K 2265-1:2007
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 試験の原理 ······················································································································ 2
5 試薬······························································································································· 2
6 試験器···························································································································· 2
7 試験器の準備 ··················································································································· 3
8 試料の採取方法及び調製方法 ······························································································ 4
9 試料の取扱い ··················································································································· 4
10 試験の手順 ···················································································································· 4
11 計算方法 ······················································································································· 5
12 結果の表し方 ················································································································· 5
13 精度 ····························································································································· 5
14 試験結果の報告 ·············································································································· 6
附属書A(参考)試験方法の種類 ···························································································· 7
附属書B(規定)試験器の検証 ······························································································· 8
附属書C(規定)タグ密閉法引火点試験器 ··············································································· 10
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(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,石油連盟(PAJ)から,工業標準原案を具して
日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した
日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は
もたない。
JIS K 2265の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS K 2265-1 第1部:タグ密閉法
JIS K 2265-2 第2部:迅速平衡密閉法
JIS K 2265-3 第3部:ペンスキーマルテンス密閉法
JIS K 2265-4 第4部:クリーブランド開放法
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日本工業規格 JIS
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引火点の求め方−
第1部:タグ密閉法
Determination of flash point−Part 1:Tag closed cup method
序文
この規格の基となるJIS K 2265は,1953年に制定され,その後7回の改正を経て今日に至っている。前
回の改正は1996年に行われたが,国内の実情に合わせるため,技術的内容を変更してJIS K 2265を部編
成とし,四つの試験方法を分割して制定した。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
この規格は,危険な試薬,操作及び試験器を用いることがあるが,安全な使用法をすべてに規定してい
るわけではないので,この試験方法の使用者は,試験に先立って,適切な安全上及び衛生上の禁止事項を
決めておかなければならない。
1
適用範囲
この規格は,タグ密閉法引火点試験器を用いて,引火点が93 ℃以下の石油製品及び関連製品の引火点
を求める方法について規定する。
注記 この規格群には,附属書Aに示す試験方法がある。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。
これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 7410 石油類試験用ガラス製温度計
JIS K 2251 原油及び石油製品−試料採取方法
JIS Q 0033 認証標準物質の使い方
JIS Q 0034 標準物質生産者の能力に関する一般要求事項
JIS Q 0035 標準物質の認証−一般的及び統計学的原則
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8402-4 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第4部:標準測定方法の真度を求め
るための基本的方法
JIS Z 8402-6 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第6部:精確さに関する値の実用的
な使い方
ISO 3171 Petroleum liquids−Automatic pipeline sampling
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用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
引火点(flash point)
規定条件下で引火源を試料蒸気に近づけたとき,試料蒸気がせん(閃)光を発して瞬間的に燃焼し,か
つ,その炎が液面上を伝ぱ(播)する試料の最低温度を101.3 kPaの値に気圧補正した温度。
4
試験の原理
50 mL±0.5 mLの試料を密閉した試料カップの中で,表1に示した昇温速度で徐々に加熱する。引火点
は,表1に示した温度間隔ごとに,引火源を試料カップにのぞかせ,試料の蒸気に引火する最低の温度を
求める。
表1−タグ密閉法引火点試験の温度条件
単位 ℃
試料の予期引火点
昇温速度
(℃/秒)
引火源のぞかせ操作の温度間隔
60未満
1/(60±6)
0.5ごと
60以上
3/(60±6)
1.0ごと
5
試薬
5.1
洗浄用溶剤
試料カップ及びカップふたから,前に試験した試料のこん(痕)跡を除去するのに適切な溶剤。
注記 溶剤は,前に試験した試料の種類及び残さ(渣)物のこびりつき具合によって選択する。試料
のこん(痕)跡を除去するには,低沸点の芳香族溶剤(ベンゼンを含まない。)を用いるとよい。
また,ガム質の付着物を除去するためには,トルエン―アセトン―メタノール(TAM)のよう
な混合溶剤が有効なことがある。
5.2
検証用液体
附属書Bに規定する一連の認証標準物質(certified reference material:CRM。以下,CRMという。)又は
二次作業標準物質(secondary working standard:SWS。以下,SWSという。)。
6
試験器
6.1
引火点試験器
附属書Cに規定する,タグ密閉法引火点試験器。
自動試験器を用いる場合は,得られる結果がこの規格の精度に示す許容差内であり,試料カップ,カッ
プふたの寸法及び機構が附属書Cの規定と一致し,箇条10に規定する試験の手順が守られなければなら
ない。自動試験器の調整及び取扱いは,すべて製造業者の取扱説明書に従わなければならない。
電気的引火源を用いると,ある状況下では,ガス試験炎を用いたときと異なる結果が得られる場合があ
る。また,電気的引火源は,ばらつきが大きい結果を与える場合がある。
結果に疑義が生じた場合は,ガス試験炎を用いた手動試験器によって得られた結果を判定基準とする。
6.2
温度計
6.2.1
試料用温度計
試料用温度計は,JIS B 7410に規定する,温度計番号30(PMF)又は50(TAG)とする。
3
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予期引火点に基づいて,最初に温度計の選択をする。
なお,電気式の温度測定装置を用いる場合は,指示精度及び応答性が同じでなければならない。
6.2.2
浴液用温度計
試料用温度計と同じもの。
6.3
気圧計
0.1 kPaのけたまで読めるもの。
測候所,空港などで使用されるような,あらかじめ海面の読みに補正されている気圧計は用いてはなら
ない。
なお,気圧計には,気圧の読みを自動的に0 ℃に補正するものがあるが,この補正は必要ない。
7
試験器の準備
7.1
試験器の設置場所
試験器は,風の影響のない場所の水平で振動のない台上に設置する。
風の影響が避けられないときは,試験器の背面と両側面を適切な寸法の風よけで囲む。
有毒な蒸気を発生する試料を試験するときは,個別に空気の流れを調節できるドラフトチャンバの中に
試験器を置き,試験中空気が,試料カップの周辺を流れることなく蒸気を吸引できるように調節する。
7.2
試料カップ及び附属品の洗浄
適切な溶剤を用いて試料カップ,カップふた及びその附属品から,前の試験で残っているガム質のこん
(痕)跡,残さ(渣)物などを除去する。用いた溶剤を完全に除去するため,清浄な空気を吹き付けて乾
燥する。試験器の手入れ及び維持については,製造業者の取扱説明書に従う。
7.3
試験器の組立
試料カップ,カップふた及び他の部品に損傷及び付着物がないことを確かめる。試験器を附属書Cの規
定に従って組み立てる。
7.4
浴液
浴液は,試料の予期引火点によって表2に示すものを用いる。浴液の温度は,試料の予期引火点より少
なくとも11 ℃低くする。浴液を冷やす必要がある場合には,氷,ドライアイスなどを直接浴液に入れな
いで,ほかの容器で冷却した後,液浴槽に注ぐようにする。
表2−浴液
試料の予期引火点
℃
浴液
13未満
水とエチレングリコールとの等量混合液
13以上 60未満
水又は水とエチレングリコールとの等量混合液
60以上 93以下
水とエチレングリコールとの等量混合液
7.5
試験器の検証
試験器の検証は,次による。
a) 少なくとも年1回はCRMを用いて試験を行い,試験器が正常に機能することを検証する。得られた
結果とCRMの認証値との差の絶対値は,RをこのCRM認証時の室間再現許容差とした場合に,R/2
以下でなくてはならない。
試験器の検証は,SWSを用いて定期的に行うことが望ましい。
4
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CRM又はSWSを用いて行う試験器の検証手順及びSWSの調製手順は,附属書Bによる。
b) 検証によって得られた数値は,偏りを表すために用いてはならない。また,この後引き続きこの試験
器を用いて測定した引火点を,補正するために用いてはならない。
8
試料の採取方法及び調製方法
試料は,JIS K 2251に規定する一次試料の採取方法及び二次試料の調製方法,又はそれに準じた方法に
よって採取及び調製する。自動サンプリングの場合は,ISO 3171によってもよい。
プラスチック容器(ポリエチレン製,ポリプロピレン製など)は,試料中の揮発性物質が容器の壁面を
透過して揮散する可能性があるので避ける。
9
試料の取扱い
試験に用いる試料及びメスシリンダは,27 ℃±5 ℃又は予期引火点より11 ℃低い温度のうち,いずれ
かの低い温度にあらかじめ冷却しておく。
10 試験の手順
試験の手順は,次による。
a) 液浴槽に,洗浄し,乾燥した試料カップを入れる。
b) 温度計を試料の予期引火点によって,表3から選び,温度計保持具を取り付ける。温度計をふたの温
度計差込み管に取り付けた後,ふたの内面及び温度計を布,紙などで清浄にする。
表3−温度計
試料の予期引火点
℃
温度計番号及び温度計記号
4未満
50(TAG)
4以上 49以下
50(TAG)又は30(PMF)
49を超え
30(PMF)
c) 試料50 mL±0.5 mLをメスシリンダにはかり,試料カップの最終液面から上部をぬらさないように注
意して,全量を試料カップに入れる。試料表面の気泡を取り除き,ふたをかぶせる。
d) ガス試験炎の場合は試験炎ノズルに点火し,炎の大きさを標準球に合わせる。電熱式引火源の場合は
引火源のスイッチを入れる。
e) 開閉器を作動して引火源を試料カップにのぞかせた後,元の位置に戻す。この操作は,約1秒間で円
滑に行う。この際,引火源を急激に上下させてはならない。
f)
試料の予期引火点によって,次の1)又は2)の操作を行う。
1) 試料の予期引火点が60 ℃未満の場合 試料の温度が60秒±6秒間に1 ℃の割合で上昇するように
浴液の加熱を調整する。試料の温度が予期引火点より5 ℃低い温度に達したら,e)の操作を行い,
それ以後は温度計の読みが0.5 ℃上昇するごとに引火源をのぞかせる。
注記 予期引火点が0 ℃より低い試料の場合は,ふたののぞかせ機構が凍りついて円滑に動作で
きないことがある。このような場合は,あらかじめ高真空用グリースを開閉器の滑り部分
に塗っておくと改善することができる。
2) 試料の予期引火点が60 ℃以上93 ℃以下の場合 試料の温度が60秒±6秒間に3 ℃の割合で上昇
5
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するように浴液の加熱を調整する。試料の温度が予期引火点より5 ℃低い温度に達したら,e)の操
作を行い,それ以降は温度計の読みが1 ℃上昇するごとに引火源をのぞかせる。
g) 試料カップの内部に明らかな引火を認めたら,その温度を測定引火点として記録し,直ちに加熱を止
める。引火点近くの温度になって引火源の周りに青白い輪が現れることがあるが,これを引火と見誤
ってはならない。
h) 引火源をのぞかせ始めたときから引火が認められるまでの間に,試料の温度上昇速度が規定の範囲を
超えた場合は,試料を取り替えて試験をやり直す。また,測定引火点と予期引火点との差が2 ℃を超
えている場合は,その結果は無効とする。新しい試料を用い,引火源のぞかせ開始温度を変更して,
測定引火点と予期引火点との差が2 ℃以内になるまで試験をやり直す。
i)
気圧計を用いて,試験時における試験器周辺の気圧を記録する。
11 計算方法
11.1 気圧読取値の変換
気圧の読取値がキロパスカル(kPa)以外の場合,次の式のいずれかを用いてキロパスカルに変換する。
a) ヘクトパスカル(hPa)単位の読取値×0.1=kPa
b) ミリバール(mbar)単位の読取値×0.1=kPa
c) 水銀柱ミリメートル(mmHg)単位の読取値×0.133 3=kPa
11.2 測定引火点の標準気圧への補正
引火点は,次の数式を用いて,101.3 kPaの標準気圧に補正して求める。
)
3.
101
(
25
.0
P
T
T
O
C
−
+
=
ここに,
TC: 引火点(℃)
TO: 測定引火点(℃)
P: 測定引火点試験時の室内の気圧(kPa)
12 結果の表し方
標準気圧に補正した引火点(℃)を,JIS Z 8401の規定によって丸めの幅0.5に丸める。
13 精度
この試験方法によって得られた試験結果の許容差(確率0.95)は,次による。試験結果が許容差を外れ
た場合は,JIS Z 8402-6 の規定によって処理する。
13.1 室内併行精度
同一試験室において,同一人が同一試験器で引き続き短時間に同一試料を2回試験したとき,試験結果
の差の許容差は,表4による。
13.2 室間再現精度
異なる試験室において,別人が別の試験器で,同一試料をそれぞれ1回ずつ試験して求めた2個の試験
結果の差の許容差は,表4による。
6
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表4−精度
単位 ℃
引火点
室内併行許容差
室間再現許容差
0以上 13未満
1.0
3.5
13以上 60未満
1.0
2.0
60以上 93以下
2.0
3.5
14 試験結果の報告
試験結果の報告には,次の事項を記述する。
a) 試料名,採取場所及び採取年月日
b) 日本工業規格番号:JIS K 2265-1
c) 箇条12によって得られた結果
d) 特記事項
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附属書A
(参考)
試験方法の種類
A.1 試験方法の種類
JIS K 2265の規格群には,表A.1に示す試験方法がある。
表A.1−試験方法の種類
規格群
試験方法の種類
適用基準a)
適用油種例b)
K 2265-1
タグ密閉法
引火点が93 ℃以下の試料。ただし,次
の試料には適用できない。
a) 40 ℃動粘度が5.5 mm2/s以上,又は
25 ℃動粘度が9.5 mm2/s以上の試
料。
b) 試験条件下で油膜のできる試料。
c) 懸濁物質を含む試料。
原油
工業ガソリン
灯油
航空タービン燃料油
K 2265-2
迅速平衡密閉法
引火点が−30〜300 ℃の試料。
原油,灯油,軽油,重油,航空タービ
ン燃料油
K 2265-3
ペンスキーマル
テンス密閉法
引火点が40 ℃を超える密閉法引火点の
測定が必要な試料で,タグ密閉法が適用
できない試料。
A法: 原油,軽油,重油,電気絶縁油,
さび止め油,切削油剤,各種潤
滑油
B法:重油,使用潤滑油,カットバッ
クアスファルト,高粘度物質な
ど
K 2265-4
クリーブランド
開放法
引火点が79 ℃を超える試料。ただし,
原油及び燃料油は除く。
石油アスファルト,流動パラフィン,
エアーフィルタ油,石油ワックス,さ
び止め油,電気絶縁油,熱処理油,切
削油剤,各種潤滑油
注a) 個別のJIS製品規格などによって,適用試験方法又は試験条件が規定されている場合は,それによる。
b) 適用油種例は,JIS石油製品規格などで規定されているものを例示した。
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附属書B
(規定)
試験器の検証
B.1
一般事項
この附属書は,二次作業標準物質(SWS)を調製する手順,及び認証標準物質(CRM)とSWSとを用
いて試験器の検証を行う手順について規定する。
試験器(手動又は自動)の性能は,JIS Q 0034及びJIS Q 0035に従って調製されたCRM又はB.2.2に
規定した手順に従い,調製されたSWSを用いて定期的に検証しなければならない。また,試験器の性能
は,JIS Q 0033及びJIS Z 8402-4に従って評価しなければならない。試験結果の評価について,結果が正
しいかどうかの判定は,95 %信頼限界を基礎にする。
B.2
検証の標準物質
B.2.1 認証標準物質(CRM)
CRMは,安定な単一の炭化水素又は安定な物質から構成されている。CRMの認証値は,JIS Q 0034及
びJIS Q 0035に従って,この試験方法を用いた照合試験を行い決定される。また,この認証値は,ロット
ごとに決定され,認証時の室内併行許容差(r)及び室間再現許容差(R)と共に成績書に記載される。
注記 CRMは,社団法人石油学会から供給されている。
B.2.2 二次作業標準物質(SWS)
SWSは,安定した石油製品,単一の炭化水素又は他の安定した物質から構成されている。SWSの引火
点は,次のいずれかの方法で決定される。
a) 代表的な候補試料を,事前にCRMによって検証した試験器を用いて3回以上試験する。試験結果を
統計的に分析し,異常値を棄却した後,結果の平均値を計算し,引火点を決定する。
b) 代表的な候補試料を,事前にCRMによって検証した試験器を用いて3か所以上の試験機関によって,
この試験方法による各2回ずつの照合試験を実施する。照合試験のデータを解析し,計算して引火点
を決定する。
SWSは,当初の品質を保てるような容器に入れ,直射日光を避け,10 ℃を超えない温度で保存する。
B.3
検証の手順
a) 試験器で測定する引火点範囲内のCRM又はSWSを選択する。CRMの代表値を表B.1に示す。表中
のデカンは,主成分99.3 %以上,かつ,軽質不純分0.4 %以下の純度のものとする。CRMの認証値は,
添付する成績書の値による。
できるだけ広い範囲を検証するため,2種類のCRM又はSWSを用いるのが望ましい。さらに,CRM
又はSWSそれぞれについて,繰り返し試験を行うのが望ましい。
b) 新しい試験器に対しては,最初の使用に先立ち,使用中の試験器に対しては,年1回以上,CRMを用
いて,箇条10に従った試験で検証を行う。
c) 中間の検証には,SWSを用いて,箇条10に従った試験で検証を行う。
d) 11.2に従って,試験結果を標準気圧における引火点に補正する。補正した値を丸めの幅0.1に丸める。
9
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表B.1−タグ密閉法引火点試験器用CRMの代表値
単位 ℃
炭化水素名
引火点
デカン
53
B.4
試験結果の評価
試験結果の評価は,次による。
a) 補正した試験結果を,CRMの認証値又はSWSの決定値と比較する。
1)及び2)で規定する関係式は,次のことを前提にしたものである。
− 室間再現精度は,JIS Z 8402-6に従って推定する。
− CRMの認証値又はSWSの決定値は,JIS Q 0035に示す手順によって得る。
− 不確かさは,試験方法の標準偏差に比べて小さく,したがって,試験方法の室間再現許容差Rに
比べても小さい。
1) 単一の試験 CRM又はSWSに対する単一の試験の場合,単一の試験結果とCRMの認証値又はSWS
の決定値との差は,次の許容範囲になければならない。
2
R
x
≤
−μ
ここに, x: 試験結果
μ: CRMの認証値又はSWSの決定値
R: CRM認証時の室間再現許容差
2) 多数回の試験 CRM又はSWSに対して同一人がn回試験した場合,n個の試験結果の平均値とCRM
の認証値又はSWSの決定値との差は,次の許容範囲になければならない。
2
1R
x
≤
−μ
ここに,
x: 試験結果の平均値
μ: CRMの認証値又はSWSの決定値
R1:
−
−
n
r
R
1
1
2
2
に等しい
R: CRM認証時の室間再現許容差
r: CRM認証時の室内併行許容差
n: CRM又はSWSに対する試験回数
b) 試験結果が許容値に適合した場合は,その事実を記録する。
c) SWSを検証に用いて,試験結果が許容値に適合しない場合は,CRMを用いて試験を繰り返す。その
結果が許容値に適合した場合は,その事実を記録し,SWSは廃棄する。
d) CRMの試験結果が許容値に適合しない場合は,試験器を調べ,試験器が仕様要求値に適合しているか
検証する。許容値に適合しない場合は,試験器の点検を製造業者に依頼して詳しい調査を行う。CRM
の認証値を用いて試験器の補正を行ってはならない。
10
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附属書C
(規定)
タグ密閉法引火点試験器
C.1 一般事項
タグ密閉法引火点試験器は,次に規定するC.2〜C.5からなる。
電気加熱器を用いる代表的な装置を図C.1に示す。
C.2 試料カップ
試料カップは,図C.2に示す形状・寸法で,黄銅又は銅製とし,その質量は68 g±1 gで,ほぼ均一な厚
さとする。
C.3 カップふた
カップふたは,試料カップと密着させることができ,試験炎を試料カップにのぞかせたとき,通気孔及
び試験炎のぞき孔が開き,試験炎を規定の位置に正しくのぞかせることができる開閉器,試験炎のぞかせ
機構などを取り付けたもの。
C.3.1 ふた
図C.3に示す形状・寸法で,黄銅又は銅製のかぶせふた。
縁の内径と液浴槽首部とのすき(隙)間は0.05 mm以内でなければならない。上面中央に試験炎のぞき
孔をあけ,その両側に2個の通気孔をあける。そのほか,温度計差込み管及び試験炎の大きさの標準とな
る直径4 mm±0.2 mmの標準球を取り付ける。縁には,図C.3に示すような切込みを相対する2か所に設
け,これを図C.6に示す液浴槽首部の2か所の突起にはめて回すことによって,液浴槽首部に落とし込ん
だ試料カップのフランジ部上面とふたの下面とを密着させることができる構造でなければならない。
C.3.2 試験炎のぞかせ機構
試験炎のぞかせ機構は,図C.4に示す形状・寸法で,黄銅又はステンレス鋼製とする。
これは,つまみを回すことによって,可動板を駆動し,試験炎のぞき孔を開くと同時に試験炎ノズルを
試料カップへのぞかせることができる構造でなければならない。試験炎をのぞかせたとき,試験炎ノズル
の先端の中心は,試験炎のぞき孔の中心から2 mm手前(図C.4では右側)で,ふたの下面に一致するよ
うに調整する。試験炎ノズルの近くの適切な箇所に,試験炎の大きさを調節できるガス調節弁を設ける。
試験炎ノズルの先端の外径は2.0 mm以下とし,内径は,燃料としてLPガスを使用する場合は約1.5 mm
とし,その他の場合は0.7〜0.8 mmとする。
なお,試験炎が消えたときは,案内炎によって自動的に再点火できる構造にしておくとよい。
C.3.3 開閉器
開閉器は,試験炎のぞかせ機構の一部を構成し,黄銅又はステンレス鋼製の可動板(詳細は,図C.5参
照),可動板の駆動腕,可動板ガイドなどからなる。
可動板及び駆動機構は,つまみ(図C.4の①)を回すことによって,ふたの3個の孔が同時に全開し,
つまみを放すとコイルばね(図C.4の②)によって元の状態に戻されて3個の孔を完全に閉じ,密閉でき
るような構造とする。ふたの上面と可動板との間の滑り接触面は,すり合わせて試料蒸気が漏れないよう
にしなければならない。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
C.3.4 試験炎自動再点火用案内炎
試験中に試験炎が消えてしまった場合に,自動的に再点火させるもの。
案内炎ノズルは細いガス管とし,開閉器が“閉”のとき,案内炎ノズル及び試験炎ノズルの先端同士が
近くになければならない。
電熱式を用いる場合は,そのふく(輻)射熱によってカップふたが過熱しないように注意する。
C.4 加熱器
加熱器は,次の液浴槽,液浴槽加熱器及び液浴槽架台からなる。
C.4.1 液浴槽
液浴槽は,図C.6に示す形状・寸法で,銅又は黄銅製とする。
首部には,直径上の2か所にC.3.1で規定したふたの縁の切込みに合わせて突起を設けなければならな
い。
なお,温度の調節を容易にするため,適切な保温材を用いて液浴槽の胴部を保温してもよい。
C.4.2 液浴槽加熱器
ガス加熱式,アルコール加熱式又は電気加熱式のもの。
液浴槽に水を満たし,引火点93 ℃以上の低粘度油を試料カップに50 mL入れて加熱したとき,低粘度
油の温度が85〜93 ℃において,60秒±6秒間に3 ℃の割合で上昇させることができなければならない。
電気加熱式の場合は,電圧調整器を備える必要がある。
C.4.3 液浴槽架台
液浴槽を水平に保持することができる台。
ガス加熱式及びアルコール加熱式の場合は,その加熱器の炎が室内の空気の流れに影響されないような
構造でなければならない。
C.5 試料用温度計保持具
図C.7に示すような形状・寸法で,試験中の試料カップからの試料蒸気が,温度計取付部から漏れない
構造のもの。
なお,温度計を取り付けたとき,温度計球部の下端がふたの下面から45.0 mm±0.8 mmの位置になけれ
ばならない。
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単位 mm
① 試料カップ ⑦ 液浴用温度計 ⑬ 可動板
② 試料カップのふた ⑧ 試料用温度計保持具 ⑭ つまみ
③ 液浴槽 ⑨ ガス調節弁 ⑮ コイルばね
④ 液浴槽加熱器 ⑩ 試験炎ノズル ⑯ 電圧調整器
⑤ 液浴槽架台 ⑪ 標準球 ⑰ 電圧計(又は電流計)
⑥ 試料用温度計 ⑫ あふれ口
図C.1−タグ密閉法引火点試験器(電気加熱式の一例)
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質量68 g±1 g
単位 mm
図C.2−試料カップ
単位 mm
図C.3−ふた
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単位 mm
単位 mm
① つまみ ⑥ 植込みピン
② コイルばね ⑦ 可動板
③ 試験炎ノズル ⑧ 可動板ガイド
④ ガス調節弁 ⑨ ふた
⑤ 可動板駆動腕
図C.4−試験炎のぞかせ機構(一例)
図C.5−可動板
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単位 mm
図C.6−液浴槽
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単位 mm
組立図
アルミニウムパッキン(A)
締付けナット
さや
アルミニウムパッキン(B)
図C.7−試料用温度計保持具(一例)