であり,精製の過
程で,純度の指標としても用いられる。
1449
非きっ抗阻害/
非競争阻害
ひきっこうそがい
/ひきょうそうそ
がい
noncompetitive
inhibition
阻害剤が酵素分子の基質結合部位と異なる部位に結合するこ
とによってもたらされる酵素反応速度の低下。
1450
フィードバック
阻害
ふぃーどばっくそ
がい
feedback
inhibition
生合成又は代謝経路の最終産物が,その経路の初段階又は途
中の酵素反応を阻害する現象。最終産物は酵素の制御部位を
変化させるように働いて作用を表す。
1451
不拮抗阻害/
反競争阻害
ふきっこうそがい
/はんきょうそう
そがい
uncompetitive
inhibition
阻害剤が遊離の酵素と結合せず,酵素一基質複合体と結合し
て不活性な複合体を形成することによって起こる阻害。
1452
プロテアーゼ/
プロティナーゼ
/たん白質分解
酵素
ぷろてあーぜ/
ぷろてぃなーぜ/
たんぱくしつぶん
かいこうそ
protease/
proteinase
たん白質を加水分解する酵素。その生理的意義には,栄養素
としてのたん白質をアミノ酸に消化する,使用済みの酵素を
分解する,不活性な前駆体を活性化する,などがある (EC3.3.
□.□)。
1453
プロテインエン
ジニアリング/
たん白質工学
ぷろていんえんじ
にありんぐ/
たんぱくしつこう
がく
protein
engineering
自然界にあるたん白質の構造と機能の関係を解明し,目的に
かなったたん白質を設計して新しいたん白質を創り出す技
術。
1454
プロテインホー
ルディング
ぷろていんほーる
でぃんぐ
folding of protein
ポリペプチドが折りたたまれて高次構造をとること。オリゴ
マー酵素では異種のサブユニットが四次の構造をとることも
含める。
1455
プロテインリホ
ールディング/
たん白質の再生
ぷろていんりほー
るでぃんぐ/
たんぱくしつのさ
いせい
refolding of
protein
変性したたん白質からもとの高次構造を回復し,再びもとの
生物活性等をもつたん白質を得ること。尿素,塩酸グアニジ
ンなどの変性剤を除去又は希釈して,25〜30℃でゆっくりと
行う。オリゴマー酵素の場合異種のサブユニットが正しく会
合して元の構造を復元すること。
1456
分子活性
ぶんしかっせい
molecular activity
酵素1分子が単位時間に変換する(反応励起する)基質分子
数。古くは代謝回転数,ターンオーバー数 (turnover number)
ともよばれた。
1457
分子設計
ぶんしせっけい
molecular design
コンピューターグラフィックスなどを活用して分子の構造活
性相関を解明し,新しい分子を設計すること。低分子の薬剤
の開発やたん白質の設計に応用されている。
1458
βシート/
βプリーツ
べーたーしーと/
べーたーぷりーつ
β-sheet
たん白質やポリペプチドがもつ二重構造の一つで,ひだ状の
構造のこと。βプリーツ (pleats) とも呼ばれる。Val,Ile,Thr,
Phe,Tyr,Trpはβシートを形成しやすい。
1459
補欠分子族/補
ほけつぶんしぞく
prosthetic group
酵素において活性発現に不可欠なアミノ酸以外の成分で,た
20
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
因子
/ほいんし
ん白質と比較的強く結合(共有結合及び非共有結合)してい
る因子,チトクロームCのヘムやアセチルCoAカルボキシラ
ーゼのビオチンなどがその例である。
1460
補酵素
ほこうそ
coenzyme
ホロ酵素を構成する部分のうちの補欠分子部。S−アデノシル
メチオニン,テトラヒドロ葉酸,CoAなどがその例である。
1461
ミカエリス定数
/ミハエリス定
数/Km/KM
みかえりすていす
う/みはえりすて
いすう/けーえむ
/けーえむ
Michaelis
constant
酵素反応における酵素基質複合体形成の平衡定数。初速度が
最大速度Vmaxの1/2になるときの基質濃度と定義され,酵素
と基質との親和性を表す。
1462
誘導酵素
ゆうどうこうそ
inducible enzyme/
adaptive enzyme
特定の物質によって細胞内での合成を促進される酵素。基質
(特定の物質)の存在しない状態では発現が抑制されていた
遺伝子が,特定の物質の存在によって抑制が解除されて,細
胞内の酵素合成速度が促進される。
1463
四次構造(たん
白質の)
よじこうぞう(た
んぱくしつの)
quartenary
structure
三次構造をもつ複数のポリペプチド鎖が非共有結合で会合し
て,一つの機能をもったたん白質分子を形成する立体構造。
1464
ラセミ化酵素/
ラセマーゼ
らせみかこうそ/
らせまーぜ
racemase
D異性体又はL異性体のいずれかを基質として,ラセミ体を
生じる反応を触媒する酵素 (EC5.1.□.□.)。
1465
リアーゼ
りあーぜ
lyase
基質から一基質反応によってある基を脱離させ,二重結合を
残す反応又はその逆反応を触媒する酵素 (EC4.□.□.□)。
1466
リガーゼ/
合成酵素
りがーぜ/
ごうせいこうそ
ligase/synthetase
ATPその他のピロりん酸結合の開裂と共役して,二つの分子
を結び付ける酵素 (EC.6.□.□.□)。
1467
リガンド
りがんど
ligand
たん白質と特異的に結合する物質の総称。酵素に結合する基
質,調節因子,補酵素や細胞膜上に存在するレセプターと結
合するレクチン,ホルモンなどを指す。アフィニティクロマ
トグラフィーにおいて特異的吸着をさせるために支持体につ
ける化合物もリガンドと呼ぶ。
c) 微生物,微生物工学
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
1501
アグロバクテリ
ウム
あぐろばくてりう
む
Agrobacterium
土壌中のグラム陰性好気性かん菌。Agrobacterium tumefaciens
は植物に感染して腫瘍(Crown gall,クラウンゴール)を作る。
この菌のTiプラスミドの一部は植物染色体に組み込まれるの
で,植物遺伝子操作の重要なベクターである。一方,A.
rhizogenesのRiプラスミド (root inducing plasmid) は感染した
植物に毛状根を形成させるほかベクターとしても利用でき
る。
1502
アナログ耐性変
異株
あなろぐたいせい
へんいかぶ
analog (ue)
resistant mutant
正常な代謝産物と同様の制御作用を示すが,栄養源とならず
生育阻害作用を示す物質に対して抵抗性を示す変異株。生合
成酵素系の調節機構が脱感作されたことを利用して工業微生
物の改良にも応用される。
1503
ウイルス
ういるす
virus
独立に増殖できず,宿主細胞内でだけ複製,増殖が可能な
DNA又はRNAを含む細胞より小さな伝染性病原体の総称。
1504
ウイロイド
ういろいど
viroid
コートたん白質をもたないむき出しの環状RNAからなるウ
イルス様物質。高等植物のウイロイド感染症が知られている。
1505
栄養要求性変異
株
えいようようきゅ
うせいへんいかぶ
auxotrophic
mutant
野生株には必要でない栄養素を生育のために必要とする突然
変異株。原栄養株 (prototroph) に対する言葉。生合成経路の
一部が遮断されたため栄養要求性になることを利用して,ア
ミノ酸,有機酸などを工業的に生産するためにも応用されて
いる。
1506
温度感受性変異
株
おんどかんじゅせ
いへんいかぶ
temperature-
sensitive mutant
ある一定の温度では野生株と同様に生育するが,その温度を
超えるか下がるかすると,野生株と違った性質を示す変異株
21
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
の総称。条件致死変異株なので生体にとって不可欠な遺伝子
の研究に利用できる。
1507
菌株
きんかぶ
strain
安定で均一な遺伝形質を持つ微生物群。
1508
菌根
きんこん
mycorrhiza
植物の根に真菌類が共生しているものを指す。マツタケはア
カマツに菌根を形成しなければきのこ(子実体)を生じない。
1509
クローニング
くろーにんぐ
cloning
(1)異なる遺伝子型をもつ混合集団から,特定の遺伝子型をも
つ均一の細胞又は個体群を作り出すこと。
(2)不特定多数のDNA断片をベクターに挿入した組換え体
DNAを宿主に導入して得られたコロニー又はプラークから
目的のDNA断片をもつものを検出し,そのDNAを単離する
こと。
1510
原栄養株
げんえいようかぶ
prototroph
野生株の要求する栄養素以外の物を生育のために必要としな
い株。変異株であっても栄養要求性に変化の無いものは原栄
養株である。
1511
原核生物
げんかくせいぶつ
prokaryote
核膜がなく,染色体構造の認められないほとんど裸のDNA
分子からなり,有糸分裂を行わない核様体をもつ細胞で構成
される生物。藍藻類と細胞がこれに属する。
1512
嫌気(性)細菌
けんき(せい)さ
いきん
anaerobic bacteria
酸素の存在の下では生存が困難,又は不可能な細胞。酸素の
存在下では生育できないものを偏性嫌気性細胞 (obligate
anaerobe),酸素の存在下でも生育できるものは通性嫌気性細
胞 (facultative anaerobe) と呼ぶ。
1513
好アルカリ性菌
こうあるかりせい
きん
alkalophilic
bacteria
pH9-10又はそれ以上に最適生育領域をもつ細菌。好アルカリ
性菌の菌体外酵素は高アルカリ性領域に最適pHをもってい
るが,菌体内酵素は中性ないし微アルカリ性に最適pHをも
つものが多い。
1514
好塩菌
こうえんきん
halophilic bacteria/
halophil
約1.2%又はそれ以上の食塩濃度の培地が発育に好適な細菌。
高塩濃度でも生育できるが,最適濃度が低いものは耐塩性菌
と呼ぶ。食中毒の起因菌が含まれる。
1515
好気性(細)菌
こうきせい(さい)
きん
aerobic bacteria/
aerobe
酸素のない状態では生存が困難又は不可能な細菌。酸素がな
いと全く生育できないものは偏性好気性細菌 (obligate
aerobe) と呼び,酸素分圧が0.2気圧よりも低い条件でよく生
育するものは微好気性細菌と呼ぶ。
1516
好熱菌/高温菌
こうねつきん/
こうおんきん
thermophil/
thermophilic
bacteria
45℃以上で生育し,30℃以下では生育しない細菌。75℃以上
でも生育できるものは高度高熱菌とよび,それ以下のものは
中等度高熱菌と呼ぶ。又常温でも生育できるものは通性好熱
菌と,高温でだけ生育できるものを偏性好熱菌と呼ぶことも
ある(参考 好中温性30〜40℃)。
1517
酵母
こうぼ
yeast
生活環の大部分が単細胞であり,主として出芽によって増殖
する真菌類の総称。古来より酒,醤油など発酵醸造に広く用
いられている。
1518
好冷菌
こうれいきん
psychrophil
発育増殖の上限温度が約20℃である細菌群。耐寒性とは区別
する。
1519
枯草菌
こそうきん
Bacillus subtilis
胞子を形成する好気性のグラム陽性かん菌で,バチルス属細
菌の一種。人や動物に病原性がなく,比較的容易に形質転換
することから,特にMarburg株は遺伝子操作の宿主として大
腸菌,酵母などとともに重要である。類縁菌のBacillus natto,
Bacillus amyloliquefaciensは,工業微生物として重要である。
1520
根粒菌
こんりゅうきん
leguminous
bacteria/root
nodule bacteria
マメ科植物の根に侵入して,共生型の根粒を形成する好気性
細菌。比較的高い宿主特異性を示し,窒素固定能をもってい
る。Rhizobium属のに属するグラム陰性細菌である。
22
K 3600 : 2000
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
1521
細菌
さいきん
bacteria
原核微生物の内,藍藻と放線菌を除いた微生物群。その多く
は単細胞で,増殖は一般に二分裂によるが,発芽,不均等な
分裂などをするものもある。
1522
最小阻止濃度/
MIC
さいしょうそしの
うど/えむあいし
ー
minimum
inhibitory
concentration
/MIC
微生物に対する抗菌性物質の感受性試験において,微生物の
発育を阻止し得る抗菌性物質の最小濃度。抗菌性物質の特性
指標として重要。
1523
始原菌/古細菌
しげんきん/こさ
いきん
archaebacteria/
archae
リボゾームの小サブユニットRNAの塩基配列に基づく生物
の分類で真核生物,真正細菌と並ぶ微生物群であり,メタン
細菌,好塩菌,超好熱菌などが含まれる。細胞膜がエーテル
脂質からなり,イントロンをもつなど真正細菌より真核生物
に近い性質をもつ。
1524
指標(菌)株
しひょう(きん)
かぶ
biological
indicator
(cell) strain
(1)力価の定量などの標準となる(菌)株
(2)食品若しくは環境における汚染の程度の指標となる菌株。
例えば,水質汚染の指標菌として大腸菌がある。
1525
従属栄養細菌
じゅうぞくえいよ
うさいきん
heterotrophic
bacteria
細胞に必要な栄養素を一部しか合成できない細菌。光化学反
応を利用してエネルギーを得る緑色非硫黄細菌などの光従属
栄養細菌と化学的暗反応を利用してエネルギーを得るその他
の大部分の細菌が属する化学従属栄養細菌(有機栄養細菌)
に分けられる。
1526
腫瘍ウイルス/
オンコウイルス
しゅようういるす
/おんこういるす
tumor virus
造腫瘍性のウイルス。DNAをもつものとして,SV40,
papilloma virus, polyoma virus, adenovirusなどがある。RNAを
もつものとしてオンコウイルスと呼ぶものがあり,oncovirus,
Rous sarcoma virus, avian leukosis virus, mouse mammary tumor
virus, murine leukemia virus, humanT-cell lympho-tropic virus
(HTLV−I) などがある。
1527
真菌
しんきん
fungi
細菌を除く,粘菌・カビ・酵母などの真核微生物。分化した
細菌小器官と典型的な核をもつ大型の細胞からなる点で原核
生物である細菌と異なり,細胞壁構成多糖と光合成できない
点で藻類と異なり,細胞壁を欠く点で原虫と異なる。
1528
水素細菌
すいそさいきん
hydrogen bacteria
水素と酸素との反応エネルギーを利用して生育できる細菌。
1529
耐性菌/
抵抗性菌
たいせいきん/
ていこうせいきん
resistant bacteria/
resistant organism
生存に不利な環境条件,薬剤作用,ファージ感染などに耐性
を示す微生物。ファージ耐性やある種の薬剤耐性等の性質に
よっては工業的に有用なものもある。
1530
大腸菌
だいちょうきん
Escherichia coli
ヒトを含めて,ほ乳類などの結腸を主な寄生場所とする細菌。
通性嫌気性グラム陰性かん菌。K12株は,寄生性,定着性,
病原性がないので遺伝子操作の宿主として広く用いられてい
る。既にヒトインシュリン,インターフェロンなどがK12の
組換え株を用いて工業生産されている。
1531
独立栄養細菌
どくりつえいよう
さいきん
autotrophic
bacteria
細菌内のすべての有機代謝物質を無機物から合成できる細
菌。細胞のもつ光化学反応系でエネルギーを得て,炭酸同化
に利用するものを光独立栄養細菌,化学的暗反応を利用して
エネルギーを得るものを化学独立栄養細菌という。
1532
粘菌類/
変形菌類
ねんきんるい/
へんけいきんるい
myxomycetes
変形体といわれるアメーバ状の栄養体は組織を形成せず裸出
した原形質からなり多数の核を含み,塊状,樹枝状など不規
則な形状をなす菌類。
1533
微生物
びせいぶつ
microorganism/
microbe
藻類,酵母,カビ,細菌,リケッチア,ウイルスなどに対す
る便宜的な総称。原虫なども微生物に含まれる。
1534
氷核細菌
ひょうかくさいき
ん
ice-uncleation
active bacteria
葉の表面で,霜の核となるたん白質を細胞表面にもつ霜害の
原因になる細菌。その一つ,Pseudomonas syringaeの氷核遺伝
23
K 3600 : 2000
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
子が単離され,また,この遺伝子を除いた組換え体は最初の
野外実験計画として有名。一方氷核形成能のない天然変異株
は霜害防止剤として,形成能のあるものは人工雪増量剤とし
て市販されている。
1535
(バクテリオ)
ファージ
(ばくてりお)ふ
ぁーじ
(bacterio)phage
細菌に感染して増殖するウイルス。遺伝子操作においてベク
ターとしても利用されている。RNA及びDNAファージがあ
る。
1536
不完全ウイルス
/欠陥ウイルス
ふかんぜんういる
す/けっかんうい
るす
defective virus
増殖能がなく,かつ,もとの完全ウイルスの増殖を阻害(干
渉)するウイルス。
1537
ヘルパーウイル
ス
へるぱーういるす
helper virus
増殖能を欠いた不完全なウイルスの存続を助けるウイルスの
総称。トリやネズミの肉腫ウイルスにたいする白血病ウイル
ス,サルの細菌でのヒトアデノウイルスの増殖を助けるSV40
がその例である。
1538
胞子/芽胞
ほうし/がほう
spore
生物が有性又は無性生殖の手段として形成する休止期にある
小体。胞子は一般に耐久性がある。
1539
放線菌
ほうせんきん
actinomycetes
主に土壌中に存在する菌糸状形態を取る細菌の総称。DNAの
GC含量は70mol%以上で,一般の細菌よりも高い。特に抗生
物質の生産菌として工業的に重要である。
1540
マイコプラズマ
まいこぷらずま
mycoplasma
125〜250nmの大きさで,細胞壁がなく,3層からなる細胞膜
で覆われている。完全合成培地で増殖できる最小の微生物。
1541
マクロファージ
/貪食細胞
まくろふぁーじ/
どんしょくさいぼ
う
macrophage
大きな骨髄由来の貪食細胞で,異物排除のほかに特異的免疫
において抗原情報をT細胞に伝えたり,活性化を促す。又炎
症反応においてのエフェクター細胞として働く。
1542
Muファージ
みゅーふぁーじ
μ-phage
大腸菌K12株に見いだされた2本鎖DNAをもつtemperate
phageの1種。挿入配列 (IS) と同種の性質があり,遺伝子解
析の重要な手段を提供している。
1543
メタン細菌
めたんさいきん
methane bacteria/
methanogen
嫌気下にメタンを生成する偏性嫌気菌。水素と二酸化炭素を
気相とする条件を好んで生育するが,ギ酸も利用できる。メ
タン細菌は古細菌に属する独立栄養細菌である。
1544
野生株
やせいかぶ
wild-type strain/
prototroph
自然界で最も高頻度に出現する表現型をもつ個体,微生物遺
伝学では原栄養株ともいう。原株の意味で用いられることも
多い。
1545
溶菌
ようきん
bacteriolysis
ファージの作用又は補体の存在下における免疫反応による細
菌細胞の破壊と溶解。ある抗生物質がその作用する微生物の
菌体を溶解して死滅させるとき,その抗生物質は溶菌作用が
あるといい,生育を止める作用しかないものを静菌
(bacterio-static) 抗生物質という。
1546
溶原菌
ようげんきん
lysogenic bacteria
溶原ファージをもち,当該ファージに抵抗性を示す宿主。
1547
溶原ファージ
ようげんふぁーじ
lysogenic phage
ファージゲノムを宿主の染色体に組み込み,その一部として
複製するバクテリオファージ。染色体に組み込まれることを
溶原化と呼び,この状態のファージをプロファージと呼ぶ。
溶原化したプロファージは自然誘発,紫外線照射で誘発され
て溶菌に向かい,子ファージが産生される。
1548
λファージ
らむだーふぁーじ
lambda phage
大腸菌K12株に見いだされた2本鎖DNAをもつtemperate
phageの1種。最もよく研究されているファージの一つでも
あり,また遺伝子操作でもベクターとして広く利用されてい
る。インビトロパッケージングにも用いられる。
1549
レトロウイルス
れとろういるす
retrovirus
RNAウイルスの1種で,遺伝子RNAを粒子内に存在する逆
転写酵素の働きでDNAに変換する生活環をもつ。逆転写酵
24
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
素の働きで合成されたDNAの一部は宿主のDNAの中へ挿入
され,プロウイルスとなる。oncoviruses(腫瘍ウイルス),
lentiviruses(HIVなど),spumaviruses(持続感染ウイルス)に
分けられる。
d) 動物細胞,植物細胞,細胞工学
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
1601
ES細胞/
胚幹細胞
いーえすさいぼう
/はいかんさいぼ
う
embryonic stem
cell/ESC/EK cell
マウス初期胚から得られたEC細胞によく似た細胞。テラト
カルシノーマを得る簡便法。
1602
EC細胞
いーしーさいぼう
embryo carcinoma
cell/EC cell
異常に増殖するがん(癌)の性質と細胞分化する性質を兼ね
備えている細胞。テラトカルシノーマはこの細胞に由来する。
1603
SV40
えすぶいふぉーて
ぃ
SV40/simian
virus 40
二本鎖DNAをもつ腫瘍ウイルス。げっし類の新生児に腫瘍
をつくる。サルの細胞内で増殖するが,ハムスター,マウス,
ウサギなどの細胞ではトランスフォメーション(形質転換)
を起こす。また動物細胞系のベクターとしても利用されてい
る。
1604
HIV
えっちあいぶい
human
immunodeficiency
virus
AIDS(後天性免疫不全症候群)の原因となるウイルス。レト
ロウイルスの中で最大である。
1605
NK細胞
えぬけいさいぼう
natural killer cell
抗原感作をしていない正常動物に存在するリンパ球で,非特
異的に腫瘍細胞やウイルス感染細胞を傷害するリンパ球。
1606
エフェクター細
胞
えふぇくたーさい
ぼう
effecter cell
反応を担当する細胞。細胞性細胞傷害反応を担当する細胞(キ
ラー細胞など)。
1607
L-細胞/
L株細胞
えるさいぼう/
えるかぶさいぼう
L-cell/strain L
正常な雄マウスの皮下組織から分離され,継代培養された培
養細胞株。変異を誘導しやすいので,様々な変異株が知られ
ている。動物細胞の宿主ベクター系としても利用されている。
1608
幹細胞
かんさいぼう
stem cell
動物のいろいろな組織中にあって,分化した細胞を補給する
際のもとになる幼若未分化の親細胞。幹細胞は分化せずに自
己再生できる。
1609
グラム染色
ぐらむせんしょく
Gramʼs staining
クリスタルバイオレットで染色し,ヨード液で媒染後アルコ
ールで脱色したとき,脱色されるかどうかで判定する細菌分
類上の手法。細胞表層構造の差異によるものと考えられてい
る。細菌はグラム陽又は陰の二つに分けることができる。
1610
形質細胞
けいしつさいぼう
plasma cell
骨髄由来の分化したBリンパ細胞で,抗体を分泌する。小さ
な核と発達した粗面小胞体をもつ。
1611
好酸球
こうさんきゅう
acidophil/
eosinophil/acido-
philic leucocyte
塩基性たん白質を含む顆粒球をもつ多形核白血球。炎症反応
を仲介すると考えられている。血流中の白血球の約1〜3%を
占める。
1612
好中球
こうちゅうきゅう
neutrophil/neutro-
phil leukocyte
中性の顆粒球を含む多形核白血球。旺盛な貪食作用を示す。
全白血球の約55〜65%を占める。
1613
コンピテント細
胞
こんぴてんとさい
ぼう
competent cell
外来のDNAを取り込み得る状態になった細胞。組換えDNA
などを取り込ませるために利用されている。発生学では特定
の分化誘導刺激に応じて一定の分化をする能力のある細胞を
指すこともある。
1614
再構成細胞
さいこうせいさい
ぼう
reconstituted cell
融合させたい細胞A,Bのうち,Aの核とBの細胞質体とを
融合したもの。核外にあるミトコンドリアDNAなどの作用
を判定するよい実験系である。サイトプラストとカリオプラ
ストを融合させたもの。
1615
細胞
さいぼう
cell
生体内を構成する単位。外界を隔絶する膜で囲まれ,内部に
自己再生能を備えた遺伝情報とその発現機構をもつ生命体。
25
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
はっきりした核をもつ真核細胞とはっきりしない原核細胞が
ある。
1616
細胞株
さいぼうかぶ
cell line
選択又はクローニングによって細胞系から分離された特異な
性質あるいは遺伝的標識をもつ培養細胞系。
1617
細胞工学
さいぼうこうがく
cell technology/
cell engineering
主として培養細胞を材料として,細胞融合,細胞内へDNA
を注入するなどして細胞自体を操作する手法。新しい細胞株
の造成や有用産物の生産を目的とする。
1618
CHO細胞
しーえいちおーさ
いぼう
chinese hamster
ovary cell
チャイニーズハムスター卵巣組織から分離された繊維芽細胞
株。付着性の細胞であるが,浮遊状態でも生育できる。ヒト
由来の生理活性物質(エリスロポエチンなど)の工業生産に
も利用されている。
1619
食細胞
しょくさいぼう
phagocyte
細菌,原生動物,死んだ組織細胞,異物などを摂取し,消化
する能力をもった細胞の総称。血流中にある多形核白血球と
単球,そして組織中に存在するマクロファージがある。
1620
線維芽細胞/
繊維芽細胞
せんいがさいぼう
fibroblast
動物のほとんどすべての組織中にある中胚葉由来の細胞で,
組織培養系では紡錘形をなしてよく増殖する。
1621
藻類
そうるい
algae
水中で光合成によって独立栄養生活をする下等植物の総称。
クロレラ,スピルリナ等が代表例。
1622
多分化能
たぶんかのう
pluripotency
胚の一部又は細胞が,種々の種類の細胞に分化する能力をも
っていること。造血幹細胞は赤血球,白血球,マクロファー
ジなどに分化する多分化能をもっている。分化して個体まで
造れる能力を全分化能 (totipotency) という。
1623
単球
たんきゅう
moneocyte/
mononuclear
leucocyte
血流中にある貪食能をもった単核白血球。組織内に移入する
とマクロファージとなる。
1624
T細胞/
Tリンパ球
てぃーさいぼう/
てぃーりんぱきゅ
う
T−cell/
T lymphocyte
胸腺に由来するリンパ球。抗体は産生しないが,抗体産生の
調節と標的細胞の傷害を担う。T細胞にはその機能から,B
細胞の抗体産生を促進するヘルパーT細胞,抑制するサップ
レッサーT細胞,特異的に標的細胞を傷害するキラーT細胞,
遅延型アレルギーにかかわるDTHエフェクターT細胞に分け
られる。
1625
胚移植
はいいしょく
embryo transfer
培養された胚又は他の雌の胚を,発生段階に応じて別の雌の
卵管,又は子宮に移して個体を誕生させる技術。
1626
白血球
はっけっきゅう
leukocyte
核と細胞質を備えた細胞で,形態及び染色性から好塩基顆粒
球,好酸球,好中球,リンパ球及び単球に分かれる。
1627
BHK細胞
びーえっちけーさ
いぼう
BHK cell/
CHO cell
生後1日目のシリアン(ゴールデン)ハムスターの腎臓より
培養,その後繊維芽細胞株クローンとして分離された細胞系
統。染色体が安定なため,CHO細胞株とともに,有用物質の
生産に多く使用されている。
1628
B細胞
/Bリンパ球
びーさいぼう/び
ーりんぱきゅう
B-cell/
Blymphocyte
骨髄由来の抗体産生細胞。幼若なB細胞の表面上のレセプタ
ーに抗原が結合すると活性を受けて,RNA合成が増加する。
次いでB細胞増殖分化因子に対するレセプターができて増殖
が始まる。これにさらにB細胞分化因子が働いて大量の抗体
を産生する細胞に分化する。
1629
比速度
ひそくど
specific rate
生物とくに微生物の生理活性を表す1種の反応速度を言う。
単位微生物量,単位時間当たりの対象とする物質の変化量で
表現される。例えば,微生物の比増殖速度,基質の比消費速
度,酸素の比呼吸速度などがある。酵素の場合は,比活性と
呼ばれる。
1630
肥満細胞/
ひまんさいぼう/
mast cell
血液中の好塩基球に相当する大きな細胞質顆粒をもつ多形核
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
マスト細胞
ますとさいぼう
細胞。アナフラキシーに関係するヒスタミンやセロトニンな
どを産生する。
1631
蛍光in situハイ
ブリダイゼーシ
ョン/FISH
けいこういんしち
ゅはいぶりだいぜ
ーしょん/ふぃっ
しゅ
fluorescence in
situ hybridization/
FISH
蛍光標識されたDNAプローブを細胞や染色体の形態を保っ
たままの試料とハイブリダイズさせ標的遺伝子又はその転写
産物の存在位置や分布状況を蛍光顕微鏡下で観察する方法。
2. 基礎技術
a) 培養,培養工学
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
2101
ウシ胎児血清
うしたいじけっせ
い
fetal bovine serum/
fetal calf serum
動物細胞培養において広く利用されるウシ胎児から調製され
たγグロブリンを含まない血清。細胞増殖を促すペプチド性ホ
ルモン,栄養因子,担体,微量金属などを含むが,ロット差
などが問題となる場合もある。
2102
株化細胞
かぶかさいぼう
established cell
line
移植継代しても集団として長期に安定して増殖し,その特性
が安定に保たれる細胞。L細胞,HeLa細胞などが代表例。
2103
カルス
かるす
callus
植物組織培養において組織片より形成される不定形の細胞
塊。カルスは固体又は液体培地で増殖できる,又この脱分化
したカルスに適当な培地(植物ホルモンなど)を与えると再
分化して完全な植物体にまで分化させることもできる。
2104
完全培地
かんぜんばいち
complete medium
主として微生物の培養に際して,その生物の成長,増殖が最
高度に起こるのに必要な条件を備えた培地。
2105
灌流培養法
かんりゅうばいよ
うほう
continuous culture
process/
continuous
purfusion process
基質を装置内に供給すると同時に同量の反応液を系外に排出
して反応の定常状態を維持する培養法。動・植物の組織細胞
を培養するとき慣習として灌流培養法といわれている。
2106
器官培養
きかんばいよう
organ culture
器官を単離してその形態的特徴を保持しつつ培地中で培養す
ること。
2107
継代培養
けいたいばいよう
subculture/passage
culture
微生物や細胞を増殖又は保持する際,その一部を新しい培地
に植継いで培養すること。植継ぎを重ねることによって特性
が変化することもあるので,その回数はできるだけ少なくす
る。
2108
茎頂培養
けいちょうばいよ
う
shoot tip culture
茎の頂端部を切りだして培地中で培養し,同一の遺伝的性質
を有する個体を育成する技術。
2109
血清添加培地
けっせいてんかば
いち
serum-containing
medium
血清の種類を明らかにした動物細胞などの培地。血清は多種
類の化合物を含み,有効成分は不明である。ロット差が著し
く,培養条件の正確なコントロールは難しい。
2110
合成培地
ごうせいばいち
synthetic medium
化学組成の明確な物質だけからなる培地。微生物や細胞の特
性を研究するうえで重要。
2111
高密度培養
こうみつどばいよ
う
high-density
culture
新鮮培地や基質を途中添加又は増殖阻害物質を除くなどし
て,細胞や生産物を高密度に得る方法。特に動物細胞培養に
おいて重要なもので,灌流培養,置換培養など様々な工夫が
されている。
2112
コロニー
ころにー
colony
微生物や動植物の培養細胞の1個の細胞が,固形培地上で増
殖してできる可視的な集塊。
2113
混合培養
こんごうばいよう
mixed culture
2種類以上の菌株又は微生物からなる培養。微生物の協同作
用によって物質生産などを行う方式。生もとを用いる酒の生
産,廃液処理などがその例である。
2114
最少必須培地
さいしょうひっす
minimum essential
透析血清の存在下で,培養細胞を増殖させるための必要最少
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
ばいち
medium
限の化学成分を含む培地。イーグルの考案した培地を指すこ
とが多い。動物組織,又は細胞培養に使用されるアミノ酸,
ビタミンを含み,10〜20%の血清添加で多くの細胞を良好に
生育できる。
2115
最大比増殖速度
さいだいひぞう
しょくそくど
maximum specific
growth rate
単位菌体量当たりの増殖速度の最大値。μmaxで表すことが多
い。微生物種に固有の値で,培養条件によって変化する。
2116
再分化
さいぶんか
redifferentiation/
regeneration
通常の発生分化から逸脱した細胞から元の器官や生物体が復
元すること。植物の場合再生ともいう。
2117
細胞質雑種/
サイブリッド
さいぼうしつざっ
しゅ/さいぶりっ
ど
cybrid
核は一方の細胞由来であるが異種の細胞質が混在している細
胞又は個体。サイトプラストと細胞とを融合させた細胞。
2118
細胞周期
さいぼうしゅうき
cell cycle
細胞の分裂・増殖するときの細胞の生活環。分裂期(M期),
DNA合成準備期(G1期),DNA合成期(S期),分裂準備期
(G2期),細胞が細胞周期の進行を停止している状態(G0期)
に分かれる。
2119
細胞寿命
さいぼうじゅみょ
う
cellular life span
細胞の死,分裂の停止,又はある細胞集団から排除される現
象,及びそれに至る期間。培養系では,正常2倍体細胞分裂
に伴う分裂加齢によるクローン加齢を指すことが多い。
2120
細胞培養
さいぼうばいよう
cell culture
動物,植物など多細胞生物の器官,組織片を細胞に解離し,
これを試験管内で培養すること。
2121
細胞分化
さいぼうぶんか
cell differentiation
発生中の生物の細胞の構造や機能が前進的に変化し,特殊化
した細胞や構造を生じる過程。
2122
細胞老化
さいぼうろうか
cellular aging/
cellular senescence
細胞レベルにおける形質や機能の変化とそれに続く細胞死。
個体老化の部分的現象と考えられている。
2123
雑菌汚染
ざっきんおせん
contamination
特定の有用菌の培養中に,他の菌が混入すること。今日の発
酵はほとんどが純粋培養によるものであるから,雑菌の混入
は妨げねばならない。
2124
三次元培養法
さんじげんばいよ
うほう
three-dimentional
culture
試験管内に立体的配置をとらせた状態で行う器官又は細胞培
養法。生体内での組織と類似の組織を構築させたり,特有の
分化機能を発現させる目的で使用される。スポンジ状構造を
もつ様々な支持体が開発されている。
2125
斜面培養
しゃめんばいよう
slant culture
試験管の中に寒天などの固形培地の斜面を作り,その面に微
生物を培養すること,又はそうして培養したもの。無菌操作
が容易で,植継ぎによく用いられる。
2126
集積培養
しゅうせきばいよ
う
enrichment
culture
特定の微生物集団を選択的に増殖させる培養法。薬剤,温度
などの物理的条件等を用いて選別する。
2127
純粋培養
じゅんすいばいよ
う
pure culture
単一の菌株のみの培養。現在の発酵プロセスの大部分はこの
方式による。
2128
植物組織培養
しょくぶつそしき
ばいよう
plant tissue
culture
植物の細胞,組織,器官などを取り出して無菌的に培養する
技術。植物細胞は全能性をよく保っているので,組織培養に
よって少ない材料から多くの個体を得ることも可能であり,
また比較的短時間で有用植物の育種も可能である。
2129
初代培養
しょだいばいよう
primary culture
生体から分離した器官,組織,又は細胞を体外培養に移して
から植継ぎを行うまでの培養。多くの場合,初代培養細胞は
由来組織,臓器の性質を保持しているが,継代を重ねるにつ
れて特徴が失われる。
2130
生育速度/
増殖速度
せいいくそくど/
ぞうしょくそくど
growth rate
単位時間における生育の度合。生体重量や細胞数の増加又は
伸長の程度で示す。
2131
静止期
せいしき
(1)stationary
phase/
(1)微生物又は細胞等の培養において増殖速度と死滅速度が
平衡状態にある時期。定常期ともいう。
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
(2)interphase
(2)動植物の細胞周期における分裂期を除く時期。間期ともい
う。
2132
静置培養
せいちばいよう
stationary culture
振とうや通気をせずに容器を静置して行う液体培養。
2133
成長因子
せいちょういんし
growth factor
生物又は細胞の数,重量,体積などを増加させる作用をもつ
物質。一般的には,細胞,組織,臓器,個体を問わず,この
作用をもつものを指す。細胞に対しては,形態を変化させ,
肥大させるものもある。
2134
成長点
せいちょうてん
meristem
茎や根の先端に存在し,新しく細胞をつくりだす分裂機能を
もつ部位。
2135
成長点培養
せいちょうてんば
いよう
meristem culture
成長点を切りだして培養し,無ウイルス株の育成や同一の遺
伝的性質をもつ個体を育成する技術。
2136
世代時間
せだいじかん
generation time
(1)個体がその発生を開始してから次の世代を生じるまでの
時間。
(2)細胞などの場合は細胞分裂における一細胞周期の平均所
要時間。微生物の分野では1個の細胞が2個になるまでの時
間に相当し,培養条件によって変動する。
2137
接触阻止
せっしょくそし
contact inhibition
単層状に増殖した細胞が相互に間げき(隙)なく接触するこ
とによって,増殖が止まること。狭義には細胞の運動が他の
細胞との接触によって,規制されることを指す。形質転換し
た細胞はこの性質がなくなるので,その指標として利用でき
る。
2138
穿刺培養
せんしばいよう
stab culture
微生物の培養物を白金線の先端に付け,寒天やゼラチンなど
の固形培地に深くさし込んで接種し培養すること。通性嫌気
菌の保存や酵母,細菌の生理的性質の観察に使われる。
2139
選択培地
せんたくばいち
selective medium
ある集団の中から特定の性質を示す細胞を選択的に増殖させ
る培地。栄養要求性,温度感受性,薬剤耐性などを指標にす
る。
2140
阻害定数
そがいていすう
inhibition constant
酵素反応において酵素と阻害剤から酵素−阻害剤複合体を形
成する反応の解離平衡定数。Kiと略記。
2141
組織培養
そしきばいよう
tissue culture
生体の組織の一部又は細胞を生きたまま取り出し,その特性
を保持させながら培養すること。細胞培養を含むことがある。
広義には器官培養,組織培養,細胞培養を含めた体外培養一
般を指す。
2142
組織培養苗/
クローン苗
そしきばいような
え/くろーんなえ
tissue culture
seedling/clone
seedling
胚又は体細胞由来の組織培養により作られた均一な遺伝形質
をもつ苗。
2143
対数増殖期
たいすうぞうしょ
くき
logarithmic
growth phase
細胞集団の細胞数が対数的に増加する時期。増殖の最も盛ん
な時期。
2144
滞留時間
たいりゅうじかん
retention time
連続培養又は殺菌において反応槽に培養液を滞留させる時
間。広義には液体を特定の場所にとどめておく時間のことで,
例えば下水中の浮遊物を沈殿分離するために沈殿池に下水を
とどめておく時間を指す。
2145
大量培養
たいりょうばいよ
う
large-scale culture
大量に培養すること。“組換えDNA実験指針”では20Lを超
えるものを指す。ガイドラインによると,P1レベルはLS-1,
P2レベルはLS-2で行う。一方,個別審査で,危険性の極め
て少ないと判断されたものはLS-1よりも封じ込めレベルの
緩やかなLS-Cレベルで培養できる。
2146
多段単層法
ただんたんそうほ
う
multitray method/
multilayer culture
トレーを多段に積み重ねて動物細胞を単層状に効率よく培養
すること。付着依存性細胞を効率よく大量培養する方法の一
つ。
29
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
2147
種培養
たねばいよう
seed culture
本培養を効率よく行えるように微生物又は細胞の条件を整
え,かつ,それらの数量を確保するための培養。培地組成,
培養時間,種培養の量などが本培養の成績に大きく寄与する。
2148
単層培養
たんそうばいよう
monolayer culture
培養容器の底又は壁面に一層の細胞層として培養すること。
形質転換した接触阻止のない細胞株では,増殖して細胞が接
し合っても増殖を続け多層になる。
2149
通気攪拌培養/
深部培養
つうきかくはんば
いよう/しんぶば
いよう
submerged culture
好気性の微生物を液中で生育させるために培養液を通気又は
通気かくはん(攪拌)しながらする培養。かくはん翼を備え
た通気かくはん型発酵槽と通気だけを行う気泡塔型発酵槽が
ある。
2150
天然培地
てんねんばいち
natural medium
生物材料から得られた成分だけより構成されている培地。無
機塩類やビタミンなどの増殖因子を補強することが多い。
2151
同調培養
どうちょうばいよ
う
synchronous
culture
細胞を細胞周期の特定の時期にそろえた培養。細胞周期の
様々な時期にある細胞集団から,特定の時期の細胞を密度の
差や付着性で分ける方法と薬剤や物理的処理ですべての細胞
をいったん周期上のある時期で止め,次いでこれを解除して
周期をそろえて進ませる方法がある。
2152
軟寒天培地/
半流動培地
なんかんてんばい
ち/はんりゅうど
うばいち
soft agar medium/
semisolid medium
培地に0.3〜0.6%の寒天を溶解固化したもの。細胞の付着依存
性増殖の判定,ファージの計数などに用いる。
2153
培地
ばいち
medium
微生物や細胞,組織,器官などを増殖,発育させるために与
える栄養成分と支持体。
2154
付着依存性培養
ふちゃくいぞんせ
いばいよう
anchorage-
dependent culture
細胞が増殖するとき付着すべき足場を必要とする培養。ガラ
スなどの器壁に接触しなければ増殖できないこと。通常軟寒
天培地での増殖で判別する。
2155
プロトプラスト
ぷろとぷらすと
protoplast
細菌,菌類,植物細胞などの細胞壁を取り除いた原形質膜で
囲まれた細胞質体。細菌ではリゾチーム,カビ・酵母ではカ
タツムリの消化酵素,植物細胞ではセルラーゼ,ペクチナー
ゼ,ヘミセルラーゼなどが細胞壁を除くのに用いられる。
2156
平板培養
へいばんばいよう
plate culture
寒天などの固化剤を用いて得られる平らな培地上での培養。
固化剤として寒天のほかにゼラチン,シリカゲル,gelrite
(Pseudomonas sp. の生産するヘテロ糖ポリマー),合成ポリ
マーなども使える。
2157
保存培養
ほぞんばいよう
stock culture
将来の必要に備えて保存された微生物,細胞及び組織の培養。
凍結保存法(液体窒素中又はグリセリン存在下で−20〜−
100℃保存),凍結乾燥保存法,L−乾燥法(10−1torr付近で凍
結しないで気化によって水分を除去する)などがよく用いら
れる。
2158
保存培養/保存
菌株
ほぞんばいよう/
ほぞんきんかぶ
culture stock/
stock culture
将来の必要に備えて保存された微生物,細胞及び組織の培養
又は保存物。
2159
本培養
ほんばいよう
main culture
微生物,動植物細胞又はその生産物を得るために行う培養。
2160
無血清培地
むけっせいばいち
serum-free
medium
血清の代わりに各種の成長因子など既知物質からなる動物細
胞増殖用培地。動物細胞による有用物質(特にたん白質様物
質)生産には血清由来の不純物を避けるためにその開発が必
す(須)。
2161
葯(やく)培養
やくばいよう
anther culture
植物組織培養の1種で,やくを培養し半数性細胞や半数体を
得る技術。
2162
流加培養/流加
発酵
りゅうかばいよう
/りゅうかはっこ
う
fed batch culture/
fed batch
fermentation
系外から連続又は逐次新鮮な基質(原料)をバイオリアクタ
ー内に許容液量に達するまで供給し,生物反応を行わせる培
養又は発酵操作方法。半連続培養 (semi continuous culture),
30
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
半連続発酵 (semi continuous fermentation) とも呼ばれる。反応
の進行状態,生体触媒の活性に応じて実行される。
2163
連続培養(連続
定常培養法)
れんぞくばいよう
(れんぞくていじ
ょうばいようほ
う)
continuous
fermentation
培養槽中に連続的に培地を供給し,かつ,連続的に培養液を
排出させる培養法。培養液中の菌体・基質・生産物などの濃
度を一定に保てるので一定状態の微生物を得るのに好適であ
る。単位装置当たりの生産効率はバッチ法に比べてよいが,
雑菌汚染対策を厳密に行うことが必す(須)。
b) 細胞融合
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
2201
雑種
ざっしゅ
hybrid
遺伝的に異なった細胞又は個体の交雑によって得られる細胞
又は個体。
2202
シンカリオン
しんかりおん
synkaryon
接合又は細胞融合によってもたらされた2個以上の核が融合
して一体になった状態。
2203
スフェロプラス
ト
すふぇろぷらすと
spheroplast
細菌又は植物細胞の細胞壁を酵素処理などで部分的に取り除
いたもの。完全に取り除いたものをprotoplastという。高分子
物質に対する透過性は,プロトプラストと同じように高くな
るので,形質転換実験などに利用される。
2204
トランスジェニ
ック動植物
とらんすじぇにっ
くどうしょくぶつ
transgenic
organism
遺伝子組換えによって,外来遺伝子を導入した動植物。通常
の交雑育種では不可能な形質をもった動植物ともいえる。
c) 遺伝子操作,遺伝子工学
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
2301
RFLP/制限酵
素断片長多型
あーるえふえるぴ
ー/せいげんこう
そだんぺんちょう
たけい
restriction
fragment length
polymorphism/
RFLP
制限酵素処理によって得られるDNA断片の長さの多型。同1
種内でも遺伝子には種々の個体差があり,その違いが集積し
た部位があり,個体固有の変異パターンがある。表現型と高
度に相関する部位のDNAプローブを作り,サザンブロット
によってRFLPを検出する。遺伝子疾患の予測,作物の育種
などに利用されている。
2302
アテニュエイシ
ョン(DNAの)
あてにゅえいしょ
ん(でぃーえぬえ
ーの)
attenuation
翻訳と共役した転写調節機構。オペロン内部にある転写終結
部位(アテニュエーター)の存在によるもので,その構造は
GC塩基の多い2回回転対称構造に連なるA塩基に富んだも
のである。
2303
イーエスティー
/EST
いーえすてぃー/
いーえすてぃー
expression
sequence tag/EST
mRNAをもとにして決定されているが,その機能が解明され
ていない塩基配列断片。
2304
EKシステム
いーけーしすてむ
EK system
組換えDNA実験において,大腸菌K12又はその誘導体を宿
主とする宿主−ベクター系。K12を用いるEK1とK12のジア
ミノピメりん酸要求変異株 (x1776) を使用するEK2に分か
れる。
2305
イーストツーハ
イブリッドシス
テム
いーすとつーはい
ぶりっどしすてむ
yeast two hybrid
system
二つに分断した転写因子に融合した遺伝子産物の相互作用を
転写因子の再結合を指標にした酵母細胞内での高感度検出
系。
2306
遺伝暗号
いでんあんごう
genetic code
4種の塩基 (A/U/G/C) から作られる3種の塩基の順列組合せ
(コドン,codon)。4種の塩基から作られるコドンは全部で
64個あり,そのうち3個には対応するアミノ酸はなくアミノ
酸重合の終了を指定する。
2307
遺伝子
いでんし
gene
遺伝情報を決定する機能的・物理的構造単位。転写・翻訳さ
れる構造遺伝子と発現を制御する調節遺伝子から構成され
る。
2308
遺伝子型
いでんしがた
genotype
個体又は特定の遺伝子構成。環境との相互作用によって表現
型が決まる。個体がもつ遺伝子の総体を指すこともある。個
31
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
体がとり得る遺伝子型の数は莫大である。
2309
遺伝子欠失
いでんしけっしつ
deletion
染色体からDNAの一部を失うこと。従って機能あるいは構
造体を失うことになり,復帰変異は認められない。
2310
遺伝子座/座
いでんしざ/ざ
genetic locus/
locus
染色体地図上における遺伝子の位置。一つの染色体上にある
遺伝子座には一つの遺伝子が存在するが,それがとり得る状
態は必ずしも一つとは限らない。そのため多数の個体から特
定の遺伝子座の状態を調べると異なった遺伝子(対立遺伝子)
が見いだされることがある。これを多型現象 (Polymorphism)
という。
2311
遺伝子操作
いでんしそうさ
gene manipulation
DNAの組換え分子を作り,これを生細胞に移入することによ
って遺伝子を電離・解析したり人為的に変換したりすること。
遺伝子を直接取り扱うことをすべて含む。応用だけでなく生
物学の基本的課題解明のためにも重要な分野である。
2312
遺伝子増幅
いでんしぞうふく
gene amplification
ある特定の遺伝子が多数複製される現象。生活環のある時期
に増幅する場合と環境の変化に応じて増幅する場合がある。
前者の例として両性類の卵母細胞のリボソーム遺伝子の増
幅,後者の例は細菌のプラスミドの増幅がある。遺伝子操作
では遺伝子そのものを増加させて生産性を上げることが多
い。
2313
遺伝子ターゲッ
ティング/ジー
ンターゲティン
グ/相同組換え
技術
いでんしたーげっ
てぃんぐ/じーん
たーげてぃんぐ/
そうどうくみかえ
ぎじゅつ
gene targeting
相同組換えを利用して細胞及び個体レベルで目的とした遺伝
子だけに変異を導入すること。個体レベルで遺伝子ターゲッ
ティングを行った特定遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウ
ス)は様々な遺伝子機能の解明に利用されている。
2314
遺伝子地図
いでんしちず
gene map
連鎖した遺伝子間に起こる組換え頻度を尺度にして決めた同
一染色体上に乗っている遺伝子の配列順序と相対的関係を直
線上に表したもの。DNAの塩基配列を決めて作られる物理的
地図と比較すると配列順序は一致するが,距離は必ずしも一
致しない。
2315
遺伝子重複
いでんしちょうふ
く
gene duplication
染色体が倍数化すること又は特定の遺伝子がDNA配列の重
複によって増加すること。同一染色体間の不等交差によるも
ので,一方の染色体で遺伝子の重複が起こり他方には遺伝子
欠失が起こる。
2316
遺伝子治療
いでんしちりょう
gene therapy
遺伝子を導入して,患者の疾患を治す治療法。患者の細胞を
採取して,体外で目的の遺伝子を導入した後,再移植するex
vivo法と遺伝子を直接導入する直接法の2種ある。アデノシ
ン・デアミネース欠損症(ADA欠損症),ガンなどの治療に
応用されている。
2317
染色体ウォーキ
ング/遺伝子ウ
ォーキング
せんしょくたいう
ぉーきんず/いで
んしうぉーきんぐ
chromosome
walking
目的とする遺伝子が既にクローニングされている遺伝子と近
接している場合,その隣の遺伝子の断片をクローニングされ
ている遺伝子とオーバーラップさせながら順次染色体上を動
いて行くようにして目的の遺伝子をクローニングする方法。
2318
遺伝子量効果
いでんしりょうこ
うか
gene dosage effect
特定の遺伝子の遺伝子量に応じて遺伝子産物が増加するこ
と。遺伝子操作では特定の遺伝子を多コピープラスミドに載
せて遺伝子産物の生産を高めることがよく行われる。
2319
イニシエーター
(発癌の)
いにしえーたー
(はつがんの)
tumor ininiator/
initiator of
carcinogenesis
正常細胞に働いてそのDNAに固定的変化を起こし,それを
潜在性細胞 (initiated cells) に変える物質。ジベンゾアンスラ
セン,ウレタン,クロロメチルエーテルなどが知られている。
2320
インサイチュハ
イブリダイゼー
いんさいちゅはい
ぶりだいぜーしょ
in situ
hybridization
DNA−DNA又はDNA−RNAハイブリダイゼーションの一つ
で,固定した染色体に放射性同位元素で標識したプローブを
32
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
ション
ん
その場でハイブリダイゼーションさせ,オートラジオグラフ
ィーを行うと,プローブと相同性のある染色体上の配列を決
定できる。
2321
イントロン
いんとろん
intron/intervening
sequence
真核生物やそのウイルスの遺伝子には,最終的にたん白質又
はRNAとして発現する配列と,発現しない配列とがあるが,
このうち,発現しない配列部分。intronはスプライシングを
受けて,切り捨てられ,成熟mRNAの中には存在しない。
2322
インバートン
いんばーとん
inverton
逆位を起こすDNA断片が一定の領域であり,かつその中に
この逆位を起こす酵素。DNA invertaseの遺伝子をもっている
もの。逆位し得る断片の両端に塩基配列の回文構造がみられ
る。
2323
インビトロパッ
ケージング
いんびとろぱっけ
ーじんぐ
in vitro
packaging
組換えDNAを細胞外でファージ粒子たん白質に包み込み,
完全な感染体を作ること。ラムダファージがよく用いられる
が,この方法でDNAを効率よく宿主に導入できるのでDNA
クローニングの重要な手法の一つである。
2324
エーエフエルピ
ー/AFLP
えーえふえるぴー
amplified fragment
length
polymorphism/
AFLP
DNAの制限酵素切断断片をPCR法によって選択的に増幅し,
個体間のゲノムDNA,又はcDNAの多型を検出する方法。
2325
エクソン
えくそん
exon
真核生物やそのウイルスの遺伝子には,最終的にたん白質又
はRNAとして発現する配列と,発現しない配列とがあるが,
このうち,発現する配列部分。しかしアミノ酸に翻訳されな
い領域を開始コドンの上流にもつものもある。
2326
mRNA/メッセ
ンジャーRNA/
伝令RNA
えむあーるえぬえ
ー/めっせんじゃ
ーあーるえぬえー
/でんれいあーる
えぬえー
messenger
RNA/mRNA
DNAから転写されてできる一本鎖RNAで,リボゾーム上で
たん白質へと翻訳される。原核細胞では一つのオペロンに属
する遺伝子群を一続きのmRNAとして転写する。真核細胞で
は,核の中で前駆体に転写され,5ʼ末端にキャップ構造,3ʼ
末端にポリアデニン構造を結合して修飾される。
2327
エンハンサー
えんはんさー
enhancer
真核細胞及びそのウイルスの遺伝子に存在し,配列の向きに
かかわらず転写を著しく促進する塩基配列。比較的大きな配
列であり,かなり距離(数千kilobase)が離れていても働き,
組織特異性がある。シスに作用する要素である。
2328
オペロン
おぺろん
operon
DNAからRNAへの転写がプロモーターによって同調的に制
御される遺伝子群。単一プロモーターの下に制御されている
ポリシストロンといえる。カビ以上の微生物及び高等生物で
は一続きのオペロンではなく,遺伝子は散在することが多い。
2329
がん遺伝子/
オンコジーン/
腫瘍遺伝子
がんいでんし/
おんこじーん/
しゅよういでんし
oncogene
癌化の指令を発する遺伝子。正常な細胞にあっては制御遺伝
子や,抑制遺伝子の支配下にあって,細胞分裂,細胞分化な
どに関与していると考えられる。しかし,その制御が外れる
と,ガン化に至る。レトロウイルスの多くが腫瘍遺伝子
(viral oncogene; v-onc) をもち,正常細胞にはこれと相同性の
ある細胞性腫瘍遺伝子(cellular oncogene; c-onc)があることが
示されている。
2330
開始信号/
開始コドン
かいししんごう/
かいしこどん
initiation codon
生体内でのたん白質合成に際して,mRNAの塩基配列の中で
第一番目のアミノ酸を指定するコドン。AUGとGUGの二つ
を指す。塩基配列から,その遺伝子産物であるたん白質のア
ミノ酸配列を推定するとき,AUGはN末端を決める重要な
目安である。
2331
核移植
かくいしょく
nuclear
transplantation
あらかじめ核をサイトカラシンなどを使って取り除くか,紫
外線照射で核を不活化した細胞に,別の細胞から取った核を
33
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
挿入すること。核と細胞質の機能や相互関係を検討できる。
2332
偽遺伝子
ぎいでんし
pseudo-gene
機能のある本来の遺伝子によく似た塩基配列をもつ機能のな
い遺伝子。pseudo-geneの特徴はその進化速度が速いことであ
る。
2333
逆転写
ぎゃくてんしゃ
reverse
transcription
RNAを鋳型にしてDNAを合成すること。遺伝子操作では
mRNAからこの反応を触媒する逆転写酵素を利用してcDNA
をつくり,このcDNAを適当なベクターにつなぎ目的とする
遺伝子産物を生産するために広く利用されている。
2334
キャップ構造
(mRNAの)
きゃっぷこうぞう
(えむあーるえゆ
えーの)
cap structure
(of mRNA)
真核細胞のmRNAに広く存在する5ʼ末端の修飾構造で,7メ
チルグアシンがピロリン酸を介して5ʼ末端のりん酸に結合し
たもの。酵素分解に対する保護作用と翻訳開始機構に働いて
いる。
2335
組換え体
くみかえたい
recombinant
組換えDNAを含む宿主細胞。遺伝子操作におけるin vitro組
換えによって形成された組換えDNAのことを指すこともあ
る。
2336
組換えDNA
くみかえでぃーえ
ぬえー
recombinant
酵素などを用いた切断,再結合の操作によってDNAをつな
ぎ合わせたもの。遺伝子操作では異種遺伝子の発現を図るた
め,ベクターと目的遺伝子の組合せが多い。
2337
組換えDNA技
術
くみかえでぃーえ
ぬえーぎじゅつ
recombinant
DNA technology
組換えDNAを作製し,それを生細胞(宿主)に移入し,増
殖させる技術。異種のDNAを取り扱う場合安全確保のため,
適切な生物学的封じ込め並びに物理的封じ込めの下での実施
が要求されている。
2338
形質転換
けいしつてんかん
transformation
遺伝物質が細胞に取り込まれ,発現されることによって形質
が変わること。外来の単離した遺伝物質(DNA)を取り込める
状態にある細胞をコンピテント細胞と呼び,表層荷電の変化
や細胞壁の除去などの工夫が必要である。細胞学では動物細
胞の形質が癌化状態を示し,無期限に増殖できるようになる
こと。増殖の接触阻止の喪失,軟寒天内コロニー形成などの
変化がみられる。
2339
形質導入
けいしつどうにゅ
う
transduction
ウイルスを介して遺伝物質が細胞に取り込まれ,発現される
ことによって形質が変わること。普遍形質導入ではすべての
遺伝子が導入されるのに対して,特殊形質導入では特定の遺
伝子だけが導入される。
2340
抗菌スペクトル
こうきんすペくと
る
antibacterial
spectrum
化学物質の抗菌作用の範囲を微生物の種類と濃度で表示した
図又は表。化学療法剤や抗生物質の特性を表す。
2341
構造遺伝子
こうぞういでんし
structural gane
たん白質のアミノ酸配列に関する情報を担っている遺伝子。
分子レベルでは開始コドンと終止コドンに挾まれた配列のこ
と。rRNA tRNAなどの塩基配列を決める情報をもつ遺伝子も
指す。
2342
高頻度反復配列
DNA
こうひんどはんぷ
くはいれつでぃー
えぬえー
highly repetitive
DNA sequence
同じ向きに繰返しがまとまってあるものとゲノム中に散在す
るものとがある。前者はセントロメア領域に局在するものが
多く,後者は前ゲノム中に散在する(ヒトにみられるAluフ
ァミリーなど)。
2343
コスミド
こすみっど
cosmid
ファージとプラスミドの雑種ベクター。細胞内ではプラスミ
ドとして存在するが,ヘルパーファージなどで誘導するとフ
ァージの殻の中にDNAを包み込む性質(cos領域)をもつ。
大きなDNA断片 (40〜50kilobase) を取り込める。
2344
Cot解析(DNA
の)/コット解
析
こっとかいせき
(でぃーえぬえー
の)/こっとかい
DNA
reassociation
kinetics analysis
DNAを約300塩基対の長さに物理的に切断し,熱変性によっ
て1本鎖にしたものを,適当な条件下でアニーリングする。
DNAの濃度 (Co) と反応に要した時間 (t) の積 (Cot) に対
34
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
せき
して,形成された2本鎖の割合をプロットしてDNA断片の
反復度を知ることができる。これを用いて染色体の中に存在
する遺伝子の数を測定できる。
2345
細菌人工染色体
/BAC
さいきんじんこう
せんしょくたい/
ばっく
bacterial artificial
chromosome/
BAC
大腸菌のF因子由来の複製制御遺伝子を組み込んだ約50〜
150kbのDNAを挿入できる人工プラスミドベクター。
2346
サプレッサー変
異
さぷれっさーへん
い
suppressor
mutation
突然変異によって変異した形質が,その変異部位とは異なる
部位の変異によって,もとの形質を取り戻すこと。遺伝子
DNAの塩基配列を変えるように働くのではなく,mRNA上の
特定のコドンの読み方を変えるように働く。tRNA,リボソー
ム,アミノアシル−tRNA−シンターゼなどの遺伝子の変異が
関与する。
2347
自己複製配列/
ARS
じこふくせいはい
れつ/えーあーる
えす
autonomous
replicating
sequence
自律的に複製できる複製開始点を含むDNA配列。これを利
用して新しいベクターが開発されている。
2348
姉妹染色分体交
換
しまいせんしょく
ぶんたいこうかん
sister chromatid
exchange/SCE
細胞分裂期に形成された染色体は,分裂中期に長軸方向に縦
裂して,娘細胞へ分配される。この2分された各々を姉妹染
色分体 (sister chromatid) と呼ぶ。この間で起こる部分的交換
現象。同一箇所で切断,再結合を行うので,それ自体では遺
伝的障害を伴わない。
2349
シャイン・ダル
ガーノの配列/
SD配列
しゃいん・だるが
ーののはいれつ/
えすでぃはいれつ
Shine−Dalgarno
sequence
原核細胞のリーダー配列中にある共通の構造で,16Sリボソ
ームRNAと相補的に結合する翻訳に必す(須)の配列(5ʼ)
AGGA (3ʼ)。
2350
シャトルベクタ
ー
しゃとるべくたー
shuttle vector
2種以上の細胞のいずれでも複製可能なベクターの総称。酵
母−大腸菌,枯草菌−大腸菌,放線菌−大腸菌,動物細胞−
大腸菌などのシャトルベクターが開発されている。
2351
シャロンベクタ
ー
しゃろんべくたー
charon phage
ラムダファージDNAの一部を欠失した部分にクローン化し
ようとする断片をつなぎ,ベクターとして利用できるように
したもの。charon3A 4A 16Aは更にアンバー変異をもち特定の
サプレッサー変異株だけで生育できるので,EK2ベクターと
して利用される。
2352
宿主
しゅくしゅ
host
(1)組換えDNA技術において,DNAを移入される生細胞。目
的の遺伝子を増殖,発現させ宿主細胞内で目的産物を生産す
る。
(2)寄生性生物(寄生虫,ウイルスなど)の生育を許容する生
物。
2353
宿主−ベクター
系
しゅくしゅ−べく
たーけい
host-vector system
組換えDNA技術で用いられる宿主とベクターの組合せ。
2354
純化DNA
じゅんかでぃーえ
ぬえー
cloned DNA
組換え技術においてDNA供与体から調製し,同定された
DNA,クローン化されたDNA又は化学合成されたDNA。(通
商産業省“組換えDNA実験指針”を参照)。特に危険性のな
いDNAの場合,その組換え体の規制レベルを一段階下げる
ことができる。
2355
純系
じゅんけい
inbred line
遺伝子が均一でホモ接合である個体からなる系統の総称。自
家受粉や近親交配を繰り返して得ることができる。マウスで
は20世代以上も近親交配を続けても完全に純系にできない
ので,着目した遺伝子が純系であればよいとすることが多い。
2356
スプライシング
すぷらいしんぐ
splicing
真核細胞遺伝子の直接の転写産物(前駆体RNA)からイント
ロンを切りだし,残ったエクソンをつなぎ合わせて,成熟
mRNAを作ること。核内に見いだされる低分子RNA (small
35
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
nuclear RNA, snRNA) の関与,スプライシング酵素,マチュ
ラーゼ,前駆体RNA自体による触媒作用などが発見されてい
る。
2357
制御遺伝子/
調節遺伝子
せいぎょいでんし
/ちょうせついで
んし
regulatory gene
ある遺伝子のもつ遺伝情報の発現に対して,調節機能をもつ
遺伝子。プロモーター,アテニュエーター,ターミネーター,
エンハンサーなどのことを指す。
2358
制限酵素
せいげんこうそ
restriction enzyme
2本鎖DNAの塩基配列を認識してDNA鎖を切断する機能を
もつ酵素。ファージの感染を制限する細菌の生体防御のため
の酵素として発見されたものであるが,その特異性から遺伝
子操作に必す(須)のもの。
2359
制限酵素地図
せいげんこうそち
ず
restriction map/
cleavage map
制限酵素によって切断される点をゲノム上に示したもの。そ
れぞれのDNAに特異的な地図が得られる。
2360
生物学的封じ込
め
せいぶつがくてき
ふうじこめ
biological
containment
自然環境下での生存能力が低い宿主及び宿主依存性の高いベ
クターを用いることによって,組換え体の伝ぱん,拡散を防
止すること。B1/B2の二つのレベルがある。
2361
挿入配列
そうにゅうはいれ
つ
insertion sequence/
IS
転移性遺伝要素 (movable genetic element/transposable genetic
elemant) の一つ。DNA上を動く1000塩基対前後のDNA配列
で,移動する部位は一定ではない。転位された遺伝子を不活
化する。末端に逆向きの繰返し構造(パリンドローム)をも
ち,これが移動に重要な役割を果たしている。
2362
相補的DNA/
cDNA
そうほてきでぃー
えぬえー/しーで
ぃーえぬえー
complementary
DNA/cDNA
mRNAを鋳型として逆転写酵素によって合成された一本鎖
DNAのこと。このとき鋳型DNAと相補的な一本鎖DNAと
プライマーが要求される。遺伝子操作でよく利用される技術
である。
2363
ターミネーター
たーみねーたー
terminator
転写が終了するとき,RNAポリメラーゼの離脱をうながす
DNAの塩基配列。次の特徴がある;中央に数塩基はさんで逆
方向反復配列,数個のポリU残基,終止点の上流にこれに接
してG/C塩基対に富む配列。
2364
対立遺伝子
たいりついでんし
allele
相同の遺伝子座を占める遺伝子。同一遺伝子座に起こった
DNA塩基配列の差に基づく差異によるものとみなされ,表現
型の違いで区別できる。
2365
DNA供与体
でぃーえぬえー
きょうよたい
DNA donor
組換えDNA技術で宿主となる細胞に移入するために,DNA
を供与する細胞。生物種の危険度に応じて組換えDNAを取
り扱うとき備えるべき封じ込めレベルが示されている。
2366
DNA修復
でぃーえぬえー
しゅうふく
DNA repair
DNAに生じる様々な変異を修復する機構。異常な塩基やヌク
レオチドを除去する除去修復,ピリミジン二量体の光回復,
アルキル化された塩基の修復に関わる適応修復,複製後修復
(組換え修復),SOS修復など多数の修復機構がある。
2367
転移性遺伝要素
てんいせいいでん
ようそ
transposable
genetic element/
movable genetic
element
遺伝子上を移動できる配列の総称。insertion sequence (IS),ト
ランスポゾン,ある種のファージ(Muファージなど),酵母
のTy因子,ショウジョウバエのコピア様因子やP因子,トウ
モロコシのDs因子などを指す。
2368
転座
てんざ
translocation/
transposition
染色体上を遺伝子が移動すること。遺伝子制御が変化して遺
伝子疾患や発癌に至る原因となることも多い。
2369
転写
てんしゃ
transcription
DNAを鋳型にしてRNAを合成する過程。DNA依存性RNA
ポリメラーゼによって触媒される。
2370
転写因子
てんしゃいんし
transcription
factor
遺伝子の転写を調節している因子で,RNAポリメラーゼ以外
のたん白質。転写の開始反応を誘導する転写開始因子と,転
写を正又は負に調節する転写調節因子がある。
2371
転写解読枠/オ
てんしゃかいどく
open reading
アミノ酸配列として翻訳され得るDNA塩基配列のこと。ORF
36
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
ープンリーディ
ングフレーム/
コーディング領
域/翻訳領域
わく/おーぷんり
ーでぃんぐふれー
む/こーでぃんぐ
りょういき/ほん
やくりょういき
frame/ORF/
coding frame
を調べることによって翻訳され得るたん白質の数とアミノ酸
配列を知ることができる。原核生物では一本のmRNAの上に
複数のORFがあるが,真核生物ては一本のmRNAには一つ
のORFしかない。mRNAのORFに対応するDNA上の領域
もORFと呼ばれる。
2372
転写調節/
転写制御
てんしゃちょうせ
つ/てんしゃせい
ぎょ
transcriptional
control
遺伝情報の発現過程において,転写段階に働く調節。
2373
突出末端/相補
末端/付着端
とっしゅつまった
ん/そうほまった
ん/ふちゃくたん
sticky end/
cohesive end
DNA分子又はDNA断片の末端部位の数塩基が一本鎖として
突き出しているDNAの構造。両末端は互いに相補性がある。
この性質を利用して異種DNAを挿入する。
2374
トランジション
変異/塩基転位
とらんじしょんへ
んい/えんきてん
い
transition
DNA塩基対の置換の一形式で,プリン塩基が他のプリン塩基
と,ピリミジン塩基が他のピリミジン塩基と置き換わること。
2375
トランスバージ
ヨン変異/塩基
転換
とらんすばーじょ
んへんい/えんき
てんかん
transversion
DNA塩基対の置換の一形式で,プリン塩基がピリミジン塩基
と,ピリミジン塩基がプリン塩基と置き換わること。
2376
トランスファー
RNA/転移
RNA
とらんすふぁーあ
ーるえぬえー/て
んいあーるえぬえ
ー
transfer
RNA/tRNA
翻訳の過程で特定のアミノ酸をリボソームへ運ぶ低分子量の
RNA。mRNAのもつコドンを厳密に読み取るアンチコドン領
域がある。3ʼ末端にはすべてのtRNAに共通のCCAの配列が
ある。
2377
トランスフェク
ション/移入
とらんすふぇくし
ょん/いにゅう
transfection
細胞にDNAを直接導入して細胞の遺伝形質を変化させる方
法。通常,目的とするDNAはベクターに挿入して導入する。
遺伝子機能の解析,植物育種,細菌内でのファージ増殖など
に利用される。
2378
トランスポゾン
/転位因子
とらんすぽぞん/
てんいいんし
transposon/
Tn transposable
element
転位性遺伝要素の一つで,自らの転移に必要な遺伝子のほか
に薬剤耐性遺伝子など他の遺伝子をもったもの。IS (insesion
sequence) よりも大きく,両末端に反復配列 (inverted repeat
IR) をもっている。転移のとき働くたん白質(トランスポゼ
ース)の遺伝子をもつものもある。
2379
ナンセンス変異
なんせんすへんい
nonsense mutation
突然変異によってコドンが変化して翻訳が停止する変異。
UAGをアンバー (amber) codon,UGAをオパール (opal)
codon,UAAをオーカー (ochre) codonともいう。
2380
ニックトランス
レーション
にっくとらんすれ
ーしょん
nick translation
二本鎖DNAをエンドヌクレアーゼで軽く処理し,一本の鎖
に切れ目をつける。その切れ目からDNA polymeraselで5ʼ→3ʼ
方向に新たなDNA合成を行うこと。この方法で特定の遺伝
子の比活性の高い標識DNAを作製できる。サザンブロティ
ング法などに使用される。
2381
ノックアウトマ
ウス
のっくあうとまう
す
knockout mouse
ジーンターゲッティング(相同組換え技術)で任意の遺伝子
を破壊し機能を欠損させたトランスジェニックマウス。遺伝
子の生体内での機能を調べる有力な手法となっている。
2382
ハウスホールデ
ィング遺伝子/
ハウスキーピン
グ遺伝子
はうすほーるでぃ
んぐいでんし/は
うすきーぴんぐい
でんし
house holding
gene/
housekeeping gene
個体のいろいろな種類の細胞で共通に働いていて,細胞の生
存に必す(須)の遺伝子。luxury geneの対語。
2383
発現ベクター
はつげんべくたー
expression vector
遺伝子産物を宿主細胞で効率的に発現させるために作られた
ベクター。
2384
表現型
ひょうげんけい
phenotype
生物の観察し得る形態的及び生理的性質。遺伝子型の対語。
2385
標識遺伝子
ひょうしきいでん
し
genetic marker/
marker gene
遺伝解析に利用できる遺伝的に決定されている形質が,明り
ょうに分かる遺伝子。薬剤耐性(抗生物質耐性など),温度感
37
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
受性,栄養要求性などがよく利用される。
2386
部位特異的突然
変異
ぶいとくいてきと
つぜんへんい
site directed
mutagenesis/
site specific
mutagenesis
遺伝子の特定の部位に特定の変異を導入する技法。変更しよ
うとするDNA配列だけを変え,その前後は目的のDNAと相
補的なオリゴヌクレオチドを合成する。これを改変しようと
する一本鎖DNAとアニーリングさせ,これにDNA合成酵素
を働かせて変異DNAを得ることができる。Muファージを用
いることも多い。
2387
複合プラスミド
ふくごうぷらすみ
ど
hybrid plasmid/
chimaera plasmid/
composite plasmid
由来の異なるプラスミドからなる複合プラスミドのこと。コ
スミド,シャトルベクターなどがある。
2388
物理的封じ込め
ぶつりてきふうじ
こめ
physical
containment
組換え体を施設,設備内に物理的に閉じこめることにより,
伝搬,拡散を防止すること。実験レベルではP1からP4まで,
大量培養ではLS-C/LS-1/LS-2がある。実生産ではGLSP,カ
テゴリー1/2/3がある。
2389
プライマー
ぷらいまー
primer
DNA合成の開始や遺伝子工学実験で逆転写酵素を用いて相
補的DNAの合成を開始する際に要求されるヌクレオチド。
短鎖のRNA又は一本鎖DNAが一部折り返してもprimerとな
り得る。ファージなどではヌクレオチドの30Hの代わりにセ
リン又はチロシンのOH基がprimerとして働くことが発見さ
れた (protein priming)。
2390
プラスミド
ぷらすみど
plasmid
細菌や細胞内で染色体とは別個に存在して自律的に複製され
る遺伝因子。遺伝子操作においてベクターとしてよく用いら
れる。大腸菌のpBR322,酵母のYRp7,植物のTiプラスミド
などがその例である。
2391
プリブノーボッ
クス/タータボ
ックス
ぷりぶのーぼっく
す/たーたぼっく
す
Pribnow box
原核生物のmRNA転写において転写開始部位から10塩基ほ
ど上流のRNA polymearaseが認識結合する部位にある共通の
構造(5ʼ) TATAATG (3ʼ)。
2392
プローブ(DNA
プローブ)
ぷろーぶ(でぃー
えぬえーぷろー
ぷ)
probe
組換えDNA実験で目的遺伝子を探り出すために用いる核酸
断片。例えば目的遺伝子のmRNAから作成したcDNAやたん
白質のアミノ酸配列を基にしてデザイン,合成したもの。又
遺伝子病に関与する特定遺伝子の検出に用いることもある。
2393
プロモーター
(転写の)
ぷろもーたー(て
んしゃの)
promoter
転写を開始させるために必要なDNA上の特徴的な塩基配列。
RNA polymeraseの結合に関与しているTATA box,Pribnow box
などの翻訳されない配列。
2394
平滑末端
へいかつまったん
flush end/
blunt end
制限酵素などで二本鎖DNAを切断した際,二本鎖の同一箇
所が切断されるために生じるDNAの構造。T4ファージリガ
ーゼは適切な条件下で,平滑末端を繋げるが効率はよくない
ので,通常は末端に適切なリンカーDNAをつけることもあ
る。
2395
ベクター
べくたー
vector
目的とする遺伝子を宿主に移入し,増殖,発現させるための
運搬体DNA。宿主内で複製できること,既知の制限酵素切断
部位があること。適切な標識遺伝子をもつことがベクターと
しての要件である。本来は病気を媒介する昆虫を指す。
2396
ヘテロカリオン
へてろかりおん
heterokaryon
一つの細胞に2個以上の遺伝子型の異なる核が存在する状
態。核融合が起こっていないのでヘテロカリオン試験を,細
胞質遺伝研究の手段の一つにでき,同種の核が融合せずに存
在するものをホモカリオン (homokaryon) という。
2397
ホグネスボック
ス/タータボッ
クス
ほぐねすぼっくす
/たーたぼっくす
Hogness box/
TATA box
真核生物のmRNA転写において転写開始部位から30塩基ほ
ど上流のRNA polymerase IIが認識結合する部位にあり,ヒト
から酵母までに共通の構造(5ʼ) TATAAA (3ʼ)。
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
2398
翻訳
ほんやく
translation
mRNAの情報に従ってたん白質を合成する過程。リボソーム
上でtRNAが運んできたアミノ酸をペプチジルトランスフェ
ラーゼでアミノ酸を重合させること。
2399
マイクロインジ
ェクション
まいくろいんじぇ
くしょん
microinjection
卵細胞や体細胞に微量のDNAや化合物を細いガラス針など
を用いて注入する方法。顕微鏡下で,マイクロマニピュレー
ターを使用して行う。トランスジェニック動植物を作成する
のに用いられる。
2400
酵母人工染色体
/YAC
こうぼじんこうせ
んしょくたい/や
っく
yeast artificial
chromosome/YAC
酵母で染色体として機能するセントロメア,複製開始点,テ
ロメアを含む大腸菌と酵母のシャトルベクター。
2401
融合遺伝子/モ
ザイク遺伝子
ゆうごういでんし
/もざいくいでん
し
fused gene/
fusion gene/
chimaera gene/
hybrid gene
ある遺伝子を別の遺伝子と連結することによって,各々の遺
伝子のすべて又は一部をもった連結遺伝子。天然には存在し
ない遺伝子で異種たん白質を生産するのに利用される。
2402
ラグジュアリー
遺伝子
らぐじゅありーい
でんし
luxury gene
分化した細胞でその細胞に特有のたん白質の産生に関与して
いる遺伝子。この遺伝子が働かなくとも細胞の生存には支障
のないものともいえる。
2403
ラプド法/
RAPD
らぷどほう/あー
るえーぴーでぃー
random amplified
polymorphic
DNA/RAPD
10塩基程度の任意の配列をもったDNAをプライマーとして
PCRを用いてDNA増幅を行い,試料間のDNA多型を検出す
る方法。簡便さから多型解析や遺伝子マーカーとしてよく用
いられている。プライマーはキットとして市販されている。
2404
リーダー配列
りーだーはいれつ
leader sequence
転写されるmRNAの5ʼ末端からアミノ酸重合開始コドンまで
の翻訳されない配列。翻訳に際して重要な配列[SD
(Skaine-Del gorns) sequence, attenuation sequenceなど]を含む。
2405
リプレッサー
りぷれっさー
repressor
DNA上の特定領域(オペレーター)に結合して,オペロンの
転写を阻止するたん白質。誘導酵素系(ラクトースオペロン
など)ではリプレッサーに誘導物質が結合すると不活性化さ
れて,転写が開始される。抑制酵素系(トリプトファンオペ
ロンなど)では,誘導物質が結合して,活性化されて転写が
阻止される。
2406
リンカー
りんかー
linker
二つのDNA断片を結合させるとき制限酵素が認識する部位
を作る目的で,つなぎ目に挿入する合成ヌクレオチド配列。
利用度の高い制限酵素(EcoRI, BamHI, Sallなど)の認識部位
をもつものが市販されている。
2407
レトロポゾン
れとろぽぞん
retroposon
RNAを転移中間体とする転移遺伝因子群。
2408
レプリコン/
複製単位
れぷりこん/
ふくせいたんい
replicon
隣り合った複製開始遺伝子の制御下にあるDNAの複製単位。
大腸菌,プラスミドなどは,1か所の複製開始点をもち,そ
れ自体が一つのレプリコンである。一方動物細胞のDNAは
何箇所もの複製開始点があり,複数のレプリコンよりなって
いる。
d) 一般的操作
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
2501
アニーリング
(DNAの)
あにーりんぐ
(でぃーえぬえー
の)
annealing
二本鎖DNAを水溶液中で特定の温度以上に加熱すると一本
鎖に分かれる。これを徐々に冷やして再結合してもとの生物
活性のあるDNAに戻すこと。このとき近縁の生物に由来す
るDNAを混在させると,雑種DNAができる。雑種DNAの
形成の程度は用いたDNAの近縁度を示す。
2502
アビジン−ビオ
チン法
あびじん−びおち
んほう
avidin-biotin
technique
一次抗血清を特定の抗原に対して作成して,特定の抗原と反
応させたあと,あらかじめ準備したビオチン化した二次抗体
で処理する。次いであらかじめ準備したアビジン−ビオチン
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
−ペルオキシダーゼ複合体を用いて二次抗体が反応した部位
を特定する免疫ペルオキシダーゼ法。ペルオキシダーゼ反応
は,過酸化水素とジアミノベンゼン又はクロロナフトールと
の反応による発色によって検出できる。この方法はパラフィ
ン包埋標本,塗沫標本などに応用できる。
2503
アフィニティク
ロマトグラフィ
ー
あふぃにてぃくろ
まとぐらふぃー
affinity
chromatography
生体物質の示す特異的な相互作用(親和性)を利用して多成
分混合物からある目的成分を分離する手段。酵素や抗原など
の高い特異性のある物質を固定化して担体とするので,原料
中の含量の極めて低いものの精製も可能になった。
2504
移動層式連続ク
ロマトグラフィ
ー
いどうそうしきれ
んぞくくろまとぐ
らふぃー
moving bed
continuous
chromatography
固定相を移動させて行う連続クロマトグラフィー。
2505
インビトロ検査
いんびとろけんさ
in vitro analysis
生体外に取り出して人工的な系で行う検査。生物個体がもつ
各種の制御機構の影響を排除して純粋な生理的反応を確認で
きるが,一方限られた反応しか検出できない。微量で,簡便
に行える特徴があり臨床検査法などに応用されている。
2506
ウエスタンブロ
ツト法
うえすたんぶろっ
とほう
western blot
technique
アクリルアミドスラブゲルなどの上で分離したたん白質をニ
トロセルロース膜などに転写,同定する方法。
2507
エアロゾル
えあろぞる
aerosol
気体中に分散している微細な液体又は固体粒子及びその状
態。バイオハザード対策の最も重要な項目の一つ。
2508
エームス試験
えーむすしけん
Ames test
ヒスチジン要求性サルモネラ菌の復帰変異試験。変異原性試
験の一つ。癌原性の可能性ある物質を検出するための第一次
スクリーニングに用いられる。代謝活性化を受けて生物活性
を示すものの検出には肝臓ホモジネートの遠心上澄(S9)を使
って検討する。
2509
滅菌保証レベル
/SAL
めっきんほしょう
れべる/えすえー
える/さる
sterility assurance
level
ある条件(温度,酸化エチレン濃度,線量など)で,あるも
のを処理した結果,それに付着している菌が生き残っている
であろう確率をいう。
2510
SDS PAGE
えすでぃえすぺー
じ
SDS PAGE/
sodium dodecyl
sulfate polyacryl
amide gel
electrophoresis
ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) の存在下で行うポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動法。SDSはたん白質と結合してたん白
質固有の負電荷を消してしまうので,ポリペプチド鎖レベル
で分析できる。また,難溶性のたん白質を溶かすこともでき
る。たん白質の分子量や会合状態の検討に用いられる。
2511
S1マッピング
えすわんまっぴん
ぐ
S1mapping
成熟mRNAがDNAのどこにマップされるかを知る方法。
mRNAと相補的配列を含むDNAとアニーリングし,非相補
部分をS1nucleaseて分解する。これを熱処理で分離して一本
鎖のDNAを得て,その大きさ塩基配列を解析できる。
2512
X線結晶構造解
析
えっくすせんけっ
しょうこうぞうか
いせき
X-ray
crystallographic
analysis
X線が結晶によって回析されることを利用して結晶内部の分
子,原子の配置,電子分布,スピン分布などの状況を解析す
ること。低分子化合物の構造解析及び高分子物質の構造解析
に利用されている。
2513
N末端分析
えぬまったんぶん
せき
N-terminal
analysis
たん白質,ペプチドのアミノ酸配列で,アミノ基側の末端ア
ミノ酸配列を分析する方法。主な方法としてエドマン法,ジ
ニトロフェニル法,ダンシルクロリド法などがある。自動化
した装置としてペプチドシーケンサーがある。
2514
FAB質量分析法
えふえーびーしつ
りょうぶんせきほ
う
fast atom
bombardment mass
spectrometry/
FAB-MS
質量分析の際,高速の中性原子を一次粒子として用い,グリ
セロールと混合して金属表面に塗布した試料に照射して得ら
れる二次イオンを分析する方法。分子量に関する情報が得ら
れやすい。
2515
FD質量分析法
えふでぃーしつり
field desorption
質量分析の際,樹脂状の細いエミッターに試料を塗布して高
40
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
ょうぶんせきほう
mass spectrometry
/FD-MS
い電圧をかけることによってイオン化させ,これを分析する
方法。
2516
FT赤外分析法
えふてぃーせきが
いぶんせきほう
Fourier transform
infrared
spectrometry
横軸に時間又は光路差をとった応答曲線をとり,これをフー
リエ変換して分散型分光器で得られるように横軸に周波数又
は波長を,縦軸に吸収又は発光強度が得られるように測定す
る方法。分子構造の推定や定量分析に利用される。
2517
ELISA/酵素免
疫(検査)法/
酵素抗体法/
エンザイムイム
ノアッセイ
えらいざ/
こうそめんえき
(けんさ)ほう/
こうそこうたいほ
う/えんざいむい
むのあっせい
enzyme-linked
immunosorbent
assay/
enzyme-
immunoassay
ハプテンを酵素で標識し,抗ハプテン抗体と反応させること
によって酵素活性が変化することを利用した酵素免疫(検査)
法。臨床診断法などに応用されている。酵素で標識した抗原
又は抗体によって分析する方法。ペルオキシダーゼやガラク
トシダーゼがよく用いられ,酵素反応によって発色する基質
の発色度によって測定する。
2518
エレクトロポレ
ーション/電気
窄孔法
えれくとろぽれー
しょん/でんきさ
っこうほう
electroporation
細胞に高電圧をかけて膜の透過性を亢進させDNAやオルガ
ネラを導入する方法。特に動・植物の細胞への遺伝子導入に
用いられる。手軽さと効率がよい。
2519
遠心分離法
えんしんぶんりほ
う
centrifugation
遠心力場において物質を形状と比重差によって分離する方
法。核酸やたん白質,細胞内顆粒,オルガネラ等の調製や分
析に利用する。
2520
塩析法
えんせきほう
salting-out
溶液に塩類を加えて,先に溶けていた物質を析出させる方法。
たん白質の沈殿などに用いられる。硫酸イオンやりん酸イオ
ンなど多価の陰イオンを含む塩が塩析効果が大きい。
2521
円二色性/
円偏光二色性
えんにしょくせい
/えんへんこうに
しょくせい
circular
dichroism
物質が同一波長の左円偏光と右円偏光に対して異なる吸光度
を示す現象。不斉分子の立体構造や立体配座を決定するのに
利用する。
2522
オートラジオグ
ラフィー
おーとらじおぐら
ふぃー
autoradiography
X線フィルムに密着させて感光させることによって,試料中
の標識化合物の分布を調べる方法。放射性同位元素で標識す
るので微量の物質を検出することができるブロット法などの
分析法又は薬物の生体内分布の測定など広く利用されてい
る。
2523
火炎殺菌/
火炎滅菌
かえんさっきん/
かえんめっきん
burning
灼熱や焼却によって微生物を殺すこと。白金線,白金耳など
金属性のものやガラス棒などをガスバーナーで殺菌すること
がよくある。
2524
化学発光
かがくはっこう
chemiluminescence
原子又は分子が,化学反応によって生じるエネルギーにより
励起され,発光する現象。例えば,過酸化水素としゅう酸ジ
エステルが反応して生じる中間体が蛍光物質を励起発光する
ことを利用して,過酸化水素を発生する酵素反応を感度よく
測定できる。
2525
ガス殺菌/
ガス滅菌
がすさっきん/
がすめっきん
gas sterilization
殺菌効力をもつガスに接触させることによって行う殺菌。加
熱処理ができないプラスチック器具などの殺菌法。エチレン
オキサイドがよく使われる。
2526
間けつ殺菌/
間けつ滅菌
かんけつさっきん
/かんけつめっき
ん
intermittent
sterilization/
fractional
sterillization
100℃の湿熱で1日1回30分の加熱を3回繰り返す殺菌。細
胞を加熱で殺し,次の加熱までの間に胞子が発芽するのを待
って,殺菌しやすい生細胞として殺菌することを狙っている。
2527
乾熱殺菌/
乾熱滅菌
かんねつさっきん
/かんねつめっき
ん
dry heat
sterilization
乾燥した加熱空気によって行う殺菌。通常,165〜170℃,2
〜3時間行う。ガラス器具,包帯,綿栓などの殺菌を行う。
2528
疑似移動層式連
続クロマトグラ
フィー
ぎじいどうそうし
きれんぞくくろま
とぐらふぃー
simulated moving
bed continuous
chromatography
原料及び溶離液の供給排出位置を切り換えて固定相を動かす
ことなく行う連続クロマトグラフィー。
41
K 3600 : 2000
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
2529
逆浸透法
ぎゃくしんとうほ
う
reverse osmosis
膜と加圧によって溶液中の低分子量溶質や溶媒を分離する方
法。通常,分子量500以下が対象。たん白質を濃縮したり,
また海水から真水を得ることなどに利用されている。
2530
くん蒸消毒
くんじょうしょう
どく
fumigation
昆虫や微生物の生活力を奪うガスを用いる消毒。ホルマリン,
亜硫酸ガス,クロールピクリンなどが用いられる。
2531
蛍光抗体法
けいこうこうたい
ほう
fluorescent
antibody method
蛍光をもつ物質によって標識した抗体による分析方法又は染
色方法。よく使われる色素としてフルオレシン・イソチオシ
アネート (FITC) とローダミンがある。
2532
硅藻土濾過法
けいそうどろかほ
う
diatomaceous
earth filtration
けい(硅)藻土をあらかじめ支持面に積層(プレコート)し,
その層で濾過する方法。発酵液から菌体を分離するときその
速度を早めるためによく使われる。
2533
限界希釈法
げんかいきしゃく
ほう
limiting dilution
method
細胞又はウイルスを含む培養液を,1滴にその1個又はそれ
以下が含まれる程度にまで希釈し,この1滴を多数の新しい
液体培地に摂取して培養する方法。単クローン化に用いられ
る。
2534
高圧蒸気殺菌/
高圧蒸気滅菌
こうあつじょうき
さっきん/こうあ
つじょうきめっき
ん
autoclaving
高圧水蒸気を用いて殺菌する湿熱殺菌法。通常は120℃,ゲ
ージ圧1kg/cm2,20分で行う。培地,各種器具などの最も一
般的な殺菌法。
2535
光学分割
こうがくぶんかつ
optical resolution
光学対掌体を分割すること。光学活性の酸又は塩基との塩を
形成させて光学対掌体ではない異性体に導き,物理化学的な
差をつけて分離するか光学活性分離用担体によるクロマトグ
ラフ法又は酵素や微生物による生物反応を利用して分離す
る。
2536
好気性処理
こうきせいしょり
aerobic treatment
酸素呼吸を伴う微生物の作用で有機物を分解,処理する方法。
活性汚泥法による廃液処理はこの原理を応用している。
2537
高周波殺菌法/
高周波滅菌法
こうしゅうはさっ
きんほう/
こうしゅうはめっ
きんほう
high frequency
induction
germicide
水又は水を含む物質が高周波の照射を受けて生じる熱による
殺菌法。食品などの殺菌法。
2538
固定化(リガン
ドの)
こていか(りがん
どの)
immobilization
(of ligand)
リガンドを支持体に共有結合させること。リガンドの特異性
を十分に発揮させるため適当なスペーサーを介して結合させ
る。アフィニティークロマトグラフ法の担体として利用され
る。
2539
コロニーハイブ
リダイゼーショ
ン
ころにーはいぶり
だいぜーしょん
colony
hybridization
探索したいDNAの配列を全部又は一部の配列を含むDNA断
片に標識を付け,これを平板培地に培養して目的のDNAを
含むと思われる細菌群のコロニーをフィルターに転写溶解し
て,露出させたDNAと相補的結合させることによって目的
DNAを検出する方法。
2540
コンフォメーシ
ョン
こんふぉめーしょ
ん
conformation
結合の回転によって生じる原子の空間的配置のこと。たん白
質などの高分子化合物については,特異な生物機能や生理活
性維持に重要な三次元的立体構造を指す。
2541
細胞凍結法
さいぼうとうけつ
ほう
cryopreservation
培養細胞,精子,卵などを細胞機能を回復可能な状態に保っ
たまま凍らせて保存すること。細胞外に氷晶を緩やかに成長
させることによって,細胞内を脱水させて,氷晶による細胞
内構造の破壊を少なくして超低温に凍結する。
2542
細胞融合
さいぼうゆうごう
cell fusion
2個以上の細胞が融合して隔壁が消失し,単一の細胞膜で包
まれた細胞が生じる現象。植物細胞では育種技術として,動
物細胞ではハイブリドーマを形成してモノクローナル抗体を
産生するための必す(須)技術である。
42
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
2543
サザンブロット
法
さざんぶろっとほ
う
Southern blot
technique
アガロースゲルなどの上で分離したDNA断片をニトロセル
ロース膜などへ転写し,同定する方法。最初に方法を開発し
たDr. Southernにちなんで命名した。以後それにちなんで方位
の名を付けるのが慣習。
2544
殺菌/滅菌
さっきん/めっき
ん
sterilization
微生物の生活力を奪い,生存しているものを完全になくし,
無菌状態を作り出すこと。広義には無生物状態を作り出すこ
と。ごく狭い意味では細菌を殺すことを指すことがある。
2545
サンドイッチ法
さんどいっちほう
sandwitch
technique
抗原を試料中の抗体及びそれと同じ性質の蛍光抗体で挟み込
んで免疫反応を検出する方法。
2546
C末端分析
しーまったんぶん
せき
C-terminus
analysis
たん白質,ペプチドのアミノ酸配列で,カルボキシル基側の
末端アミノ酸を分析する方法。主な方法としてヒドラジン分
解,トリチウム標識法,及びカルボキシペプチダーゼを用い
る酵素法がある。
2547
時間分解蛍光イ
ムノアッセイ
じかんぶんかいけ
いこういむのあっ
せい
time-resolved
fluoroimmunoas-
say
試料溶液中の特定物質を定量するために,抗原抗体反応を利
用し検出試薬として標識蛍光色素を利用する高感度蛍光免疫
測定法の1種。蛍光寿命の長い色素を用いて励起光を照射し
た直後に生じる様々な迷光が消失した後に測定対象の蛍光を
測定することによって高感度で定量する方法。
2548
質量分析法
しつりょうぶんせ
きほう
mass spectrometry
イオン化した分子及びそのフラグメントを電磁場に導入し,
その移動状況からm/z(質量・電荷比)のスペクトルを求め,
定性・定量を行う方法。様々のイオン化法が考案されている。
一般にガス状の試料に電子衝撃をあたえてイオン化する
(EI-MS/electron impact mass spectrometry)。
2549
消毒
しょうどく
disinfection
病因微生物を不活化したり,除去したりして感染が起こらな
いようにすること。殺虫,解毒を意味することもある。必ず
しも殺菌を意味しない。
2550
静脈栄養法/ハ
イパーアリメン
テーション
じょうみゃくえい
ようほう/
はいぱーありめん
てーしょん
hyperalimentation
経口栄養摂取ができないとき,上行大静脈にカテーテルを入
れ,これを通じてアミノ酸,糖を含む高張液,脂肪乳剤,ビ
タミンなどを持続的に与えて栄養を確保すること。
2551
除菌
じょきん
elimination/
microlees
洗浄,ろ過,遠心分離,電気的手法などによって,微生物を
除くこと。
2552
ショットガン法
しょっとがんほう
shotgun cloning
目的とする特定のDNA断片を狙ってクローニングするので
はなく,全DNAを適当に断片化し,すべてをクローン化し,
そのなかから目的の断片をもつものを探す方法。
2553
真空凍結乾燥/
冷凍真空乾燥
しんくうとうけつ
うかんそう/れい
とうしんくうかん
そう
freeze-dry/
lyophilization
凍結した溶媒を真空下で昇華・除去すること。生物試料の濃
縮や保存に用いられる。微生物の保存によく用いられるが,
このときは処理過程及び復元のときの傷害を最少にするため
保護剤を加える。
2554
浸透気化法
しんとうきかほう
pervaporation
膜の片側へ液体を置き,反対側へ蒸気として成分を取り出す
方法。膜の親水性を利用するアルコールの脱水はその一例。
2555
水性二相分配法
すいせいにそうぶ
んぱいほう
aqueous two-phase
partition method
互いに溶けにくい2種類の水溶液で2層を形成させ,この2
層に対する親和性の差を利用する分離法。水溶性高分子物質
や細胞顆粒の分離に利用される。
2556
スクリーニング
すくりーにんぐ
screening
ある特定の生物活性又は化学的性質をもった物質又は特定の
性質をもった生物個体を集団の中から選別する操作。例えば,
抗生物質の生産菌を選別し,さらに,生産された物質の新規
性を検討しながら特定の菌株を選抜すること。
2557
スペーサー(固
定化用の)
すぺーさー(こて
いかようの)
spacer
リガンドを支持体分子から離して固定化するために,支持体
との間に導入する適当な長さの鎖状分子。鎖状分子の末端に
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K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
固定化に使用できるジスルフィド基,ヘキサメチレンジアミ
ン基などが付けられたものを活性化支持体という。
2558
生物発光
せいぶつはっこう
bioluminescence
生物が自ら光を発する現象。細菌,菌類,原生動物,昆虫(ホ
タル)など多数知られている。
2559
染色体分析/核
型分析
せんしょくたいぶ
んせき/
かくがたぶんせき
chromosome
analysis/karyotype
analysis
染色体の数と形を分析すること。体細胞分裂の中期に観察さ
れる生物種に固有の染色体構成を分析することによって,種
の系統・類縁関係及び表現系として発現する前の遺伝的変異
を検出するのに利用される。パルスフィールドゲル電気泳動
法でも解析できる。
2560
体細胞雑種形成
法
たいさいぼうざっ
しゅけいせいほう
somatic cell
hybridization
遺伝型の異なる培養細胞を融合して,シンカリオンを形成さ
せること。細胞工学の重要な技術の一つである。
2561
担体結合法
たんたいけつごう
ほう
carrier binding
method
生体触媒を水不溶性の担体に物理的又は化学的に固定する方
法。酵素の離脱がなく,基質との接触性もよい。酵素の熱安
定性を増すことも多い。臭化シアンによるデキストラン,ア
ガロースとの固定,酸アミド法によるカルボキシメチルセル
ロースとの固定などがよく行われる。
2562
チェインターミ
ネーター法/ジ
デオキシ法/サ
ンガー法
ちぇいんたーみね
ーたーほう/じで
おきしほう/さん
がーほう
dideoxy chain
termination
method/Sanger
method
1本鎖DNAファージM13に目的とするDNA断片を結合し,
プライマーDNAをアニーリングしてDNAポリメラーゼで
cDNAを合成する。このとき基質としての4種のヌクレオチ
ド三りん酸とジデオキシ三りん酸を独立した四つの反応系に
それぞれ1種加える。反応生成物を電気泳動によって分け,
各バンドに対応する塩基を同定することによって配列を決め
る酵素的DNA塩基配列決定法。
2563
超音波処理
ちょうおんぱしょ
り
supersonic
treatment
超音波照射によって,菌体の破砕,はく離などを行うこと。
可聴周波領域よりも高い振動数の音波を用いる(20kHz以
上)。
2564
超臨界流体クロ
マトグラフィー
ちょうりんかいり
ゅうたいくろまと
ぐらふぃー
supercritical fluid
chromatography
超臨界流体を移動相とするクロマトグラフ法。固形物の成分
分析や超臨界ガス抽出条件の検討に利用される。
2565
超臨界抽出法
ちょうりんかいち
ゅうしゅつほう
supercritical fluid
extraction
超臨界流体(気体を臨界点以上に加圧した液体)を用いて抽
出する方法。緩和条件下で効率よく目的物を分離抽出できる。
薬草の有効成分,食品の香気成分,脂肪酸の分離などに利用
されている。
2566
ディファレンシ
ャルディスプレ
イ法
でぃふぁれんしゃ
るでぃすぷれいほ
う
differential
display/DD
RNAからPCR法によってDNAを増幅し,その電気泳動パタ
ーンを比較することにより遺伝子発現の特異性を研究する手
法。
2567
電子スピン共鳴
分析法
でんしすぴんきょ
うめいぶんせきほ
う
electron spin
resonance
analysis/ESR
試料物質の不対電子の数と存在状態を,磁場中でのスピンの
磁場共鳴によるマイクロ波吸収によって分析する方法。酸化
還元反応の中間体ラジカル,鉄や銅イオンを含むたん白質な
どの研究に用いる。
2568
透析法
とうせきほう
dialysis
膜を隔てて,一方に溶液を他方に溶媒を流すことによって,
溶液中の低分子溶質を濃度差によって分離する方法。使用す
る膜は半透性のもので,セロファン膜,コロジオン膜,合成
半透膜などが使われる。
2569
二次元核磁気共
鳴分析法
にじげんかくじき
きょうめいぶんせ
きほう
two dimentional
NMR
二つの時間変数に対するスピン系のパルス応答を2度フーリ
エ変換する核磁気共鳴分析法。
2570
二次元電気泳動
法
にじげんでんきえ
いどうほう
two dimensional
electrophoresis
原理の異なる2種類の電気泳動法を逐次組み合わせて行う電
気泳動法。まず比較的細いガラス管を用いてゲル電気泳動を
行い,これをスラブゲル電気泳動の開始点に埋め込んで第2
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
回目の泳動を行う。
2571
二重染色法
にじゅうせんしょ
くほう
double staining
2種類の異なった染色剤で逐次染色する方法。細胞や組織を
より詳しく弁別して染め分けること。グラム染色法もその一
つである。
2572
ノーザンブロッ
ト法
のーざんぶろっと
ほう
Northern blot
technique
アガロースゲルなどの上で分離したRNA断片をニトロセル
ロース膜などへ転写し,同定する方法。
2573
バイオアッセイ
/生物学的定量
法
ばいおあっせい/
せいぶつがくてき
ていりょうほう
bioassay
物質の量,構成成分又は効力を,その物質を与えられた生物
の反応から推定する方法。
2574
バイオオートグ
ラフィー
ばいおおーとぐら
ふぃー
bioautography
微生物や細胞を用いて,その生育や機能に影響を与える物質
を検出する方法。薄層クロマトグラフ法又はぺーパークロマ
トグラフ法で混合物を分離後,検定用の寒天プレート上に置
き,一定時間培養後有効物質の位置を知る方法。
2575
ハイスループッ
トスクリーニン
グ
はいするーぷっと
すくりーにんぐ
high through put
screening
多様な対象物から目的のものをロボット・自動解析装置を用
いて包括的かつ高速に見つけだすこと。
2576
ハイブリダイゼ
ーション法
はいぶりだいぜー
しょんほう
hybridization
DNAとDNA又はDNAとRNAの間で塩基配列に相補性があ
るときに二重鎖を形成する。この原理を応用して核酸の相同
性を判定できる。核酸を溶液中で混ぜて加熱し,そのあと徐
冷して二重鎖を形成させる。
2577
ハイブリドーマ
はいぶりどーま
hybridoma
リンパ球とミエローマ細胞を人工的に融合させてできる雑種
細胞。モノクローナル抗体を作るのに利用される。
2578
発色合成基質法
(比色法)
はっしょくごうせ
いきしつほう(ひ
しょくほう)
chromogenic
method
(colorimetry)
酵素によって加水分解されたとき,着色生成物を生じる合成
基質を用いた酵素作用の測定法。エンドトキシンの測定など
にも利用される。
2579
パッチクランプ
法
ぱっちくらんぷほ
う
patch clamping
細胞膜の一部をマイクロピペットの先端を用いて取り出し,
ここに流れる電流を測定する方法。
2580
パルスフィール
ドゲル電気泳動
法
ぱるすふぃーるど
げるでんきえいど
うほう
pulsed-field gel
electrophoresis/
PFG
electrophoresis
電場の方向を正逆交互に変えたり,方向に変化をつけて大き
なDNA分子(百万塩基対くらいまで)を分離するための方
法。
2581
PCR/プライマ
ー利用遺伝子増
幅
ぴーしーあーる/
ぷらいまーりよう
いでんしぞうふく
polymerase
chain reaction/
primer-directed
enzymatic
amplification of
DNA
試料DNA断片をプライマーと結合させ,2重鎖DNAをDNA
ポリメラーゼ(Klenow polymerase又はThermus aquaticus (Taq
polymerase))を用いて合成する。次いで熱変性して合成され
たDNAを鋳型から離す。再びアニーリングさせ,先の工程
を繰り返す。このとき熱耐性のTaq polymeraseを用いること
によって酵素の補給をすることなくこのサイクルを繰り返す
ことによって,目的のDNA配列を増幅できる。2 000塩基対
くらいのものを106くらい増幅できる目的遺伝子を互いに逆
方向から挟み込むような2種の相補的オリゴヌクレオチドプ
ライマーをハイブリダイズさせ,行う方法をnest PCR法とい
う。RNAからの増幅も可能。
2582
比濁時間分析法
(比濁法)
ひだくじかんぶん
せきほう(ひだく
ほう)
kinetic
turbidimetric-
method
反応液の透過光量が,あらかじめ定められた値に達するまで
の反応時間を測定することによって,凝集反応の平均反応速
度を測定する方法。カブトガニ血球抽出物を用いたエンドト
キシン,(1→3) -β-D-グルカンの測定にも利用される。
2583
非特異的吸着
ひとくいてききゅ
うちゃく
nonspecific
adsorption
特定の官能基又はリガンドに特異的に吸着すること以外の吸
着で,予期しない,又は,好ましくない吸着現象。
2584
フローサイトメ
トリー
ふろーさいとめと
りー
flow cytometry
蛍光標識又は未標識の細胞などを大きさ,光散乱様式,蛍光
等の因子について定量的に解析し,その情報に基づいて特定
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
の細胞などを迅速に選択分離する方法。蛍光活性化セルソー
ターはその一つの例である。
2585
ブロツト法/ブ
ロツトハイブリ
ダイゼーション
法
ぶろっとほう/ぶ
ろっとはいぶりだ
いぜーしょんほう
blotting method/
blot hybridization
method
核酸やたん白質をメンブレンフィルターに浸み込ませ
(blot),固定させた後,標識したプローブを用いてそのプロー
ブと反応するものの位置を検出する方法。標識したDNAプ
ローブとハイブリダイゼーションさせたり,抗体と反応させ
てその位置を決定する。
2586
分取
ぶんしゅ
separation
実験室で用いられる分析 (analysis) に対して,工業で目的生
産物を得る方法。したがって,物質を同定することではなく,
決まったプロセスで活性を失わず,純度を保ち,確実に分離
することが要求される。
2587
包括法
ほうかつほう
entrapment
生体触媒などを高分子ゲル,膜などの中に閉じ込める方法。
天然又は合成高分子のゲルに閉じ込める格子型,半透膜によ
るマイクロカプセル型,液体膜によるリポソーム型などがあ
る。酵素のみならず微生物,細胞,オルガネラを固定化でき,
包括操作中に修飾が起こらない。一方,高分子基質は作用を
受けない,担体の再利用ができない難点がある。
2588
放射線殺菌/
放射線滅菌
ほうしゃせんさっ
きん/
ほうしゃせんめっ
きん
radiation/
sterilization
ガンマ線又は電子線の照射による殺菌。加熱処理ができない
器具や食品の殺菌法。
2589
マクサム−ギル
バート法
まくさむ−ぎるば
ーとほう
Maxam−Gilbert
method
3ʼ又は5ʼ末端を32Pで標識したDNA断片に4種類の各塩基に
選択的な化学修飾をし,修飾した塩基の位置で部分分解する。
得られた分解物を電気泳動によって,1塩基ずつの長さの違
いによって分け,一端から順に各バンドに対応する塩基を同
定することによって配列を決める化学的DNA塩基配列決定
法。
2590
密度勾配遠心
(沈降)法
みつどこうばいえ
んしん(ちんこう)
ほう
density gradient
centrifugation
しょ(蔗)糖などを用いて遠心方向に媒体の密度勾配を形成
させ,溶質である高分子の分離精製を行う方法。溶質の密度
に分布があるとき,溶液中の溶質に働く遠心力と浮力因子が
釣り合う点に分かれることを利用して分離する。
2591
無菌操作
むきんそうさ
aseptic technique
殺菌したものに手を触れたり,殺菌していないものに接触さ
せないようにして,雑菌の汚染を妨げながら行う操作。
2592
無菌濾過/
濾過除菌/
濾過殺菌/
濾過滅菌
むきんろか/
ろかじょきん/
ろかさっきん/
ろかめっきん
sterilization by
filtration/filtration
(bacterial)
微生物を含む液体を微細な孔径のろ(濾)過器を通すことに
よって,微生物を除き無菌状態の液体を得ること。メンブレ
ンフィルターなどが用いられる。加熱処理のできない培地成
分の殺菌に用いる。
2593
ラジオイムノア
ッセイ/RIA/
放射性免疫(検
査)法
らじおいむのあっ
せい/あーるあい
えー/ほうしゃせ
いめんえき(けん
さ)ほう
radioimmunoas-
say/RIA
放射性同位元素又は物質によって標識した抗原又は抗体を用
いて,試料中の目的物質を検出・定量する方法。RIAは放射
線の被爆や廃棄物処理の問題があるので診断薬はEIAに変わ
りつつある。
2594
レース法/
RACE
れーすほう/れー
す
rapid amplification
of cDNA end
/RACE
部分的な既知配列を基にPCR法を行い,全長cDNAを得る方
法。
2595
レプリカ法(培
養法の)(電子
顕微鏡の)
れぷりかほう(ば
いようほうの)
(でんしけんびき
ょうの)
replica method
(1)寒天平板上のコロニーをビロード布上に移しとり,それを
各種の培地に順次プリントし突然変異株を検出する方法。
(2)表面の鋳型をとり,それと電子線の散乱の違いによって観
察する方法。
e) 器具,装置
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
2601
アイソレーター
あいそれーたー
isolator
無菌動物を外界の微生物から隔離するために用いる装置。無
菌化された空気が送られ,器具,器材はすべて殺菌したもの
をスリーブを通して入れる。
2602
アブソリュート
フィルター
あぶそりゅーとふ
ぃるたー
absolute filter
孔径が微細で均一な網目構造をしているスポンジ状の有機材
料を用いたフィルター。空気,液体いずれにも使用できる。
2603
安全キャビネッ
ト
あんぜんきゃびね
っと
safety cabinet
実験操作中に発生する汚染エアロゾルが外部に漏出しないよ
う設計された箱。組換え体の操作に用いられる。
2604
イオン交換膜
いおんこうかんま
く
ion exchange
membrane
正又は負の固定電荷をもつ荷電膜。多数のイオン交換基を備
えた多孔性の合成膜。正と負の膜を組み合わせて電気透析に
用いて効率よく電解質を除ける。
2605
イオン選択電極
いおんせんたくで
んきょく
ion selective
electrode
溶液中の特定イオンの濃度(活量)に依存して電極と溶液と
の界面に電位差を発生する半電池。膜材料によってイオン選
択性が決まる。
2606
インキュベータ
ー
いんきゅべーたー
incubator
内部温度などを一定に保つことのできる培養装置。動物細胞
の培養に使われるものは炭酸ガス濃度を一定に保つようにな
っていて,CO2インキュベーターという。
2607
ウエルリーダー
/マイクロプレ
ートリーダー
うえるりーだー/
まいくろぷれーと
りーだー
well reader/
micro plate reader
比色及び比濁に適応した96穴マイクロプレート用の測定装
置。
2608
液体膜
えきたいまく
liquid membrane
形成物質が液体である膜。組成の異なる2種の水溶液相が混
合しないようにその間に全く溶け合わない有機溶媒を膜状に
したもの。疎水性多孔質高分子膜又は非イオン性界面活性剤
の助けを借りて作成する。
2609
加圧液体せん断
式ホモジナイザ
ー
かあつえきたいせ
んだんしきほもじ
ないざー
high pressure
valve homogenizer
ノズルより弁座に高速で液を衝突させ,せん断力によって菌
体を破砕して均質化する装置。工業的に菌体抽出液を得る装
置。
2610
回転濾過機
かいてんろかき
continuous rotary
filter
ろ(濾)過円筒又はろ過円板を原液槽に浸して回転させなが
ら行う連続ろ過。加圧型と真空型がある。
2611
組換え体の環境
放出
くみかえたいのか
んきょうほうしゅ
つ
environmental
release of
recombinant
organisms
遺伝子を組み換えた生物を用いて野外(開放系)で行う試験。
2612
気体分離膜
きたいぶんりまく
gas separable
membrane
混合気体中の特定の気体を選択的に透過させる膜。
2613
クリーンベンチ
くりーんべんち
clean bench
規定された清浄度レベルに管理された空気が作業対象物に対
して直接に流れるように作られた作業台。作業台内部にろ過
空気の供給源をもつことを特徴とする。無菌操作を行うため
に旧来の無菌箱に代わって使用されている。
2614
グロースチャン
バー
ぐろーすちゃんば
ー
growth chamber
植物細胞,植物個体などの生育箱。温度,光,湿度などを制
御できる。ファイトトロンよりも小規模のもの。
2615
グローブボック
ス
ぐろーぶぼっくす
glove box
操作用の手袋を取り付けた無菌箱又は危険物取扱い箱。P4設
備で用いる安全キャビネットや危険な化学品を取り扱うとき
に使用。
2616
蛍光活性化セル
ソーター/
FACS
けいこうかっせい
かせるそーたー
/ふぁくす
fluorescence
acitivated cell
sortor/FACS
ノズルから噴射された細胞流にレーザーを当て,発生する分
散光と蛍光を分析して,各1個の細胞を含む水滴を荷電させ,
高電界で分離する装置。また,適当な蛍光物質と組み合わせ
て,ある特徴ある細胞集団を定量測定できる。FACSは
Dickinson社の商品名。
2617
原子間力顕微鏡
げんしかんりょく
けんびきょう
atomic force
microscope
AFM,SFMとも略した呼び名の装置。代表的な走査型プロー
ブ顕微鏡の一つで,鋭くとがらせたプローブと試料との間に
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
働く原子間力を,プローブを保持する微細な板バネのたわみ
によって検知し,その力を一定に保つようにして走査するこ
とによって試料表面の三次元像を得る装置。
2618
コロニー計数器
/コロニーカウ
ンター
ころにーけいすう
き/ころにーかう
んたー
colony counter
固体培地に形成されたコロニーを自動的に測定する装置。コ
ロニーを画像的に認識して,コロニーサイズを区別して数え
たり,コロニーを無菌的に移植できる装置もある。
2619
サーマルサイク
ラー
さーまるさいくら
ー
thermal cycler
数段階の異なった温度からなる反復反応を自動的に行う装
置。PCR法に使用。
2620
細胞破砕機
さいぼうはさいき
homogenizer
細胞壁と細胞質膜を破壊し,内容物を抽出する器具。機械的
手段で破壊や,乳化を行う装置の総称。加圧型装置,振とう
式装置,衝撃式装置などがある。
2621
殺菌灯
さっきんとう
germicidal lamp
殺菌効力のある253.7nm前後の紫外線を放出するランプ。紫
外線は透過力が弱くガラスを透過しないので,直接しかも長
時間照射しなければ殺菌できない。
2622
酸素富化膜
さんそふかまく
oxygen
enrichment
membrane
通常の空気よりも酸素濃度の大きい気体を得るために用いる
選択性透過膜。
2623
晶析器
しょうせきき
crystallizer
溶液から結晶を析出させる装置。濃縮して過飽和にする方法
として蒸発,冷却などがあり,精製か造粒かの目的に応じた
方法をとる。
2624
徐放性膜
じょほうせいまく
controlled release
membrane
封じ込められた物質の放出速度を制御する機能をもった膜。
厚さや崩壊速度,溶出速度を調節した膜。
2625
浸漬槽
しんせきそう
dunk bath
組換えDNA実験区域から加熱殺菌が不適当な試料,物品を
搬出するために備えた消毒液入りのくぐり抜け槽。麦芽製造
の前処理として大麦を水に浸せき,吸水させる装置 (steeping
tank)。
2626
振とう培養器
しんとうばいよう
き
shaking
incubator/shaker
振とうをして液体培地中で微生物・細胞を増殖させるための
装置。回転式装置と往復式装置があり,それぞれ特徴がある。
2627
生化学的酸素要
求量/
生物学的酸素要
求量/BOD
せいかがくてきさ
んそようきゅうり
ょう/
せいぶつがくてき
さんそようきゅう
りょう/びぃーお
ーでぃー
biochemical
oxygen demand/
biological oxygen
demand/BOD
水の汚染度を表す指標。有機物を微生物の酸化作用によって
安定した物質まで,酸化分解するために消費される酸素量を
表し,その値が大きいほど汚染されていることになる。通常,
20℃,5日間に消費する酸素量を,被検水1L当たりのmg
(mg/L) 又はppmで表す。
2628
セルソーター
せるそーたー
cell sorter
フローサイトメトリーに基づいて細胞を選択分離する装置。
2629
選択性透過膜
せんたくせいとう
かまく
permselective
membrane
液体又は気体の成分を,その成分の大きさ,形,荷電,溶解
度,拡散速度のような性質の差によって分離する膜。合成ポ
リマー,セラミックスなど様々な材質のものが製品化されて
いる。
2630
濁度センサー
だくどせんさー
turbido sensor
一定の強さと波長をもつ光(例えば,レーザー光,632.8nm)
を培養液に照射し,微生物によって散乱若しくは吸収されて
減衰した光の強さを測定することによって,微生物濃度を測
定するセンサー。
2631
超低温フリーザ
ー
ちょうていおんふ
りーざー
ultra-deep freezer
−85℃以下の低温を保てる冷凍保存機。−85℃〜−135℃の範
囲に限定する場合もある。微生物や特に細胞の長期保存に用
いる。
2632
通気攪拌槽
つうきかくはんそ
う
jar fermentor
装置底部から通気し,かくはん翼を回転させて生体触媒(と
くに微生物)と原料(基質)及び空気とか互いによく混じり
合い接触反応効率が高まるように設計されたバイオリアクタ
48
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
ーをいう。もっとも古い歴史をもつバイオリアクターで,装
置工学的にはほとんど完成されているといわれている。
2633
DNAシークエ
ンサー/
ベースシークエ
ンサー
でぃーえぬえーし
ーくえんさー/
べーすしーくえん
さー
DNA sequencer/
base sequencer
DNAの塩基配列を自動的に解析する装置。ジデオキシ法で調
製したDNA断片を電気泳動にかける方式が行われているが,
細菌4種の蛍光色素を取り込ませて,電気泳動1レーンで4
種すべての塩基について配列を決定できる装置がある。識別
にはレーザーを利用して,画像処理の自動化と組み合わせて
自動的に読み取れるものもある。
2634
DNAシンセサ
イザー/DNA
自動合成機
でぃーえぬえーし
んせさいざー/
でぃーえぬえーじ
どうごうせいき
DNA synthesizer
目的とする塩基配列をもつDNAを自動的に合成する装置。
2635
DNAチップ
でぃーえぬえーち
っぷ
DNA chip
何百万とおりものDNAプローブをパネル上に固定したもの。
これを未知のDNA断片と対合させてそのパターンを手掛か
りにして遺伝子の発現や変異,多型性などの同時解析に有用
である。
2636
デンシトメータ
ー
でんしとめーたー
densitometer
薄層クロマトグラフ法又は電気泳動法でバンドを走査しなが
ら光学的に濃度を測定する装置。光の反射又は吸収のいずれ
でも測定できる。
2637
糖鎖シーケンサ
ー/
糖鎖構造解析装
置
とうさしーけんさ
ー/
とうさこうぞうか
いせきそうち
glyco-chain
sequencer
糖鎖の構造を自動的に解析する装置。ピリジルアミノ化(PA
化)による蛍光標識だけ,又はPA化とエキソグリコシダー
ゼなどの酵素反応を組み合わせて得た糖鎖サンプルをHPLC
によって比較して,その構造を分析する方法。
2638
動物細胞培養装
置
どうぶつさいぼう
ばいようそうち
cell culture
system for animal
cells
動物細胞は物理的な力に対して弱いので,かくはんによるせ
ん断力を避けること及び培地を交換しやすくするなどの工夫
がなされている。
2639
トキシノメータ
ー
ときしのめーたー
Toxinometer
比濁(反応)時間分析法に基づいて,エンドトキシン又は (1
→3) -D-β-グルカンの測定に使用する分析装置。
2640
トランスファー
ブロッティング
装置
とらんすふぁーぶ
ろってぃんぐそう
ち
transfer blotting
apparatus
スラブゲル上で泳動分離したDNA又はたん白質の分離を,
ニトロセルロース膜などの上に自然拡散又は電気泳動的に転
写し,固定する装置。
2641
パーティクルガ
ン
ぱーてぃくるがん
particle gun
微細な金属粒子にDNAなどを付着させ,これを高速で細胞
に打ち込むことによって遺伝子を細胞に導入する装置。
2642
バイオイメージ
ングアナライザ
ー
ばいおいめーじん
ぐあならいざー
bioimaging
analyzer
二次元的な画像データを記録し演算処理を行う装置。例えば,
放射性同位元素の2次元的な分布を,輝尽性蛍光体を塗布し
たプレートを使用し,電離放射線の照射によって放射された
蛍光を検出,オートラジオグラムを得る装置。又は,二次元
電気泳動の展開図の解析装置。
2643
バイオクリーン
ルーム
ばいおくりーんる
ーむ
bioclean room
生物学的な清浄にした部屋。バイオテクノロジーに関連する
実験室や工場など室内を清浄に保ち,微生物による汚染を防
ぐ施設。GMP,GLPなどに基づいて基準が定められている
2644
バイオセンサー
ばいおせんさー
biosensor
被検出物の識別に生体由来の選択的認識作用・反応性を利用
したセンサー。固定化して使うことが多く,固定化生体触媒
の形態は膜の場合が多い。グルコースセンサーがその例であ
る。
2645
バイオチップ
ばいおちっぷ
biochip
たん白質や脂質,神経細胞などの生体分子から構成され,コ
ンピューターと同じく基本的な演算や処理を行わせる素子。
現在はチトクロームやバクテリオロドプシンなどを使ってコ
ンデンサー特性や光スイッチ特性を確認中である。
2646
ビアコアシステ
びあこあしすてむ
BIACORE
センサーとしては表面金属膜層とそれに共有結合によって固
49
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
ム
system/
biological
interaction
analysis
定化した分子とから構成される。これにある試料分子が特異
的に結合するとき,その結合量を表面プラズモン共鳴によっ
て測定する装置。表面プラズモン共鳴とは一定波長の変更が
金属一電気二重層の界面で内部全反射をする最小角度で起こ
る共鳴現象。BIACOREという商品名が一般名詞化しつつあ
る。
2647
飛行時間型質量
分析装置
ひこうじかんがた
しつりょうぶんせ
きそうち
time-of-flight
mass spectrometer
マトリックス利用レーザー脱離イオン化法やエレクトロイオ
ン化法と組み合わせ,イオン化された試料が一定距離を移動
する時間の測定によってイオン分子量を測定する装置。質量
分析装置の1種。ある程度の無機塩存在下でもイオン化が可
能で,質量分析が困難であった高分子領域のたん白質まで高
感度で構造解析分析が可能な装置。
2648
プロテインシー
クエンサー/
ペプチドシーク
エンサー/
アミノ酸配列分
析装置
ぷろていんしーく
えんさー/ぺぷち
どしーくえんさー
/あみのさんはい
れつぶんせきそう
ち
amino acid
sequence analyzer/
peptide sequencer
たん白質の一次構造を決定するために用いるたん白質,又は
ペプチドをN末端アミノ酸から逐次分解するエドマン法を自
動化した装置。
2649
HEPAフィルタ
ー
へぱふぃるたー
high efficiency
particulate air
filter/
HEPA filter
0.3μm以上の粒子を99.97%以上除去できるエアフィルター。
空気から微粒子を除去するために使用され,医薬品,食品な
どの製造過程での微粒子制御及び封じ込を必要とする遺伝子
操作を行う空間への空気の給排気装置に付けられている。
2650
マイクロカプセ
ル
まいくろかぷせる
microcapsule
0.1〜100μmの小胞で,各種の物質を包括したもの。薬剤に徐
放性をもたせたり,細胞や酵素の固定化,人工細胞,人工種
子などとしての広い用途がある。
2651
膜電極
まくでんきょく
membrane
electrode
イオン選択性膜の膜電位を利用した可逆電極。
備考:イオン選択性コロジオン膜,イオン交換膜などの
電極のほか,ガラス電極もこの1種。
2652
溶存酸素計
ようぞんさんそけ
い
disolved oxygen
sensor
液中に溶存する酸素深度を測定するセンサーをいう。酸化還
元電位を測定する分析計,磁気式分析計,ガルバニックセル
を用いたセンサー,隔膜式ガラス電極,蛍光半導体を用いた
センサーなどがある。バイオリアクターに直接装塡する場合
には蒸気滅菌ができるかどうか,その他測定範囲,糖度,応
答時間,安定性などを使用前に検討することが重要である。
3. 応用技術
a) 発酵
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
3101
アミノ酸発酵
あみのさんはっこ
う
amino acid
fermentation
微生物の培養によって特定のアミノ酸を生成,蓄積させる発
酵。我が国が1957年にグルタミン酸発酵を世界にさきがけて
工業化した。発酵法は合成法に比べて光学異性体のアミノ酸
が得られる利点がある。
3102
アルコール発酵
あるこーるはっこ
う
alcohol
fermentation
生物が炭水化物を分解して無酸素的にエネルギーを獲得する
一つの様式で,通常はアルコールが生成される場合を指す。
3103
異常診断(発酵
プロセスの)
いじょうしんだん
(はっそうぷろせ
すの)
diagnosis of
malfunctions in
fermentation
process system
発酵プロセスシステム又はもっと広くバイオプラントにおい
て,発酵状態や計測・制御器,装置などの異常又は故障を自
動的に検出し,原因を究明して対応措置をすばやく指示する
計算機ソフトウエア。熟練運転者の知識と経験を体系化した
ソフトウエアで,これによって初心者でも確実かつ容易にプ
50
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
ロセスを運転できるようになった(エキスパートシステム)。
3104
一次代謝産物
いちじたいしゃさ
んぶつ
primary metabolite
生物の生命維持又は発育増殖に必す(須)な物質を供給する
代謝産物。
3105
回分発酵法/バ
ッチ法
かいぶんはっこう
ほう/ばっちほう
batch fermentation
process
原料(基質)の仕込み,殺菌,冷却,植菌,発酵,排液,装
置の洗浄を1回ごとに達成する発酵方法。バッチ法ともいわ
れる。
3106
核酸発酵
かくさんはっこう
nucleotide
fermentation/
nucleic acid
fermentation/
nucleic acid
related substance
fermentation
微生物の培養によって核酸及び核酸関連物質を生成,蓄積さ
せる発酵。化学調味料としてのIMP,GMPやFADNADなど
の補酵素の生産方法として重要である。
3107
後発酵
こうはっこう
after-
fermentation
主発酵が終わり,なお,おだやかに発酵が続いている時期の
発酵。
3108
固定床バイオリ
アクター
こていしょうばい
おりあくたー
fixed bed
bioreactor
固定化生体触媒を浮遊させずに反応を行うバイオリアクタ
ー。反応器単位体積当たりの触媒負荷量が多く,効率がよい。
一方,温度,pHの制御,軸方向の濃度変化,圧損などの難点
がある。
3109
酸素消費速度
さんそしょうひそ
くど
oxygen
consumption rate
微生物が水中の酸素を消費する速度。酸素要求量ともいい,
微生物の種類,生育相などによって異なる。発酵を効率的に
管理するときの指標の一つ。
3110
深層ばっ(曝)
気法
しんそうばっきほ
う
aeration system
using a deep vessel
水深の大きいばっ気槽を用いる活性汚泥処理法。
3111
代謝制御発酵
たいしゃせいぎょ
はっこう
metabolic
regulatory
fermentation
微生物の代謝調節機構を人為的に変え,目的とする代謝生産
物を大量に生産,蓄積させる発酵。アミノ酸などの一次代謝
産物の発酵生産にしばしば応用される。
3112
二次代謝産物
にじたいしゃさん
ぶつ
secondary
metabolite
植物や微生物の発育増殖機能に関与しない特定の代謝産物。
抗生物質などはその代表例である。
3113
バイオリアクタ
ー
ばいおりあくたー
bioreactor
生体触媒を固定化して用いる反応器。微生物を固定化せずに
利用する反応器は発酵槽 (fermentor) という。
3114
発酵
はっこう
fermentation
微生物を利用して物質を生産するプロセス。本来は有機物質
が微生物によって分解される現象又は炭水化物が微生物によ
って無酸素的に分解されることを指した。
3115
発酵槽
はっこうそう
fermentor
微生物を利用して物質を生産する反応器。通常かくはん翼,
通気用装置,邪魔板などが通気効率を向上させるためについ
ている通気かくはん型と通気だけを行う気泡塔型に分けられ
る。
3116
HAT培地
はっとばいち
HAT medium
ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ
(HGPRT) 欠損細胞とチミジンキナーゼ欠損細胞を融合させ
たとき融合雑種細胞を選択するために用いるhypoxanthine
(H),aminopterine (A),thymidine (T)を含む選択培地。ハイブ
リドーマ選別など最も広く用いられている動物細胞用選択培
地。
3117
マイクロキャリ
ア法/
細胞培養用担体
法/
スーパービーズ
法
まいくろきゃりあ
ほう/さいぼうば
いようようたんた
いほう/すーぱー
びーずほう
microcarrier
method
極微小のビーズを用いELISA,エンザイムイムノアッセイな
どの測定用抗体の固定化や細胞培養を行う方法。付着性細胞
を大量に培養するとき浮遊細胞と同じように取り扱える利点
があるが,マイクロキャリアは使い捨ての物が多く高価であ
る。動物細胞によるインターフェロンの生産に実用化されて
いる。
51
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
3118
膜型バイオリア
クター
まくがたばいおり
あくたー
membrane
bioreactor
装置内又は外部に高分子若しくは無機素材の膜を装てんし,
生産反応と目的生産物との分離を同時に達成できるように設
計された分離型バイオリアクターの1種である。濾過面積を
かせぎ,膜に形成するろし(濾滓)(ケーキ)をいかに除去す
るかが運転上主要な問題となる。
3119
メタン発酵
めたんはっこう
methane
fermentation
嫌気条件下で細菌の働きによって,有機物が分解されてメタ
ンを生成する発酵。非メタン産生菌によって有機物が分解さ
れてできたギ酸,酢酸などがメタン細菌によってメタンに転
換する。
3120
流動床バイオリ
アクター
りゅうどうしょう
ばいおりあくたー
fluidized bed
bioreactor
固定化生体触媒を懸濁浮遊させて反応を行うバイオリアクタ
ー。固体粒子と流体との均一混合物全体を流体として取り扱
え,熱や物質移動特性がよく,目詰まりがない。スケールア
ップに難点がある。
b) バイオリアクター
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
3201
生物農薬
せいぶつのうやく
biological
agrochemicals
化学薬品の代わりに害虫や雑草を駆除,防除するために用い
るそれらに寄生したりする動物植物や微生物。種特異性が高
いため周辺環境に与える影響が少ない。
3202
生分解性ポリマ
ー
せいぶんかいせい
ぽりまー
biodegrative
polymer
自然界中に存在する生物による分解・消化により低分子化が
可能な高分子樹脂。
3203
バイオレメディ
エーション
ばいおれめでぃえ
ーしょん
bioremediation
生物又は生物機能を利用して環境に放出された有害化学物質
及び有害廃棄物を除去し,汚染された環境を浄化・修復する
こと,又はその技術。
3204
バクテリアリー
チング
ばくてりありーち
んぐ
bacterial
leaching
細菌を利用して,鉱石に含まれる金属を溶出して回収する方
法。従来は利用しにくかった低品位鉱や廃鉱などから金属を
回収できる。
c) バイオインフォマティクス
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
3301
遺伝子ライブラ
リー
いでんしらいぶら
りー
gene library/
gene bank
染色体DNAの全断片をベクターに結合した組換え体で,染
色体上のすべての領域を含むように工夫したもの。ポリA鎖
のついたmRNAからcDNAを作製したときも,こう呼ぶが,
このときは,全ゲノムを含むものではない。全ゲノムを含む
ようにしたものをgenomic libraryということもある。
3302
ゲノミッククロ
ーン
げのみっくくろー
ん
genomic clone
細胞の中で遺伝子として存在するままの状態のDNAをプラ
スミドにつなぎ,クローン化したもの。真核細胞からのゲノ
ミッククローンはイントロン,エクソンを遺伝子のなかでの
配列のままもっている。
3303
ゲノミックス/
ゲノム解析
げのみっくす/
げのむかいせき
genomics
生物のゲノムの全塩基配列を決定し,全遺伝情報を解読する
ことを目的とする研究。
3304
バイオインフォ
ーマティックス
ばいおいんふぉー
まてぃっくす
bioinformatics
タンパク質のアミノ酸配列や高次構造に関する情報,染色体
DNA又はcDNAに関する塩基配列などの生命情報を明らか
にして,医療,医・農薬の開発,生物の系統保存や新品種の
開発などに役立てるコンピュータ技術をいう。計算機産業,
電子・通信産業などの情報産業と次々に新しい生命情報を創
成しているバイオインダストリーとが融合した結果生まれた
最も新しい学際領域の一つである。
d) バイオレメディエーション
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
3401
データベース
でーたべーす
database
多様なデータを統一的に貯蔵・管理し,複数の利用者の間で
52
K 3600 : 2000
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
共用できるようにした計算機ネットワーク。DNAの塩基配列
やたん白質の構造,細胞信号情報など多くのデータベースが
構築され,利用されている。
3402
糖鎖工学
とうさこうがく
glyco-
engineering
天然に存在する糖鎖を改変して,目的の機能をもつ糖鎖を作
製すること。糖鎖が細胞間の認識,情報伝達に重要な役割を
果たしていることが分かり,注目されている。
3403
閉鎖株
へいさかぶ
blocked mutant
生合成経路上である特定の部位の反応が失われている変異
株。通常閉鎖された反応の直前の代謝産物が蓄積される。こ
の原理を応用して特定の代謝産物の工業的生産を行える。
e) その他
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
3501
RI診断
あーるあいしんだ
ん
radioisotope
diagnosis
物理的半減期が短く,粒子線をできるだけ放出しないが,電
磁波を放出する化合物を利用する腫瘍位置,形態学的変化を
診断すること。99mTc,67Ga,131I,18Fなどがよく用いられる。
3502
アトピー
あとぴー
atopy
遺伝的に様々な抗原に対して示す通常よりも高い免疫反応。
3503
アナフィラキシ
ー/過敏症
あなふぃらきしー
/かびんしょう
anaphylaxis
感作動物に抗原を与えたときに起こる,即時型過敏症の一つ
の表現。lgEが肥満細胞に働いてヒスタミンなどのメディエ
ーターを放出して起こる。
3504
アンジオグラフ
ィー/血管造影
法
あんじおぐらふぃ
ー/けっかんぞう
えいほう
angiography
血管内に造影剤(水溶性のヨード含有有機物)を注入してX
線撮影を行い血行状態などを観察して,血管の異常,癌の範
囲などを診断する方法。
3505
萎縮
いしゅく
atropy
臓器,組織又は細胞の体積の減少。機能の低下を伴う。病気,
栄養不良,老化に伴って認められる。
3506
移植免疫
いしょくめんえき
transplantation
immunity
個体の一部を分離して,同じ個体の別な場所に移植
(trans-plantation/graft) する際に,移植片に対して受容体が示す
免疫反応。移植片対宿主反応 (graft vs. hostreaction) ともいう。
組織適合性抗原が移植免疫を起こす抗原の主体である。
3507
SPF動物/
無菌動物
えすぴーえふどう
ぶつ/
むきんどうぶつ
specific pathogen
free animal/
germfree animal
微生物及び寄生虫の検出できない動物。餌を含むすべてのも
のを殺菌して与え無菌状態でアイソレーターを用いて飼育す
る。生理機能,免疫応答,発癌などの研究に用いる。特に常
在細菌の影響を解析するのに重要である。
3508
活性汚泥
かっせいおでい
activated sludge
下水,廃水などに連続通気かくはんして,それらの含有有機
物に対する資化能,酸化能の高い種々の好気性細胞を増殖さ
せて得られる泥状の物質。細菌に加えて糸状菌,原生動物が
混在している微生物集団で,廃水処理に広く使用されている。
3509
仮親/里親マウ
ス
かりおや/さとお
やまうす
foster mother
培養した胚を受け取って正常な個体にまで育てる雌親。ホル
モン処理や輸精管を切断して不妊になった雄と交尾させ,偽
妊娠 (pseudopregnancy) の状態にしておき,ホルモンバラン
スを妊娠時と同じにしておく。
3510
機能性食品
きのうせいしょく
ひん
physiologically
functional food
摂取されて食品機能を有効に発現するように設計され,加工
変換された食品。食品機能とは,1)一次機能性(栄養機能),
2)二次機能性(感覚機能),3)三次機能性(生体調節機能)の
ことである。しかしその重点は人間の健康に直接関係する生
体の諸系統の調節に有効に機能する食品にある。
3511
胸腺
きょうせん
thymus
Tリンパ球分化の中枢的働きをするリンパ組織。
3512
クローン動物
くろーんどうぶつ
cloned animal
無性的に複製された遺伝的に同一な動物個体。卵細胞に脱核
や核移植などの操作をすることにより個体を複製することを
いう。
3513
交配
こうはい
mating/crossing
接合体を形成するため,2個体間で受粉又は受精をすること。
3514
自己免疫疾患
じこめんえきしっ
autoimmune
生体防御機構である免疫系が自己の細胞を攻撃することによ
53
K 3600 : 2000
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
かん
disease
って引き起こされる疾病。代表的疾患としてSLE(全身性エ
リトマトーデス),慢性間接リウマチなどの膠原病,糸球体腎
炎,自己免疫性溶血性貧血,橋本病などがある。
3515
持続感染
じぞくかんせん
persistence
infection
ウイルス感染が1個の細胞又は一定の細胞集団若しくは1個
体で感染性のある子ウイルスをつくるかあるいはつくらずに
持続していること。有膜ウイルス(ヘルペスウイルスなど)
で起こりやすい。
3516
条件致死突然変
異体
じょうけんちしと
つぜんへんいたい
conditional lethal
mutant
ある環境条件下では増殖不能の突然変異体。温度条件がよく
選ばれる。生物に必す(須)の遺伝子の研究によく用いられ
る。また,制御機構の変化したものも得られる。
3517
ショウジョウバ
エ
しょうじょうばえ
Drosophila/fruit
fly
果実につく小型のハエ。飼育が容易で,世代時間が短く(約
2週間),多数の子孫が得られ,唾液腺から巨大染色体が得ら
れるので,古くから遺伝研究の材料として利用されている。
Homeoboxなど形態形成に関する研究の材料として再脚光を
浴びている。
3518
植物工場
しょくぶつこうじ
ょう
Plant Factory
植物を環境制御が可能な温室内で生育させ,工場のように安
定・計画生産する栽培システム。人工光や水耕栽培によって
完全に無農薬の植物を生産できる。
3519
人工臓器
じんこうぞうき
artificial organ
臓器の人工的な代替物。心臓,腎臓,肝臓,膵臓,中耳など
の代替臓器から,人工弁,人工血管,ペース・メーカー,生
体材料(バイオマテリアル)までが含められる。人工材料と
培養細胞を組み合わせたハイブリッド型人工臓器(バイオ人
工臓器)もある。
3520
ストレス
すとれす
stress
生体において誘起有害作用因子(ストレッサー)に反応する
生体内緊張状態。細胞レベルでは,高温ストレス,酸化スト
レスなどのように作用因子を意味し,それに対する細胞の状
態変化をストレス反応と呼ぶ。
3521
性染色体
せいせんしょくた
い
sex chromosome
雌雄の分化に深い関係のある染色体。ヒトを含む多くのほ乳
類はXY型であり,鳥類などはZW型である。
3522
生体適合材料
せいたいてきごう
ざいりょう
biocompatible
material
細胞,血液,結合組織などの生きた生体組織に直接的に接触
して利用され,長期間にわたって生体に悪影響も強い刺激も
与えず,本来の機能を果たしながら生体と共存できる医用材
料。
3523
生体防御系/
生体防御
せいたいぼうぎょ
けい/
せいたいぼうぎょ
bio-defense
system
外来性異物や異物的自己成分の排除に関与する生体の恒常性
維持機構。ほ乳類の場合はインターフェロン,補体,好中球,
好酸球,マクロファージ,NK細胞などが関与する非特異的
生体防御機構と抗体や感作Tリンパ球などが関与する抗原特
異的生体防御機構がある。
3524
全雌化/
雌性発生
ぜんめすか/
しせいはっせい
gynogenesis
雌性前核から単為発生によって,雌の個体を選択的に発生さ
せること。
3525
臓器移植
ぞうきいしょく
organ
transplantation
機能しなくなった臓器を正常な機能をもつ他人の臓器で置き
換えて機能回復を図ること。角膜移植と腎臓移植は治療法と
して確立している。しかし組織適合性,拒絶反応,手術方法
の開発などの科学的問題と宗教的,法律的問題がある。
3526
体外受精
たいがいじゅせい
in viteo
fertilization
精子と卵を人為的に体外に取り出して,ガラス容器内で受精
させた後,体内に戻す手法。体外に取り出した精子と卵を同
時に卵管内に直接移植するギフト法 (gamate intra-fallopian
transfer/GIFT) も含めることが多い。ヒトの不妊症の治療及び
家畜の品種改良と増産に利用されている。
3527
胎児
たいじ
fetus
子宮内で受精卵から子宮外生活をできるまでに成長発育した
54
K 3600 : 2000
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番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
個体。
3528
脱感作
だつかんさ
desensitization
(1)酵素活性は失わないで,アロステリックエフェクターに対
する感受性だけを酵素の化学的処理などや突然変異によって
失うこと。
(2)アレルギーに対する感受性を失うこと。
3529
窒素固定
ちっそこてい
nitrogen fixation
空気中の窒素からアンモニアなどの窒素化合物を生成する過
程。通常,生物による固定を指し,Azotbacter/Rhizobiumなど
が代表的窒素固定生物である。
3530
転移(癌の)
てんい(がんの)
metastasis
腫瘍細胞が身体の他の部位に移動し,定着して増殖すること。
転移しやすいものほど悪性である。
3531
動物工場
どうぶつこうじょ
う
animal factory
マウス,ブタ,ヒツジ,ウシなどに外来遺伝子を導入したト
ランスジェニック動物を医薬品など有用たん白質の製造工場
として利用すること。
3532
ヌードマウス
ぬーどまうす
nude mouse
nu遺伝子のホモ接合体で体毛,胸腺を欠損しているマウスの
突然変異種。胸腺で成熟するTリンパ球がないので,免疫力
が弱く,異種細胞を移植できる。
3533
脳死
のうし
brain death/
neomort
心臓は動いているが脳が機能していない人に死の宣言を下す
こと。次の基準が出されている。①深い昏睡死の定義②自発
的呼吸の消失③瞳孔が固定し,瞳孔径は左右とも4mm以上④
脳幹反射の消失⑤平坦脳波⑥以上の条件が満たされた後,6
時間経過を見て変化が無いことを確認。
3534
バイオトロン/
生物環境調節実
験施設
ばいおとろん/せ
いぶつかんきょう
ちょうせつじっけ
んしせつ
biotron
生育環境を人工的に調節して,光,気温,湿度など多くの要
因の効果を正確に出すための装置。植物用のファイトトロン
(phytotron) がよく使われている。アクアトロン(aquatron,水
生動植物用),インセクトトロン(insectotron,昆虫用)など
もある。
3535
バイオナーサリ
ー
ばいおなーさりー
bionursery
組織培養などを利用して苗を育てる工場。光,水,温度等を
最適に制御して効率的な苗の生産を期待できる。
3536
バイオプリベン
ション
ばいおぷりべんし
ょん
bioprevention
生物又は生物機能を利用して製造過程及び製品に由来する有
害化学物質及び有害廃棄物を除去すること,又はその技術。
3537
ハセップ/
HACCP
はせっぷ/えいち
えーしーしーぴー
hazard analysis
critical control
point/HACCP
原材料から製品に至るまでの一連の工程で安全性を管理する
こと。食品製造における衛生管理手法の一つ。
3538
発癌機構
はつがんきこう
carcinogenesis/
oncogenesis
正常細胞が癌細胞になること。その原因から(1)化学発癌
(chemical carcinogenesis);発癌物質によるもの及びイニシエー
ターとプロモーターによるものがある。
(2)ウイルス発癌;腫瘍ウイルスによる発癌。
(3)放射線による発癌;X線や紫外線によるDNAに対する傷
害による。
3539
病態モデル動物
/疾患モデル動
物
びょうたいもでる
どうぶつ/しっか
んもでるどうぶつ
symptom (disease)
model animal
人間の疾患と類似した症状を示す実験動物。
3540
日和見感染
ひよりみかんせん
oppotunistic
infection
通常の健康人には感染しない病原性の極めて弱い菌や非病原
菌による感染。免疫力の低下した患者に起こる。
3541
封じ込めレベル
ふうじこめれべる
containment level
遺伝子組換えで得られた新しい生物が一般環境へ放出される
ことを防ぐための基準。生物学的封じ込めレベルと物理的封
じ込めレベルを組み合わせて適切な封じ込めレベルを確保す
る。ガイドラインが所管省庁によって定められている。
3542
不死化
ふしか
immortalization
細胞が無限増殖能を獲得して株化細胞になること。ある種の
癌遺伝子[myc,アデノウイルスの初期遺伝子 (E1A) など]
55
K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
が関与する。逆にこれらの癌遺伝子を積極的に導入して細胞
の株化を図ることも可能。
3543
プリオン
ぷりおん
prion
核酸のシステムに依存しないで増殖するたん白質性の感染症
粒子。ウイルスの100分の1以下の大きさで,分子量27KDa
〜30KDaの疎水性たん白質からなる。ヒツジのスクレピーの
原因物質である。
3544
プロモーター
(発癌の)
ぷろもーたー(は
つがんの)
tumor promoter/
promoter of
carcinogenesis
それ自体では癌原性はないが,イニシエーターによって潜在
性細胞 (initiated cells) となった細胞に働いて癌細胞に変化さ
せる物質。ホルボールエステル,アントラセン,テレオシジ
ンなどが知られている。
3545
不和合性
ふわごうせい
imcompatibility
花粉及び胚のうの機能が正常で,正常な受粉をしても受精・
結実が行われないことで,植物界ではかなり広く見いだされ
る。不稔性とは区別される。プラスミドについては同種又は
近縁のプラスミドは同一細胞内に安定に保持されない現象を
指す。
3546
放射線障害
ほうしゃせんしょ
うがい
radiation damage
電離放射線の照射によって引き起こされる生物学的障害。放
射線がDNAなどの重要分子を電離(又は励起)させて直接
障害する場合と,ラジカルを発生させて間接的に障害を起こ
す場合がある。
3547
マスターセルバ
ンク(セルバン
ク,菌株保存)
ますたーせるばん
く(せるばんく,
きんかぶほぞん)
master cell bank
厚生省の“組換え体をDNA技術応用医薬品の製造のための
指針”で定義されている,すべての製造用細胞シードの元に
なる種株であり,一般的には,研究段階で作成しクローン化
した組換え体を培養,分注し,その遺伝的性質が一定の継代
培養の範囲内で十分に安定であることを確認したものであっ
て,安定性が確認された条件で保存しているもの。組換え体
により生産される生物製剤の品質を保証するための手段の一
つ。
3548
ミクロコズム
みくろこずむ
microcosm
自然環境をモデル化したもの。模擬環境として各種薬物など
の環境に与える影響を検討するのに用いる。
3549
免疫遺伝学
めんえきいでんが
く
immunogenetics
免疫学的個体差を取り扱う遺伝学の一つ。血液型,主要組織
適合性,免疫応答等を遺伝的手法で研究する一分野。
3550
免疫抑制剤
めんえきよくせい
ざい
immunosuppres-
sive agents/
immunosuppres-
sants
生体の免疫反応を人為的に抑制するのに用いる薬剤。
3551
模擬自然環境
もぎしぜんかんき
ょう
simulated natural
environment
増殖室,温室,昆虫飼育室など人工的に自然を模倣して設計
した環境。
3552
薬剤耐性
やくざいたいせい
drug-resistance
化学療法剤の通常の有効濃度で細胞や菌の発育が阻止されな
いこと。薬剤耐性機構として,1)薬剤不活性化酵素の産生,
2)薬剤作用点の変化,3)薬剤の細胞内到達阻止などがある。
3553
GILSP/
優良工業製造規
範
じーあいえるえす
ぴー/
ゆうりょうこうぎ
ょうせいぞうきは
ん
good industrial
large scale
practice
/GILSP
組換えDNA技術工業化指針の場合,宿主の安全性について
国が定めた評価及び分類の一つ。発酵工業などで既に長期間
利用されてきた微生物を宿主として,特に害のない遺伝子を
導入した組換え体は,よく整備された既存の工場で取り扱う
ことができるとするもの。
3554
GLP/
優良実験室規範
じーえるぴー/
ゆうりょうじっけ
んしつきはん
good laboratory
gractice/GLP
“医薬品の安全性試験の実施に関する基準”の略。目的は非
臨床試験データの信頼性の確保。清浄度などについての基準。
3555
GMP/
優良製造規範
じーえむぴー/
ゆうりょうせいぞ
good
manifacturing
“医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準”の略。医薬
品の製造課程で微生物の混入や異物の混入を防ぐために設け
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K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
ふりがな
対応英語
定義
うきはん
practice/GMP
られた清浄度などに関する基準。
3556
養子免疫
ようしめんえき
adoptive
immunity
正常個体,又はX線照射を行って免疫反応が抑制された個体
に,あらかじめ,何らかの抗原で免疫されている他個体のリ
ンパ系細胞を移入し,供与者から受容者に免疫性を伝達する
こと。
3557
リスクアセスメ
ント
りすくあせすめん
と
risk assessment
潜在的に起こり得る危険性の査定又は評価。リスクを系統的
に洗いだして対処方法を作成することを含む。
5. 参考文献
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)
JIS K 0214 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)
JIS K 3802:1995 膜用語
JIS Z 8122 コンタミネーションコントロール用語
JIS Z 4001 医用放射線用語
JIS Z 4005 原子力用語
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K 3600 : 2000
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS K 3600 (バイオテクノロジー用語)改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
奥 山 典 生
東京都立大学名誉教授
(委員)
遠 藤 勲
理化学研究所
太 田 隆 久
工学院大学工学部
国 分 友 邦
工業技術院生命工学工業技術研究所
竹 内 幸 夫
和光純薬工業株式会社
田 中 章
三菱化学株式会社
冨 田 房 男
北海道大学農学部
宮 田 満
株式会社日系B・P
松 本 保 輔
財団法人化学品検査協会
橋 本 進
財団法人日本規格協会
川 端 尚 志
通商産業省生物産業化学課
(事務局)
奥 泉 仁 一
財団法人バイオインダストリー協会
野 崎 恵 子
財団法人バイオインダストリー協会