日本工業規格
JIS
K
1435
-1986
硫化ナトリウム
Sodium Sulfide
Na
2
S
・xH
2
O
(Na
2
S FW : 78.05)
1.
適用範囲 この規格は,工業薬品としての硫化ナトリウムについて規定する。
引用規格:5 ページに示す。
2.
種類 種類は,次のとおりとする。
(1) 1
種 固形又はフレーク状のもの
(2) 2
種 結晶のもの
3.
品質 硫化ナトリウムの品質は,4.によって試験し,次の表の規定に適合しなければならない。
表
種類
項目
1
種
2
種
全硫化ナトリウム %
60.0
以上
45.0
以上
亜硫酸ナトリウム
%
2.0
以下
1.5
以下
チオ硫酸ナトリウム
%
2.0
以下
1.0
以下
炭酸ナトリウム
%
3.0
以下
2.0
以下
鉄(Fe
2
O
3
として) %
0.05
以下
0.001
以下
4.
試験方法
4.1
一般事項 試験において共通する一般事項は,JIS K 0050(化学分析方法通則)による。
4.2
試料採取方法 試料採取方法は,JIS K 1200(かせいソーダ試験方法)の 3.1 に準じる。この場合,
試料は約 200g を洗浄,乾燥した共栓広口瓶に採取する(
1
)
。
注(
1
)
硫化ナトリウムは,二酸化炭素を吸収し,また,湿気の影響によって潮解しやすいので試料採
取は速やかに行い,試料採取後は直ちに試験すること。
4.3
供試液の調製方法 試料約 20g を 0.1mg まで量り取り,全量フラスコ 1 000ml に移し入れ,水約 200ml
を加え,振り混ぜて十分に溶解し水を標線まで加えた後,ろ紙でろ過し供試液とする。これを 4.4∼4.7 の
試験に用いる。
4.4
全硫化ナトリウム
(1)
試薬 試薬は,次のとおりとする。
(a)
20
1
mol/l
÷
ø
ö
ç
è
æ
10
N
よう素溶液 JIS K 8001(試薬試験方法通則)の 4.4(26)に規定するもの。
(b)
酢酸 JIS K 8355[酢酸(試薬)]に規定するもの。
2
K 1435-1986
(c)
でんぷん溶液 JIS K 8001 の 4.3(2)に規定するもの。
(d)
10
1
mol/l
÷
ø
ö
ç
è
æ
10
N
チオ硫酸ナトリウム溶液 JIS K 8001 の 4.4(22.2)に規定するもの。
(2)
操作 操作は,次のとおり行う。
(a)
三角フラスコ 500ml に水約 100ml を取り,
20
1
mol/l
( )
10
N
よう素溶液 50ml を全量ピペットで量り取
って加える。
(b)
酢酸 10ml を加え,軽く振りながら供試液 10ml を全量ピペットで量り取って加えた後,
10
1
mol/l
( )
10
N
チオ硫酸ナトリウム溶液で逆滴定する。この場合,指示薬は,でんぷん溶液とし,操作中の液がご
く薄い黄色になってから加える。
滴定の終点は,青が消える点とする。
(3)
計算 全硫化ナトリウムは,次の式によって算出する。
100
100
1
)
50
(
90
003
.
0
×
×
−
×
m
V
A
=
ここに,
A
:
全硫化ナトリウム (%)
V
:
滴定に要した
10
1
mol/l
( )
10
N
チオ硫酸ナトリウム溶液の
量 (ml)
m
:
供試液中の試料の質量 (g)
0.003 90
:
20
1
mol/l
( )
10
N
よう素溶液 1ml の全硫化ナトリウム相当
量 (g)
4.5
亜硫酸ナトリウム
(1)
試薬 試薬は,次のとおりとする。
(a)
塩化バリウム溶液 (10
W
/
V
%)
JIS K 8001 の 4.1 に規定するもの。
(b)
20
1
mol/l
÷
ø
ö
ç
è
æ
10
N
よう素溶液 4.4(1)(a)による。
(c)
塩酸 JIS K 8180[塩酸(試薬)]に規定するもの。
(d)
でんぷん溶液 4.4(1)(c)のもの。
(e)
10
1
mol/l
÷
ø
ö
ç
è
æ
10
N
チオ硫酸ナトリウム溶液 4.4(1)(d)による。
(2)
操作 操作は,次のとおり行う。
(a)
三角フラスコ 200ml に供試液 50ml を全量ピペットで量り取る。
(b)
塩化バリウム溶液 (10
W
/
V
%)
を沈殿が生じなくなるまで加えた後,水浴上で約 30 分間加温し,一夜
放置する。
(c)
沈殿をろ過し,十分に水洗後,ろ紙と共にコニカルビーカー200ml に移す。
(d)
水 20ml を加え,ガラス棒で沈殿及びろ紙を破砕した後,
20
1
mol/l
÷
ø
ö
ç
è
æ
10
N
よう素溶液 25ml 及び塩酸 (1
+5) 20ml を加え,
10
1
mol/l
÷
ø
ö
ç
è
æ
10
N
チオ硫酸ナトリウム溶液で逆滴定する。この場合,指示薬は,でん
ぷん溶液とし,操作中の液がごく薄い黄色になってから加える。
滴定の終点は,青が消える点とする。
(3)
計算 亜硫酸ナトリウムは,次の式によって算出する。
100
20
1
)
25
(
30
006
.
0
×
×
−
×
m
V
B
=
ここに,
B
:
亜硫酸ナトリウム (%)
3
K 1435-1986
V
:
滴定に要した
10
1
mol/l
( )
10
N
チオ硫酸ナトリウム溶液の
量 (ml)
m
:
供試液中の試料の質量 (g)
0.006 30
:
20
1
mol/l
( )
10
N
よう素溶液 1ml の亜硫酸ナトリウム相当
量 (g)
4.6
チオ硫酸ナトリウム
(1)
試薬 試薬は,次のとおりとする。
(a)
炭酸亜鉛乳液 JIS K 8111[塩化亜鉛(試薬)]に規定する塩化亜鉛 40g 又は JIS K 8953[硫酸亜鉛
七水和物(試薬)
]に規定する硫酸亜鉛七水和物 82g を水約 400ml に溶解した後,ろ過し,ろ液に
指示薬として JIS K 8001 の 4.3(1)に規定する滴定用の 1
W
/
V
%
フェノールフタレイン溶液 2∼3 滴を加
え,炭酸ナトリウム溶液 (20
W
/
V
%) (
2
)
を液が微紅色になるまで加える。
数回傾斜後,アスピレーターを用いて減圧でろ過し,沈殿を数回水で洗浄し,得られた沈殿を水
500ml
に加え混合したもの。この乳液は,10 日以上貯蔵してはならない。
注(
2
)
JIS K 8624
[炭酸ナトリウム(10水塩)
(試薬)
]に規定する炭酸ナトリウム(10水塩)又は JIS
K 8625
[炭酸ナトリウム(無水)
(試薬)
]に規定する炭酸ナトリウム(無水)を用いて調製し
たもの。
(b)
ホルムアルデヒド液 JIS K 8872[ホルムアルデヒド液(ホルマリン)(試薬)]に規定するもの。
(c)
酢酸 4.4(1)(b)による。
(d)
でんぷん溶液 4.4(1)(c)による。
(e)
20
1
mol/l
÷
ø
ö
ç
è
æ
10
N
よう素溶液 4.4(1)(a)による。
(2)
操作 操作は,次のとおり行う。
(a)
全量フラスコ 250ml に供試液 50ml を全量ピペットで量り取る。
(b)
炭酸亜鉛乳液 80ml を加え,十分にかき混ぜ 30 分間静置後,水を標線まで加えてからろ過する。
(c)
三角フラスコ 300ml にろ液 50ml を全量ピペットで量り取り,水 50ml を加えた後,ホルムアルデヒ
ド液 5ml,酢酸 (1+4) 5ml を加え酸性とする。
(d)
でんぷん溶液を指示薬として
20
1
mol/l
( )
10
N
よう素溶液で滴定する。
終点は,青が現れる点とする。
(3)
計算 チオ硫酸ナトリウムは,次の式によって算出する。
100
100
1
81
0015
.
0
×
×
×
m
V
C
=
ここに,
C
:
チオ硫酸ナトリウム (%)
V
:
滴定に要した
20
1
mol/l
( )
10
N
よう素溶液の量 (ml)
m
:
供試液中の試料の質量 (g)
0.015 81
:
20
1
mol/l
( )
10
N
よう素溶液 1ml のチオ硫酸ナトリウム相
当量 (g)
4.7
炭酸ナトリウム
(1)
試薬 試薬は,次のとおりとする。
(a)
塩化バリウム溶液 (10
W
/
V
%)
4.5(1)(a)による。
(b)
20
1
mol/l
÷
ø
ö
ç
è
æ
10
N
硫酸 JIS K 8001 の 4.4(28.4)に規定するもの。
4
K 1435-1986
(c)
メチルオレンジ JIS K 8001 の 4.3(1)に規定するもの。
(d)
10
1
mol/l
( )
10
N
水酸化ナトリウム溶液 JIS K 8001 の 4.4(20.4)に規定するもの。
(2)
操作 操作は,次のとおり行う。
(a)
三角フラスコ 200ml に供試液 50ml を全量ピペットで量り取る。
(b)
塩化バリウム溶液 (10
W
/
V
%)
を沈殿が生じなくなるまで加え,水浴上で約 30 分間加温した後,常温
まで放冷し,ゴム栓(
3
)
をして一夜放置する。
注(
3
)
よう素フラスコを用い水シールして空気を遮断する方法又は通気性の少ない防湿性の薄膜シー
ルを用いて空気を遮断する方法でもよい。
(c)
ろ過後,煮沸し冷却した水で沈殿を十分に洗浄して,沈殿をコニカルビーカー200ml に洗い入れる。
(d)
20
1
mol/l
( )
10
N
硫酸 25ml を加えて約 5 分間煮沸し,冷却後,メチルオレンジを指示薬として
10
1
mol/l
( )
10
N
水酸化ナトリウム溶液で逆滴定する。
終点は,赤からだいだい黄に変わる点とする。
(3)
計算 炭酸ナトリウムは,次の式によって算出する。
30
006
.
0
100
20
1
1
B
m
V
×
×
=
ここに,
V
1
: 供試液中 50ml 中の亜硫酸ナトリウムの
20
1
mol/l
( )
10
N
硫酸相当量 (ml)
m
:
供試液中の試料の質量 (g)
B
:
4.5
で求めた亜硫酸ナトリウム (%)
0.006 30
:
20
1
mol/l
( )
10
N
硫酸 1ml の亜硫酸ナトリウム相当量 (g)
100
20
1
)
(
30
005
.
0
1
2
×
×
−
×
m
V
V
D
=
ここに,
D
:
炭酸ナトリウム (%)
V
2
:
滴定に要した
20
1
mol/l
( )
10
N
硫酸の量 (ml)
m
:
供試液中の試料の質量 (g)
0.005 30
:
20
1
mol/l
( )
10
N
硫酸 1ml の炭酸ナトリウム相当量 (g)
4.8
鉄
(Fe
2
O
3
として)
(1)
試薬
試薬は,次のとおりとする。
(a)
塩酸
4.5(1)(c)
による。
(b)
硝酸
JIS K 8541
[硝酸(試薬)
]に規定するもの。
(c)
アンモニア水
JIS K 8085
[アンモニア水(試薬)
]に規定する 28.0∼30.0% (NH
3
)
のもの。
(d)
過硫酸アンモニウム
JIS K 8252
[過硫酸アンモニウム(試薬)
]に規定するもの。
(e)
チオシアン酸アンモニウム溶液 (10
W
/
V
%)
JIS K 9000
[チオシアン酸アンモニウム(試薬)
]に規
定するチオシアン酸アンモニウムを用いて調製したもの。
(f)
鉄標準液 (0.007mgFe/ml)
JIS K 8982
[硫酸鉄 (III) アンモニウム・12 水(鉄みょうばん)
(試薬)
]
に規定する硫酸鉄 (III) アンモニウム・12 水 6.04g に硝酸 (1+6) 約 10ml を加えた後,少量の水で
溶かし,全量フラスコ 1 000ml に洗い入れ水を標線まで加える。その溶液 10ml を全量ピペットを用
いて全量フラスコ 1 000ml に量り取り,
硝酸 (1+6) 約 10ml を加えた後,
水を標線まで加えたもの。
5
K 1435-1986
(2)
操作
操作は,次のとおり行う。
(a)
ビーカー500ml に試料約 5g を 0.1mg まで量り取り,
水 250ml を加え,
かき混ぜて十分に溶解した後,
塩酸を加えて弱酸性とする(塩酸の使用量を Aml とする。
)
。
(b)
更に,硝酸約 1ml を加えて 3∼5 分間煮沸する。
(c)
アンモニア水 (1+1) を加えて弱アルカリ性とした後,3∼5 分間煮沸する。
(d)
3
∼5 分間放置後ろ過し,沈殿を温水で 2∼3 回洗浄した後,全量フラスコ 50ml に洗い移し,塩酸 (2
+1) 約 15ml を加え振り混ぜながら十分に溶解した後,水を加えて 50ml とする。
(e)
この中から,10ml(Fe
2
O
3
の含量が 0.001%未満の場合は,20ml 以上)を全量ピペットでビーカー50ml
に量り取り,塩酸 (2+1) 5ml,過硫酸アンモニウム約 0.01g 及びチオシアン酸アンモニウム溶液
(10
W
/
V
%) 5ml
を加え十分に溶解混合した後,比色管
(
4
)
に移し,水を加えて 50ml とする。これを試験
溶液とする。
注(
4
)
JIS K 8001
の
5.(2)(c)
に規定する共通すり合わせ平底試験管又はこれと同等のもの。
(f)
別に,塩酸 Aml 及び硝酸約 1ml を蒸発皿に取り,水浴上で加温して蒸発乾固した後,塩酸 (2+1) 約
15ml
を加えて全量フラスコ 50ml に洗い移し,更に水を加えて 50ml とする。以下,
(e)
のとおり操
作する。
(g)
次に,ビュレットから鉄標準液 (0.007mgFe/ml) を少量ずつ滴加して振り混ぜ,
(e)
の試験溶液にも
同量の水を加え,振り混ぜて両比色管
(
4
)
の溶液を常に同体積に保ちながら色を比べ,差がないと認
めたとき滴加を止め,加えた鉄標準液 (0.007mgFe/ml) の量を 0.1ml まで読み取る。
(3)
計算
鉄(Fe
2
O
3
として)は,次の式によって算出する。
100
5
1
01
000
.
0
×
×
×
S
V
E
=
ここに,
E
:
鉄(Fe
2
O
3
として) (%)
V
:
滴定に要した鉄標準液 (0.007mgFe/ml) の量 (ml)
S
:
試料の質量 (g)
0.000 01
:
鉄標準液 (0.007mgFe/ml) 1ml の鉄(Fe
2
O
3
として)相
当量 (g)
5.
表示
硫化ナトリウムの容器には,次の事項を表示しなければならない。
(1)
名称
(2)
種類
(3)
製造業者名又はその略号
(4)
製造年月又はその略号
(5)
正味質量
引用規格:
JIS K 0050
化学分析方法通則
JIS K 1200
かせいソーダ試験方法
JIS K 8001
試薬試験方法通則
JIS K 8085
アンモニア水(試薬)
JIS K 8111
塩化亜鉛(試薬)
6
K 1435-1986
JIS K 8180
塩酸(試薬)
JIS K 8252
過硫酸アンモニウム(試薬)
JIS K 8355
酢酸(試薬)
JIS K 8541
硝酸(試薬)
JIS K 8624
炭酸ナトリウム(10 水塩)
(試薬)
JIS K 8625
炭酸ナトリウム(無水)
(試薬)
JIS K 8872
ホルムアルデヒド液(ホルマリン)
(試薬)
JIS K 8953
硫酸亜鉛七水和物(試薬)
JIS K 8982
硫酸鉄 (III) アンモニウム・12 水(鉄みょうばん)
(試薬)
JIS K 9000
チオシアン酸アンモニウム(試薬)
化学製品部会 ソーダ・塩素専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
松 野 武 雄
横浜国立大学
細 川 恒
通商産業省基礎産業局
松 井 司
通商産業省基礎産業局
大久保 和 夫
工業技術院標準部
中 村 進
工業技術院化学技術研究所
鈴 木 正 信
通商産業省通商産業検査所
小 島 益 生
財団法人化学品検査協会
森 下 弘
日本曹達株式会社
井 上 良 生
徳山曹達株式会社
高 久 真
日本化学工業株式会社
茂 木 俊 男
大東化学株式会社
三 笠 宣 幸
三協化成株式会社
半 澤 金 男
日本ソーダ工業会
佐々木 一 郎
日本無機薬品協会
上 野 章
日本理化学薬品株式会社
平 尾 玄 雄
板硝子協会
斉 藤 敏 明
日本製紙連合会
別 能 恒 夫
日本化学繊維協会
渡 辺 哲 男
三井東圧化学株式会社
田 中 郁 衛
化成品工業協会
松 隈 義 則
日本石鹸洗剤工業会
(事務局)
石 毛 和 之
工業技術院標準部繊維化学規格課
根 岸 喜代春
工業技術院標準部繊維化学規格課