K 2279:2003
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,石油連盟(PAI)
から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経
て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって,JIS K 2279:1993は改正され,この規
格に置き換えられる。
今回の改正は,日本工業規格を国際規格に整合させるため,ISO 8217:1996及びISO 3648:1994を基
礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
JIS K 2279には,次に示す附属書がある。
附属書1(参考) ゲーリュサック法によるベックマン温度計の補正方法
附属書2(参考) 総発熱量からの真発熱量推定方法
附属書3(参考) JISと対応する国際規格との対比表
K 2279:2003
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 2
3. 定義 ······························································································································ 2
4. 試験方法の種類 ··············································································································· 3
5. 発熱量試験方法 ··············································································································· 3
5.1 試験の原理 ··················································································································· 3
5.2 発熱量試験器 ················································································································ 3
5.3 標準物質 ······················································································································ 5
5.4 試薬 ···························································································································· 6
5.5 試料採取及び調製方法 ···································································································· 6
5.6 試料の準備 ··················································································································· 6
5.7 試験の手順 ··················································································································· 7
5.8 熱量計の熱当量の測定 ···································································································· 8
5.9 計算方法及び精度 ·········································································································· 9
5.10 試験結果の報告 ··········································································································· 10
6. 総発熱量推定方法 ··········································································································· 10
6.1 総発熱量推定方法の原理 ································································································ 10
6.2 総発熱量の推定方法の種類······························································································ 10
6.3 推定の手順 ·················································································································· 10
7. 真発熱量推定方法 ··········································································································· 13
7.1 真発熱量推定方法の原理 ································································································ 13
7.2 推定方法の種類 ············································································································ 13
7.3 推定の手順 ·················································································································· 14
附属書1(参考) ゲーリュサック法によるベックマン温度計の補正方法 ······································ 18
附属書2(参考) 総発熱量からの真発熱量推定方法 ································································· 20
附属書3(参考) JISと対応する国際規格との対比表 ······························································· 21
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 2279:2003
原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による
推定方法
Crude petroleum and petroleum products−
Determination and estimation of heat of combustion
序文 この規格は,1996年に第2版として発行されたISO 8217:1996,Petroleum products−Fuels (class F)
−Specifications of marine fuels及び1994年に第2版として発行されたISO 3648:1994,Aviation fuels−
Estimation of net heat of combustionを元に,対応する部分については,技術的内容を変更することなく作成
した日本工業規格であるが,対応国際規格にない規定項目[この規格の5.及び7.3.2 a)]を日本工業規格と
して追加している。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,原国際規格を変更している事項又は原国際
規格にはない事項である。変更の一覧表をその説明を付けて附属書3(参考)に示す。
1. 適用範囲 この規格は,原油及び石油製品の総発熱量を改良形燃研式ボンベ形熱量計を用いて測定す
る方法,並びに原油及び石油製品の総発熱量並びに石油製品の真発熱量を試料の性状から計算式を用いて
推定する方法について規定する。
備考1. この規格は,危険な試薬,操作及び装置を使うことがあるが,安全な使用方法をすべてにわ
たって規定しているわけではないので,この試験方法の使用者は,試験に先立って,適切な
安全上及び健康上の禁止事項を決めておかなければならない。
2. 自動試験器を用いてもよい。ただし,自動試験器によって得られた試験結果に疑義が生じた
場合は,この試験方法によって得られた結果による。
3. この規格の対応国際規格を表1に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
表 1 対応国際規格
試験方法
適用油種
対応国際規格
総発熱量
推定方法
C重油
ISO 8217:1996
Petroleum products−Fuels(class F)
−Specifications of Marine Fuels (MOD)
真発熱量
推定方法
ナフサ,灯油
ISO 3648:1994
Aviation fuels−Estimation of net heat
of combustion(MOD)
2
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表 1 対応国際規格(続き)
試験方法
適用油種
対応国際規格
航空燃料油
B法 ISO 3648:1994
(MOD)
C重油
ISO 8217:1996
(MOD)
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 7410 石油類試験用ガラス製温度計
JIS K 1101 酸素
JIS K 2209 航空タービン燃料油
JIS K 2249 原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表
JIS K 2251 原油及び石油製品−試料採取方法
JIS K 2254 石油製品−蒸留試験方法
JIS K 2256 石油製品−アニリン点及び混合アニリン点試験方法
JIS K 2272 原油及び石油製品−灰分及び硫酸灰分試験方法
JIS K 2275 原油及び石油製品−水分試験方法
JIS K 2536 石油製品−成分試験方法
JIS K 2541 原油及び石油製品−硫黄分試験方法
JIS K 2839 石油類試験用ガラス器具
JIS K 8005 容量分析用標準物質
JIS K 8102 エタノール(95)(試薬)
JIS K 8576 水酸化ナトリウム(試薬)
JIS K 8893 メチルオレンジ(試薬)
JIS K 8896 メチルレッド(試薬)
JIS K 9003 流動パラフィン(試薬)
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8402-6 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)− 第6部:精確さに関する値の実用的
な使い方
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
a) 総発熱量(gross specific energy) 試料を熱量計で燃焼した場合,燃焼ガス中の水蒸気がもつ凝縮潜熱
及び顕熱を包含した発熱量。総発熱量の単位としては,J/g又は15 ℃におけるJ/cm3を用いる。
b) 真発熱量(net specific energy) 総発熱量から燃焼ガス中の水蒸気がもつ凝縮潜熱及び顕熱を除外した
発熱量。真発熱量の単位としては,J/g又は15 ℃におけるJ/cm3を用いる。
c) 熱量計の熱当量 熱量計の温度を1 ℃上昇するのに必要な熱量。熱当量の単位としては,J/℃を用い
る。
参考1. 熱量の単位として用いられるジュール(J)と従来単位,カロリー(cal)の間には,次の関
係がある。
3
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1 J =0.238 889 cal
1 cal =4.186 05 J
2. 総発熱量を高発熱量,真発熱量を低発熱量と呼ぶことがある。
4. 試験方法の種類 試験方法の種類は,表2による。
表 2 試験方法の種類
試験方法の名称
箇条番号
発熱量試験方法
5.
総発熱量推定方法
6.
真発熱量推定方法
7.
ゲーリュサック法による
ベックマン温度計の補正方法
附属書1(参考)
総発熱量からの真発熱量の推定
方法
附属書2(参考)
5. 発熱量試験方法
5.1
試験の原理 酸素を圧入した一定容量のボンベ中で試料を燃焼させ,燃焼前後の温度計の読みから
発熱量を求める。その値に対してあらかじめ求めておいた熱当量の補正を行って総発熱量を算出する。
5.2
発熱量試験器 発熱量試験器は,次による。
a) 熱量計 計量法に基づくボンベ形熱量計で,1)〜7) で構成し,一例を図1に示す。
4
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⑥酸素入口及び排出口
図 1 改良形燃研式ボンベ形熱量計(一例) 図 2 ボンベ(一例)
1) ボンベ 図2に示すステンレス鋼製(SUS 304)の耐圧容器又はこれと同等以上の機械的性質をも
つ耐圧容器。容量は300 ml±15 mlとし,試験中漏れがなく,容器の内面は,試料の燃焼によって
生成する酸に腐食されないもの。
備考 ボンベは,室温で19.6 MPaの水圧試験に5分間耐えるものでなければならない。
2) 内筒 内径135 mm±5 mm,深さ262 mm±5 mmで,内外面にクロム又はニッケルめっきを施した
もの。
3) 中間筒 内径178 mm±5 mm,深さ300 mm±5 mmのもの。
4) 外槽 内径300 mm,深さ360 mmのもの。
5) 加温水槽 水2 Lを30分間以内で20 ℃から100 ℃に加熱できるもので,注水弁は90 ℃以上の熱
水500 mlを30秒間以内で外槽に注水できるもの。
5
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6) 温度計 温度計は,次による。
6.1) ベックマン温度計 5〜6 ℃の温度差を測定でき,かつ,目量0.01 ℃で,計量法の検定に合格し
たものに適切な拡大鏡を取り付けたもの。内筒用のものは,更に検定済みのベックマン温度計と
比較して補正するか,ゲーリュサック法又は同等の精度の方法によって補正を行って使用する。
参考 ゲーリュサック法によるベックマン温度計の補正方法を,附属書1(参考)に示す。
6.2) ガラス温度計 水温及び室温の測定並びに,ベックマン温度計の基点温度の決定に使用するもの
で,目盛範囲0〜50 ℃,目量0.1 ℃のもの又はJIS B 7410に規定する温度計番号48(CAL)のも
の。
7) 点火用電気回路 試料の点火用回路は10〜30 Vとし,点火の有無を確認するために,電流計又はパ
イロットランプを直列に入れたもの。
b) 試料皿 図3に規定する形状・寸法のもの(底部内径約22 mm,上部外径約27 mm,高さ約13 mm)
で,不透明石英ガラス製,白金製又はステンレス鋼製 (1) のもの。
注(1) 新しいステンレス鋼製の試料皿を用いる場合は,あらかじめ数回空焼きして質量の変化がない
ことを確認する。
備考 JIS K 2839に規定する図71のものがこれに相当する。
単位 mm
図 3 試験皿
c) カプセル ゼラチン製カプセル。ゼラチン製カプセルの総発熱量は,約10個分のカプセルを試料皿に
納まるように押しつぶすか又は裁断し,5.7に準じて測定する。
参考 ゼラチンカプセルは“日本薬局方 医薬品各条のカプセル”に規定する“カプセル番号000”の
ものを使用するとよい。
d) ポリエチレン製袋 縦約30 mm,横約20 mmのもの。総発熱量は,約0.5 gの袋を試料皿に納まるよ
うに押しつぶすか又は裁断し,5.7に準じて測定する。
参考 長さ約20 mm,幅約5 mmの注入口が付いた袋を用いてもよい。
e) 点火線 径約0.1 mm,長さ約100 mmの純ニッケル又は純鉄線。
f)
酸素圧入用連結管 酸素をボンベ内に圧入する金属製連結管で,減圧弁及びボンベ内の圧力計(最大
目盛5.9 MPa以上,細分目盛0.2 MPa以下)を備えたもの。
g) 錠剤成形器 安息香酸を点火線とともに直径10 mm±1 mmの錠剤に成形できるもの。
h) はかり
1) 化学はかり 感量0.1 mg以下,ひょう量100 g以上の化学はかり。
2) 卓上台ばかり又は上皿ばかり 感量1 g以下,ひょう量4 kg以上の卓上台ばかり又は上皿ばかり。
i)
シリンジ 容量約5 mlで,目盛付きのもの。
5.3
標準物質 標準物質は,独立行政法人 製品評価技術基盤機構によって認定された機関が供給する熱
量標定用安息香酸又は国際熱量標準安息香酸を用いる。
6
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
備考 安息香酸は,点火線とともに錠剤にして用いるが,錠剤にする前に70〜80 ℃の乾燥器で2時
間以上加熱してデシケータ中で放冷するか,又はシリカゲルなどを入れたデシケータ中で48
時間以上乾燥して用いる。既に錠剤に成形されているものを使用する場合も同様の乾燥操作を
行う。
参考1. 安息香酸の総発熱量認定値は,26 500 J/g程度である。熱当量の算出に際しては表示してある
認定値を用いる。
2. 熱量標定用安息香酸を供給する認定機関として,財団法人 日本品質保証機構がある。
5.4
試薬 試薬は,次による。
a) 1/28 mol/L炭酸ナトリウム標準液 JIS K 8005に規定する炭酸ナトリウムを600 ℃で約60分間加熱
し,デシケータ中で放冷する。Na2CO3 100 %に対し,その3.785 gをとり,水に溶かし全量フラスコ
で1 000 mlにしたもの。
備考 JIS K 8576に規定する水酸化ナトリウムから調製した1/14 mol/Lの濃度のものでもよい。
b) 指示薬 次に規定するメチルオレンジ溶液又はメチルレッド溶液。
1) メチルオレンジ溶液 JIS K 8893に規定するメチルオレンジ0.10 gを水に溶かし全量を100 mlにし
たもの。
2) メチルレッド溶液 JIS K 8896に規定するメチルレッド0.10 gをJIS K 8102に規定するエタノール
(95)に溶かし,全量を100 mlにしたもの。
c) 酸素 JIS K 1101に規定するもの。
d) 流動パラフィン JIS K 9003に規定するもの。総発熱量は5.7によって測定する。
5.5
試料採取及び調製方法 試験用試料は,JIS K 2251に規定する一次試料の採取方法及び二次試料の
調製による,又はそれに準じる方法によって採取及び調製する。
5.6
試料の準備 試料の準備は,試料の揮発性で異なり,表3による。
表 3 試料の準備
試料
油種(例)
不揮発性試料
灯油,航空燃料油(JetA,JetA-1,JP-5),軽油,
重油
揮発性試料
ナフサ,ガソリン,航空燃料油(航空ガソリン,
JP-4),原油
備考1. 揮発分の少ない原油の場合は,不揮発性試料に準じて取り扱うこ
とができる。
2. JP-4はJIS K 2209の3号(JetB)である。
参考 航空燃料油は,航空輸送業界において国際的に,次のような呼称
が通用している。
a) 航空ガソリン:100/130,100 LL,115/145
b) 航空タービン燃料油
1) 灯油形 :Jet A,Jet A-1,Avtur,JP-8
2) 高引火点形 :JP-5,Avcat
3) 広範囲沸点形:JP-4,Jet B,Avtag
a) 不揮発性試料の場合 総発熱量が約27 000 Jになるように試料の適量 (2) (3) を試料皿に0.1 mgのけた
まではかり採り,これを図2に示すボンベの内ぶたに取り付けてある電極上に置く。次に,0.1 mgの
けたまではかった点火線 (4) を試料皿 (5) 中の試料の表面に触れさせるように取り付け,その両端を
点火用電極に接続した後,ボンベの内ぶた及び外ぶたを完全に密閉する。
注(2) 試料のおおよその総発熱量が分かっているときは,次の式によって試料の適量を算出する。
7
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
HgE
M
000
27
=
ここに, M :試料の質量(g)
HgE:試料のおおよその総発熱量(J/g)
(3) 硫黄分が0.1質量%を超える試料については,あらかじめJIS K 2541を用いて硫黄分を求めて
おく。
(4) 白金製の試料皿の場合は,点火線による損傷があるので,純鉄線を用いたほうがよい。
(5) 白金製及びステンレス鋼製の試料皿には,赤熱済みの絶縁物を敷いたほうがよい。
b) 揮発性試料の場合 次の1)〜3) のいずれかの方法によってはかり採る。
1) ポリエチレン製袋を用いる場合 流動パラフィン0.1〜0.2 gを試料皿に0.1 mgのけたまではかり採
り,質量既知の点火線を流動パラフィンに浸るように取り付け,その両端を点火用電極に接続する。
あらかじめ0.1 mgのけたまで質量をはかったポリエチレン製袋に,シリンジを用いて,総発熱量が
約27 000 Jになるように適量の試料 (2) を入れた後,注入口を密封する (6)。次に,この試料の入っ
た袋をあらかじめ0.1 mgのけたまで質量をはかったポリエチレン製袋に挿入して二重に密封した
後,0.1 mgのけたまで質量をはかる。その後,袋を試料皿に入れ,ボンベの内ぶた及び外ぶたを完
全に密閉する。
注(6) ポリエチレン製袋中に空気が残存すると試料が飛散し,不完全燃焼することがあるので,袋
中の空気はできるだけ排出して密封するとよい。
参考 ポリエチレン製袋の密封には,プラスチック密封器など適切な密封器を使用する。
2) ゼラチン製カプセルを用いる場合 あらかじめ0.1 mgのけたまで質量をはかったカプセルを適切な
架台で試料皿の上に立て,試料 (7) をシリンジなどを用いて入れ,カプセルのふたをして試料の質
量を0.1 mgのけたまではかる。次に,質量既知の点火線をカプセルの上部に巻き付け,その両端を
点火用電極に接続した後,ボンベの内ぶた及び外ぶたを完全に密閉する。
注(7) 揮発性試料の場合は,試料が急激に燃焼し誤差の原因となることがあるので,ボンベ内の総
発熱量が25 000 J以下になるように試料を少なめにしたほうがよい。
5.7
試験の手順 試験の手順は,次による。
a) 酸素の圧入 酸素の圧入に先立ち,酸素圧入用連結管,減圧弁及びボンベが正常であることを確かめ
る。次に,試料が試料皿から吹きこぼれないようにゆっくりと酸素を2.5〜2.9 MPa (8) になるまでボ
ンベ内に圧入する (9)。この際,ボンベ内の空気を酸素で追い出してはならない。次いで容器の漏れを
調べて,その気密を確かめる。
注(8) 揮発性試料の場合は,2.0〜2.5 MPaとする。
(9) ボンベに酸素を入れ過ぎないように十分に注意しなければならない。もし,3.4 MPa以上入れた
場合は,ボンベが破裂する危険があるので,酸素圧入用連結管を外して酸素を放出する。この
場合は,試料をはかり直して,初めの質量と違うときはそれを捨てて試験を5.6からやり直す。
備考 常にボンベは,静かに取り扱う必要がある。もし,衝撃を与えたり,倒したり,落としたりし
たときは,酸素の圧入又は点火を行ってはならない。このような場合は,試験を5.6からやり
直す。
b) 熱量計の準備 熱量計の準備は,次による。
1) 加温水槽の準備 加温水槽に水を満たし,スイッチを入れて90 ℃以上に加熱しておく。
2) ベックマン温度計の基点調節 ベックマン温度計の基点を室温より2〜3 ℃低い温度に調節する。
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3) 内筒の準備 ベックマン温度計の指示値が1 ℃付近になるように調節した水2.0〜2.2 kgを1 gのけ
たまで内筒にはかり採る。
4) 中間筒の準備 中間筒の定位置に3) の内筒を挿入し,その中に酸素を圧入したボンベを定位置に
置く。次いで,点火用導線を接続し,中間筒のふたをして,ちょうねじで密閉する。
5) 外槽の準備 4) の中間筒を外槽の定位置に置き,外槽に水を満たしふたをする。次いで,ベックマ
ン温度計及び内筒用かき混ぜ機を取り付け,点火用導線を接続する。内筒用かき混ぜ機の回転数を
毎分約800回転に調節した後,加温水槽から注水弁を開いて外槽中に熱水を注入し,外槽水と内筒
水の温度差を0.1 ℃以内に保つようにかき混ぜる。
c) 試料の点火及び温度の測定 試料の点火及び温度の測定は,次による。
1) 1分間ごとに内筒用ベックマン温度計を軽くたたいて温度を0.001 ℃のけたまで読み取り,連続3
回同一の温度を得たら,それを燃焼前の温度として記録する。
2) 点火スイッチを入れ試料に点火する。試料に点火したかどうかは点火用電気回路の電流計の振れか
又はパイロットランプの点灯によって確認する。
3) 試料の燃焼によって内筒用及び外槽用温度計の読みが上昇するのに伴い,点火後1分間は内筒水と
外筒水との温度差が0.3 ℃以内にあるように,熱水を加えることによって外槽水の温度を調節する。
4) その後は,外槽水と内筒水との温度差を0.1 ℃以内に保つように調節する。1分間ごとに内筒用ベ
ックマン温度計を軽くたたいて温度を0.001 ℃のけたまで読み,連続3回同一の温度を得たら,そ
れを燃焼後の温度として記録する。
d) 燃焼後の処理 燃焼後の処理は,次による。
1) ボンベを取り出し,静かに一定速度で1分間以上かけてボンベ内の圧力を下げる。常圧になったら
ボンベのふたを開いて内部の燃焼状態を調べ,未燃焼試料又はすすが付着しているときは,ボンベ
を清浄にして試験を5.6からやり直す。
2) ボンベの内面,電極,試料皿などを350 ml以下の水で十分に洗い,洗液をビーカに集め,指示薬を
加え1/28 mol/L炭酸ナトリウム標準液で滴定する。
3) 未燃焼の点火線の質量を0.1 mgのけたまではかり,初めの質量との差を求める。
5.8
熱量計の熱当量の測定 安息香酸1.0〜1.2 gを質量既知の点火線とともに錠剤にして質量をはかり,
5.7と全く同様に操作し,次の式によって熱当量を算出する。
なお,この測定は,5回以上繰り返して行い,33 J/℃以内で一致した5回の値の平均値をJIS Z 8401に
よって丸めの幅を1に丸めて,熱当量の値とする。
w
t
e
e
S
C
B
−
+
+
×
=
2
1
ここに, B:熱当量(J/℃)
C:安息香酸の総発熱量(認定値)(J/g)
S:安息香酸の質量(g)
e1:硝酸生成熱の補正値(J)
5.7 d) 2) で滴定に要した1/28 mol/L炭酸ナトリウム標準液のml数
に4.2を乗じた数
e2:点火線の熱補正値(J)
純鉄線の場合は,6 740 J/gに5.7 d) 3) で求めた値(g)を乗じた値
ニッケル線の場合は,3 240 J/gに5.7 d) 3) で求めた値(g)を乗じ
た値
t:内筒水の温度上昇(℃)
9
K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.7 c) 4) で読み取った燃焼後の温度と5.7 c) 1) で読み取った燃焼
前の温度をそれぞれ補正した値の差
w:内筒水の質量から求めた内筒水の熱容量(J/℃)
5.7 b) 3) ではかりとった内筒水のg数に水の比熱(J/℃・g)を乗じ
た値
備考1. 熱当量の値は,試験器の熱容量であるとともに,種々の測定誤差の校正値をも含むものであ
るから,熱当量の測定は試料の総発熱量の場合と同一条件で行わなければならない。
2. 熱当量は,次の場合に測定し直さなければならない。
a) 内筒,内筒用かき混ぜ機,ボンベ,内筒用ベックマン温度計,中間筒などの一部を補修
し,また,それらを交換したとき。
b) 室温が3 ℃以上変化したとき。
c) 内筒用ベックマン温度計の基点を更新したとき。
3. 錠剤の点火には,錠剤の中心に2 mm程度の孔をあけ,この中に点火線を折り曲げて挿入す
る方法によってもよい。
5.9
計算方法及び精度
a) 計算方法 総発熱量は,次の式によって算出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を10に丸める。
M
e
e
e
e
e
w
B
t
Hg
5
4
3
2
1
)
(
−
−
−
−
−
+
×
=
ここに, Hg:総発熱量(J/g)
t:内筒水の温度上昇(℃)
5.7 c) 4) で読み取った燃焼後の温度と5.7 c) 1)で読み取った燃焼
前の温度をそれぞれ補正した値の差
B:熱当量(J/℃)
w:内筒水の質量から求めた内筒水の熱容量(J/℃)
5.7 b) 3) ではかりとった内筒水のg数に水の比熱(J/℃・g)を乗じ
た値
e1:硝酸生成熱の補正値(J)
5.7 d) 2) で滴定に要した1/28 mol/L炭酸ナトリウム標準液のml数
に4.2を乗じた数
e2:硫酸生成熱の補正値(J)
硫黄分(質量%)に試料の質量(g)を乗じ58.6倍した値
e3:点火線の熱補正値(J)
純鉄線の場合は,6 740 J/gに5.7 d) 3) で求めた値(g)を乗じた値
ニッケル線の場合は,3 240 J/gに5.7 d) 3) で求めた値(g)を乗じ
た値
e4:ゼラチン製カプセル又はポリエチレン製袋の熱補正値(J)
ゼラチン製カプセル又はポリエチレン製袋の総発熱量(J/g)にゼ
ラチン製カプセル又はポリエチレン製袋の質量(g)を乗じた値
e5:流動パラフィンの熱補正値(J)
流動パラフィンの総発熱量(J/g)に流動パラフィンの質量(g)を
乗じた値
M:試料の質量(g)
備考1. 総発熱量の単位をMJ/kgで表示する場合は,次の式によって算出し,JIS Z 8401によって丸
めの幅を0.01に丸める。
HgM=Hg/1 000
ここに, HgM:総発熱量(MJ/kg)
Hg:総発熱量(J/g)
10
K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2. 総発熱量を単位体積当たりの総発熱量に換算する場合は,次の式による。
Hv=Hg×D
ここに, Hv:単位体積(15 ℃)当たりの総発熱量(J/cm3)
Hg:総発熱量(J/g)
D:密度(15 ℃)(g/cm3)
b) 精度 この試験方法によって得られた試験結果の許容差(確率0.95)は,次のとおりである。ただし,
揮発性試料については適用しない。
備考 試験結果が許容差をはずれた場合には,JIS Z 8402-6によって処理する。
1) 室内併行精度 同一試験室において,同一人が同一試験器で,引続き短時間内に,同一試料を2回
試験したときの試験結果の差の許容差を表4に示す。
2) 室間再現精度 異なる試験室において,別人が別の試験器で,同一試料をそれぞれ1回ずつ試験し
たときの2個の試験結果の差の許容差を表4に示す。
表 4 精度
単位 J/g
室内併行許容差
室間再現許容差
200
650
5.10 試験結果の報告 試験結果には,次の事項を記載する。
a) 試料名,試料採取場所及び採取年月日
b) この規格の番号 JIS K 2279
c) 試験方法の名称及び5.9 a) によって得られた結果
d) 特記事項
6. 総発熱量推定方法
6.1
総発熱量推定方法の原理 原油及び石油製品の総発熱量を試料の密度,硫黄分,水分及び灰分から
計算式を用いて推定する。
6.2
総発熱量の推定方法の種類 推定方法は,適用油種ごとに表5に示す2種類とする。
表 5 総発熱量の推定方法の種類
適用油種
推定方法の箇条番号
原油,灯油,軽油,A重油及びB重油
6.3 e) 1)
C重油
6.3 e) 2)
6.3
推定の手順 推定の手順は,次による。
a) 試料の密度(15 ℃)をJIS K 2249によって測定する。
b) 試料の硫黄分をJIS K 2541によって測定する。
c) 試料の水分をJIS K 2275によって測定する。
d) 試料の灰分をJIS K 2272によって測定する。
e) 総発熱量を,次の式によって算出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を10に丸め,推定値であることを
付記する。
備考1. この方法による総発熱量に疑義が生じた場合は,5. による。
2. 総発熱量の単位をMJ/kgで表示する場合は,JIS Z 8401によって丸めの幅0.01に丸める。
1) 原油,灯油,軽油,A重油及びB重油の場合
Hg=1 000〔(51.916−8.792 D 2) [1−0.01 (W+A+S)]+0.094 20 S〕 ······· (1)
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K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ここに, Hg:総発熱量(J/g)
D:密度(15 ℃)(g/cm3)
S:硫黄分(質量%)
W:水分(質量%)
A:灰分(質量%)
備考 発熱量の単位をMJ/kg,密度の単位をkg/m3で表示する場合は,次の式による。
HgM= (51.916−8.792 D 2×10−6) [1−0.01 (W+A+S)]+9.420×0.01 S
ここに, HgM:総発熱量(MJ/kg)
D:密度(15 ℃)(kg/m3)
S:硫黄分(質量%)
W:水分(質量%)
A:灰分(質量%)
参考 水分及び灰分の合計量が0.1質量パーセント以下の場合は,参考図1によって総発熱量を推
定することができる。
2) C重油の場合
Hg=1 000〔(52.190−8.802 D 2) [1−0.01 (W+A+S)]+0.094 20 S〕 ······· (2)
ここに, Hg:総発熱量(J/g)
D:密度(15 ℃)(g/cm3)
S:硫黄分(質量%)
W:水分(質量%)
A:灰分(質量%)
備考1. 発熱量の単位をMJ/kg,密度の単位をkg/m3で表示する場合は,次の式による。
HgM= (52.190−8.802 D 2×10−6) [1−0.01 (W+A+S)]+9.420×0.01 S
ここに, HgM:総発熱量(MJ/kg)
D:密度(15 ℃)(kg/m3)
S:硫黄分(質量%)
W:水分(質量%)
A:灰分(質量%)
2. 総発熱量を単位体積(15 ℃)当たりの総発熱量に換算する場合は,次の式による。
Hv=Hg×D
ここに, Hv:単位体積(15 ℃)当たりの総発熱量(J/cm3)
Hg:総発熱量(J/g)
D:密度(15 ℃)(g/cm3)
参考 水分及び灰分の合計量が0.1質量パーセント以下の場合は,参考図2によって総発熱量を推
定することができる。
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K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考図 1 総発熱量推定図(原油,灯油,軽油,A重油及びB重油)
参考 参考図1は,式 (1) の水分と灰分を0質量%として,硫黄分を0〜4.0質量%まで変化させてプロット
したものである。
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K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考図 2 総発熱量推定図(C重油)
参考 参考図2は,式 (2) の水分と灰分を0質量%として,硫黄分を0〜4.0質量%まで変化させてプロット
したものである。
7. 真発熱量推定方法
7.1
真発熱量推定方法の原理 石油製品の真発熱量を試料の性状から計算式を用いて推定する。
7.2
推定方法の種類 適用油種ごとの推定方法の種類及び概要を表6に示す。
14
K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表 6 真発熱量推定方法の種類
適用油種
推定方法の箇条番号
概要
ナフサ,灯油
7.3.1
試料の密度,アニリン点及び硫黄分から推定する方法
航空燃料油
航空ガソリン
航空タービン燃料油
7.3.2 a)
A法:試料の密度,揮発度,芳香族分及び硫黄分から推定
する方法
7.3.2 b)
B法:試料の密度,アニリン点及び硫黄分から推定する方
法
軽油,A重油及びB重油
7.3.3
試料の密度,硫黄分,水分及び灰分から推定する方法
C重油
7.3.4
備考 石油製品の真発熱量を5. によって測定した総発熱量と水素含有量から推定する方法を,附属書2として示
す。
参考 航空燃料油は航空輸送業界において国際的に,次のような呼称が通用している。
a) 航空ガソリン :100/130,100 LL,115/145
b) 航空タービン燃料油
1) 灯油形 :Jet A,Jet A-1,Avtur,JP-8
2) 高引火点形 :JP-5,Avcat
3) 広範囲沸点形 :JP-4,Jet B,Avtag
7.3
推定の手順
7.3.1
ナフサ及び灯油の場合 ナフサ及び灯油の場合は,次による。
a) 試料の密度(15 ℃)をJIS K 2249によって測定する。
b) 試料のアニリン点をJIS K 2256によって測定する。
c) 試料の硫黄分をJIS K 2541によって測定する。
d) 真発熱量を次の式によって算出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を10に丸め,推定値であることを付
記する。
Hn=22 959.6−12.658 7A+26 640.9/D+32.622A/D−0.066 903A2−9 217.76/D2
−116.3S
ここに, Hn:真発熱量(J/g)
A:アニリン点(℃)
D:密度(g/cm3)
S:硫黄分(質量%)
備考 発熱量の単位をMJ/kg, 密度の単位をkg/m3で表示する場合,真発熱量は次の式によって算出し,
JIS Z 8401によって丸めの幅を0.01に丸める。
HnM=22.959 6−0.012 658 7A+26 640.9/D+32.622A/D−6.690 3×10−5A2
−9.217 76×106/D2−0.116 3S
ここに, HnM:真発熱量(MJ/kg)
D:密度(kg/m3)
A:アニリン点(℃)
S:硫黄分(質量%)
7.3.2
航空燃料油の場合
a) A法 A法は,次による。
1) 試料の密度(15 ℃)をJIS K 2249によって測定する。
2) 試料の蒸留性状をJIS K 2254の常圧法蒸留試験方法によって測定する。
3) 試料の揮発度を次の式によって算出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を0.1に丸める
3
)
90
(
)
50
(
)
10
(
D
D
D
T
+
+
=
15
K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ここに,
T:揮発度(℃)
D(10):10容量%留出温度(℃)
D(50):50容量%留出温度(℃)
D(90):90容量%留出温度(℃)
4) 試料の芳香族分をJIS K 2536によって測定する。
5) 試料の硫黄分をJIS K 2541によって測定する。
6) 真発熱量を次の式によって算出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を10に丸め,A法による推定値で
あることを付記する。
Hn=[(5 528.73−92.649 9A+10.160 1T+0.314 169A×T) /D+79.170 7A
−9.448 93T−0.292 178A×T+35 993.6] (1−0.01S) +101.66S
ここに, Hn:真発熱量(J/g)
A:芳香族分(容量%)
D:密度(15 ℃)(g/cm3)
T:揮発度(℃)
S:硫黄分(質量%)
備考 発熱量の単位をMJ/kg,密度の単位をkg/m3で表示する場合,真発熱量は次の式によって算
出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を0.01に丸める。
HnM=[(5 528.73−92.649 9A+10.160 1T+0.314 169A×T) /D+0.079 170 7A
−0.009 448 93T−0.000 292 178A×T+35.993 6] (1−0.01S) +0.101 66S
ここに, HnM:真発熱量(MJ/kg)
A:芳香族分(容量%)
D:密度(15℃)(kg/m3)
T:揮発度(℃)
S:硫黄分(質量%)
b) B法 B法は,次による。
1) 試料の密度(15 ℃)をJIS K 2249によって測定する。
2) 試料のアニリン点をJIS K 2256によって測定する。
3) 試料の硫黄分をJIS K 2541によって測定する。
4) 真発熱量を次の式によって算出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を10に丸め,B法による推定値で
あることを付記する。
Hn=22 959.6−12.658 7A+26 640.9/D+32.622A/D−0.066 903A2−9 217.76/D2
−116.3S
ここに, Hn:真発熱量(J/g)
A:アニリン点(℃)
D:密度(g/cm3)
S:硫黄分(質量%)
備考 発熱量の単位をMJ/kg,密度の単位をkg/m3で表示する場合,真発熱量は次の式によって算
出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を0.01に丸める。
HnM=22.959 6−0.012 658 7A+26 640.9/D+32.622A/D−(6.690 3×10−5) A2
−(9.217 76×106) /D2−0.116 3S
ここに, HnM:真発熱量(MJ/kg)
D:密度(kg/m3)
A:アニリン点(℃)
S:硫黄分(質量%)
16
K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7.3.3
軽油,A重油及びB重油の場合 軽油,A重油及びB重油の場合は,次による。
a) 試料の密度(15 ℃)をJIS K 2249によって測定する。
b) 試料の硫黄分をJIS K 2541によって測定する。
c) 試料の水分をJIS K 2275によって測定する。
d) 試料の灰分をJIS K 2272によって測定する。
e) 真発熱量を次の式によって算出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を10に丸め,推定値であることを付
記する。
Hn=1 000〔(46.423−8.792D2+3.170D) [1−0.01 (W+A+S)]+0.094 20S
−0.024 49W〕
ここに, Hn:真発熱量(J/g)
D:密度(15 ℃)(g/cm3)
S:硫黄分(質量%)
W:水分(質量%)
A:灰分(質量%)
備考 発熱量の単位をMJ/kg,密度の単位をkg/m3で表示する場合,真発熱量は次の式によって算出
し,JIS Z 8401によって丸めの幅を0.01に丸める。
HnM=(46.423−8.792×10−6D2+3.170×10−3D) [1−0.01 (W+A+S)]
+0.094 20S−0.024 49W
ここに, HnM:真発熱量(MJ/kg)
D:密度(15℃)(kg/m3)
S:硫黄分(質量%)
W:水分(質量%)
A:灰分(質量%)
7.3.4
C重油の場合 C重油の場合は,次による。
a) 試料の密度(15 ℃)をJIS K 2249によって測定する。
b) 試料の硫黄分をJIS K 2541によって測定する。
c) 試料の水分をJIS K 2275によって測定する。
d) 試料の灰分をJIS K 2272によって測定する。
e) 真発熱量を次の式によって算出し,JIS Z 8401によって丸めの幅を10に丸め,推定値であることを付
記する。
Hn=1 000〔(46.704−8.802D2+3.167D) [1−0.01 (W+A+S)]+0.094 20S
−0.024 49W〕
ここに, Hn:真発熱量(J/g)
D:密度(15 ℃)(g/cm3)
S:硫黄分(質量%)
W:水分(質量%)
A:灰分(質量%)
備考 発熱量の単位をMJ/kg,密度の単位をkg/m3で表示する場合,真発熱量は次の式によって算出
し,JIS Z 8401によって丸めの幅を0.01に丸める。
HnM= (46.704−8.802×10−6D2+3.167×10−3D) [1−0.01 (W+A+S)]+0.094
20S
−0.024 49W
ここに, HnM:真発熱量(MJ/kg)
D:密度(15 ℃)(kg/m3)
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K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
S:硫黄分(質量%)
W:水分(質量%)
A:灰分(質量%)
18
K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書1(参考) ゲーリュサック法によるベックマン温度計の補正方法
序文 この附属書(参考)は,ベックマン温度計の補正方法の一例について記述するものであり,規定の
一部ではない。
ベックマン温度計の水銀糸を水銀だめの近くの毛管内で温度計の目盛の約0.5 ℃に相当する長さに切断
し,温度計の管内の0〜0.5 ℃ごとの位置に移動して水銀糸の長さ(L)を温度計の目盛の読みによって測
定する。各区間の長さ(L)の平均値(m)を求め,各区間の偏差(∆L=m−L)を算出し,各区間の∆Lを
0度のほうから順次加算する。
このようにして得られたΣ(∆L)は,0.5,1.0,1.5,・・・,5.5度における補正値である(附属書1表1
参照)。この補正値を方眼紙の上に作図して各点を滑らかな曲線で結び(附属書1図1参照),この曲線か
ら図の上で0.1度ごとの補正値を求めて補正表を作成する(附属書1表2参照)。
附属書1表 1 ベックマン温度計の0.5度ごとの補正値の計算
区間
上端の読み
×1 000
下端の読み
×1 000
長さ (L)
×1 000
∆L=m−L
×1 000
Σ (∆L)
×1 000
0.5度ごとの
補正値×
1 000
0〜0.5
505
000
505
+1.1
+1.1
+1
0.5〜1.0
1 000
501
499
+7.1
+8.2
+8
1.0度の補正値
1.0〜1.5
1 519
1 003
516
−9.9
−1.7
−2
1.5度の補正値
1.5〜2.0
2 009
1 502
507
−0.9
−2.6
−3
2.0度の補正値
2.0〜2.5
2 507
2 001
506
+0.1
−2.5
−3
2.5度の補正値
2.5〜3.0
3 007
2 501
506
+0.1
−2.4
−2
3.0度の補正値
3.0〜3.5
3 504
3 000
504
+2.1
−0.3
0
3.5度の補正値
3.5〜4.0
3 997
3 501
496
+10.1
+9.8
+10
4.0度の補正値
4.0〜4.5
4 504
4 000
504
+2.1
+11.9
+12
4.5度の補正値
4.5〜5.0
5 014
4 502
512
−5.9
+6.0
+6
5.0度の補正値
5.0〜5.5
5 509
5 001
508
−1.9
+4.1
+4
5.5度の補正値
5.5〜6.0
6 010
5 500
510
−3.9
+0.2
0
6.0度の補正値
m=506.1
19
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書1図 1 ベックマン温度計の補正グラフ
附属書1表 2 ベックマン温度計補正表(一例)
温度計の読み
補正値×1 000
温度計の読み
補正値×1 000
温度計の読み
補正値×1 000
0.0°
0
2.0°
−3
4.0°
+10
0.1°
0
2.1°
−3
4.1°
+11
0.2°
0
2.2°
−3
4.2°
+11
0.3°
+1
2.3°
−3
4.3°
+12
0.4°
+1
2.4°
−3
4.4°
+12
0.5°
+1
2.5°
−3
4.5°
+12
0.6°
+2
2.6°
−3
4.6°
+12
0.7°
+3
2.7°
−3
4.7°
+11
0.8°
+5
2.8°
−2
4.8°
+10
0.9°
+7
2.9°
−2
4.9°
+8
1.0°
+8
3.0°
−2
5.0°
+6
1.1°
+8
3.1°
−2
5.1°
+5
1.2°
+7
3.2°
−1
5.2゜
+5
1.3°
+4
3.3°
−1
5.3°
+4
1.4°
0
3.4°
−1
5.4°
+4
1.5°
−2
3.5°
0
5.5°
+4
1.6°
−2
3.6°
+1
5.6゜
+3
1.7°
−3
3.7°
+3
5.7°
+3
1.8°
−3
3.8°
+5
5.8°
+2
1.9°
−3
3.9°
+7
5.9°
+1
6.0゜
0
20
K 2279:2003
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書2(参考) 総発熱量からの真発熱量推定方法
序文 この附属書(参考)は,石油製品の真発熱量を本体によって測定した総発熱量と水素含有量から推
定する方法を記述するもので,規定の一部ではない。
なお,油種別水素含有量の一例を,附属書2表1に示す。
a) 石油製品の場合
Hn=Hg−6×4.186 05 (9h+W)
ここに, Hn:真発熱量(J/g)
Hg:本体によって測定した総発熱量(J/g)
h:水素含有量(質量%)
W:水分(質量%)
附属書2表 1 油種別水素含有量(一例)
単位 質量%
油種
水素含有量
ナフサ
14.5〜15.5
航空タービン燃料油
13.5〜14.5
灯油
13.0〜14.0
軽油,A重油
12.5〜13.5
B重油
11.5〜12.5
C重油
10.5〜12.0
b) 航空燃料油の場合
Hn=2 272×4.186 05+0.719 5Hg
ここに, Hn:真発熱量 (J/g)
Hg:本体によって測定した総発熱量 (J/g)
21
K 2279:2003
附属書3(参考) JISと対応する国際規格との対比表
JIS K 2279:20xx 原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法
ISO 3648:1994 航空燃料油−真発熱量の推定方法
ISO 8217:1996 石油製品−燃料油(クラスF)− 舶用燃料油の要求事項
(I) JISの規定
(II) 国際規格
番号
(III) 国際規格の規定内容
(IV) JISと国際規格との技術的差異の
項目ごとの評価及びその内容
表示個所:本体
表示方法:点線の下線又は実線の側線
(V) JISと国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
項目番号
内容
項目
番号
内容
項目ごとの
評価
技術的差異の内容
1.適用範囲
本体1.で規定
原油及び石油製
品
ISO 3648
1.
航空燃料油
MOD/追加
JISでの適用油種はほぼ
全石油製品であるが,ISO
は航空及び舶用燃料油に
限定されている。
JISは原油及び石油製品に適用できるよう
に,複数のISO及びASTMと整合した規
格を取り入れて規定している。
ISO 8217
1.
舶用燃料油
2.引用規格
JIS B 7410
MOD/追加
・試薬及び器具についてはJISに規定され
ているものを用いた。
・航空タービン油の種類の分け方はJISに
従った。
・発熱量推定法において,石油製品などの
性状を求めるための試験方法は,JISを
用いた。
・試料採取方法はJISを用いた。
JIS K 1101
MOD/追加
JIS K 2209
MOD/追加
JIS K 2249
MOD/追加
JIS K 2251
MOD/追加
JIS K 2254
MOD/追加
JIS K 2256
MOD/追加
JIS K 2272
MOD/追加
JIS K 2275
MOD/追加
JIS K 2536
MOD/追加
JIS K 2541
MOD/追加
JIS K 2839
MOD/追加
JIS K 8005
MOD/追加
JIS K 8102
MOD/追加
JIS K 8576
MOD/追加
JIS K 8893
MOD/追加
JIS K 8896
MOD/追加
JIS K 9003
MOD/追加
2
1
K
2
2
7
9
:
2
0
0
3
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(I) JISの規定
(II) 国際規格
番号
(III) 国際規格の規定内容
(IV) JIS(原案)と国際規格との技術
的差異の項目ごとの評価及びその内容
表示個所:本体
表示方法:点線の下線又は実線の側線
(V) JISと国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
項目番号
内容
項目
番号
内容
項目ごとの
評価
技術的差異の内容
2.引用規格
JIS Z 8401
JIS Z 8402-6
ISO 3648
2.
ISO 2977 ISO 3675
ISO 4260 ISO 8751
ISO 12185
MOD/削除
MOD/削除
MOD/削除
・数値の丸め方はJISを用いた。
・試験結果が精度(許容差)をはずれた場
合の処理法は,JISを用いた。
ISO 8217
2.
ISO 3170 ISO 3675
ISO 3733 ISO 6245
ISO 8754 ISO 12185
MOD/削除
MOD/削除
MOD/削除
3.定義
総発熱量,真発熱
量を定義
ISO 3648
3.
真発熱量を定義
MOD/追加
JISは総発熱量,熱当量
も定義
ISOは適用範囲が真発熱量だけ
4.試験方法の
種類
発熱量試験方法
及び発熱量推定
方法を規定
−
−
−
MOD/追加
ISOは発熱量推定方法だ
け規定
JIS利用者の利便性を考慮
5.発熱量試験
方法
総発熱量の試験
方法を規定
−
−
−
MOD/追加
ISOでは発熱量試験方法
の規定がない
JISは発熱量試験方法(実測法)を追加規
定し,発熱量の精確さを高めるとともに,
適用油種を広げた。
6.総発熱量推
定方法
6.1 総発熱量
の推定方
法の原理
密度,硫黄分など
からの推定を規
定
ISO 8217
AnnexA
JISに同じ
IDT
−
6.2 総発熱量
推定方法
の種類
総発熱量推定方
法の種類
−
−
−
MOD/追加
ISOは1種類の推定方法
を,JISは2種類の推定
方法を規定
JIS利用者の利便性を考慮
6.3 推定の手
順
6.3 a)〜d) 推
定手順
密度,硫黄分など
からの推定
ISO 8217
AnnexA
JISに同じ
IDT
−
2
2
K
2
2
7
9
:
2
0
0
3
23
K 2279:2003
(I) JISの規定
(II) 国際規格
番号
(III) 国際規格の規定内容
(IV) JIS(原案)と国際規格との技術
的差異の項目ごとの評価及びその内容
表示個所:本体
表示方法:点線の下線又は実線の側線
(V) JISと国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
項目番号
内容
項目番号
内容
項目ごとの評
価
技術的差異の内容
6.3 e)1)原油,
灯油,軽油,
A重油及び
B重油の場
合
推定式を規定
ISO 8217
AnnexA
舶用燃料油の推定式を
規定
MOD/選択
JISはASTMと同じ推定
式を適用
JISは推定式の精確さを高めるため
6.3 e)2) C重油
の場合
推定式を規定
ISO 8217
AnnexA
JISに同じ
IDT
−
7. 真発熱量推
定方法
7.1真発熱量推
定方法の
原理
試料性状からの
推定を規定
ISO 3648
5.
6.
JISに同じ
IDT
−
7.2推定方法の
種類
真発熱量推定方
法の種類
−
−
−
−
−
JIS利用者の利便性を考慮
7.3 推定の手
順
7.3.1ナフサ及
び灯油の
場合
密度,アニリン点
などから推定
ISO 3648
5.
6.
JISに同じ
IDT
−
7.3.2航空燃料
油の場合
7.3.2 a) A法
蒸留,芳香族分な
どから推定
−
−
−
−
−
推定A法は,ユーザの使用頻度が多いため
追加した。
7.3.2 b) B法
密度,アニリン点
などから推定
ISO 3648
5.
6.
JISに同じ
IDT
−
7.3.3軽油,A,
B重油の
場合
密度,水分などか
ら推定
ISO 8217
AnnexA
舶用油の推定式を規定
MOD/選択
JISはASTMと同じ推定
式を適用
JISは推定式の精確さを高めるため
2
3
K
2
2
7
9
:
2
0
0
3
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(I)JISの規定
(II)国際規格番
号
(III)国際規格の規定内容
(IV) JIS(原案)と国際規格との技術
的差異の項目ごとの評価及びその内容
表示個所:本体
表示方法:点線の下線又は実線の側線
(V) JISと国際規格との技術的差異の理
由及び今後の対策
項目番号
内容
項目番号
内容
項目ごとの評
価
技術的差異の内容
7.3.4 C重油の
場合
密度,水分などか
ら推定
ISO 8217
AnnexA
JISに同じ
IDT
−
附属書1(参
考)
ゲーリュサック
法によるベック
マン温度計の補
正方法
参考のため整
合性の対象外
ISOに規定されていな
い。
附属書2(参
考)
総発熱量からの
真発熱量推定方
法
参考のため整
合性の対象外
ISOに規定されていな
い。
JISと国際規格との対応程度の全体評価:ISO 3648:1994;MOD,ISO 8217:1996;MOD
備考1.
項目ごとの評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
― IDT…………… 技術的差異がない。
― MOD/削除…… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
― MOD/追加…… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
― MOD/選択…… 国際規格の規定内容と別の選択肢がある。
2.
JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
― MOD…………… 国際規格を修正している。
2
4
K
2
2
7
9
:
2
0
0
3