K 3351:2009
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 種類······························································································································· 2
4 品質······························································································································· 2
5 試料採取方法 ··················································································································· 3
5.1 ロット ························································································································· 3
5.2 ロットの識別 ················································································································ 3
5.3 製品容器の種類 ············································································································· 3
5.4 代表試料の採取及び調製 ································································································· 3
5.5 分析試料 ······················································································································ 4
5.6 採取器具及び試料容器 ···································································································· 4
5.7 試料採取上の注意 ·········································································································· 5
6 試験方法 ························································································································· 5
6.1 一般事項 ······················································································································ 5
6.2 性状 ···························································································································· 5
6.3 色数(ハーゼン) ·········································································································· 6
6.4 液性 ···························································································································· 6
6.5 酸度又はアルカリ度 ······································································································· 7
6.6 密度 ···························································································································· 7
6.7 グリセリン分 ················································································································ 8
6.8 灰分 ··························································································································· 10
6.9 強熱残分(硫酸塩) ······································································································ 11
6.10 けん化当量相当 ··········································································································· 12
6.11 水分 ·························································································································· 12
6.12 有機性不純分 ·············································································································· 13
6.13 還元性物質試験 ··········································································································· 13
6.14 塩化物試験 ················································································································· 14
6.15 ひ素試験 ···················································································································· 15
6.16 硝化及び分離試験 ········································································································ 18
7 検査······························································································································ 19
8 表示······························································································································ 19
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,日本石鹸洗剤工業
会 (JSDA) 及び財団法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの
申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS K 3351 : 1995は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責
任はもたない。
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日本工業規格 JIS
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工業用グリセリン
Glycerines for industrial use
1
適用範囲
この規格は,工業用グリセリンについて規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 1602 熱電対
JIS H 6202 化学分析用白金皿
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0068 化学製品の水分測定方法
JIS K 0113 電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
JIS K 1503 アセトン
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8012 亜鉛(試薬)
JIS K 8085 アンモニア水(試薬)
JIS K 8102 エタノール (95) (試薬)
JIS K 8105 エチレングリコール(試薬)
JIS K 8129 塩化コバルト (II) 六水和物(試薬)
JIS K 8136 塩化すず (II) 二水和物(試薬)
JIS K 8150 塩化ナトリウム(試薬)
JIS K 8153 ヘキサクロロ白金 (IV) 酸六水和物(試薬)
JIS K 8163 ヘキサクロロ白金 (IV) 酸カリウム(試薬)
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8256 過よう素酸ナトリウム(試薬)
JIS K 8267 ぎ酸ナトリウム(試薬)
JIS K 8295 グリセリン(試薬)
JIS K 8374 酢酸鉛 (II) 三水和物(試薬)
JIS K 8541 硝酸(試薬)
JIS K 8550 硝酸銀(試薬)
JIS K 8625 炭酸ナトリウム(試薬)
2
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JIS K 8739 発煙硝酸(試薬)
JIS K 8777 ピリジン(試薬)
JIS K 8780 ピロガロール(試薬)
JIS K 8800 フェノールレッド(試薬)
JIS K 8913 よう化カリウム(試薬)
JIS K 8951 硫酸(試薬)
JIS K 9071 リトマス紙(試薬)
JIS K 9512 N,N−ジエチルジチオカルバミド酸銀(試薬)
JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)
JIS R 1302 化学分析用磁器蒸発ざら
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS R 3505 ガラス製体積計
JIS Z 0701 包装用シリカゲル乾燥剤
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8704 温度測定方法−電気的方法
JIS Z 9015-1 計数値検査に対する抜取検査手順−第1部:ロットごとの検査に対するAQL指標型抜
取検査方式
3
種類
種類は,次のとおりとする。
a) 精製グリセリン
1) 1号(精製グリセリン)
2) 2号(ダイナマイト用グリセリン)
b) 粗製グリセリン
1) 1号(分解グリセリン)
2) 2号(副生グリセリン)
4
品質
工業用グリセリンの品質は,箇条6によって試験し,表1及び表2のとおりとする。
3
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表1−精製グリセリン
試験項目
1号(精製グリセリン)
2号(ダイナマイト用グリセリン)
性状
無色透明で,ほとんどにおいの
ない粘性のある液体
無色透明で,粘性のある液体
色数(ハーゼン)
20 以下
30 以下
酸度又はアルカリ度 (mmol/100 g)
0.3 以下
0.3 以下
密度 (20 ℃)
1.257 以上
1.257 以上
グリセリン分 [%(質量分率)]
98.5 以上
98.5 以上
強熱残分(硫酸塩)[%(質量分率)]
0.05 以下
0.05 以下
けん化当量相当 (mmol/100 g)
3.0 以下
3.0 以下
還元性物質試験
合格
合格
塩化物試験
−
合格
硝化及び分離試験a)
−
合格
注a) 硝化及び分離試験は,受渡当事者間の協定によって行う。
表2−粗製グリセリン
試験項目
1号(分解グリセリン)
2号(副生グリセリン)
性状
黄色又は濃い茶色の粘性のある液体 黄色又は濃い茶色の粘性のある液体
液性
中性又は微アルカリ性
中性又は微アルカリ性
グリセリン分 [%(質量分率)]
88.0以上
80.0以上
灰分 [%(質量分率)]
1.0以下
10.0以下
有機性不純分 [%(質量分率)]
3.0以下
6.0以下
ひ素試験
合格
合格
5
試料採取方法
5.1
ロット
1ロットとは,同一品質とみなされる次の製品をいう。
同一バッチで生産したもの,同一タンク内のもの,又は同一タンクから充てんしたもので,かつ,同一
条件の下で貯蔵したもの。
5.2
ロットの識別
試料容器には,ロットの識別ができるように,容器ごとに試料採取年月日,及びロット番号又はタンク
番号を記入する。
5.3
製品容器の種類
製品容器の種類は,次のとおりとする。
a) 小形容器 18 L缶,ドラム缶など
b) 大形容器 タンク,タンクローリー,タンク船,配管類など
5.4
代表試料の採取及び調製
試料の採取は,製品1ロットごとに行い,代表試料は製品容器の種類によって,次の方法で採取する。
a) 小形容器 乱数さい,乱数表及びその他適切な方法によって,表3に示す個数をランダムに抜き取り,
各容器から試料を採取し,混合して代表試料とする。
4
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表3−小形容器の抜取個数
精製グリセリン
粗製グリセリン
容器数
抜取個数
容器数
抜取個数
1〜 10
1
1〜 10
1〜 3
11〜100
2
11〜 25
2〜 4
101〜300
3
26〜 50
3〜 6
301〜500
4
51〜 75
6〜 8
501以上
5
76〜100
8〜10
101以上
10 %a)
注a) 小数点以下は,切り上げて整数とする。
b) 大形容器 大形容器の場合は,次のとおりとする。
1) 容器内から採取する場合 精製グリセリンについては,容器の上層,中層及び下層(液面からの深
さは約15 %,50 %及び85 %)のいずれかから少なくとも1個を採取する。2個以上のときは上層,
中層及び下層の採取の層を変える。粗製グリセリンについては,上記各層から計3個を採取する。
採取試料1個の場合は,そのまま代表試料とし,2個以上の場合は混合して代表試料とする。
2) 配管類から採取する場合 精製グリセリンについては,移送中,その初期,中期及び後期のいずれ
かから少なくとも1個を採取する。2個以上のときは採取時期を変えて採取し,混合して代表試料
とする。
粗製グリセリンについては,移送中,その初期,中期及び後期からそれぞれ1個を採取し,混合
して代表試料とする。
c) 代表試料の採取量 代表試料の採取量は,必要に応じて1 000 mL〜1 500 mLとする。
5.5
分析試料
代表試料を必要に応じて2〜3個に分け,試料容器に入れて密栓し,分析試料とする。分析試料の量は,
500 mLとする。
5.6
採取器具及び試料容器
採取器具及び試料容器は,次のとおりとする。
a) 採取器具 試料の採取器具は,図1及び図2に示すような形状で,材質はガラス,ステンレス鋼など
試料に対し安定なもの。
5
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単位 mm
単位 mm
図1−小形液体試料採取器の例
(ガラス管)
図2−大形液体試料採取器の例
(おもり付き金属製採取器)
b) 試料容器 試料容器は,ほうけい酸ガラス製など耐薬品性の材質のもので,密栓できるふた付きのも
の。
5.7
試料採取上の注意
試料採取上の注意は,次のとおりとする。
a) グリセリンは,非常に吸湿しやすいので,大気から遮断することが必要である。そのため試料容器は,
試料の注入時及び取り出すとき以外は密栓しておく。また,試料の採取はできる限り屋根の下で行い,
雨その他不慮の汚染を受けないようにする。
b) 沈殿又は懸濁物を含む場合は,試料を容易に均一化するため,容器容量の2/3まで試料を入れる。そ
の他の場合は,容器を満たす。
c) 純粋なグリセリンの凝固点は約18 ℃であるので,試料は容器に充てん中又は充てん直後に採取する
ことが望ましい。試料が凝固したときは,60 ℃以下で加熱して溶かし,全体を均一にした後に用いる。
d) 器具及び容器は,すべて清浄で乾燥したものを用いる。
6
試験方法
6.1
一般事項
試験において共通する一般事項は,JIS K 0050,JIS R 3503,JIS R 3505及びJIS Z 8401による。
6.2
性状
性状は,試料を,清浄で乾燥したガラス容器に取って調べる。
6
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6.3
色数(ハーゼン)
6.3.1
要旨
試料を比色管にとり,ハーゼン比色液と比較して,色数をハーゼン単位で表す。
6.3.2
器具
器具は,次のとおりとする。
a) 比色管 共通すり合わせ平底ガラス管。内径25 mmで,それぞれ同質,同形で肉厚の等しいもの,か
つ,液量が約100 mLになるように底部から同じ高さのところに標線を刻んだもの。
b) 白色板 JIS P 3801によるろ紙2種
6.3.3
ハーゼン比色液
JIS K 8153によるヘキサクロロ白金 (IV) 酸六水和物2.65 g1)又はJIS K 8163によるヘキサクロロ白金
(IV) 酸カリウム2.49 g1)及びJIS K 8129による塩化コバルト (II) 六水和物2.00 gをそれぞれはかりとり,
これにJIS K 8180による塩酸200 mLを加えて,溶かした後,JIS K 0557に規定する種別A2又はA3の水
を加えて2 000 mLとし,これをハーゼン500の比色原液とする。
ハーゼン500未満の比色液は,ハーゼン500の比色原液と先の水とを表4によって混合して調製し,密
栓して冷暗所に保存する。この場合,調製後,1年以上経過したハーゼン500の比色原液及び1か月以上
経過したハーゼン500未満の比色液は,用いてはならない。
注1) 白金1.00 gを含む量
表4−ハーゼン比色液
ハーゼン比
色液の番号
ハーゼン500
の比色原液
mL
水
mL
ハーゼン比
色液の番号
ハーゼン500
の比色原液
mL
水
mL
0
0
500
25
25
475
5
5
495
30
30
470
10
10
490
35
35
465
15
15
485
40
40
460
20
20
480
50
50
450
6.3.4
操作
試料とハーゼン比色液とをそれぞれ比色管の標線まで入れ,白色板上に置き,拡散昼光の下で比色管の
上方から下方に透かして色を比較する。
6.3.5
判定
試料に最も近似したハーゼン比色液を決定し,そのハーゼン比色液の番号で表す。
6.4
液性
6.4.1
要旨
試料溶液をリトマス試験紙で試験する。
6.4.2
試薬
試薬は,次のとおりとする。
a) リトマス試験紙 JIS K 9071による。
6.4.3
操作
試料を水で2倍の体積にうすめ,リトマス試験紙によって液性を判別する。
6.4.4
判定
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リトマス試験紙が赤変しないか,又はわずかに青変する範囲内を合格とする。
6.5
酸度又はアルカリ度
6.5.1
要旨
試料溶液にフェノールフタレイン溶液を加え,塩酸又は水酸化ナトリウム標準液で滴定して,酸度又は
アルカリ度を100 g当たりのミリモル数として求める。
6.5.2
器具
器具は,次のとおりとする。
a) ミクロビュレット 2 mL又は5 mL。0.05 mL目盛付き
b) 三角フラスコ 500 mL
6.5.3
試薬
試薬は,次のとおりとする。
a) 0.1 mol/L塩酸 JIS K 8001のJA.5.2e)4)(0.1 mol/L塩酸)による。
b) 0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液 JIS K 8001のJA.5.2r)3)(0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液)による。
c) 二酸化炭素を除いた水 JIS K 8001の5.7c)(二酸化炭素を除いた水)による。
d) フェノールフタレイン溶液 (10 g/L) JIS K 8001のJA.4(指示薬)による。
6.5.4
操作
操作は,次のとおり行う。
a) 試料約100 gを三角フラスコ500 mLに0.1 gのけたまではかりとる。
b) 二酸化炭素を除いた水約200 mLを加え,よく振り混ぜる。
c) 指示薬としてフェノールフタレイン溶液 (10 g/L) 2〜3滴を加え,振り混ぜて紅色に着色した(アルカ
リ性)ときは,0.1 mol/L塩酸で溶液のうすい紅色が消えるまでミクロビュレットを用いて滴定する。
着色しない(酸性)ときは,0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液で同様に滴定し,うすい紅色が30秒間
保つときを終点とする。
6.5.5
計算
酸度又はアルカリ度は,次の式によって算出する。
S
f
V
A
100
0.1×
×
×
=
···································································· (1)
ここに,
A: 酸度又はアルカリ度 (mmol/100 g)
V: 滴定に要した0.1 mol/L塩酸又は0.1 mol/L水酸化ナトリウム
溶液の量 (mL)
f: 0.1 mol/L塩酸又は0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液のファク
ター
S: 試料の質量 (g)
6.6
密度
6.6.1
要旨
試料の質量と,試料と同体積の水の質量とを比重瓶を用いて測定し,空気の浮力補正を行い,20 ℃にお
ける試料の密度を求める。
6.6.2
装置及び器具
装置及び器具は,次のとおりとする。
a) 恒温水浴 浴温を20 ℃±0.1 ℃に調節できるもの。
b) 比重瓶 JIS R 3503による容量(25 mL又は50 mL)のゲーリュサック形比重瓶又はゲーリュサック
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形温度計付き比重瓶。
6.6.3
試薬
試薬は,次のとおりとする。
a) アセトン JIS K 1503による。
6.6.4
操作
操作は,次のとおり行う。
a) 比重瓶の検定 比重瓶の検定は,次のとおり行う。
1) 比重瓶を洗浄し,乾燥する。
2) 少量のアセトンを浸した布で,比重瓶を軽くたたき,静電気を除く。
3) 2分間〜3分間後,比重瓶の質量をミリグラムのけたまではかる。
4) 新たに煮沸し,20 ℃よりわずかに低い温度に冷却した水を比重瓶に満たし,栓をする。
5) 比重瓶を水浴中に置き,少なくとも10分間放置する。
6) 比重瓶の目盛に達するまで,吸取紙で水を取り去り,水浴から引き上げる。
7) 比重瓶の外面を布でふき,乾かし,アセトンを浸した布で軽くふく。
8) 2分間〜3分間後,比重瓶の質量をミリグラムのけたまではかる。
9) 3)及び8)の質量の差から水の質量を求める。
b) 試料の測定 試料の測定は,次のとおり行う。
1) 比重瓶を空にして,アセトンですすぎ,十分に乾燥する。
2) 20 ℃よりわずかに低い温度の試料を,泡をつくらないように比重瓶に満たし,栓をする。
3) 比重瓶の外面を20 ℃よりわずかに低い温度の水ですすぎ,水浴中に置き,少なくとも30分間放置
する。
以下,a) 6)〜a) 9)の操作を行って試料の質量を求める。
6.6.5
計算
密度は,次の式によって算出する。
e
1
2
ρ
×
+
+
=
B
M
B
M
D
········································································· (2)
ここに,
D: 密度 (g/mL)。密度は小数点以下3けたまで算出する。
M1: 20 ℃における水の質量 (g)
M2: 20 ℃における試料の質量 (g)
ρe: 20 ℃における水の密度 (0.998 2 g/mL)
B: 浮力補正値
(B=ρa×M1)
ρa:空気の密度(約0.001 2 g/mL)
注記 M1は,ほぼその体積V (mL) に等しいので,式(2)の計算
で生じるその差は,小数点以下4けたに影響しない。
6.7
グリセリン分
6.7.1
要旨
試料を強酸性で,過よう素酸ナトリウムによって低温酸化し,生成したぎ酸を,指示薬としてフェノー
ルフタレイン溶液を用いて水酸化ナトリウム溶液で滴定してグリセリン分を求める。
注記 反応式 CH2OH-CHOH-CH2OH+2NaIO4→HCOOH+2HCHO+2NaIO3+H2O
この方法は,隣接する二つ以上の炭素原子に水酸基をもち,上記の反応でぎ酸を生成する有
機化合物,例えば,糖類が含まれている場合には適用できない。
9
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6.7.2
器具
器具は,次のとおりとする。
a) 全量フラスコ 100 mL
b) 全量ピペット 10 mL
c) 全量ピペット 5 mL
d) 共通すり合わせ三角フラスコ 500 mL
e) 共通すり合わせ三角フラスコ 300 mL
f)
ビュレット 50 mL
6.7.3
試薬
試薬は,次のとおりとする。
a) 二酸化炭素を除いた水 JIS K 8001の5.7c)(二酸化炭素を除いた水)による。
b) 0.05 mol/L硫酸 JIS K 8001のJA.5.2y)3)(0.05 mol/L硫酸)による。
c) 0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液 JIS K 8001のJA.5.2r)3)(0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液)による。
d) ぎ酸ナトリウム溶液 (1 mol/L) JIS K 8267によるぎ酸ナトリウム68.0 gを二酸化炭素を除いた水に
溶かして1 000 mLとする。
e) エチレングリコール溶液 JIS K 8105によるエチレングリコールと二酸化炭素を除いた水とを体積比
で1 : 1で混合して調製する。
f)
フェノールレッド溶液 (1 g/L) JIS K 8800によるフェノールレッド0.1 gをJIS K 8102によるエタノ
ール (95) 20 mLに溶かし,水を加えて100 mLとする。
g) フェノールフタレイン溶液 (10 g/L) 6.5.3d) による。
h) 過よう素酸ナトリウム溶液 過よう素酸ナトリウム溶液は,次のとおりとする。
1) 過よう素酸ナトリウムの品質 JIS K 8256による過よう素酸ナトリウム5 gを,二酸化炭素を除い
た水150 mLに溶かし,エチレングリコール溶液5 mLを加え,二酸化炭素を遮って暗所に30分間
放置する。この溶液に指示薬としてフェノールレッド溶液 (1 g/L) 2〜3滴を加えて0.1 mol/L水酸化
ナトリウム溶液で中和するとき,その量は1 mL以下のもの。
2) 溶液の調製 1)で品質を確認した過よう素酸ナトリウムの結晶を乳鉢ですりつぶし,その60.0 gを
とり,0.05 mol/L硫酸120 mLを二酸化炭素を除いた水約500 mLに溶かし,先の水で全量を1 000 mL
とする。もし,溶液が透明にならない場合には,ガラスろ過器でろ過する。
なお,過よう素酸ナトリウム溶液は,加熱してはならない。
3) 溶液の酸性度の確認 空試験6.7.5 i)に要する0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液の量は,5.6 mL以下
であってはならない。これは反応を進行するのに必要な酸性に対応する。
4) 溶液の保存 溶液は着色共通すり合わせガラス瓶に入れて保存する。
6.7.4
試料の採取量
グリセリン分の含有量が不明の場合は,試料0.5 gを用いて予備試験を行う。精製グリセリンでは試料2
g〜4 g,粗製グリセリンでは試料4 g〜5 gを0.1 mgのけたまではかりとり,二酸化炭素を除いた水ととも
に全量フラスコ100 mLに移し入れ,先の水を標線まで加える。その10 mLを取る。
6.7.5
操作
二酸化炭素の存在は誤差の原因になるので,試料溶液の入った容器を静置するときは共栓でふたをし,
同室で二酸化炭素を発生する試験を行ってはならない。
a) 6.7.4で規定した試料の適当量を,共通すり合わせ三角フラスコ500 mLにはかりとり,二酸化炭素を
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除いた水を加えて約100 mLとする。
b) 指示薬としてフェノールフタレイン溶液 (10 g/L) 2滴を加え,アルカリ性の場合は0.05 mol/L硫酸で
無色になるまで中和し,更に0.05 mol/L硫酸5 mL及び二酸化炭素を除いた水で全溶液量を約200 mL
とし,5分間煮沸した後,室温に冷却する。アルカリ性でない場合は,そのまま次の操作を行う。
c) 二酸化炭素を除いた水を加えて全溶液量を約200 mLに調節する。
d) 0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液で,紅色が30秒間消えなくなるまで滴定する。
e) 過よう素酸ナトリウム溶液50.0 mLを加え,緩やかにかき混ぜ,共栓でふたをし,35 ℃以下の暗所に
30分間放置する。
f)
エチレングリコール溶液10 mLを加え,振り混ぜ,更に20分間同じ暗所に放置する。
g) ぎ酸ナトリウム溶液 (1 mol/L) 5 mLを加える。
h) 0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液で,溶液の紅色が30秒間消えなくなるまで滴定する。
なお,この滴定の試料が精製グリセリンである場合は,電位差滴定でも測定することができる。電
位差滴定方法の一般事項は,JIS K 0113による。
i)
全操作にわたって空試験を同一条件で行う。
注記 この滴定の試料が精製グリセリンである場合には,上記b),c),d),g)の操作は省略してもよ
い。この場合,共通すり合わせ三角フラスコは300 mLを用いると操作しやすい。
6.7.6
計算
グリセリン分は,次の式によって算出する。
100
10
100
21
0.009
)
(
2
1
×
×
×
×
×
−
=
S
f
V
V
G
············································ (3)
ここに,
G: グリセリン分[%(質量分率)]
V1: 試料の滴定に要した0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液の
量 (mL)
V2: 空試験の滴定に要した0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液
の量 (mL)
f: 0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液のファクター
0.009 21: 0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液1 mLのグリセリン相当
量 (g)
S: 試料の質量 (g)
6.8
灰分
6.8.1
要旨
試料を燃焼し,強熱して残分を灰分として求める。
6.8.2
装置及び器具
装置及び器具は,次のとおりとする。
a) 電気炉 750 ℃±10 ℃に調節できるもの。
b) 白金皿又は磁器皿 JIS H 6202による白金皿200番又はJIS R 1302による磁器皿。
c) デシケーター 乾燥剤としてシリカゲルを用いる。
注記 シリカゲルは,JIS Z 0701による包装用シリカゲル乾燥剤A形1種を用いる。
6.8.3
操作
操作は,次のとおり行う。
a) 白金皿又は磁器皿を,750 ℃±10 ℃に調節した電気炉中で30分間強熱後,デシケーター中で放冷し,
その質量を1 mgのけたまではかる。
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b) 灰分の量に応じ,試料5 g〜100 g2)を白金皿又は磁器皿に入れ1 mgのけたまではかる。
注2) 灰分の量が5 mg以上となるように試料を取る。
c) 試料の入った白金皿又は磁器皿を小炎上で,その蒸気に点火するまで緩やかに加熱する。
d) 加熱を止め,炭化物が得られるまで試料を燃焼する。
e) 1分間〜2分間放冷後,白金皿又は磁器皿を750 ℃±10 ℃3)に調節した電気炉に入れ,30分間強熱す
る。
注3) 温度の測定はJIS C 1602による温度計を用い,JIS Z 8704によって行う。
f)
デシケーターに入れ,放冷後,その質量を1 mgのけたまではかる。
6.8.4
計算
灰分は,次の式によって算出する。
100
1
3
1
2
×
−
−
=
M
M
M
M
X
····································································· (4)
ここに,
X: 灰分[%(質量分率)]
M1: 空の白金皿又は磁器皿の質量 (g)
M2: 灰分を含む白金皿又は磁器皿の質量 (g)
M3: 試料を含む白金皿又は磁器皿の質量 (g)
6.9
強熱残分(硫酸塩)
6.9.1
要旨
試料を燃焼し,残さに少量の硫酸を加えて加熱した後,800 ℃〜850 ℃の電気炉で強熱したときの残分
を強熱残分(硫酸塩)として求める。
6.9.2
装置及び器具
装置及び器具は,次のとおりとする。
a) 電気炉 800 ℃〜850 ℃に調節できるもの。
b) 白金皿又は磁器皿 6.8.2 b) による。
c) デシケーター 6.8.2 c) による。
6.9.3
試薬
試薬は,次のとおりとする。
a) 硫酸 JIS K 8951による。
6.9.4
操作
操作は,次のとおり行う。
a) 白金皿又は磁器皿を,800 ℃〜850 ℃の電気炉で30分間加熱後,デシケーター中で放冷し,その質量
を0.1 mgのけたまではかる。
b) 試料50 g±0.1 gをa)の白金皿又は磁器皿に0.1 mgのけたまではかりとる。
c) 試料が飛散しないように,バーナーなどで緩やかに加熱して蒸気に点火する。加熱を止め炭化物が得
られるまで燃焼する。
d) 冷却後,残留物を硫酸0.5 mLで湿し,バーナーなどで加熱して硫酸の白煙が生じなくなった後,800 ℃
〜850 ℃の電気炉で30分間加熱後,デシケーター中で放冷し,その質量を0.1 mgのけたまではかる。
6.9.5
計算
強熱残分(硫酸塩)は,次の式によって算出する。
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100
1
2
×
−
=
S
M
M
XS
···································································· (5)
ここに,
XS: 強熱残分(硫酸塩)[%(質量分率)]
M1: 空の白金皿又は磁器皿の質量 (g)
M2: 強熱残分を含む白金皿又は磁器皿の質量 (g)
S: 試料の質量 (g)
6.10 けん化当量相当
6.10.1 要旨
試料を水酸化ナトリウム溶液でけん化し,消費した水酸化ナトリウムの量を試料100 g当たりのミリモ
ル数として求める。
6.10.2 装置及び器具
装置及び器具は,次のとおりとする。
a) 水浴
b) 三角フラスコ 容量500 mL。外径約8 mm,長さ約1 000 mmの空気冷却器がすり合わせ接続できるも
の。
c) ビュレット 50 mL
6.10.3 試薬
試薬は,次のとおりとする。
a) 0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液 JIS K 8001のJA.5.2r)3)(0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液)による。
b) 0.1 mol/L塩酸 JIS K 8001のJA.5.2e)4)(0.1 mol/L塩酸)による。
c) 二酸化炭素を除いた水 JIS K 8001の5.7c)(二酸化炭素を除いた水)による。
d) フェノールフタレイン溶液 (10 g/L) JIS K 8001のJA.4(指示薬)による。
6.10.4 操作
操作は,次のとおり行う。
a) 試料約100 gを三角フラスコ500 mLに0.1 gのけたまではかりとる。
b) 二酸化炭素を除いた水約200 mLを加え,よく振り混ぜる。
c) 0.1 mol/L水酸化ナトリウム溶液40.0 mLを加え,振り混ぜる。
d) 空気冷却器を付けて,沸騰水浴上で1時間加熱する。
e) 室温に冷却後,指示薬としてフェノールフタレイン溶液 (10 g/L) 2〜3滴を加え,0.1 mol/L塩酸で紅色
が消えるまで滴定する。
f)
全操作にわたって空試験を同一条件で行う。
6.10.5 計算
けん化当量相当は,次の式によって算出する。
S
f
V
V
K
100
1.0
)
(
1
2
×
×
×
−
=
···························································· (6)
ここに, K: けん化当量相当 (mmol/100 g)
V1: 試料の滴定に要した0.1 mol/L塩酸の量 (mL)
V2: 空試験の滴定に要した0.1 mol/L塩酸の量 (mL)
f: 0.1 mol/L塩酸のファクター
S: 試料の質量 (g)
6.11 水分
6.11.1 要旨
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有機性不純分を算出するため,試料をカールフィッシャー法で測定して水分を求める。
6.11.2 操作
JIS K 0068の6.(カールフィッシャー滴定法)によって行う。
6.11.3 計算
水分は,次の式によって算出する。
直接滴定法による場合
100
100
000
1
18
000
1
1
×
×
−
×
×
=
A
S
f
V
W
·················································· (7)
逆滴定法による場合
100
100
000
1
18
000
1
2
1
×
×
−
×
×
−
×
=
A
S
P
V
f
V
W
············································ (8)
ここに,
W: 水分[%(質量分率)]
V1: カールフィッシャー試薬の使用量 (mL)
f: カールフィッシャー試薬1 mLに対応する水のmg数
V2: 水−メタノール標準液の使用量 (mL)
P: 水−メタノール標準液1 mL中の水の量 (mg)
S: 試料の質量 (g)
18: 水の分子量
A: 6.5によって求めた試料のアルカリ度 (mmol/100 g)
注記 アルカリ分が残存するとカールフィッシャー試薬と反応するため,実際の水分は,測定値から
アルカリ分に相当する水分量を差し引くことが必要である。
6.12 有機性不純分
6.12.1 要旨
試料中のグリセリン分,灰分及び水分の和を100から差し引いて有機性不純分とする。
6.12.2 計算
有機性不純分は,次の式によって算出する。
(
)
W
X
G
O
+
+
−
=100
·································································· (9)
ここに,
O: 有機性不純分[%(質量分率)]
G: 6.7によって求めたグリセリン分[%(質量分率)]
X: 6.8によって求めた灰分[%(質量分率)]
W: 6.11によって求めた水分[%(質量分率)]
6.13 還元性物質試験
6.13.1 要旨
試料に含まれる糖類,アクロレインなどの還元性物質を,アンモニア水の存在下に硝酸銀との反応で試
験する。
6.13.2 装置及び器具
装置及び器具は,次のとおりとする。
a) 水浴
b) 試験管
6.13.3 試薬
試薬は,次のとおりとする。
a) アンモニア水(1+2) JIS K 8085によるアンモニア水を用いて調製したもの。
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b) 硝酸銀溶液(100 g/L) JIS K 8550による硝酸銀を用いて調製したもの。
c) グリセリン標準液 (0.03 g/L) JIS K 8780によるピロガロール0.003 %を含有するようにJIS K 8295に
よるグリセリンを用いて調製したもの。
6.13.4 操作
操作は,次のとおり行う。
a) 試料3 mLを試験管にとり,水5 mLを加えて溶かす。
b) アンモニア水 (1+2) 0.5 mLを加え,60 ℃の水浴中で5分間加熱する。
c) 水浴中から取り出し,硝酸銀溶液 (100 g/L) 0.5 mLを加えてよく振り混ぜ,暗所に5分間放置する。
d) 別にグリセリン標準液3 mLを用いてa)〜c)までの操作を行う。
6.13.5 判定
6.13.4 c)で得た混濁が,6.13.4 d)で得た混濁以下であるものを合格とする。
6.14 塩化物試験
6.14.1 要旨
試料溶液に硝酸及び硝酸銀を加えて,塩化物を塩化銀として白濁させ,塩化物標準液によって生じる濁
度を上限として比較する。
6.14.2 器具
器具は,次のとおりとする。
a) 比色管 図3に示すような共栓平底比色管で50 mLの標線を付けた無色透明のもの。それぞれの比色
管の50 mLの標線の高さの差が2 mm以下のものを用いる。
b) 全量フラスコ 1 000 mL
図3−比色管の例
6.14.3 試薬
試薬は,次のとおりとする。
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a) 硝酸 (100 g/L) JIS K 8541による硝酸を用いて調製する。
b) 硝酸銀溶液 (20 g/L) JIS K 8550による硝酸銀2 gを水に溶かして100 mLとする。この溶液は着色瓶
に入れて保存する。
c) 塩化物標準液 (Cl− 0.1 mg/mL) JIS K 8150による塩化ナトリウム1.65 g をはかりとり,水に溶かし
て全量フラスコ1 000 mLに移し入れ,水を標線まで加える。これを塩化物標準原液 (Cl− 1 mg/mL) と
する。使用時に必要量だけ水で正しく10倍にうすめる。
6.14.4 操作
操作は,次のとおり行う。
a) 試料10.0 gを比色管にとり,水を加えて溶かし40 mLとする。
b) 硝酸 (100 g/L) 6 mLを加え,水を加えて50 mLとする。
c) 硝酸銀溶液 (20 g/L) 1 mLを加え,よく振り混ぜ,暗所に5分間放置する。
d) 別の比色管に塩化物標準液 (Cl− 0.1 mg/mL) 5.0 mLをとり,水を加えて40 mLにし,b)及びc)の操作
を行って白濁させる。
6.14.5 判定
6.14.4 c)で得た濁度が6.14.4 d)で得た濁度以下のときを合格とする。
この試験に適合するものは,塩化物(Cl−として)0.005 %(質量分率)以下である。
6.15 ひ素試験
6.15.1 要旨
試料に塩酸,よう化カリウム及び塩化すず (II) を加えて,ひ素を亜ひ酸とし,次に亜鉛を加えて水酸化
ひ素とする。これをジエチルジチオカルバミド酸銀のピリジン溶液に吸収し,赤紫に発色させてその吸光
度を測定し,同時にひ素標準液について測定した吸光度を上限として比較する。
警告 この規格に基づいて試験を行う者は,通常の実験室での作業に精通していることを前提とする。
この規格は,その使用に関連して起こるすべての安全上の問題を取り扱おうとするものではな
い。この規格の利用者は,各自の責任において安全及び健康に対する適切な措置をとらなけれ
ばならない。
6.15.2 装置及び器具
装置及び器具は,次のとおりとする。
a) 水素化ひ素発生器及び吸収管 図4及び図5に,例を示す。
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単位 mm
A:水素化ひ素発生瓶 100 mL
B:導管
b :酢酸鉛溶液(200 g/L)
で湿したガラス繊維
C:水素化ひ素吸収管
D:ゴム栓
図4−水素化ひ素発生器及び吸収管の例
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単位 mm
A:水素化ひ素発生瓶 100 mL
B:導管
b :酢酸鉛溶液(200 g/L)
で湿したガラス繊維
C:水素化ひ素吸収管
D:亜鉛投入管
E:平面すり合わせ
F:押さえばね
図5−水素化ひ素発生器及び吸収管の例
b) 光度計 分光光度計
c) 全量フラスコ 1 000 mL
6.15.3 試薬
試薬は,次のとおりとする。
a) 塩酸 JIS K 8180によるひ素分析用のもの。
b) よう化カリウム溶液 (150 g/L) JIS K 8913によるよう化カリウムを用いて調製する。
c) 塩化第一すず溶液 (400 g/L) JIS K 8136による塩化すず (II) 二水和物47.7 gを塩酸 (3+1)[a)の塩
酸を用いて調製する。]100 mLに溶かす。使用時に調製する。
d) 亜鉛 JIS K 8012によるひ素分析用の砂状亜鉛。
e) 酢酸鉛溶液 (200 g/L) JIS K 8374による酢酸鉛 (II) 三水和物24 gを水に溶かして100 mLとする。
f) N,N−ジエチルジチオカルバミド酸銀溶液 (5 g/L) JIS K 9512によるジエチルジチオカルバミド酸銀
0.5 gをJIS K 8777によるピリジンに溶かして100 mLとしたもの。
g) ひ素標準液 (As 0.001 mg/mL) 国家標準にトレーサブルな標準液 (JCSS) (Japan Calibration Service
System) のロゴ付き証明書を付した標準液,JCSS以外の認証標準物質,このような標準液がない場合
には,一般的な市販の標準液,又は自己責任で調製したもの。調整方法は,JIS K 8001の表JA.3によ
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る。
6.15.4 操作
操作は,次のとおり行う。
a) 試料10 gを水素化ひ素発生瓶にはかりとり,塩酸 (1+1)[6.15.3a) の塩酸を用いて調製する。]20 mL
を加える。
b) 水を加えて約40 mLとする。
c) よう化カリウム溶液 (150 g/L) 2 mL,塩化第一すず溶液 (II) (400 g/L) 2 mLを加えて振り混ぜる。15
分間放置した後,水で全量を約60 mLとする。
d) 亜鉛5 gを加えてジエチルジチオカルバミド酸銀溶液 (5 g/L) 5 mLを入れた吸収管に連結する。水素
化ひ素発生瓶を約25 ℃の水浴中に浸し,約1時間放置してジエチルジチオカルバミド酸銀溶液に水
素化ひ素を吸収発色させる。
e) この溶液の一部を光度計の吸収セルにとり,波長540 nmの吸光度を測定する。
f)
ひ素標準液 (As 0.001 mg/mL) 20 mLを水素化ひ素発生瓶にとり,塩酸 (1+1) 20 mLを加え,b)〜f)の
操作を行って,吸光度を測定する4)。
注4) ここに得られる吸光度は,試料溶液中のひ素2 mg/Lに相当する。
6.15.5 判定
試料溶液の吸光度6.15.4 e)が比較標準液の吸光度6.15.4 f)より大きくなければ合格とする。
6.16 硝化及び分離試験
6.16.1 要旨
グリセリンを硫硝酸混合液で硝化し,生成するニトログリセリンの生成量及び生成したニトログリセリ
ンと硝化廃酸との分離状況を観察する。
警告 この規格に基づいて試験を行う者は,通常の実験室での作業に精通していることを前提とする。
この規格は,その使用に関連して起こるすべての安全上の問題を取り扱おうとするものではな
い。この規格の利用者は,各自の責任において安全及び健康に対する適切な措置をとらなけれ
ばならない。
6.16.2 器具
器具は,次のとおりとする。
a) フラスコ 共通すり合わせ短首丸底フラスコ500 mL
b) ゴム製容器 容量約10 L
c) ビュレット 25 mL
d) メスシリンダー 100 mL
6.16.3 試薬
試薬は,次のとおりとする。
a) 硫硝酸混合液 JIS K 8739による発煙硝酸とJIS K 8951による硫酸とを質量比1 : 1.2で混合して調製
する。使用時に調製する。
b) 炭酸ナトリウム溶液(100 g/L) JIS K 8625による炭酸ナトリウムを用いて調製する。
6.16.4 操作
操作は,次のとおり行う。
a) 硫硝酸混合液125 gをフラスコに入れ,氷水又は冷却水を満たしたゴム製容器中に浸して冷却する。
b) 硫硝酸混合液を7 ℃に冷却し,フラスコを氷水又は冷却水に浸して軽く振り混ぜながら,ビュレット
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から試料15 gを1滴ずつ静かに加える5)。
なお,このとき液温が22 ℃以上に上昇しないように注意する。
注5) この試験は,非常に危険であるから,十分に注意して行う。
c) 試料の滴加が終わっても,引き続き振り混ぜながら冷却し,液温を15 ℃〜17 ℃にして,内容物の全
液を乾燥したメスシリンダーに移した後,20分間静置し,生成したニトログリセリンと硝化廃酸との
界面が明確に分離するか否かを観察する。
d) ゴム製容器中に多量の水を満たし,よくかき混ぜながら,メスシリンダー中の上部の水層の部分を静
かに流し込み傾斜によって除去し,次に炭酸ナトリウム溶液 (100 g/L) で1回〜2回洗浄し,更に2
回〜3回水洗する。
e) 水洗の終わったニトログリセリンは,残った少量の水とともにメスシリンダーに移し入れ,ニトログ
リセリンの体積を測定する。
6.16.5 計算
ニトログリセリンの生成量は,次の式によって算出する。
100
600
.1
×
×
=
S
V
N
··································································· (10)
ここに,
N: ニトログリセリンの生成量[%(質量分率)]
V: ニトログリセリンの体積 (mL)
S: 試料の質量 (g)
1.600: ニトログリセリンの密度 (g/mL)
6.16.6 判定
判定は,次のとおりとする。
a) 6.16.4 c)で観察した,ニトログリセリンと硝化廃酸との分離が,明確である。
b) 6.16.5によって求めたニトログリセリンの生成量が,200 %以上である。
c) a)及びb)を満足したものを合格とする。
7
検査
検査は,箇条6によって試験をしたとき箇条4の規定に適合しなければならない。ただし,品質が安定
していると判断されるときは,JIS Z 9015-1に従った合理的抜取検査によって行ってもよい。
8
表示
工業用グリセリンには,容器ごとに見やすい所に,次の事項を表示しなければならない。ただし,大形
容器の場合には,送り状に記載してもよい。
a) 種類
b) 正味質量又は正味容量
c) 製造業者名又はその略号
d) 製造年月又はその略号
e) 製造番号又はその略号
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K 3351:2009
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
[1]ISO 760,Determination of water−Karl Fischer method (General method)
[2]ISO 2096,Glycerols for industrial use−Methods of sampling
[3]ISO 3696,Water for analytical laboratory use−Specification and test methods