K 1503:2009
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 品質······························································································································· 2
4 試験方法························································································································· 2
4.1 一般事項 ······················································································································ 2
4.2 外観 ···························································································································· 2
4.3 色(ハーゼン色数) ······································································································· 2
4.4 密度(比重) ················································································································ 2
4.5 純度 ···························································································································· 3
4.6 アセトアルデヒド ·········································································································· 4
4.7 蒸発残分 ······················································································································ 4
4.8 遊離酸(CH3COOHとして) ··························································································· 5
4.9 過マンガン酸カリウム試験 ······························································································ 5
4.10 水溶性 ························································································································ 6
4.11 水分 ··························································································································· 6
5 表示······························································································································· 6
6 安全衛生上の注意事項 ······································································································· 6
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,石油化学工業協会
(JPCA)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの
申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS K 1503:2006は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責
任はもたない。
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日本工業規格
JIS
K 1503:2009
アセトン
Acetone
序文
この規格は,1952年8月に制定され,その後1959年9月に改正(ただし,2006年2月に石綿に関する
規定を見直し,追補1で改正。)されて以来,改正が行われておらず,試験方法も当時のままで,ガソリン
混合試験のように制定の理由が不明な試験方法も存在する。そのため,現状の生産技術及び試験技術の進
歩による市場の実態に合わせ改正した。
なお,対応する国際規格ISO 757-1〜ISO 757-5は,ISOの法規などに引用されていない製品規格廃止の
方針によって,2002年に廃止された。
1
適用範囲
この規格は,工業用のアセトンについて規定する。
警告 この規格に基づいて試験を行う者は,通常の実験室での作業に精通していることを前提とする。
この規格は,その使用に関連して起こるすべての安全上の問題を取り扱おうとするものではな
い。この規格の利用者は,各自の責任において安全及び健康に対する適切な措置をとらなけれ
ばならない。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0061 化学製品の密度及び比重測定方法
JIS K 0068 化学製品の水分測定方法
JIS K 0071-1 化学製品の色試験方法−第1部:ハーゼン単位色数(白金−コバルトスケール)
JIS K 0114 ガスクロマトグラフ分析通則
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
JIS K 1107 窒素
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8102 エタノール(95)(試薬)
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8247 過マンガン酸カリウム(試薬)
JIS K 8574 水酸化カリウム(試薬)
JIS Z 8401 数値の丸め方
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3
品質
アセトンは,無色透明の液体で,特異な臭気があり,その品質は,箇条4によって試験したとき,表1
による。
表1−品質
項目
性能
外観
透明で異物のない液体
色(ハーゼン色数)
10以下
密度 (20 ℃)
g/cm3(比重20 ℃/20 ℃) 0.789〜0.793(0.790〜0.794)
純度
質量分率%
99.0以上
アセトアルデヒド
質量分率%
0.01以下
蒸発残分
質量分率%
0.001以下
遊離酸(CH3COOHとして)
質量分率%
0.002以下
過マンガン酸カリウム試験
試験適合
水溶性
試験適合
水分
質量分率%
0.5以下
注記 現在,通常の国内外の取引では,主に比重が使用されている。このため,JIS Z 8203において
は密度への統一を規定しているが,この規格では比重を括弧付きで表記し,密度と同様に比重
を規定した。
4
試験方法
4.1
一般事項
化学分析の一般事項は,JIS K 0050,ガスクロマトグラフ分析の一般事項は,JIS K 0114及び数値の丸
め方は,JIS Z 8401によるほか,次による。
a) 単に溶液と記載している場合は,水溶液を示す。
b) 液面で目盛を読むときは,次の区分による。
1) 浮ひょうの場合
JIS K 0061による。
2) メスシリンダー及びその他の場合 下縁
c) 温度計は,温度基準器又はこれと同等の精度をもつ温度計によって校正する。
d) 水は,JIS K 0557のA2又はA3の水を用いる。
4.2
外観
a) 要旨 外観は,容器に十分な量の試料を入れ,目視によって沈殿物及び浮遊物の有無を調べる。
b) 容器 シリンダーなどの無色透明なガラス製容器で,容量100 ml以上のもの。
c) 操作 試料を容器にとり,拡散昼光1)又はそれと同等の光の下で,目視によって透明であることを確
認し,沈殿物及び浮遊物の有無を調べる。
注1) 拡散昼光とは,日の出後3時間から日没3時間前までの間の日光の直射を避けた北窓からの
光をいう。
4.3
色(ハーゼン色数)
色(ハーゼン色数)は,JIS K 0071-1による。
4.4
密度(比重)
密度(20 ℃)[比重(20 ℃/20 ℃)]は,次のいずれかによる。
a) 浮ひょう法 浮ひょう法による測定は,JIS K 0061の7.1(浮ひょう法)による。
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b) 比重瓶法 比重瓶法による測定は,JIS K 0061の7.2(比重瓶法)による。
c) 振動式密度計法 振動式密度計法による測定は,JIS K 0061の7.3(振動式密度計法)による。
4.5
純度
a) 要旨 ガスクロマトグラフを用い,ピーク面積から主成分及び各不純物の濃度を求め,水分濃度を補
正して純度を算出する。
b) 測定濃度範囲 95 %〜100 %
c) 装置及び器具 装置は,JIS K 0114による。次に一例を示すが,これと同等の性能をもつものでもよ
い。
装置 ガスクロマトグラフ
検出器 水素炎イオン化検出器
カラム 溶融シリカキャピラリーカラム
固定相 中極性又は強極性
膜厚1.0 μm
長さ30 m
内径0.5 mm
マイクロシリンジ 10 μl
d) 分析条件 次に一例を示すが,これと同等の性能の条件でもよい。
1) 温度
カラム槽 40 ℃(10 min)→(10 ℃/min)→ 210 ℃(3 min)
検出器槽 260 ℃
試料導入部 150 ℃
2) キャリヤーガス 純度99.9 %(体積分率)以上のヘリウム,又はJIS K 1107に規定する窒素若し
くは同等の純度をもつ窒素。
3) スプリット比 1:100
4) 試料注入量 2 μl
e) 操作 操作は,次による。
1) ガスクロマトグラフの操作 マイクロシリンジに試料をとり,ガスクロマトグラフの試料導入部に
素早く導入して,試料のクロマトグラムを求める。
2) ピーク面積測定方法 ピーク面積測定方法は,データ処理装置を用いて計算する。
3) 定量方法 定量方法は,JIS K 0114の面積百分率法,補正面積百分率法,内標準法などによる。
f)
ガスクロマトグラムの例 中極性キャピラリーカラムを用い,次に示す分析条件で得られたクロマト
グラムの例を,図1に示す。
1) 温度
カラム槽 40 ℃(10 min)→(10 ℃/min)→ 210 ℃(3 min)
検出器槽 260 ℃
試料導入部 150 ℃
2) キャリヤーガス ヘリウム
3) スプリット比 1:100
4) 試料注入量 2 μl
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図1−アセトンのガスクロマトグラムの例
g) 計算 純度は,次の式によって小数点以下2けたまで求め,JIS Z 8401によって丸める。
P=100−(E+W)
ここに,
P: 純度(質量分率%)
E: 各不純物濃度の合計(質量分率%)
W: 水分濃度(質量分率%)
4.6
アセトアルデヒド
アセトアルデヒドは,4.5のガスクロマトグラムのピーク面積から濃度を求める。
4.7
蒸発残分
a) 要旨 試料を水浴上で加熱し,蒸発乾固して,残分の質量をはかる。
b) 装置及び器具 装置及び器具は,次による。
1) 乾燥器
2) 蒸発皿 白金皿又は石英ガラス製の蒸発皿
3) はかり 直示天びん(感度0.1 mg)
4) デシケーター
c) 操作 試料100 mlを質量既知の蒸発皿にはかりとり,排気能力を備えた装置内の水浴上で加熱し,蒸
発乾固した後,乾燥器中で105 ℃±2 ℃で30分間加熱乾燥し,デシケーターに入れ放冷した後,質
量をはかる。
5
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d) 計算 蒸発残分は,次の式によって小数点以下4けたまで求め,JIS Z 8401によって丸める。
(
)100
×
×
−
=
G
S
C
D
V
ここに,
V: 蒸発残分(質量分率%)
D: 蒸発皿及び蒸発乾固した試料の質量(g)
C: 蒸発皿の質量(g)
S: 試料(ml)
G: 試料の密度(g/cm3)
4.8
遊離酸(CH3COOHとして)
a) 要旨 遊離酸は,中和滴定法によって試験を行い,アセトン中の遊離酸を酢酸の濃度に換算して求め
る。
b) 試薬 試薬は,次による。
1) 0.1 mol/l水酸化カリウム・エタノール溶液 JIS K 8574に規定する水酸化カリウム7 gを蒸留水5 ml
に溶かし,JIS K 8102に規定するエタノール(95)特級を加えて1 000 mlとし,よく振り,二酸化
炭素をさえぎって数日間放置する。次に,この溶液の上澄液25 mlをとり,4) の二酸化炭素を除去
した水50 mlを加え,3) のフェノールフタレイン・エタノール溶液を指示薬として,JIS K 8001の
JA.5.2 e)4)に規定する0.1 mol/l塩酸で標定する。
2) 0.01 mol/l水酸化カリウム・エタノール溶液 1) で調製した0.1 mol/l水酸化カリウム・エタノール
溶液を,JIS K 8102に規定するエタノール(95)特級で正確に10倍に薄めて調製する。
3) フェノールフタレイン・エタノール溶液 JIS K 8001の表JA.5[指示薬(中和滴定用)]に規定す
るもの。
4) 二酸化炭素を除去した水 JIS K 0557の4.(種別及び質)の備考4.の炭酸を含まない水を用いる。
c) 操作 操作は,次のとおり行う。
1) 試料50 mlを三角フラスコ 300 mlにはかりとり,b) 4) の二酸化炭素を除去した水50 mlを加える。
2) 指示薬としてb) 3) のフェノールフタレイン・エタノール溶液2〜3滴を加え,b) 2) の0.01 mol/l水
酸化カリウム・エタノール溶液で滴定する。
3) b) 4) の二酸化炭素を除去した水50 mlをはかりとり,2) の操作を行い,空試験値とする。
d) 計算 遊離酸(CH3COOHとして)は,次の式によって小数点以下4けたまで求め,JIS Z 8401によ
って丸める。
(
)
100
6
000
.0
×
×
×
−
=
G
S
C
B
A
ここに,
A: 遊離酸(CH3COOHとして)(質量分率%)
B: 滴定に要した0.01 mol/l水酸化カリウム・エタノール溶液
の量(ml)
C: 空試験の滴定に要した0.01 mol/l水酸化カリウム・エタノ
ール溶液の量(ml)
S: 試料(ml)
G: 試料の密度(g/cm3)
0.000 6: 0.01 mol/l水酸化カリウム・エタノール溶液 1 mlに対する
酢酸相当量(g)
4.9
過マンガン酸カリウム試験
a) 要旨 過マンガン酸カリウム溶液を添加し,その色と比色溶液の色との比較によって,アセトンに混
入している還元性不純物の混入程度を測定する。
6
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
b) 試薬 試薬は,次による。
1) 過マンガン酸カリウム溶液(0.1 g/l) JIS K 8247に規定する過マンガン酸カリウムを用いて調製し
たもの。
2) 比色溶液 JIS K 8180に規定する塩酸を用いて調製した0.01 mol/l塩酸4 ml及びJIS K 8001の表
JA.5[指示薬(中和滴定用)]に規定するメチルオレンジ溶液0.2 mlに水を加えて100 mlとする。
c) 操作 試料2) 100 mlをネスラー比色管にはかりとり,過マンガン酸カリウム溶液(0.1 g/l)0.5 mlを加
え,20 ℃±1 ℃で15分間以上保ち,b) 2) で調製した比色溶液と比べる。
注2) 試料は,日光の直射を受けないようにする。
d) 判定 比色溶液より薄くない。
4.10 水溶性
a) 要旨 アセトン及び水を混合し,白濁の有無を調べる。
b) 操作 ガラス容器3) A及びBを用意し,Aに試料10 ml及び水5 mlを入れ,Bに水だけを15 ml入れ
る。Aを十分に振り混ぜた後,泡が消えたとき直ちに拡散昼光1)又はそれと同等の光の下で,両容器
を並べ,A内の液とB内の液との濁りを比較する。
注3) ガラス容器は,すり合わせガラス栓付きで,無色透明のものを用いる。
c) 判定 Aの液の濁りは,Bの液の濁りより濃くない。
4.11 水分
水分は,JIS K 0068の6.(カールフィッシャー滴定法)に規定するカールフィッシャー滴定法の容量滴
定法又は電量滴定法による。滴定溶媒及び電解液は,ケトン類に適したものを使用する。
5
表示
製品の容器には,次の事項を表示する。ただし,大形容器(タンクローリーなど)の場合には,送り状
に表示してもよい。
a) この規格の規格名称及び規格番号
b) 正味質量
c) 製造業者名若しくは供給業者名又はその略号
d) 製造番号又はロット番号
6
安全衛生上の注意事項
アセトンは,引火しやすく,その蒸気は,空気と混合して爆発性混合ガスを形成するので,蒸気漏れに
は十分に注意し,火気には絶対近付けない。また,アセトン蒸気を吸引したり,液体のアセトンを飲んだ
場合,頭痛,吐気,知覚麻ひ(痺),血圧低下などの症状を引き起こしたり,こん(昏)睡状態になる可能
性があるので,取り扱いには十分注意が必要である。
参考文献
JIS K 8034 アセトン(試薬)
JIS Z 8203 国際単位系(SI)及びその使い方